JP3355351B2 - 遺伝的に工作されたイムノグロブリン - Google Patents

遺伝的に工作されたイムノグロブリン

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明の好適な実施態様は、組換えDNA技術を用いて
天然の、または合成イムノグロブリン分子を遺伝的に工
作して、それに新規なエピトープを与え、例えば病原菌
に対する免疫を付与する、あるいは抗原に対する耐性を
構築する等、インビボおよびインビトロで種々の手段で
利用可能な新規物質を初めて製造することに関する。好
ましい実施態様ではエピトープを特定のイムノグロブリ
ンのいわゆるL鎖またはH鎖可変部に挿入する。即ち、
本発明では既知の組換えDNA技術の助けを借りて、いわ
ゆる定常部を介して特定の細胞型(セルタイプ)に機構
的に局在化する機能は維持しているが、新たな特定の抗
原決定基またはエピトープを局在化させるよう機能的に
開発された新規なイムノグロブリン物質を初めて製造す
る。
発明の背景 今日では、組換えDNA技術は、基本的に、DNA配列を決
定し、単離し、特性化し、さらに操作可能な発現ベクタ
ーに挿入することにより、これらベクターで様々な組換
え宿主をトランスフェクションし、それら宿主の、DNA
配列がコードするポリペプチドの産生能力を利用するた
めに、DNAを組み立てることが可能な程度にまで到達し
た。明らかに、組換えDNA技術に関する方法論には多く
の変法があり、特殊な方法は発明的な機能なしにはあり
得ない。それにもかかわらず、これらの方法は公知文献
によって一般的に知られており、当業者が必要な知的能
力を利用してDNA組換え技術を実行し、特定の組換え宿
主系からポリペプチドを産生することができる。
イムノグロブリン類(Igs)は体液免疫の主なエフェ
クターであり、その1つの性質は種々のタイプの抗原と
結合する能力と関係している。特定の宿主生物に対する
無数の抗原に鑑みて類似数またはそれ以上の、各抗原と
特異的に反応し得る結合部位を含有するイムノグロブリ
ンが存在することが分かる。これらの結合部位はいわゆ
るイムノグロブリンの可変部に位置し、イデオタイプと
言われている。さらに、イムノグロブリン分子はおそら
く細胞膜に存在するある種のレセプターの相互認識手段
によって、ある種の細胞型に局在化し得る点で特異的で
ある。イムノグロブリンは第2の一般的な性質を有し、
それにより免疫応答の内因性モジュレーターとして作用
する。Ig類およびそれらのイデオタイプ的な決定基は種
々の外因性抗原に対するB−および/またはT−細胞レ
ベルの免疫に用いられてきた。多くの場合、これらが引
き起こす免疫は抗原そのものによって惹起される免疫に
匹敵する。この状況の根底に横たわる理論は理解し得る
が、Ig分子の免疫原性における分子基盤および最小限必
要な構造、およびそのような免疫原性に与る領域と、特
定の細胞/レセプター型を有する特定のイムノグロブリ
ン分子の局在化を与える領域との相互反応に関しては殆
んど知られていない。過去数年間に、イムノグロブリン
の免疫原性、構造および遺伝を理解する上でかなりの進
歩が得られた。ジェスクら(Jeske,et al.),Fundament
al Imunology,Paul.ed.,Raven Press,New York.(198
4)p131;カバット(Kabat),Journal Imunology 141;52
5(1988)。
最初に、抗体のいわゆる可変部(V)の免疫原性が証
明された。オウディンら(Oudin,et al.),Academy of
Sciences D 257,805(1963)およびカンケルら(Kunke
l,et al.),Science,140,1218(1963)。次いで、V領
域内に可変性が区別される範囲(エリア)のあることが
指摘され超可変性(ハイパーバライアビリティー;HV)
または相補性決定領域(Comprementarity−determining
region:CDR)という観念が挿入された。ウら(Wu,et a
l.),J.Exp.Med.,132、211(1970)。以後、多くの研究
がIg分子の免疫原性は、おそらくCDRに含まれているア
ミノ酸配列により第一義的に決定されるだろうと示唆し
た。デヴィーら(Davie,et.al.),Ann.Rev.Immunol.,
4:147(1986)。
基本的なイムノグロブリンまたは抗体構造単位は良く
知られている。分子はジスルフィド結合によって共有結
合的に結合したH鎖およびL鎖からなる。H鎖はまた、
塩基部分がジスルフィド結合によって共有結合的に結合
しており、この部分は、特定のイムノグロブリン分子が
特定の細胞表面に見いだされるある配列を相互認識する
部分と考えられており、しばしばいわゆる定常部と呼ば
れる。イムノグロブリン分子のクラスを決定する5つの
主要な定常部クラスがあり、それらはIgG、IgM、IgA、I
gDおよびIgEである。いわゆるH鎖のN末端領域は、描
写的な意味で、外側に枝状をとり全体でY字型を示して
いる。L鎖は2本のH鎖のY枝に共有結合的に結合して
いる。H鎖のY枝領域内には長さ約100アミノ酸のドメ
インがあり、これらは可変であり、従って、その特定の
イムノグロブリン分子に関連する特定の抗原決定基に特
異的である。
本発明の目的は、特に注目される抗原決定基を有する
可変部(ドメイン)を含有するY枝(Yブランチ)に関
する。
先行技術の研究者らはイムノグロブリンの全CDR類を
研究し操作してキメラ分子を製造しそれらの機能を報告
している。例えばジョーンズら[Jones et al,Nature,3
21:522(1986)]はV領域のマウスーヒトキメライムノ
グロブリン分子を製造したことが注目される。この研究
では、バーホイエンら[Verhoyen,et al.,Science 239:
1534,(1988)]、リーチマンら[Riechmann et al.,Na
ture 332:323(1988)]、およびモリソン[Morrison,S
cience 229:1202(1985)]が明確に報告したように実
質上全CDRの置換を行っている。欧州特許出願公開(No.
125023A、1984年11月14日公開)をも参照。
本発明は、上記の機能的なキメラ分子を得ることに成
功した研究例を足掛かりにして、Y枝のN末端に含有さ
れる可変部のさらなる開発を目的としている。これら可
変部を操作して新規な抗原決定基またはエピトープを導
入し、局在化機能は保持したまま、異種(ヘテロローガ
ス)エピトープを含有し得る新規なイムノグロブリン分
子を初めて製造することを目的とする。このようにして
本発明の新規なイムノグロブリン分子は生物の異なる部
位で作用し、その結果新規な部位特異的なやり方で免疫
特性を付与することができる。当時本研究者らが直面し
ていた問題は、Y枝にエピトープ類がみとめられるとい
う点であった。即ち、H鎖と対応するL鎖との相互関係
を破壊することなく可変部の操作が可能か否かを予想す
ることが困難であり、それが不適当でないことが分かれ
ば、得られる分子が新規なエピトープに関し、基礎とな
るイムノグロブリン分子の定常部と共同して機能を保持
するか否かを予測することが困難な点にあった。即ち、
実験すべき箇所の問題を乗り越えたとしても、そのよう
な新規で2機能性のイムノグロブリン分子を成功裏に製
造することが出来るか否かを予測することは不可能であ
った。
本研究および発明は手掛かりとなる研究の成功、モデ
ルの調製、および新規なイムノグロブリン分子の製造に
基づいており、それら分子はある細胞/レセプター部位
上に局在化し、導入された新規な抗原決定基またはエピ
トープの特異的な反応性を保持する能力を有する点で完
全に機能的であることが分かった。
発明の要約 本発明はそのN末端可変部に、出発物質として用いた
イムノグロブリン分子には通常見いだされない新規なエ
ピトープが導入され、そのエピトープは特異的な反応性
を保持している新規なイムノグロブリン分子の製造に成
功したことによる。好ましくは、そのような反応性はエ
ピトープの抗原応答刺激能力により特徴付けられる。ま
たは、そのような反応性は他の特異的な生物学的機能、
例えばリガンドまたはレセプター結合、を反映するもの
であってよい。
このように、本発明は、そのN末端可変ドメインに少
なくとも1個の新規な異種エピトープを有する新規なイ
ムノグロブリン分子に関し、該新規イムノグロブリン分
子は特定の細胞/レセプター型に対するH鎖C末端定常
ドメインの特異性を維持していると共に、インビトロお
よびインビボで反応性の新規で特異的なエピトープを有
するものである。
本発明はまた、必須医薬成分として本発明の新規なイ
ムノグロブリンを含有する医薬組成物に関し、特に投与
可能な医薬ワクチンに関する。
さらにまた本発明は上記で明らかにした新規なイムノ
グロブリン分子を必要な個体に投与することにより、自
己免疫疾患の抗原等の抗原に対する耐性を構築する、ま
たはアレルゲンに対する過敏性のダウンレギュレーショ
ン、またはある種の病原性抗原に対する能動または受動
免疫の付与、に有用な方法を提供するものである。
また、本発明は、本発明の新規なイムノグロブリン分
子の製造、同定および使用に有用な新規な組換え技術お
よび方法を提供するものであって、これには、それらを
コードするDNAの単離、該DNAを機能的に含有するベクタ
ー、そのようなベクターでトランスフェクションされた
宿主、それら増殖宿主を含有する培地を含み、さらに上
記の組換えに関する全ての製造方法を提供するものであ
る。
発明の詳細な説明 以下に、本発明を、モデルの調製、新規なイムノグロ
ブリン物質の製造について特に詳細に説明する。この説
明は操作通り、組換えDNA技術に関して記載されてい
る。ここに述べた詳細な説明により、特定のイムノグロ
ブリンが、その出発物質であるイムノグロブリンに普遍
的に必要な機構と、特異的で新規な抗原決定基の機能と
を示すことを試験し得る手段が明らかにされる。本明細
書に記載の、特定の新規なイムノグロブリン分子に関す
る情報を当業者既知の一般的な方法および技術と組み合
わせることにより、当業者は、これもまた本発明の全範
囲に包含され本明細書記載のごとく用いられる新規なイ
ムノグロブリン分子を製造するための組換え発現ベクタ
ーを構築する方法を十分に知ることができる。本明細書
では、新規なイムノグロブリン分子を成功裏に調製する
実験の手掛かりを記載しており、当業者は本発明を再現
する方法を逐次詳細に追随する必要はない。むしろ、当
業者は本発明の総合的な範囲内で、既存の関連技術や他
の新規なイムノグロブリン分子の既知の製造方法を用い
ることができる。
1. 図の説明 図1はpNy1NANP発現ベクターの構築図である。
図2はy1NANPおよびWT組換えIgのSDS−PAGEである。
図3は工作された抗体y1NANPに対する125I標識モノク
クローナル抗体Sp3−B4の結合を示す図である。
図4は工作された抗体y1NANPに対する125I標識抗体Sp
3−B4のウエスタンブロット結合を示す図および工作さ
れた(NANP)3エピトープのH鎖内での局在を示す図で
ある。
図5は125I標識抗体Sp−3−B4と、合成ペプチド(NA
NP)3(パネルA)または工作された抗体y1NANP(パネ
ルB)との結合の、y1NANPIgまたはペプチド(NANP)3
による交差阻害を示す図である。
2. 一般的な方法および定義 “発現ベクター”はそれが含有するDNA配列を発現する
ことができるベクターであって、そのような配列はその
発現を可能ならしめる他の配列と機能的に結合してい
る。常に明確に述べてはいないが、これらの配列ベクタ
ーはエピソームとして、または染色体DNAに組み込まれ
た1部として、複製可能であることが暗示されている。
“機能的”という語句は文法上同等な意味において、各
DNA配列が使用可能である、即ち、それらの意図する目
的において機能することを意味する。総括的に、“発現
ベクター”は機能的に定義され、そこに配置された特定
のDNA配列を発現させることができるDNA配列はすべて、
特定の配列に適用されると同様に、この語句に包含され
る。一般に、組換えDNA技術で用いられる発現ベクター
は“プラスミド”の形であり、それは2本鎖の環状DNA
ループであってベクターの形では染色体に結合しない。
プラスミドが最も普通に用いられるベクターなので、本
明細書では“プラスミド”および“ベクター”という語
句は互換性のある語句として用いる。しかしながら、本
発明は、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクターお
よび今後当該技術分野で知られるであろうものをも包含
する。
親のイムノグロブリンの再配置または増大等の手段に
よって新規なエピトープを導入することに関する本発明
の新規性とは別に、本発明の新規なイムノグロブリンは
親の物質と1またはそれ以上のアミノ酸が異なってお
り、そのような差異が新規物質の基本的な活性または生
体−機能を破壊しない限り、任意に異なっていてよいこ
とは容易に理解できるであろう。
“組換え宿主細胞”は上記定義のベクターでトランス
フェクション(形質転換)された細胞を指す。
宿主細胞の維持には外因性の支持培地を用い、それに
は増殖期の細胞を支持するか、それらを生存状態に維持
し組換え法で付与された機能を発揮するようにするため
に既知または考案された培地が含まれる[例えばATCC
メディアハンドブック(Media Handbook)コートら編集
(Cote et al.)American Type Culture Collection,Ro
ckville,MD(1984)]。哺乳類細胞のための増殖支持培
地は、例えば、好ましくは、ウシ胎仔血清等の血清補充
物質、または細胞増殖および分化の促進に用いられる他
の補充成分、例えば、動物の肉またはミルクの加水分解
産物、組織または器官抽出物、ふやかした血塊またはそ
の抽出物等を含有する。他の適当な培地成分には、例え
ばトランスフェリン、インシュリンおよび各種の金属が
含まれる。
本明細書で開示したベクターおよび方法は原核性およ
び真核性の広範囲におよぶ宿主細胞に用いるのに適す
る。
本明細書中、“エピトープ”という語句は特異的なエ
ピトープ反応性をもたらし得る部分を指し、好ましくは
特異的な抗原反応性またはドメイン結合機能性の部分を
指す。
特定のイムノグロブリン分子のための新規なエピトー
プに関して“異種の(ヘテロローガス)”なる語句は、
イムノグロブリン分子のN末端における(少なくとも1
個の)エピトープの存在を指し、N末端は、天然状態で
は通常そのようなエピトープを含有していない、および
/またはそれらのエピトープ自身でイムノグロブリンの
CDRの全部または一部を構成しないものである。したが
って、鎖は異種のエピトープ配列(類)を含有する。そ
のような異種のエピトープ配列にはHIVのためのヒトCD4
結合ドメイン、ホルモンレセプター結合リガンド、レチ
ノイドレセプターおよびリガンド、または細胞付着を触
媒するレセプター等のレセプター様結合ドメインまたは
結合領域と同様、古典的な抗原性エピトープが含まれる
であろう。
“キメラ”とは本明細書の、異種のエピトープを含有
する本明細書のイムノグロブリンを指し、それはまた少
なくとも1種以上のイムノグロブリンから得た部分で構
成されていてもよい。従って、本発明の出発物質キメラ
イムノグロブリンは対応するヒトおよび非ヒトイムノグ
ロブリンの部分で構成されたハイブリッドH鎖を有する
ものであってよい。
上記の議論および既存の様々な文献の記述に加えて、
定義および方法、並びに本発明に包含される基礎的な技
術を行うための手段を載せた標準的なテキストブックを
参照することができる。例えば、マニアティスら(Mani
atis,et al.)のMolecular Cloning,A Laboratory Mann
ual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1982)
およびこのテキストブックに記載されている引用文献、
とりわけコロヴィックら(Colowick,et al.)のMethods
in Enzymology Vol.152,Academic Press,Inc.,(198
7)を参照することができる。本明細書に記載の文献は
すべて本明細書で引用している。
上記の記述および以下の実験に関する詳細な記述で
は、最初に本発明者らが同定および特性化、並びに特定
のイムノグロブリンの調製に用いた方法を記載してい
る。当業者は特定のイムノグロブリンのエピトープ含有
ドメインの局在化および作成の手段を提供することによ
り、本発明の新規なイムノグロブリンの製造方法を理解
し得るであろう。したがって、本実験を再現するため
に、努力して細部までも繰り返す必要はまったくない。
むしろ、別の、信頼できる既知の方法を採用することを
選択してもよく、例えば、類似範囲内の、または他の適
当な、操作可能な発現ベクターと培養システムを開発す
るために本発明の特定の新規なイムノグロブリンをコー
ドするDNA配列を合成してもよい。即ち、実際に使用し
た詳細な部分の提供に加えて、本明細書は、本開示の恩
恵に浴する当業者間の技術を用いて、開示した特異的な
イムノグロブリンまたは他のイムノグロブリン、および
そのフラグメントであって、例えばインビトロで集合さ
せるためのフラグメント等の再生産を可能ならしめるも
のである。そのような手段はすべて本発明の可能性およ
び発明の範囲内である。
3. 特に好ましい態様の記述 マウス/ヒトキメラ抗体(Cγ162)のH鎖のCDR3へ
の外来エピトープの導入にはタンパク質工学を用いた。
このエピトープはテトラペプチド(Asn−Ala−Asn−Pr
o)(NANP)の3個のコピーで構成されている。テトラ
ペプチドは天然では37タンデムリピートとして熱帯熱マ
ラリア原虫[Plasmodium falciparum circumsporozoite
(CS)]タンパク質に見られ、変異配列Asn−Val−Asp
−Proの4つの繰り返しと共に拡散されて存在する[ダ
ームら(Dame et al.)Science 225:593(1984)]。本
明細書記載の構築において、エピトープは両端でValお
よびProと接している(VP(NANP)3VP)。実験の結果、
(NANP)3エピトープはIg分子の折り畳み構造、即ちL
鎖との分子結合、に変化をもたらすことなく宿主H鎖の
HV領域(VH)に挿入され得たことが証明され、さらに組
換えIg分子の抗原性および免疫原性が発現されたことが
決定された。抗体のVH領域のCDR3はしばしば免疫優勢イ
デオトープと構造上関連していることが知られており
[デイヴィら(Davie,et al.)Ann.Rev.Immunol.4,147
(1986)]、このことはCDR3が分子表面に存在すること
を示唆している。さらに、可変−多様−結合領域(vari
able−diversity−joining;VDJ)の組換えにより、N付
加機構[トネガワ(Tonegawa),Nature 302,575(198
3);ミラー(Miller et al.)Immunol.Today 7,36(1
986)]と同様、CDR3はその長さ(3−19アミノ酸)が
変化し得ることが確められ[カバットら(Kabat,et a
l.),Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.o
f Health and Human Service NIH(1987)]、構造レベ
ルでの高度の可塑性が暗示された。第2に本研究のため
に選択された(NANP)3エピトープは比較的短く、反復
性であってマウスおよびヒトにおいて免疫原性が証明さ
れている[グッドら(Good et al.),Ann.Rev.Immunol.
6,663(1988)]。
4.実施例 実施例1 ハイブリドーマ62およびB10H2の製造、およびmAb62お
よび109.3(抗−2.4−ジニトロフェノール)の精製は既
述の方法で行った[ザネッティら(Zanetti et al.,J.I
mmunol.131,2452(1983);クロッツら(Clotz et a
l.),J.Immunol.137 223(1986)]。
ハイブリドーマ62のゲノムDNAからサイズ選択された
2−2.5kb EcoR I断片からDNAライブラリーを構築し
た。断片を低融点アガロースで溶出させ、λgt10ベクタ
ーに結合させた(ライゲーション)[Huynh et al.,DNA
Cloning Techniques 1,49(1985)]。ライゲーショ
ンとパッケージングの後、5x104プラーク形成単位をJH
プローブ[サカノら(Sakano et al.),Nature 286,676
(1980)]およびpSAPC15プローブ[ブロデュアら(Bro
deur et al.),Eur.J.Immunol.14,922(1984)]を用い
てレプリケートハイブリダイゼーションによりスクリー
ニングした。4つのクローンを単離しプラークを精製し
た:その1つを形成している2.3kbEcoR I挿入体をpEMBL
18ベクター[デンテら(Dente,et al.,DNA Cloning Tec
hniques 1、101(1985)]にサブクローニングした。
親ハイブリドーマから得たcDNAを、poly(A)+RNAをCH
1領域の5'末端とアニーリングする合成オリゴヌクレオ
チド(5'GGGGCCAGTGGATAGAC3')を用いるプライマー伸
長によりクローニングしてVHB10H2コード配列を決定し
た。同じオリゴヌクレオチドをキナーゼで32P−ATPによ
り5'−末端標識し、ライブラリーのスクリーニング用プ
ローブとして用いた。両クローンのヌクレオチド配列
は、適当な制限断片をpEMBL18ベクターにサブクローニ
ングした後、両鎖についてジデオキシ法で決定した。
C1,62抗体をコードするDNAを含有するプラスミドpN
γ162はVH62リアレンジメントを含有する2.3kbEcoR I
DNA断片を、pNγ1[サラゾら(Sallazo,et al.),Focu
s 10,64(1988)]ベクター(ヒトγ1遺伝子を有するP
SV誘導ベクター)の単一のEcoR I部位に適当な方向性で
サブクローニングすることで構築した。このベクターは
ヒトγ1遺伝子をEcoR I部位の下流に含有する。これは
また安定な形質転換体の選択のためのネオマイシン耐性
付与遺伝子を、SV40プロモーターのコントロール下で有
する。形質転換体は、プラスミドpNγ162およびpNγ1
CHA(Id62およびIg結合を欠く抗体をコードするキメラ
構築物)をJ558Lマウスに電気穿孔法で導入することに
より構築した。このセルライン(細胞系)はミエローマ
(骨髄腫)J558のH鎖欠損変異体[モリソンら(Morris
on et al.),Science 229,229(1985)]でありλ1L鎖
のリアレンジメントを担持している。超らせんDNA10μ
gを含有するダルベッコの改良最少培地(DMEM)1mlに
約3x106個の細胞を入れ、セルポレーター装置[Cell Po
rtor(Bethesda Research Laboratories,Bethesda,M
D)]で650V/cmにおいて17分間パルス処理した。パルス
処理の後、細胞を10mMヘペス(Hepes)バッファー、2mM
−L−グルタミン、ペニシリン(50μg/ml)、ストレプ
トマイシン(50μg/ml)および10%ウシ胎児血清を補充
したDMEM(cDMEM)10mlに再懸濁し、37℃で48時間、CO2
雰囲気下でインキュベーションした。次いで、細胞をcD
MEM20mlに再懸濁しその1部(2ml)を1.2mg/mlG418(Gi
bco,Grand Island,NY)20mlで希釈し、96ウエルのマイ
クロタイタープレートに撒き、14日間培養した。ネオマ
イシン耐性コロニー(安定な形質転換体)の上清を固相
ラジオイムノアッセイ(RIA)と、酵素−結合イムノソ
ーベントアッセイ(ELISA)で試験した。
pNγ162ベクターでトランスフェクションされたJ588
L細胞の上清におけるId62の存在をELISAの競合的阻害法
で試験した。これにより西洋ワサビペルオキシダーゼ
(HP)標識mAb62(リガンド)と、96ウエルポリビニル
マイクロタイタープレート(Dynatech,Alexandria,VA)
を被覆する抗Id62抗体との結合の阻害(%)が求められ
た[ザネッティら(Zanetti et al.),J.Immunol.131,2
452(1983)]。pNγ1CHAプラスミドで形質転換された
J558L細胞の上清と精製mAb62および109.3(IgG1,x抗2,4
−ジニトロフェノール)を対照として用いた[ザネッテ
ィら(Zanetti et al.),J.Immunol.131,2452(198
3)]。Id62の発現を試験する第2の方法はウエスタン
ブロット法である[トゥビンら(Towbin et al.),Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 71,4350(1979)]。即ち、抗ヒ
トIgセファロース4Bカラム(Pharmacia,Uppsala,Sweede
n)でアフィニティークロマト精製した約5μgの抗体
cγ162を還元条件下、10%ドデシル硫酸ナトリウムポ
リアクリルアミドゲル電気泳動に付した。次いで、ゲル
を0.45Mニトロセルロースペーパー(Millipore,Bedfor
d,MA)にブロットし125I標識アフィニティー精製した同
系の抗Id62抗体[Zanetti et al.,J.Immunol.135,1245
(1985)]でプローブした。抗体62および109.3はそれ
ぞれ正対照および負対照として用いた。最初、フィルタ
ーを−70℃で24時間、強化スクリーンに暴露した。キメ
ラcγ162抗体のH鎖のヒトC領域の同時発現を示すた
めにニトロセルロースペーパーを再度125I標識ヤギ抗ヒ
トIg抗体でプローブし70℃で2時間暴露した。
配列データはEMBL/Gene Bank Data Libraryから、受
託番号No.Y00744の下で一般に得られる。
そのH鎖のCDR3内にマラリアCS免疫優勢B−細胞エピ
トープNANPを担持するy1NANP抗体を以下のようにして工
作(抗原性化)した。
図1はpNy1NANP発現ベクターの構築を示す。パネルA
において、(a)は、後述のごとく、サイズ選択したλ
gt10ライブラリーから単離し、pBluscript(Stratagen
e,San Diego,CAから一般に入手可能)にサブクローニン
グしたハイブリドーマセルライン62の、生産的に再配列
(リアレンジメント)したVH遺伝子を示す。(b)はポ
リリンカー領域の制限部位Kpn I/Asp718をKpn I消化に
よって欠失させ、T4ポリメラーゼで充填しライゲーショ
ンすることによる、プラスミドpH62△Kの構築を示す。
(c)ではプラスミドpH62△Kを部位特異的突然変異に
おける鋳型として用い、VH遺伝子のCDR3の単一のAsp718
制限部位に導入する。3bp挿入体(TAC)をコードする合
成オリゴヌクレオチド(5'CAAGAAAGGTACCCTACTCTC
3')をウラシル化した1本鎖相補的鋳型にアニーリング
し伸長させた。(d)は相補的な合成オリゴヌクレオチ
ド:(5'GTACCCAATGCAAACCCAAATGCAAACCCAAATGCAAACCCA
3' 3'GGTTACGTTTGGGTTTACGTTTGGGTTTACGTTTGGGTCATG 5')
のアニーリングおよびpH62Kの単一のAsp718部位へのサ
ブクローニングを示す。構築はVH62遺伝子の5'末端(5'
GACGTGAAGCTGGTG 3')に対応する15量体プライマーを
用いて配列決定することで証明した。(e)は工作した
VHNANP遺伝子を担持する2.3kb EcoR I断片の15kbのpNy1
ベクターのヒトy1C領域上流へのサブクローニングを示
す。pNy1NANP構築物をJ558L細胞にエレクトロポーレー
ションし、G418の存在下で培養した。耐性クローンを、
マイクロタイターウエルに固体化したヤギ抗ヒト抗体を
抗体の捕獲に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HP)結合
ヤギ抗ヒトIg(Sigma)を抗体の検出(revealing)に用
いるサンドイッチ酵素結合イムノソーベントアッセイ
(ELISA)で、Ig生産に関してスクリーニングした。>
2−5μg Ig/mlのタンパク質を産生しているクロー
ンの106細胞を増幅し培地上清から抗体を精製した。パ
ネルAで図示した配列の修飾をパネルBで詳細に示して
いる。略語は以下の通りである。Asp−Asp 718;B−Bam
H I;R I−Eco R I;FR−フレームワーク領域(framework
region);CDR−相補性決定領域(complementarity−de
termining region);neo−ネオマイシン耐性(neomycin
(G418)resistance);amp−アンピシリン耐性(ampici
llin resistance)。
チログロブリンに対するネズミモノクローナル抗体
(mAb62)のVH遺伝子をコードする制限断片を図1記載
のように修飾した。NANPテトラマーの3コピー(NANP)
3とAsp718突出末端をコードする2本鎖合成DNA断片をV
H96コード領域のpro95とTyr96の間の枠内に挿入した。p
H62dNANP構築物はジデオキシ配列決定法で確認した。工
作されたVHをコードするEocR I断片をpNY1発現ベクター
のヒトy1定常(C)領域の上流に挿入しpNy1NANP構築物
を得た。この構築物を電気穿孔法でネズミJ558L細胞
系、ラムダー1L鎖のリアレンジメントを有するミエロー
マJ558のH鎖欠損変異体[モリソンら(Morrisonn et a
l.),Science,229,1202,(1985)]に導入した。
形質転換体細胞を培養、サブクローンし、ヤギ抗ヒト
Ig抗体を用い、サンドイッチ酵素結合イムノソーベント
アッセイ(ELISA)で、工作(抗原性化)されたIg分子
の分泌に関してスクリーニングした。2−5μg/mlのタ
ンパク質を産生しているクローンの106細胞を選択して
増幅し、キメラタンパク質をセファロース4B−プロテイ
ンAカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィー
で精製した。精製Ig分子は還元および非還元条件下、SD
S−PAGEで分析した。
図2はy1NANPとWT組換えIgのSDS−PAGEである。プロ
テインA精製した抗体5gを非還元条件下、7.5%ポリア
クリルアミドゲルに負荷した。ゲルをクーマシーブルー
で染色した。挿入図は、還元条件下(5%βメルカプト
エタノール)で工作(抗原性化)された抗体y1NANPを電
気泳動するとH鎖およびL鎖に分離することを示してい
る。
図2は非還元y1NANPキメラ抗体の見掛けの分子量が16
0kDであり適当なH2L2集合を果してテトラマーIgタンパ
ク質を与えていることを示す。y1NANP抗体を野生型(W
T)Igと比較すると、pNy162でトランスフェクションさ
れたJ558L細胞の培養上清から精製された(NANP)3挿
入体を欠くキメラ抗体は、挿入されたエピトープの存在
によって、僅かに大きさが異なることが認められた。し
かしながらy1NANP抗体の分子量は十分、テトラマーコン
プレックスの範囲内である。両標品は160kDバンドの下
方に斑点を示しているがこれらは分解および/または非
適正に集合したなんらかのタンパク質産物があることを
示唆している。還元条件下、工作(抗原性化)されたy1
NANP抗体は適切にH鎖とL鎖に分離した(図2、挿入
図)。NP40ライゼートのELISAによって決定されたよう
に、y1NANP抗体を分泌する形質転換細胞は、WTIgを産生
する細胞とほぼ同様の細胞質濃度のH鎖を分泌した。総
合すると、これらの結果はVH62のCDR3への15アミノ酸の
導入は、VHおよびVLポリペプチド鎖の相互反応、並びに
テトラマー(H2L2)Ig分子の集合および分泌に感知でき
るほどの変化をもたらさなかったことを示している。
工作(抗原性化)されたy1NANP抗体が実際に免疫学的
に許容し得る形の(NANP)3エピトープを発現するか否
かを調べるために固相ラジオイムノアッセイ(RIA)、
ウエスタンブロット法をP.farciparumに対して惹起さ
れ、NANP特異的ネズミモノクローナル抗体(SP3−B4)
を用いて行った。
図3は125I標識モノクローナル抗体SP−3−B4の工作
(抗原性化)されたy1NANP抗体に対する結合を示す。ネ
ズミモノクローナル抗体(mAb)SP3−B4、IgG2a,K、熱
帯マラリア熱原虫による免疫によって産生され、反復エ
ピトープNANPと反応性。NANPエピトープ特異的な、あら
ゆる抗マライナル抗体を手段として用い同様の方法で生
産される。ポリビニルマイクロタイターウエルを精製y1
NANPIg(黒色菱形)、WT(黒色三角)、(NANP)3合成
ペプチド(黒色四角)、プロトタイプ抗体62のVH領域の
CDR3を包含する16mer合成ペプチド(YYCARKAYSHGMDYW)
(白色四角)、および細胞接着分子ビトロネクチン(vi
tronectin)の15mer合成ペプチド(YPQVTRGDVFTMPED)
(白色菱形)の0.9%NaCl中5g/ml溶液中で37℃で乾燥す
ることによりコート(被覆)した。125I標識抗体SP3−B
4(20x104cpm/50μl)を+4℃で一夜インキュベーシ
ョンした。十分に洗浄した後、結合した放射能をガンマ
カウンターで計測した。試験は3回行った。
直接RIA結合の結果(図3)は125I標識mAbSP3−B4が
マイクロタイタープレートに固定化された合成ペプチド
(NANP)3、および切換えy1NANP抗体の両者と結合する
ことを示した。しかしながら、抗体y1NANPへの結合の方
が効率的であると考えられる;抗体に対するペプチドの
比率は抗体がIg分子あたり(NANP)3エピトープを2コ
ピー発現すると仮定して、モル比で約50:1と算定され
た。WTIgまたは2個の無関係な合成ペプチド、1つはプ
ロトタイプVH62のCDR3配列に1つはビトロネクチンのYP
QVTRGDVFTMPED残基に相当する、のいずれの間にも結合
は起きなかった。
図4は125I標識抗体SP3−B4のH鎖内の工作(抗原性
化)された(NANP)3エピトープへの結合を示す。10μ
gの精製y1NANP、組換えWTIg、天然のモノクローナル抗
体62、およびポリクローナルヒトガンマグロブリン(HG
G)(Cohn fraction II,Miles)を10%SDS−PAGEに負荷
し非還元条件下(左パネル)、および還元条件下(右パ
ネル)、150Vで電気泳動した。解離したタンパク質また
はポリペプチド鎖をゲルから0.45μmのニトロセルロー
スペーパーに移した。ブロッティングの後、0.9%NaCl
中10%ドライミルク溶液で室温において2時間ブロック
した。次いでシートを、1%ウシ血清アルブミンと1%
Tween20を含有するりん酸緩衝化食塩水(pH7.3)中、
125I標識抗体SP3−B4(40x104cpm/ml)と一緒に振盪さ
せながら+4℃で一夜インキュベーションした。インキ
ュベーション後、フィルターを十分に洗浄し、乾燥しコ
ダックXAR−5フィルムに−70℃で18時間暴露した。同
じ125I標識プローブ(105cpm/50μl)によるRIAにおけ
る、y1NANPIg、組換えWTIg、抗体62およびHGGに対する
結合は、それぞれ10,560;420;360;330cpmであった。
ウエスタンブロット分析(図4)は125I標識mAbSP3−
B4が抗体y1NANP抗体と、非還元(左パネル)および還元
(右パネル)形で特異的に結合することを示している。
後者において、予測通り、結合がH鎖(L鎖でなく)に
おいて起こり、このことにより工作(抗原性化)された
y1NANP抗体が(NANP)3エピトープをH鎖に有すること
が示された。HおよびL鎖の対照およびヒトC領域との
結合はおこらなかった。
工作されたy1NANP抗体の(NANP)3エピトープ発現に
関する相対的な効率を評価するために交差阻害アッセイ
を用いた。合成ペプチド(NANP)3と抗体y1NANPとを用
いて125I標識mAb Sp3−B4と、マイクロタイタープレー
トに固定化した(NANP)3ペプチドまたはy1NANP抗体の
いずれかとの結合の阻害を調べた。
図5は125I標識抗体Sp3−B4の合成ペプチド(NANP)
3(パネルA)または工作(抗原性化)されたy1NANP
(パネルB)のy1NANPIgまたはペプチド(NANP)3によ
る交差阻害を示す。一定量の125I標識抗体Sp3−B4プロ
ーブを1%ウシ血清アルブミンと1%Tween20とを含有
するりん酸緩衝化食塩水(pH7.3)に希釈した種々の阻
害物質の、容量比(v/v比)による漸減量と混合した。
揺動しながら、混合物を+4℃で一夜インキュベーショ
ンした。各混合物50μlをそれぞれ、合成ペプチド(NA
NP)3(パネルA)また精製した工作(抗原性化)y1NA
NPIg(パネルB)でコートしたポリビニルマイクロタイ
タープレート上でインキュベーションした。コーティン
グの条件は図4の説明に記載した通りである。以下の阻
害物質を用いた。精製y1NANP、WT Igおよび合成ペプチ
ド(NANP)3、CDR3およびビトロネクチンである。阻害
%は以下のようにして計算した。[(プローブ単独の平
均結合)−(阻害物質の存在下でインキュベーションし
た場合のプローブの平均結合)]÷(プローブ単独の平
均結合)×100。試験は2回繰り返した。
図5はペプトドおよび工作(抗原性化)された抗体
が、2つの生理的形態、即ち、合成ペプチドおよび生成
抗体の(NANP)3エピトープの結合を効率良く阻害した
ことを示す。しかしながら、y1NANPは、合成ペプチドと
の結合阻害において、ペプチド自身よりも約4倍以上有
効であった(パネルA)が、工作(抗原性化)されたIg
との結合の阻害においてペプチドよりも約150倍以上有
効であった(パネルB)。WT Igおよび対照ペプチド
(CDR3およびビトロネクチン)はなんらの阻害をもたら
さなかった。即ち、合成ペプチドと比較すると、y1NANP
抗体に関係した(NANP)3エピトープは免疫学的な意味
から、活性なCSプロテインの3次元体配置に、より似通
っていると思われる。
組換え工作(抗原性化)y1NANP抗体を抗NANP抗体の誘
導に利用出来るかどうかを調べるために兎でインビボ実
験を行った。2匹の兎を工作(抗原性化)したy1NANP抗
体で免疫し、2匹の対照にはWTIgを与えた。本明細書第
43〜45頁に示す表Iに示すように、最初の接種から30日
という早期に、y1NANP抗体で免疫した2匹の兎がELISA
およびRIAの両方で検出可能な抗体を産生していた。ブ
ースター接種の後、両方の兎の力価が上昇し、最大値は
70日目の1/3200であった。重要なことは、この抗血清は
マラリア原虫スポロゾイトによる間接免疫蛍光法で試験
すると陽性であり、y1NANPIgにより発現されたエピトー
プが天然の抗原と全く同様の疑似作用をすることを示し
た。WTIgを接種された対照兎からの血清はマイクロター
ターウエルに固定化された(NANP)3ペプチド、あるい
は原虫のいずれとも反応しなかった。ヒトガンマグロブ
リンで被覆した赤血球の凝集により測定した結果、両群
の兎には抗ヒト応答が産生していた。兎抗血清を10%ウ
シ胎児血清の存在下、スライドガラス上で乾燥したマラ
リア原虫(P.falciparum strain Indochina III)を用
いて直接免疫蛍光法で試験した。
NANP特異的モノクローナル抗体の結合部位をタンパク
質表面相互作用のプローブとして用いて行ったインビト
ロ実験、および工作されたIg分子を用いて免疫したウサ
ギのインビボ実験で、マラリア原虫抗原と反応性の抗NA
NP抗体が産生され、このことは工作(抗原性化)された
Igによって発現された(NANP)3エピトープが抗原性お
よび免疫性であることを証明するものである。
マラリア原虫の肝臓細胞への侵入に対する抗体の阻害
活性をインビトロマラリア原虫侵入(ISI)テストによ
り試験した。[ホリンダールら(Hollingdale,et a
l.),Journal of Immunology 132:909(1984)]。簡単
に述べると、DIGフラクションの血清を連続希釈しHep62
−A16細胞培養に加えた。スポロゾイトを細胞培養と一
緒にインキュベーションした。固定化培養を種特異的な
モノクローナル抗体で染色した後、P.falciparumおよび
P.vivaxの付着および侵入を調べた。対照培養には野生
型[WT]キメラタンパク質で免疫したウサギから得た血
清またはIG画分を与えた。y1NANPで免疫したウサギのIG
画分のISI活性は、ウサギ内で、破傷風毒素と結合した
(NANP)3ペプチドによって引き起こされた精製IgのIS
I活性に匹敵するものであり、これもまた本発明のエピ
トープの免疫原性を示すものである。
異なるMHC(H2)ハプロタイプ(単相群)(C57BL/6−
H2b、BALB/c−H2d、C3H/He−H2KおよびSJL−H2s)のマ
ウスにミョウバン中のy1NANP50μgを腹腔内投与(i.
p.)した。30日後にブースター注射した。ブースター注
射の10日後に血清試料を採取した。同じ血清ハプロタイ
プの対照動物に野生型(WT)キメラタンパク質を接種し
た。免疫法の概略は以下の通りである。
−2日:免疫処置前採血 0日:免疫処置 29日:免疫処置後の採血 30日:第1回ブースター 40日:第1回ブースター後採血 80日:第2回ブースター前採血および第2回ブースター 90日:第2回ブースター後採血 第2回ブースター処置後10日目に血清を採収した。実
験群および対照群から得た血清試験をK K(NANP)3
(5μg/ml)でコーティングしたマイクロタイタープレ
ート上で、ビトロネクチン、およびNANPに無関係な親抗
体のCDR2およびCDR3ドメイン、のアミノ酸配列に基づく
他のペプチドを対照として用いてELISA法で試験した。
各種の個々のマウスの抗体価を表IIに示す。データは、
工作(抗原性化)されたy1NANPが種々のMHC−ハプロタ
イプの動物で抗NANP体液性免疫を惹起し得ることを示し
ている。
各種のマウス5匹をy1NANPまたは野生型(WT)タンパ
ク質のいずれかで免疫処置した。各マウスの相対抗体力
価は血清希釈度の逆数として得られる。(NANP、y1NANP
で免疫処置;WT、野生型キメラタンパク質で免疫処
置)。
実施例2 CD4様抗体、y1CD4と称する、の製造法は実施例1で用
いた方法と同様である。簡単に述べると、VH62遺伝子領
域に接続されたヒトCD4の42から49アミノ酸残基[SFLTK
GPS]を含有するy1CD4抗体をコードするベクターをJ558
L細胞にトランスフェクションした。選択した細胞を抗
体の産生に関してスクリーニングし、y1CD4抗体を培養
上清mlあたり30〜40μgの抗体を分泌する単離体から精
製した。非還元条件下におけるyiCD4のSDS−PAGEは見掛
けの分子量約160kDを示していた。還元条件下、このタ
ンパク質は正しくH−およびL−鎖に分離し、異種のCD
4配列はH−およびL−鎖の集合を妨げないことが示さ
れた。
y1CD4中のCD4配列の存在を確認するために、固相ラジ
オイムノアッセイ(RIA)を行った。マイクロタイター
ウエルを5μg/mlのy1CD4でコーティングした。y1NANP
でコーティングしたウエルを対照とした。CD4に対する
1連のモノクローナル抗体(OKT4、Ortho Pharmaceutic
al,Rathway,New Jarsey)を一次抗体として用い、125I
標識ラット抗マウスを第2抗体として用いた。表IIIに
示すように、OKT4Dはy1CD4と強力かつ特異的に結合し
た。ウエスタンブロット分析により、RIAの結果を確認
すると共に、さらに、エピトープがy1CD4のH−鎖のOKT
4D残基によって認識されることを示した。他の抗体、特
にOKT4Aによる結合の欠如はCD4の残基42から49にCD4のI
g結合部位が含まれるという可能性を除くものである。
抗体分子のVH領域を工作(抗原性化)し、関係のない
分子のエピトープを含む15アミノ酸残基を発現させるこ
とができるという観察は異種エピトープを含有するVH/C
Hポリペプチド鎖が適正に内因性L鎖と集合して(H
2L2)テトラマーを形成したことを示し、このエピトー
プのCDR3への挿入が認容され、全体のIg折り畳み構造に
影響しなかったことを示している。本明細書記載の結果
がエピトープ自身の性質によるということを除外するこ
とはできなかったが、本研究に基づき、組換えエピトー
プは、それが立体化学的に隣接するCDR残基と適合する
限り、挿入し、またはCDRと置き換え、分子の表面に暴
露されることを期待できる。本明細書記載の構築におい
て(NANP)3配列は両端でアミノ酸ValおよびProと隣接
している。これが挿入されたエピトープの各端でアンカ
ーとなり安定化に役立っているのかもしれない。Val残
基のCβ原子およびCγメチル基位置での大きい分枝は
主鎖の柔軟性を減少することにより阻害するかもしれな
い;Proの側鎖は主鎖の方へ曲がってそれを捕え殆ど硬直
した側鎖を形成しているかもしれない。
言い換えると、分子環境のみならずIgの球状ホールデ
ィングのいずれも(NANP)3エピトープの免疫学的構造
を変化させなかった。生物学的見地から、Ig分子に工作
し挿入された(NANP)3エピトープはホストVHドメイン
のCDR3に好みにより(アラカルト)挿入した構築された
イデオートを見ることができる。イデオタイプの免疫原
性および免疫について起こり得る事象であるイデオタイ
プネットワークを介する免疫の誘導に関する既知文献
[ジェルネ(Jerne)Ann.Immunol(Paris)125,373(19
74);コツェナーブら(Cozenave et al.),PNAS 74,51
22(1977);アーバインら(Urbain,et al.),PNAS 74,
5126(1977);ボナら(Bona et al.),J.Exp.Med.153,
951(1981)]に基づいて、これらの結果は予め決定さ
れたエピトープ特異性の免疫応答が分子用語(モレキュ
ラーターム)で表され、インビトロで予測し得ることを
示している。この方法を利用してB−細胞エピトープを
T−非依存性にし、それがエピトープおよびIg類の構造
および機能の分析のみならず、新規な抗体ワクチン、例
えばペプチドを基盤とするワクチンに代わるもの、の開
発に有用であることを証明することができる。ワクチン
の製造はイムノグロブリン用に開発された、既知の広範
囲に及ぶ方法をそのまま用いることができる。
a:成熟白兎の背部の数箇所に、完全フロインドのアジ
ュバント(CFA)に懸濁した50μgの組換えy1NANPまた
はWT抗体を皮下注射し、感染させた。1カ月おきに、不
完全フロインドアジュバントに懸濁した同じ免疫原50μ
gを用いてブースター注射を行った(*で示した)。記
載の日に血清を採取し、合成(NANP)3ペプチドとの反
応性を固相FLISAおよびRIAにより試験した。簡単に述べ
ると、各血清の、1%ウシ血清アルブミンおよび1%Tw
een 20を含有するりん酸緩衝化食塩水、pH7.3中連続2
倍希釈度を、0.9%NaCI中5μg/ml(NANP)3ペプチド
で被覆したマイクロタイタープレート上において、+4
℃で一夜インキュベーションした。インキュベーション
後、プレートを洗浄し、西洋ワサビ標識ヤギ抗ウサギIg
または125I標識プロテインA(Amersham)のいずれかと
室温で1時間インキュベーションした。次いで、プレー
トを洗浄し結合した抗体をBio−Rad(Richmond,CA)ELI
SAリーダーまたはガンマカウンターで計測した。免疫前
血清の結合を対照バックグラウンド値(reference back
ground)とした。力価は3試料に関して得たバックグラ
ウンド結合を差し引いた後の値の平均値として求め、血
清濃度の逆数として表した。
以上、本発明の実施に用い得る具体的な方法を詳細に
述べた。イムノグロブリンの同定、単離、特性化、調製
および使用において初めて用いた本発明方法が具体的に
記載されており、さらに特定のモデル物質も開示されて
いるので、当業者は同じ情報を得、その情報を他の種内
および種間の関連イムノグロブリンに拡張するための、
他の信頼し得る方法を工夫する方法を知ることができ
る。上記のごとく、本明細書に詳しい内容が見られる
が、それは本発明の全範囲を限定するものではなく;本
発明範囲は添付の請求の範囲の法的解釈によってのみ、
支配されるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // C12P 21/08 C12R 1:91 (C12P 21/08 C12N 15/00 ZNAA C12R 1:91) (56)参考文献 英国特許出願公開2188638(GB,A) Science,1985年 9月20日, Vol.229,1202−1207 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/00 - 15/90 A61K 39/395 C07K 16/00 - 16/46 C07K 19/00 C12N 5/00 - 5/28 C12P 21/08

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】そのN末端可変部のCDRに少なくとも1個
    の免疫原性の異種エピトープ配列を有し、特定の細胞/
    レセプター型に特異的なH鎖のC末端定常領域に関する
    機能性を保持しており、該エピトープに対する特異的な
    反応性を誘導する能力を有するイムノグロブリン分子。
  2. 【請求項2】組換えDNA技術の産物としての請求項1の
    イムノグロブリン分子。
  3. 【請求項3】そのN末端可変部のCDRに少なくとも1個
    の免疫原性の異種エピトープ配列を有し、特定の細胞/
    レセプター型に特異的なH鎖のC末端定常領域に関する
    機能性を保持しており、該エピトープに対する特異的な
    反応性を誘導する能力を有する1本のイムノグロブリン
    H鎖。
  4. 【請求項4】組換えDNA技術の産物としての請求項3の
    H鎖。
  5. 【請求項5】請求項3または4のH鎖と、さらなるH鎖
    とからなる、イムノグロブリン分子。
  6. 【請求項6】キメライムノグロブリン分子である請求項
    1のイムノグロブリン分子。
  7. 【請求項7】ヒトおよび非ヒト種の両者から選択される
    配列からなるハイブリッドH鎖で形成されている請求項
    6のイムノグロブリン分子。
  8. 【請求項8】そのH鎖の第3相補性−決定領域内にテト
    ラペプチドAsn−Ala−Asn−Proを含有する請求項1のイ
    ムノグロブリン分子。
  9. 【請求項9】該テトラペプチドが3倍体の形で存在する
    請求項8のイムノグロブリン分子。
  10. 【請求項10】請求項1のイムノグロブリン分子を有効
    成分として含有する、抗原に対する耐性を構築するため
    の、抗原に対する能動または受動免疫を与えるための、
    またはアレルゲンに対する過敏性をダウンレギュレーシ
    ョンするための医薬。
  11. 【請求項11】ヒト対象に投与するのに適した請求項10
    の医薬。
  12. 【請求項12】投与可能なワクチンの形である請求項10
    または11の医薬。
  13. 【請求項13】該CDRがCDR3である請求項1のイムノグ
    ロブリン分子。
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