JP3374659B2 - 超高張力電縫鋼管およびその製造方法 - Google Patents

超高張力電縫鋼管およびその製造方法

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JP3374659B2
JP3374659B2 JP14602996A JP14602996A JP3374659B2 JP 3374659 B2 JP3374659 B2 JP 3374659B2 JP 14602996 A JP14602996 A JP 14602996A JP 14602996 A JP14602996 A JP 14602996A JP 3374659 B2 JP3374659 B2 JP 3374659B2
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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、ドアインパクトビ
ームなどの自動車用部材、さらには機械構造用部材、土
木建築用部材に用いられる超高張力電縫鋼管およびその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車などの車両ドア内部には、安全性
の観点からドアインパクトビームと呼ばれる補強材が設
けられている。従来のドアインパクトビームには、高張
力冷延鋼板のプレス成型品が用いられることが多かった
が、近年、軽量化のために、引張強度が980N/mm
2 以上の著しく強度の高い高張力電縫鋼管が採用される
ようになってきている。
【0003】これまで、超高張力鋼管に関しては、特開
平1-205032号、特開平4-131327号、特開平4-187319号、
特開平6-57375 号、特開平6-88129 号、特開平6-179913
号の各公報に開示されている、所定の化学成分を有する
鋼を引張強度980N/mm2 以上の高張力鋼板とした
後、電縫溶接し高強度電縫鋼管を得る方法が提案されて
いる。
【0004】また、特開平3-122219号、特開平4-63227
号の各公報に開示されている、所定の化学成分を有する
鋼管に焼入れ処理を行い、引張強度1180N/mm2
以上の高張力電縫鋼管を得る方法が提案されている。
【0005】
【解決しようとする課題】上記特開平1-205032号、特開
平4-131327号、特開平4-187319号、特開平6-57375 号、
特開平6-88129 号、特開平6-179913号の各公報などに示
された方法は、造管に伴い残留歪みが存在するため、そ
の実用に際しては水素遅れ割れに対する配慮が必要であ
る。
【0006】しかし、これまでに示された方法では、水
素遅れ割れに対する配慮がなされていないか、あるいは
なされていても十分でなく、したがって超高張力鋼管の
需要拡大が制限されている。
【0007】一方、特開平3-122219号、特開平4-63227
号の各公報に示された方法は、引張の残留歪みはないも
のの、その使用中に腐食が進むと管体強度が低下するこ
とが問題である。
【0008】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、引張強度が高く、耐水素遅れ割れ特性に優れ
た、またはこれに加えて耐食性にも優れた超高張力電縫
鋼管およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために多くの実験的検討を行った結果、鋼成
分の調整、および鋼板の熱処理条件および造管条件を適
正化して組織を調整することにより耐水素遅れ割れ特性
に優れた、またはこれに加えて耐食性にも優れた超高張
力電縫鋼管を得ることが可能となるという知見を得た。
【0010】本発明はこのような知見に基づいてなされ
たものであり、
【0011】重量%で、C:0.10〜0.19%、S
i:0.01〜0.5%、Mn:0.8〜2.2%、A
l:0.01〜0.06%、Cr:0.05〜0.6
%、、P:0.02%以下、S:0.003%以下、
N:0.005%以下、残部Fe及び不可避的不純物か
らなる鋼スラブに対し、前記鋼のAr3 変態点の温度を
TAr3 としたとき、仕上げ温度Tfが(TAr3 +3
0)〜(TAr3 +100)℃の温度範囲になるように
仕上げ温度Tfを制御して熱間圧延を施し、その熱間圧
延の際に、Tf〜(Tf+30)℃の温度範囲で30%
以上の圧下率を与え、熱間圧延後直ちに60〜200℃
/secの冷却速度で150〜250℃の温度範囲の温
度Tcまで冷却した後、150℃以上Tc以下の温度範
囲に2秒以上滞留させ、150℃未満の温度で巻取って
熱延鋼板とし、この熱延鋼板を以下の(1)式を満たす
幅絞り率Qで造管することを特徴とする超高張力電縫鋼
管の製造方法を提供する。
【0012】 1000≦Q/(t/ D)2 ≦3000……(1) ただし、t(mm):鋼板の板厚、D(mm):電縫鋼管の外
径、Q(%)は幅絞り率で、以下の式(2)で定義され
る。 Q=[{鋼板の幅−π( D−t)} /π(D−t)]×100 ……(2)
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の超高張力電縫鋼管は、鋼
の成分組成および組織を制御することによりはじめて達
成されるものである。本発明の第1実施形態および第2
実施形態はそのために特定の成分組成の鋼板の熱処理条
件および造管条件等を規定するものであり、第3実施形
態は鋼の成分組成および組織自体を規定するものであ
る。
【0014】以下、各実施形態についてて詳細に説明す
る。 (1)第1実施形態 (化学組成)引張強度が980N/mm2 以上で、しか
も優れた耐水素遅れ割れ特性を得るために、C:0.1
0〜0.19%、Si:0.01〜0.5%、Mn:
0.8〜2.2%、Al:0.01〜0.06%、N
b:0.005〜0.03%、B:0.0005〜0.
0030%を含み、さらにP:0.02%以下、S:
0.003%以下、N:0.005%以下、Ti:0.
015%以下に制限した組成に規定する。また、Cu:
0.05〜0.50%が選択成分として添加される。そ
の場合に、Niを添加することがあるが、Ni:0.1
0%以下とする。
【0015】以下、各元素の限定理由について説明す
る。 C: Cは所望のマルテンサイトを生成させ、目標とす
る強度を確保するために必須な元素である。しかし、含
有量が0.10%未満であると目標とする980N/m
2 以上の強度が得られず、一方、含有量が0.19%
を超えると、引張強度が高くなりすぎるか、あるいは焼
戻し時に析出する炭化物サイズが大きくなり、いずれに
せよ耐水素遅れ割れ特性が劣化する。したがってCの含
有量を0.10〜0.19%とする。
【0016】Si: Siは電縫溶接部の健全性を確保
するために添加され、その効果はその含有量が0.01
〜0.5%で発揮されるため、Siの含有量を0.01
〜0.5%とする。
【0017】Mn: Mnはオーステナイトの焼入れ性
を向上させて所望のマルテンサイトを生成させ、目標と
する強度を確保するために必須な元素である。しかし、
含有量が0.8%未満であると目標とする980N/m
2 以上の強度が得られず、一方、含有量が2.2%を
超えると耐水素遅れ割れ特性が劣化する。したがって、
Mnの含有量を0.8〜2.2%とする。
【0018】Al: Alは脱酸元素として添加され、
また鋼中の不純物として存在するNをAlNとして固定
し、耐水素遅れ割れ特性を向上させる。しかし、その添
加効果は0.01%未満では少なく、一方0.06%を
超えると介在物が増加し、耐水素遅れ割れ特性が劣化す
る。したがってAlの含有量を0.01〜0.06%と
する。
【0019】Nb: Nbは連続焼鈍炉における加熱時
のオーステナイト粒成長を抑制し、マルテンサイト組織
を微細化し、耐水素遅れ割れ特性を向上させる元素であ
る。その添加効果は0.005%以上で認められ、一
方、0.02%を超えて添加しても添加効果が飽和す
る。したがって、Nbの含有量を0.005〜0.02
%とする。
【0020】B: Bは所望のマルテンサイトを生成さ
せ、目標とする強度を確保するために必要な元素であ
る。しかし、添加量が0.0005%未満であると目標
とする980N/mm2 以上の強度が得られず、一方、
添加量が0.0030%を超えても添加効果が飽和す
る。したがって、Bの含有量を0.0005〜0.00
30%とする。
【0021】P: Pは耐遅れ破壊特性を劣化させるた
め、0.02%以下に規制することが必要である。 S: Sは介在物として存在し、耐水素遅れ割れ特性を
劣化させるため、0.003%以下に規制することが必
要である。
【0022】N: Nが0.005%を超えて含まれる
と耐水素遅れ割れ特性が低下するため、0.005%以
下に規制することが必要がある。 Ti: Tiは粗大な窒化物として析出すると、耐水素
遅れ割れ特性を低下させるので、添加しないことが望ま
しい。しかし、固溶NをTiNとして固定し、Bの焼入
れ性を確保するためにやむなく添加する場合には、その
添加量を0.015%以下とする必要がある。
【0023】Cu: Cuは鋼管の腐食の進行を抑制
し、かつ鋼管中への水素の侵入を抑制し、耐水素遅れ割
れ特性を向上させる元素である。その添加効果は0.0
5%以上で認められ、一方0.50%を超えて添加して
も添加効果が飽和する。したがって、Cuを添加する場
合にはその含有量を0.05〜0.50%とする。
【0024】図1にCu添加量と割れ発生限界付加歪み
(Δε)の変化量との関係を示す。この図から、Cu添
加によって割れ発生限界付加歪み(Δε)が増大し、水
素遅れ割れが抑制されることが理解される。
【0025】Ni: Niは鋳造偏析によって局所的な
腐食を助長し、耐水素遅れ割れ特性を低下させるため添
加しないことが望ましい。しかし、熱延時のCu疵を回
避するためにやむなく添加する場合には、含有量を耐水
素遅れ割れ特性の低下が著しくない0.10%以下とす
る。
【0026】図2にNi添加量と割れ発生限界付加歪み
(Δε)の変化量との関係を示す。この図から、Ni添
加によって割れ発生限界付加歪み(Δε)が減少し、水
素遅れ割れが助長されることが理解される。
【0027】(製造条件)上記化学組成の鋼スラブを1
150〜1300℃で均熱した後、このスラブに対して
Ar3 点以上を仕上温度とする熱間圧延を施し、500
〜650℃で巻取って熱延鋼帯とし、この熱延鋼板を酸
洗冷圧後、連続焼鈍炉で800〜900℃に均熱加熱後
急冷し、さらに150〜250℃で焼戻し処理を行い、
得られた鋼板を以下の(1)式を満たす幅絞り率Qで造
管し、80〜100%焼戻しマルテンサイト+残部フェ
ライト組織とする。
【0028】A.熱間圧延条件 a.スラブ加熱温度 スラブ加熱温度はNbを固溶させるために1150℃以
上である必要がある。スラブ加熱温度が1150℃に満
たないと、連続焼鈍炉における加熱時にNbが十分なso
lute drug 効果を発揮しないため、マルテンサイト組織
が微細とはならず、Nb添加による耐水素遅れ割れ特性
の向上効果が得られない。一方、操業性の観点からスラ
ブ加熱温度の上限を1300℃とする。
【0029】b.仕上圧延温度 仕上圧延温度はAr3 点以上である必要がある。仕上圧
延温度がAr3 点以下であると、フェライト変態部での
Nb炭窒化物の歪誘起析出により、連続焼鈍炉における加
熱時にNbが十分なsolute drug 効果を発揮しないた
め、マルテンサイト組織が微細とはならず、Nb添加に
よる耐水素遅れ割れ特性の向上効果が得られない。
【0030】c.巻取温度 巻取温度は500〜650℃とする。巻取温度が650
℃を超えるとNb炭化物が粗大化し、連続焼鈍炉におけ
る加熱時に再固溶せず、十分なsolute drug 効果を発揮
しないため、マルテンサイト組織が微細とはならず、N
b添加による耐水素遅れ割れ特性の向上効果が得られな
い。一方、巻取温度が500℃未満であると熱延鋼帯が
硬質化し、操業上問題となる。
【0031】B.連続焼鈍炉での熱処理条件 a.加熱温度 連続焼鈍炉における加熱温度は800〜900℃とす
る。800℃未満では急冷後に十分な量のマルテンサイ
ト量が得られず、目標とする強度が得られない。一方、
900℃を越えると加熱時のオーステナイト粒粗大化に
より、微細なマルテンサイト組織が得られず、耐水素遅
れ割れ特性が低下する。
【0032】b.焼戻し熱処理条件 加熱−急冷により得られた80〜100%マルテンサイ
ト+残部フェライト組織とされた鋼帯は、150〜25
0℃の温度範囲で焼戻し処理を行う。焼戻し温度150
℃未満ではマルテンサイト変態歪が残存し、造管後の耐
水素割れ性が低下する。一方、焼戻し温度が250℃を
超えると、焼戻しに伴い析出するセメンタイト相が粗大
となり、耐遅れ破壊特性が低下する。
【0033】C.造管条件 電縫溶接−サイジングの造管工程における幅絞りは、鋼
管の耐水素遅れ割れ特性を良好にせしめるための重要な
要件であり、このためには幅絞り率Qを(1)式で示さ
れる範囲内に制御した上で造管を行う。
【0034】 1000≦Q/(t/ D)2 ≦3000……(1) ただし、t(mm):鋼板の板厚、D(mm):電縫鋼管の外
径、Q(%)は幅絞り率で、以下の式(2)で定義され
る。 Q=[{鋼板の幅−π( D−t)} /π(D−t)]×100 ……(2) 図3にQ/(t/ D)2 と水素遅れ割れ発生限界付加歪
みΔεc の関係を示す。本発明者らは造管条件と耐水素
遅れ割れ特性に関する多くの実験的検討を行った結果、
図3に示すように、鋼管の水素遅れ割れ発生限界付加歪
みは幅絞り率Qが1000(t/ D)2 〜3000(t
/ D)2 の間でピークを持ち、幅絞り率をこの範囲に制
御することで優れた耐水素遅れ割れ特性を有する鋼管が
得られることを見出した。この適正幅絞り率は製品( 板
厚/ 外径) 比により異なり、優れた耐水素遅れ割れ特性
を有する鋼管を得るためには( 板厚/ 外径) 比ごとに異
なる幅絞り率をとる必要がある。
【0035】鋼管の耐水素遅れ割れ特性が、幅絞り率Q
=1000(t/ D)2 〜3000(t/ D)2 の間で
ピークを持つ理由は次のように考えられる。すなわち、
幅絞り率が1000(t/ D)2 に満たない場合には、
鋼管の最大残留歪みが増大し、鋼管の耐水素遅れ割れ特
性が劣化し、逆に、幅絞り率が3000( t/ D)2
越える場合には、造管にともない造管圧延集合組織が形
成され、鋼管の耐水素遅れ割れ感受性が高まり鋼管の耐
水素遅れ割れ特性が劣化する。
【0036】なお、水素遅れ割れ発生限界付加歪Δεc
は、電縫鋼管より幅20mmのC−リング試験片を切出
し、切出し前の外径までボルト締めを行い鋼管の残留歪
み相当の歪みを加えた後、さらに以下の(3)式で計算
される付加歪み(Δε)を加えて0.1N塩酸中に20
0時間浸漬し割れ発生有無を調べた際における、割れが
発生する限界の付加歪みを指す。この値を耐水素遅れ割
れ特性の指標とする。すなわち、この値が高いほど耐水
素遅れ割れ特性にとっては好ましい。
【0037】 Δε=(4・106 ・t・δ)/(π・D・(D−t))……(3) ここで、tは板厚、Dは切出し前の鋼管の外径、δはD
−(付加歪み付加後の外径)である。
【0038】以上のような方法によって80〜100%
焼戻しマルテンサイト+残部フェライト組織を形成する
ことにより、耐水素遅れ割れ特性に優れた引張強度98
0N/mm2 以上の電縫鋼管が製造される。
【0039】(2)第2実施形態 (化学組成)引張強度が980N/mm2 以上で、しか
も優れた耐水素遅れ割れ特性を得るために、重量%で、
C:0.10〜0.19%、Si:0.01〜0.5
%、Mn:0.8〜2.2%、Al:0.01〜0.0
6%、Cr:0.05〜0.6%、を含み、P:0.0
2%以下、S:0.003%以下、N:0.005%以
下に制限した組成に規定する。また、Nb:0.005
〜0.03%、V:0.005〜0.03%のうち少な
くとも1種、B:0.0005〜0.0030%、C
u:0.05〜0.50%が選択成分として添加され
る。また、Cuを添加した場合に、Niを添加すること
があるが、Ni:0.30%以下とする。
【0040】以下、各元素の限定理由について説明す
る。C、Si、Mn、Alの限定理由は上記第1実施形
態と同様である。 Cr: Mnとの相互作用により鋼の焼入性を上げ、目
標とする強度を確保するための元素である。その含有量
が0.05%未満であるとその効果が乏しく、一方0.
6%を超えると耐水素遅れ割れ特性が劣化する。したが
って、Crの含有量を0.05〜0.6%とする。
【0041】P、S、Nについては、第1実施形態と同
様の理由で上記範囲に制限される。 Nb、V: Nb,Vはいずれも変態前のオーステナイ
ト粒を微細化し、変態後のマルテンサイトパケットを微
細化することができるので、耐水素遅れ割れ特性の向上
に好ましい元素である。しかし、それぞれ0.005%
未満ではその効果は少なく、一方0.03%を超えて添
加すると、耐水素遅れ割れ特性がかえって劣化する。し
たがって、Nb、Vの含有量をそれぞれ0.005〜
0.03%とする。
【0042】B: Bは所望のマルテンサイトを生成さ
せ、目標とする強度を確保するために必要に応じて添加
される。しかし、添加量が0.0005%未満であると
目標とする980N/mm2 以上の強度が得られず、一
方添加量が0.0030%を超えても添加効果が飽和す
る。したがって、Bの含有量を添加する場合には0.0
005〜0.0030%とする。
【0043】Cuについは、第1実施形態と同様の理由
で添加する場合には0.05〜0.50%の範囲とす
る。Cu量を増加すると、場合によってはCu疵と呼ば
れる表面欠陥が発生することがあり、これはNi添加に
よって防止することができるが、Niは耐水素遅れ割れ
特性にとって有害な元素であるため、その添加量を0.
3%以下に制限されることが好ましい。
【0044】(製造条件)上記組成の鋼スラブに対し、
その鋼のAr3 変態点の温度をTAr3 としたとき、仕
上げ温度Tfが(TAr3 +30)〜(TAr3 +10
0)℃の温度範囲になるように仕上げ温度Tfを制御し
て熱間圧延を施し、その熱間圧延の際に、Tf〜(Tf
+30)℃の温度範囲で30%以上の圧下率を与え、熱
間圧延後直ちに60〜200℃/secの冷却速度で1
50〜250℃の温度範囲の温度Tcまで冷却した後、
150℃以上Tc以下の温度範囲に2秒以上滞留させ、
150℃未満の温度で巻取って熱延鋼板とし、この熱延
鋼板を上記(1)式を満たす幅絞り率Qで造管する。
【0045】A.熱延条件 a.仕上温度 仕上げ温度Tfは(TAr3 +30)〜(TAr3 +1
00)℃の温度範囲とする。仕上温度が(TAr3 +3
0)℃未満であると、980N/mm2 以上の強度を得
るためのマルテンサイトの体積率が得られない。一方、
(TAr3 +100)℃を超えると、マルテンサイトパ
ケットが粗大化し、耐水素遅れ割れ特性が低下する。
【0046】b.圧下条件 マルテンサイトを微細にし、耐水素遅れ割れ特性を良好
にするためには、熱間圧延終了直前における強圧下が必
要である。このため、Tf〜(Tf+30)℃の温度範
囲で30%以上の圧下率を与えて熱間圧延を行う。
【0047】B.熱間圧延後の冷却条件 熱間圧延後直ちに60〜200℃/secの冷却速度で
150〜250℃の温度範囲のTcまで急冷する。これ
により980N/mm2 以上の強度を得るためのマルテ
ンサイト体積率を確保することができる。冷却速度が6
0℃/sec未満であると所望の体積率のマルテンサイ
トを得ることができない。また冷却速度が200℃/s
ecを超えると操業上のトラブルを生じる。冷却停止温
度については250℃よりも高いと所望の体積率のマル
テンサイトが得られない。
【0048】このように急冷した後は、150℃以上T
c以下の温度範囲に2秒以上滞留させる。これにより、
硬質な焼戻しマルテンサイトが生成される。図4に急冷
された鋼板を150〜250℃の温度範囲で保持したと
きの保持時間と水素遅れ割れ発生限界付加歪みΔεとの
関係を示す。この図から、2秒以上の保持によって安定
して2000μmに近い高い水素遅れ割れ発生限界付加
歪みΔεc が得られることがわかる。2秒未満では焼入
れ歪みが残存するため、1900μm以上の高いΔεc
を安定して得ることができない。
【0049】C.巻取温度 巻取は150℃未満の温度で行う。この温度が150℃
以上では、硬質な焼戻しマルテンサイト相とならず、9
80N/mm2 以上の強度が得られない。
【0050】D.造管条件 以上のような条件で製造された熱延鋼板を用いて超高張
力電縫鋼管に造管するが、その際に、上記第1実施形態
と同様、上記(1)式を満たす必要がある。
【0051】(3)第3実施形態 (化学組成および組織)引張強度が980N/mm2
上で、しかも優れた耐水素遅れ割れ性および耐食性を得
るために、C:0.13〜0.19%、Mn:1.0〜
2.0%、Cu:0.05〜0.50%を含有する組成
を有し、焼入れ熱処理によって得られた80〜100%
のマルテンサイトあるいは焼戻しマルテンサイト組織と
する。また、Ni、Moを添加する場合にはNi:0.
1%以下、Mo:0.3%以下に制限される。
【0052】以下、各元素の限定理由について説明す
る。 C: Cは所望のマルテンサイトを生成させ、目標とす
る強度を確保するために必須な元素である。しかし、含
有量が0.13%未満であると目標とする1180N/
mm2 以上の強度が得られず、一方、含有量が0.19
%を超えると、水素遅れ割れ、あるいは腐食による管体
強度低下が助長され、耐久性が劣化する。したがってC
の含有量を0.13〜0.19%とする。
【0053】Mn: Mnは所望のマルテンサイトを生
成させ、目標とする強度を確保するために必須な元素で
ある。しかし、含有量が1.0%未満であると目標とす
る1180N/mm2 以上の強度が得られず、一方、含
有量が2.0%を超える耐水素遅れ割れ、あるいは腐食
特性が劣化する。したがって、Mnの含有量を1.0〜
2.0%とする。
【0054】Cu: Cuは鋼管の水素遅れ割れ感受性
を低め、さらに腐食による管体強度低下の進行を抑制
し、超高張力電縫鋼管の耐久性を向上させる元素であ
る。その添加効果は0.05%以上で認められ、一方
0.50%を超えて添加しても添加効果が飽和する。し
たがって、Cuを添加する場合にはその含有量を0.0
5〜0.50%とする。
【0055】図5にCu添加量と腐食試験後の残留強度
率との関係を示す。この図からCu添加によって残留強
度率が増大し、鋼管の耐久性が増加することが理解され
る。なお、残留強度率は以下の式で表わすことができ
る。
【0056】残留強度率(%)={浸漬試験後のTS
(N/mm2 )/浸漬試験前のTS(N/mm2 )}×
100 ここで、 浸漬試験前のTS(N/mm2 )=浸漬試験前の引張破
断荷重(N)/浸漬試験前の管断面積(mm2 ) 浸漬試験後のTS(N/mm2 )=浸漬試験後の引張破
断荷重(N)/浸漬試験前の管断面積(mm2 ) である。
【0057】Ni: Niは鋳造偏析によって局所的な
腐食を助長し、耐水素遅れ割れ特性を低下させるため添
加しないことが望ましい。しかし、熱延時のCu疵を回
避するためにやむなく添加する場合には、含有量を残留
強度率の低下が著しくない0.10%以下とする。
【0058】Mo: Moは鋳造偏析によって局所的な
腐食を助長し、耐水素遅れ割れ特性を低下させるため添
加しないことが望ましい。しかし、焼入れ性を確保する
ためにやむなく添加する場合には、含有量を残留強度率
の低下が著しくない0.30%以下とする。
【0059】図6にNi添加量と腐食試験後の残留強度
との関係を示し、図7にMo添加量と腐食試験後の残留
強度率との関係を示す。これらの図から0.1%以下の
Niおよび0.3%以下のMoの添加によって残留強度
率が減少し、鋼管の耐久性が低下することが理解され
る。
【0060】これら以外の元素は、鋼管の耐久性、すな
わち耐水素遅れ割れ性および耐食性に対し、特に大きな
影響を及ぼさず、したがってSi、P、Al、Nb、
B、Ti、Crなどの合金添加元素を他の目的に従って
通常量適宜添加することは許容される。
【0061】以上の組成を有する鋼を焼入れ熱処理して
80〜100%のマルテンサイトあるいは焼戻しマルテ
ンサイト組織とする。以上のような組成および組織とす
ることにより、引張強度980N/mm2 以上で、耐久
性、すなわち耐水素遅れ割れ性および耐食性に優れた超
高張力電縫鋼管が得られる。
【0062】(製造条件)この第3実施形態に係る電縫
鋼管を製造するに際しては、焼入れ熱処理によって80
〜100%のマルテンサイトあるいは焼戻しマルテンサ
イト組織が得られれば、その製造方法は限定されず、上
記第1実施形態、第2実施形態の製造条件で製造するこ
ともできる。
【0063】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 (実施例1)表1に示すA〜Fの6種の鋼を溶製し、表
2に示すように本発明で規定した熱延条件、連続焼鈍炉
における熱処理条件、造管条件にて31.8mmφ×
1.6mmtの電縫鋼管を作製した。
【0064】これらの鋼管の引張強度、三点曲げ最大荷
重を測定するとともに、耐水素遅れ割れ試験を実施し
た。三点曲げ試験は押し金具半径=152mm、支持ス
パン=600mmで行った。耐水素遅れ割れ試験は、鋼
管より幅20mmのC−リング試験片を切出し、切出し
前の外径までボルト締めを行い鋼管の残留歪み相当の歪
みを加えた後、さらに上記(3)式で計算される付加歪
み(Δε)を加えて0.1N塩酸中に200 時間浸漬し割
れ発生有無を調べ、割れ発生限界付加歪みを耐水素遅れ
割れ特性の指標とした。結果を表3に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】表3から理解されるように、本発明で規定
する組成を満足する鋼A〜Eは比較鋼Fに比べ、割れ発
生限界歪みが高く、優れた耐水素遅れ割れ特性を示すこ
とが確認された。
【0069】(実施例2)前記した鋼A〜Eを用いて表
4に示すような熱延条件、連続焼鈍炉における熱処理条
件、造管条件、( 板厚/ 外径) 比を種々変化させて電縫
鋼管に造管した。これらの機械特性、耐水素遅れ割れ試
験結果を表5に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】表5から理解されるように、熱延条件、連
続焼鈍炉における熱処理条件、造管条件が本発明で規定
した条件を満たしている実施例の電縫鋼管は、引張強度
が980N/mm2 以上でかつ割れ発生限界歪みが高
く、優れた耐水素遅れ割れ特性を有することが確認され
た。
【0073】(実施例3)表6に示すG〜Lの6種の鋼
を溶製し、表7に示すように本発明で規定した熱延条件
および造管条件にて34.8mmφ×2.3mmtの電
縫鋼管を作製した。そして、これら鋼管の引張強度およ
び耐水素割れ特性の指標である水素遅れ割れ発生限界付
加歪みΔεc を測定した。結果を表8に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】表8に示すように、本発明で規定する組成
を満足する鋼G〜Jは、いずれも980N/mm2 以上
の強度を示し、かつ1900μm以上の高い水素遅れ割
れ発生限界付加歪みΔεc が安定して得られた。また、
組織的には表7に示すように100%焼戻しマルテンサ
イトであった。一方、C量が本発明で規定する範囲を外
れる鋼Lは、強度上の問題はないが、水素遅れ割れ発生
限界付加歪みΔεc が著しく低く、耐水素遅れ割れ特性
が劣ることが確認された。
【0078】(実施例4)表6の鋼G〜Lを用いて表9
に示すように熱延条件および造管条件を種々変化させて
電縫鋼板を作製し、これら鋼管の引張強度および耐水素
割れ特性の指標である水素遅れ割れ発生限界付加歪みΔ
εc を測定した。結果を表10に示す。
【0079】
【表9】
【0080】
【表10】
【0081】表10に示すように、熱延条件、造管条件
が本発明の範囲内にある電縫鋼管は、引張強度が980
N/mm2 で、かつ1900μm以上の高い水素割れ発
生限界歪みΔεc が安定して得られる。また、組織的に
は表9に示すように80%以上の焼戻しマルテンサイト
とフェライトからなる複合組織であった。一方、熱処理
条件、造管条件が本発明の範囲外の試料では、引張強度
が不足したり、水素遅れ割れ発生限界付加歪みΔεc
950μmと低く、かつ安定したΔεc の値が得られな
かった。
【0082】(実施例5)表11に示すM〜Sの7種の
鋼を溶製し、表12に示す方法で31.8mmφ×1.
6mmtの電縫鋼管を作製した。これらの鋼管を0.1
N塩酸中に200時間浸漬し、浸漬前後で引張試験を行
い残留強度率を求め、耐久性の指標とした。なお、残留
強度率(%)は前述した方法で求めた。その結果を表1
3に示す。
【0083】
【表11】
【0084】
【表12】
【0085】
【表13】
【0086】表13から明らかなように、鋼組成と組織
とにおいて本発明で規定された条件を満たしている発明
例の電縫鋼管は引張強度が1180N/mm2 以上でか
つ残留強度率が高く、優れた耐久性を有することが確認
された。
【0087】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ドアインパクトビームなどの自動車部品、機械構造用部
材、土木建築用部材に用いられる引張強度980N/m
2 以上の耐水素遅れ割れ特性に優れた構造用超高張力
電縫鋼管を、低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cu添加量と割れ発生限界付加歪み変化量との
関係を示す図。
【図2】Ni添加量と割れ発生限界付加歪み変化量との
関係を示す図。
【図3】Q/(t/ D)2 と水素遅れ割れ発生限界付加
歪みとの関係を示す図。
【図4】150〜250℃の温度範囲における保持時間
と水素遅れ割れ発生限界付加歪みΔεc との関係を示す
図。
【図5】Cu添加量と腐食試験後の残留強度率の関係を
示す図。
【図6】Ni添加量と腐食試験後の残留強度率の関係を
示す図。
【図7】Mo添加量と腐食試験後の残留強度率の関係を
示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/00 - 8/10 C22C 38/00 - 38/60

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.10〜0.19%、
    Si:0.01〜0.5%、Mn:0.8〜2.2%、
    Al:0.01〜0.06%、Cr:0.05〜0.6
    %、P:0.02%以下、S:0.003%以下、N:
    0.005%以下、残部Fe及び不可避的不純物からな
    鋼スラブに対し、前記鋼のAr3 変態点の温度をTA
    3 としたとき、仕上げ温度Tfが(TAr3 +30)
    〜(TAr3 +100)℃の温度範囲になるように仕上
    げ温度Tfを制御して熱間圧延を施し、その熱間圧延の
    際に、Tf〜(Tf+30)℃の温度範囲で30%以上
    の圧下率を与え、熱間圧延後直ちに60〜200℃/s
    ecの冷却速度で150〜250℃の温度範囲の温度T
    cまで冷却した後、150℃以上Tc以下の温度範囲に
    2秒以上滞留させ、150℃未満の温度で巻取って熱延
    鋼板とし、この熱延鋼板を以下の(1)式を満たす幅絞
    り率Qで造管することを特徴とする超高張力電縫鋼管の
    製造方法。 1000≦Q/(t/ D)2 ≦3000……(1) ただし、t(mm):鋼板の板厚、D(mm):電縫鋼管の外
    径、Q(%)は幅絞り率で、以下の式(2)で定義され
    る。 Q=[{鋼板の幅−π( D−t)} /π(D−t)]×100 ……(2)
  2. 【請求項2】 さらに、重量%で、Nb:0.005〜
    0.03%、V:0.005〜0.03%のうち少なく
    とも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の
    超高張力電縫鋼管の製造方法。
  3. 【請求項3】 さらに、重量%で、B:0.0005〜
    0.0030%を含有することを特徴とする請求項1ま
    たは請求項2に記載の超高張力電縫鋼管の製造方法。
  4. 【請求項4】 さらに、重量%で、Cu:0.05〜
    0.50%を含有することを特徴とする請求項1ないし
    請求項3のいずれか1項に記載の超高張力電縫鋼管の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 さらに、重量%で、Ni:0.3%以下
    であることを特徴とする請求項4に記載の超高張力電縫
    鋼管の製造方法。
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