JP3375894B2 - 高Crフェライト系耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用ワイヤ - Google Patents

高Crフェライト系耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用ワイヤ

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、フェライト系耐熱
鋼用ガスシールドアーク溶接用ワイヤに関し、特に、9
乃至12%のCrを含有する低合金鋼を対象として高温
におけるクリープ強度と靭性に優れた溶接金属が得られ
るガスシールドアーク溶接用ワイヤに関する。 【0002】 【従来の技術】従来、火力発電用ボイラの主蒸気管又は
過熱器等に用いられる材料は、フェライト系耐熱鋼であ
るCr−Mo鋼が使用されており、溶接材料にも同鋼材
料が適用されてきた。近年、特筆すべき事項として、こ
れらの材料分野における運転(蒸気)条件の高温・高圧
化に対応できることを要求する動きが挙げられる。これ
は、省エネルギーの観点から発電効率の向上を狙いとし
ており、CO2排出量の削減を考慮した動きとも言え
る。なお、高い高温強度を有する材料としてオーステナ
イト系ステンレス鋼も挙げられるが、熱膨張率、熱伝導
度、応力腐食割れ等の点で劣っているため、高Crフェ
ライト系耐熱鋼の採用が不可欠であり、要求も強い。 【0003】この高Crフェライト系耐熱鋼において、
高温・高強度を達成するためには9乃至12重量%のC
rの含有量が、現時点で最大適正量である。これらのC
rの量により、高温・高強度(クリープ強度)及び耐食
性にも優れた溶接金属を得ることができる。しかし、ク
リープ強度を高める効果を有する一方で、一般的に靭性
は低下する傾向にある。そのため、これらの鋼種におい
て、クリープ強度と靭性を両立させるために、これまで
多くの溶接材料が提案されている。例えば、9%Crー
1%Mo鋼用溶接用ワイヤとして、特開平7−9639
0号公報等が開示されている。これは、C、Si、M
n、Cr、Mo、Ni、Nb、V、N、O、Al及びT
aのワイヤの成分を規制してクリープ強度及び靭性の向
上を図っている。 【0004】また、9乃至12%Cr鋼用被覆アーク溶
接棒として、特開平7−164182号公報が開示され
ている。これは、C、Si、Mn、V、Nb、N、C
r、Mo、W、Ni及びCuのワイヤの成分を規制して
クリープ強度、靭性及び耐割れ性の向上を図っている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
9%Crー1%Mo鋼用溶接用ワイヤ及び被覆アーク溶
接棒では、近年の9乃至12%Cr鋼用溶接材料として
求められる高い靭性とクリープ強度の性能を、十分満足
していると言えない。靭性、クリープ強度及びSR条件
にも大きく依存するため、実用化に当たっては安全性を
考慮して、より、高性能の溶接金属が求められている。 【0006】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、フェライト系耐熱鋼用ガスシールドアーク
溶接用ワイヤに関し、主に9乃至12%のCrを含有す
る低合金鋼を対象として高温におけるクリープ強度及び
靭性に優れた溶接金属が得られるガスシールドアーク溶
接用ワイヤを提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】ワイヤ全重量当たり、C
を0.08乃至0.15重量%、Siを0.05乃至
0.30重量%、Mnを0.20乃至0.70重量%、
Cuを0.10乃至1.20重量%、Niを0.20乃
至1.20重量%、Crを9.0乃至13.0重量%、
Moを0.30乃至0.70重量%、Vを0.10乃至
0.50重量%、Nbを0.02乃至0.07重量%、
Wを1.0乃至2.0重量%、Nを0.080重量%を
超え0.15重量%以下含有し、残部がFe及び不可避
的不純物からなると共に、前記Wと、Cu及びNとの重
量比W/(Cu+N)が1.0乃至6.0であることを
特徴とする。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明者等は前記のような解決す
べき課題の下で、クリープ強度、靭性に優れた溶接金属
が得られると共に、良好な溶接作業性を有するガスシー
ルドアーク溶接用ワイヤを開発すべく、ワイヤの化学成
分、また溶接金属の機械的性能、析出物、組織等の調査
・検討を行った。その結果、以下のことを確認した。 (1)クリープ強度は、ラーベス相量の増加に伴い、向
上する。 (2)靭性はδフェライトの析出量とA1変態点に大き
く依存する。 【0009】(1)については析出物の成分をなすC、
Cr、V、W、Nb、N等の含有量の影響を調査した。
そして、その中でもWが比較的靭性を損なわずにラーベ
ス相量を増加させ、クリープ強度を向上させることを見
出した。 【0010】また、(2)については、SR時に回復を
促進させるN、Cuを活用した。ただ、これらの元素は
オーステナイト生成作用によるδフェライトを抑制する
効果を有するが、A1点を低下させるため、ある一定量
を超えるとSR時に逆変態(SR温度がA1点を超える
こと)を起こし、靭性劣化を引き起こす。そのため、A
1点がSR温度直上になるような含有量として、下記の
数式1を見出している(図1参照)。 【0011】 【数1】1.0≦W/(Cu+N)≦6.0 この範囲であれば、上記(1)と(2)を両立させクリ
ープ強度と靭性が得られることを見出した。 【0012】以下に各元素の範囲設定の理由について詳
細に説明する。 【0013】C:0.08乃至0.15重量% Cはオーステナイト安定化元素の1つであり、溶接金属
の強度を向上させる効果を持ち、また低靭性の原因とな
るδフェライトの抑制作用を有する。そのためCが0.
08重量%未満ではこれらの効果が確保できず、0.1
5重量%を超えると耐力の上昇による靭性及び耐割れ性
の劣化を引き起こす。 【0014】Si:0.05乃至0.30重量% Siは脱酸剤としての効果と、クレータの形成に大きく
影響を与え、立向上進溶接には不可欠の成分であり、ま
た強度を上昇させる。Siが0.05重量%未満ではそ
の効果が発揮されず0.30重量%を超えると過剰な強
度上昇を生じ靭性を著しく劣化させる。 【0015】Mn:0.20乃至0.70重量% Mnは溶接金属の強度を向上させる効果を持つが、同時
にSR時の回復促進作用により、靭性を著しく改善させ
る効果を有する。Mnが0.20重量%未満ではこれら
の効果が発揮されず0.70重量%を超えるとクリープ
強度の劣化を引き起こす。 【0016】Cu:0.10乃至1.20重量% Cuはオーステナイト安定化元素としてδフェライトを
抑制し、靭性を維持する効果を有する。Cuが0.10
重量%未満ではその効果が発揮されず、1.20重量%
を超えるAl点の大きな低下により靭性を劣化させる。 【0017】Ni:0.20乃至1.20重量% NiはMnと同様に靭性を得るためには不可欠な成分で
ある。Niが0.20重量%未満ではその効果が発揮さ
れず、1.20重量%を超えるとクリープ強度を劣化さ
せる。 【0018】Cr:9.0乃至13.0重量% Crは溶接金属の耐酸化性、耐食性を向上させると共
に、固溶強化によるクリープ強度を維持する効果を有す
る。Crが9.0重量%未満ではその効果が発揮され
ず、13.0重量%を超えるとδフェライトの析出によ
り靭性を劣化させる。 【0019】Mo:0.30乃至0.70重量% MoはCrと同様に、固溶強化及びクリープ温度で粒界
に析出するラーベス相を強化し、クリープ強度を維持す
る効果を有する。Moが0.30重量%未満ではその効
果が発揮されず、0.70重量%を超えると強度の上昇
により靭性を劣化させる。 【0020】V:0.10乃至0.50重量% VはMをV又はV及び後述するNbとし、Xを炭素及び
/又は窒素としてMXで表わされる炭窒化物として析出
し、炭窒化物MXの安定化に寄与し、クリープ強度を維
持する効果を有する。Vが0.10重量%未満ではその
効果が発揮されず、0.50重量%を超えると靭性を劣
化させる。 【0021】Nb:0.02乃至0.07重量% NbはMをNb又はNb及び前述のVとし、Xを炭素及
び/又は窒素としてMXで表わされる炭窒化物として析
出し、この炭窒化物MXを安定、微細化させ、クリープ
強度を著しく改善する効果を有する。Nbが0.02重
量%未満ではその効果が発揮されず、0.07重量%を
超えると強度の上昇と共に、靭性劣化を引き起こす。 【0022】W:1.0乃至2.0重量% WはMoと同様に、固溶強化及びクリープ温度で粒界に
析出するラーベス相を強化しクリープ強度を維持する効
果を有する。Wが1.0重量%未満ではその効果が発揮
されず、2.0重量%を超えると強度の上昇とδフェラ
イトの析出により靭性を劣化させる。 【0023】N:0.080重量%を超えて0.15重
量%以下 Nは前述のV及び/又はNbの炭窒化物MXの主成分と
して、クリープ強度を維持する効果を有する。Nが0.
080重量%以下ではその効果が発揮されず、0.15
重量%を超えると靭性を劣化させる。これらのN、V及
びNbの3成分の添加の総合的な効果としてクリープ強
度の維持改善効果が得られる。 【0024】W/(Cu+N):1.0乃至6.0 Wと、Cu及びNとの重量比を示すW/(Cu+N)に
おいて、上辺のフェライト生成元素であるWはラーベス
相の増加作用により、下辺のオーステナイト生成元素の
内Nは炭窒化物MXの主成分としてクリープ強度を維持
する効果を有する。また、Cuは強いオーステナイト安
定化作用を有しており、靭性を劣化させるδフェライト
を抑制する効果を有する。このため、これらの3元素の
強化作用により、クリープ強度と靭性のバランスを良好
なものにできる範囲として、Wと、Cu及びNとの重量
比を1.0乃至6.0の範囲とする。Wと、Cu及びN
との重量比が1.0乃至6.0を外れると靭性又はクリ
ープ強度が大きく劣化する。 【0025】なお、不可避的成分であるP、S等の不純
物はできるだけ抑えることが望ましい。また、本発明の
構成によれば、適用する溶接方法はTIG溶接が望まし
いが、Ar+CO2等を用いたMAG溶接においても良
好な性能が得られる。 【0026】次に本発明の実施例を示す。 【0027】 【実施例】表l乃至表4に示す化学成分のTIG溶接用
ワイヤ(1.6mmφ)を作製後、溶接試験を実施し
た。溶接は、これらのワイヤを用いてASTMA387
−Gr91鋼板(板厚20mm、V開先)を、溶接入
熱:18kJ/cm(250A−12V‐10cm/m
in狙い)、ワイヤ送給速度10g/min、姿勢:下
向、予熱・パス間温度:200乃至250℃、シールド
・ガス:Arで自動溶接を行った。 【0028】その後、この試験板を740℃に8時間加
熱する熱処理(昇温・冷却:≦50℃/h)を行い、シ
ャルピー衝撃試験片(JIS Z3111 4号)、ク
リープ試験片(JIS Z2272)を採取し、各規格
に準じて試験に供した。なお、図1、表5及び表6に示
す数値は、両試験共、試験片を各3本ずつ採取・供試し
た平均値を示している。ぞれぞれの試験は、シャルピー
衝撃試験は温度0℃で、クリープ試験は温度及び応力が
夫々650℃及び125N/mm2の条件で行った。 【0029】上記試験における判定値を設定した。シャ
ルピー衝撃試験では、衝撃エネルギを50(J)とし、
クリープ試験においては、破断時間を300(h)とし
た。総合判定は、シャルピー及びクリープ試験共に、判
定値を超えるものを○とし、どちらか一方でも、判定値
を下回るものを×とした。 【0030】 【表1】【0031】 【表2】 【0032】 【表3】 【0033】 【表4】【0034】 【表5】 【0035】 【表6】 【0036】上記表1及び表2に示すように、供試ワイ
ヤの組成が本発明の特許請求の範囲にあるワイヤNo.
Wl乃至No.W5は、表5及び図1の領域Aに示すよ
うに、いずれも靭性、クリープ強度、溶接作業性が良好
であった。一方、上記表3及び表4に示すように、供試
ワイヤの組成が本発明の特許請求の範囲外にある供試ワ
イヤNo.C1乃至No.C24の比較例は、表5及び
表6並びに図1の領域B及び領域Cに示すように、これ
らの性能について満足し得ない。 【0037】すなわち、No.C1は、Cが0.07重
量%と少ないため低靭性でクリープ破断時間も短く、N
o.C2は、Cが0.16重量%と多すぎるため靭性が
劣化した。No.C3は、Siが0.04重量%と少な
いためクリープ破断時間が短く、No.C4は、Siが
0.32重量%と多すぎるために靭性が劣化した。N
o.C5は、Mnが0.18重量%と少ないために靭性
が劣化し、No.C6は、Mnが0.71重量%と多す
ぎるためにクリープ強度が劣化した。 【0038】No.C7は、Cuが0.08重量%と少
ないため靭性が劣化し、No.C8はCuが1.22重
量%と多すぎるために靭性が劣化した。No.C9は、
Niが0.18重量%と少ないため靭性が劣化し、N
o.C10は、Niが1.22重量%と多すぎるために
クリープ強度が劣化した。No.C11は、Crが8.
8重量%と少ないためにクリープ強度が劣化し、No.
C12は、Crが13.2重量%と多すぎるために靭性
が劣化した。No.C13は、Moが0.27重量%と
少ないためにクリープ強度が劣化し、No.C14、M
oが0.73重量%と多すぎるために靭性が劣化した。
No.C15は、Vが0.08重量%と少ないためにク
リープ強度が劣化し、No.C16は、Vが0.52重
量%と多すぎるために靭性が劣化した。No.C17は
Nbが0.01重量%と少ないためにクリープ強度が劣
化し、No.CI8は、Nbが0.08重量%と多すぎ
るために靭性が劣化した。No.C19は、Wが0.9
6重量%と少ないためにクリープ強度が劣化し、No.
C20は、Wが2.04重量%と多すぎるため靭性が劣
化した。No.C21は、Nが0.078重量%と少な
いためにクリープ強度が劣化し、No.C22は、Nが
0.155重量%と多すぎるために靭性性が劣化した。
No.C23は、W/(Cu+N)が0.9と少ないた
めに靭性とクリープ強度が劣化し、No.C24は、W
/(Cu+N)が6.2と多すぎるために靭性が劣化し
た。 【0039】 【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、ガ
スシールドアーク溶接において、高Crフェライト系耐
熱鋼用溶接材料して優れた靭性、クリープ性能を有する
溶接金属が得られる。 【0040】従って、各種発電ボイラ、化学圧力容器の
安全性と耐久性に寄与する効果は顕著である。
【図面の簡単な説明】 【図1】W、Cu及びNとの重量比W/(Cu+N)と
クリープ強度及び靭性の関係を示す図である。 【符号の説明】 A;特許請求の範囲 B、C;特許請求の範囲外
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−294793(JP,A) 特開 平8−187592(JP,A) 特開 平7−268563(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/30

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ワイヤ全重量当たり、Cを0.08乃至
    0.15重量%、Siを0.05乃至0.30重量%、
    Mnを0.20乃至0.70重量%、Cuを0.10乃
    至1.20重量%、Niを0.20乃至1.20重量
    %、Crを9.0乃至13.0重量%、Moを0.30
    乃至0.70重量%、Vを0.10乃至0.50重量
    %、Nbを0.02乃至0.07重量%、Wを1.0乃
    至2.0重量%、Nを0.080重量%を超え0.15
    重量%以下含有し、残部がFe及び不可避的不純物から
    なると共に、前記Wと、Cu及びNとの重量比W/(C
    u+N)が1.0乃至6.0であることを特徴とする高
    Crフェライト系耐熱鋼用ガスシールドアーク溶接用ワ
    イヤ。
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