JP3529520B2 - フェライト系ステンレス鋼の延性低下割れを防止する溶接方法 - Google Patents
フェライト系ステンレス鋼の延性低下割れを防止する溶接方法Info
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Description
ンレス鋼の溶接熱影響部の延性低下割れを防止する溶接
方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】フェライト系ステンレス鋼は、オーステ
ナイト系ステンレス鋼よりも熱膨張係数が小さく、加熱
・冷却の繰り返される用途に有利であること、応力腐食
割れが発生しないこと、比較的安価であることから、自
動車排ガス経路部材、各種プラント材、建材などの様々
な分野で使用されている。これらの用途には、溶接施工
が頻繁に行われる。 【0003】フェライト系ステンレス鋼の溶接上の問題
として、溶接部および熱影響部の結晶粒粗大化による
靱性低下、熱影響部の鋭敏化による耐食性の低下、
溶接施工時の高温割れ、などが挙げられる。これらの問
題に対しては、従来からいくつかの対策が採られてお
り、例えば、に対しては母材および溶接心線に結晶粒
の粗大化を抑制する合金元素を添加すること、に対し
てはNb,Tiなどを含む安定化鋼の使用、に対して
は高温割れ感受性を高めるP,Sなどの合金元素の低
減、などが図られてきた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、の割れに
は、溶接金属に発生するものばかりでなく、溶接施工方
法によっては熱影響部に発生することもある。この溶接
熱影響部に発生する割れは、液化割れと延性低下割れに
分類できる。前者は粒界に偏析した低融点の化合物が加
熱によって液化して割れに至るものであり、後者は材料
そのものの延性が低下する温度域で割れに至るものであ
る。液化割れに対しては上述のの対策にて、ある程度
防止することが可能であるが、延性低下割れに対して
は、割れを防止する有効な解決手段が明らかにされてい
ないのが実情である。 【0005】本発明の目的は、フェライト系ステンレス
鋼の溶接時に発生することのある延性低下割れを再現性
良く防止するための溶接方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者らは、溶接熱サイクル再現装置を用いた引
張試験により延性低下割れの発生する温度域を明らかに
するとともに、実溶接により延性低下割れが発生する条
件を詳細に検討した。その結果、延性低下割れはフェラ
イト系ステンレス鋼の融点直下の非常に狭い温度域で起
こること、これを安定して防止するには溶接中の溶接部
裏面の最高到達温度および溶接部の溶け込み率を規制す
る必要があることを知見し、本発明に至った。 【0007】すなわち、本発明は、質量%において、
C:0.03%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0
%以下、Cr:5.0〜30.0%、N:0.03%以下
を含有し、かつ、Nb:0.05〜1.0%、Ti:0.
05〜1.0%、Mo:0.05〜3.0%、Cu:0.0
2〜1.0%の1種または2種以上を含有し、残部がF
eおよび製造上の不可避的な不純物からなるフェライト
系ステンレス鋼の溶接において、溶接中の溶接部裏面の
最高到達温度を当該鋼の融点より100℃以上低い温度
とし、かつ、下記(1)式で定義される溶け込み率
(%)を20〜80%の範囲とする、フェライト系ステ
ンレス鋼の溶接熱影響部の延性低下割れを防止する溶接
方法を提供する。 溶け込み率(%)=溶け込み深さ/当該被溶接母材の厚さ×100…(1) ここで、溶け込み深さとは、被溶接母材の溶けた部分の
最頂点(最深部)と溶接する面の表面との距離と定義す
る。 【0008】 【発明の実施の形態】以下に、本発明を特定するための
事項について、限定理由を説明する。 【0009】CとNは、一般的には高温での強度を高め
るためには重要な元素である。しかし、含有量が多くな
ると加工性および低温靱性の低下をきたすので、それぞ
れ0.03%以下とする。 【0010】Siは、耐高温酸化性を改善する元素であ
る。しかし、過剰に添加すると硬質になり、加工性およ
び靱性の劣化をもたらすので、2.0%以下とする。 【0011】Mnは、表層酸化物の密着性を著しく改善
するため、耐熱用途には積極的に添加する場合がある。
しかし、過剰に添加すると耐食性を劣化させるととも
に、硬質となり、低温靱性や加工性を低下させるので、
2.0%以下とする。 【0012】Crは、耐食性および耐高温酸化性を付与
するために有効な元素であり、5.0%以上の添加を必
要とする。一方、過剰に添加すると鋼の脆化を招き、ま
た、硬質となって加工性を劣化させる他、原料価格が高
くなる。したがって、Crの範囲は、5.0〜30.0%
とする。 【0013】Nbは、高温強度の上昇に有効に作用す
る。高温強度を上昇させるためには少なくとも0.05
%以上添加する必要がある。一方、Nbを過剰に添加す
ると低温靱性や加工性の低下を招く。高温強度を維持
し、かつ低温靱性や加工性低下にあまり影響を及ぼさな
いように、Nbの範囲は0.05〜1.0%とする。 【0014】Tiは、鋼板のr値を向上させ、深絞り性
の向上に有効な元素である。その効果を発揮させるため
には0.05%以上の添加を必要とする。しかし、過剰
に添加するとTiNを生成しやすく、鋼板におけるヘゲ
疵の発生による歩留低下を招くとともに、溶接性を劣化
させる原因ともなる。したがって、Tiの範囲は0.0
5〜1.0%とする。 【0015】Moは、耐食性、耐酸化性および高温強度
の改善に有効な元素である。これらの効果を発揮させる
ためには0.05%以上の添加を必要とする。しかし、
過剰に添加すると鋼の脆化を招く。したがって、Moの
範囲は0.05〜3.0%とする。 【0016】Cuは、低温靱性と加工性の両方を向上さ
せるのに有効な元素である。その効果は0.02%の添
加で顕著となる。しかし、多量に添加すると加工性を阻
害する。したがって、Cuの範囲は0.02〜1.0%と
する。 【0017】溶接部裏面の最高到達温度は、延性低下割
れを防止するうえで最も重要な因子である。本発明者ら
は、以下の試験研究を重ねた結果、溶接部裏面の最高到
達温度を融点より100℃以上低い温度とすることを規
定した。 【0018】現実に熱影響部で発生した延性低下割れの
破面について、いくつかの事例を調査してみると、いず
れの破面も粒界破壊の破面であり、しかも粒界は液化し
ていないことが判った。そこで、まず、各種のフェライ
ト系ステンレス鋼を用いて、延性低下割れ破面の再現を
試みた。図1に、SUS429相当鋼,SUS444相
当鋼,SUS430J1L相当鋼を用いて、溶接熱サイ
クル再現装置にて高温引張試験を行った後の板幅の減少
率と引張試験温度との関係を示す。1000℃から14
00℃までは、いずれの鋼も良好な延性を示しているこ
とがわかり、この温度範囲では、仮に溶接中熱影響部に
引張応力が加わったとしても、延性的に変形するものと
考えられる。一方、1400℃を越えると延性は急激に
低下する。そして、1440℃以上では粒界破壊を呈す
るようになる。この粒界破壊の破面は、前述の事例調査
で観察された延性低下割れの破面とよく一致しているこ
とを確認した。このことから、溶接熱影響部の延性低下
およびこれに起因した割れは、1400℃を越え融点
(約1500℃)までの非常に狭い温度範囲で起こるこ
とが明らかとなった。すなわち、融点より100℃以上
低い温度であれば良好な延性を示すことがわかった。次
に、この知見をもとに実際の溶接における溶接部裏面の
温度と延性低下割れの関係を種々調査した。その結果、
被溶接母材の溶接部裏面の温度が融点より100℃以上
低い温度であれば、延性低下割れを再現性良く防止でき
ることを突き止めた。これは、被溶接母材の溶接部の板
厚のうち溶融していない部分(=板厚−溶け込み深さで
表される部分)の一部にでも延性の良好な領域があれ
ば、板全体としての延性低下割れの発生はくい止められ
るものと考えられる。 【0019】以上の結果から、フェライト系ステンレス
鋼の溶接時の延性低下割れを再現性良く抑制する手段と
して、図2に示すような溶接部裏面の溶接中における最
高到達温度を融点より100℃以上低い温度とするとい
う事項を規定した。なお、図1に示した鋼の融点はいず
れも約1500℃であるが、融点は鋼の組成によって変
動する。したがって、使用する鋼に応じて溶接部裏面の
最高到達温度を規定する必要がある。例えば、SUS4
29系,SUS444系,SUS430系の鋼であれ
ば、溶接部裏面の最高到達温度を1400℃以下に規定
すればよい。 【0020】溶け込み率は、20%未満であると溶接条
件の変動によっては接合不良あるいは接合強度不足を生
じるため、20%以上とすることが必要である。しか
し、溶け込み率が80%を越えると、溶接中の溶接部裏
面の最高到達温度が融点−100℃の温度を越え、延性
低下割れを生じる場合があるため、80%以下とする。 【0021】ここで、溶接部裏面の最高到達温度および
溶け込み率の具体的設定手段について述べる。図2に示
すような継手形状では、実溶接施工時においては温度測
定ならびに溶け込み率の測定は事実上できない。そこ
で、例えば、実施工に即した継手のモデルを事前に製作
し、これを種々の溶接入熱条件にて溶接し、溶接部裏面
の最高到達温度が融点より100℃以上低い温度に、溶
け込み率が20〜80%の範囲になるような溶接入熱条
件範囲を選定し、この溶接入熱条件範囲を実溶接施工時
に適用する方法を用いることができる。溶接部裏面の温
度測定としては、例えば、熱電対を複数配列して貼付け
て測温する方法、あるいはサーモグラフィーによる測定
方法などが採用できる。溶け込み率は、例えば、各種の
溶接入熱条件にて溶接した試片から、一試片あたり複数
の断面を採取し、断面研磨後光学顕微鏡観察により測定
して求めることができる。 【0022】ところで、溶接時に熱影響部に発生してい
る応力も延性低下割れ発生に係る重要な因子である。図
3は、図1と同じ供試材を用いて、一定応力を負荷した
状態で試験片を加熱したときに破断する温度を測定した
結果を示す。応力の低下とともに破断温度は上昇し、図
1の結果と同様に1440℃以上の温度で粒界破壊を示
すようになる。この時の応力は2.0〜2.5N/mm2で
ある。一方、1.5N/mm2以下の応力を負荷した場合に
は、試験片が溶融し始めるまで破断しない。このことか
ら、延性低下割れは溶接時の応力が1.5N/mm2を越え
る場合に生じる可能性のあることがわかった。したがっ
て、溶接部裏面の最高到達温度と溶け込み率とから選定
した溶接入熱条件を実溶接施工に適用するにあたって
は、溶接熱応力の弾塑性解析等(例えば、溶接力学とそ
の応用;朝倉書店刊参照)により、その値が1.5N/m
m2以下であることを確認して適用するのが望ましい。 【0023】本発明の方法は、溶接継手については、J
ISZ3001にいう重ね継手,T継手,せぎり継手な
ど、溶接継手を構成する被溶接材の一方もしくは両方の
母材の溶け込みが、表面から裏面まで貫通しない施工方
法をとる溶接継手について適用できる。 【0024】溶接方法については特に限定されることは
ない。また、溶接に使用するシールドガスおよび溶接心
線についても、限定されることはない。さらに、フェラ
イト系ステンレス鋼と他の合金との異材継手溶接におい
ても、本発明方法の適用により、フェライト系ステンレ
ス鋼の熱影響部の延性低下割れは防止できる。 【0025】 【実施例】表1に示す3種類の鋼を溶製し、熱間圧延,
焼鈍および冷間圧延により板厚2.0mmの板とし、90
0〜1050℃の範囲で焼鈍したのち酸洗して溶接試験
用の供試材を得た。これらの供試材を用いて溶接試験を
行い延性低下割れを評価した。表2に溶接条件および結
果を示す。 【0026】 【表1】 【0027】 【表2】 【0028】延性低下割れは、2枚の板を重ねて治具に
て固定し、重ね継手溶接を行った後の割れの有無で評価
した。割れ有無の判定は、溶接部の断面を5箇所切断採
取し、バフ研磨後光学顕微鏡にて割れの有無を検査して
行った。その後エッチングを行い溶け込み率を測定し
た。なお、切断した溶接部断面試片にはあらかじめ溶接
部裏面に熱電対を貼り付けておき、溶接時の最高到達温
度を測定した。なお、供試材の融点は、いずれも約15
00℃である。 【0029】No.1〜11は、本発明方法によるもの
である。TIG溶接,MIG溶接およびMAG溶接のい
ずれの方法で行なっても、溶接部裏面の最高到達温度を
1400℃(=融点−100℃)以下とし、かつ溶け込
み率を20〜80%の範囲となるように入熱条件を選定
して溶接すれば、熱影響部の延性低下割れは発生しない
ことが確認できた。 【0030】No.12〜16は、比較方法を示したも
のである。No.12及びNo.16は、最高到達温度お
よび溶け込み率が本発明方法から外れているため、延性
低下割れを起こした。また、No.13は、溶け込み率
は本発明の範囲に含まれるものの、溶接部裏面の最高到
達温度が本発明方法から外れているため、延性低下割れ
を起こした。なお、No.14およびNo.15は、溶け
落ちたため溶接部に穴があき製品として使用できなかっ
た。 【0031】 【発明の効果】本発明は、フェライト系ステンレス鋼の
溶接において延性低下割れが再現性良く防止できる溶接
方法を提供するものであり、特に、種々の構造の溶接継
手に適用できる汎用性の高いものである。したがって、
実際の溶接施行に際しては、本発明で規定する事項を満
足するように個々の状況に応じた適切な溶接条件を設定
することにより、従来は不明確であった溶接条件の許容
範囲を適切に設定することが可能となり、各種溶接現場
における溶接条件の最適化が図られる。
示すグラフ。 【図2】重ね継手,T継手の溶接部裏面位置を示す断面
図。 【図3】応力を負荷した状態で加熱したときの応力値と
破断温度との関係を示すグラフ。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 質量%において、C :0.03%以
下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:
5.0〜30.0%、N :0.03%以下を含有し、か
つNb:0.05〜1.0%、Ti:0.05〜1.0%、
Mo:0.05〜3.0%、Cu:0.02〜1.0%の1
種または2種以上を含有し、残部がFeおよび製造上の
不可避的な不純物からなるフェライト系ステンレス鋼の
溶接において、溶接中の溶接部裏面の最高到達温度を当
該鋼の融点より100℃以上低い温度とし、かつ、下記
(1)式で定義される溶け込み率(%)を20〜80%
の範囲とする、フェライト系ステンレス鋼の溶接熱影響
部の延性低下割れを防止する溶接方法。 溶け込み率(%)=溶け込み深さ/当該被溶接母材の厚さ×100…(1)
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP30848395A JP3529520B2 (ja) | 1995-11-02 | 1995-11-02 | フェライト系ステンレス鋼の延性低下割れを防止する溶接方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP30848395A JP3529520B2 (ja) | 1995-11-02 | 1995-11-02 | フェライト系ステンレス鋼の延性低下割れを防止する溶接方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH09122915A JPH09122915A (ja) | 1997-05-13 |
| JP3529520B2 true JP3529520B2 (ja) | 2004-05-24 |
Family
ID=17981565
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP30848395A Expired - Lifetime JP3529520B2 (ja) | 1995-11-02 | 1995-11-02 | フェライト系ステンレス鋼の延性低下割れを防止する溶接方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3529520B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| KR100455082B1 (ko) * | 2000-05-30 | 2004-11-08 | 주식회사 포스코 | 용접성이 우수한 페라이트계 스테인레스강 제조방법 |
-
1995
- 1995-11-02 JP JP30848395A patent/JP3529520B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH09122915A (ja) | 1997-05-13 |
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