JP3551073B2 - 水質計及び水質監視システム - Google Patents

水質計及び水質監視システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、配管を介して供給される飲料用の水を検出する水質計及び水質監視システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上水道の配水水質を監視するシステムとしては、例えば東京都の自動水質計測システムがあり、「計測と制御」Vol.33(1994年発行)649ページにシステムとその時用いられる水質計に仕様が紹介されている。
【0003】
この配水水質監視システムにおいては、水質計が事業者側配管網の系統毎に設置され、系統毎の配水水質を連続的に測定して定期的にテレメータでセンタに信号伝送する構成をとっている。また、配水管末端部分又は需要家側の配水の水質測定手段としては、手分析(試料水の採取,試薬の混合など、全てが人の手により行われる分析)による水質計測または可搬式の水質計でのオフライン計測が行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のシステムでは水質計は事業者側の配水系統毎に配置するので設置台数が少なくて済み、系統毎の供給水の平均的な水質が把握できる利点がある反面、最終的に需要家が飲用する水質が把握できない欠点がある。
【0005】
配水の水質は配水供給点で計測管理されているが、配水管路網を通過する間に水質が低下する。具体的には殺菌力を保つための残留塩素濃度が配水設備内や含有物との化学反応によって低下し、管路内の錆による着色のため色度が上昇し、管壁の付着物の剥離等により濁度が上昇する等の例があげられる。これらは系統の本管でも起こりうるが、むしろ配水管末端部や需要家の配管内でより顕著にみられる。なぜなら残留塩素濃度は滞留時間に比例して濃度が低下することが知られており、常時通水のある系統本管に比べて末端配管では滞留時間が長くなる結果残留塩素濃度は低下し、極端な場合には濃度がゼロになり殺菌力の失われた水を飲用する需要家の場合も起こり得る。残留塩素能度が低下すると、水の殺菌力が低下し、微生物特に病原性微生物(例えばO−157など)が繁殖する可能性があり、安全・健康面で社会的な問題をひきおこす。また、安全をみて過度の塩素注入を行うと残留塩素濃度は確保されるものの塩素濃度が高くなる結果、いわゆる「カルキ」臭が問題になったり、塩素の副生成物であるトリハロメタンなどの有害物質が生成されて安全面で課題を残す。
【0006】
色度,濁度等についても滞留時間が長くなる結果、同様のことが言える。特に集合住宅や事業所等では受水槽があり、その管理が適切でない場合にはこの問題が顕著に表れる。
【0007】
このように最終的に需要家が飲用する配水管末端水の水質を測定してその値が適切であるかどうかを監視し、適切になるように管理するのが理想的な水質管理である。
【0008】
従来技術による系統毎の水質を測定する水質計では、形状が大形(例:1.2m×1.8m×0.6m)であるため需要家である家庭や集合住宅には設置することはできない。また、水質計の単価及び工事費用が高価なため予算の制約から配備台数には限界があった。また、メンテナンスに専門技術を要し、安全性にも配慮する必要から一般家庭への導入は困難であった。そのために、需要家である家庭や集合住宅の近傍等の所望の配水経路には設置できなかった。
【0009】
なお、手分析や、可搬式の水質計による配水末端の水質計測では、末端の水質が測定できるものの、結果が出るまでに時間がかかったり、連続的な水質データが得られないために一日の変化範囲や非定常時の挙動がつかめない欠点がある。
この種のデータは非定常時の最大値や最小値が重要な意味を持ち、それを最小にするためのシステムの運転・制御方法の確立が重要である。この意味から上記手分析や可搬式の水質計では監視システムの水質計としては利用できない欠点があった。
【0010】
また、希には配水管末端部分においても測定項目及び設置場所を限定(例えば残留塩素計のみを1万〜数万世帯当たり1台程度設置)してオンライン計測が行われていた例はあったが、しかしながら、従来システムに使用していたオンライン水質計は、単項目の測定であっても浄水場で使用している様な分析計であり、大型且つ高価であるだけでなく設置場所の確保も困難であり、充分な測定項目・測定個所を確保した木目細かな水質計測が困難であった。
【0011】
本発明の目的は上記欠点をなくし、飲料用水の配水管末端付近に配置可能な小型で、且つ、複数項目の検出な水質計を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の特徴は、原水を飲用可能となるように浄化して得られた水を配水管網を介して需要者に供給する水道配水システムの配水管の一部に取り付けられる水質計において、前記配水管より導入された試料水を分析する分析部と、当該分析部に前記試料水を含む複数の液体を供給するための複数の供給流路を備えた単一の部材からなる導入部とを備えたことである。
【0013】
また更には、河川,湖沼,井戸水などの原水を飲料に適するように水質を浄化する浄化施設と、該浄化施設で得られた浄水を需要家に供給するための配水施設と、前記浄化施設および配水施設の監視・制御を行う管理センタと、前記配水施設から前記浄水を各需要家まで供給する配水管網で構成された水道配水システムにおいて、前記配水管網の各所に、当該配水管より導入された試料水を分析する分析部と、当該分析部に前記試料水を含む複数の液体を供給するための複数の供給流路を備えた単一の部材からなる導入部と、少なくとも前記管理センタとの通信を行う通信部とを有した水質計を接続し、当該水質計による測定結果を前記管理センタに伝送することである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を図面を用いて説明する。図2は、本発明の水質計を使用した配水水質監視システムの基本的な構成を示す図である。河川,湖沼,井戸等の原水は浄水施設1により飲用に適した水質に浄化され、配水施設2に送られる。配水施設2から送出された飲料水は配水本管4や配水系統本管5から水質計8に入るか、更に水道事業者側配水管6,需要家側配水管7を通り、水質計8に入る場合がある。水質計8は、通信手段を備えており、水質管理センタ3と相互に通信を行うことができる。飲料水の水質をオンラインで測定した水質計8の出力は、無線,有線,衛星等のメディアを通じて水質管理センタ3に送られ、水質管理センタ3では、水質計8からの出力を必要なデータ処理を行って、水質が適正な値になるように浄水施設,配水施設の運転条件を制御する。
【0015】
図3はこのような配水水質監視システムの需要家における水質計の設置形態例を示す。水道事業者側の配水系統本管5,水道事業者側配水管6または需要家側配水管7から分岐した飲料水は、閉止弁10,水道メータ9を経て配水設備11に入るが、同時に水質計8で複数項目の水質測定が行われる。配水設備11は配管網より構成されその内の一箇所から蛇口などの給水栓12を経て飲料水が需要家に供給される。水質計8は、水道メータ9前後に取り付け、水道メータ収納箱内に設置できる他、マンホール,消火栓,需要家施設内,水道蛇口付近などの設置にも、容易に設置できる大きさとしている。水質計8の具体的な構成は後述するが、本発明の水質計の構造であれば、おおよそ10cm×20cm×20cm程度の空間があれば、容易に設置可能となる。
【0016】
図4は水質計の内部構成を示すブロック図である。配水管4,5,6,7から試料導入部13を介して導入された試料水は、混合分析部110により項目毎に所定のシーケンスで測定され、測定結果は電気信号に変換され、その後、信号処理・制御部18に伝送される。混合分析部110は、試料導入部13からの試料水を混合する複数個の測定成分毎の試薬混合部14a〜14c及び複数個の計測分析部15〜17より構成されている。ここで、試薬混合部14a〜14cと計測分析部15〜17は、ユニット構造となっており、測定項目数に応じて備えることが可能である。測定すべき成分としては、残留塩素濃度,濁度,色度,導電率,pH,トリハロメタンなどの塩素処理副生成物濃度,病原性微生物個数等が挙げられる。信号処理・制御部18は、電源部20より電源の供給を受けて動作し、混合分析部110で得られた測定結果のデータ処理を行う。信号処理・制御部18で行われたデータ処理の結果等は、通信部19で伝送用の伝送信号に変換された後、無線25により、またはテレメータにより専用線、または公衆回線を通じて水質管理センタ3に伝送される。
【0017】
試料混合部110はマイクロファブリケーションの採用により非常に小型にでき、消費電力の低減と試料水及び試薬類の使用量の縮減により、電源の電池化と排水の回収又は蒸発方式の採用が可能となり、加えてデータ伝送に無線回線を使用し、水質計設置時の配線及び排水工事を不要にでき、水質計の設置自由度を飛躍的に向上させる。
【0018】
次に、図1において水質計の具体的構成について説明する。水質計は、図5に示されるように、マザーボード101に、ポンプ(74,84,87,90),電磁弁(69,73,83,93,75a〜75c,85a〜85c,88a〜88c,91a〜91c)及び分析部(76,77,78)を取り付けることにより構成される。なお、ポンプ87,89は具体的にはダイアフラムポンプを用いる。ポンプ74,84には、定量ポンプ(シリンジポンプ)を用いる。図1において、マザーボード101は点線内部で示される流路を備えている。水道事業者側または需要家側の配水管51内を流れる飲料水(試料水)52は、配管53を介してサンプリングされ、手動弁54,配管55,減圧弁56を経て、更に配管57,手動弁58,排水管59より排水溝60に排水する。
【0019】
配管57より、一定圧に保たれた試料水52の一部は、配管61により分岐され手動弁62を経て試料水中の大きな異物を除去するフィルタ63を介して、さらに、マザーボード101中の流路65を介して脱泡槽66に導かれる。脱泡槽66の内部で前記試料水52中に含まれる気泡67は脱泡槽66の上部に溜まり、随時流路68,電磁弁69,流路70を介してマザーボード101から排水溝60に廃棄される。
【0020】
一方、脱泡槽66中の気泡を取除いた試料水(配水管)71は、流路72,電磁弁73を介して定量ポンプ74に導かれる。更に試料水(配水管)71は複数個の電磁弁75a,75b,75c及び導入孔71a〜71cを介してそれぞれが独立した項目を分析する複数個の分析部76,77,78に選択的に送出される。該分析部76,77,78は取付け形状及び配管取り合いが共通化され、他の分析部と全く同一かあるいは互換性を有するように、前記マザーボード101に着脱可能に保持されている。また、該マザーボード101の外側には液体を内蔵した複数個のカートリッジ79,80,81が着脱可能に保持されており、該カートリッジ内部の液体をマザーボード101に供給している。カートリッジ79からの液体(試薬)82は、電磁弁83及び定量ポンプ84に導かれ、複数個の電磁弁85a,85b,85c及び導入孔82a〜82cを介して、前記分析部76,77,78に選択的に送出される。同様に、カートリッジ80内の液体(洗浄水)86はポンプ87を経た後、複数個の電磁弁88a,88b,88c及び導入孔86a〜86cを介して前記分析部へ、またカートリッジ81内の液体(ゼロ水)89はポンプ90を経て電磁弁91a,91b,91c及び導入孔89a〜89cを介して前記分析部76,77,78に選択的に送出される。
【0021】
この時、各分析部は、詳細構造は後述するが、マイクロファブリケーション技術を用いて前記各流体を混合又は選択し反応させる試薬混合部と計測分析部とからなっており、非常に小型化された分析計1台分の機能を有している。各分析を終了した廃液92は前記流路70を経て機外に排出される。廃液92が有害な場合や排水設備がない場合には、電磁弁93,流路94を介して回収容器95に排出される。
【0022】
さらに、混合分析部110の詳細を図5を用いて説明する。マザーボード101は直方体の形状をなし、その右側側面には試料水の排出側及び導入側のそれぞれの電磁弁93及び69が対応する導入孔に装着される。さらに、ゼロ水89及び試薬82の導入のための導入孔89a〜89c及び82a〜82cが縦方向に並ぶように形成され、それに合わせるように、電磁弁88a〜88c及び電磁弁91a〜91cが装着される。なお、縦方向に並んだ導入孔の両脇には取付ネジ孔が切られており、このネジ孔にネジを合わせることにより、各電磁弁(93,69,88a〜88c,91a〜91c)がマザーボード101に固定される。
同様に、左側側面には、試料水の導入側の電磁弁83及び73が対応する導入孔に装着される。さらに、試料水の導入のための導入孔71a〜71c及び洗浄液86の導入のための導入孔86a〜86cが縦方向に並ぶように形成され、それに合わせるように、電磁弁75a〜75c及び電磁弁88a〜88cが装着される。縦方向に並んだ導入孔の両脇には取付ネジ孔が切られており、このネジ孔にネジを合わせることにより、各電磁弁(83,73,85a〜85c,75a〜75c)がマザーボード101に固定される。
【0023】
一方、マザーボード101の上面には、開孔を形成し、ポンプ74,84,87を連通させて、マザーボード内を流れる流体に送液のための圧力を与えている。また、上面には、分析部76〜78が固定される。分析部76〜78とマザーボード101は導入孔82a〜82c,71a〜71c,89a〜89c,86a〜86c,309a〜309cを介して接続される。
【0024】
次に、マザーボード内に形成される主な流路を図6を用いて説明する。内部にある全流路(流路65,68,70,72,92,94他)はマザーボード101の内部に立体的に形成されている。マザーボード101の裏側の下端には、図に示すように、試料水52,試薬82,洗浄液86及びゼロ水89を導入するための導入孔が形成されている。マザーボード101の外観は、直方体を形成しており、その外周面には、複数個のバルブ,ポンプ,分析計などを配管を用いずに直接又はシール部材を介して保持可能なように、複数個の導入孔やネジ孔が形成されている。
【0025】
このマザーボード101の内部流路は、樹脂の部分を除去し流路部分のみを立体的に表記すると図6の様になる。従来この様な3次元の立体流路は実現が困難であり、強いて製作しようとすれば2次元流路を機械加工した複数枚の板を重ねて接合することにより形成していた。本実施例では、紫外線硬化形プラスチックを使用し、液体の樹脂に紫外線レーザ光を選択的に照射し、光の当たった部分のみを硬化させて形状を形成せしめる光造形法を採用した。この光造形法で、流路に当たる部分には光を当てず未硬化の液体のまま残し、成形後未硬化樹脂を洗い流すことによって任意の立体流路を形成可能にしている。使用した樹脂は紫外線硬化形で透明のエポキシ系樹脂を使用し、流路内部の状態が外部より観察できる様にした。また光造形法は、特別の成形型を必要とせずCAD(computer aideddesign)の3次元の設計データのみで安価で迅速に実現でき、配管系接続部の信頼性を向上できる長所がある。
【0026】
図6に示したように、マザーボード101内の流路は、光造形法を用いることにより、自由な太さや経路が選択でき、立体的な最短距離で結ぶことや急激な折り曲げをせずに滑らかな曲線で結び、流体中のゴミや気泡が溜まりにくくすることができる。
【0027】
またマザーボード内では、流路は立体的に自由な位置で継ぎ手なしに結合や分岐が可能なため、流体の混合や分離ができる。図1で説明した脱泡槽66も具体的には図6に示す脱泡槽104の構造として容易に構成できる。
【0028】
本発明は、上記構成において、飲料水用配水管51からサンプリングした試料水52を、複数個のポンプと電磁弁をシーケンス制御し、複数個のカートリッジ内の液体と前記分析部内の試薬混合部に導き反応させ、計測分析部でその結果を計測するものである。この時、分析項目によっては試薬反応を必要としない場合もあり、その場合には試薬を選択しないようにしてある。
【0029】
代表的応用例として、試料水52を水道水とし、カートリッジ79内の液体82に残留塩素に反応して発色する試薬(例えばDPD又はオルトトリジン)を用い、カートリッジ80内の液体86には洗浄液(例えば希塩酸又は中性洗剤)、カートリッジ81内の液体89には基準液(例えば純水又は校正液)を選択しておく。これらを所定のタイミングでシーケンス制御し、各分析部に導く。例えば分析部76を残留塩素計,分析部77を色度計,分析部78を濁度計として使用する。試薬を入れた液体82は残留塩素計に割り当てた分析部76にのみ使用する。試薬の種類を変えれば、測定項目を変えることができ、またどの分析部にどの測定項目を割り当てるかの選択も自由である。
【0030】
残留塩素計の場合は、試薬反応により試料水の発色の程度を吸光度法で測定し、色度計の場合は試薬を使用せず試料水そのものの吸光度を測定するが、吸光度が低いため基準液(純水)との比較測定方式とし、所定の周期で基準液を測定しゼロ点のベースラインの補正を行う。一方濁度計は、試薬も基準液も使用せず試料水中の濁質粒子の数を計数し濁度換算を行う方式とした。
【0031】
このほか、分析部に電極を内蔵したものを装着すれば、分析部の構造を変更することなく導電率計やpH計の機能を加えることができる。
【0032】
また、洗浄液(液体86)は所定の間隔で各分析部に導かれ、分析部内の流路やセル,電極などを洗浄する。洗浄によって生じた異物は、試料水(配水管)71又はゼロ水89で流し去る。
【0033】
次に図7において、図4で示した分析部(76,77,78)の詳細について説明する。なお、図8に分析部の具体例として分析部76を示すが、分析部77及び分析部78も同様であるので説明を省略する。
【0034】
分析部76は、分析部基板209及びフローセル基板325よりなっており、ネジ孔220及び221にネジ224及び225をそれぞれ挿入固定することにより、フローセル基板325を分析部基板209の凹部とマザーボード101の間に押圧して挟み込む。マザーボード101とフローセル基板325の間はOリング310〜317によりシールされる。
【0035】
各分析部は、測定目的により測定原理は異なるが(残留塩素計及び色度計は所定波長光に対する吸光度測定、濁度計は散乱光の変化回数を測定する微粒子数係数法式を採用している。またこのほか導電率やpHの測定用に電極を内蔵した分析部を取り付けることも可能である)、取り付け寸法及び流路の取合いは共通であり、モジュール化されている。本実施例では、マザーボード101の上には3個の分析部がシール部材を介して着脱可能に構成されている例を示すが、分析部の個数は、必ずしも3個とは限らない。異なる流路を有したマザーボードに変更すれば、分析部の搭載数を自由に設定することができる。また、どの項目の分析部をどこに配置するかは自由である。測定目的に合わせた分析部選択と液体供給及び計測のシーケンスを選択することにより、所定の用途の分析機能を持たせることを可能にしている。
【0036】
これらの組み合わせの他の応用例として、マザーボード101に搭載される分析部をすべて同一種類とすることも可能である。同一種類の分析部を複数配置し、同時測定することにより、測定値の信頼性を向上させることが可能となる。また、分析部に故障が発生した場合には、他の分析部を使用することにより装置全体の長寿命化を図ることも可能となる。
【0037】
各分析部は、図7に示すように、試薬混合部201(フローセル基板325)と計測分析部202(分析部基板209)とからなっている。試薬混合部201(フローセル基板325)の詳細構造を図8において説明する。フローセル基板325は、シリコンの基板301,パイレックスガラスのカバー302の2層構造になっており、マイクロファブリケーション技術で製作してある。基板301は、高純度のシリコンウェハを異方性エッチングにより、逆S字形をし、所定の角度を有する斜面303と平らな底面304を有する流路305を形成してある。さらに裏面からも異方性エッチングし、角型をした複数個の貫通穴306,307,308,309と、数十μmの微細な穴が100から200μmピッチでメッシュ状に並んでいるメッシュ穴310が形成してある。これら複数個の穴は、表面で前記流路305によって連結されている。また該基板301の表面には前記カバー302が陽極接合(アノーディック ボンディング)により接合されている。両者の接合はウェハサイズのまま高温真空中で所定電圧を印加することにより行い、接合後、使用サイズに切断して使用する。使用サイズとしては、流路305の形状に依存するが、約1cm×2cm程度の大きさとなる。
【0038】
上記の分析部は、マザーボード101の側面に取り付けられた電磁弁やポンプの選択的駆動によって、複数種類の液体(試料水/配水管71,試薬82,洗浄液86,ゼロ水89)の選択的な供給を受ける。本実施例においては、貫通穴306にはゼロ水89、貫通穴307には洗浄液86、貫通穴308には試料水(配水管)71、メッシュ穴310には試薬82が供給される。供給された液体は流路305内を流れ流路内の直線部であるセル部311に導かれ、貫通穴309を経てマザーボード101に排出される。
【0039】
本実施例では、上流部ほどきれいな流体(純粋に近い流体)が供給されるようになっている。この様な順序で供給することにより、流路305を汚れにくくすることが可能になる。また、被測定時に最もきれいな流体(例えば、純水を用いたゼロ水)を流路305内に満たし、測定時に、初めて他の流体を流路305内に導くようにすれば、流路305内の汚れによる測定感度の低下を防止することができる。
【0040】
また、本発明では、上記のように複数の流体を使用するが、これらの流体はマザーボード101内では、全て別々の流路を流れている。即ち、フローセル基板325までは、各液は独立して供給されており、決して混合されることはない。吸光度等の測定が行われる流路305で初めて混合が行われる。従って、複数の液体が混合されるのは、測定が行われる直前であるため、複数の液が交じり合って発生するコンタミネーションを極力抑えることができ、高精度の測定が可能となる。
【0041】
また更には、流路305の内面に撥水性を有する透明なフッ素樹脂をコーティングすれば、更に汚れにくくすることができる。
【0042】
次に、計測分析部202について説明する。計測分析部202にはLEDまたはレーザダイオードから成る発光素子203と、該発光素子203の光を集光して前記セル部311の斜面303に光を集めるレンズ系204,光量変化をモニタする受光素子205が配置されている。また前記セル部311内を透過した光206は前記斜面303の対向する斜面303′に反射し、前記計測分析部202のほうに戻ってくる。この光207の光量を測定する受光素子208を前記計測分析部202の一部に配置した。これら発光素子203,受光素子205,208,レンズ系204と前記セル部311は、互いの相対位置を固定するために分析部基板209に保持され、更に該分析部基板209はマザーボード101に着脱可能に保持されている。
【0043】
他の分析部(色度,濁度)については、分析部の詳細についての説明は割愛するが、取り付け寸法及び流路の取合いについてはモジュール化されているため共通である。
【0044】
分析部76を残留塩素計として使用する場合について説明する。
【0045】
残留塩素測定の場合、洗浄液86,基準水89を停止した状態で試料水(配水管)71と試薬82を所定の流量比で供給し、流路305内で混合する。この時試薬82は試料水(配水管)71の中にメッシュ穴310を介して注入される。メッシュ穴を介すことにより、試薬82は試料水中に細かく均一に注入することができるので短時間で拡散させることができる。よって、試料水71は、速やかに残留塩素濃度に対応した発色反応をする。発色した反応液312は前記セル部311に導かれ、その発色度を吸光度を測定することにより計測される。計測時は計測値を安定させるため一時的に流体を停止する。計測後、反応液312は貫通穴309より排出される。感度又はゼロ点の校正をする場合は、試料水(配水管)71の代わりに、予め塩素濃度を測定してある基準液89を供給し、同様の手順で計測し、その測定値を基準値として以後の測定値を補正する。洗浄液86は、試薬混合部201(特にセル部311)の鉱物性あるいは植物性の汚れを除去するために、所定の周期又は汚れの程度に応じて供給され、洗浄される。
【0046】
尚、本発明の分析部の構造において、前記セル部311の内面に微小な異物や気泡が付着すると、前記セル部311を透過する光206の量が著しく変動し、正しい吸光度を測定することができない場合がある。これらの異物や気泡は微小で付着場所もまちまちであるため、通常の洗浄液86を流すのみの洗浄工程では、全てを流し去ることができない。本発明の場合、通常の測定・洗浄工程の送液パターン以外に、セル部311内に流す流体の送液パターンを任意に選択できるようになっている。
【0047】
洗浄のための主な送液パターンを以下に示す。
【0048】
(1)試料水52を流す。試料水52を流すためのポンプ74は、定量ポンプであるので、一定流量ではあるが高い圧力を印加できる。通常の測定時よりも高圧で送液された試料水52により、異物及び気泡を流し去る。
【0049】
(2)洗浄液87,ゼロ水81を流す。洗浄液87,ゼロ水81を流すためのポンプ87,90はダイアフラムポンプであるため脈動を有するので、発生する脈動流を利用し、異物及び気泡を流し去る。
【0050】
(3)洗浄液86(界面活性剤を含むと効果的である)をセル部311内に送り、滞留させた後、試料水52で押し流す。流速の変化だけでは、流すことができない異物・気泡の場合に有利である。
【0051】
本発明では、上記の送液パターンの内、何れか、またはいくつかを組み合わせて実行することにより、容易に異物・気泡の除去を行うことができ、より高い信頼性の水質計を実現することができる。また、これらの送液パターンの選択は、水質管理センタ3より通信で、設定することも可能である。
【0052】
図9に図3で示した構成例とは異なる例を示す。図9は、水道メータ9と水質計8を一体にした実施例で、水質計8は、マイクロファブリケーション技術を用いることで、前述のように複数の成分を測定可能としつつも小型化することができ、水道メータ9と一体構成とすることも可能となる。需要家への供給水は水道事業者側配水管6と閉止弁10を介して水道メータを流れて流量が計測されるとともに、その一部は試料導入管24を介して水質計8に供給される。このような構成をとれば、水道メータと水質計を一体として配管に取り付け、水道メータボックスに収納することも可能になる。したがって、特別な設置場所や設置工事がなくなり、水道メータを取り付けるのと同じ簡便さで取り付けが可能となる。
【0053】
図10に、更なる他の構成例を示す。図10は、水質計8への給電を自律的に行うシステムで、太陽電池21で発電された電力は、ダイオード22を介して水質計8に供給されるとともに、余分な電力は蓄電池23に充電される。夜間や雨などで日光の照射が期待できない時には、蓄電池23は放電によって水質計8に電力を供給してバックアップする。ダイオード22は、その場合の電流の逆流による損失を防止するための保護手段である。このような構成をとれば、太陽電池の発電容量と蓄電池の容量を適切に選ぶことにより外部給電を必要としない自律運転が可能となる。商用電源を確保するための機器や工事は不要になり、設置場所の制約がなくなるとともに低コストが実現できる。
【0054】
なお、上記に示した本発明の水質計8は、各需要家毎全てに設置することで、配水末端全ての水質を管理センタ3で管理することが可能となる。この他、数十軒に一軒の割合で需要家をサンプリングして設置すると、管理センタ3との通信量が数十分の一に減少でき、管理センタ3での処理を非常に軽くすることができる。さらに、数十万軒単位の割合でしか水質管理ができなかった従来のシステムと比較すると、格段に精度の高い配水末端の水質管理を行うことが可能となる。
また、本発明の水質計8は、マイクロファブリケーション技術を用いて、大幅な小型化を実現できたことにより、水質測定に使用する試料水や試薬の量をマイクロリットルのレベルに抑えることが可能となる。更にこれに伴い、連続測定の場合でも試薬等の交換の周期を1カ月以上にまでひきのばすことが可能となる。
本発明の実施例を要約すると以下の通りである。
【0055】
(1)水質計を飲用する末端水に近い配水管末端付近に設置し、それらの情報を管理センタで統合管理して最適な水質管理を行う。
【0056】
(2)水質計を配水管の末端付近のマンホール,消火栓,水道メータ収納箱,需要家内(流し台の下、等)などに設置する。これにより、一般の人が水質計に触れる機会が減少し、安全性が確保できる。
【0057】
(3)装置が大型化する原因である試料導入部,試薬混合部,分析・測定部をマイクロファブリケーション技術を用いて小型化する。現状の技術でも体積にして従来の水質計の約1/1000の小型化は可能である。
【0058】
(4)分析計内部の配管系に、紫外線硬化形プラスティックによる3次元立体流路を採用し、配管(チューブ)のない構成とし、省スペースと信頼性向上を図る。
【0059】
(5)装置の小型化により、本体コスト,工事費も安くなり、かつマイクロファブリケーション技術はシリコン半導体プロセス技術の応用なので、量産化によって大幅なコストダウンが可能である。
【0060】
(6)装置が非常に小型であることから、測定の際に消費する液量をマイクロリットルのレベルに抑えられるため、連続測定の場合でも薬液交換の周期を1カ月以上にまでひきのばすことが可能となる。また、排水もごく少量であるため、回収するか蒸発方式を採用でき、排水工事も不要にできる。
【0061】
(7)消耗品である試薬やゼロ水等をカートリッジで供給するようにすることにより、容易に供給・入れ替えを行うことができる。
【0062】
(8)小型化により省電力化が可能となり、電源として内蔵電池若しくは太陽電池を、信号伝送手段に無線回線使用して外部配線を不要とできる。
【0063】
(9)測定を行うフローセル基板までは、複数の液が混合しない独立した流路構成であり、コンタミネーションの発生を極力低下する。また、フローセル基板の流路には、複数の液を導入するための開口(貫通孔)を備え、流路の上流部ほどきれいな液を導入するようにすることで、流路内の汚染を防止する。
【0064】
(10)測定結果の変動が生じた際は、分析部内に異物・気泡が付着した場合が、考えられるため、通常の洗浄工程以外に、試料水や洗浄水を様々なパターンで送液することにより、異物・気泡の除去を行う。
【0065】
さらに、効果を纏めると、以下の効果が期待できる。
【0066】
(1)従来に比べて約1000分の1程度の体積の水質計を提供でき、設置の自由度が向上する。
【0067】
(2)小型で消費電力の少ない水質計が実現でき、電池駆動と無線通信を採用することによって、配線の不要なオンライン多項目水質計測システムが実現できる。
【0068】
(3)分析部のモジュール化により、測定項目の選択,組み合わせ,変更などを容易に行うことができ、測定シーケンスの変更に柔軟に対応できる。
【0069】
(4)3次元の立体流路の製作を、紫外線硬化形の合成樹脂を用いた光造形法を採用したことにより、CADデータを使用してモールド型なしで製造することが可能となり、安価かつ迅速な製造が行える。
【0070】
(5)超小型のサンプリング系が実現できたことにより、使用液量が低減され、液補充に伴うメンテナンス周期を大幅に延長することができる。
【0071】
(6)測定直前まで、複数の液が混合されることはないことから、測定部の汚染を防止することができ、測定の高精度化を行うことができる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、小型で高い信頼度の水質計およびこの水質計を用いた水質監視システムが実現できる。
【0073】
具体的には、従来に比較して、体積で約1000分の1程度の小型化となるため、省電力および小流量の水質計を実現することができる。従って、内蔵電池で長期間駆動することができ、且つ、少量の試薬等で長期間測定可能であるため、水質計を設置するにあたって、特別な配線,配管は不要となり、工事費を大幅に縮減できる。よって、水質監視システムの構築が非常に容易になる。
【0074】
また、分析部がモジュール構造であることから、測定項目の設定自由度が高い多項目水質計を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】分析計の内部詳細構成図である。
【図2】システムの構成図である。
【図3】システムの分析計の設置例を示す図である。
【図4】分析計の内部構成図である。
【図5】マザーボードの詳細を示す図である。
【図6】マザーボードの内部流路の立体図である。
【図7】分析部の詳細を示す図である。
【図8】フローセルの詳細を示す図である。
【図9】本発明の他の構成例を示す図である。
【図10】本発明の他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…浄水施設、2…配水施設、3…水質管理センタ、4…配水本管、5…配水系統本管、6…水道事業者側配水管、7…需要家側配水管、8…水質計、9…水道メータ、10…閉止弁、11…配水設備、12…給水栓、13…試料導入部、14a,14b,14c…試薬混合部、15,16,17…分析部、18…信号処理・制御部、19…通信部、20…電源部、51,71…配水管、52,72…飲料水、53,55,57,61…配管、54,58,62…手動弁、56…減圧弁、59…排水管、60…排水溝、63…フィルタ、65,68,70…流路、66…脱泡槽、67…気泡、69…電磁弁。

Claims (17)

  1. 原水を飲用可能となるように浄化して得られた水を配水管網を介して需要者に供給する水道配水システムの配水管の一部に取り付けられる水質計において、
    液体を流通させる測定流路、及び当該測定流路中に液体を導入するための複数の開口部を備えた混合部と、前記測定流路中の液体の分析を行う計測部とから成る分析部と、
    前記開口部に連通され、前記試料水を含む複数の液体を供給するための複数の供給流路を備えた単一の部材からなる導入部と、を備え、
    前記導入部は、前記分析部が複数接続できる領域を設け、且つ各領域において前記開口部へ連通される供給流路の配置位置が共通化されていることを特徴とする水質計。
  2. 請求項1において、
    前記導入部を形成する部材は、紫外線の照射により硬化する合成樹脂を使用して形成されることを特徴とする水質計。
  3. 請求項1において、
    前記計測部は、光源及び受光部を備え、当該光源からの光を前記測定流路に照射し、前記受光部にて前記測定流路を通過した光を受光することを特徴とする水質計。
  4. 請求項1において、
    前記分析部には、導電率あるいはpH測定用の電極を備えたことを特徴とする水質計。
  5. 請求項1において、
    分析項目に応じた試薬、測定流路の洗浄を行う洗浄水、測定結果の補正に用いられる基準水の内の何れかを貯蔵し、且つ当該水質計から着脱自在である複数の容器を備え、当該複数の容器内の液体は前記導入部内の供給流路を介して前記分析部へ供給されることを特徴とする水質計。
  6. 請求項5において、
    前記分析部の開口部の内、試薬を導入する開口部は、メッシュ状の形状であることを特徴とする水質計。
  7. 請求項5において、
    前記分析部内の測定流路の異物・気泡除去を行う際に、試料水を測定時よりも高圧に前記測定流路に供給することを特徴とする水質計。
  8. 請求項5において、
    前記分析部内の測定流路の異物・気泡除去を行う際に、洗浄水または基準水を脈動させて前記測定流路に供給することを特徴とする水質計。
  9. 請求項5において、
    前記分析部内の測定流路の異物・気泡除去を行う際に、洗浄水を前記測定流路に供給して滞留させた後、試料水を前記測定流路に供給することを特徴とする水質計。
  10. 請求項1において、
    前記分析部は、シリコンウェハを異方性エッチングした部材とパイレックスガラスを陽極接合した部材を含み、両者の間に前記測定流路を形成してなり、
    測定流路の液体が接する面には、撥水性の樹脂によって皮膜が形成されたことを特徴とする水質計。
  11. 請求項1において、
    前記試料水の異物を除去するフィルタ部材を備え、前記試料水は前記フィルタ部材を介して前記導入部の何れかの供給流路へ供給され、
    更に、前記導入部内の流路の内、試料水を導入する供給流路の一部に気泡を除去するための脱泡槽を備えたことを特徴とする水質計。
  12. 請求項3において、
    前記分析部で行う測定は、塩素濃度,濁度,色度,導電率,pH,塩素処理副生成物濃度,病原性微生物個数の内、何れかであることを特徴とする水質計。
  13. 請求項1において、
    前記複数の分析部は、それぞれ同一の分析項目の測定を行うことを特徴とする水質計。
  14. 河川,湖沼,井戸水などの原水を飲料に適するように水質を浄化する浄化施設と、該浄化施設で得られた浄水を需要家に供給するための配水施設と、前記浄化施設および配水施設の監視・制御を行う管理センタと、前記配水施設から前記浄水を各需要家まで供給する配水管網で構成された水道配水システムにおいて、
    前記配水管網の各所に、液体を流通させる測定流路、及び当該測定流路中に液体を導入するための複数の開口部を備えた混合部と、前記測定流路中の液体の分析を行う計測部とから成る分析部と、前記浄水を含む複数の液体を前記開口部に供給するための供給流路を備え、且つ前記分析部が複数接続できる領域を設け、各領域において前記開口部へ連通される供給流路の配置位置が共通化されている単一の部材からなる導入部と、少なくとも前記管理センタとの通信を行う通信部とを有した水質計を接続し、当該水質計による測定結果を前記管理センタに伝送することを特徴とする水質監視システム。
  15. 請求項14において、
    前記水質計は、水道メータ収納箱,消火栓,マンホール、または需要家側施設内の何れかにおいて前記配水管網に接続されることを特徴とする水質監視システム。
  16. 請求項14において、
    前記水質計と前記管理センタとの通信は、無線,専用線または公衆回線の何れかにより行われることを特徴とする水質監視システム。
  17. 請求項14において、
    前記水質計は、充電用バッテリーを介した太陽電池を備え、当該太陽電池からの給電によって駆動することを特徴とする水質監視システム。
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