JP3553579B2 - 触媒還元装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒還元装置に関し、さらに詳しくは、メタノールの水蒸気改質、メタノール合成、水性ガスシフト反応、酸化反応、酸素除去、メタン化反応、CO水素化反応(炭化水素合成反応)等に用いられる酸化物を主成分とする触媒を、使用に先立って還元するための装置として好適な触媒還元装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多くの化学工業プロセス、例えば、メタノールの水蒸気改質、メタノール合成、水性ガスシフト反応、酸化反応、酸素除去、メタン化反応、CO水素化反応(炭化水素合成反応)等においては、反応速度を速くしたり、特定の物質を選択的に生成又は除去するために、金属あるいは合金の酸化物を主成分とする種々の触媒が用いられている。
【0003】
これらの酸化物触媒は、一般に、使用前の段階では酸化物の状態で装置に組み込まれるが、使用を開始する前段工程において還元処理し、触媒を活性化することが行われている。また、触媒の還元処理には、通常、水素ガスあるいは水素ガスと不活性ガスとの混合ガスが用いられている。
【0004】
例えば、改質ガス燃料電池は、水素と酸素から水が生成する際の自由エネルギー変化を直接電気エネルギーとして取り出すための装置であり、燃料源としてメタノールの水蒸気改質により得られる改質ガスを使用する。
【0005】
メタノールの水蒸気改質は、反応温度が200〜300℃と低いこと、脱硫装置が不要であること、比較的容易に水素を主成分とするガスに改質されるために一酸化炭素の変成工程が不要、又は一酸化炭素の除去工程が軽減されること等の利点があることから、自動車用の低公害動力源等、小出力の燃料電池システムに用いられる水素ガスの供給方法として注目されているものである。
【0006】
メタノールの水蒸気改質は、周知のように、メタノールを水蒸気の存在下で改質触媒と接触反応させ、水素を主成分とする改質ガスを製造する方法である。改質触媒としては、一般に、CuO−ZnO系、CuO−ZnO−Cr系、CuO−ZnO−Al系等、CuO−ZnOを主成分とする触媒が用いられる。
【0007】
Cu系の改質触媒は、酸化物状態のまま改質反応に使用することもできるが、酸化物状態のままで改質反応に使用すると、生成した改質ガスに含まれる大量の水素によりCu系触媒の還元反応が急激に進行するという問題がある。Cu系触媒の還元反応は大きな発熱を伴うので、還元反応を急激に進行させると、触媒が耐熱限界を超えて触媒機能を喪失したり、触媒を収容している容器、配管等が損傷するおそれがある。そのため、Cu系の改質触媒は、改質反応に使用する前に還元処理してCu−ZnOの形態とすることが行われている。
【0008】
Cu系の改質触媒の還元処理は、通常、以下の手順により行われる。すなわち、触媒を175〜180℃に加熱した状態で、水素ガス濃度が1〜2%となるように窒素ガス等の不活性ガスで十分に希釈した還元ガスを触媒に流し、触媒の温度が過度に上昇しないように十分注意しながら、約12時間程度の時間をかけてゆっくりと還元反応を行わせる。その後、触媒を200〜210℃程度に昇温し、さらに水素ガス濃度を高めた状態でも触媒の温度が上昇しないことを確認して還元処理を終了させる。
【0009】
また、上述のようなCu系の改質触媒の還元方法では、水素ガスを希釈するための大量の窒素ガスを必要とするという問題がある。そのため、特開昭63ー44934号公報には、反応管の出口に還流ラインを設け、反応管の出口から流出した窒素ガスをそのまま系外に放出することなく、還流ラインを介して再び反応管に戻し、還流させた窒素ガスを用いて水素ガスを希釈することにより、窒素ガスの消費量を大幅に低減した改質触媒の還元手段を備えたメタノール改質装置が開示されている。
【0010】
酸化物触媒が用いられるその他の例としては、例えば、フィッシャー・トロプシュ法がある。フィッシャー・トロプシュ法は、一酸化炭素の水素化反応により、直鎖のオレフィンやパラフィン、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸などを合成する方法であり、合成反応には、Fe系、Co系、Ni系、Ru系等の酸化物触媒が用いられている。
【0011】
フィッシャー・トロプシュ法に用いられるCo系の触媒の場合、同様に酸化物の状態で担体に担持させた後、還元処理して使用されるが、100%金属に還元すると、シンタリング、炭化などのために速やかに活性が低下することが知られている。そのため、Co系の酸化物触媒は、還元ガスとして水素ガスを用い、350〜400℃において、還元率が60〜70%となるように還元して使用されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような水素ガスあるいは水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを用いて酸化物触媒の還元処理を行う場合、還元反応の終了は、水素濃度の変化や触媒の温度変化で確認する方法が採られている。
【0013】
しかしながら、水素濃度や触媒温度の変化は、還元量や還元時間に比例しないという性質がある。そのため、酸化物触媒の確実な還元を行うためには、相当の余裕時間を見る必要があり、効率が悪いという問題があった。また、所定の還元率を有する触媒を得ようとする場合には、還元率の正確な把握が困難であり、精度に欠けるという問題があった。
【0014】
さらに、担体に触媒を担持させた触媒体を還元処理する場合、水素濃度や触媒温度の変化が還元量に比例しないことから、これらを測定しても担体に担持された触媒の質量を推定することができない。そのため、担体に触媒が設定通りに担持されたか否か、すなわち触媒の脱落や偏在の有無は、他の手段を用いて評価しなければならないという問題があった。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、酸化物を主成分とする触媒の還元終了時期や還元率を確実に把握し、過不足なく酸化物を主成分とする触媒を還元することができ、しかも、担体に担持された触媒の質量を判定することが可能な触媒還元装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る触媒還元装置は、酸化物を主成分とする触媒を収容すると共に、該触媒の還元反応を行わせる還元手段と、該還元手段に、一酸化炭素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、前記還元手段から排出されるガス中に含まれる一酸化炭素及び二酸化炭素の内、少なくとも一方の濃度を測定する濃度測定手段とを備えていることを要旨とするものである。
【0017】
上記構成を有する本発明に係る触媒還元装置によれば、還元手段内に収容されている酸化物を主成分とする触媒に対し、還元ガス供給手段を介して一酸化炭素を含有する還元ガスが供給される。還元ガスが供給されると、還元ガス中に含まれる一酸化炭素の一部は、酸化物を主成分とする触媒の還元反応に消費されて二酸化炭素となり、還元反応に消費されなかった一酸化炭素は、そのまま還元手段から排出される。
【0018】
次いで、還元手段から排出されたガス中に含まれる一酸化炭素及び二酸化炭素の内、少なくとも一方の濃度が濃度測定手段により測定される。その際、還元手段から排出されるガス中の一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度は、酸化物触媒の還元量に比例して変化する性質を有しているので、濃度測定手段を用いて一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度の変化量を測定すれば、還元反応の終了時期、還元率、担体に担持された触媒質量等を容易に判定することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る触媒還元装置の概略構成図を示したものである。図1において、触媒還元装置10は、還元手段20と、還元ガス供給手段30と、濃度測定手段40とを備えている。
【0020】
還元手段20は、酸化物を主成分とする触媒26を収容すると共に、触媒26の還元反応を行わせるための還元部22からなり、還元部22の入口側及び出口側には、それぞれ、還元ガス供給手段30及び濃度測定手段40が接続されている。
【0021】
この場合、還元手段20には、還元部22に収容された触媒26の温度を一定に保つための温度制御手段24を備えていることが好ましい。温度制御手段24により触媒26の温度を一定に保ったまま還元を行うと、触媒26の還元量や触媒26の還元終了時間、還元率等の判定精度が向上するという利点がある。なお、還元部22の材質や形状等は、特に限定されるものではなく、還元される触媒26の形状、還元温度等に応じて最適なものを選択すればよい。
【0022】
また、還元部22に収容される触媒26は、金属あるいは合金の酸化物を主成分とし、還元して使用するものであれば良く、その用途や組成、形状等は、特に限定されるものではない。
【0023】
還元して使用する触媒26の例としては、例えば、メタノールの水蒸気改質、メタノール合成、水性ガスシフト反応、酸化反応、酸素除去、メタン化反応、CO水素化反応(炭化水素合成反応)等に用いられる各種の触媒が挙げられる。
【0024】
具体的には、Ta、La、Cu、Ni、Co、Fe、Ti、Mo、Sr、V、Sn、Bi、Zn、W、U、Mn、Cr、K、Mg、Ce、Al、Mg、Ag、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Nb、Si、Zr等の酸化物、及びこれらの中から選ばれる2種以上の金属元素を含む合金の酸化物を主成分とする触媒が挙げられる。
【0025】
すなわち、MnO、V、MoO、Nb、ZnO、Al、SiO、TiO、MgO、ZrO、TaO、CuO、NiO、Co、Fe、SnO、Bi、WO、V、MnO、Cr、AgO、PtO、PdO、RuO、SrO、KO、CeO、La等の単一の金属酸化物を触媒26として用いても良く、あるいは、これらの2種以上の金属酸化物からなるものを触媒26としても良い。
【0026】
特に、CuO−ZnO、CuO−ZnO−Cr、CuO−ZnO−Al等、メタノールの水蒸気改質に用いられるCu系触媒は、還元時に多量の発熱を伴うことに加え、Cu系触媒を用いて燃料電池システムを構築した場合、触媒性能の良否が燃料電池システムの性能の良否に直結する。そのため、本発明に係る触媒還元装置10を用いてCu系触媒を還元すれば、還元反応の厳密な制御が可能となり、品質の高いCu系触媒を安定して製造できるという利点がある。
【0027】
また、触媒26の形状の具体例としては、上述したような金属あるいは合金の酸化物を主成分とする材料そのものを用いて球状、ペレット状、リング状等に成形したものや、あるいはハニカム等の構造体に成形したものが挙げられる。また、メタル、コージェライト等からなる担体に上述した触媒26を担持させた触媒体としても良い。さらに、流動床で使用される触媒26の場合には、成形することなく微粉体のまま還元部22に収容しても良い。
【0028】
還元ガス供給手段30は、還元部22に収容されている触媒26に還元ガスを供給するための装置である。ここで、還元ガス供給手段30から供給される還元ガス中には、少なくとも一酸化炭素が含まれていることが必要である。
【0029】
還元ガス中に含まれる一酸化炭素濃度は、還元される触媒26の用途、性質等に応じて最適な濃度とすればよい。例えば、メタノールの水蒸気改質に用いられるCuO−ZnO系触媒を還元する場合には、還元ガス中の一酸化炭素濃度は、0.001〜10vol%の範囲が好適である。
【0030】
一酸化炭素濃度が0.001vol%未満では、還元部22から排出されるガス中に含まれる一酸化炭素濃度の経時変化を精度良く計測することが困難となるので、好ましくない。また、一酸化炭素濃度が10vol%を超えると、CuO−ZnO系触媒の還元反応が急激に進行して発熱し、触媒26の耐熱限界を超えるおそれがあるので、好ましくない。
【0031】
なお、還元ガス中には、一酸化炭素に加えて水素ガス等の他の還元性ガスが含まれていても良い。また、一酸化炭素や水素ガスの他に、窒素、アルゴン等の不活性ガスや水蒸気等が含まれていても良い。
【0032】
また、還元ガス供給手段30は、所定の組成を有する還元ガスを供給可能なものであれば良く、その具体的構成については、特に限定されるものではないが、図1に示す例では、還元ガス供給手段30としてメタノールやメタンの水蒸気改質装置が用いられている。
【0033】
図1において、還元ガス供給手段30は、原料タンク31と、蒸発部32と、改質部33と、酸化部34と、空気注入手段35と、水蒸気凝縮部36とを備えている。
【0034】
原料タンク31は、メタノール、メタン等の炭化水素と水を蓄えておく部分であり、図示しないポンプを介してメタノール等と水とを蒸発部32に供給するようになっている。また、蒸発部32は、原料タンク31から送られてきたメタノール等と水とを蒸発させ改質部33に供給するためのものである。
【0035】
また、改質部33は、蒸発部32から供給されるメタノール等の炭化水素ガスを水蒸気の存在下で改質触媒と接触反応させることにより、水素を主成分とし、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水蒸気を含む改質ガスを生成させる部分である。改質触媒としては、Cu−Zn系の触媒を用いるのが好ましい。
【0036】
また、空気注入手段35は、改質部33で生成した改質ガスに所定量の空気を注入するものである。さらに、酸化部34は、改質ガス中に含まれる水素及び一酸化炭素と、空気注入手段35を介して注入された空気中に含まれる酸素とを触媒存在下で反応させ、少量の水素と一酸化炭素を含有する還元ガスを製造する部分である。酸化触媒としては、白金、ルテニウム及びこれらの合金を用いるのが好ましい。
【0037】
このように、還元ガス供給手段30として、メタノール等の水蒸気改質装置を用いると、改質ガスに注入する空気量や、酸化部34で行われる改質ガスの酸化反応を制御することにより、所望の一酸化炭素濃度を有する還元ガスを容易に製造できるという利点がある。
【0038】
さらに、水蒸気凝縮部36は、酸化部34で組成が調整された還元ガスに含まれる水蒸気を凝縮除去させる部分である。そして、水蒸気凝縮部36で水蒸気が凝縮除去された還元ガスは、還元手段20に供給されるようになっている。
【0039】
改質部33から得られる改質ガス中には5〜30%の水蒸気が含まれているので、酸化部34から排出される還元ガスをそのまま還元手段20に供給すると、配管中で結露し、還元ガスの組成を変動させるおそれがある。これに対し、還元ガス供給手段30に水蒸気凝縮部36を設けると、還元ガスの組成変動が抑制され、触媒担持量や還元終了時期等の判定精度が向上するという利点がある。
【0040】
なお、還元ガス供給手段30としては、空気注入部35、酸化部34及び水蒸気凝縮部36を設けることなく、改質部33で発生した改質ガスを直接、還元手段20に供給するようにしたものでもよい。また、改質部33で得られた改質ガスを窒素、アルゴン等の不活性ガスで希釈して還元ガスとしてもよい。さらに、還元ガス供給手段30として、メタノール等の水蒸気改質装置を用いる代わりに、所定の組成を有する還元ガスが充填されたガスボンベを用いても良い。
【0041】
濃度測定手段40は、還元手段20から排出されるガス中に含まれる一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度を測定するための装置である。具体的には、熱伝導度型検出器を備えたガスクロマトグラフが用いられるが、連続して一酸化炭素又は二酸化炭素を測定するには、非分散型赤外線吸収式検出器を備えたガス分析計が好適な一例として挙げられる。
【0042】
なお、濃度測定手段40においては、一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度のいずれか一方を測定すれば足りる。これは、一酸化炭素が触媒26の還元に消費されて二酸化炭素が生成し、一酸化炭素の消費量と二酸化炭素の生成量が1:1に対応しているためである。また、濃度測定手段40から排出されるガスをそのまま排気しても良いが、図1の点線で示すように、排出されるガスの一部を、空気注入手段35に還流させるようにしても良い。
【0043】
次に、図1に示す触媒還元装置10の作用について説明する。原料タンク31からメタノール等の炭化水素及び水を蒸発部32に供給し、蒸発部32でメタノール等の蒸気と水蒸気とを発生させ、これを改質部33に供給すると、一般的には、次の化1の式に示す反応が生じて、水素と、一酸化炭素と、二酸化炭素と水蒸気からなる改質ガスが生成するといわれている。
【0044】
【化1】
CHOH+HO → 2.5H+0.5CO+0.5CO+0.5H
【0045】
得られた改質ガスに空気注入手段35を介して所定量の空気を注入し、改質ガスと空気との混合ガスを酸化部34で反応させる。例えば、メタノールの7倍に相当する空気を注入したとすると、酸化部34で生じる反応は、次の化2の式のように表せる。
【0046】
【化2】
2.5H+0.5CO+0.5CO+0.5HO+5.6N+1.4O →0.1H+0.9CO+0.1CO+2.9HO+5.6N
【0047】
酸化部34から排出されるガスの組成は、化2の式の右辺で表されるので、この組成を有するガスを水蒸気凝縮部36に送り、水蒸気を凝縮除去すると、水素1.5vol%、一酸化炭素1.5vol%を含有する還元ガスが得られる。
【0048】
得られた還元ガスを触媒26が収容された還元部22に送り、温度制御手段24により触媒26の温度を一定に保ちながら還元反応を行わせる。この場合、還元ガス中には、一酸化炭素と水素の双方が含まれているので、触媒26は、双方のガスによって還元される。この内、還元ガス中に含まれる一酸化炭素の一部は、次の化3の式に従い、酸化物状態にある触媒26と反応して二酸化炭素を生成させる。
【0049】
【化3】
CO+MeO → Me+CO (Meは金属元素)
【0050】
還元部22から排出されるガス中の一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度は、触媒26の還元量に比例して変動するという性質を有しているので、これを濃度制御手段40を用いて連続的に測定すれば、触媒26の還元終了時期や還元量を容易に判定することが可能となる。
【0051】
図2に、一酸化炭素と水素の双方を含む還元ガスを用いて酸化物触媒を還元した場合における、還元部22から排出されるガス(以下、単に「出ガス」という)中の一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度及び水素濃度の経時変化の一例を示す。なお、図2において、縦軸は、還元反応開始時と還元反応終了時の濃度差を表している。
【0052】
図2に示すように、水素濃度の場合、還元開始直後は還元部22に導入される還元ガス(以下、単に「入りガス」という)中に含まれる水素のほとんどが触媒26の還元反応に消費されるために、出ガス中の水素濃度は極めて低い。しかし、還元開始から短時間で出ガス中の水素濃度は入りガス濃度に達し、それ以後は、触媒26の還元量とは無関係に推移する。そのため、出ガス中の水素濃度の経時変化を測定しても、触媒26の還元終了時期や還元量を特定することは困難である。
【0053】
一方、出ガス中の一酸化炭素濃度は、触媒26の還元量に比例して変動するという性質を有している。そのため、図2に示すように、還元反応が進行するに伴い、還元反応に消費されずにそのまま排出される一酸化炭素が多くなるので、一酸化炭素濃度は徐々に増加し、還元反応が終了した時点では、出ガス中の一酸化炭素濃度は、入りガス中の一酸化炭素濃度で飽和する。
【0054】
また、二酸化炭素は、化3の式に示すように、触媒26を構成する金属酸化物が一酸化炭素により還元されることにより生成するものであり、一酸化炭素の消費量と二酸化炭素の生成量は、1:1に対応する。そのため、出ガス中の二酸化炭素濃度は、一酸化炭素濃度と全く逆の傾向を示し、触媒26の還元量に比例して徐々に減少し、還元終了時点では、入りガス中の二酸化炭素濃度で飽和する。
【0055】
従って、出ガス中の一酸化炭素濃度及び二酸化炭素濃度の内、少なくとも一方の経時変化を測定すれば、出ガス中の一酸化炭素濃度が飽和した時刻をもって、触媒26の還元が終了したと判定することができる。また、還元部22に収容されている触媒26の量が既知である場合には、出ガス中の一酸化炭素濃度を測定することにより、触媒26の還元量や還元率を容易に逆算することができる。
【0056】
さらに、出ガス中に含まれる一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度が触媒26の還元量にほぼ比例して変化することを利用すると、例えば、担体に触媒26を担持させた触媒体の触媒担持量を推定することも可能となる。図3は、触媒担持量が異なる触媒体を一酸化炭素を含む還元ガスで還元したときの、一酸化炭素濃度の経時変化を示したものである。
【0057】
還元条件を一定とした場合、触媒担持量が少ない触媒体の場合には、図3のA線に示すように、短時間で還元が終了するが、触媒担持量が多くなるにつれて、図3のB線、C線に示すように、還元終了までに長時間を要するようになる。
【0058】
従って、担体に担持されている触媒担持量が未知である場合には、所定の時間が経過した後の出ガス中の一酸化炭素濃度を測定すれば、担体に担持されている触媒26の担持量を推定することができる。
【0059】
(実施例1)
東洋CCI製の銅−亜鉛系メタノール改質用触媒MDC−4を平均粒径3μmに粉砕した粉砕粉後、スラリーを調整し、これを内径18mm、長さ120mm、体積30cc、600セル/平方センチのメタル担体に塗布することにより、触媒体を得た。触媒担持量は、11.3g/l、103.0g/l、172.3g/l及び247.0g/lの4種類とした。得られた触媒体の触媒担持量、触媒層厚さ及び担持用スラリーの物性を表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0003553579
【0061】
また、得られた触媒体の断面図を図4に示す。触媒体28は、平板27aと波板27bが積層された担体27上に触媒26が所定の厚さで担持されており、触媒層の厚さは、触媒担持量が多くなるほど厚くなっている。
【0062】
すなわち、平板27aと波板27bの接合部から離れた位置での触媒層の厚さ(以下、これを「薄層触媒層厚さ」という)は、触媒担持量が11.3g/lの場合は、0.1μm未満であった。また、触媒担持量が103.0g/l、172.3g/l、及び247.0g/lと順次増大するに伴い、薄層触媒層厚さは、それぞれ、約15μm、約25μm、及び約35μmに増大した。
【0063】
また、平板27aと波板27bの接合部から触媒層の表面までの厚さ(以下、これを「コーナー部触媒層厚さ」という)も同様に、触媒担持量が増大するに伴って厚くなった。すなわち、触媒担持量が11.3g/l及び103g/lの場合、コーナー部触媒層厚さは100μmであり、触媒担持量が172.3g/l、及び247.0g/lと順次増加するに伴い、コーナー部触媒層厚さも200μm、、及び300μmに増大した。
【0064】
次に、触媒26を担持させた触媒体28を触媒還元装置10の還元部22に収容し、H=2%、CH=1%、CO=1%、残Nの組成を有する還元ガスを用い、触媒体28の平均温度を約200℃、ガス空間速度約2000h−1の条件で4時間の還元を行った。また、熱伝導度型検出器(TCD)を備えたガスクロマトグラフを用いて、還元部22から排出されるガス中の水素濃度、一酸化炭素濃度、及び二酸化炭素濃度を20〜30分毎に測定した。また、一酸化炭素濃度及び二酸化炭素濃度を非分散型赤外線吸収検出器(NDIR)を備えたガス分析計で連続測定した。
【0065】
なお、この場合、還元ガス供給手段30として、H=10%、CH=5%、CO=5%、残Nの組成を有する混合ボンベガスが充填されたガスボンベと、Nガスが充填されたガスボンベを用い、混合ボンベガスをNガスで5倍に希釈して還元ガスとし、これを直接、還元部22に供給した。
【0066】
出ガス中の水素濃度、一酸化炭素濃度、及び二酸化炭素濃度の経時変化を図5〜図8に示す。触媒担持量が11.3g/lの場合、図5に示すように、出ガス中の水素濃度は、還元開始から5分後で既に入りガス濃度の2%を示し、それ以後、水素濃度に経時変化は認められなかった。
【0067】
これに対し、出ガス中の一酸化炭素濃度は、還元開始から5分後に0.8%を示し、30分経過後には0.9%に達した。また、60分経過以降は、入りガス濃度(約1%)で安定した。また、これに対応して、出ガス中の二酸化炭素濃度は、還元開始から5分後に1.3%、30分後に1.1%を示し、60分経過以降は、入りガス濃度(約1%)で安定した。
【0068】
また、触媒担持量を103.0g/lとした場合、図6に示すように、出ガス中の水素濃度は、還元開始から5分後に2%を示し、30分経過後には2.1%に達した。また、それ以降の水素濃度の経時変化は僅かであった。なお、30分経過以降の水素濃度が入りガス濃度を若干超えているが、これは実験誤差と考えられる。
【0069】
これに対し、出ガス中の一酸化炭素濃度は、還元開始から5分後で0.5%を示し、30分経過後には0.7%を示した。一酸化炭素濃度は、その後も徐々に増加し続け、約90分経過後に入りガス濃度で安定した。また、これに対応して、二酸化炭素濃度は、還元開始から5分後で1.5%、30分経過後で1.3%を示し、還元開始から約90分経過後に入りガス濃度で安定した。
【0070】
また、触媒担持量を172.3g/lとした場合、図7に示すように、出ガス中の水素濃度は、還元から5分後には1.2%を示し、30分経過後には2.2%に急増した。しかし、その後は、逆に減少して2%で安定した。
【0071】
これに対し、出ガス中の一酸化炭素濃度は、還元開始から5分後では0%を示し、30分経過後には0.5%を示した。一酸化炭素濃度は、その後も徐々に増加し続け、約60分経過後には入りガス濃度で安定した。また、これに対応して、二酸化炭素濃度は、還元開始から5分後で2.3%、30分経過後で1.5%を示し、約60分経過後に入りガス濃度で安定した。
【0072】
さらに、触媒担持量を247.0g/lとした場合、図8に示すように、出ガス中の水素濃度は、還元開始から5分後には1%を示し、30分経過後には1.7%まで増加した。さらに、60分経過後には2.6%に達したが、その後は若干減少し、90分経過以降は、2.5%で安定した。
【0073】
これに対し、出ガス中の一酸化炭素濃度は還元開始から5分後では0%を示し、30分経過後には0.2%を示した。一酸化炭素濃度は、その後も徐々に増加し続け、約60分経過以降は、入りガス濃度で安定した。また、これに対応して、二酸化炭素濃度は、還元開始から5分後で2.5%、30分経過後で2.3%を示し、約60分経過以降は、入りガス濃度で安定した。
【0074】
図5〜図8から明らかなように、水素濃度は、経時変化がほとんど認められないか、あるいは時間の経過に伴い逆に減少する場合があり、触媒26の還元量に比例して水素濃度が変動していないことがわかる。そのため、水素濃度の経時変化から、還元終了時期や還元量を判定することは困難である。
【0075】
これに対し、一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度は、還元終了時点で入りガス濃度で飽和するので、濃度の経時変化から還元終了時刻を特定できることがわかる。
【0076】
また、触媒担持量が多くなるほど、すなわち触媒層の厚さが厚くなるほど、還元開始直後の一酸化炭素濃度が低く、かつ二酸化炭素濃度が高くなっており、還元が触媒層全体に及ぶまでに時間を要していることがわかる。従って、担体上に触媒が偏在している場合には、還元開始直後の一酸化炭素濃度やその増加率、あるいは二酸化炭素濃度やその減少率の変化となって表れることになる。
【0077】
さらに、触媒26中に多量の酸化銅が存在する場合には、還元初期の出ガス中の一酸化炭素濃度は低く、還元が進行して酸化銅の含有量が減少するに伴い、出ガス中の一酸化炭素濃度が高くなっている。また、二酸化炭素濃度は、一酸化炭素濃度と全く逆の傾向を示している。そのため、予め還元量(還元率)と一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度との関係を求めておけば、一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度から還元量(還元率)を逆算することができる。
【0078】
また、図9に、入りガス中の一酸化炭素濃度に対する還元開始から5分後及び30分後の出ガス中の一酸化炭素濃度の比と、触媒担持量の関係を示す。図9より、入りガス中の一酸化炭素濃度に対する出ガス中の一酸化炭素濃度の比と、触媒担持量との間に直線関係が認められることがわかる。従って、触媒体の触媒担持量が未知である場合において、入りガス濃度及び還元温度が一定の条件下で一酸化炭素濃度を測定すれば、図9に示す結果を用いて触媒担持量や触媒の脱落の有無を判定することができる。二酸化炭素濃度の場合も同様である。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。例えば、上記実施例では、ハニカム状のメタル担体にメタノール改質用触媒を担持させた触媒体を還元しているが、本発明に係る触媒還元装置は、CuO−ZnO系のペレット触媒の還元にも適用できる。
【0080】
また、上記実施例では、本発明に係る触媒還元装置をメタノール改質用触媒の還元処理に用いた例について示したが、メタノール合成、水性ガスシフト反応、酸化反応、酸素除去、メタン化反応、CO水素化反応等に用いられる各種の酸化物触媒の還元処理にも利用することができ、これにより上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
【発明の効果】
本発明に係る触媒還元装置は、酸化物を主成分とする触媒を収容すると共に、該触媒の還元反応を行わせる還元手段と、該還元手段に、一酸化炭素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、前記還元手段から排出されるガス中に含まれる一酸化炭素及び二酸化炭素の内、少なくとも一方の濃度を測定する濃度測定手段とを備えており、触媒の還元量に比例して排出される一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度を連続的に測定しながら還元処理を行うので、触媒の還元終了時期、還元量、還元率等を確実に判定することができるという効果がある。
【0082】
また、本発明に係る触媒還元装置によれば、担体に触媒を担持させた触媒体を還元処理する場合、所定の還元条件下における触媒担持量と排出されるガス中の一酸化炭素濃度又は二酸化炭素濃度との関係を予め求めておけば、担体に担持されている触媒の質量を容易に推定することができるという効果がある。
【0083】
そのため、これを例えば、改質ガス燃料電池システムに用いられるメタノール改質装置に組み込まれる改質触媒の還元処理に応用すれば、品質の高い改質触媒が安定して製造可能となるものであり、産業上その効果の極めて大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る触媒還元装置の概略構成図である。
【図2】触媒収容手段から排出されるガス中の水素濃度、一酸化炭素濃度、及び二酸化炭素濃度の経時変化を示す模式図である。
【図3】触媒担持量の異なる触媒体を同一条件下で還元した場合における、出ガス中の一酸化炭素濃度の経時変化を示す模式図である。
【図4】触媒担持量の異なる触媒体の拡大断面図である。
【図5】触媒担持量が11.3g/lである触媒体を還元した場合における出ガス中の水素濃度、一酸化炭素濃度、及び二酸化炭素濃度の経時変化を示す図である。
【図6】触媒担持量が103.0g/lである触媒体を還元した場合における出ガス中の水素濃度、一酸化炭素濃度、及び二酸化炭素濃度の経時変化を示す図である。
【図7】触媒担持量が172.3g/lである触媒体を還元した場合における出ガス中の水素濃度、一酸化炭素濃度、及び二酸化炭素濃度の経時変化を示す図である。
【図8】触媒担持量が247.0g/lである触媒体を還元した場合における出ガス中の水素濃度、一酸化炭素濃度、及び二酸化炭素濃度の経時変化を示す図である。
【図9】入りガス中の一酸化炭素濃度に対する出ガス中の二酸化炭素濃度の比と、触媒担持量との関係を示す図である。
【符号の説明】
10 触媒還元装置
20 還元手段
26 触媒
30 還元ガス供給手段
40 濃度測定手段

Claims (1)

  1. 酸化物を主成分とする触媒を収容すると共に、該触媒の還元反応を行わせる還元手段と、
    該還元手段に、一酸化炭素を含有する還元ガスを供給する還元ガス供給手段と、
    前記還元手段から排出されるガス中に含まれる一酸化炭素及び二酸化炭素の内、少なくとも一方の濃度を測定する濃度測定手段とを備えていることを特徴とする触媒還元装置。
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