JP3554531B2 - 被膜特性の極めて優れた電磁鋼板とその絶縁被膜形成方法 - Google Patents

被膜特性の極めて優れた電磁鋼板とその絶縁被膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い占積率と、特に歪取り焼鈍後の密着性と耐蝕性に優れた絶縁被膜を有する電磁鋼板およびその絶縁被膜形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電磁鋼板は、所定の形状に連続的に打ち抜かれた後、積層されかしめや溶接などにより固着され、主にモーターやトランスなどの鉄芯として使用されている。
近年では、省エネルギーの観点からモーターやトランスの性能向上が求められており、鉄芯についても打ち抜き後、特性向上のために歪取り焼鈍を行う場合が増加している。
【0003】
ところで、電磁鋼板の表面には絶縁被膜が施されているが、この絶縁被膜の特性により、鋼板の溶接性、打抜き性、耐蝕性などの特性が大きく左右されることから、絶縁性だけでなく、優れた被膜特性を付与することが重要である。
従来、電磁鋼板の絶縁被膜としては無機系、有機系、無機有機混合系の絶縁被膜が知られているが、無機系絶縁被膜では有機系や無機有機混合系と比較して打抜き性が劣っており、有機系絶縁被膜では無機系、無機有機混合系と比較して歪取り焼鈍後の密着性、耐蝕性が劣っており使用に耐えない。
【0004】
無機有機混合系絶縁被膜はこれら無機系、有機系絶縁被膜の難点を解決すべく鋭意研究が重ねられており、特公昭50−15013号公報では、重クロム酸塩と酢酸ビニル、ブタジエン−スチレン共重合物、アクリル樹脂などの有機樹脂エマルジョンを主成分とする処理液を用いて絶縁被膜を形成することにより、高い占積率、優れた密着性、打抜き性などの被膜特性が得られる絶縁被膜形成方法が提案されている。
ところが、従来の無機有機混合系絶縁被膜では重クロム酸塩の使用にみられるように、被膜成分としてクロム酸化合物が含有されている。このため、電磁鋼板の製造工程、あるいは鉄芯の製造工程における環境問題を考慮すると、クロム酸化合物を含有しない絶縁被膜処理技術の開発が望まれている。
【0005】
そこで、特開平5−78855号公報では、100〜350g/lのりん酸2水素アルミニウム(P換算)水溶液とpH1〜3の合成樹脂水性エマルジョンとを、有機樹脂不揮発物をりん酸2水素アルミニウムと合成樹脂水性エマルジョンの両者の不揮発物の10〜40重量%とすることにより、有害物質を含まずポットライフの長い絶縁被膜形成用組成物を提供する技術が開示されている。
【0006】
また、特開平6−330338号公報では、特定組成のりん酸塩と特定粒径の有機樹脂エマルジョンを特定割合配合し、鋼板に塗布焼き付けることにより、クロム化合物を含まない処理液で従来のクロム化合物を含有する絶縁被膜と同等の被膜特性を有し、かつ優れた歪取り焼鈍後のすべり性を保持する処理方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、クロム酸化合物を使用した絶縁被膜と比較して、りん酸塩を用いた絶縁被膜では鉄芯製造上大幅な問題はないと推定されるが、歪み取り焼鈍後の密着性や耐蝕性が低位であった。さらに、処理液の貯蔵安定性もゲル化あるいは増粘するところまでは進行しないものの、処理液を長期保存後に塗布焼き付けして形成された被膜では歪み取り焼鈍後の密着性が劣化するといった問題点があった。
これは処理液あるいは塗布焼き付け工程中での有機樹脂エマルジョンの分散性が、クロム酸化合物を含有する絶縁被膜用処理液に適合した有機樹脂エマルジョンより劣っており、その結果、処理液中で有機樹脂が凝集し、そのような凝集粒が、塗布乾燥された絶縁被膜中に存在するため、歪取り焼鈍時の加熱により有機樹脂成分が酸化・揮発して、密着性や耐蝕性が劣化していることが判明した。
【0008】
りん酸は3価の有機酸であり、エマルジョンの安定性を著しく損なう性質を保持していることから、従来非常に化学的安定性が良好であるとされる有機樹脂エマルジョンを用いた場合でも、有機樹脂粒子が処理液中で凝集状態になっていたり焼き付け工程中に凝集して絶縁被膜が形成され、絶縁被膜の歪取り焼鈍後の密着性や耐蝕性を低下させると推定される。
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、りん酸金属塩溶液中の有機樹脂エマルジョンの安定性に及ぼす要因が、有機樹脂エマルジョンの特性の中でも特にゼータ電位(ζ電位)と強い相関を示すことを見出し、特定ゼータ電位の有機樹脂エマルジョンを特定割合配合することにより、被膜特性が大幅に向上することを見出した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨は、次の通りである。
(1)電磁鋼板の表面に、りん酸金属塩と、ゼータ電位の絶対値が30mV以上である有機樹脂エマルジョンを含有し、りん酸金属塩100重量部(固形分換算)に対して上記有機樹脂エマルジョンが3〜50重量部(固形分換算)の混合比率である処理液を電磁鋼板に塗布し乾燥してなる絶縁被膜を有することを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
(2)電磁鋼板の表面に、りん酸金属塩と、ゼータ電位の絶対値が30〜80mVであるソープフリータイプの有機樹脂エマルジョンを含有し、りん酸金属塩100重量部(固形分換算)に対して上記有機樹脂エマルジョンが3〜50重量部(固形分換算)の混合比率である処理液を電磁鋼板に塗布し乾燥してなる絶縁被膜を有することを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
(3)乳化重合により有機樹脂エマルジョンを合成する際に、重合触媒として水溶性過硫酸塩を有機樹脂単量体に対して0.3〜2.0重量%配合することを特徴とする前記(1)または(2)記載の被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
(4)有機樹脂エマルジョンが粒子表面にSO・NH基を有することを特徴とする前記(1)または(2)記載の被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
(5)有機樹脂エマルジョンが粒子表面にSO・NH基とOH基を両方有することを特徴とする前記(1)または(2)記載の被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のりん酸金属塩と有機樹脂エマルジョンを主成分とする処理液に、非解離性水酸基、エーテル基、エステル基を含有する水溶性低分子有機化合物をりん酸金属塩100重量部(固形分換算)に対し、1〜15重量部含有する処理液を電磁鋼板に塗布し乾燥したことを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
【0011】
(7)ゼータ電位の絶対値が30〜80mVで、かつ粒子径が0.05〜0.5μmであるソープフリータイプの有機樹脂エマルジョンを、りん酸金属塩100重量部(固形分換算)に対して3〜50重量部(固形分換算)を主成分とする処理液を電磁鋼板に塗布し乾燥することを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板の絶縁被膜形成方法。
(8)前記(7)記載の鋼鈑表面処理液を電磁鋼板に塗布し、150℃〜350℃の温度に加熱し、被膜塗布量を0.5〜3.0g/mの範囲とすることを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板の絶縁被膜形成方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施する具体的形態について説明する。
本発明で使用する無機化合物について説明する。
本発明で使用するりん酸金属塩とは、りん酸アルミニウム、りん酸マグネシウム、りん酸亜鉛、りん酸マンガン、りん酸モリブデン、りん酸カルシウム、りん酸バリウム、りん酸ストロンチウム等で、第一りん酸塩、第二りん酸塩あるいは第三りん酸塩のいずれも使用可能であるが、容易に水溶性となる第一りん酸塩の使用が作業性も良好であることから好ましい。
【0013】
これらのりん酸塩は被膜の主成分を成すものであり、単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。りん酸金属塩を用いる場合、りん酸金属塩をそのまま蒸留水に溶解し水溶液として用いても良いし、りん酸溶液に金属を酸化物、水酸化物、炭酸塩の形態で溶解せしめても良い。溶解する金属の酸化物としては、例えばMgO,CaO,ZnO等で、水酸化物としてはMg(OH),Ca(OH),Zn(OH)、炭酸塩としてはMgCO,CaCO,ZnCO等である。
本発明では、その他の無機成分として必要に応じてコロイダルシリカ、硼酸、硼酸塩の1種または2種が用いられる。これらを添加することにより、被膜の緻密化、表面光沢の増加などの被膜改善が得られるものである。
【0014】
次に、本発明で使用する有機樹脂について説明する。
図1に有機樹脂のζ電位と、りん酸塩溶液中の凝集粒径の関係を示す。図1で分かるように、本発明で使用する有機樹脂としては、ゼータ電位の絶対値が30mV以上、好ましくは30〜80mVであることが特徴である。
そのような有機樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン、不飽和ポリエステル、酢酸ビニル、フェノールなど、エマルジョン化できるものであれば本発明で使用することが可能である。
本発明でいうゼータ電位とは、エマルジョン粒子の表面電位の一つであり、電気泳動法や流動電位法により測定されるものである。具体的には一般に市販されているゼータ電位測定装置、例えば大塚電子株式会社製ELS−8000などを用いて測定することができる。
【0015】
ゼータ電位は、一般的には希釈溶液中のコロイド分散系の安定性に影響を及ぼすものであるが、本発明者等は、有機樹脂エマルジョンのゼータ電位が濃厚りん酸塩溶液中のエマルジョンの安定性評価にも用いることが可能で、ゼータ電位の絶対値が30mV以上、好ましくは30〜80mVの範囲である有機樹脂エマルジョンが濃厚りん酸塩溶液に対して非常に安定しており、したがって塗布焼付後の絶縁被膜中の有機樹脂粒子の凝集状態を改善し、絶縁被膜の歪み取り焼鈍後の密着性および耐蝕性を向上させることを見出した。
【0016】
一般的には、エマルジョン粒子の安定性は、ゼータ電位や粒子径だけでなく、エマルジョン粒子のイオン価、Hamaker定数、電解質濃度、電解質の種類、水溶液としてのイオン強度や溶解パラメーターなど非常に錯綜しており、明確には解明されていない。
本発明者等もゼータ電位の絶対値が30mV以上、好ましくは30〜80mVである有機樹脂エマルジョンが、どのようなメカニズムにより絶縁被膜中の凝集状態を改善するのかについては詳細には明らかではないが、本発明範囲のゼータ電位を持つ有機樹脂エマルジョンでは、従来の常識を覆し濃厚リン酸塩溶液中でもほとんど凝集粒の発生が無く、乾燥直前状態でも良好な分散性を保持できるためと推定される。
【0017】
本発明で使用される有機樹脂エマルジョンとしては、ゼータ電位が30mV以上、好ましくは30〜80mVの範囲であれば良い。どのような有機樹脂エマルジョンでも良いが、ゼータ電位を本発明範囲内に制御するためには有機樹脂として極性基を持つものが有効である。これらの極性基はどのようなものでも良い。例えば、水酸基とSO3 ・NH4 基 (アンモニウム結合スルホン酸基)を選べば良好な被膜特性を発揮する。
水酸基を持つ有機樹脂としては、例えば主成分としてα、βモノエチレン系不飽和単量体と水酸基を含有する単量体とから重合して得られるポリマーの1種又は2種以上の混合物として合成することが可能である。
【0018】
具体的にα、βモノエチレン系不飽和単量体としては、例えばアクリル酸エステル類 (アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸2エチルへキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2エチルブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸3エトキシプロピル等)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸デシルオクチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2メチルへキシル、メタクリル酸3メトキシブチルなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルケトン、ビニルトルエンおよびスチレンなどを挙げることが可能である。
【0019】
更に良好な被膜特性を発現させるために添加する水酸基を含有する単量体としては、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2ヒドロキシエチル、アクリル酸3ヒドロキシブチル、アクリル酸2,2ビス(ヒドロキシメチル)エチル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3ヒドロキシブチル、メタクリル酸2,3ジヒドロキシプロピル、Nメチロールアクリルアミドなどが挙げられる。
さらに、極性基としてホスホ基のようなりん原子含有基を用いても良い。具体的には、モノ(2ヒドロキシエチルメタクリレート)アシドホスフェート、モノ(3クロロ2ヒドロキシプロピルメタクリレート)アシドホスフェートなどが挙げられる。
【0020】
次に、SO・NH基を有機樹脂エマルジョンに導入するためには、まず、スルホン酸基あるいは硫酸エステル基を有機樹脂に導入した後、アンモニアなどを用いてスルホン酸基と中和反応させることによりSO・NH基とする方法などが挙げられる。具体的にはスルホン酸基あるいは硫酸エステル基を導入するためには、上記α、βモノエチレン系不飽和単量体を主成分とする混合物を重合させる時に、単量体として共重合させる場合にはスルホニルエチメタクリレートなどを用いることが可能である。
【0021】
別の方法としては、例えばアリルスルホン酸ソーダ、スチレンスルホン酸ソーダなどを同時にあるいは逐次的に反応させることにより得ることができる。さらに、乳化重合法を用いて有機樹脂エマルジョンを合成する場合には、重合開始剤として水溶性過硫酸塩を用いることがあるが、この場合には有機樹脂の高分子鎖末端にスルホン酸基が取り込まれるため、有機樹脂表面にスルホン酸基が位置するため効率的に有機樹脂エマルジョンのゼータ電位を制御することが可能である。
【0022】
このような水溶性過硫酸塩の例としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどがある。本発明者らは乳化重合法における水溶性過硫酸塩添加について鋭意検討した結果、有機樹脂単量体に対して0.3〜2.0重量%配合することにより有機樹脂にスルホン酸基を効率よく導入し、アンモニアとの中和反応によってSO・NH基に反応させることが可能で、りん酸塩溶液との混和性に優れた有機樹脂エマルジョンとすることにより、焼鈍後に優れた密着性と耐蝕性を持つ絶縁被膜が形成できることを見出したものである。
水溶性過硫酸塩の種類により多少の増減は有るものの、さらに好ましくは、0.6〜1.2重量%の範囲である。なお、水溶性過硫酸塩を用いた場合には、厳密には硫酸エステル基が導入されるものであるが、本発明の目的を考慮するとスルホン酸基でも硫酸エステル基でも同等の働きをすることから何ら問題無い。
【0023】
一般に、有機樹脂エマルジョンの安定性を高めるためには、水和力の大きい界面活性剤を用いたり、水溶性ポリマーを吸着させることによりエマルジョン粒子表面の水和保護層を強化したり、有機樹脂自身の改良方法としては不飽和カルボン酸モノマーの共重合によるカルボキシル化変性などの方法がある。
本発明者らは、りん酸金属塩を主成分とする水溶液に有機樹脂エマルジョンを添加する場合では、有機樹脂エマルジョンのゼータ電位が非常に大きな影響を与えることを見出し、さらにエマルジョン粒子表面に存在するSO・NH基が特に優れたゼータ電位制御性を保持していることを見出したものである。
【0024】
通常、有機樹脂エマルジョンの安定性を高めるために導入される親水基には、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の官能基が知られており、カルボキシル基、スルホン酸基はアニオン性、アミノ基はカチオン性、水酸基、エーテル基、アミド基などはノニオン性として知られている。SO・NH基あるいはSO・NH基と水酸基が、りん酸金属塩を主成分とする水溶液を用いた場合に特に良好であるメカニズムについては詳細には明らかではないが、SO・NH基は親水性が非常に高く、かつ高分子鎖の末端に位置するため、エマルジョン表面に存在する確率が高いためと推定される。
【0025】
中和反応で添加するアンモニアについては、特に限定するものではないが、添加量が多すぎる場合には、余剰の遊離アンモニアとして有機樹脂エマルジョン中に存在し、塗布乾燥時の臭気の発生原因となる恐れが有ることから、スルホン酸基の当量かあるいは当量より若干少な目が好適である。
【0026】
本発明では、耐きず付き性向上のために、乳化重合法の場合には有機樹脂エマルジョン粒子を内部ゲル化重合体としても良い。エマルジョン粒子の内部をゲル化重合体とするためには、α、βモノエチレン系不飽和単量体の一部を、分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する多官能性単量体で置き換えることにより達成することができる。
そのような多官能性単量体としては、多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エステル、多塩基酸の重合性不飽和アルコールエステル、および2個以上のビニル基で置換された芳香族化合物などである。
【0027】
そのような例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、1,1,1,トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1トリスヒドロキシメチルエタントリメタクリレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼンなどである。
【0028】
本発明で使用する有機樹脂エマルジョンの特徴は、エマルジョン粒子の表面電位であるゼータ電位であることから、粒子内に異種粒子を含有させたり、表面のみに特定の処理を施すいわゆるハイブリッド型樹脂エマルジョンを用いても良い。
ここでいうハイブリッド型エマルジョンとは、2種以上の特性の異なる高分子をエマルジョン粒子中に複合させたものをいい、乳化重合法などにより様々な形態のものが実用化されている。代表的なものとしては、例えばコアシェル型、パワーフィード型、サンドイッチ型、粒子複合型などがある。なお、中心部が空洞となっているいわゆる中空粒子でも良い。
【0029】
本発明で使用するエマルジョン粒子の形状は特に限定するものではないが、粒子の凝集性の観点からできるだけ真球に近いものが好適である。粒子の形状が板状であったり、細長い場合には曲率の大きい部分とその他の部分とで表面電位に偏りが発生しやすく、凝集するきっかけとなるからである。
【0030】
このようにエマルジョン樹脂粒子表面に水酸基およびスルホン酸基を導入し、ゼータ電位を30mV以上に制御することにより、上記に述べたアクリル、ポリスチレン、酢ビ、エポキシ、ポリウレタン、ポリアミド、フェノール、メラミン、シリコン、ポリプロピレン、ポリエチレン等から選ばれる有機樹脂の1種又は2種以上を本発明で使用することができる。
更に望ましいゼータ電位は30〜80mVの範囲である。ゼータ電位が30mVよりも小さい場合にはエマルジョンの安定性が低く、溶液中の凝集粒が大きくなって形成された絶縁被膜中に有機樹脂の均一性が劣るため焼鈍後の耐蝕性が劣化し、80mVよりも大きくなると場合によっては、凝集粒が発生し造膜性が劣ることがある。
【0031】
本発明で使用する有機樹脂エマルジョンでは、エマルジョン粒子の電気二重層が十分安定しており、特に限定しないが乳化剤あるいは界面活性剤は必要としない。
有機樹脂エマルジョンの粒径は0.05〜0.5μmの範囲にあることが必要である。粒径が0.05μm未満の場合は密着性が劣化する傾向にあり、粒径が0.5μmを超える場合には耐食性が不十分となる。さらに望ましい粒径範囲は0.1〜0.5μmの範囲である。
【0032】
りん酸塩と有機樹脂の混合割合については、りん酸塩100重量部に対し有機樹脂分が3〜50重量部が好ましい。有機樹脂分が3重量部未満では、被膜が白く光沢が無く、50重量部超では歪取り焼鈍後に被膜が剥離する恐れがあるからである。
絶縁被膜量としては0.5〜3.0g/mが適当である。0.5g/m未満では耐電圧を十分に確保することが難しく、3.0g/m超では被膜の密着性が劣る傾向にあるからである。
また、焼き付け条件は、通常行われているような300〜800℃に設定した乾燥炉で、短時間に板温で150℃から350℃とするのが良い。板温が150℃未満では水分の蒸発が不完全で耐蝕性が劣化し、350℃超では有機樹脂が酸化されて発粉する恐れがあるためである。
【0033】
次に、本発明で使用する非解離性水酸基、エーテル基、エステル基を含有する水溶性低分子有機化合物とは、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、カルボン酸、糖などの水溶性の有機物で非解離性水酸基、エーテル基、エステル基を持つもので、有機樹脂のように重合などにより高分子化していないもので、望ましくは分子量が1000以下のものである。
【0034】
また、本発明でいう水溶性とは、水に対して無限溶解することはもちろん、比較的高い溶解度を持つもので十分であり、具体的な化合物としては、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコールなどのポリオール類、蔗糖、果糖等の糖類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1、4−ジオキサンなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などが使用できるが、特に好ましいのはエチレングリコールなどのポリオール類である。
【0035】
また、本発明において使用される非解離性水酸基、エーテル基、エステル基を含有する水溶性低分子有機化合物は、塗布焼き付け後に被膜中に残存する必要があることから、液体の場合は沸点、固体の場合は昇華点が水の沸点である100℃よりも高い必要がある。通常は沸点あるいは昇華点が200℃以上であることが望ましい。
水溶性有機化合物の配合割合をりん酸塩100重量部に対し、1〜15重量部に制限する理由は、1重量部未満では水溶性有機化合物の効果が得られないためであり、15重量部超では焼鈍後の耐食性が若干劣化するためである。
【0036】
【実施例】
(実施例1)
メタクリル酸メチル、アクリル酸などのα、βモノエチレン系不飽和単量体をそれぞれ特定割合に組み合わせ、通常の乳化重合法により、濃度30%、粒子径が0.3μmで表1に示すゼータ電位(絶対値)を持つエマルジョン溶液を調整した。この有機樹脂エマルジョンを30%のりん酸水素アルミニウム溶液と当量混合し、24時間後の水溶液中の2次粒子径(累積90%粒子径、μm)をレーザー粒度計で測定した。
次に、公知の方法で処理した仕上げ焼鈍後の電磁鋼鈑(板厚0.5mm)に上記処理液をロールコーターで板温が200℃で乾燥塗布量が1.0g/mになるよう焼き付けた後、750℃2時間窒素気流中で歪取り焼鈍した後の耐食性と密着性を評価した。なお、表1中のζ電位は絶対値を示している。
【0037】
【表1】
Figure 0003554531
【0038】
(実施例2)
表2に示す有機樹脂組成物を用いて、それぞれ30重量%の有機樹脂エマルジョンを作製した。それらのエマルジョンを用いて表3に示す処理液を調製した。
本発明で使用される有機樹脂エマルジョンとしては、具体的には例えば日本カーバイド(株)製ニカゾールなどが適当である。
次に、公知の方法で処理した仕上げ焼鈍後の電磁鋼鈑(板厚0.5mm)に、表3に示す有機樹脂エマルジョンを含有する処理液をロールコーター方式の塗布装置で塗布した後、板温150℃で絶縁被膜の塗布量が1.0g/mになるように焼き付け処理を行った。密着性、耐蝕性の評価については750℃×2時間、窒素気流中で歪取り焼鈍を行った後特性を評価した。その結果を表4に示す。
【0039】
【表2】
Figure 0003554531
【0040】
【表3】
Figure 0003554531
【0041】
【表4】
Figure 0003554531
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、クロム化合物を含まない絶縁被膜処理剤によって、高占積率、優れた歪取り焼鈍後の密着性、耐蝕性を有する電気絶縁被膜を持つ電磁鋼板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ζ電位と溶液中の凝集粒径の関係を示す図である。

Claims (8)

  1. 電磁鋼板の表面に、りん酸金属塩と、ゼータ電位の絶対値が30mV以上である有機樹脂エマルジョンを含有し、りん酸金属塩100重量部(固形分換算)に対して上記有機樹脂エマルジョンが3〜50重量部(固形分換算)の混合比率である処理液を電磁鋼板に塗布し乾燥してなる絶縁被膜を有することを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
  2. 電磁鋼板の表面に、りん酸金属塩と、ゼータ電位の絶対値が30〜80mVであるソープフリータイプの有機樹脂エマルジョンを含有し、りん酸金属塩100重量部(固形分換算)に対して上記有機樹脂エマルジョンが3〜50重量部(固形分換算)の混合比率である処理液を電磁鋼板に塗布し乾燥してなる絶縁被膜を有することを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
  3. 乳化重合により有機樹脂エマルジョンを合成する際に、重合触媒として水溶性過硫酸塩を有機樹脂単量体に対して0.3〜2.0重量%配合することを特徴とする請求項1または2記載の被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
  4. 有機樹脂エマルジョンが粒子表面にSO・NH基を有することを特徴とする請求項1または2記載の被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
  5. 有機樹脂エマルジョンが粒子表面にSO・NH基とOH基を両方有することを特徴とする請求項1または2記載の被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のりん酸金属塩と有機樹脂エマルジョンを主成分とする処理液に、非解離性水酸基、エーテル基、エステル基を含有する水溶性低分子有機化合物をりん酸金属塩100重量部(固形分換算)に対し、1〜15重量部含有する処理液を電磁鋼板に塗布し乾燥したことを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板。
  7. ゼータ電位の絶対値が30〜80mVで、かつ粒子径が0.05〜0.5μmであるソープフリータイプの有機樹脂エマルジョンを、りん酸金属塩100重量部(固形分換算)に対して3〜50重量部(固形分換算)を主成分とする処理液を電磁鋼板に塗布し乾燥することを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板の絶縁被膜形成方法。
  8. 請求項7記載の鋼鈑表面処理液を電磁鋼板に塗布し、150℃〜350℃の温度に加熱し、被膜塗布量を0.5〜3.0g/mの範囲とすることを特徴とする被膜特性の極めて優れた電磁鋼板の絶縁被膜形成方法。
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