JP3564376B2 - 研磨層、燃焼エンジン、ガスタービン、及び、その製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、対向する二つの部材が摺動する恐れがある箇所などで、摺動の際に相手側を削ることにより同部材の破壊・焼損等を防止する、いわゆるアブレシシブコーティング等に用いられる研磨層に関する。
例えばガスタービン、ジェットエンジン等の燃焼エンジンに関し、特に動翼とシュラウド等の両者の隙間を詰める必要があるが故に摺動する恐れがある燃焼エンジンに適用される研磨層及びその燃焼エンジンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガスタービンの動翼先端と、この動翼先端に対向するシュラウドとの間には、運転中に両者が接触しないように所定寸法のクリアランスが設けられている。
このクリアランスが大きすぎると動翼の圧力面側から負圧面側へ燃焼ガスが漏れだし、圧力損失が大きくなって運転効率が低下してしまう。
これを防止してガスタービンの性能を向上させる目的で、極限までクリアランスを小さく設定する試みがなされている。
【0003】
ところが、クリアランスがあまりに小さすぎると、ガスタービンの運転開始初期段階において、動翼とシュラウドの熱膨張差、タービンロータの偏心、ガスタービン全体に生じる振動等に起因して、動翼の先端とシュラウドとが摺動してしまうことがあり、これを初期摺動と呼ぶ。
また、ガスタービンが運転されていくと、高温ガスに曝されたシュラウドが徐々に熱変形を起こし、やはり動翼の先端とシュラウドとが摺動してしまうことがあり、これを二次的摺動と呼ぶ。
初期摺動時には、動翼の先端とシュラウドとの激しい摺動が生じる場合があるのに対し、二次的摺動は、一般に比較的緩やかな摺動となる。
【0004】
一般的にシュラウドは、その内周面に、ジルコニア(ZrO↓2)等による遮熱被覆(Thermal Barrier Coating、以下 TBCと呼ぶ。)を備えているか、またはMCrAlYからなる耐酸化被膜を備えている。ジルコニアからなるコーティングの場合、通常は動翼の母材金属よりも高硬度である。
このため、動翼先端とシュラウド内周面とが摺動すると、動翼が大きく損傷を受けてしまうことがあった。
【0005】
この様な摺動の対策として、特開平4−218698号公報には、酸化防止性材料であるMCrAlYからなるマトリクス中に研磨粒子が分散した研磨層を備えたガスタービン動翼が開示されている。
この動翼では、研磨粒子として、例えば立方晶窒化硼素(Cubic Boron Nitrido、以下 CBNと呼ぶ。)等が用いられている。
CBNはジルコニアよりも高硬度である。
従って、動翼先端とシュラウド内周面とが摺動すると、このCBNからなる研磨粒子がシュラウドの内周面を研磨する。
これによって、動翼とシュラウドとの間に適度なクリアランスが維持される。また、その製造方法等は、特表平9−504340号、特開平10−30403号や米国特許第5702574号にも記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、CBNは、耐熱性が十分ではないので、酸化雰囲気での長期間の運転によって研磨粒子が酸化、溶融又は昇華して、消失してしまうことがある。
また、酸化によるMCrAlYの劣化に伴って、CBNの粒子が徐々に脱落してしまうこともある。
従って、初期摺動時には研磨粒子によるシュラウドの研磨がなされるものの、研磨層が劣化した後の二次的摺動では研磨が不十分となり、動翼が大きく損傷を受けてしまうことがある。
特に近年、エネルギー効率向上の観点からガスタービンにおける燃焼温度が高温化する傾向が見られ、研磨層の熱劣化の問題が顕著となりつつある。
同様の問題は、例えばジェットエンジン等の、ガスタービン以外の燃焼エンジンにも見られる。
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期間の使用に亘って、研磨性能が発揮できる研磨層の提供にある。
また、この研磨層を適用することにより、動翼とシュラウドとの適度なクリアランスが維持され、従って動翼の損傷が生じにくいエンジンの提供にある。
更に、上記の問題に鑑みてなされた他の発明は、このような燃焼エンジンに好適な研磨層の形成方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するためになされた発明は、次のとおりである。
【0009】
先ず、研磨層の発明として、第1の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する第1層と、第2の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する前記第1層の外面側に位置する第2層とを有することを特徴とする研磨層である。
【0010】
また、装置発明として、圧縮機と燃焼器とタービンを備える燃焼エンジンの可動部分と非可動部分とが対向する面の一方に、第1の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する第1層と、第2の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する前記第1層の外面側に位置する第2層とを有することを特徴とする燃焼エンジンである。
【0011】
更に、製造方法の発明として、被成膜面に金属めっきによって第1の研磨粒子を固定する工程と、該第1の研磨粒子が固定された金属めっき上にコーティング材を成膜する工程と、該コーティング材に金属めっきによって第2の研磨粒子を固定する工程と、該第2の研磨粒子を固定された金属めっき上にコーティング材を成膜する工程とを含むことを特徴とする研磨層の製造方法である。
【0012】
これらの発明により、例えば、初期摺動では外面側の第2層が劣化・消失しても、第1層のコーティング層が残存し、この第1層の第1の研磨粒子によってシュラウドの内周面が研磨される。
従って、長期間の使用に亘って、良好な研磨性能が発揮できる。
また、燃焼エンジンの動翼又はシュラウドのいずれか一方の面に本研磨層を適当することにより、動翼とシュラウドとを近接させて組立てたとしても、動翼とシュラウドとの適度なクリアランスが維持され、燃焼エンジンの性能向上が図れ、また、動翼やシュラウドの損傷も防止される。
尚、研磨層が動翼先端に設けられた場合は、シュラウド内周面が研磨されることになり、研磨層がシュラウドの内周に設けられた場合は、動翼の先端が研磨粒子によって研磨されることになり、これによって動翼とシュラウドとのクリアランスが維持される。
更には、研磨層の製造においては、金属めっきによって耐熱性の研磨粒子を固定するので、各層への研磨粒子の固定・分散が効率よく容易にできる。
【0013】
研磨層の発明として好ましくは、第1層及び第2層の研磨粒子は、シュラウドの内周面よりも高硬度である。これにより、シュラウドの研磨がより確実に達成される。
なお、本明細書で用いられる硬度とは、常温下で測定されるビッカース硬度(HV)等の一般的意味の硬度のことである。
【0014】
研磨層において、好ましくは、第1層の第1の研磨粒子は、その耐熱温度が第2層の第2の研磨粒子の耐熱温度よりも高い粒子とし、第2層の第2の研磨粒子は、その硬度が第1層の第1の研磨粒子よりも高硬度である粒子とする。
これにより、動翼とシュラウドとが激しく摺動する初期摺動では、硬度の高い第2層の第2の研磨粒子によって、比較的短時間でシュラウドが研磨される。
一方、長期間の運転によって第2層が消失した後も、耐熱性に優れる第1層の第1の研磨粒子が残存し、これによって二次的摺動時の研磨が継続される。
【0015】
また、好ましくは、各層は酸化防止材を主成分とすることにより、研磨粒子を酸化から防止することができ、加えて、被成膜面である動翼先端部分の母材の酸化も防止できる。
また、好ましくは、アルミナの粒子、シリコンカーバイトの粒子、焼結ダイヤの粒子等の耐熱性の粒子を第1層に分散させたので、耐熱性に優れ、且つ、比較的硬度のある第1層を形成することができる。
また、好ましくは、CBNの粒子を第2層に分散させたので、高硬度で研磨性能に優れる第2層を形成することができる。
また、好ましくは、第1層の厚さを、研磨粒子の粒子径以上の厚さとしたので、研磨粒子の先端が第1層から突出することがないので、第1層上に施される金属めっきを研磨粒子が阻害してしまうことがない。
また、好ましくは、第2層の厚さを、研磨粒子の粒子径以下の厚さとしたので、動翼先端とシュラウドとが摺動し始める極めて初期の段階から、シュラウドの研磨が行われ、動翼の損傷がより確実に防止される。
【0016】
更には、シュラウドの内周面がジルコニア(ZrO2)を主成分とするコーティング層である場合、第1層の研磨粒子の材質としてはアルミナ(Al2O3)、シリコンカーバイド(SiC)及び焼結ダイヤからなる群から選択された1種又は2種以上が好適であり、第2層の研磨粒子の材質としてはCBNが好適である。
【0017】
また、好ましくは、第1コーティング層及び第2コーティング層のマトリックスの空隙率は1%以下である。
これにより、酸化によるマトリックスの劣化がより確実に防止され、研磨粒子の脱落が抑制される。
マトリックスの好ましい主成分は、MCrAlYである。
MCrAlYにおけるMは、鉄、ニッケル及びコバルトからなる群から選択された1種又は2種以上の金属元素を意味する。
すなわち、MCrAlYは、鉄、ニッケル又はコバルトと、クロム(Cr)と、アルミニウム(Al)と、イットリウム(Y)とを主成分とする合金である。
【0018】
装置発明として、好ましくは、ガスタービンのタービンのロータに取り付けられた動翼の先端に研磨層を有するので、最近効率向上の為に燃焼ガス温度が高温化されてきたガスタービンの、高温燃焼ガスに曝される動翼においても、初期摺動、二次摺動の何れの場合でも、良好な研磨性能を発揮することができるので、クリアランスを保つことができ、翼の損壊が防止できる。
【0019】
製造方法の発明として好ましくは、ガスタービンのローターに円周上に取付けられる動翼の先端に円周方向外側向きに突出部分を設け、この突出部分に研磨層を成形するようにしたので、金属めっきや溶射の際の非被成膜面のマスキング等、被成膜面の特定が容易であるとともに、万一、動翼先端とシュラウドが急激に接触し、研磨層の研磨能力を越えた場合でも、突出部分が先ず最初に破壊されるので、動翼本体がダメージを受け、ガスタービン全体に大きなトラブルが発生することを防止できる。
【0020】
製造方法の発明として、好ましくは、第1めっき工程及び第2めっき工程はニッケル電気めっきによって成膜される。
ニッケルめっき層は耐熱性が高く、また、第1のコーティング層及び第2のマトリクスとのなじみも良好である。
【0021】
好ましくは、上記第1成膜工程及び第2成膜工程は酸化防止性材料の溶射によって達成される。溶射は成膜速度が速いので、例えば電気めっき法のみから研磨層が形成される場合に比べて効率的である。
【0022】
好ましくは、第1成膜工程において、第1の研磨粒子が酸化防止性材料によって埋没するまで溶射が行われる。
これにより、第1の研磨粒子の先端が第1のコーティング層から突出することがなく、従って第1のコーティング層上に施される電気めっきを第1の研磨粒子が阻害してしまうことがない。
【0023】
好ましくは、第2成膜工程における溶射は第2の研磨粒子が第2のマトリクスに埋没するまで行われる。
そして、第2の研磨粒子の硬度よりも低くかつ第2のマトリクスの硬度よりも高い硬度を有する研磨材によって、第2の研磨粒子が第2のマトリクスから突出するまで第2のマトリクスが研磨される。
研磨材の硬度は第2の研磨粒子の硬度よりも低いので、第2の研磨粒子が研磨されてしまうことなく、第2のマトリクスが研磨される。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、ガスタービンの全体を示した模式図である。
このガスタービン1では、圧縮機2の左側から空気が吸気され、圧縮機2にて圧縮され、圧縮された圧縮空気は燃焼器4へ供給され燃料と混合されて連続燃焼される。
そして、燃焼器4での燃焼にて得られた高温高圧の燃焼ガスがタービン6へ送られ、タービンのロータ8に植え込まれた動翼を駆動する。
このガスタービン1においては、タービン6へ供給される燃焼ガスの温度が高くなれば高くなるほど効率が良くなる為、近年は高温化の要請が強まってきている。
例えば、タービン入口温度は、従来の1000℃程度から、1300℃、更には、1500℃へと高温化してきている。
【0025】
図2はガスタービン1のタービン6部分の軸方向部分断面図である。
図面に向って左側より燃焼ガスが供給され、一段静翼101、一段動翼201、二段静翼102、二段動翼202、三段静翼103、と言った順に静翼と動翼が交互に配列されている。
そして、各段において、静翼で整流された燃焼ガスが、その下流側の動翼を駆動する。
この際に、動翼と動翼外周側との隙間を極力詰めるようにし、燃焼ガスが動翼に駆動力を十分に与えるこことなく、この隙間より燃焼ガスが後段側へ流れて、ガスタービンの効率が低下してしまわないように設計されている。
【0026】
図3は、図2のタービン部分の動翼部分の拡大であり、本発明の一実施形態にかかるガスタービン1(又は、燃焼エンジン)の一部が示された部分断面図である。
このガスタービン1は、動翼3と、シュラウド5とを備えており、動翼3は、その先端に研磨層7を備えている。
動翼3の先端部の外周側に位置するシュラウド5は、その内周面にジルコニアを主成分とするTBC層9を備えている。
研磨層7とTBC層9との間隔(図3において両矢印Cで示される)が、クリアランスである。
【0027】
図4は、図3の動翼3の先端の一部が示された拡大断面図である。
図示されていないが、この図4の上方に、クリアランスを隔ててシュラウド5が位置している。この図4では、動翼の母材11と、研磨層7とが示されている。
研磨層7は、第1層13と、第2層15とから構成されている。
第1層13は、第1めっき層17と、第1コーティング層19と、第1の研磨粒子21とから構成されている。
また、第2層15は、第2めっき層23と、第2コーティング層25と、第2の研磨粒子27とから構成されている。
なお、図4では第1めっき層17と第1コーティング層19との境界が明確に画かれているが、実際は拡散によって境界は曖昧となっている。
同様に、第2めっき層23と第2コーティング層25との境界も、拡散によって曖昧となっている。
【0028】
第1めっき層17は、動翼3の母材11の表面に施されている。
後に詳述されるように、この第1めっき層17によって、第1コーティング層19が形成されるまでの間、第1の研磨粒子21が仮固着される。
第1めっき層17の材質は特には制限されないが、例えばニッケル、クロム等が用いられ、特に第1コーティング層19の成分組成の一つであり馴染みのよいニッケルが好ましい。
第1めっき層17の厚み(第1コーティング層19が形成される前の厚み)は特には制限されないが、第1の研磨粒子21の下端部分のみを有効に固着するという観点から、30μm以上100μm以下が好ましい。
また、第1めっき層が、被成膜面である母材表面を覆うので、母材表面の酸化も防止することができる。
【0029】
第1コーティング層19は、第1の研磨粒子21を固着するバインダーとして機能する。
この第1コーティング層19には、酸化防止性材料が用いられている。
これにより、第1コーティング層19の酸化・劣化による第1の研磨粒子21の脱落が抑制される。
好ましい酸化防止性材料としては、MCrAlY(鉄、ニッケル又はコバルトと、クロムと、アルミニウムと、イットリウムとを主成分とする合金)が挙げられる。
酸化防止の観点から、第1コーティング層19の空隙率は1%以下が好ましい。
第1コーティング層19の厚みは、50μm以上200μm以下が好ましい。
厚みが上記範囲未満であると、第1コーティング層19から第1の研磨粒子21が突出し、後に詳述されるように第2めっき層23の形成に不都合が生じることがある。
逆に、厚みが上記範囲を超えると、第1層13が消失した後に第1の研磨粒子21が第1コーティング層19から突出するまでに長時間を要してしまうことがある。
【0030】
第1の研磨粒子21は、シュラウド5のTBC層9(ジルコニアが主成分)よりも高硬度であることが好ましい。
具体的には、第1の研磨粒子21のビッカース硬度は、1000以上が好ましい。
このような材質としては、アルミナ、シリコンカーバイド、焼結ダイヤ、CBNが挙げられる。
第1の研磨粒子21の平均粒子直径は、シュラウド5の研磨が効率よく行われるとの観点から、50μm以上200μm以下が好ましい。
また、同様の理由から、第1層13における第1の研磨粒子21の数は、30個/mm↓2以上50個/mm↓2以下が好ましい。
【0031】
第2めっき層23は、第1コーティング層19の表面に施されている。
後に詳述されるように、この第2めっき層23によって、第2コーティング層25が形成されるまでの間、第2の研磨粒子27が仮固着される。
第2めっき層23の材質は特には制限されないが、第1めっき層17と同様に、ニッケル、クロム等が用いられ、特にニッケルが好適である。
第2めっき層23の厚み(第2コーティング層25が形成される前の厚み)は特には制限されないが、第2の研磨粒子27の下端部分のみを有効に固着するという観点から、30μm以上100μm以下が好ましい。
【0032】
第2コーティング層25は、第2の研磨粒子27を固着するバインダーとして機能する。
この第2コーティング層25には、酸化防止性材料が用いられている。
これにより、第2コーティング層25の酸化・劣化による第2の研磨粒子27の脱落が抑制される。
好ましい酸化防止性材料としては、第1コーティング層19と同様のMCrAlYが挙げられる。
酸化防止の観点から、第2コーティング層25の空隙率は1%以下が好ましい。
第2コーティング層25の厚みは、50μm以上200μm以下が好ましい。
厚みが上記範囲未満であると、第2の研磨粒子27の固着が不十分となってしまうことがある。
逆に、厚みが上記範囲を超えると、第2の研磨粒子27が第2コーティング層25に埋没してしまうことがある。
【0033】
第2の研磨粒子27は、シュラウド5のTBC層9(ジルコニアが主成分)よりも高硬度であることが好ましい。
具体的には、第2の研磨粒子27のビッカース硬度(常温下で測定されるビッカース硬度、以下において同じ)は、1000以上が好ましい。
このような材質としては、アルミナ、シリコンカーバイド、焼結ダイヤ、CBN等が挙げられる。
第2の研磨粒子27の平均粒子直径は、シュラウド5の研磨が効率よく行われるとの観点から、50μm以上200μm以下が好ましい。
また、同様の理由から、第2層15における第2の研磨粒子27の数は、10個/mm↓2以上50個/mm↓2以下が好ましい。
【0034】
この燃焼エンジンが起動され定格運転への移行段階において、タービンの動翼3の方がシュラウド5よりも早く加熱され、また、動翼3には回転による遠心力が作用することもにより、動翼3の方が、シュラウド5を含むケーシング部分よりも早く熱膨張を起こす。
よって、早く熱膨張した動翼3が未だ十分に熱膨張していないシュラウド5に接し、初期摺動が起こる。
この初期摺動時には、動翼3の最先端にある第2層15の第2の研磨粒子27がシュラウド5の内周面にあるTBC層と摺動し、TBC層が切削される。
動翼3が高温燃焼ガスに曝されつつ一定時間運転された後の二次的摺動において、第2層15が消失している場合は、第1の研磨粒子21がシュラウド5と摺動する。
【0035】
第1の研磨粒子21と第2の研磨粒子27とは同一の材質でもよいが、高温環境下でも消失しにくいという理由から第1の研磨粒子21は酸化雰囲気で長時間安定しているものが好ましく、激しい初期摺動に耐えうるという理由から第2の研磨粒子27はより高硬度なものが好ましい。
具体的には、第1の研磨粒子21は使用可能温度が1000℃以上のものが好ましく、また、第2の研磨粒子27はビッカース硬度が1000以上、特には5000以上のものが好ましい。
【0036】
このような研磨粒子の組み合わせとしては、第1の研磨粒子21がアルミナ、シリコンカーバイド又は焼結ダイヤからなり、第2の研磨粒子27がCBNからとする事が好ましい。
特に好適な第1の研磨粒子21の材質は、ビッカース硬度が約2000とさほど高くないものの、約1500℃で長時間安定するアルミナが挙げられる。
なお、第2の研磨粒子27に好適なCBNでは、使用可能温度は約1000℃とさほど高くないが、ビッカース硬度は約5000から7000と、極めて高硬度である。
【0037】
この動翼3では、第1層13及び第2層15から研磨層7が構成されているが、母材11と第1層13との間や、第1層13と第2層15との間等に、他の層が設けられてもよい。
また、第1層と第2層が連続的に形成され、その連続層の下層部分に第1の研磨粒子を分散させ、上層部分に第2の研磨粒子を分散させてもよい。
【0038】
ここで、動翼3の先端に研磨層7を形成する方法の一例を詳述する。
まず、動翼3の母材11のうち研磨層7を形成する部分以外の部分にマスキングを施し、この母材11を電解槽の電解液中に配置する。
次に、電気めっきを施して第1めっき層17を形成する。
電気めっきにより、電解槽の下方に沈められた第1の研磨粒子21が仮固着される。
第1の研磨粒子21の下方部分のみが第1めっき層17に埋没するような厚みまで第1めっき層17が形成された段階で、電気めっきを終了させる(第1めっき工程)。
【0039】
次に、第1めっき層17の上方(すなわち第1の研磨粒子21の外面側、言換えれば、周囲)に酸化防止性材料を溶射して、第1コーティング層19を形成する。
溶射法としては、プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法等が採用可能である。溶射は、第1の研磨粒子21が第1コーティング層19に完全に埋没するまで行われる(第1成膜工程)。
なお、溶射に代えて電気めっき等で第1コーティング層19が形成されてもよいが、第1コーティング層19の形成速度が速い溶射の方が電気めっきより効率がよく、また、経済的でもあり、好ましい。
【0040】
次に、第1コーティング層19の表面を洗浄し、酸化等によって生じた汚れを除去する。
そして、第1めっき工程と同様の方法で第2めっき層23を形成し、この第2めっき層23で第2の研磨粒子27を仮固着させる(第2めっき工程)。
なお、第1の研磨粒子21は第1コーティング層19に埋没しているので、第1の研磨粒子21が非導電性であってもこの第1の研磨粒子21によって第2めっき層23の形成が阻害されることがない。
【0041】
次に、第1成膜工程と同様に酸化防止性材料を溶射して、第2コーティング層25を形成する(第2成膜工程)。
溶射によって第2の研磨粒子27が第2コーティング層25に埋没する。
その後、第2コーティング層25の硬度(MCrAlYの場合は約HV400)と第2の研磨粒子27の硬度(CBNの場合は約HV5000)との中間の硬度を有する材料(例えば約HV2000であるアルミナ)からなる研磨材により第2コーティング層25のみを研磨し、第2の研磨粒子27の先端を第2コーティング層25から突出させる(研磨工程)。
なお、溶射に代えて電気めっき等で第2マトリクス25を形成してもよい。
電気めっきでは形成速度が溶射に比べて遅くなるが、第2の研磨粒子27が埋没しない程度に第2マトリクス25の厚みを制御することが容易となる。
【0042】
こうして第1層13と第2層15とが形成された後に、熱処理がなされる。
熱処理によって、各めっき層と各コーティング層との間で拡散が起こって層間の密着力が向上するとともに、層間での成分の均質化が図られる。
熱処理は、特に研磨層のためだけでなく、動翼母材の熱処理として実施し、研磨層の熱処理と兼用させることもできる。
【0043】
ガスタービン動翼において、更に好ましい例を図5に示す。
図5において、動翼33の先端には、翼プロファイルの背面にそって、動翼33の先端より更に外周方向、即ち、円周方向外周向きであって、対向して位置するシュラウド(図示せず。)に近づく方向に、突起部分39が設けられている。
そして、シンニング部分とも呼ぶこの突起部分に、上述の研磨層37が形成される。
研磨層37を動翼先端全面でなく突起部分39に形成したことにより、成膜工程においては、被成膜面部分が突出しているので、その分他の面との区別が明確になり、成膜しない非被成膜部分のマスキング等が容易になる。
また、突起部分39のみに成膜すれば済むので、被成膜面の面積が狭くでき、成膜量が少なくて済み、製造時間の短縮化、費用削減等の効果を図ることができる。
更には、動翼33から突き出した薄い突起部分を有するので、万一、ガスタービン起動時等に動翼の熱伸びが過大になり、シュラウドと予想外の激しい接触を起こし、研磨が接触に追いつかなくなったとしても、動翼33本体よりも、突起部分39が先に破断、摩耗、焼損等を起こして滅失してくれるので、動翼33本体に重大なトラブルが発生することを防止できる。
【0044】
以上、研磨層が動翼の先端に設けられる場合が例とされて本発明が詳述されたが、同様の研磨層がシュラウドの内周側に形成されてもよい。
この場合は、動翼の少なくとも先端が低硬度の材料から構成され、摺動によって動翼が研磨される。
また、通常のガスービンでは、動翼は各段毎にローター上に多数枚(例えば、数十枚)植え込まれているが、その全ての動翼の先端に研磨層を形成しても良いし、逆に、多数枚の内の、一部の動翼のみ(例えば、数枚)が研磨層を施されたものであっても良い。
また、以上の説明ではガスタービンが例とされたが、本発明は、例えばジェットエンジン等の、動翼とシュラウドとが摺動するおそれのある全ての燃焼エンジンに適用され得るし、その他、高温酸化雰囲気中で摺動の恐れのある装置、部品等もの有効に適用され得る。
【0045】
【発明の効果】
以上説明されたように、本発明のエンジンでは、運転開始から長期間にわたって動翼とシュラウドとの適度なクリアランスが維持される。
従って、このエンジンでは動翼の損傷が生じにくく、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明にかかるガスタービンの模式図である。
【図2】図2は、ガスタービンのタービン部分の拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかるガスタービンの一部が示された部分断面図である。
【図4】図4は、図5の動翼の先端の一部が示された拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態にかかる動翼の先端の拡大図である。
【符号の説明】
1・・・ガスタービン
2・・・圧縮機
3・・・動翼
4・・・燃焼器
5・・・シュラウド
6・・・タービン
7・・・研磨層
8・・・ロータ
9・・・TBC層
11・・・母材
13・・・第1層
15・・・第2層
17・・・第1めっき層
19・・・第1コーティング層
21・・・第1の研磨粒子
23・・・第2めっき層
25・・・第2コーティング層
27・・・第2の研磨粒子
Claims (13)
- 第1の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する第1層と、
第2の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とする研磨層。 - 第1の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する第1層と、
第2の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する前記第1層の外面側に位置する第2層を有し、
前記第1の研磨粒子の耐熱温度は前記第2の研磨粒子の耐熱温度よりも高く、
前記第2の研磨粒子の硬度は前記第1の研磨粒子の硬度よりも高い
ことを特徴とする研磨層。 - 第1の研磨粒子が分散された酸化防止材を主成分とする第1層と、
第2の研磨粒子が分散された酸化防止材を主成分とする前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とする研磨層。 - アルミナの粒子、シリコンカーバイトの粒子、焼結ダイヤの粒子の内の少なくとも一つが分散されたコーティング材を有する第1層と、
第2の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とする研磨層。 - 第1の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する第1層と、
立方晶窒化硼素の粒子が分散されたコーティング材を有する前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とする研磨層。 - 金属めっき層部分と酸化防止材層部分とを有するコーティング材に第1の研磨粒子が分散された第1層と、
金属めっき層部分と酸化防止材層部分と有するコーティング材に第2の研磨粒子が分散された前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とする研磨層。 - 第1の研磨粒子が分散され該第1の研磨粒子の粒子径以上の厚さのコーティング材を有する第1層と、
第2の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とする研磨層。 - 第1の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する第1層と、
第2の研磨粒子が分散され該第2の研磨粒子の粒子径以下の厚さのコーティング材を有する前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とする研磨層。 - アルミナの粒子、シリコンカーバイトの粒子、焼結ダイヤの粒子の内の少なくとも一つが分散されたMCrAlYを主成分とする第1層と、
立方晶窒化硼素の粒子が分散されたMCrAlYを主成分とする前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とする研磨層。 - 圧縮機と燃焼器とタービンを備える燃焼エンジンの可動部分と非可動部分とが対向する面の一方に、
第1の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する第1層と、
第2の研磨粒子が分散されたコーティング材を有する前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とする燃焼エンジン。 - 圧縮機と燃焼器とタービンを備えるガスタービンの該タービンのロータに取り付けられた動翼の先端に、
アルミナの粒子、シリコンカーバイトの粒子、焼結ダイヤの粒子の内の少なくとも一つが分散されたMCrAlYを主成分とする第1層と、
立方晶窒化硼素の粒子が分散されたMCrAlYを主成分とする前記第1層の外面側に位置する第2層と、
を有することを特徴とするガスタービン。 - 被成膜面に金属めっきによって第1の研磨粒子を固定する工程と、
該第1の研磨粒子が固定された金属めっき上にコーティング材を成膜する工程と、
該コーティング材に金属めっきによって第2の研磨粒子を固定する工程と、
該第2の研磨粒子を固定された金属めっき上にコーティング材を成膜する工程と、
を含むことを特徴とする研磨層の製造方法。 - ガスタービンのローターに円周上に取付けられる動翼であって、該動翼の先端に円周方向外側向きに突出部分を備え、
該突出部分に金属めっきによってアルミナの粒子、シリコンカーバイトの粒子、焼結ダイヤの粒子の内の少なくとも一つを固定する工程と、
該耐熱性の研磨粒子が固定された金属めっき上にMCrAlYを溶射する工程と、
該工程にで形成されたコーティングの表面に金属めっきによって立方晶窒化硼素の粒子を固定する工程と、
該高硬度の研磨粒子を固定された金属めっき上にMCrAlYを溶射する工程と、
を含むことを特徴とするガスタービン動翼の製造方法。
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