JP3585802B2 - 調理栗の製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、そのまま食することができる調理栗の製法、更に詳しくは、手で喫食しても手が汚れたりベタベタせず、更に、加熱による破損が生じず、外観、食感及び風味の良好な調理栗の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、栗の加工方法としては、例えば、特開昭53−72849号公報に記載のような栗の水煮包装食品がある。この方法は、栗を剥皮後、水晒し、及びボイル処理を行ってあくを取り除き、更に適当な調味剤を加えて煮上げ処理を施して缶や瓶等の容器に充填し、寒天やゼラチン、ペクチンなどのコロイド状物質の溶液を注入し密封殺菌を行うものである。この方法においては、コロイド状物質の溶液がゲル化することにより、栗の肉崩れや固形分量の減少を防止するものである。
しかしながら、この方法では、あくや色止めのための水晒し、ボイル処理に時間がかかり、この段階での肉崩れが起こりやすく、また、栗本来の甘味や香りが失われてしまう。また、柔らかく煮て、かつ変色を防止するためにクリスターやミョウバンなどの食品添加物を使う必要があった。
更には、水煮や甘露煮などの処理を行うと、水分や糖分を多く含む栗となってしまい、各種の栗調理品への利用がしにくいという問題もあった。
また、栗を手でつまんで喫食する場合、上記製法では栗表面の澱粉質や過剰な水分が手に付着しやすく、手がベタベタしたり汚れてしまうという問題もあった。また、煮栗や蒸煮栗は水分を過剰に含んで割れ易く、元の丸ごとの形状を維持したままの栗の歩留まりが悪いという問題もあった。また、煮栗や蒸煮栗は、栗本来のホクホクとした食感とはなりにくく、脆くてもそもそとした食感となってしまう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、そのまま食することができ、手で喫食しても手が汚れたりベタベタせず、更に、加熱による破損が生じず、栗本来の風味、食感を有し、外観の良好な調理栗を簡便に製造する方法を提供するにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、剥き栗を容器に収容、密封して加熱殺菌するに際し、前記剥き栗表面に、水分を剥き栗全体重量中0.5〜10重量%になるように施与することを特徴とする調理栗の製法によって達成される。
【0005】
すなわち、本発明者は、従来の伝統的な水晒し、ボイル製法を用いず、剥皮栗を包装容器に収容、密封し、レトルト殺菌などの加熱殺菌をする方法が、調理栗を得る最も簡便、かつ風味を維持する方法であると考えたが、焼成した剥皮栗に、そのままレトルト殺菌等の加熱殺菌を行うと、栗表面に澱粉質が表出し、栗同士が付着したり、手がベタつきやすく、汚れやすいことがわかった。
そこで、加熱殺菌後の品質低下を防止する方法について検討を行った結果、焼成した剥皮栗表面に、予め水分を短時間施与してから加熱殺菌を施すと、上述の問題を解決できることを見いだし本発明に到達した。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を詳しく説明する。
まず、栗は、特に品種や大きさを限定するものではなく、一般に用いられているものから適宜選択して用いればよい。
【0007】
次に、本発明に用いる水分とは、通常の上水道等から供給される水(飲料水、飲用水)等が挙げられる。
また、水分中には溶質を添加してもよい。溶質としては、例えば、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、ズルチン、アリテーム、スクラロース、アセサルファムカリウム等の高甘味度甘味料や、糖質甘味料(ぶどう糖等の単糖類、砂糖等の少糖類、糖アルコール、トレハロース、ラフィノース、各種オリゴ糖、タガトース等の非還元性少糖類)や、ゼラチン、プロテオース、ペプトン、ケラチン、コラーゲン、フィブロイン等の蛋白質や、醤油、酢等の調味料や、香料、色素、乳化剤、油脂等が挙げられ、これらは単独でも複数組み合わせて用いてもよい。
【0008】
水分中に溶質を含有させると、後述するレトルト殺菌を施す工程を経ても、栗の割れ等が生じにくく、栗本来の形状を維持し、食感もしまりのあるホクホク感となる点で良好である。
また、上記溶質の中でも、糖質甘味料を含有させると、従来の甘露煮のような表面のべたつきを生じることなく、甘味が付与されると共に、甘味の質もまろやかで好ましい自然な甘味となる点で特に好適である。
【0009】
また、溶質を用いる場合、水分中の水は溶質含有水分全体重量中50重量%以上に設定することが、栗本来の色調と風味を良好に得られる点で好適である。
【0010】
剥き栗表面に水分を施与する手法としては、浸漬する(どぶ漬け)方式、スプレーコーティング、回転釜、恒温高湿機、高湿度条件に設定したチャンバー等を用いる手法等が挙げられる。これらの手法の中でも、剥き栗表面に均一に水分が施与される点で、浸漬する(どぶ漬け)方式が好適である。
【0011】
また、水分の温度は、低温(好ましくは0〜50℃、更に好ましくは5〜40℃)もしくは非加熱条件で行うことが、栗の形状保持、澱粉表出防止の点で好適である。
【0012】
また、水分施与の時間は、特に限定するものではなく、剥き栗表面に略均一に施与されるよう適宜設定すればよい。例えば、どぶ漬け方式の場合、5秒〜20分程度である。
【0013】
また、溶質を用いる場合、剥き栗表面には水分と溶質を別々に施与してもよい。例えば、溶質を粉末の状態で、水分が施与された剥き栗表面にまぶしたり、剥き栗が収容された袋に溶質粉末を直接充填する手法等が挙げられ、適宜設定して行えばよい。
【0014】
また、水分と溶質を別々に施与する場合、水分および溶質をどちらを先に剥き栗表面に施与してもよく、適宜設定して行えばよいが、剥き栗表面に水分を均一に施与する点で、水分を先に施与することが望ましい。
【0015】
また、剥き栗に対する上記水分の施与量は、剥き栗全体重量中の0.5〜10重量%であり、より好ましくは2重量%となるように施与することが望ましい。
すなわち、0.5重量%未満であると、水分施与量が少なすぎて、栗本来の外観、風味、色調が得られず、逆に、10重量%を超えると、風味が悪く、また、過剰に水分を含むため、脆く、崩れやすい。
【0016】
次に、本発明の調理栗の製法は、例えば、次のようにして行われる。
まず、生栗を水洗し、浮き栗や異物を除いた後、焼成し、剥皮して剥き栗を得る。
【0017】
焼成方法としては、従来用いられている方法を適宜用いればよいが、特に、栗を熱風ロースト等のような流体加熱する方法が、鬼皮や渋皮を短時間で完全に取り除くことができ好適である。
すなわち、上記流体加熱する方法においては、予め栗表面に切り目を施して砂煎りするなどの工程が不要で、流体加熱するだけで、鬼皮や渋皮が栗果肉から遊離し、また、栗表面に亀裂が生じ、栗果肉から鬼皮や渋皮を剥離し易くなる。従って、短時間で大量に処理することができ、また、焼き栗の香ばしさも付与することができる。具体的には、ジェットゾーンシステム(連続式)、ジェットロースト(バッチ式)(共に、荒川製作所製)などの熱風乾燥やコーヒー豆の焙煎などに用いられる、熱風が対流する装置を用いると好適である。
【0018】
また、処理条件としては、装置仕様、処理量によって適宜設定すればよく、熱風の温度は、栗の表面温度が100〜110℃程度になるように、110〜140℃とすることが望ましい。
例えば、栗に対して上下方向から熱風があたるような熱風乾燥装置(例えば、ジェットゾーンシステム(流動層式)、荒川製作所製)の場合、120〜125℃の熱風で栗の表面が108〜109℃となるようにするのが、栗の皮を栗果肉から良好に遊離し、かつ、栗の形状を保持する点で最も好適である。
また、栗に対して一方向からのみ熱風があたるような熱風乾燥装置(例えば、ジェットゾーンSR−BIII(バッチ式)、荒川製作所製)の場合には、130〜140℃の熱風で、栗の表面105〜110℃程度にすることが好適である。
また、風速は、120〜130℃、10〜20分間加熱する場合、40〜60m/sが好ましい。
このようにして得られた栗は、この後、人手もしくは機械によって簡単に渋皮ごと剥離することができる。
【0019】
次に、剥き栗に上述のような方法で水分を施与し、缶、ビン、パウチのような合成樹脂製袋などの、耐熱性のある密封可能な包装容器に収容し、密封した後、加熱殺菌する。殺菌方法は、長期保存と品質保持の観点からレトルト殺菌(加熱加圧殺菌)を施すことが望ましい。
この時、レトルト殺菌は、115〜125℃、1.7〜2.5kg/cm2で20〜60分の条件で行うことが、栗の形状を維持しながら殺菌できるという点で望ましい。
【0020】
上記のようにして得られた調理栗は、長期保存中も栗本来の風味、食感及び外観が維持されているものである。この調理栗は、包装容器を開封して、そのまま食してもよく、あるいは栗ごはん、栗きんとん、栗の甘露煮、マロングラッセなど各種の栗加工食品に利用することができる、汎用性の高い調理栗である。
【0021】
本発明の調理栗の製法により得られた調理栗は、レトルト殺菌を施しても、剥き栗表面に澱粉質の表出が抑制され、剥き栗表面のベタつきや栗同士の付着がない風味外観の良好な調理栗である。
また、本発明においては、水分の保護作用によって、レトルト殺菌耐性が高まっているので、レトルト殺菌の前に予備殺菌をする等の前処理を行って、レトルト殺菌の条件を緩やかにしなくてもよく、通常の条件のレトルト殺菌を行っても、風味、外観等の品質は維持される。
【0022】
なお、栗の皮の剥離を、加熱することなく行い、その後、上記のように水分を施与し、容器充填、加熱殺菌を行っても、そのまま食することができる調理栗が得られる。
また、上記剥き栗表面の水分の施与は、剥き栗を容器に収容した後行ってもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明の調理栗の製法によれば、剥き栗表面に水分を施与しているので、加熱殺菌処理が施されても、表面にベトつきがなく、栗同士が付着したり、手が汚れたりすることのない調理栗を得ることができる。
また、上記水分が栗の風味に影響することがなく、天然由来の食品原料であるので、そのまま食用に供するだけでなく、各種の栗加工食品に利用する事ができる汎用性の高い調理栗を得ることができる。
また、特に煩雑な前処理を行なわずに調理栗が得られるので、大量生産、貯蔵が可能である。
また、煮栗のように過剰な水分を施与していないので、栗が煮崩れしたり、割れたりすることがなく、1粒丸ごとの形状を維持した歩留まりのよい調理栗を得ることができる。
【0024】
【実施例】
次に、実施例を挙げて具体的に説明する。
〈実施例1〉
表1に示す組成にて、下記のようにして調理栗を調製した。
まず、中国河北省産の天津栗(160粒/kg)を、流動層式ドライヤーオーブン(荒川製作所製、ジェットゾーンシステム)を用いて、120℃の熱風(風速52m/秒)にて15分間加熱し(栗表面温度109℃)、渋皮、鬼皮を遊離させ、更に亀裂を生じさせ、自然冷却後、手で渋皮、鬼皮を同時に剥離し、剥き栗を得た。
次に、金網容器に入れた上記剥き栗を水(20℃)に浸漬し、15分後引き上げて、液切りし、レトルトパウチに6個充填し、ヒートシール後、121℃で30分間熱水レトルトにて加熱処理し、調理栗を得た。
【0025】
〈実施例2〜5〉
表1に示す組成にて、実施例1と同様にして調理栗を得た。また、実施例4ではスクラロース、実施例5ではトレハロースを水に添加して、剥き栗表面に該水分を施与した後、実施例1と同条件でレトルト加熱処理し、調理栗を得た。また、実施例2、3は水分施与量を変化させて、実施例1と同様にして調理栗を得た。
【0026】
〈比較例1〉
表1に示す組成で、剥き栗表面に水分を施与せずに、剥き栗をそのまま実施例1と同条件でレトルト加熱処理し、調理栗を得た。
〈比較例2、3〉
比較例2、3は水分施与量を変化させて、実施例1と同様にして調理栗を得た。
【0027】
実施例1〜5及び比較例1〜3について、得られた調理栗を開封してその色調、風味、手で喫食したときのベタつき感、食感及び保形性を専門パネラー20名で評価した。その結果を表1にあわせて示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003585802
【0029】
以上のように、実施例の調理栗は、色、風味共に良好で、そのまま喫食しても焼き栗と蒸し栗の風味を合わせ持った香ばしい、栗本来のおいしさを持つ調理栗であり、レトルト殺菌後も色調が保持されていた。また、異味異臭も感じられなかった。また、手でそのまま喫食しても、手がベタベタしたり、汚れたりすることはなかった。また、栗本来の形状を保持した調理栗であった。
これに対し、比較例のものは、渋味が感じられ、色も黒みをおびており、食感ももそもそしていた。また、手で喫食する際、手に澱粉質が付着し、調理栗として好ましくなかった。また、栗の形状は、割れていたり、手にとった時にもろい硬さもあったりするものが含まれていた。

Claims (3)

  1. 剥き栗を容器に収容、密封して加熱殺菌するに際し、前記剥き栗表面に、水分を剥き栗全体重量中0.5〜10重量%になるように施与することを特徴とする調理栗の製法。
  2. 加熱殺菌がレトルト殺菌である請求項1記載の調理栗の製法。
  3. 加熱殺菌が115〜125℃、1.7〜2.5Kg/cm2で20〜60分の条件である請求項1記載の調理栗の製法。
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