JP3586421B2 - 送信電力制御装置及びこれを用いた無線送信装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は移動体に搭載した無線送信装置から静止衛星または非静止衛星に向けて通信する際の送信電力制御装置とこれを用いた無線送信装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
地上に設置された地球局に設けた無線送信装置から静止衛星または非静止衛星(以下衛星という)に向けて通信する場合、その通信の品質を向上する上で、衛星における受信信号の電界強度が低すぎると受信が困難になるし、高すぎても他からの弱い信号に影響して他の通信品質を低下させるので、適当なレベルに一定化することが必要である。
【0003】
もちろん、地球局のアンテナは刻々と変化する衛星の位置を追跡して、アンテナのビーム方向で常に衛星を捕らえるように制御される。それでも指向方向が水平に近い方向では大地の影響を受けて期待したビームパターンが得られない場合があるし、また、周波数によっては大気中の気象現象の影響を受けることもある。したがって衛星の側で安定した受信電界強度を確保することはそれほど容易ではない。
【0004】
このような問題に対応する例として、図9は、例えば特開平9−19284号公報に開示されたもので、地球局から送信する信号にパイロット信号を載せ、これを受信した衛星から同じ信号を返送して地球局で受信する閉ループを構成し、地球局は返送された信号中のパイロット信号を解析して、この結果により衛星の受信電界強度が一定になるように地球局送信機の送信電力を可変減衰器により調整するものである。
【0005】
次に動作について図により説明する。
パイロット信号発生部24が発生するパイロット信号及び送信データ処理部25からのデータを加算器26で加算して送信部1に出力し、可変減衰器9を通じてアンテナ2から非静止衛星(図示しない)に送信する。
非静止衛星からのビーコン信号電波及び非静止衛星で返送するパイロット信号電波をアンテナ23、受信部10で受信し、ビーコン信号検出部11、パイロット信号検出部12でビーコン信号Rb、パイロット信号Rpを検出する。
【0006】
即ち、地球送信局21が受信するパイロット信号Rpのレベルは、送信電波Wdpにおけるパイロット信号の受信レベルRpに、非静止衛星のトランスポンダを通じた変換利得Gsを加え、かつ、地球送信局21と非静止衛星との間の電波伝播路の損失L(往復路2L)を差し引いた値となる。
また、地球局が受信するビーコン信号Rbのレベルは、非静止衛星のビーコン信号の送信レベルPBから地球局と非静止衛星との間の電波伝播路の損失Lを差し引いた値となる。
Rp=Pp−L−Gs−L=Pp+Gs−2L
Rb=PB−L
この信号レベルの差を演算部13で平均化し、この補正信号Scpを制御部14で制御信号Scに生成して可変減衰器9が高周波信号Stのレベルを可変(減衰)し、その可変高周波信号Svtを電力増幅部17、アンテナ2を通じて送信電波Wdpとして非静止衛星へ送信する。
Scp=−(Rp−Rb)/2
【0007】
ところで、衛星からの送信チャンネル数は容易に増設は出来ないし、電力も節約したいから極めて貴重であるということが言えるが、図9の従来の例では、衛星からの送信チャンネルの何%かを常に送信電力制御のために割かなければならないと言う問題がある。また、安定した閉ループを構成するためには、地球局側の姿勢が安定していることが必要で、地球局が姿勢変化の激しい移動体(例えば航空機、艦船、車両)搭載局である場合には適用できないと言う問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の衛星通信システムに於ける送信電力制御装置は、衛星からの送信手段の何%かを常に電力制御のために割かなければならないと言う問題があった。また、閉ループを構成するため、地球局が姿勢変化の激しい移動体搭載局である場合には適用できないと言う問題があった。
そして、複数の基地局からレベルの異なる信号が同時に衛星に到達すると干渉によりレベルの低い信号の受信が困難となるという問題があった。
【0009】
この発明は、移動体に搭載された地球局にも適用することができ、衛星側の送信チャンネルを制御のために使用する必要のない送信電力制御装置およびこれを用いた無線送信装置を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明による送信電力制御装置は、移動体に搭載され、宇宙局に到達する電波の電界強度を一定になるよう制御する送信電力制御装置であって、
高周波信号を発生する送信機、
複数の素子アンテナを有し前記送信機の出力を放射するフェーズとアレイアンテナ、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段、
前記宇宙局の位置を、予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、 前記移動体と前記宇宙局との距離を算出するとともに、前記素子アンテナの励振位相を制御して前記フェーズドアレイアンテナのビーム方向を制御する空中線制御器、
前記送信機と前記フェーズドアレイアンテナとの間に挿入され、前記空中線制御器の信号により、前記送信機の出力をビーム方向および前記移動体と前記宇宙局との距離に応じて減衰させる可変減衰器を備えたものである。
【0012】
また、移動体に搭載され、互いに異なる方向に向けて配置されるとともに、それぞれのビーム方向が互いに異なる角度に制御可能な複数のフェーズドアレイアンテナを有し、衛星に搭載された宇宙局との間で無線通信を行う無線送信装置であって、
高周波信号を発生する送信機と、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段と、
前記宇宙局の位置を、予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段と、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、前記複数のフェーズドアレイアンテナのビーム方向をそれぞれ前記宇宙局の方向に制御する空中線制御器と、
前記空中線制御器の信号により、前記送信機から前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナに入力する送信電力を、前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナの数とそれぞれのビーム方向に応じてそれぞれ制御する複数の可変減衰器とを有する送信電力制御装置を備え、
前記宇宙局が前記複数のフェーズドアレイアンテナの複数のビームの指向方向内にあるとき、前記宇宙局が受信する受信電界強度を前記ビーム方向と前記ビームの数とにかかわらず一定に制御するものである。
【0013】
また、移動体に搭載され、ビーム方向の制御が可能なフェーズドアレイアンテナを有し、衛星に搭載された宇宙局との間で無線通信を行う無線送信装置であって、
高周波信号を発生する送信機と、
移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段と、
宇宙局の位置を予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段と、移動体位置姿勢算出手段の出力と宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、移動体と宇宙局との距離を算出するとともにフェーズドアレイアンテナのビーム方向を制御する空中線制御器と、空中線制御器の信号により、送信機からフェーズドアレイアンテナに入力する送信電力を、フェーズドアレイアンテナのビーム方向および移動体と宇宙局間の距離とに応じて制御する可変減衰器とを有する送信電力制御装置とを備え、
ビーム方向があらかじめ定めた所定の角度内にあるとき、宇宙局が受信する受信電界強度を、ビーム方向、及び、移動体と宇宙局との間の距離にかかわりなく、一定に制御するものである。
【0014】
また、移動体に搭載され、互いに異なる方向に向けて配置されるとともに、それぞれのビーム方向が互いに異なる角度に制御可能な複数のフェーズドアレイアンテナを有し、衛星に搭載された宇宙局との間で無線通信を行う無線送信装置であって、
高周波信号を発生する送信機と、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段と、
前記宇宙局の位置を予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段と、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、前記移動体と前記宇宙局との距離を算出するとともに前記複数のフェーズドアレイアンテナのビーム方向をそれぞれ前記宇宙局の方向に制御する空中線制御器と、
前記空中線制御器の信号により、前記送信機から前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナに入力する送信電力を、前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナの数と、それぞれのビーム方向と、前記移動体と前記宇宙局間の距離とに応じて制御する複数の可変減衰器を有する送信電力制御装置とを備え、
前記宇宙局が前記複数のフェーズドアレイアンテナの内の複数のビーム指向方向内にあるとき、前記宇宙局が受信する受信電界強度を前記ビームの方向、及び前記ビームの数と、前記移動体と前記宇宙局との距離にかかわりなく一定に制御するものである。
【0015】
また、移動体は航空機であるものである。
【0016】
また、宇宙局は地球を周回する衛星に搭載された衛星局であるものである。
【0017】
また、衛星は静止衛星であるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明による送信電力制御装置とこれを備えた無線送信装置の構成を示し、1は図示しない移動体、例えば航空機に搭載され衛星4に信号を送信する送信機、2は送信機1の信号を衛星に向け送信するフェーズドアレイアンテナ、3は説明のため記載した送信波、4はこの通信を行う対象の通信衛星(衛星局または宇宙局とも言う)であり静止衛星であるか非静止衛星であるかは問わないが、説明の都合上ここでは静止衛星であるとして説明する。5は送信機1が搭載されている図示しない航空機の地球上の位置及び姿勢を出力する慣性航法装置(移動体位置姿勢算出手段という)、6はフェーズドアレイアンテナ2の指向パターンを制御する空中線制御器で、あらかじめ入力された通信衛星4の軌道情報61を記憶し、これをもとに衛星の現在の位置を算出する(宇宙局位置算出手段という)。空中線制御器4は、また、移動体位置姿勢算出手段の出力と宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、フェーズドアレイアンテナ2のビーム方向を算出して制御するとともに、地球局と宇宙局との間の距離をも算出する。
7は送信機1の出力を増幅する電力増幅器、9は送信機1と電力増幅器7との間に挿入された可変減衰器で、空中線制御器6からの信号により送信電力レベルを調整することができる。
送信機1と可変減衰器9とフェーズドアレイアンテナ2と空中線制御器6と軌道データ61はこの発明に言う送信電力制御装置100を構成している。
航空機地球局8はこの発明に言う無線送信装置である。
【0019】
次に動作について説明する。
フェーズドアレイアンテナ2は、公知のとおり複数のアンテナ素子が面状(平面とは限らない)に配列され、そのアンテナ素子の各々が位相制御されて励振されることにより、任意の方向(但し放射が不十分となる方向が存在する場合もある)に放射を集中したビームを指向させることができる。図1では慣性航法装置5からの航空機の位置と姿勢データと通信衛星の位置データ61とにもとづき、空中線制御器6が通信衛星の方向を算出し、フェーズドアレイアンテナ2を制御して通信衛星4の方向にビームが制御される。
【0020】
このようにして制御されたビームの方向を変化させた場合の最大利得の包絡線71を図2に示す。図2はフェーズドアレイアンテナ2のビーム方向を−90度から+90度まで変化させた場合の利得の変化を示した図であり、アングル0度はアンテナ面に直交する方向、アングル90度は面に平行する方向である。図2に示すようにフェーズドアレイアンテナ2の利得特性はアンテナ面に直交する方向から離れると、アンテナを見る見かけの面積が減少するので(アンテナの形状にもよるが)ほぼ余弦曲線に近い特性で利得が低下する。
図2の特性を A(db)=kf(α) と表す。
ここでkは定数である。
上記の角度αはこの航空機から(正確にはフェーズドアレイアンテナの面から)通信衛星4を見る方向として空中線制御器6から常に出力される。
【0021】
空中線制御器6の出力αは可変減衰器9にも出力され、可変減衰器9が制御される。図3の73はフェーズドアレイアンテナ2のビーム方向の変化に対する可変減衰器9の利得特性の変化を示す。図3の特性は −90<α<+90 の範囲で
B=−m/f(α)(db) に設定されている。この特性は図2のフェーズドアレイアンテナ2の特性のカーブをキャンセルする特性になっている。
但し αが±90度に近いとき、f(α)がゼロに近くなり、Bは無限に大きくなるので実用にならない範囲が生じる。ゲインが安定する角度範囲は±85度程度が限界となる。
そして B<0(db) であり、mは定数である。
この結果 フェーズドアレイアンテナ2から送信される送信電力Pは
−90<α<+90 の範囲で
P=mkf(α)/f(α)=mk(db)即ち、一定となる。これを図4に示す。これによりこの航空機地球局8を搭載した航空機の位置、姿勢の変化にかかわりなく(但し前述のとおり、αが±85度の範囲内で)、衛星に向かって放出される電波の電力密度は一定となり、衛星4までの距離がほぼ一定なら、衛星4が受信する信号強度は常に一定となる。周知のとおり衛星4が静止衛星なら距離はほぼ一定である。
【0022】
図1の構成では、従来のように通信衛星4から地球局側へフィードバックするループを設けていないので、貴重な通信衛星側からの送信チャンネルを制御のために使用すると言うことが無くなり、経済性が向上する。
また、常に一定の受信信号電界強度を確保できることから、必要以上に余裕を見た信号強度に設定する必要が無くなり、必要最小限度の信号レベルに設定できることから他の局と干渉して、他局の通信に妨害を与える可能性も減少する。
【0023】
実施の形態2.
実施の形態1の説明では、通信衛星4がフェーズドアレイアンテナ2の面から85度以上の方向になった場合について説明していない。衛星の位置が地平線以下になる場合の対応を考慮する必要がないことは当然であるが、航空機の姿勢によってはフェーズドアレイアンテナ2の85度方向を越える方向に対して対応を要する場合が生じる。
一般に航空機に搭載される通信用フェーズドアレイアンテナ2は、図5に示すように、例えば機体の両側に異なる方向に向けて2基以上が配置され、必要に応じて切り替え使用される。図は航空機を正面から見た図で、左右が水平を示す。図に於いて図示しない第1、第2のアンテナはそれぞれ真上から45度逆方向に傾けて配置されている。74は第1のアンテナがカバーする角度範囲で、75は第2のアンテナがカバーする角度範囲である。
【0024】
図6に実施の形態2による送信電力制御装置とこれを用いた無線送信装置の構成を示す。図に於いて39は第2の可変減衰器、37は第2の電力増幅器、32は第2のフェーズドアレイアンテナである。なお、9、7、2はそれぞれ第1の可変減衰器、第1の電力増幅器、第1のフェーズドアレイアンテナと呼ぶ。
第1、第2のアンテナの切り換えは空中線制御器6によって、一方のアンテナのアンテナ素子への給電を遮断する(可変減衰器6、または36により)ことで行われる。真上の範囲の約85度の範囲は第1、第2のいずれのアンテナでも対応することができるし、又、両アンテナを(相互の位相を協調させるように考慮して)使用してもよい。
図7は角度範囲が0度の両側(−45度〜+45度)では両アンテナを同時に使用して、角度が大きくなるにつれ、片方の送信電力を徐々に低減することにより、切替えのショックが生じないようにした使用方法を示している。図7の縦軸は可変減衰器9の減衰レベルを示している。
送信機1と可変減衰器9及び39、フェーズドアレイアンテナ2及び32、空中線制御器6と軌道データ61はこの発明に言う送信電力制御装置100を構成している。
航空機地球局8はこの発明に言う無線送信装置である。
この構成とすることにより航空機の姿勢に関係なく、全天の視認可能な、如何なる位置にある衛星に対しても、制御可能な角度範囲で対応できる。
【0025】
実施の形態3.
周知のとおり、ある程度の広がり角で放射された電波の電界強度は距離の2乗で減衰する。
衛星が静止衛星の場合には地球局が地球表面上を移動しても、大した距離の変化は生じない。しかし、衛星が非静止衛星で、特に低軌道をとるものである場合には、地球局の位置の変化による距離の差が大きくなり(例えば近い場合は数100Km,遠い場合は10000Km程度)距離の近い地球局の電波が強すぎて、遠方の局の電波の受信が困難になる場合がある。
【0026】
実施の形態1で説明したとおり、空中線制御器6はフェーズドアレイアンテナ2のビーム方向を算出する際、同時に地球局と衛星局との距離も算出可能であるから、フェーズドアレイアンテナ2に入力する送信電力を距離の(1/2)乗に比例して制御すれば、衛星までの距離にかかわらず受信電界強度をより一定に制御できる。図8は距離の変化に対する可変減衰器9の減衰制御量
〔A・(距離)1/2 〕を示したものである。
縦軸のmkは実施の形態1の図4のmkと同じである。
実施の形態1で説明したビーム方向によるゲインの補正と、本実施の形態で説明した距離による補正とをともに実施すると、ゲインの変化幅が極めて広くなり、可変減衰器6のみでは対応できない可能性もある。このようなばあいには、図1の電力増幅器7による増幅を併用して変化幅を大きくすればよい。
【0027】
以上の説明に於いて、移動体は航空機として説明したが、艦船、車両あるいは他の人工衛星であっても同様である。また、衛星局は静止衛星、非静止衛星のいずれであってもよいだけでなく、必ずしも地球を周回する衛星に限定されず、他の惑星へと飛行を続ける宇宙局であってもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明の送信電力制御装置は、フェーズトアレイアンテナのビーム方向と、相手宇宙局との距離とに応じて送信電力を制御する可変減衰装置を備えているので、受信側の位置、相手局の位置にかかわらず受信電界強度を一定にすることができる。また、受信側からの送信を必要としない。
【0030】
また、設置角度の異なる複数のフェーズドアレイアンテナを備え、各アンテナの方向を同じ宇宙局の方向に向け、宇宙局方向に向いているアンテナの数と各アンテナの指向方向とにより、各フェーズドアレイアンテナの入力を制御しているので、移動体の広い角度での姿勢変化に対してもビームの角度に係わりなく宇宙局に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0031】
また、ビーム角度による制御だけでなく、衛星と地球局との距離に応じた制御を併用しているので、衛星が非静止衛星である場合でもビームの角度と距離に係わりなく衛星に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0032】
また、設置角度の異なる複数のフェーズドアレイアンテナのうち、宇宙局の方向に指向させることのできたアンテナの入力を、指向させたアンテナの数と、各アンテナの指向方向と、宇宙局までの距離とにより制御しているので、移動体の広い角度での姿勢変化および距離の変化に対しても宇宙局に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0033】
また、無線送信装置は航空機に搭載されていて、その姿勢変化角度が大きくても衛星に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0034】
また、衛星は地球を周回する衛星であり、その距離の変化が大きくても衛星に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0035】
また、衛星は静止衛星であるので、距離の変化も小さく衛星に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による送信電力制御装置とこれを用いた無線送信装置の構成図である。
【図2】図1のフェーズドアレイアンテナの特性図である。
【図3】図1の可変減衰器の特性説明図である。
【図4】図1の装置による衛星での受信電界強度の説明図である。
【図5】実施の形態2による送信電力制御装置の特性図である。
【図6】実施の形態2による送信電力制御装置とこれを用いた無線送信装置の構成図である。
【図7】図5の特性の場合のアンテナ電力の説明図である。
【図8】実施の形態3による距離による送信電力制御特性の説明図である。
【図9】従来の送信電力制御装置の構成図である。
【符号の説明】
1 送信機、 2 アンテナまたはフェーズドアレイアンテナ、
4 通信衛星、 5 慣性航法装置、 6 空中線制御器、
7 電力増幅器、 8 航空機地球局(無線送信装置)
9 可変減衰器、 61 通信衛星の軌道データ
100 送信電力制御装置。
【発明の属する技術分野】
この発明は移動体に搭載した無線送信装置から静止衛星または非静止衛星に向けて通信する際の送信電力制御装置とこれを用いた無線送信装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
地上に設置された地球局に設けた無線送信装置から静止衛星または非静止衛星(以下衛星という)に向けて通信する場合、その通信の品質を向上する上で、衛星における受信信号の電界強度が低すぎると受信が困難になるし、高すぎても他からの弱い信号に影響して他の通信品質を低下させるので、適当なレベルに一定化することが必要である。
【0003】
もちろん、地球局のアンテナは刻々と変化する衛星の位置を追跡して、アンテナのビーム方向で常に衛星を捕らえるように制御される。それでも指向方向が水平に近い方向では大地の影響を受けて期待したビームパターンが得られない場合があるし、また、周波数によっては大気中の気象現象の影響を受けることもある。したがって衛星の側で安定した受信電界強度を確保することはそれほど容易ではない。
【0004】
このような問題に対応する例として、図9は、例えば特開平9−19284号公報に開示されたもので、地球局から送信する信号にパイロット信号を載せ、これを受信した衛星から同じ信号を返送して地球局で受信する閉ループを構成し、地球局は返送された信号中のパイロット信号を解析して、この結果により衛星の受信電界強度が一定になるように地球局送信機の送信電力を可変減衰器により調整するものである。
【0005】
次に動作について図により説明する。
パイロット信号発生部24が発生するパイロット信号及び送信データ処理部25からのデータを加算器26で加算して送信部1に出力し、可変減衰器9を通じてアンテナ2から非静止衛星(図示しない)に送信する。
非静止衛星からのビーコン信号電波及び非静止衛星で返送するパイロット信号電波をアンテナ23、受信部10で受信し、ビーコン信号検出部11、パイロット信号検出部12でビーコン信号Rb、パイロット信号Rpを検出する。
【0006】
即ち、地球送信局21が受信するパイロット信号Rpのレベルは、送信電波Wdpにおけるパイロット信号の受信レベルRpに、非静止衛星のトランスポンダを通じた変換利得Gsを加え、かつ、地球送信局21と非静止衛星との間の電波伝播路の損失L(往復路2L)を差し引いた値となる。
また、地球局が受信するビーコン信号Rbのレベルは、非静止衛星のビーコン信号の送信レベルPBから地球局と非静止衛星との間の電波伝播路の損失Lを差し引いた値となる。
Rp=Pp−L−Gs−L=Pp+Gs−2L
Rb=PB−L
この信号レベルの差を演算部13で平均化し、この補正信号Scpを制御部14で制御信号Scに生成して可変減衰器9が高周波信号Stのレベルを可変(減衰)し、その可変高周波信号Svtを電力増幅部17、アンテナ2を通じて送信電波Wdpとして非静止衛星へ送信する。
Scp=−(Rp−Rb)/2
【0007】
ところで、衛星からの送信チャンネル数は容易に増設は出来ないし、電力も節約したいから極めて貴重であるということが言えるが、図9の従来の例では、衛星からの送信チャンネルの何%かを常に送信電力制御のために割かなければならないと言う問題がある。また、安定した閉ループを構成するためには、地球局側の姿勢が安定していることが必要で、地球局が姿勢変化の激しい移動体(例えば航空機、艦船、車両)搭載局である場合には適用できないと言う問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の衛星通信システムに於ける送信電力制御装置は、衛星からの送信手段の何%かを常に電力制御のために割かなければならないと言う問題があった。また、閉ループを構成するため、地球局が姿勢変化の激しい移動体搭載局である場合には適用できないと言う問題があった。
そして、複数の基地局からレベルの異なる信号が同時に衛星に到達すると干渉によりレベルの低い信号の受信が困難となるという問題があった。
【0009】
この発明は、移動体に搭載された地球局にも適用することができ、衛星側の送信チャンネルを制御のために使用する必要のない送信電力制御装置およびこれを用いた無線送信装置を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明による送信電力制御装置は、移動体に搭載され、宇宙局に到達する電波の電界強度を一定になるよう制御する送信電力制御装置であって、
高周波信号を発生する送信機、
複数の素子アンテナを有し前記送信機の出力を放射するフェーズとアレイアンテナ、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段、
前記宇宙局の位置を、予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、 前記移動体と前記宇宙局との距離を算出するとともに、前記素子アンテナの励振位相を制御して前記フェーズドアレイアンテナのビーム方向を制御する空中線制御器、
前記送信機と前記フェーズドアレイアンテナとの間に挿入され、前記空中線制御器の信号により、前記送信機の出力をビーム方向および前記移動体と前記宇宙局との距離に応じて減衰させる可変減衰器を備えたものである。
【0012】
また、移動体に搭載され、互いに異なる方向に向けて配置されるとともに、それぞれのビーム方向が互いに異なる角度に制御可能な複数のフェーズドアレイアンテナを有し、衛星に搭載された宇宙局との間で無線通信を行う無線送信装置であって、
高周波信号を発生する送信機と、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段と、
前記宇宙局の位置を、予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段と、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、前記複数のフェーズドアレイアンテナのビーム方向をそれぞれ前記宇宙局の方向に制御する空中線制御器と、
前記空中線制御器の信号により、前記送信機から前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナに入力する送信電力を、前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナの数とそれぞれのビーム方向に応じてそれぞれ制御する複数の可変減衰器とを有する送信電力制御装置を備え、
前記宇宙局が前記複数のフェーズドアレイアンテナの複数のビームの指向方向内にあるとき、前記宇宙局が受信する受信電界強度を前記ビーム方向と前記ビームの数とにかかわらず一定に制御するものである。
【0013】
また、移動体に搭載され、ビーム方向の制御が可能なフェーズドアレイアンテナを有し、衛星に搭載された宇宙局との間で無線通信を行う無線送信装置であって、
高周波信号を発生する送信機と、
移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段と、
宇宙局の位置を予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段と、移動体位置姿勢算出手段の出力と宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、移動体と宇宙局との距離を算出するとともにフェーズドアレイアンテナのビーム方向を制御する空中線制御器と、空中線制御器の信号により、送信機からフェーズドアレイアンテナに入力する送信電力を、フェーズドアレイアンテナのビーム方向および移動体と宇宙局間の距離とに応じて制御する可変減衰器とを有する送信電力制御装置とを備え、
ビーム方向があらかじめ定めた所定の角度内にあるとき、宇宙局が受信する受信電界強度を、ビーム方向、及び、移動体と宇宙局との間の距離にかかわりなく、一定に制御するものである。
【0014】
また、移動体に搭載され、互いに異なる方向に向けて配置されるとともに、それぞれのビーム方向が互いに異なる角度に制御可能な複数のフェーズドアレイアンテナを有し、衛星に搭載された宇宙局との間で無線通信を行う無線送信装置であって、
高周波信号を発生する送信機と、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段と、
前記宇宙局の位置を予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段と、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、前記移動体と前記宇宙局との距離を算出するとともに前記複数のフェーズドアレイアンテナのビーム方向をそれぞれ前記宇宙局の方向に制御する空中線制御器と、
前記空中線制御器の信号により、前記送信機から前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナに入力する送信電力を、前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナの数と、それぞれのビーム方向と、前記移動体と前記宇宙局間の距離とに応じて制御する複数の可変減衰器を有する送信電力制御装置とを備え、
前記宇宙局が前記複数のフェーズドアレイアンテナの内の複数のビーム指向方向内にあるとき、前記宇宙局が受信する受信電界強度を前記ビームの方向、及び前記ビームの数と、前記移動体と前記宇宙局との距離にかかわりなく一定に制御するものである。
【0015】
また、移動体は航空機であるものである。
【0016】
また、宇宙局は地球を周回する衛星に搭載された衛星局であるものである。
【0017】
また、衛星は静止衛星であるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明による送信電力制御装置とこれを備えた無線送信装置の構成を示し、1は図示しない移動体、例えば航空機に搭載され衛星4に信号を送信する送信機、2は送信機1の信号を衛星に向け送信するフェーズドアレイアンテナ、3は説明のため記載した送信波、4はこの通信を行う対象の通信衛星(衛星局または宇宙局とも言う)であり静止衛星であるか非静止衛星であるかは問わないが、説明の都合上ここでは静止衛星であるとして説明する。5は送信機1が搭載されている図示しない航空機の地球上の位置及び姿勢を出力する慣性航法装置(移動体位置姿勢算出手段という)、6はフェーズドアレイアンテナ2の指向パターンを制御する空中線制御器で、あらかじめ入力された通信衛星4の軌道情報61を記憶し、これをもとに衛星の現在の位置を算出する(宇宙局位置算出手段という)。空中線制御器4は、また、移動体位置姿勢算出手段の出力と宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、フェーズドアレイアンテナ2のビーム方向を算出して制御するとともに、地球局と宇宙局との間の距離をも算出する。
7は送信機1の出力を増幅する電力増幅器、9は送信機1と電力増幅器7との間に挿入された可変減衰器で、空中線制御器6からの信号により送信電力レベルを調整することができる。
送信機1と可変減衰器9とフェーズドアレイアンテナ2と空中線制御器6と軌道データ61はこの発明に言う送信電力制御装置100を構成している。
航空機地球局8はこの発明に言う無線送信装置である。
【0019】
次に動作について説明する。
フェーズドアレイアンテナ2は、公知のとおり複数のアンテナ素子が面状(平面とは限らない)に配列され、そのアンテナ素子の各々が位相制御されて励振されることにより、任意の方向(但し放射が不十分となる方向が存在する場合もある)に放射を集中したビームを指向させることができる。図1では慣性航法装置5からの航空機の位置と姿勢データと通信衛星の位置データ61とにもとづき、空中線制御器6が通信衛星の方向を算出し、フェーズドアレイアンテナ2を制御して通信衛星4の方向にビームが制御される。
【0020】
このようにして制御されたビームの方向を変化させた場合の最大利得の包絡線71を図2に示す。図2はフェーズドアレイアンテナ2のビーム方向を−90度から+90度まで変化させた場合の利得の変化を示した図であり、アングル0度はアンテナ面に直交する方向、アングル90度は面に平行する方向である。図2に示すようにフェーズドアレイアンテナ2の利得特性はアンテナ面に直交する方向から離れると、アンテナを見る見かけの面積が減少するので(アンテナの形状にもよるが)ほぼ余弦曲線に近い特性で利得が低下する。
図2の特性を A(db)=kf(α) と表す。
ここでkは定数である。
上記の角度αはこの航空機から(正確にはフェーズドアレイアンテナの面から)通信衛星4を見る方向として空中線制御器6から常に出力される。
【0021】
空中線制御器6の出力αは可変減衰器9にも出力され、可変減衰器9が制御される。図3の73はフェーズドアレイアンテナ2のビーム方向の変化に対する可変減衰器9の利得特性の変化を示す。図3の特性は −90<α<+90 の範囲で
B=−m/f(α)(db) に設定されている。この特性は図2のフェーズドアレイアンテナ2の特性のカーブをキャンセルする特性になっている。
但し αが±90度に近いとき、f(α)がゼロに近くなり、Bは無限に大きくなるので実用にならない範囲が生じる。ゲインが安定する角度範囲は±85度程度が限界となる。
そして B<0(db) であり、mは定数である。
この結果 フェーズドアレイアンテナ2から送信される送信電力Pは
−90<α<+90 の範囲で
P=mkf(α)/f(α)=mk(db)即ち、一定となる。これを図4に示す。これによりこの航空機地球局8を搭載した航空機の位置、姿勢の変化にかかわりなく(但し前述のとおり、αが±85度の範囲内で)、衛星に向かって放出される電波の電力密度は一定となり、衛星4までの距離がほぼ一定なら、衛星4が受信する信号強度は常に一定となる。周知のとおり衛星4が静止衛星なら距離はほぼ一定である。
【0022】
図1の構成では、従来のように通信衛星4から地球局側へフィードバックするループを設けていないので、貴重な通信衛星側からの送信チャンネルを制御のために使用すると言うことが無くなり、経済性が向上する。
また、常に一定の受信信号電界強度を確保できることから、必要以上に余裕を見た信号強度に設定する必要が無くなり、必要最小限度の信号レベルに設定できることから他の局と干渉して、他局の通信に妨害を与える可能性も減少する。
【0023】
実施の形態2.
実施の形態1の説明では、通信衛星4がフェーズドアレイアンテナ2の面から85度以上の方向になった場合について説明していない。衛星の位置が地平線以下になる場合の対応を考慮する必要がないことは当然であるが、航空機の姿勢によってはフェーズドアレイアンテナ2の85度方向を越える方向に対して対応を要する場合が生じる。
一般に航空機に搭載される通信用フェーズドアレイアンテナ2は、図5に示すように、例えば機体の両側に異なる方向に向けて2基以上が配置され、必要に応じて切り替え使用される。図は航空機を正面から見た図で、左右が水平を示す。図に於いて図示しない第1、第2のアンテナはそれぞれ真上から45度逆方向に傾けて配置されている。74は第1のアンテナがカバーする角度範囲で、75は第2のアンテナがカバーする角度範囲である。
【0024】
図6に実施の形態2による送信電力制御装置とこれを用いた無線送信装置の構成を示す。図に於いて39は第2の可変減衰器、37は第2の電力増幅器、32は第2のフェーズドアレイアンテナである。なお、9、7、2はそれぞれ第1の可変減衰器、第1の電力増幅器、第1のフェーズドアレイアンテナと呼ぶ。
第1、第2のアンテナの切り換えは空中線制御器6によって、一方のアンテナのアンテナ素子への給電を遮断する(可変減衰器6、または36により)ことで行われる。真上の範囲の約85度の範囲は第1、第2のいずれのアンテナでも対応することができるし、又、両アンテナを(相互の位相を協調させるように考慮して)使用してもよい。
図7は角度範囲が0度の両側(−45度〜+45度)では両アンテナを同時に使用して、角度が大きくなるにつれ、片方の送信電力を徐々に低減することにより、切替えのショックが生じないようにした使用方法を示している。図7の縦軸は可変減衰器9の減衰レベルを示している。
送信機1と可変減衰器9及び39、フェーズドアレイアンテナ2及び32、空中線制御器6と軌道データ61はこの発明に言う送信電力制御装置100を構成している。
航空機地球局8はこの発明に言う無線送信装置である。
この構成とすることにより航空機の姿勢に関係なく、全天の視認可能な、如何なる位置にある衛星に対しても、制御可能な角度範囲で対応できる。
【0025】
実施の形態3.
周知のとおり、ある程度の広がり角で放射された電波の電界強度は距離の2乗で減衰する。
衛星が静止衛星の場合には地球局が地球表面上を移動しても、大した距離の変化は生じない。しかし、衛星が非静止衛星で、特に低軌道をとるものである場合には、地球局の位置の変化による距離の差が大きくなり(例えば近い場合は数100Km,遠い場合は10000Km程度)距離の近い地球局の電波が強すぎて、遠方の局の電波の受信が困難になる場合がある。
【0026】
実施の形態1で説明したとおり、空中線制御器6はフェーズドアレイアンテナ2のビーム方向を算出する際、同時に地球局と衛星局との距離も算出可能であるから、フェーズドアレイアンテナ2に入力する送信電力を距離の(1/2)乗に比例して制御すれば、衛星までの距離にかかわらず受信電界強度をより一定に制御できる。図8は距離の変化に対する可変減衰器9の減衰制御量
〔A・(距離)1/2 〕を示したものである。
縦軸のmkは実施の形態1の図4のmkと同じである。
実施の形態1で説明したビーム方向によるゲインの補正と、本実施の形態で説明した距離による補正とをともに実施すると、ゲインの変化幅が極めて広くなり、可変減衰器6のみでは対応できない可能性もある。このようなばあいには、図1の電力増幅器7による増幅を併用して変化幅を大きくすればよい。
【0027】
以上の説明に於いて、移動体は航空機として説明したが、艦船、車両あるいは他の人工衛星であっても同様である。また、衛星局は静止衛星、非静止衛星のいずれであってもよいだけでなく、必ずしも地球を周回する衛星に限定されず、他の惑星へと飛行を続ける宇宙局であってもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明の送信電力制御装置は、フェーズトアレイアンテナのビーム方向と、相手宇宙局との距離とに応じて送信電力を制御する可変減衰装置を備えているので、受信側の位置、相手局の位置にかかわらず受信電界強度を一定にすることができる。また、受信側からの送信を必要としない。
【0030】
また、設置角度の異なる複数のフェーズドアレイアンテナを備え、各アンテナの方向を同じ宇宙局の方向に向け、宇宙局方向に向いているアンテナの数と各アンテナの指向方向とにより、各フェーズドアレイアンテナの入力を制御しているので、移動体の広い角度での姿勢変化に対してもビームの角度に係わりなく宇宙局に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0031】
また、ビーム角度による制御だけでなく、衛星と地球局との距離に応じた制御を併用しているので、衛星が非静止衛星である場合でもビームの角度と距離に係わりなく衛星に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0032】
また、設置角度の異なる複数のフェーズドアレイアンテナのうち、宇宙局の方向に指向させることのできたアンテナの入力を、指向させたアンテナの数と、各アンテナの指向方向と、宇宙局までの距離とにより制御しているので、移動体の広い角度での姿勢変化および距離の変化に対しても宇宙局に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0033】
また、無線送信装置は航空機に搭載されていて、その姿勢変化角度が大きくても衛星に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0034】
また、衛星は地球を周回する衛星であり、その距離の変化が大きくても衛星に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【0035】
また、衛星は静止衛星であるので、距離の変化も小さく衛星に於ける受信電界強度を一定にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による送信電力制御装置とこれを用いた無線送信装置の構成図である。
【図2】図1のフェーズドアレイアンテナの特性図である。
【図3】図1の可変減衰器の特性説明図である。
【図4】図1の装置による衛星での受信電界強度の説明図である。
【図5】実施の形態2による送信電力制御装置の特性図である。
【図6】実施の形態2による送信電力制御装置とこれを用いた無線送信装置の構成図である。
【図7】図5の特性の場合のアンテナ電力の説明図である。
【図8】実施の形態3による距離による送信電力制御特性の説明図である。
【図9】従来の送信電力制御装置の構成図である。
【符号の説明】
1 送信機、 2 アンテナまたはフェーズドアレイアンテナ、
4 通信衛星、 5 慣性航法装置、 6 空中線制御器、
7 電力増幅器、 8 航空機地球局(無線送信装置)
9 可変減衰器、 61 通信衛星の軌道データ
100 送信電力制御装置。
Claims (9)
- 移動体に搭載され、宇宙局に到達する電波の電界強度を一定になるよう制御する送信電力制御装置であって、
高周波信号を発生する送信機、
複数の素子アンテナを有し前記送信機の出力を放射するフェーズとアレイアンテナ、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段、
前記宇宙局の位置を、予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、前記移動体と前記宇宙局との距離を算出するとともに、前記素子アンテナの励振位相を制御して前記フェーズドアレイアンテナのビーム方向を制御する空中線制御器、
前記送信機と前記フェーズドアレイアンテナとの間に挿入され、前記空中線制御器の信号により、前記送信機の出力をビーム方向および前記移動体と前記宇宙局との距離に応じて減衰させる可変減衰器を備えたことを特徴とする送信電力制御装置。 - 移動体に搭載され、互いに異なる方向に向けて配置されるとともに、それぞれのビーム方向が互いに異なる角度に制御可能な複数のフェーズドアレイアンテナを有し、衛星に搭載された宇宙局との間で無線通信を行う無線送信装置であって、
高周波信号を発生する送信機と、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段と、
前記宇宙局の位置を、予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段と、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、前記複数のフェーズドアレイアンテナのビーム方向をそれぞれ前記宇宙局の方向に制御する空中線制御器と、
前記空中線制御器の信号により、前記送信機から前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナに入力する送信電力を、前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナの数とそれぞれのビーム方向に応じてそれぞれ制御する複数の可変減衰器とを有する送信電力制御装置を備え、
前記宇宙局が前記複数のフェーズドアレイアンテナの複数のビームの指向方向内にあるとき、前記宇宙局が受信する受信電界強度を前記ビーム方向と前記ビームの数とにかかわらず一定に制御することを特徴とする無線送信装置。 - 移動体に搭載され、ビーム方向の制御が可能なフェーズドアレイアンテナを有し、衛星に搭載された宇宙局との間で無線通信を行う無線送信装置であって、
高周波信号を発生する送信機と、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段と、
前記宇宙局の位置を予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段と、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、前記移動体と前記宇宙局との距離を算出するとともに前記フェーズドアレイアンテナのビーム方向を制御する空中線制御器と、
前記空中線制御器の信号により、前記送信機から前記フェーズドアレイアンテナに入力する送信電力を、前記フェーズドアレイアンテナのビーム方向および前記移動体と前記宇宙局間の距離とに応じて制御する可変減衰器とを有する送信電力制御装置とを備え、
前記ビーム方向があらかじめ定めた所定の角度内にあるとき、前記宇宙局が受信する受信電界強度を、前記ビーム方向、及び、前記移動体と前記宇宙局との間の距離にかかわりなく、一定に制御することを特徴とする無線送信装置。 - 移動体に搭載され、互いに異なる方向に向けて配置されるとともに、それぞれのビーム方向が互いに異なる角度に制御可能な複数のフェーズドアレイアンテナを有し、衛星に搭載された宇宙局との間で無線通信を行う無線送信装置であって、
高周波信号を発生する送信機と、
前記移動体の位置と姿勢を算出する移動体位置姿勢算出手段と、
前記宇宙局の位置を予め入力された軌道情報から算出する宇宙局位置算出手段と、
前記移動体位置姿勢算出手段の出力と前記宇宙局位置算出手段の出力とをもとに、前記移動体と前記宇宙局との距離を算出するとともに前記複数のフェーズドアレイアンテナのビーム方向をそれぞれ前記宇宙局の方向に制御する空中線制御器と、
前記空中線制御器の信号により、前記送信機から前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナに入力する送信電力を、前記ビームが前記宇宙局の方向に向けられたフェーズドアレイアンテナの数と、それぞれのビーム方向と、前記移動体と前記宇宙局間の距離とに応じて制御する複数の可変減衰器を有する送信電力制御装置とを備え、
前記宇宙局が前記複数のフェーズドアレイアンテナの内の複数のビーム指向方向内にあるとき、前記宇宙局が受信する受信電界強度を前記ビームの方向、及び前記ビームの数と、前記移動体と前記宇宙局との距離にかかわりなく一定に制御することを特徴とする無線送信装置。 - 前記複数のフェーズドアレイアンテナは互いに90度異なる方向に向けて配置されていることを特徴とする請求項2または4に記載の無線送信装置。
- 前記送信電力制御装置は、前記距離の1/2乗に比例して前記送信電力を制御することを特徴とする請求項3または4に記載の無線送信装置。
- 前記移動体は航空機であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の無線送信装置。
- 前記宇宙局は地球を周回する衛星に搭載された衛星局であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の無線送信装置。
- 前記衛星は静止衛星であることを特徴とする請求項8に記載の無線送信装置。
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