JP3601575B2 - 吸音構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路交通騒音を軽減するための吸音構造体、例えば高架橋裏面吸音板として好適な吸音構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
道路交通騒音に対する対策が重要になってきており様々な対策がなされるようになってきた。例えば道路と住宅地との間に高さ5m程の防音壁を建てたり、騒音の発生を低減できる排水性舗装などが施されている。さらに、高架橋道路と併設されている道路では、地上を走行する車からの騒音が高架橋裏面に反射して住宅地に騒音を及ぼすため、高架橋の裏面に吸音板を配して騒音を低減している。また、半地下式の割堀道路やトンネル道路でも開口部からの騒音が沿道住宅地に影響を及ぼすことになるため、割堀道路壁面やトンネル壁面に吸音板を配することにより騒音を低減している。
【0003】
道路交通騒音に用いられる吸音構造体は、特許関係ではこれまで特開平10−25713号公報、特開平9−316831号公報、特開平9−111910号公報、特開平7−90816号公報等が開示されている。
これら種々の吸音構造体の中で、枠体、グラスウール等の繊維質吸音材、繊維の飛散防止・防水のため繊維質吸音材を覆う保護フィルム及びその前面を保護する多孔板から構成される吸音構造体は一般的によく用いられるものであって安価である。さらに、広い周波数帯域に対して有効に吸音率を上げるために、かさ比重の異なる吸音材を積層構造にすれば効果的であることも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
道路交通騒音に用いられる吸音構造体は広い周波数帯域にわたって非常に高い吸音率が要求され、設置場所に応じて吸音率の基準値が設けられている。従来は吸音構造体を適用する設置場所毎に前記の構成要素を適当に組み合わせ、その中から当該設置場所に適用される基準値を満たす構造を見いだしている。しかし、この場合、見いだした吸音構造体の構造が最適なものであるかどうかは分からない。すなわち、その吸音構造体と同一厚さでさらに吸音性能の優れた構造があるかも知れず、あるいは、その吸音構造体と同一吸音性能であればさらに厚さを薄くできる構造があるかも知れない。
【0005】
本発明は、コストや建築限界の制約から、できるだけ薄くて吸音性能のよい吸音構造体が望まれている現状に鑑み、道路交通騒音に対して効率的に吸音率を向上させることができる具体的な吸音構成を見いだし、優れた吸音率を有する吸音構造体を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による吸音構造体は、枠体の前面に配置された多孔板と、枠体の中に配置された繊維質吸音材を有する吸音構造体において、繊維質吸音材が平らで厚さが50〜110mmであり、かつプラスチックフィルムに覆われ、さらに多孔板と繊維質吸音材の間に厚さ10mm〜30mmの空気層が設けられていることを特徴とする。この場合、さらに繊維質吸音材と枠体の背面板の間に空気層が設けられ、その空気層の厚さが30mm以下のとき、高い吸音率が得られる。
また、上記の吸音構造体において、それぞれプラスチックフィルムに覆われた繊維質吸音材が前後2層積層され、その合計厚さが50〜110mmであるのが望ましく、その場合、第1層(前面側)の繊維質吸音材の厚さを25mm以上とするとき吸音率が特に高い。また、この場合において、前後2層の繊維質吸音材がいずれもグラスウールのとき、そのかさ密度が後述する図7のa〜hで囲まれた領域にあることが望ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図13を参照して、本発明をより具体的に説明する。
まず、図1に示すのは、本発明に係る吸音構造体の一例(長手方向に垂直な断面)であり、例えば高架橋の桁下に下向きに吊り下げられかつ複数個互いに連結して取り付けられる吸音構造体である。
この吸音構造体は、枠体1と多孔板2から構成される中空枠体と、その内部に配置された繊維質吸音材3、4からなる。枠体1はアルミ押出形材等からなり繊維質吸音材3、4の背面と側面を被い、両側縁部にこの吸音構造体同士を相互に隙間なく連結するための連結部5、6が設けられている。多孔板2は適宜開口率をもつエキスパンドメタル又はパンチングメタル等からなるもので、枠体1に接続され、かつ繊維質吸音材3、4の前面及び側面を被っている。
なお、枠体、多孔板等はアルミのほか、鉄板、ステンレス鋼板等をもちいてもよい。また、これらは押出材のほか圧延材からも製作でき、枠体と多孔板を押出形材で一体成形することもできる。
【0008】
繊維質吸音材3、4は例えばグラスウール、ロックウール、不織布等の繊維質吸音材の層であり、例えばポリフッ化ビニル等のフィルムで被覆され、積層されている。枠体1の中央部には吊り下げ用の凹溝7が長手方向に形成されており、ここに図示しない吊りボルトのヘッドが嵌入し、この吸音構造体を吊り下げるようになっている。また、8は吸音材3、4を保護するため多孔板2の内面に沿って適宜設けられるグラスクロス等の保護材、9は表面空気層、10は背後空気層を構成する隙間である。
なお、この図1には記載していないが、特開平9−111910号公報に記載されたように、例えば枠体の内側に瀝青系樹脂、ゴム系樹脂等の制振材を張り付けるなどして設けてもよい。
【0009】
続いて、図2〜図13により、本発明に係る吸音構造体が優れた吸音率を示すことを説明する。
本発明では、吸音構造体の吸音率を伝達マトリックス法で求めた。これは、吸音構造体の各構成要素(グラスウール1層の場合、音の入射側から順に多孔板、空気層、保護フィルム、グラスウール、保護フィルム、空気層)ごとに伝達マトリックスを作り、これらを結合して吸音構造体の伝達マトリックスを作り、終端(枠体の背面板)剛壁の条件で表面(多孔板外側表面)のインピーダンスZを算出するというものである。このとき、多孔板の開口率:60%、板厚:2mm、孔径:8mmとし、保護フィルムはポリフッ化ビニルフィルム(厚さ:12μm、面密度:20g/m)とし、グラスウール中の音速及び実効密度は図13にポイントで示す周波数毎に音響管を用いて測定を行って、表面インピーダンスZを求めた。次式(1)によって、吸音構造体の垂直入射吸音率αiが周波数毎に算出できる。なお、この方法で求めた垂直入射吸音率は、実際に測定した吸音構造体の垂直入射吸音率とほぼ一致することが、本発明者らにより確かめられている。
【数1】
Figure 0003601575
【0010】
さらに、図13に示す道路交通騒音の加重値Liと周波数の関係から、次式(2)に基づいて、道路交通騒音重み付け吸音率α(道路交通騒音の周波数特性による重み付け平均値)を計算する。
【数2】
Figure 0003601575
【0011】
図2〜図4は、表面空気層(枠体とグラスウールの間の空気層)と背後空気層(グラスウールと枠体の背面板の間の空気層)をそれぞれ0mm、10mm、20mmとしたときの、グラスウール厚さ(一層のみ)と道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示した図である。図中、GW24K〜GW64Kとあるのは、市販のグラスウールのかさ比重(24Kg/m〜64Kg/m)を示す。図2〜図4に示すように、グラスウールのかさ比重が違っても、吸音率は厚さが50mm辺りから大きくなり、100mmを越えても吸音率の上昇がそれほど期待できない。従って、グラスウール層は50〜110mm、好ましくは75〜100mmの範囲とすればよい。また、表面及び背後空気層がない場合は、空気層がある場合に比べ全体に吸音率が低い。
なお、この例では、グラスウール層は1層であったが、これを多層とした場合や、他の繊維質吸音材(ロックウール、不織布等)を用いた場合でもほぼ同様の傾向を示し、トータル厚さが50〜110mm、好ましくは75〜100mmで高い吸音率が効率的に得られる。また、多孔板の開口率や保護フィルムの厚さ(ポリフッ化ビニルフィルムには例えば21μm厚等がある)が変化しても、吸音率はほぼ同様の傾向を示し、前記の数値範囲内で優れた吸音率を示す(この点については、後述する図5〜図12でも同じことがいえる)。
【0012】
図5〜図6は、表面空気層及び背後空気層をそれぞれ20mmとし、グラスウールを前後2層積層し、第1層グラスウール及び第2層のグラスウール厚さをそれぞれ37.5mm(トータル75mm)又は50mm(トータル100mm)としたときの、第1層と第2層のグラスウールそれぞれのかさ比重と道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す。図中、吸音率を0.01刻みの等高線で示している。図7はその中から高い吸音率が得られる範囲を抜きだして示すもので、だいたい図中のa〜hで囲まれた範囲(太線内)で吸音率が高く、さらにa〜b、i、j、f〜hで囲まれた範囲(左下がりの斜線内)でさらに吸音率が高く、i、k、l、jのラインとb、k、l、gで囲まれた範囲(右下がりの斜線内)でさらに優れた吸音率を示す。なお、a〜hはそれぞれ横軸の16K〜64Kのラインと縦軸の16K〜80Kのラインの各交点を示す。
【0013】
図8〜図9は、第1層グラスウールのかさ密度を32kg/mとし、第2層グラスウールのかさ密度を48kg/m又は64kg/mとし、表面空気層及び背後空気層をともに20mmとしたときの、それぞれのグラスウール厚さと道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す。図中、吸音率を0.005刻みの等高線で示している。図10はその中から高い吸音率が得られる範囲を抜きだして示すもので、第1層の厚さをX、第2層の厚さをYとしたとき、だいたいX+Y≧50の範囲で吸音率が急に高くなり、X+Y≧110を越えても吸音率の改善は小さい。特にX≧30の範囲で、さらにX≧50、X+Y≦100の範囲で高い吸音率が効率的に得られる。
なお、この例では、2層ともグラスウール層であったが、他の繊維質吸音材(ロックウール、不織布等)を用いた場合でもほぼ同様の傾向を示す。また、表面及び背後空気層の厚さが変化してもほぼ同様の傾向を示す。
【0014】
図11〜図12は、第1層グラスウールのかさ比重を32K、第2層グラスウールのかさ比重を48K、第1層の厚さを25mm又は50mm、第2層の厚さを25mmとしたときの、表面空気層及び背後空気層と道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す。図中、吸音率を0.005刻みの等高線で示している。表面空気層及び背後空気層は、吸音構造体の厚さを薄くする意味ではできるだけ薄くする方が良いが、効率よく吸音率を向上させるためには、表面空気層を10mm〜30mmとすることが望ましい。背後空気層は30mm以下にすればよい。なお、この例では、2層ともグラスウール層であったが、これが一層でも、グラスウールのかさ比重を変えた場合でも、あるいは他の繊維質吸音材(ロックウール、不織布等)を用いた場合でもほぼ同様の傾向を示す。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、道路交通騒音に対して優れた吸音率を有する吸音構造体を効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る吸音構造体の断面図である。
【図2】グラスウール厚さと道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す図である。
【図3】グラスウール厚さと道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す図である。
【図4】グラスウール厚さと道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す図である。
【図5】第1層と第2層のグラスウールそれぞれのかさ比重と道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す図である。
【図6】第1層と第2層のグラスウールそれぞれのかさ比重と道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す図である。
【図7】そのなかで特に高い吸音率が得られる範囲を示す図である。
【図8】第1層と第2層のグラスウールそれぞれの厚さと道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す図である。
【図9】第1層と第2層のグラスウールそれぞれの厚さと道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す図である。
【図10】そのなかで、特に高い吸音率が得られる範囲を示す図である。
【図11】表面空気層及び背後空気層と道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す図である。
【図12】表面空気層及び背後空気層と道路交通騒音重み付け吸音率との関係を示す図である。
【図13】道路交通騒音の加重値Liと周波数の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 枠体
2 多孔板
3、4 繊維質吸音材
9 表面空気層
10 背後空気層

Claims (5)

  1. 枠体の前面に配置された多孔板と、枠体の中に配置された繊維質吸音材を有する吸音構造体において、繊維質吸音材が平らで厚さが50〜110mmであり、かつプラスチックフィルムに覆われ、さらに多孔板と繊維質吸音材の間に厚さ10mm〜30mmの空気層が設けられていることを特徴とする吸音構造体。
  2. 繊維質吸音材と枠体の背面板の間に空気層が設けられ、その空気層の厚さが30mm以下であることを特徴とする請求項1に記載された吸音構造体。
  3. それぞれプラスチックフィルムに覆われた繊維質吸音材が前後2層積層され、その合計厚さが50〜110mmであることを特徴とする請求項1に記載された吸音構造体。
  4. 第1層の繊維質吸音材の厚さが25mm以上であることを特徴とする請求項3に記載された吸音構造体。
  5. 前後2層の繊維質吸音材がともにグラスウールであり、そのかさ密度が図7のa〜hで囲まれた領域にあることを特徴とする請求項3又は4に記載された吸音構造体。
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