JP3607637B2 - 光触媒コーティング組成物及び前記光触媒コーティング組成物を使用した流体の浄化還元方法 - Google Patents

光触媒コーティング組成物及び前記光触媒コーティング組成物を使用した流体の浄化還元方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、脱臭、抗菌、防汚といった分解機能及び親水機能を有する光触媒のコーティングが施された光触媒コーティング組成物及びその使用方法に関し、より詳細には、チタンまたはチタン合金から成る基材の表面に、紫外線及び紫外線よりも長波長の電磁波に対する応答性を有する光触媒被膜が形成された光触媒コーティング組成物及びこの光触媒コーティング組成物を使用した流体の浄化還元方法に関する。
【0002】
なお、本明細書において「電磁波」とは、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線等の光、及び電波を含む。また、流体の浄化とは、後述する光触媒の分解機能及び親水機能に基づき流体の脱臭、除菌、抗菌、防汚等を行うことをいう。
【0003】
【従来の技術】
従来から、二酸化チタン(TiO)(本明細書において「チタニア」という。)等の光触媒材料が太陽光等に含まれる紫外線を浴びることにより優れた分解機能及び親水機能を発揮することから、このような酸化金属の被膜が光触媒として多くの分野において利用されている。
【0004】
この光触媒材料のうち、一例として前述のチタニアについて説明すると、この分解機能は、チタニアが太陽光に含まれる紫外線を浴びると、チタニア表面に電子及び正孔が発生し、この電子が空気中の酸素を還元してスーパーオキサイドアニオン(O)に、また正孔はチタニア表面に付着した水分を酸化して水酸基ラジカル(OH)に変え、これらのスーパーオキサイドアニオン及び水酸基ラジカルが、チタニア表面の汚れなどの有機化合物を酸化分解するものである。すなわち、光触媒の作用は、電子の還元力と正孔の酸化力によって、酸化チタン上で触媒反応を励起しようとするものである。
【0005】
また、親水機能とは前述のように紫外線の照射によって生じたスーパーオキサイドアニオン及び水酸基がチタニア表面の疎水性分子を分解し、発生した水酸基に空気中の水分が吸着して薄い水膜を作り、チタニア表面が親水性を帯びるものであり、光触媒は前述の分解機能と併せて、脱臭、抗菌、防汚を目的としてレンズ、鏡、壁紙、カーテンなどの建材、家具などに多く利用されている。
【0006】
これらの光触媒機能を建材、家具といった成品に利用する場合は、光触媒の主成分であるチタニアを成品に含有させ、かつ十分な紫外線を照射することになるが、その一手法としてチタニア被膜を、対象とする被処理成品の表面に形成することが行われている。
【0007】
このチタニア被膜の形成方法としては、チタン自体が活性な金属であり、特に酸素との親和力が大きいために酸化反応を起こしやすいことを利用して、チタン又はチタン合金から成る被処理成品の表面を酸化させて、酸化被膜すなわちチタニア被膜を形成する方法がある。
【0008】
また、他のチタニア被膜の形成方法として、ゾル・ゲル法とバインダ法が行われている。
【0009】
ゾル・ゲル法は、チタニアの前駆体であるチタニウムアルコキシドやチタニウムキレートなどの有機系チタンのゾルをガラス、セラミックなどの耐熱性のある処理対象の被処理成品の表面にスプレーなどで塗布し、乾燥させてゲルを作り、500℃以上に加熱することで、強固なチタニア被膜を形成する方法である。被処理成品の表面全体にチタニア粒子が存在するために、分解力が高く、また高硬度なチタニア被膜を形成することができる。
【0010】
またバインダ法は、チタニア粒子を被処理成品の表面にバインダで固定する方法であり、バインダとしてはシリカなどの無機系、あるいはシリコーンなどの有機系を用いている。ゾル・ゲル法との違いは、加熱温度がバインダの硬化温度で済むため、約100℃以下の加熱で高温処理が不要な点である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来の光触媒被膜にあっては、以下の問題点があった。
【0012】
1.被処理成品の表面に対するチタニア被膜の形成が困難である点
1−1. チタン又はチタン合金の表面を酸化してチタニア被膜を形成する方法では、チタン自体が高価でありコスト高になるという問題点や、またチタンは加工性が悪く利用分野が限られてしまうという問題点があった。
【0013】
1−2.またゾル・ゲル法では、チタニアの前駆体であるチタニウムアルコキシドやチタニウムキレートなどの有機系チタンをチタニア被膜に変えるために、約500℃以上の加熱処理を必要とするので、これを行うための専用の装置が必要である。また、処理対象となる基材に耐熱性が求められることから、基材としてガラス、セラミックなどが使用されるが、このようにして得られた光触媒コーティング組成物を食品加工等の分野において使用する場合、使用状態によっては基材を成すガラスやセラミックが欠けて製造される食品内に混入するおそれがある。また、基材として耐熱性を有するステンレス鋼等を使用する場合には、この基材を構成する金属の金属イオンが溶出するおそれがあり、その利用分野が制限される。
【0014】
さらに、ゾル・ゲル法では前記有機系チタンを塗布する回数が多く、多くの手間がかかることや、高価な設備を必要としコスト高であり、また有害な廃棄物が発生するといった問題があった。
【0015】
1−3.またバインダ法では、上記ゾル・ゲル法の問題を解消し、各種の基材を処理対象とすることができる他、比較的コストが安いという反面、バインダとして基材との接着性が高く、しかも光触媒の分解機能の影響を受けない材料を用いることが必要であり、バインダの選択が効果に影響を与えるという問題があった。
【0016】
またバインダ法ではゾル・ゲル法に比べ、形成されたチタニア被膜の硬度が低いという問題があった。これは、バインダ法によるチタニア被膜の硬度を高めるためには、バインダを増やして接着力を高めれば良いが、その場合、チタニアはバインダに対して相対的に少なくなり、従って分解力が落ちる。逆に、バインダを減らすと基材の表面に露出するチタニアが増えるので分解力が高まるが、接着力が低くなりチタニア被膜が剥がれやすく、硬度が落ちるといった問題があった。
【0017】
2.紫外線よりも長波長の電磁波に反応しない点
地球に降り注ぐ太陽光には、紫外線は約4〜5%しか含まれておらず、その他は赤外線が約50%、可視光線が約45%程度となっている。また、太陽光は、可視光領域である450nm付近で最大となり、この可視光領域の波長の光に応答する光触媒を提供することができれば、より効率的な光触媒反応を得ることができる。
【0018】
しかし、前述したチタニアから成る光触媒は、380nmよりも短波長の紫外線のみによって励起され、約400〜800nmの波長を有する可視光線や、800nm以上の波長を有する赤外線を照射しても光触媒反応を起こさない。そのため、太陽光の大部分を占める可視光線や赤外線を有害物質の分解等に使用することができず太陽光の利用効率が低い。
【0019】
また、太陽光の照射を受けられない室内等にあっては、紫外線が照射されないのでこのような光触媒を利用することができず、また、室内においてこのような光触媒を利用しようとすれば殺菌灯などの紫外線を放出する特殊な光源を用意する必要があり、光触媒材料の用途が制限されている。
【0020】
その一方で、硫化カドミウム(CdS)やカドミウムセレン(CdSe)等の光触媒材料にあっては、可視光領域の波長の光によっても触媒性を発揮し得るものであるが、硫化カドミウム(CdS)やカドミウムセレン(CdSe)は、反応の際の電子の授受という電気化学反応によりイオン化して溶解してしまうという現象が生ずる。そのため、光触媒材料を安定して使用することができない。
【0021】
また、カドミウム(Cd)、セレン(Se)等の金属には毒性があることが知られており、例えば飲料水等に光触媒材料を浸漬して使用する場合、これらの金属イオンが飲料等に溶出することから、その用途は制限される。
【0022】
なお、前述のような二酸化チタン等の光触媒材料の反応効率を向上させるために、下記のような方法も提案されているが、これらの方法による場合には、更に以下に示す問題点がある。
【0023】
2−1.白金、パラジウム、金、銀、銅等の貴金属を酸化金属の被膜に担持することにより、チタニア被膜の光触媒性能が向上することが知られているが、これらの貴金属は高価であるために、形成される酸化金属の被膜の重量に対して1%程度を担持させたとしても、被膜形成のコストが5〜10倍に跳ね上がってしまう。
【0024】
2−2.バナジウム(V),クロム(Cr)等の金属イオンを被膜中に極微量注入することにより、光の吸収を長波長側にシフトさせることができ、可視光領域の光を吸収させることができることも知られている。しかし、この方法による場合、この金属イオンを注入するための設備が高価であり、多額の初期投資が必要である。
【0025】
2−3.さらに、被膜の形成される比表面積を可能な限り大きくとり、光触媒反応の効率を高める方法もあるが、比表面積を大きくとると、表面が凹凸となるため無機物が付着し易くなる。酸化金属から成る光触媒は、有機物を分解することはできるが無機物を分解することはできないため、付着した無機物は光触媒材料の表面に付着したまま分解されず、光触媒効果を得ることができなくなるという問題点を有している。
【0026】
3.なお、前述の各種方法により光触媒被膜の形成された光触媒コーティング組成物にあっては、基材やバインダ、コーティングされた光触媒被膜自体の溶出等の問題から、その材質によってはこれを飲料や食品等の分野において使用することができず、その利用分野は限られている。
【0027】
4.そこで本発明の目的は、上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり、人工骨、歯根、心臓ペースメーカ等の材料として使用されているように、生体に対して無毒性であるチタンまたはチタン合金から成る基材の表面にチタンまたはチタン合金の粉体を圧縮空気と共に噴射するショットピーニングという比較的簡単な方法により、基材の表面に紫外線のみならず紫外線よりも長波長の電磁波、例えば可視光や赤外線、電波等に応答して光触媒性を発揮する酸化チタンの被膜を形成し、紫外線以外の電磁波をも有効に利用して光触媒性能を向上させることができると共に、飲料や食品等の分野において使用した場合においても基材や被膜の組成成分の溶出等の問題が生じることなく、従って広範な分野において使用することができる光触媒コーティング組成物を提供することを目的とする。
【0028】
また、本発明の別の目的は、前述のようにして得られた、紫外線よりも長波長の電磁波に対しても応答性を有し、従って、太陽光の照射、すなわち紫外線の照射のない室内等においても触媒性能を発揮するチタン酸化物の被膜が形成されて成る光触媒コーティング組成物を使用して、飲料水や下水等の水、室内の空気等の流体中の細菌や有害物質、悪臭、汚れ等を分解除去して浄化し、及び使用後の揚げ物用の油等の酸化した流体を還元し、又はこのような流体が酸化することを防止することができる、流体の浄化還元方法を提供することを目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光触媒コーティング組成物は、チタン又はチタン合金製の金網から成る基材の表面にチタン又はチタン合金から成る噴射粉体を噴射して、前記基材の表面に酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜を形成して成ることを特徴とする(請求項1)。
【0030】
前述の光触媒コーティング組成物の基材として使用するチタン又はチタン合金製の金網は、好ましくは、線径0.1〜2mm、目開0.1〜10mmとすれば好適である(請求項)。
【0031】
さらに、本発明の光触媒コーティング組成物を使用した流体の浄化還元方法は、前述の光触媒コーティング組成物を、浄化対象とする流体に接触配置して成り(請求項)、水、空気、揚げ物用の油等を浄化及び/又は還元の対象とすることができる(請求項4〜6)。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を以下説明する。
【0033】
本発明による光触媒コーティング組成物は、チタン(Ti)またはチタン合金の粉体、好ましくは純チタン(99.5%Ti)の粉体を、チタンまたはチタン合金から成る被処理成品、好ましくは純チタンから成る被処理成品の表面に圧縮空気を利用して高速噴射を行うことにより、チタンまたはチタン合金の粉体を被処理成品の表面に溶融付着させると共に、この溶融付着の際に被膜の最表面が酸化して得られた酸化チタンから成る安定した被膜が形成されている。
【0034】
噴射する粉体は、球状又は多角形状が好ましく、粒径は200μm以下、好ましくは30μm〜100μmが好ましい。この噴射粉体を、噴射圧力0.3Mpa以上、好ましくは形成された被膜の最表面の酸化被膜を安定させるために0.5Mpa以上の噴射圧力で噴射する。
【0035】
また、上記方法により形成された酸化チタンの被膜は、被膜の表面から内部に入るに従って酸素との結合がわずかづつ欠乏気味となる構造(本明細書において、このような構造を「酸素欠乏傾斜構造」という。)を有し、ショットピーニングによるチタンまたはチタン合金粉体の噴射により、安定でかつ酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜が形成された光触媒コーティング組成物に関するものである。
【0036】
ショットピーニングにより形成された酸化チタンの被膜は電解メッキにより形成された酸化チタンの被膜とはその組成、特に前述の酸素欠乏傾斜構造を有する点において大きく異なるものとなっており、このような相違が光触媒性能の発現において顕著な相違となって現れているものと考えられる。
【0037】
以上のように、ショットピーニングにより噴射粉体を被加工物表面に噴射すると、酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜が形成され、この酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜は、後述するように紫外線よりも長波長の電磁波に対しても応答性を有し、室内等の太陽光の照射、従って紫外線の照射を受け難い場所においても良好に光触媒機能を発揮する。
【0038】
〔製造実施例及び使用例〕
つぎに、被処理成品の表面に前述の酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜を形成して得られた組成物(本明細書において「光触媒コーティング組成物」という。)の製造方法、及びこれらの製造方法により製造された光触媒コーティング組成物を使用して水の浄化、室内の空気の浄化、及び揚げ物用の油の還元を行った結果をそれぞれ実施例として以下に示す。
【0039】
1.実施例1
1−1.製造実施例1
本実施例にあっては、ショットピーニングによりチタン(Ti)の粉体を被処理成品であるチタン製の金網の表面に噴射して、酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタン被膜を金網の表面に形成し、これにより光触媒コーティング組成物を得た。
【0040】
被処理成品である金網は、線径0.2mm、目開2mm、サイズ500×500mmであり、この金網の表面に下記に示す噴射条件にて両面で約10分間、チタン粉体の噴射を行った。
【0041】
この処理により、チタン製の金網の各線表面が灰色となり、表面から内部に向かうに従って徐々に結合する酸素が欠乏した傾斜構造(一例として、TiO X=2.00〜1.95)を有する酸化チタンの被膜が形成された。
【0042】
このようにして形成された酸素傾斜欠乏構造を有する酸化チタン被膜の形成されたチタン製の金網は、水や空気、その他の流体の流路中に配置され、これらの流体の除菌、消臭、防汚、還元等の作用を有する触媒として使用することができる。
【0043】
なお、以下に示す加工条件において使用したブラスト装置は重力式ブラスト装置であるが、エア式であれば吸込式のサイホン式、あるいは他のブラスト装置でも良い。
【0044】
また、噴射粉体としては、チタン合金の粉体を使用することもできるが、本実施例では純チタン(Ti:99.5% 平均粒径80μm)(♯150)を使用している。
【0045】
【表1】
製造実施例1:チタン製金網
Figure 0003607637
【0046】
1−2.使用試験例1
以上の製造実施例1に従い製造された光触媒コーティング組成物(チタン製の金網)を使用して、観賞魚用水槽内の水の浄化試験を行った結果を以下に示す(本願例1)。
【0047】
試験は、容量90リットルの水槽上部に設けられた浄化槽内に、前述の製造実施例1により製造された光触媒コーティング組成物である金網4枚を配置して、汲み上げられた水槽内の水を浄化槽内で金網と接触させた。
【0048】
水槽内には、体長約10cmの金魚5匹を飼育し、2000年9月1日から9月30日迄の30日間テストを行い、水槽内の水の汚濁状況(アオコの発生状況)、臭いの発生、飼育する金魚の状態の3点から、その浄化性能を評価した。
【0049】
飼育する金魚に対しては、一日二回、同量ずつ餌を与えた。また、水槽は、室内の直射日光の当たらない場所に配置し、蛍光灯による光の照射のみを行った。
【0050】
なお、比較例1は浄化槽内にこのような金網を配置していない例、比較例2は、陽極酸化法により酸化チタンのコーティングを施したチタン製の金網(線径、目開、サイズ等の条件は、本願例と同じ)4枚を配置した例である。
【0051】
【表2】
比較試験1(観賞魚用水槽水の浄化試験)
Figure 0003607637
【0052】
以上のように、本願製造実施例1により得られた金網を使用した本願例1にあっては、アオコの発生、臭いの発生、金魚の動きの3点の評価において、いずれも比較例1及び比較例2に比較して優れた結果が得られ、紫外線の照射のない環境においても有効に殺菌、消臭等の光触媒性能が発揮され、水槽内の水を好適に浄化していることが確認された。
【0053】
また、比較例1及び比較例2の水槽にあっては、金魚の飼育を継続するためには約7日間毎に水槽の水の約3分の1を交換する必要があったが、本願例1の水槽にあっては、蒸発した分量の水を補充するのみで金魚の飼育を継続することが可能であった。
【0054】
また、前述のように基材をチタン製の金網とした本発明の光触媒コーティング組成物にあっては、水との接触面積が広いと共に浄化槽内を広範にカバーすることができ、水との接触効率が高いものとなっている。
【0055】
なお、以上のようにして観賞魚用水槽の浄化に使用された本発明の光触媒コーティング組成物は、使用の前後における重量の変化が無く、従って、水槽水中への金属イオンの溶出等は行われていないことが確認された。
【0056】
また、本願例1において使用された製造実施例1の光触媒コーティング組成物は、これをそのまま継続して長期的に使用することもできるが、使用後これを水洗・乾燥し、再度チタン粉体を噴射して酸化チタンのコーティングを施すことにより、比較的高価なチタン製の金網を繰り返し使用することができる。
【0057】
2.実施例2
2−1.製造実施例2
線径0.2mm、目開3mm、サイズ500×500mmのチタン合金製の金網(Ti−6Al−4V)を基材とし、この表面に前述の製造実施例1と同条件にてチタン粉体の噴射を行った。
【0058】
金網の両面を合計で約10分間チタン粉体を噴射することにより金網表面が灰色となり、金網を構成する各金属線の表面に酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜が形成された。
【0059】
2−2.使用試験例2
以上の製造実施例2により得られた光触媒コーティング組成物(金網)を2枚使用して、住居内に設置されたエアコン(室内機)の吸気口及び吹き出し口の前面を覆ってカビ臭の除去試験を行った(本願例2)。
【0060】
なお、試験は15畳の部屋に取り付けられた、取付後約5年を経過したエアコンを使用して行い、冷房用として使用されていたエアコンを暖房に切り替えた直後に吐出された温風のカビ臭を人の嗅覚により評価した。
【0061】
比較例3は、特に何らの処置を講じなかったエアコンより吐出された温風のカビ臭を観察した例であり、また、比較例4は、電解質水溶液中での電解酸化(陽極酸化)により得られた酸化チタンの被膜が形成された金網(材質、目開、サイズについては、製造実施例2の金網と同じ)を2枚使用して、エアコン(室内機)の吸い込み口と吹き出し口を覆った例である。この結果を表3に示す。
【0062】
【表3】
使用試験例2(エアコンの消臭試験)
Figure 0003607637
【0063】
以上のように、比較例3及び比較例4のエアコンを始動した場合には、暖房に切り替えた際、冷房時には気にならなかったカビ臭が気になったが、本願の光触媒コーティング組成物(金網)を使用した本願例2のエアコンにあっては、エアコンの室内機より吐出された温風をこの金網に接触させることによりそのカビ臭が除去された。
【0064】
このことから、製造実施例2により得られた光触媒コーティング組成物は、太陽光線の照射のない室内においても好適に光触媒性能を発揮し、悪臭の原因となっていた空気中のカビを除菌し、エアコンより吐出された空気を浄化していることが確認された。
【0065】
なお、本発明の光触媒コーティング組成物である金網は、使用の前後における重量変化がなく、使用による金属イオンの溶出等が生じていないことが確認された。
【0066】
また、本発明の光触媒コーティング組成物は、光触媒作用によっては分解できない埃等を取り除くことによりこれをそのまま継続して使用することも可能であるが、本実施例にあっては約1ヶ月間の使用後、光触媒コーティング組成物である金網を洗浄・乾燥した後、再度チタン粉体を噴射して被膜形成処理を行うことにより基材であるチタン製の金網を繰り返し使用することが可能である。
【0067】
3.実施例3
3−1.製造実施例3
線径0.2mm、目開2mm、直径200mmの円形のチタン製の金網に、製造実施例1と同条件にてチタン粉体の噴射を行い、酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタン被膜を形成した。
【0068】
チタン粉体の噴射時間は、金網両面で約5分間であり、この処理により金網を構成する各チタン線の表面が灰色となり、酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜が形成された。
【0069】
3−2.使用試験例3
以上の製造実施例3により製造された光触媒コーティング組成物(チタン製の金網:本願例3)を使用して、揚げ物用の油の浄化・還元試験を行った結果を以下に示す。
【0070】
フライやてんぷら等の揚げ物に使用する油は、これを複数回にわたり使用すると、油は徐々に茶色がかった飴色に変色し、この油を使用して揚げたフライやてんぷら等は、衣が多量の油を吸った状態となりサクサクとした食感を得られないものとなる。
【0071】
これは、油が使用につれて酸化するためであり、このように酸化した油は、これを廃棄して新たな油に交換して揚げ物を行う必要があるが、本試験例にあっては、このように酸化した油中に光触媒コーティング組成物を浸漬することにより、光触媒の還元作用により油を還元して再度使用可能なものとすることを目的とした試験を行った。
【0072】
本試験は、直径200mmのてんぷら鍋に注入された油1リットルを対象とし、一回の使用時間約30分として2回使用した後のものを使用した。
【0073】
本願例3では、このてんぷら鍋内の油中に前述の製造実施例3により製造された光触媒コーティング組成物(チタン金網)を浸漬し、てんぷらを揚げた例である。
【0074】
これに対する比較例5は、このてんぷら鍋内の油中にアルミナ製の球体(直径8mm)の表面に酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜が形成された光触媒コーティング組成物(アルミナボール100g)を投入し、この状態においててんぷらを揚げた例である。この比較例5において使用した光触媒コーティング組成物(アルミナボール)は、ブラスト装置のノズル前方に設けられたバレル籠内に前述のアルミナ製の球体を多数投入し、投入されたアルミナ製の球体に対し均一にチタン粉体が投射されるようこのバレル籠を回転しながらチタン粉体の噴射を行って形成されたものである。なお、使用したブラスト装置及び噴射条件は、前述の製造実施例1の場合と同様である。
【0075】
さらに比較例6は、如何なる光触媒コーティング組成物をも使用せずに揚げ物を行った例である。
【0076】
試験結果の評価は、前述の油を使用してさらに約30分間揚げ物を行った後の油の色(目視により評価)と、揚げ上がったてんぷらの衣の状態の2点により行った。その結果を表4に示す。
【0077】
【表4】
使用試験例3(食用油の還元試験)
Figure 0003607637
【0078】
以上の結果、比較例6の油にあっては、揚げ上がりのてんぷらの衣が多量の油を吸った状態となり、この油はてんぷらを揚げるに適さないものとなっていた。また、使用後の油の酸化度を市販の試験紙により測定した結果、当初2.5であった油の酸化度が3.5迄上昇していた。
【0079】
これに対し、本願の光触媒コーティング組成物が投入された本願例3の油にあっては、飴色であった油の色が透明に近づくと共に、揚げ上がりのてんぷらの衣もからっと揚がっていた。また、油の酸化度を試験紙により測定した結果、光触媒コーティング組成物の投入前において、2.5であった油の酸化度が1.5に迄減少しており、好適に油の還元が行われたことが確認された。
【0080】
なお、比較例5の光触媒コーティング組成物(アルミナボール)を使用する場合にも、好適に油の還元が行われていることが確認できたが、約180℃の温度の食用油内に投入された光触媒コーティング組成物が鍋底で踊り、この光触媒コーティング組成物が鍋底や他の光触媒コーティング組成物と衝突して表面に形成された酸化チタンの被膜が剥離したり、基材であるアルミナボールが欠けて油に混入したり、てんぷらの衣に付着するおそれがあることから、本例のような食品の製造において使用する場合には、本願例3に示す金網状の光触媒コーティング組成物を使用することが好ましい。
【0081】
この金網状を成す光触媒コーティング組成物を例えば鍋底に配置することにより、加熱された鍋内の油は対流により順次この光触媒コーティング組成物と接触して好適に油の還元が行われると共に、金網状を成す光触媒コーティング組成物は表面積が大きく油との接触効率も高いものとなっている。
【0082】
以上のようにして使用された本願例3の光触媒コーティング組成物は、これをそのまま継続して使用することもできるが、これを洗浄、乾燥後、再度チタン粉体を噴射して酸化チタンの被膜を形成することにより、継続して使用することが可能である。
【0083】
なお、使用後のチタン金網に重量変化はなく、表面に形成された酸化チタン被膜及び基材であるチタン製の金網のいずれも油中に溶出していないことが確認された。もっとも、前述のようにチタンは人体に無害であることから、本願例3に示すように光触媒コーティング組成物を揚げ物用の油の還元に使用する場合には基材となる金網及び被膜を成す酸化チタンのいずれ共、純チタン(99.5%Ti)を使用することが好ましい。
【0084】
4.実施例4
4−1.製造実施例4
線径0.3mm、目開3mm、サイズ1000×1000mmのチタン製の金網を基材とし、この表面に前述の製造実施例1と同条件にてチタン粉体の噴射を行った。
【0085】
金網の両面に対して合計で約40分間チタン粉体を噴射することにより金網表面が灰色となり、金網を構成する各金属線の表面に酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜が形成された。
【0086】
4−2.使用試験例
以上の製造実施例4により得られた光触媒コーティング組成物(チタン金網)2枚をフライヤーの自動濾過装置に設置し、未使用の油を注入して1ヶ月間この油を交換することなくスナック菓子(ポテト)のフライを継続して行った(本願例4)。
【0087】
フライヤー内に注入される食用油は240リットルであり、一日に約1200kgのポテト(じゃがいも)をこの油で揚げた(1時間に150kg.1日8時間)。
【0088】
比較例7は、このような光触媒コーティング組成物を使用することなく、スナック菓子(ポテト)のフライを行った例であり、光触媒コーティング組成物を使用していない点、及び油を毎日一定量ずつ新しい油に交換した点を除き、試験条件は前述の本願例4と同様である。
【0089】
【表5】
使用試験例4(食用油の還元試験)
Figure 0003607637
【0090】
本願例4にあっては、作業中に減少した食用油を追加するのみで交換することなく1ヶ月間この作業を続けたが、試験紙により測定された油の酸化度は1以上に上昇することがなく、また、油の交換を行うことなく継続して使用した場合であっても製造された菓子の品質低下は生じなかった。
【0091】
一方、比較例7にあっては、使用する油を毎日一定量ずつ未使用のものに交換した場合であっても、油の酸化度が2.5に上昇すると共に、この油を使用することによって得られたスナック菓子は、油っぽく、油臭がする等その品質の低下が著しい。
【0092】
以上の結果から、紫外線の照射のない環境においても本発明の光触媒コーティング組成物により好適に油が還元されていることが確認された。
【0093】
このようにして、油の酸化の進行を防止することができることから、油中に浮遊する揚げカス及びこの揚げカスに付着する油のみを除去して廃棄するのみで、油自体の交換・廃棄を行う必要がなくなり、光触媒コーティング組成物を使用することなく揚げ物を行う場合に比較して、使用する油の量を5分の1以下に減少することができた。
【0094】
この油の使用量の減少に伴い、油の使用及びその廃棄に伴うコストを減少させることができ、スナック菓子の製造コストを大幅に減少させることができた。
【0095】
5.実施例5
5−1.製造実施例5
本実施例にあっては、ショットピーニングによりチタン(Ti)粉体を被処理成品であるチタン精密鋳造品(直径20mm,長さ50mmの円柱状)の表面に噴射して、酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタン被膜をその表面に形成した。
【0096】
前述のチタン精密鋳造品100個をブラスト装置のノズル前方に設けられたバレル籠内に配置して、下記表6に示す条件にて約30分間バレル籠を回転しながら酸化チタン粉体の噴射を行った。
【0097】
この処理により、被処理成品であるチタン精密鋳造品の表面が灰色となり、その表面に酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜が形成された。
【0098】
【表6】
製造実施例5:チタン精密鋳造品
Figure 0003607637
【0099】
5−2.使用試験例5
以上の製造実施例5により得られた光触媒コーティング組成物を電気式炊飯器内に水及び米と共に投入し、光触媒コーティング組成物の存在下において炊飯を行った。
【0100】
製造実施例5により得られた光触媒コーティング組成物3個を水にて研いだ米3合及び適量の水と共に電気炊飯器内に投入して炊飯し、炊きあがった米の炊き上がりの状態と、炊き上がった米の臭いを観察した(本願例5)。
【0101】
比較例8は、このような光触媒コーティング組成物を投入することなく炊飯した米であり、他の条件を同一とした。以上の比較結果を表7に示す。
【0102】
【表7】
使用試験例5(米の炊飯試験)
Figure 0003607637
【0103】
以上の結果、本願の製造実施例5により得られた光触媒コーティング組成物の存在下で炊飯された米は、半透明で艶があり、見るからに食欲をそそられる炊きあがりとなっている。
【0104】
また、通常は保温状態で炊飯器内に放置する場合、比較例8のように2〜3日で臭いが発生していたが、本願の光触媒コーティング組成物の投入された炊飯器内の米飯は、2〜3日の放置後においても臭いの発生はなかった。
【0105】
以上の結果から、本発明の光触媒コーティング組成物の投入された炊飯器内にあっては、その光触媒作用により好適に消臭が行われていることが確認された。
【0106】
【発明の効果】
以上説明した構成により、本発明の酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜より成る光触媒のコーティングが施された組成物は、ショットピーニングという比較的簡単な方法によりこれを製造することができると共に、紫外線以外の電磁波、例えば可視光線に反応する可視光応答性能を有し、紫外線の照射を受け難い室内や暗所等においても光触媒性能を発揮する光触媒コーティング組成物を簡単に得ることができた。
【0107】
従って、比較的安価に光触媒コーティング組成物を製造することができると共に、この光触媒コーティング組成物は、太陽光や白色蛍光灯からの照射光中の可視光等にも応答する性質を有するものであり光触媒としての効率が良く、また、従来の光触媒コーティング組成物に比較して多用途の使用が可能である。
【0108】
さらに、基材及びこの基材表面に形成される光触媒の被膜共に、チタン又はチタン合金を原料とすることにより、人体やその他の生物に無害であり、特に基材としてチタン又はチタン合金製の金網を使用することにより表面積が広くなり、後述する流体の浄化、還元に使用する場合において流体との接触効率が高く、高い浄化、還元作用を得ることができる。
【0109】
また、以上のように構成された本発明の光触媒コーティング組成物を、浄化を必要とする水、その他の液体や空気等と接触状態に配置することにより、室内等の紫外線の照射を受けにくい環境においても液体や空気の浄化を好適に行うことができた。
【0110】
特に、前述の本発明の光触媒コーティング組成物を揚げ物用の油と接触させて酸化した油の還元を行う場合には、油の使用を長期間継続して行うことができ、これにより油の消費量を減らすことができ、資源の有効利用を図ることができると共に、廃棄される油の量を減少することにより廃棄に要する費用を軽減するとこができると共に廃棄による環境破壊等の防止にも貢献するものである。

Claims (6)

  1. チタン又はチタン合金製の金網から成る基材の表面にチタン又はチタン合金から成る噴射粉体を噴射して、前記基材の表面に酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタンの被膜を形成して成ることを特徴とする光触媒コーティング組成物。
  2. 前記金網が、線径0.1〜2 mm 、目開0.1〜10 mm であることを特徴とする請求項1記載の光触媒コーティング組成物。
  3. 請求項1又は2記載の光触媒コーティング組成物を、浄化及び/又は還元の対象となる流体に接触配置して成ることを特徴とする流体の浄化還元方法。
  4. 前記流体が、水であることを特徴とする請求項3記載の流体の浄化還元方法。
  5. 前記流体が、空気であることを特徴とする請求項3記載の流体の浄化還元方法。
  6. 前記流体が、揚げ物用の油であることを特徴とする請求項3記載の流体の浄化還元方法。
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