JP3618937B2 - 光学素子の成形方法及び精密素子の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する利用分野】
本発明は、例えば、カメラやビデオカメラに用いられるレンズ等の高精度な光学素子を熱間加工で成形するための光学素子の成形方法及び光学素子及び光学素子成形用素材の製造方法及び精密素子の成形方法及び精密素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、研削・研磨による精密光学素子の加工方法に代わり、加熱軟化させたガラス等の成形素材を、成形型を用いて直接プレス成形する方法が注目されている。
通常、この種の成形には、胴型とその胴型内で摺動する上下型よりなる成形用型部材を用いて、加熱軟化状態にある成形素材をプレスし、型部材の成形面に対応した光学機能面を成形素材に転写し、その後冷却を行い、型部材から精密光学素子を取り出す方法が用いられている。
【0003】
また、特公昭48−22977号や特開昭59−195541号には、多孔質材や超音波振動を用いて型表面にガス膜を作り、その膜を介して型と成形素材である軟化ガラスを非接触の状態でレンズ等に成形する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の成形型の成形面を成形素材に接触させて形状を転写させ精密光学素子を得るような従来例では、加熱された型と成形素材が直接に接触するために、成形素材と型との間に融着が発生したり、また成形時の型と成形素材の温度差により成形素材が不均一な熱収縮を起こすことに起因する、面の転写不良が発生したりする等の問題があった。特に成形素材がガラスである場合には、成形温度が高いためこの様な問題が顕著となり、成形温度を上げて成形時間の短縮を図ることや、高温の溶融ガラスから直接に精密光学素子を成形することは非常に困難であった。また更に、成形素材であるガラスと成形型の接触によりガラスと型材が反応したり、型の表面の磨耗等により型が劣化したりするため、使用できる成形型の材料も限定され、成形できるガラスの種類もごく限られたものとなってしまうという問題があった。
【0005】
上記のような問題を避けるために、前述の特公昭48−22977号や特開昭59−195541号には型と成形素材であるガラスを接触させないで成形する技術が開示されている。このようにガラスと型とを非接触の状態で成形する事は理想的であり、融着防止や成形品の表面状態に対しては効果がある。しかしながら、軟化状態にある高温の成形素材を非接触で成形すると、成形後の冷却期間の間に成形素材が型とは無関係に自由収縮するため、成形時の形状と冷却完了時の形状が異なってしまう。特に、成形品の肉厚形状が一定でなかったり、成形品への冷却が不均一であったりすると、冷却中に成形品の内部に温度分布が発生して冷却中の熱収縮が均等に起こらず、収縮が温度の比較的高い部分に集中するため、冷却後にその部分がくぼんだ状態に変形してしまう。これは、いわゆるヒケと呼ばれるものであり、このようなヒケが生ずると、完成した光学素子の形状が本来の目的とする形状と大きくかけ離れてしまう。特に成形素材がガラスの場合では、成形可能な温度域であるガラス転移点温度以上では熱膨張率が極端に大きく、成形が終了して成形時の温度からガラス転移点温度まで冷却する間にガラスが大きく収縮し、且つこの収縮変形を制御することが容易でないため、高精度の製品を作り出すのは非常に困難であるという問題があった。この問題は、成形素材と型とを接触させる前述の方法でも同様に発生する問題でもあった。
【0006】
また更に、成形素材と型を接触させて成形するか否かに拘わらず、型と成形素材の熱膨張率の違いがあると、温度変化により型と成形品との寸法形状に微妙な差が発生する。この現象は成形型を用いた温度変化を伴う成形方法では不可避のものであり、一旦成形素材に転写した型の形状が、温度の変化、特に冷却による温度の変化により、型の形状とずれてしまうことを意味する。
【0007】
成形素材と型を接触させて成形する方式では、冷却時に成形素材と型が中途半端に接触していると、成形素材と型が部分的な剥離を起し、形状の転写性に問題を起こす。これを防ぐため、成形品が自重で変形を起こさない温度近くまで型に圧力をかけておき、成形品と型の剥離を防ぐ方法や、単に高温で型と成形素材との間に発生する密着力を利用して、成形品が変形を起こしにくい温度付近まで成形品と型を密着させておく方法がとられている。
【0008】
しかし、この様な方法のうち、型に圧力を加える方法では、最終的に形状を転写させる温度、即ち冷却が進んでいったときに圧力を解除する温度を厳密に管理できる利点はあるが、成形品に無理な力をかけることになり、成形品の割れや型の損傷を引き起こすという問題があった。また、形状によっては対応しきれないという問題もあった。また、密着力に頼る方法も、型と成形品の密着力を左右する微妙な界面状態を厳密に管理することが実質上不可能であるため、型と成形品の離型する温度が不安定となり、形状の転写性が安定しなかったり、上記の圧力をかける方法と同様に成形品に割れ等の欠陥を引き起こすという問題があった。さらに、成形素材と型を接触させないで成形する方法の場合にも、成形素材が型と接触していないため温度変化のどの時点で型の形状が成形素材に転写されるかが不安定で成形品の形状が安定せず、高精度な形状を転写させることはほとんど不可能であるという問題があった。
【0009】
また、型に供給される成形素材の表面に切断痕等の欠陥があると、成形を非接触の状態で行っても、成形された成形品に欠陥が残り、その部分を再度研削研磨したりして削除する必要が生じ、本来の目的を達成できないという根本的な問題があり、上記の従来例では、この点に関する技術的な開示はされていない。
また、光学素子の成形法に於いて重要な条件の一つとして、型とガラスの融着を防止することがあげられる。言い換えれば型とガラスの離型性を良くすることが必要である。このことを主たる目的として従来から、型材料やガラス材料に関していろいろな提案がされている。いくつかの例を挙げるならば、特開昭49−51112号には13Crマルテンサイト鋼が、特開昭52−45613号にはSiC及びSi3N4が、特開昭60−246230号には超硬合金に貴金属をコーティングした材料が提案されている。更に最近では特に離型性に優れていると考えられている炭素系材料として特開昭61−183134号にはダイヤモンド薄膜が、特開平2−80330号には水素化アモルファス炭素膜が提案されている。また特開昭60−210534号には離型機能を有する薄膜を予めガラス素材にコーティングする成形方法が提案されている。
【0010】
しかし13Crマルテンサイト鋼は酸化しやすくさらに高温でFeがガラス中に拡散してガラスが着色される欠点を持つ。またSiC,Si3N4は極めてガラスとの親和性が強いため融着が発生しやすい。貴金属をコーティングした型は極めて軟らかいためキズが付きやすい欠点を持つ。ダイヤモンド薄膜は光学的な鏡面性を得ることが困難である。水素化アモルファス炭素膜は上記のいずれよりも優れた離型性を持つ。問題点としては薄膜であるために強力な外力によって剥離する場合があることである。膜の剥離は、型とガラスの熱膨張率の違いに起因する熱応力によってプレス成形した後の冷却中に膜に対する剪断力が発生するために起こると考えられる。即ち型とガラスはプレス直後から冷却中は、強力に密着しているため熱応力によって膜が剥離するのである。そしてこの剥離現象は型の周辺部に於いて特に顕著である。その理由は型の周辺部が最も熱応力が大きく、また凸レンズの場合周辺部が肉薄であり中心部に比べて型とガラスが強く密着していると考えられるためである。少しでも膜が剥離するとその部分で型とガラスが融着したり成形品が割れたりするため型として使用することができなくなる。また離型機能を有する薄膜を予めガラス素材にコーティングすればプレス後の型とガラスの密着力を減少させることはできるが、特に凸レンズの周辺部分のように密着力が強くなる場所に於いて融着を防止する手段としては十分な物ではない。また薄膜をコーティングする工程がよけいに必要となる。
【0011】
このように従来は、特に型の周辺部に於いて融着が発生したり、型の膜が剥離したりすることが問題であった。唯一の対策として周辺部の型材料にグラファイト等の離型性の良い材料を使えば融着は防止できるが、軟らかく消耗しやすく、また汚れの発生源になるため適当な材料ではない。
また、光学素子を成形する場合、軟化状態のガラス塊を成形型でプレス成形し、成形光学素子を得るが、良好な外観精度を有するガラス塊を、安価に製造する方法の開発が、最近進んでいる。
【0012】
一方、所望の成形光学素子の形状に近い形状に、予め、成形用素材であるガラス塊の形状を成形する技術の開発も進んでいる。成形光学素子に近い形状に成形された成形用素材の利点は、プレス成形時の変形量が小さいため、プレス成形時間が短く済む点、および、成形型表面に成膜されている離型作用を有する薄膜を、プレス成形時にプレス変形に伴う剪断応力により破損することを防止できる点がある。
【0013】
良好な外観精度を有するガラス塊を、安価に製造する方法として、以下に示す製造方法が具体的に知られている。
すなわち、流出口から流出している溶融ガラス流を、下方からガスが噴出している受け型の上に、受け型から浮上している状態で受け、溶融ガラス塊を得る方法である。このようにして得られたガラス塊は、上下面とも滑らかな自由表面からなっているので、表面粗さも非常に滑らかであり、良好な外観精度を有している。また、後加工を必要としないので、その製造コストも非常に安価なものである。
【0014】
具体例として、ガス噴出孔の開いている受け型にガラス塊を得る例としては、特公平7−51446号が知られている。また、多孔質の材料からなる受け型からガスが噴出している状態で、溶融ガラス流を受けガラス塊を得る例としては、古くは、特公昭48−22977号に既にその記載が見られ、最近では、特開平6−122526号、特開平6−144845号、特開平6−206730号等にその記載が見られる。
【0015】
一方、成形用素材であるガラス塊をプレス成形して、所望の形状の成形ガラス塊を得る方法として、特開平4−37614号が知られている。ここでは、受け型の上に受けたガラス塊を、受け型から取り出し、プレス成形用下型の上に置き、熱変形可能な温度までガラス塊を再加熱した後、このガラス塊を成形して、所望の形状の成形ガラス塊を得ている。
【0016】
しかしながら、上記従来例である、ガラス塊を受け型から浮上した状態で受ける方法には、以下に示すような欠点があった。
すなわち、受け型から噴出しているガス流によって、受け型の上に受けられたガラス塊の下面が上方に持ち上げられた状態のまま固化してしまう。すなわち、得られたガラス塊の下面が凹んでしまうのである。
【0017】
このように、下面が凹んでいるガラス塊を光学素子成形用素材として用いて、プレス成形して成形光学素子を得た場合、プレス成形機のチャンバーの内部に満たされている窒素ガスが、プレス成形時に、このガラス塊の下面の凹み部分に取り込まれた状態でプレス成形が行われ、その結果得られた成形光学素子の下面には、「ガス残り」と呼ばれる凹み部分が発生し、不良品となり、光学素子として使うことはできない。
【0018】
このような、ガラス塊の下面の凹みを防止するためには、受け型から噴出しているガス流の流量を減らせば良い。しかし、噴出ガス流量を減らしすぎた場合、溶融ガラスと受け型が接触してしまう。このようなガラス塊は、多孔質の受け型の細孔の凸凹形状を転写しているので、外観が悪く、光学素子成形用素材として用いることはできない。
【0019】
ガラス塊の下面の凹みを防止するもうひとつの方法として、受け型から噴出するガスとして高温のガスを用いる方法がある。すなわち、受け型から噴出しているガスの温度を高くし、かつ、噴出ガス流量を少なくすることにより、ガラス塊の下面の凹みを防止できる。しかし、この場合も、噴出ガス温度を高くしすぎた場合や噴出ガス流量を減らしすぎた場合、溶融ガラスと受け型が接触してしまう。
【0020】
このように、従来から知られている、ガラス塊の下面の凹みを防止する方法は、しばしば溶融ガラスと受け型が接触することがあり、ガラス塊に接触痕が生じやすく、その最適な条件を設定することは困難であった。
一方、ガラス塊をプレス成形して所望の形状の成形ガラス塊を得る方法の従来例である、特開平4−37614号には、以下に示す欠点があった。
【0021】
すなわち、ガラス塊をプレス成形して所望の形状のガラス塊を得るに先立ち、このガラス塊を熱変形可能な温度まで再加熱するに際し、再加熱に非常に長い時間を要する点である。具体的に、特開平4−37614号の実施例の記載によれば、5分乃至20分の時間が、再加熱に必要となっている。
このように、再加熱に長時間を要する理由は、急激に加熱してガラス塊の温度が過昇温して、ガラス塊と成形用下型とが融着することを防止するために、再加熱の温度を低く抑えているためである。
【0022】
また、ガラス光学素子のプレス成形に使用されるガラス素材には、既に述べたことと重複するが、形状、容量、表面粗さ等が要求される。
形状は図41や図42に示すように凹形状の型540の場合にはガラス素材539の曲率半径が大きく、凸形状の型542の場合にはガラス素材541の曲率半径が小さいとプレス変形時に型とガラスの間にガス残りが発生してしまう。従って、ガラス素材の形状としては中心部から順次型と接触変形してゆくように曲率半径を調整しなければならない(凹形状の型の場合:ガラス素材は凸でかつその曲率半径<型の曲率半径、凸形状の型の場合:ガラス素材は凸あるいは凹の場合にはその曲率半径>型の曲率半径)。
【0023】
容量は型構造にもよるが大きいと図43に示すようにはみ出し部が大きくなり、成形時の割れの原因になったり、後加工が必要になったりする。また小さいと図44のようにレンズの有効径がとれなくなる。従って容量も所要の範囲に調整することが必要になる。
表面粗さはレンズとしては透過率等の関係上、Rmaxで0.02μm以下であることが必要である。それを満たすには型の表面粗さがRmaxで0.02μm以下であることは当然であるがガラス素材としても0.04μm以下であることが必要である。これ以上になるとプレスによっても表面粗さが0.02μm以下にはならない。
【0024】
これらの仕様を満たすガラス素材を作成するのに以下の方法が提案されている。
(a)特公平4−20854号
ガラス素材を研削、研磨によりレンズ形状に近似の曲率形状にし、かつ表面粗さをRmaxで0.01μm以下にする。
(b)特公平4−43851号
ガラス素材を加熱軟化させ表面張力により球状にし、かつ表面粗さをRmaxで0.04μm以下にする。
(c)特公平3−60435号
溶融状態にあるガラスを一方の面は光学ガラス素子と近似形状の熱加工治具により成形しもう一方の面は表面張力により成形して精密成形用のガラス素材を得る。
【0025】
また、多孔質部材を用いたものとしては以下のものがある。
(d)特開昭61−266317号
ガラス素材を多孔質部材を用いて加圧ガスを介して非接触状態で、加熱軟化、搬送する。
しかし、これらの方法には以下のような問題点がある。特公平4−20854号の研削、研磨による方法ではこの後の洗浄工程も含めこれらの工程分コスト高になる。さらに、研磨によるヤケ、表面汚れ等の成形への悪影響があること、研削研磨によるガラス材料の無駄等の欠点もある。これに対して特公平4−43851号のガラス材料を加熱軟化させ表面張力により球状化する方法では上記の問題点は解決されるものの、形状として球状しかできず凹レンズ成形用のガラス素材の作製が不可能である。また、凸レンズやメニスカスレンズの場合にも近似形状のガラス素材と比較して変形量が大きくなり、成形タクトが延びたり、型への負荷が大きくなったりするという欠点がある。特開平3−60435号の溶融状態にあるガラスから素材を作製する方法では、研削研磨による方法での問題点は解決されるものの、一方の面の形状調整ができない。さらに、ガラス材料の種類により、粘度カーブの急なものや失透性の強いものは作製が困難である。
【0026】
また、特開昭61−266317号では、多孔質部材を用いて加熱、搬送を行っているがこの方法ではガラス素材は加熱前に形状調整を行っており、立方体や直方体をしたガラスブロックから上下面に任意の曲率半径を持ったレンズ形状への変形は不可能である。
以上のようにこれまで提案された方法では、研削研磨による方法ではコスト高となり、表面張力を利用した熱変形では形状の調整が不可能である。
【0027】
従って、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶融軟化状態にある成形素材から直接に高精度な形状及び面精度を有する光学素子等の精密素子を、研削研磨等の後加工なしで得ることが出来る精密素子の成形方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、型の周辺部における融着を防止したり型の膜剥離を防止することである。
【0028】
また、本発明のさらに他の目的は、光学素子成形用素材として適した、下面に凹みのないガラス塊を、容易にかつ確実に製造する方法を提供することである。
また、本発明のさらに他の目的は、ガラス塊をプレス成形して所望の形状の成形ガラス塊を得る方法において、プレス成形に先立つ再加熱時間を短く、または、無くすことを可能にする、成形ガラス塊の製造方法を提供することである。
【0029】
また、本発明のさらに他の目的は、所要の形状と容量を有したプレス成形用のガラス材料を安価に作製することである。
また、本発明のさらに他の目的は、成形時間が短く、かつ型耐久の向上が図れる成形方法を提供することである。
【0031】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる精密素子の成形方法は、光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の成形素材から直接に成形する方法において、少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、前記型ユニットを開き、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させるとともに、溶融軟化された成形素材を供給するノズルから、溶融軟化状態の成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で前記型ユニットに供給する工程と、成形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユニットの成形面上に供給された成形素材を、前記ノズルから分離する工程と、前記成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で前記型ユニットに圧力を加え、前記型ユニットを閉じ、前記成形素材を補正された成形面の状態にならわせ、補正された形状の成形品を得る工程と、成形素材を型ユニットに供給した後から、型ユニットに圧力を加え型ユニットを閉じ、成形素材を成形面の形状に倣わせる工程の間に、成形素材への第1の冷却開始し、さらに前記型ユニットを閉じ、成形素材を成形面の形状にならわせた後に第二の冷却を開始し、成形品が所望する最終形状になるまでの間に冷却を行い精密素子の形状を得る工程と、前記型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴としている。
【0033】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形面より噴出させる流体の圧力、流量、温度、及び成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率をパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴としている。
【0034】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴としている。
【0035】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、型ユニットに圧力を加え成形素材を加圧する際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力を制御することを特徴としている。
【0036】
また、本発明に係わる精密素子の成形方法は、光学素子等の精密素子を成形する方法において、少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、少なくとも成形後に機能面となる部分に対応する部分の表面に、高低差が5μm以上の鋭角的な段差が存在しない様に仕上げられた成形素材を準備する工程と、前記型ユニットを開き、成形素材を型ユニットに供給すると共に、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させ、成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で加熱し、軟化させる工程と、成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る工程と、該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を得る工程と、補正された形状の精密素子の少なくとも表面近傍の粘度が108dPa・s以上となったときに、成形面から流体の噴出を再開すると共に、精密素子と成形面との間に空隙を設ける工程と、成形素材を加熱、軟化した直後から、予備成形品を得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷却を開始し、成形面からの流体の噴出を再開した直後から第3の冷却を開始し、成形品が所望する最終形状になるまでの間に冷却を行い、精密素子の形状を得る工程と、第2の冷却の際に、その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴としている。
【0037】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率の少なくとも1つをパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴としている。
【0038】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴としている。
【0039】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、型ユニットに圧力を加え非接触の状態で成形素材を加圧する際及び形状転写後の型内での冷却の際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力を制御することを特徴としている。
【0040】
また、本発明に係わる精密素子の成形方法は、光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の成形素材から直接に成形する方法において、少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、前記型ユニットを開き、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させると共に、溶融軟化された成形素材を供給するノズルより、溶融軟化状態の成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で型ユニットに供給する工程と、成形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユニットの成形面上に供給された成形素材を分離する工程と、成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る工程と、該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を得る工程と、成形素材をノズルから分離した直後から、予備成形品を得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷却を開始する工程と、第2の冷却の際に、少なくとも、補正された形状の精密素子の表面と成形面との間に密着力が働いている間に、その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、少なくとも、素子の表面と成形面との間の密着力が解消するまでの冷却を行い、その後、型ユニットを開き所望の形状に近似した形状を有する成形素子を取り出す工程と、所望の形状に近似した形状の成形素子をさらに室温まで冷却し、所望の形状の精密素子を得る工程とを具備することを特徴としている。
【0041】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率、及び成形素子の表面と成形面との間の密着力をパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴としている。
【0042】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴としている。
【0043】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記第2の冷却の際の型部材の追従が、成形面と精密素子の間の密着力により行われることを特徴としている。
【0044】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記第2の冷却の際の型部材の追従が、型部材に圧力を加えることにより行われることを特徴としている。
【0045】
また、本発明に係わる精密素子の成形方法は、光学素子等の精密素子を成形する方法において、少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、少なくとも成形後に機能面となる部分に対応する部分の表面に、高低差が5μm以上の鋭角的な段差が存在しない様に仕上げられた成形素材を準備する工程と、前記型ユニットを開き、成形素材を型ユニットに供給すると共に、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させ、成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で加熱し、軟化させる工程と、成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る工程と、該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を得る工程と、成形素材を加熱、軟化した直後から、予備成形品を得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷却を開始する工程と、第2の冷却の際に、少なくとも、補正された形状の精密素子の表面と成形面との間に密着力が働いている間に、その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、少なくとも、素子の表面と成形面との間の密着力が解消するまでの冷却を行い、その後、型ユニットを開き所望の形状に近似した形状を有する成形素子を取り出す工程と、所望の形状に近似した形状の成形素子をさらに室温まで冷却し、所望の形状の精密素子を得る工程とを具備することを特徴としている。
【0046】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率、及び成形素子の表面と成形面との間の密着力をパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴としている。
【0047】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴としている。
【0048】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記第2の冷却の際の型部材の追従が、成形面と精密素子の間の密着力により行われることを特徴としている。
【0049】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記第2の冷却の際の型部材の追従が、型部材に圧力を加えることにより行われることを特徴としている。
【0050】
また、本発明に係わる精密素子の成形方法は、光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の成形素材から直接に成形する方法において、少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、前記型ユニットを開き、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させると共に、溶融軟化された成形素材を供給するノズルより、溶融軟化状態の成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で型ユニットに供給する工程と、成形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユニットの成形面上に供給された成形素材を前記ノズルから分離する工程と、成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る工程と、該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を得る工程と、補正された形状の精密素子の少なくとも表面近傍の粘度が108dPa・s以上となったときに、成形面から流体の噴出を再開すると共に、精密素子と成形面との間に空隙を設ける工程と、成形素材をノズルから分離した直後から、予備成形品を得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷却を開始し、成形面からの流体の噴出を再開した直後から第3の冷却を開始し、成形品が所望する最終形状になるまでの間に冷却を行い精密素子の形状を得る工程と、第2の冷却の際に、その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴としている。
【0051】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率の少なくとも1つをパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴としている。
【0052】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴としている。
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴としている。
【0053】
また、この発明に係わる精密素子の成形方法において、型ユニットに圧力を加え非接触の状態で成形素材を加圧する際及び形状転写後の型内での冷却の際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力を制御することを特徴としている。
【0054】
また、本発明に係わる光学素子の成形方法は、重量調整されたガラス素材を成形用型でプレスして光学素子を成形する方法において、前記成形用型型が、光学素子の少なくとも光線有効径内を形成するための第1の型部材と、それ以外の部分を形成するための第2の型部材で構成され、第2の型部材の内部または表面を経由してガスを成形面に流しながら成形することを特徴としている。
【0055】
また、この発明に係わる光学素子の成形方法において、プレス成形中に前記第2の型部材と成形された光学素子はガス層を介して非接触であることを特徴としている。
また、この発明に係わる光学素子の成形方法において、前記第2の型部材が多孔質セラミックまたは、多孔質金属または、多孔質炭素であることを特徴としている。
【0056】
また、この発明に係わる光学素子の成形方法において、上型を構成する第2の型部材を経由するガスの温度と、下型を構成する第2の型部材を経由するガスの温度の差が10℃以上であることを特徴としている。
【0062】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態で用いられる成形装置の概略図である。図1において1は型ユニットであり、下型構成部材2と上型構成部材3とから概略構成されている。下型構成部材2と上型構成部材3は、それぞれ下型部材11と、上型部材21と、それらを保持する下型ホルダー12と上型ホルダー22とを備えている。なお、下型ホルダー12と上型ホルダー22には、流体を下型部材11と上型部材21にバランスよく供給分配するための圧力室12a、22aが設けられている。また、ヒータ13,23と図示せぬ測温手段が埋め込まれていて、この側温手段の検出信号に基づいて、後述するコントローラ41により下型部材11及び上型部材12の温度と流体の温度を最終的に調整することが出来るようになされている。また、11a,21aは、それぞれ精密素子の形状を決定する下型部材11と上型部材21の成形面を示している。31は流体の供給パイプであり、不図示の流体供給源から矢印A部を介して供給された流体を圧力・流量調節器32a,32bヘ供給するようになされている。更に圧力・流量調節器32a,32bの先には、それぞれ流体の温度調整を行うための加熱ヒータ33a,33bが取り付けられている。また、下型構成部材2及び上型構成部材3には不図示の駆動装置がそれぞれ取り付けられており、下型構成部材2及び上型構成部材3は図に示す矢印Ba,Bb方向(上下左右方向)にそれぞれ独立に移動できる様になされていると共に、下型部材11及び上型部材21のセンタを中心として、矢印Ca,Cb方向に任意の回転数で回転出来るようになされている。下型構成部材2及び上型構成部材3と加熱ヒータ33a,33bの間は、耐熱性のあるフレキシブルチューブ34a,34bとロータリージョイント14,24によって接続されており、下型構成部材2と上型構成部材3の上下左右方向及び回転方向の動きを妨げない様になされている。また、41はヒーター13,23の温度及び流体の流量、圧力、温度を制御するコントローラであり、信号線44a,44bによりヒーター13,23に接続されていると共に、信号線42a,42b,43a,43bにより圧力・流量調節器32a,32b及び加熱ヒータ33a,33bに接続されている。
【0063】
図2は溶融軟化状態の成形素材を供給ノズルから吐出して型ユニット1に供給し、供給された成形素材をノズルから分離する工程を示す図である。図2において101は、溶融軟化状態の成形素材102を吐出する供給ノズルであり、102bは、下型部材11の成形面11aの上に供給された分離前の成形素材塊を示し、102cは成形素材102と分離前の成形素材塊102bの間に作られるくびれ部を示す。102aは成形面11a上に得られた供給ノズル101から分離された後の成形素材塊を表わす。
【0064】
図3は型ユニットの成形面の補正の方法を模式的に表したものである。図3において、201は、精密素子が最終的に必要とする形状を表す。202は、成形素材が加熱されて膨張した状態を示し、この状態で、型部材の成形面204の形状が流体の薄膜203を介して成形素材(精密素子)の表面に転写される。薄膜203を形成する流体は、成形面から噴出される。成形面204の形状は、精密素子の形状転写時に要求される形状202に流体の薄膜203の厚さを加えて曲率半径等が補正されている。205は、形状転写直後の高温の状態から成形素材を冷却するときに発生するヒケ等に起因する変形をキャンセルする補正量を示す。即ち、形状転写後精密素子が冷却されると、その中央部がヒケ等によりへこむので、これをキャンセルするために型部材の成形面は、206で示す様に204で示す形状に更に206で示す堀込みが加えられている。これにより、成形素材の表面は、高温で成形面の形状が転写されるときには、205で示す量だけ中央部が出っ張ることになるが、成形素材が冷却されるにつれて、この出っ張りがヒケにより引っ込んで行き、最終的に、必要とされる形状201に落ち着く。なお、成形面の形状204及び206は、成形素材に形状を転写する高温時に必要とされる形状であり、低温時においては、型部材の熱収縮により、207及び207aで示すような形状となる。従って、型部材を製作するときには、207および207aで示すような形状に成形面を加工しておく。
【0065】
次に、上記の成形装置を使用して精密素子を成形する工程を、図を用いて具体的に説明する。なお、ここで成形される精密素子は、ビデオカメラに用いられるもので、光学有効面の曲率半径がR20mmとR35mm、中心肉厚が3mm、外径Φ14mmの両凸の球面レンズである。成形素材には、温度が1300℃の時に101.5dPa・s、1200℃の時の101.6dPa・s、1100℃の時に101.8dPa・s、1000℃の時に102.2dPa・s、890℃の時に102.9dPa・s、720℃の時に105dPa・s、610℃の時に107.6dPa・s、498℃の時に1013dPa・sの粘度となる粘性特性を有する光学ガラスを用いた。
【0066】
また、下型部材11の成形面11aと上型部材21の成形面21aは、予め成形素材の形状転写時の形状及び冷却後の形状を流体の膜厚及びヒケ等の変形を考慮してシミュレーション計算を行い、最終的に精密素子に必要とされる形状が実現される様に補正を加えて加工されている。
具体的には、上型21の成形面21aの場合、まず、図3に示すように、精密素子であるレンズの標準的な使用条件(例えば20℃)における理論形状201(R35mm)から、形状転写時の温度まで昇温したときの理論形状202がどのような形状になるかを算出する。即ち、成形時の形状転写時の温度を、このガラスが107.9dPa・sの粘度を示す温度である600℃に設定し、理論形状201がどれだけ膨張するかを算出し、その値を理論形状201に加えて膨張時の理論形状202とする。次に、成形面21aと膨張時の理論形状202の間に介在する流体膜203の厚さが平均5μm前後となるような条件を、流体の流量、流体の粘度、ガラスの粘度、及び型ユニットに加えられる圧力等から算出する。そして、これらの条件で成形を行ったときの流体膜203の厚さ分布をあらためてシミュレーション計算し、この求められた流体膜203の膜厚分布を膨張時の理論形状202に加えて形状転写時の成形面の理論形状204を決定する。次に、形状転写後の冷却によるヒケ等の変形量を算出する。この計算では、形状転写温度から冷却していくときの刻々変化する流体及び型ユニットの温度、ガラスの保有熱、及び熱伝導率に基づいてガラスの温度分布を求め、その時々の熱収縮による応力とガラスの応力緩和計数等からヒケの量を算出する。このヒケの量を補正量205として成形面の理論形状204に重ね合わせ、形状転写時の成形面の部分的な補正形状206を決定する。さらに、成形面の材料の熱収縮による補正の量を算出し、形状転写温度の成形面の理論形状204とヒケによる補正の理論形状206とに重ね合わせて、冷間時の成形面の最終理論形状207,207aを決定する。この最終理論形状に基づいて、上型部材21の成形面21aを多孔質の穴部のくぼみを除いた面をRmax0.3ミクロン以下となるような鏡面状態に加工した。また、下型部材11の成形面11aも同様の手法で形状を求め加工した。また、型部材11,21の材料としては、気孔率が30%で、最大穴径が8ミクロンである多孔質カーボンを用い、流体には型部材11,21の酸化を防ぐために窒素ガスを用いた。
【0067】
次いで、このように加工準備した型部材11,21を図1に示す成形装置に取り付け、図2に示すような方法で軟化ガラス塊を得た。ここでこの行程を図2を用いてより具体的に説明する。
まず、図示せぬガラス溶融炉でガラス素材を溶融し、脱泡、均質化行程を経て、軟化状態の成形素材である均質な溶融ガラス102を得る。それをガラス溶融炉の末端に設けられている成形素材供給ノズル101へ導く。供給ノズル101を1200℃の温度に設定し溶融ガラス102を流出させると共に、下型構成部材2を供給ノズル101の直下に移動させ、図2(a)に示すように成形面11a上に所定の容量のガラスを受けた後、図2(b)に示すように下型構成部材2を矢印Dのように下方へ少し下げ、供給ノズル101と切断前の成形素材塊であるガラス塊12bの間にクビレ部102cを発生させる。この状態で、102cがガラスの自重と表面張力により分離にいたるまで待機し(図2(c)の状態)、軟化状態の成形素材塊であるガラス塊102aを得た。
【0068】
このように102の分離工程において下型構成部材2を一旦停止させることにより、クビレ部102cの部分が冷やされることが少なくなり、自重と表面張力により自然に分離することが可能となる。そのため、分離部に成形素材が糸状に固化した切断痕や、破断痕が残らずに、102aの表面には有害な欠陥が生じることがなくなる。また、この時の流体(窒素ガス)の温度は、ガラスを成形面11aに受ける時はガラスの転移点付近の温度である500℃に、その直後には600℃になるようにヒータ33aとヒータ13の温度を調整する。また、窒素ガスの流量も溶融ガラス102を成形面11aに受ける直前までは毎分20リッター、その後は毎分5リッターとなるように圧力・流量調節器32aで制御した。このようにすることで溶融ガラス102が成形面11aに達する前に102の先端が多少冷却されて固化し、窒素ガスの流量も増えるために、溶融ガラス102の先端が全く成形面11aに接触することがなく、また上記の分離方法を用いることとの相乗作用により、表面には全く欠陥がないガラス塊102aが得られた。
【0069】
次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス塊102aの成形面11aで受けている下面近傍の粘度が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の粘度が103〜6dPa・sであり、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面11aと成形面21aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bとヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2mmとなるまで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで窒素ガスの温度と流量を600℃と毎分10リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が20Kgfとなるように圧力を徐々に上げながら、且つ、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、レンズに成形面11a,21aの形状を転写させた(第1の冷却終了)。
【0070】
上記の形状転写の工程と、第1の冷却の工程に続き、第2の冷却を行った。これは窒素ガスの流量はそのままで、温度を100℃に設定し、更に型ユニット1への加圧力を10Kgfとなるように徐々に減圧しながら冷却を開始した。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515℃)となった時に型ユニットを開き、下型部材11からは窒素ガスを噴出させたままの状態で、レンズを図示せぬ吸着ハンドで取り出した。更に成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1.5本、クセがニュートンリング1本以下に収まり、通常の使用には十分に耐えられる精度を得ることができた。
【0071】
また、この複数回の成形の時の温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、全ての温度制御点において10℃のばらつき範囲に収まり、また型ユニット1の開閉速度等のばらつきも5%に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなり、冷却速度、特に第2の冷却速度が毎分20℃より遅くなると自重変形や窒素ガスの圧力の影響を受けやすくなり、精度が劣化することが確認された。
【0072】
(第2の実施形態)
次に第1の実施形態と同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、もう一方の面がR40mmを基準とする非球面形状をなす、レンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mmである、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レンズの成形を行った。
【0073】
第1の実施形態と同様に、下型部材11の成形面11aと上型部材21の成形面21aは、成形前にシミュレーションにより求めた数々の補正を考慮した形状に加工し、その後更に実際に成形を行い、その形状データをもとに最終的な補正を行って形状を決定した。具体的には、第1の実施形態と同様に、上型21の成形面21aの場合、図3に示すように、精密素子であるレンズの標準的な使用条件である20℃における形状201(R40mmを基準とする非球面形状)に対し、成形時の形状転写時の温度を、600℃に設定し、第1の補正の量の一部であるガラスの温度膨張による変形量を算出し、その結果から、この条件下における精密素子の形状202を求めた。更に、第2の補正の量である、その時の成形面と精密素子の間に介在する流体の膜厚分布を含む膜厚203が平均3ミクロン前後の厚さになるような条件を算出設定し、形状転写時の成形面の基本形状204を決定した。次に第3の補正の量に相当する、形状転写後の冷却によるヒケ等による補正量205を求め、形状転写時の成形面の部分的な形状206を決定し、更に第1の補正の量の残りの部分に相当する、型ユニットの成形面の材料の温度収縮による補正の量から、型の冷間時、特に型の成形面の形状を加工する時の成形面の形状207及び207a(図3において207と207aのハッチング部分の形状)を求た。そして、その形状データにより、上型部材21の成形面21aを多孔質の穴部のくぼみを除いた面を鏡面状態に加工し、一旦、シミュレーションで決定した成形条件で実際にレンズを成形した。次いで、この成形したレンズの形状を測定し、所定の形状と若干ずれている部分を再度補正加工して、出っ張りのない平滑な鏡面状態に仕上げ、最終的な成形面21の形状とした。また、下型部材11の成形面11aも同様の手法で形状を求め加工した。また、型部材11、21の材料として気孔率が25%であり、最大穴径が6ミクロンである多孔質からなるAlO3を用い、流体にはクリーンなエアーを用いた。
【0074】
次いで、このように加工準備した型部材11、21を図1に示す成形装置に取り付け、第1の実施形態と全く同様にしてガラス塊102aを得た。
次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス塊102aの下型部材11で受けている下面近傍の粘度が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の粘度が103〜106dPa・sであり、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面11a,21aから噴出するエアーの流量を毎分25リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が4.6mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで噴出エアーの温度と流量を600℃と毎分15リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が4.3mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が45Kgfとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、レンズに成形面11a,21aの形状を転写させた(第1の冷却終了)。
【0075】
上記の形状転写の工程と、第1の冷却の工程に続き、第2の冷却を行った。これはエアーの流量はそのままで、温度を150℃に設定し、更に型ユニット1への加圧力を20Kgfとなるように徐々に減圧しながら冷却を開始した。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515℃)となった時に、型ユニット1への加圧を解除すると共に流量を毎分7リッターにして冷却を続け、レンズ表面の温度が498℃(ガラス粘度1013dPa・s)を下回った所で型ユニットを開き、レンズを取り出した。型ユニット1を開き、下型部材11からはエアーを噴出させたままの状態で、レンズを図示せぬ吸着ハンドで取り出した。更にこの成形を数回繰り返し、またこの時の温度、加圧・減圧タイミングなどの再現性は5℃の温度範囲に、速度等のばらつきも3%以内に収まるように厳密に制御しながら成形を実施した。その後、完成した複数のレンズを20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり第1の実施形態以上の良好な結果を得ることができた。
【0076】
(第3の実施形態)
次に図4に示す型部材を第1の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径がΦ10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲率半径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁部の厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレンズを成形した。ここで、図4において、211、221はそれぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレンズの光学面を形成する成形面211aと221aが加工されている。更に、下型部材211と上型部材221の外周にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する成形面216aと226aを有したリング部材216,226が取り付けられている。また、下型部材211と上型部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミクロン、リング部材216,226は気孔率が10%で最大穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られていて、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,12c,22b,22cに流体を個々に独立に供給することができるようになっており、それぞれの光学面の成形面と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立に制御出来るようになっている。また、成形素材は、第1の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては窒素ガスを用いた。
【0077】
この実施形態では、レンズの光学面の成形面211a,221aと周縁部の成形面216a,226aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそのまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、それを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態に仕上げた。また、予備成形における形状転写時の温度は610℃とし、窒素ガスの膜厚は光学面の部分で10ミクロン、周縁部でおよそ20ミクロンであるようにした。
【0078】
次いで、このように準備した型部材211,221,216,226を第1の実施形態と同様に図1に示す成形装置に取り付け、同様の方法で軟化ガラス塊を得た。この時の窒素ガスの温度は、ガラスを成形面211aに受ける時はガラスの転移点付近の温度である500℃に、その直後にはガラスの粘度で107.3dPa・sに相当する温度である620℃になるように温度を調整し、更に窒素ガスの流量は、溶融ガラス102を成形面211aに受ける直前までは、成形面211aで毎分18リッター、成形面216aで毎分8リッター、その後はどちらも毎分5リッターとなるように制御した。
【0079】
次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス塊102aの下型部材211で受けている下面近傍の粘度が105.6〜107dPa・s、その他の表面近傍の粘度が103〜105.6dPa・sであり、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面211a,221aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、成形面216a,226aからの流量をそれぞれ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガラスの粘度で105.8dPa・sに相当する680℃となるように設定し(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2と上型構成部材3が互いに逆回転となるような回転方向で、回転数が200rpmとなるように徐々に回転速度を上げながら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで、下型構成部材2と上型構成部材3の回転を保った状態で、窒素ガスの温度を610℃、成形面211a,221aからの流量が毎分15リッター、成形面216a,226aからの流量がそれぞれ毎分12リッター、11リッターとなるように設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.3mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が25Kgfとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、レンズに成形面211a,221aの形状を転写させた(第1の冷却終了)。
【0080】
なお、上記の成形の工程において、下型構成部材2と上型構成部材を互いに逆方向に回転させるのは以下のような理由による。即ち、多孔質材料の孔は完全に均一に開いていることはなく、微視的に見ると不均一であることが多く、そのため流体の流量、圧力の分布が不均一になりやすい。この圧力等の不均一は流体の膜厚の不均一につながり成形品の形状に影響を及ぼす。この影響を回避するために、型とガラス素材を相対的に回転させ、型とそれに対向する成形面をずらし、膜を均一にするものである。
【0081】
上記の形状転写の工程と、第1の冷却の工程に続き、第2の冷却を行った。ここでは窒素ガスの流量と下型構成部材2と上型構成部材3の回転はそのままで、温度を150℃に設定し、更に型ユニット1への加圧力を13Kgfとなるように徐々に減圧しながら冷却を開始した。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515℃)となった時に下型構成部材2と上型構成部材3の回転を停止すると同時に型ユニットを開き、下型部材211から窒素ガスを噴出させたままの状態で、レンズを図示せぬ吸着ハンドで取り出した。更に成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり、十分な精度を得ることができた。
【0082】
また、この複数回の成形の時の温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、全ての温度制御点において10℃のばらつき範囲に収まり、型ユニットの開閉速度及び下型構成部材2と上型構成部材3の回転数等のばらつきも5%に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなることが確認された。
【0083】
(第4の実施形態)
次に第1の実施形態と全く同じものを、図5に示す様に予め重量調整されたガラス塊より成形した実施形態を述べる。なお、下型11の成形面11aと上型21の成形面21aは、第1の実施形態と全く同様にして形状を求め、加工したものを用いた。
【0084】
まず、第1の実施形態で用いたと同じガラスのブロックから、ガラス塊を切り出し、それを更に研削研磨により容積で311mm3となるようなガラス塊に仕上げ、更に、このガラス塊の研削研磨面以外の部分に、バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス塊の表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、滑らかな表面を有する容量が311mm3のガラス塊を得た。
【0085】
次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分30リッター噴出されている成形面11aの上に載置した後、ヒータ13と加熱ヒータ33aにより、窒素ガスの温度をガラスの粘度で105.4dPa・sに相当する温度である700℃に上げガラス塊を加熱した。この時上型構成部材3も下型構成部材2の真上に移動させ、同様の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上部からも加熱した。このようにすることで、表面に有害な欠陥の全くない、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊102aを得た。
【0086】
次に、第1の実施形態と同様に、成形面11a,21aから噴射する窒素ガスの流量を毎分20リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2mmとなるまで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで、第1の実施形態と全く同じ工程を経て、レンズを成形し、精度を測定したところ、第1の実施形態で得られた結果と同じ結果が得られ、また、レンズ表面にも有害な欠陥は全く見られなかった。
【0087】
更に、最初に準備するガラス塊の表面処理の条件を多少振りながら成形を続けた結果、表面に残る段差が5ミクロンを越えたり、鋭角的な段差が残ったりすると、加熱軟化した後に、表面を更に滑らかにするための時間が非常にかかったり、場合によっては、この加熱軟化により段差が解消せず、成形後のレンズ表面に欠陥が残ったりし、実用上、大きな問題になることが確認された。
【0088】
(第5の実施形態)
次に第3の実施形態と全く同じものを、図5に示す様に予め重量調整されたガラス塊より成形した実施形態を述べる。なお、下型211の成形面211aと上型221の成形面221a及び成形面226aは、第3の実施形態と全く同様にして形状を求め、加工したものを用いた。
【0089】
まず、第1の実施形態で用いたと同じガラスブロックから、ガラス塊を切り出し、それを更に研削研磨により容積で250mm3となるようなガラス塊に仕上げ、更に、このガラス塊の研削研磨面以外の部分に、バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス塊の表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、滑らかな表面を有する容量が250mm3のガラス塊を得た。
【0090】
次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分25リッター噴出されている成形面211aの上に載置した後、窒素ガスの温度をガラスの粘度で105.4dPa・sに相当する温度である700℃に上げガラス塊を加熱した。この時上型構成部材3も下型構成部材2の真上に移動させ、成形面216a,221a,226aにも同様の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上下、外周部からも加熱した。このようにすることで、表面に有害な欠陥の全くない、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊102aを得た。
【0091】
次に、第3の実施形態と同様に、成形面211a,221aから噴射する窒素ガスの流量を毎分20リッター、成形面216a,226aからの流量をそれぞれ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガラスの粘度で105.8dPa・sに相当する680℃となるように設定し、更に下型構成部材2と上型構成部材3が互いに逆回転となるような回転方向で、回転数が200rpmとなるように徐々に回転速度を上げながら、102aの中心肉厚が3.5mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。
【0092】
次いで、第3の実施形態と全く同じように上型構成部材2と下型構成部材3の回転を保った状態で、窒素ガスの温度を610℃、成形面211a,221aからの流量が毎分15リッター、成形面216aと226aからの流量がそれぞれ毎分12リッター、11リッターとなるように設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.3mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が25Kgfとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、レンズに成形面211a,221aの形状を転写させた。その後1012dPa・sでレンズを取り出し、精度を測定したところ、第3の実施形態で得られた結果と同じ結果が得られ、また、レンズ表面にも有害な欠陥は全く見られず、また、加熱軟化前のガラス塊の表面の状態に対しても同様の結果が得られた。
【0093】
次いで
以上第1乃至第5の実施形態をまとめると、第1の方法においては、第1の工程は、精密素子の成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの加工時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張差による形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形および冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒケの発生位置と量を前もって成形型で補正しておく事により、成形された精密素子が所望の形状を得られるようにすることであり、この際に成形面と精密素子の間に存在する流体の厚さも補正しておく。また、型ユニットの成形面を多孔質の材料で作り、その成形面から成形素材に向けてエアーやN2ガス等の流体を噴出させ、成形面表面にごく薄い流体膜を形成することで成形素材と成形面の接触を防ぐことが出来る。この目的のためには、多孔質の最大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミクロン以下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材料は対酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等のセラミックや、多孔質カーボンからなり、更に成形面の表面は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないようにするためにも、出っ張りの無い平滑な鏡面状に加工されていることが必要となる。
【0094】
次に第2の工程により、型と成形素材の接触、特に溶融軟化された形状が不定の状態の成形素材をノズルから流出させ型に供給する時に発生しやすい成形素材と型との接触を防ぐことが出来、更にこの時に、一時的に噴出する流体の温度を下げたり流量を増やすことにより、接触を確実に防ぐことが出来る。また、型ユニットの成形面上に供給された成形素材を前記ノズルから分離する際に、型ユニット上に成形素材を必要量を受け止めた後、型ユニットを一旦下降させ、型ユニット上の成形素材とノズルより流出する成形素材との間にくびれを発生させ、更に成形素材の自重と表面張力によりくびれを発達させ分離を行うことにより、型ユニット上に、成形後に影響がでるような欠陥の全く無い、表面が非常に滑らかな成形素材塊を得ることが出来る。
【0095】
次に第3の工程においても型の成形面から流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成形面と成形素材の接触を防ぐことが可能となり、前述の型と成形素材の接触による傷や接触による急冷による欠陥を防止することが可能となる。また、この時に型ユニットを閉じる速度、タイミング、圧力、および噴出させる流体の流量・圧力、温度等を確実に再現することにより、安定した形状の転写を得ることが出来る。型ユニットを、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度範囲の時に閉じ、型ユニットを閉じ終わった時の流体の膜厚が20ミクロン以下、より高精度な素子を成形する場合は、5〜10ミクロン、望ましくは、3ミクロン以下になるように流体の圧力と流量を制御し、又、同時に型を閉じる圧力および速度も流体の膜厚を前記の範囲内に収まるように成形素材の温度に逆比例させながら制御する事により成形素材を成形面の補正された形状にならわす。また、この型ユニットを閉じる時の動作は成形素材の温度に対応して制御されることが望ましく、各々の動作における温度のばらつきは10℃以下、望ましくは5℃以下とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ範囲に収めることが望ましく、流体の流量及び圧力のばらつき及び型ユニットを閉じる速度と圧力のばらつきは5%以内、望ましくは3%以内とすることにより、補正を施された型ユニットの成形面の形状の転写性をより安定して得ることが可能となる。
【0096】
次の第4の工程での第1の冷却は、成形素材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形状を正確に成形素材に転写させるために行われるものであり、第一の冷却の完了時に上記の流体の膜厚に成るように、成形素材の粘度を制御しながら徐々に冷却を行う。この第1の冷却完了時において成形素材と型ユニットの成形面が流体の膜を挟んで一致することにより、冷却完了後の精密素子の形状及び面精度が確保される。また、この第1の冷却完了時点では、成形素材や型ユニットや流体の温度等は上記の範囲内に収めておく必要がある。その後の第2の冷却は第1の冷却より早い速度で行なうことが出来、ここでの冷却は、一旦転写された補正形状が、冷却により補正前の形状、つまり精密素子の本来の所望する形状に一致し、更に連続成形において冷却収縮によりばらつきが生じないように行われるものである。そのためには、補正形状を決定した時の冷却開始温度や冷却時の温度分布等の諸条件を正確に再現する必要がある。この再現性は、上記と同様に冷却開始時から成形素材の粘度で1012dPa・sを示す温度の範囲での温度のばらつきとして10℃以下、望ましくは5℃以下とすることにより安定した再現性が得られる。また、この時の冷却速度や冷却時の温度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠陥を生じない範囲で補正形状を決定する時に定められるものであるが、転写した形状が自重や流体の圧力により変形を起こさないようにするためには、精密素子の表面を毎分20℃以上の速度で冷却する必要があり、また、流体の圧力や流量にも急激な変化を与えないようにする必要がある。更にこの第2の冷却は、成形された精密素子が変形を発生させにくくなる粘度である1012dPa・sまで行われる。また、特に精密な転写性を要求されるものや、複雑な形状のものに対しては成形素材が歪を新たに発生させない粘度である1014.5dPa・sまで行うことにより、より精密な形状転写性が得られる。以上のような冷却を経ることで、この工程の終了時には型ユニットの成形面の形状と成形された精密素子の形状は膨張率の差の分の補正量や、予め見込んでおいてヒケに対する補正量のために完全に一致しないが、成形素材がほぼ固化しており、成形面と非接触状態にあるため、精密素子の形状は型ユニットの成形面の形状に左右されることなく、所望の形状を維持できる。
【0097】
最後の第5の工程で、上記のようにすでに固化している精密素子を型ユニットを解放して取り出すことにより、所望の形状を転写された精密素子を得る。この時も精密素子と型ユニットの成形面との間には、流体による膜が介在しているようにすることにより、精密素子の表面に成形面との接触による傷などの発生を防ぐと同時に、成形面も固化した精密素子との接触による損傷を防ぐことが出来る。
【0098】
また、第2の方法においては、第1の工程及び第4、第5、第6の工程は、上記の第1の方法の第1の工程及び第3、第4、第5の工程と同様である。
ここでは次の第2の工程は、精密素子の成形素材を準備する際に、成形後の精密素子に欠陥が発生しないように、成形素材の成形後に機能面となる部分に対応する部分の表面を、滑らかに仕上げる工程であり、その部分に相当する部分の表面を光学的な欠陥、つまり加圧成形することにより解消出来ない欠陥を予め取り除くことである。具体的には、表面を高低差が5ミクロン以上の鋭角的な段差が存在しないように仕上げることであり、傷や欠け等の微視的に見た時に鋭角的な部分が存在しないように処理する事である。この処理は、従来から行われている、研削研磨による方法や、酸処理などによる表面エッチングや、火炎や熱風による表面の軟化光揮処理等により行われる。
【0099】
次の第3の行程を実施する事により、成形素材を型ユニットの成形面と非接触の状態で加熱軟化することが可能となるため、型ユニット上に、成形後に成形面に影響が出ることが無い、無欠陥の表面が非常に滑らかな状態の軟化した成形素材塊を得る事が出来る。この時、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度まで成形素材を加熱する事により、次の第4の工程につなげることが可能となる。その後の工程は前述のように第1の方法と同様であり、最終的に所望の形状の精密素子を得ることが出来る。
【0100】
更に、第3の方法においては、成形面の予め補正された形状を、流体の圧力、流量、温度、及び成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と多孔質の材料で作られた型部材の熱膨張率等を成形条件のパラメーターとしてシミュレーションし、事前に成形される精密素子の形状を予測し、それを基に型ユニットの成形面の形状を補正しておく事により、高精度な形状及び面精度を有する精密素子を得ることができる。この補正は、型部材と成形素材の熱膨張差に伴う第1の補正と、型ユニットの成形面と成形素材との間に介在する流体の厚さをキャンセルするための第3の補正を組み合わせたものであり、成形型の成形面の形状加工時にこの補正を行うことで、成形が完了し型ユニットより取り出した精密素子の形状を所望の形状と一致させることが出来る。
【0101】
ここで第1の補正は、形状転写時と型部材の形状加工時や精密素子の使用時の温度差、及び型部材と成形素材の熱膨張率の違いから発生する、型部材の成形面と精密素子の形状のズレ量の補正であり、具体的には、所望の精密素子の使用温度での形状を形状転写温度までの温度差による精密素子の形状変化量を成形素材の膨張率で算出し、更にその精密素子の形状変化量を形状転写温度から型ユニットの成形面の加工時の温度差までの型部材の形状変化量として型部材の膨張率で算出した量を型部材成形面の形状の第1の補正の量とするものである。第2の補正は、型部材と成形素材との間に介在する流体の厚さ、特に形状転写時の流体の膜厚及び膜厚分布による形状の変化量を補正するもので、流体の流量や、温度とその時の粘度、成形素材の温度と粘度、及び型ユニットに加えられる圧力等から、流体の圧力分布及び膜厚とその分布状態を算出し、それを型部材の成形面の形状の第2の補正の量とする。第3の補正は、特に精密素子が形状を転写した後に、冷却され型から取り出されるまで、場合によっては、取り出し後も含めての冷却によるヒケ等による変形量の補正であり、主に冷却時に刻々と変化する流体や型ユニットの温度と成形素材の保有熱と温度伝導率に支配される、成形素材自体の温度分布とそれに伴うその時々の粘度分布と熱膨張率とそれらにより算出される応力と、成形素材独自の応力緩和係数によりヒケの量を算出し、更にその量に、その時々の成形素材の自重や流体の圧力変化等による形状の変化量を算出して加算したものを第3の補正の量とする。
【0102】
更に、第4の方法においては、予め所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有する素子を成形し、その成形中及び成形終了後の成形、形状データから得られた情報を型部材の成形面の形状へフィードバックすることにより、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等を得ることが出来る。この補正方法は、最初に精密素子の形状とほぼ同等の形状の成形面を有する型ユニットを用いて、予め設定し、固定された諸条件下で素子を一旦成形し、成形完了後の使用条件と同じ状態の素子の形状と、使用した型ユニットの成形面の形状を比較し、そこで判明した形状の相違量を、基本的には型ユニットの成形面への補正量として用い、成形条件の変更で補正出来るような単純な補正の場合は、成形条件をも修正することにより、成形した精密素子を所望の形状に一致させることが可能となる。また、この補正を数回繰り返すことにより、より精度のよい安定した形状を得ることも可能となり、更に前述のシミュレーションによる型ユニットの成形面の補正方法を組合わせて実施することで同様の効果を得ることが出来る。
【0103】
更に、第5の方法においては、成形面の多孔質部より噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することが出来る。これは、成形素材が型ユニットと非接触状態にある事や、成形素材が型ユニットに覆われており、外部から成形素材の温度を測定することが実質上不可能であるが、成形素材に直接に接触する流体の温度を制御し、その伝熱により成形素材の温度を間接的に制御することで解決され、また、こうする事により、成形素材に対して、より応答性の良い確実な温度制御を行なうことが出来る。ここで、流体の温度の制御方法としては、流体を供給源の近傍で直接に加熱温調して用いることでも十分に目的を達成することができるが、一旦前述の型ユニット等に組み込まれたヒーター等の加熱源により、再度温調をかけなおして用いることで、より良好な成形素材への温度制御を実現することが可能となる。
【0104】
更に、第6の方法においては、成形素材の粘度に合わせ成形型の成形面より噴出させる流体の噴出圧力と流体の流量と、型ユニットへの加圧力を制御することにより、高精度な形状及び面精度を有する光学素子を得ることができる。ここで、成形素材の硬さに相当する粘度変化に同調させて、流体の流量や圧力と型ユニットへの加圧力を制御する事により、型ユニットの成形面と成形素材の間の流体の膜厚を確実に安定させて制御することが出来、その結果、完成した精密素子が、より一層、高精度で、かつ連続成形時においてもばらつきの少ない安定した形状を得ることが可能となる。
【0105】
更に、第7の方法においては、型ユニットに圧力を加え成形素材を加圧する際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力分布を制御することにより、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等を得ることができる。これは、加圧成形中に型部材を成形素材に対して回転摺動させる事により、成形素材と型部材の成形面との間の流体の膜厚を均一化することが容易となり、より高精度な精密素子を得る事ができるようになり、特に回転軸を中心とした軸対象に膜厚が容易に均一化することにより、レンズ等の機能面が軸対象の形状の球面を基本とする形状の精密素子に対しては大きな効果を発揮する事が可能となる。
【0106】
(第6の実施形態)
次に第1の実施形態と全く同じものを、図5に示す様に予め重量調整されたガラス塊より成形した他の実施形態を述べる。なお、下型11の成形面11aと上型21の成形面21aは、第1の実施形態と略同様にして、ただし、図3Aに示すように、流体の膜厚を考慮せず、また、最終的な形状転写時の温度をガラス素材が109dPa・sの粘度を示す温度に設定し形状を求め、加工したものを用いた。
【0107】
まず、このように加工準備した型部材11,21を図1に示す成形装置に取り付け、さらに第1の実施形態で用いたと同じガラスのブロックから、ガラス塊を切り出し、それを図5(a)に示す様に更に研削研磨により容積で311mm3となるようなガラス塊に仕上げ、更に、このガラス塊の研削研磨面以外の部分に、バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス塊の表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、図5(b)に示すような滑らかな表面を有する容量が311mm3のガラス塊を得た。
【0108】
次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分30リッター噴出されている成形面11aの上に載置した後、ヒータ13と加熱ヒータ33aにより、窒素ガスの温度をガラスの粘度で105.4dPa・sに相当する温度である700℃に上げガラス塊を加熱した。この時上型構成部材3も下型構成部材2の真上に移動させ、同様の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上部からも加熱した。このようにすることで、表面に有害な欠陥の全くない、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊102aを得た。
【0109】
次に、第1の実施形態と同様に、成形面11a,21aから噴射する窒素ガスの流量を毎分20リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2mmとなるまで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで、窒素ガスの温度と流量をガスの膜厚が20ミクロン程度となる様に、610°C(ガラスの粘度で107.6dPa・sに相当する温度)と毎分10リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.05mmに相当する位置になったときに、型ユニット1を閉じ、成形面への圧力が2MPaとなる様に圧力を徐々に上げながら、同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.6Pa・sとなる様に速度を調整しながら型ユニット1を閉じ予備成形品を得た。
【0110】
さらに、その直後にガスの噴出を停止し、さらに型ユニット1の成形面に初期に1.5MPa、最終的に2MPaの力が加わる様に徐々に圧力を上げて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
また、軟化ガラス塊102aを得た直後から、予備成形品を得るまでの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、予備成形品を得た直後から第2の冷却を開始した。第2の冷却は不図示の冷却装置により型ユニット1の外部より、冷却用の窒素ガスを吹きつけることにより行われ、その時において、型構成部材2,3への外部からの拘束を解き、下型部材11及び上型部材21がレンズの収縮に追従出来るようにした。
【0111】
また、第2の冷却開始後すぐに、レンズの表面近傍の粘度が108dPa・sとなった時点で、成形面11a,21aから流体を15kPaの圧力で瞬間的に噴出させると同時に型ユニット1を僅かに開き、レンズを成形面から離型させ、その後直ちに流体の圧力を1.02kPa、流量をそれぞれ毎分3リッターに設定し、第3の冷却を行った。
【0112】
第3の冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515°C)となったときに型ユニット1を完全に開き、下型部材11からは窒素ガスを噴出させたままの状態で、レンズを不図示の吸着ハンドで取り出した。さらに成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20°Cの温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1.7本、クセがニュートンリング1本以下に収まり、通常の使用には十分耐えられる精度を得ることができた。
【0113】
なお、この複数回の成形のときの温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、温度に付いては第2の冷却完了までの間に全ての温度制御点において20°Cのばらつきの範囲、その後は30°Cのばらつきの範囲に収まり、型ユニットの開閉速度等のばらつきも5%に収まっていたが、さらに条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を越えると精度が悪くなることが確認された。
【0114】
(第7の実施形態)
次に第6の実施形態と同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、もう一方の面がR40mmを基準とする非球面形状をなす、レンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mmである、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レンズの成形を行った。
【0115】
第6の実施形態と同様にして、図3Aに示すように20°Cでの形状201に対してガラスの粘度で1012dPa・s(515°C)で第1の補正形状204を求め、ヒケ等の補正量205を求め、ガラスの粘度で1012dPa・sでの補正形状206を求める。更に型の収縮を考慮して冷間での型形状207,207aを決定する。そして、その形状データにより、上型部材21の成形面21aを多孔質の穴部のくぼみを除いた面をニュートンリングのずれで0.2本以内となるような鏡面状態に加工し、一旦、シミュレーションで決定した成形条件で実際にレンズを成形した。次いで、この成形したレンズの形状を測定し、所定の形状と若干ずれている部分を再度補正加工して、出っ張りのない平滑な鏡面状態に仕上げ、最終的な成形面21の形状とした。また、下型部材11の成形面11aも同様の手法で形状を求め加工した。また、型部材11、21の材料として気孔率が25%であり、最大穴径が6ミクロンである多孔質からなるAlO3を用い、流体にはクリーンなエアーを用いた。なお、この成形面の表面には、離型層としてカーボン膜を多孔質の孔が塞がらない様にして蒸着させた。この離型層は型とガラスの融着を防ぎ、成形面の鏡面性を失うものでなければ、特にカーボン膜に限定されるものではない。
【0116】
次いで、このように加工準備した型部材11、21を図1に示す成形装置に取り付け、第6の実施形態と全く同様にしてガラス塊を切り出し、切削部を研磨加工し、第6の実施形態と全く同様にして軟化状態にあるガラス塊102aを得た。
このガラス塊102aが106.5dPa・sの温度になった時点で、成形面11a,21aから噴出するエアーの流量を毎分25リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が4.6mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで噴出エアーの温度と流量を600℃(ガラスの粘度で107.9dPa・sに相当する温度)と毎分15リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が4.32mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じ、成形面への圧力が4.5MPaとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。なお、このときのガス厚は8ミクロン程度であった。
【0117】
さらに、その直後にガスの噴出を停止し、さらに型ユニット1の成形面に初期に2MPa、形状が最初に転写しおわるときに8MPaの力が加わる様に徐々に圧力を上げて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
また、軟化ガラス塊102aを得た直後から、予備成形品を得るまでの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、予備成形品を得た直後から第2の冷却を開始した。その時において、型構成部材2,3に外部から成形面に前述のように第2の冷却完了時に8MPaの圧力となる様に圧力を加え、下型部材11と上型部材21をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。第2の冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515°C)となった時点で、下型部材2と上型部材3への加圧を解除すると同時に、第6の実施形態と同様に成形面11a,21aから流体を噴出させ、レンズを成形面から離型させた。その後さらに流量を毎分7リッターに設定して、第3の冷却を行い、レンズの表面の温度が498°C(ガラスの粘度で1013dPa・s)を下回ったときに型ユニット1を完全に開き、下型部材11からはエアーを噴出させたままの状態で、レンズを不図示の吸着ハンドで取り出した。さらにこの成形を数回繰り返し、またこのときの温度及び加圧・減圧等のタイミングの再現性は、第2の冷却完了までは10°C、その後は5°Cの温度範囲に、速度等のばらつきも3%以内に収まる様に厳密に制御しながら成形を実施した。その後、完成した複数のレンズを20°Cの温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり、第6の実施形態以上の良好な結果を得ることができた。
【0118】
(第8の実施形態)
次に図4に示す型部材を第6の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径がΦ10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲率半径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁部の厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレンズを成形した。ここで、図4において、211、221はそれぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレンズの光学面を形成する成形面211aと221aが加工されている。更に、下型部材211と上型部材221の外周にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する成形面216aと226aを有したリング部材216,226が取り付けられている。また、下型部材211と上型部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミクロン、リング部材216,226は気孔率が10%で最大穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られていて、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,12c,22b,22cに流体を個々に独立に供給することができるようになっており、それぞれの光学面の成形面と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立に制御出来るようになっている。また、成形素材は、第6の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては窒素ガスを用いた。また、離型層として第7の実施形態と同様のものを用いた。
【0119】
この実施形態では、レンズの光学面の成形面211a,221aと周縁部の成形面216a,226aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそのまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、それを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態に仕上げた。また、予備成形における形状転写時の温度は555℃(ガラスの粘度で1010dPa・s)として実施した。
【0120】
次いで、このように準備した型部材211,221,216,226を第6の実施形態と同様に図1に示す成形装置に取り付け、さらに、第6の実施形態で用いたのと同じガラスブロックから、ガラス塊を切り出し、それをさらに研削研磨により容積が250mm3となるようなガラス塊に仕上げ、さらにこのガラス塊の研削研磨面以外の部分に、バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス塊の表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、滑らかな表面を有する容量が250mm3のガラス塊を得た。
【0121】
次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分25リッター噴出されている成形面211aの上に載置した後、窒素ガスの温度をガラスの粘度で105.4dPa・sに相当する温度である700℃に上げガラス塊を加熱した。この時上型構成部材3も下型構成部材2の真上に移動させ、成形面216a,221a,226aにも同様の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上下、外周部からも加熱した。このようにすることで、表面に有害な欠陥の全くない、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊102aを得た。
【0122】
その直後に、成形面211a,221aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、成形面216a,226aからの流量をそれぞれ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガラスの粘度で105.8dPa・sに相当する680℃となるように設定し(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2と上型構成部材3が互いに逆回転となるような回転方向で、回転数が200rpmとなるように徐々に回転速度を上げながら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで、下型構成部材2と上型構成部材3の回転を保った状態で、窒素ガスの温度を610℃、成形面211a,221aからの流量を膜厚が12ミクロン前後となる様に毎分15リッター、成形面216a,226aからの流量がそれぞれ毎分12リッター、11リッターとなるように設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.33mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が成形面で2.5MPaとなる様に圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。
【0123】
さらに、その直後にガスの噴出と回転を停止し、レンズの表面近傍の粘度が108.5dPa・sとなったときに、さらに型ユニットの成形面に5MPaの圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧をし、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
上記の予備成形品を得るまでの間の第1の冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第6の実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時において、型構成部材2,3に外部から成形面に上記のように5MPaの圧力から第2の冷却の完了時に7.5MPaとなる様に圧力を徐々に加えて行き、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1010dPa・s(温度で約555°C)となったときに、成形面11a,21aから第6の実施形態と同様に流体を噴出させ、同時に型構成部材2,3への加圧を解除し、レンズの離型を行った。その後すぐに流体の温度を150°C、流量をそれぞれ毎分5リッターとし、同時に型構成部材2,3の回転を、それぞれの向きが逆方向となるような回転方向で、150rpmの速度で回転させ、流体の膜厚の均一化を図りながら第3の冷却を実施した。ガラスの粘度が1013dPa・sを越えたところで型構成部材2,3を停止すると同時に、型ユニット1を開き、レンズを取り出し、室温まで冷却した。更に成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1.2本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり、十分な精度を得ることができた。 また、この複数回の成形の時の温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、第6の実施形態と同様の範囲に収まっており、また、型ユニットの開閉速度及び下型構成部材2と上型構成部材3の回転数等のばらつきも5%に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなることが確認された。
【0124】
以上第6乃至第8の実施形態をまとめると、第8の方法においては、第1の工程は、精密素子の成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの加工時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張差による形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形及び冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒケの発生位置と量を前もって成形型で補正しておく事により、成形された精密素子が所望の形状を得られるようにする事であり、この際に、予備成形品を得る時の成形面と予備成形品との間に存在する流体の厚さも補正しておく事も必要である。また、型ユニットの成形面を多孔質の材料で作り、その成形面から成形素材に向けてエアーやN2ガス等の流体を噴出させ、成形面表面にごく薄い流体膜を形成する事で高温の軟化状態の成形素材と成形面の接触を防ぐ事が出来る。この目的のためには、多孔質の最大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミクロン以下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材料は耐酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等のセラミックや、多孔質カーボン等を用い、更に成形面の表面は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないようにし、更に補正された形状の精密素子を得る段階での、成形面と予備成形品の接触時の転写性を確保するためには、出っ張りの無い平滑な鏡面状で、精密素子の機能を確保できる所望の面精度に加工されている事が必要となる。
【0125】
次に第2の工程は、精密素子の成形素材を準備する際に、成形後の精密素子に欠陥が発生しないように、成形素材の成形後に機能面となる部分に対応する部分の表面を、滑らかに仕上げる工程であり、その部分に相当する部分の表面を光学的な欠陥、つまり加圧成形する事により解消できない欠陥を予め取り除くことである。具体的には、表面を高低差が5ミクロン以上の鋭角的な段差が存在しないように仕上げることであり、傷や欠け等の微視的に見たときに鋭角的な部分が存在しないように処理する事である。この処理は、従来から行われている、研削研磨による方法や、酸処理などによる表面エッチングや、火炎や熱風による表面の軟化光揮処理等により行われる。
【0126】
更に第3の工程を実施することにより、成形素材を型ユニットの成形面と非接触の状態で加熱軟化する事が可能となるため、型ユニット上に、成形後に成形面に影響が出ることが無い、無欠陥の表面が非常に滑らかな状態の軟化した成形素材塊を得る事ができる。この時、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度まで成形素材を加熱する事により、次の第4の工程につなげることが可能となる。
【0127】
次の第4の工程においても型の成形面から流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成形面と高温の成形素材の接触を防ぐ事が可能となり、次工程での補正された形状の精密素子を得る事が容易になるような形状を有した、表面い欠陥の全く無い予備成形品を得ることが出来る。この工程において得る予備成形品の形状は、次工程でのプレス時に、成形素材が大きな変形を起こさずに、変形が成形素材の流動ではなく、見かけ上、ほとんど曲げによる変形であるかのような微少な変形で事足りるような形状である事が望ましい。この為に、予備成形品の形状は、次の工程で得る補正された形状の精密素子のプレスの加圧方向の肉厚に対し、それよりも0〜3%厚くするか、または肉厚より0.5mmを超えない範囲の厚さで、また、外径も同様にほとんど同じかごく僅かに小さな形状である事が望ましく、次工程での加圧力が予備成形品全体に出来るだけ均等にかかり、変形量がどこでも出来るだけ同じとなるような、成形面と相似した形状である事が望ましい。また、このような形状にする事により、次工程での成形が実質的に曲げを主体とする変形となり、成形面を形成する多孔質の材料の穴部の微細な転写が抑制され、穴部の形状が残ら無い表面を有する精密素子を得る事が出来るようになる。更にこの工程において型ユニットを閉じる速度、タイミング、圧力、及び噴出させる流体の流量・圧力、温度等を確実に再現する事により、再現性のある安定した形状の予備成形品を得る事が出来る。これは、型ユニットを、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度範囲の時に閉じ、予備成形品の形状を得た時の流体の膜厚が20ミクロン以下、より安定した形状の予備成形品を得る場合は、10ミクロン以下になるように流体の圧力と流量を制御し、また、同時に型を閉じる圧力及び速度も流体の膜厚を前記の範囲内に収まるように成形素材の温度に逆比例させながら制御する事により成形素材を成形面の補正された形状にならわす事により達成される。また、この型ユニットを閉じるときの動作は成形素材の温度に対応して制御される事が望ましく、各々の動作における温度のばらつきは10℃以下、望ましくは5℃以下とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ範囲に収める事が望ましく、流体の流量及び圧力のばらつき及び型ユニットを閉じる速度と圧力のばらつきは5%以内、望ましくは3%以内とする事により、予備成形品の形状をより安定して得る事が可能となる。
【0128】
次の第5の工程は、前記第4の工程で得た予備成形品を型部材の成形面に接触させ、補正を施された成形面の形状を正確に予備成形品に転写し、冷却完了後の精密素子の形状を確定するために行われる物であり、予備成形品の表面が、細かな形状を転写しないような条件のもとで、プレス成形が行われる。これは、前述のような材料・材質から作られている型部材の成形面の流体の噴出孔である多孔質の穴部の形状を転写しないように、予備成形品の表面近傍の粘度が高くなった時点で、具体的にはガラスの軟化温度である107.6dPa・sの粘度を示す温度以下になった時に、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で圧力を加えて形状を修正し、補正された成形面の形状を予備成形品に転写させる事であり、この時の圧力も同様に、穴部の形状を転写しないような圧力、具体的には5MPa以下、好ましくは2MPa以下である事が望ましい。但し、この圧力は成形素材の粘度と穴部の形状が前述のような時の圧力であり、粘度が高いときや、穴部の大きさが更に細かいときには、もっと高い圧力を加えることも可能である。
【0129】
次の第6の工程は、補正された形状の成形面と密着している補正形状の精密素子を、成形面の多孔質の穴から流体を再度噴出させ、成形面から精密素子を浮上させる力を与えると同時に、必要に応じて外部からも成形面から精密素子を引き離す力を与えて離型させ、精密素子と成形面との間に空隙を設ける工程であり、この工程の目的は、一旦成形され補正された形状を有する精密素子の形状が、冷却時の型と成形素材の収縮差により劣化をするのを防ぐ為に行われるものであり、成形素材が成形面と離れても自重や他の外力により変形しにくく、かつ型と素材の収縮量の差が大きくならない温度範囲にて実現される。具体的な温度範囲は、上限に対しては成形面との離型行為や次工程の非接触状態での冷却の初期に変形を起こさない粘度である、108dPa・s以上、望ましくは109dPa・s以上の粘度となる温度以下で行うことが必要である。また、下限の温度は、熱収縮量の差が大きくなり、成形素材が型の収縮に追従できる範囲の温度以上であれば良く、成形素材と型の膨張率の差に大きく左右されるが、通常、成形素材が1012dpa・s以下の粘性を示す温度以上であることが望ましい。また、この工程の離型動作を容易にするために、型の成形面の表面がカーボンや白金等に代表される成形素材との濡れ性の悪い材料で作られていることがより良い結果をもたらす。
【0130】
次の第7の工程での第1の冷却は、成形素材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形状を成形素材に転写させ安定した形状の予備成形品を得るために行われるものであり、第1の冷却の完了時に前述の流体の膜厚になるように、成形素材の粘度を制御しながら徐々に冷却を行う。この第1の冷却完了時に於いて、予備成形品が成形面との間に厚さを制御された流体の膜を挟んで成形される事により、次工程に必要な予備成形品の形状精度が確保される。また、この第1の冷却完了時点では、成形素材や型ユニットや流体の温度等は前述の範囲内に収めておく事が望まれる。更にその後の第2の冷却は、一旦接触により転写された補正形状が、成形素材がほぼ固まり、離型時において形状が変化しないような前述の温度まで行われ、更に連続成形において形状のばらつきが生じないように行われるものである。その為には、冷却開始温度や冷却時の冷却速度や温度分布や、特に離型時である冷却完了時の温度及び温度分布を正確に再現する必要がある。この時の再現性は、離型時までの温度のばらつきとして20℃以下、望ましくは10℃以下とする事により安定した形状の再現性を得る事が可能となる。また、この時の冷却速度や冷却時の温度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠陥を生じない範囲で成形面の補正形状を決定する時に定められるものである。更に、その後の第3の冷却は第1、第2の冷却より速い速度で行うことが出来、ここでの冷却は、一旦離型前までに転写された補正形状が、冷却により補正前の形状、つまり精密素子の本来の所望する形状に一致し、更に連続成形において冷却収縮によりばらつきが生じないように行われるものである。そのためには、補正形状を決定したときの第3の冷却開始温度(=離型温度)や冷却時の温度分布等の諸条件を正確に再現する必要がある。この再現性は、上記と同様に冷却開始時から成形された精密素子が変形を発生させにくくなる粘度である1012dPa・sを示す温度、より精密な転写性を要求されるものや、複雑な形状のものに対しては成形素材が歪を新たに発生させない粘度である1014.5dPa・s迄の温度のばらつきとして30℃以下、望ましくは15℃以下とする事により安定した再現性が得られる。また、この時の冷却速度や冷却時の温度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠陥を生じない範囲で補正形状を決定する時に定められるものであるが、転写した形状が自重や流体の圧力により変形を起こさないようにするためには、精密素子の表面を毎分20℃以上の速度で冷却する事が望ましく、また、流体の圧力や流量にも急激な変化を与えないようにする事が望ましい。以上のような冷却を経ることで、この工程の終了時には型ユニットの成形面の形状と成形された精密素子の形状はそれぞれの膨張率の差の分の補正量や、予め見込んでおいたヒケに対する補正量のために完全に一致しないが成形面と非接触状態にあるため、精密素子の形状は型ユニットの成形面の形状に左右される事なく、所望の形状を維持できる。
【0131】
次の第8の工程は、第2の冷却中での形状転写時の型部材の成形面と成形素材の熱収縮量の違いによる、形状のズレを補正する工程である。これは、型部材の成形面が精度よく鏡面状態に仕上げられて、その面状態を転写させるような成形においては、型部材と成形素材とに冷却中の収縮量の違いがあると、成形した形状が冷却中に不均一に成形面に接触し、その時々の温度の型の成形面の形状を部分的に転写し、離型後の精密素子の成形面がいびつになったり、不連続な面形状になったりしてしまい、本来の所望とする面形状を得ることが出来なくなってしまうと言う事を防ぐための工程であり、この型と精密素子の接触冷却中の型に成形面を精密素子の表面に、精密素子の肉厚方向の収縮に追従する様に密着させておく事で始めて解決することが出来る。なお、この精密素子の表面への型部材の追従には、成形面と精密素子の間の密着力を利用して行っても良いが、より確実性を増し、精密素子の形状に左右されないようにする為には、型部材から外部に圧力を加える事によって行う事が望ましい。
【0132】
最後の第9の工程で、上記のようにすでに固化している精密素子を型ユニットから取り出すことにより、所望の形状を転写された精密素子を得る。この時も精密素子と型ユニットの成形面との間には、流体による膜が介在しているようにする事により、精密素子の表面の成形面との接触による傷などの発生を防ぐと同時に、成形面も固化した精密素子との接触による損傷を防ぐ事が出来る。
【0133】
また、第9の方法においては、成形面の予め補正された形状を、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と多孔質の材料で作られた型部材の熱膨張率等を成形条件のパラメータとしてシミュレーションし、事前に成形される精密素子の形状を予測し、それを基に型ユニットの成形面の形状を補正しておく事により、高精度な形状及び面精度を有する精密素子を得る事が出来る。この補正は、型部材と成形素材の熱膨張差に伴う第1の補正と、成形素材の冷却に伴うヒケ等をキャンセルするための第2の補正を組み合わせたものであり、成形型の成形面の形状加工時にこの補正を行うことで、成形が完了し型ユニットから取り出し、更に冷却の完了した時点の精密素子の形状を所望の形状と一致させる事が出来る。
【0134】
ここで第1の補正は、形状転写時と型部材の形状加工時や精密素子の使用時の温度差、及び型部材と成形素材の熱膨張率の違いから発生する、型部材の成形面と精密素子の形状のズレ量の補正であり、具体的には、所望の精密素子の使用温度での形状を、第2の冷却の際の型部材の追従が終わる最終的な形状転写温度までの温度差による精密素子の形状変化量を成形素材の膨張率で算出し、更にその精密素子の形状変化量を最終的な形状転写温度から型ユニットの形成面の加工時の温度差までの型部材の形状変化量として型部材の膨張率で算出した量を型部材成形面の形状の第1の補正の量とするものである。第2の補正は、特に精密素子が形状を転写した後に、型内及び型からの取り出し後の冷却による収縮やヒケ等による部分的な変形を含めた変形量の補正であり、主に冷却時に刻々と変化する流体や型ユニットの温度と成形素材の保有熱と温度伝導率に支配される、成形素材自体の温度分布とそれに伴うその時々の粘度分布と熱膨張率とそれらにより算出される応力と、成形素材独自の応力緩和係数によりヒケの量を算出し、更にその量に、その時々の成形素材の自重や流体の圧力変化等による形状の変化量を算出して加算したものを第2の補正の量とするものである。
【0135】
また、第10の方法においては、予め所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有する素子を成形し、その成形中及び成形終了後の成形、形状データから得られた情報を型部材の成形面の形状へフィードバックする事により、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等を得る事ができる。この補正方法は、最初に精密素子の形状とほぼ同等の形状の成形面を有する型ユニットを用いて、予め設定し、固定された諸条件下で素子を一旦成形し、成形完了後の使用条件と同じ状態の素子の形状と、使用した型ユニットの成形面の形状を比較し、そこで判明した形状の相違量を、基本的には型ユニットの成形面への補正量として用い、成形条件の変更で補正出来るような単純な補正の場合は、成形条件をも修正する事により、成形した精密素子を所望の形状に一致させることが可能となる。また、この補正を数回繰り返すことにより、より精度のよい安定した形状を得る事も可能となり、更に前述のシミュレーションによる型ユニットの成形面の補正方法を組み合わせて実施する事で同様の効果を得る事が出来る。
【0136】
また、第11の方法においては、成形面の多孔質部より噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御する事ができる。これは、成形素材が型ユニットと非接触状態にある事や、成形素材が型ユニットに覆われており、外部から成形素材の温度を測定することが実質上不可能であるが、成形素材に直接に接触する流体の温度を制御し、その伝熱により成形素材の温度を間接的に制御する事で解決され、また、こうする事により、成形素材に対して、より応答性の良い確実な温度制御を行うことが出来る。ここで、流体の温度の制御方法としては、流体を供給源の近傍で直接に加熱温調して用いる事でも十分に目的を達成することが出来るが、一旦前述の様に加熱温調した流体を更に流体が成形素材に触れる直前の流体の通路である型ユニット等に組み込まれたヒーター等の加熱源により、再度温調をかけ直して用いることで、より良好な成形素材への温度制御を実現することが可能となる。
【0137】
また、第12の方法においては、成形素材の粘度に合わせ成形型の成形面より噴出される流体の噴出圧力と流体の流量と、型ユニットへの加圧力を制御する事により、高精度な形状及び面精度を有する光学素子を得る事ができる。ここで、成形素材の硬さに相当する粘度変化に同調させて、流体の流量や圧力と型ユニットへの加圧力を制御する事により、型ユニットの成形面と成形素材の間の流体の膜厚を確実に安定させて制御する事が出来、その結果、予備成形品及びその後の完成した精密素子が、より一層、高精度で、かつ連続成形時においてもばらつきの少ない安定した形状を得る事が可能となる。
【0138】
また、第13の方法においては、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る際及び形状転写後の型内での冷却の際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力分布を制御する事により、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等を得る事ができる。これは、加圧成形中に型部材を成形素材に対して回転摺動させる事により、成形素材と型部材の成形面との間の流体の膜厚を均一化する事が容易となり、より高精度な精密素子を得る事が出来るようになり、特に回転軸を中心とした軸対称に膜厚が容易に均一化する事により、レンズ等の機能面が軸対称の形状の球面を基本とする形状の精密素子に対しては大きな効果を発揮する事が可能となる。
【0139】
(第9の実施形態)
次に第1の実施形態と全く同じものを成形する他の実施形態を述べる。なお、下型11の成形面11aと上型21の成形面21aは、第6の実施形態と全く同様にして、ただし最終的な形状転写時の温度を、ガラス素材が1014dPa・sの粘度を示す温度に設定し形状を求め、加工したものを用いた。
【0140】
まず、第1の実施例とまったく同様の方法により、成形面11a上にガラス塊102aを得た。
次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス塊102aの成形面11aで受けている下面近傍の粘度が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の粘度が103〜6dPa・sであり、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面11aと成形面21aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bとヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2mmとなるまで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで窒素ガスの温度と流量をガスの膜厚が20ミクロン程度となる様に、600℃と毎分10リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.05mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が20Kgfとなるように圧力を徐々に上げながら、且つ、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。
【0141】
さらに、その直後にガスの噴出を停止し、さらに型ユニット1の成形面に200kgfの圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
また、軟化ガラス塊102aを得た直後から、予備成形品を得るまでの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、予備成形品を得た直後から第2の冷却を開始した。第2の冷却は不図示の冷却装置により型ユニット1の外部より、冷却用の窒素ガスを吹きつけることにより行われ、その時において、型構成部材2,3への外部からの拘束を解き、下型部材11及び上型部材21がレンズの収縮に追従出来るようにした。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1014dPa・sとなり、成形面11a,21aとレンズとの間の密着力が無くなった時点で型ユニット1を開き、レンズを不図示の吸着ハンドで取り出し、室温まで冷却した。さらに成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1.5本、クセがニュートンリング1本以下に収まり、十分な精度を得ることができた。
【0142】
また、この複数回の成形の時の温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、すべての温度制御点において10°Cのばらつき範囲に収まり、また、型ユニットの開閉速度等のばらつきも5%に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなることが確認された。
【0143】
(第10の実施形態)
次に第9の実施形態と同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、もう一方の面がR40mmを基準とする非球面形状をなす、レンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mmである、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レンズの成形を行った。
【0144】
第9の実施形態と同様に、下型部材11の成形面11aと上型部材21の成形面21aは、成形前にシミュレーションにより求めた数々の補正を考慮した形状に加工し、その後更に実際に成形を行い、その形状データをもとに最終的な補正を行って形状を決定した。具体的には、第9の実施形態と同様に、上型21の成形面21aの場合、図3Aに示すように、精密素子であるレンズの標準的な使用条件である20℃における形状201(R40mmを基準とする非球面形状)に対し、成形時の形状転写時の温度を、ガラスの粘度で1012dPa・sを示す温度に設定し、第1の補正の量の一部であるガラスの温度膨張による変形量を算出し、その結果から、この条件下における精密素子の形状204を求めた。次に第2の補正の量に相当する、形状転写後の冷却によるヒケ等による補正量205を求め、形状転写時の成形面の部分的な形状206を決定し、更に第1の補正の量の残りの部分に相当する、型ユニットの成形面の材料の温度収縮による補正の量から、型の冷間時、特に型の成形面の形状を加工する時の成形面の形状207及び207a(図3Aにおいて207と207aのハッチング部分の形状)を求た。そして、その形状データにより、上型部材21の成形面21aを多孔質の穴部のくぼみを除いた面を鏡面状態に加工し、一旦、シミュレーションで決定した成形条件で実際にレンズを成形した。次いで、この成形したレンズの形状を測定し、所定の形状と若干ずれている部分を再度補正加工して、出っ張りのない平滑な鏡面状態に仕上げ、最終的な成形面21の形状とした。また、下型部材11の成形面11aも同様の手法で形状を求め加工した。また、型部材11、21の材料として気孔率が25%であり、最大穴径が6ミクロンである多孔質からなるAlO3を用い、流体にはクリーンなエアーを用いた。なお、この成形面の表面には、離型層としてカーボン膜を多孔質の孔が塞がらない様にして蒸着させた。この離型層は型とガラスの融着を防ぎ、成形面の鏡面性を失うものでなければ、特にカーボン膜に限定されるものではない。
【0145】
次いで、このように加工準備した型部材11、21を図1に示す成形装置に取り付け、第1の実施形態と全く同様にしてガラス塊102aを得た。
次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス塊102aの下型部材11で受けている下面近傍の粘度が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の粘度が103〜6dPa・sであり、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面11a,21aから噴出するエアーの流量を毎分25リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が4.6mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで噴出エアーの温度と流量を600℃と毎分15リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が4.32mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が45Kgfとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。なお、このときのガスの膜厚は8ミクロン程度であった。
【0146】
さらに、その直後にガスの噴出を停止し、さらに型ユニット1の成形面に220kgfの圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
上記の予備成形品を得るまでの間の第1の冷却の工程に続き、予備成形品の形状を型の成形面の形状にならわせた直後に第9の実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時において、型構成部材2,3に外部から150kgfの圧力を加え、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515°C)となったときに、型構成部材2,3への加圧を解除すると同時に型ユニット1を開き、レンズを取り出し室温まで冷却した。さらにこの成形を数回繰り返し、またこのときの温度及び加圧・減圧等のタイミングの再現性は、5°Cの温度範囲に、速度等のばらつきも3%以内に収まる様に厳密に制御しながら成形を実施した。その後、完成した複数のレンズを20°Cの温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり、第9の実施形態以上の良好な結果を得ることができた。
【0147】
(第11の実施形態)
次に図4に示す型部材を第1の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径がΦ10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲率半径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁部の厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレンズを成形した。ここで、図4において、211、221はそれぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレンズの光学面を形成する成形面211aと221aが加工されている。更に、下型部材211と上型部材221の外周にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する成形面216aと226aを有したリング部材216,226が取り付けられている。また、下型部材211と上型部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミクロン、リング部材216,226は気孔率が10%で最大穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られていて、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,12c,22b,22cに流体を個々に独立に供給することができるようになっており、それぞれの光学面の成形面と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立に制御出来るようになっている。また、成形素材は、第1の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては窒素ガスを用いた。また、離型層として第10の実施形態と同様のものを用いた。
【0148】
この実施形態では、レンズの光学面の成形面211a,221aと周縁部の成形面216a,226aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそのまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、それを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態に仕上げた。また、このときの最終的な形状転写時の温度は515°C(ガラスの粘度で1012dPa・s)として実施した。
【0149】
次いで、このように準備した型部材211,221,216,226を第1の実施形態と同様に図1に示す成形装置に取り付け、同様の方法で軟化ガラス塊を得た。この時の窒素ガスの温度は、ガラスを成形面211aに受ける時はガラスの転移点付近の温度である500℃に、その直後にはガラスの粘度で107.3dPa・sに相当する温度である620℃になるように温度を調整し、更に窒素ガスの流量は、溶融ガラス102を成形面211aに受ける直前までは、成形面211aで毎分18リッター、成形面216aで毎分8リッター、その後はどちらも毎分5リッターとなるように制御した。
【0150】
次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス塊102aの下型部材211で受けている下面近傍の粘度が105.6〜107dPa・s、その他の表面近傍の粘度が103〜105.6dPa・sであり、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面211a,221aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、成形面216a,226aからの流量をそれぞれ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガラスの粘度で105.8dPa・sに相当する680℃となるように設定し(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2と上型構成部材3が互いに逆回転となるような回転方向で、回転数が200rpmとなるように徐々に回転速度を上げながら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで、下型構成部材2と上型構成部材3の回転を保った状態で、窒素ガスの温度を610℃、成形面211a,221aからの流量を膜厚が12ミクロン前後となる様に毎分15リッター、成形面216a,226aからの流量がそれぞれ毎分12リッター、11リッターとなるように設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.33mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が25Kgfとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。
【0151】
さらに、その直後にガスの噴出と回転を停止し、さらに型ユニット1の成形面に100kgfの圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
上記の予備成形品を得るまでの間の第1の冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第10の実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時において、型構成部材2,3に外部から75kgfの圧力を加え、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515°C)となったときに、型構成部材2,3への加圧を解除すると同時に型ユニット1を開き、レンズを取り出し室温まで冷却した。さらに成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり、十分な精度を得ることができた。
【0152】
また、この複数回の成形の時の温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、すべての温度制御点において10°Cのばらつき範囲に収まり、また、型ユニットの開閉速度及び型構成部材の回転数等のばらつきも5%に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなることが確認された。
【0153】
以上第9乃至第11の実施形態をまとめると、第14の方法においては、第1の工程は、精密素子の成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの加工時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張差による形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形及び冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒケの発生位置と量を前もって成形型で補正しておく事により、成形された精密素子が所望の形状を得られるようにする事である。また、型ユニットの成形面を多孔質の材料で作り、その成形面から成形素材に向けてエアーやN2ガス等の流体を噴出させ、成形面表面にごく薄い流体膜を形成する事で高温の軟化状態の成形素材と成形面の接触を防ぐ事が出来る。この目的のためには、多孔質の最大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミクロン以下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材料は耐酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等のセラミックや、多孔質カーボン等を用い、更に成形面の表面は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないようにし、更に接触時の面精度の転写性を確保するためにも、出っ張りの無い平滑な鏡面状で、精密素子の機能を確保できる粗さに加工されている事が必要となる。
【0154】
次に第2の工程により、型と成形素材の接触、特に溶融軟化された形状が不定の状態の成形素材をノズルから流出させ型ユニットに供給する時に発生しやすい成形素材と型ユニットの成形面との接触を防ぐ事が出来、更にこの時に、一時的に噴出する流体の温度を下げたり流量を増やすことにより、接触を確実に防ぐ事が出来る。また、型ユニットの成形面上に供給された成形素材を前記ノズルから分離する際に、型ユニット上に成形素材を必要量を受け止めた後、型ユニットと一旦下降させ、ノズルより流出する成形素材と型ユニット上の成形素材との間にくびれを発生させ、更に成形素材の自重と表面張力によりくびれを発達させ分離を行う事により、型ユニット上に、成形後に影響が出るような欠陥の全く無い、表面が非常に滑らかな成形素材塊を得ることが出来る。
【0155】
次に第3の工程においても型の成形面から流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成形面と成形素材の接触を防ぐ事が可能となり、次工程での補正された形状の精密素子を得る事が容易になるような形状を有した、表面に欠陥の全く無い予備成形品を得ることが出来る。この工程において得る予備成形品の形状は、次工程でのプレス時に、成形素材が大きな変形を起こさずに、変形が成形素材の流動ではなく、見かけ上、ほとんど曲げによる変形であるかのような微少な変形で事足りるような形状である事が望ましい。この為に、予備成形品の形状は、次の工程で得る補正された形状の精密素子のプレスの加圧方向の肉厚に対し、それよりも0〜3%厚くするか、又は肉厚より0.5mmを超えない範囲の厚さで、また、外径も同様にほとんど同じかごく僅かに小さな形状である事が望ましく、次工程での加圧力が予備成形品全体に出来るだけ均等に掛かり、変形量がどこでも出来るだけ同じとなるような、成形面と相似した形状である事が望ましい。また、このような形状にする事により、次工程での成形が実質的に曲げを主体とする変形となり、成形面を形成する多孔質の材料の穴部の微細な転写が抑制され、穴部の形状が残ら無い表面を有する精密素子を得る事が出来るようになる。更にこの工程において型ユニットを閉じる速度、タイミング、圧力、及び噴出させる流体の流量・圧力、温度等を確実に再現する事により、再現性のある安定した形状の予備成形品を得る事が出来る。これは、型ユニットを、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度範囲の時に閉じ、予備成形品の形状を得た時の流体の膜厚が20ミクロン以下、より安定した形状の予備成形品を得る場合は、10ミクロン以下になるように流体の圧力と流量を制御し、また、同時に型を閉じる圧力及び速度も流体の膜厚を前記の範囲内に収まるように成形素材の温度に逆比例させながら制御する事により成形素材を成形面の補正された形状にならわす事により達成される。また、この型ユニットを閉じるときの動作は成形素材の温度に対応して制御される事が望ましく、各々の動作における温度のばらつきは10℃以下、望ましくは5℃以下とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ範囲に収める事が望ましく、流体の流量及び圧力のばらつき及び型ユニットを閉じる速度と圧力のばらつきは5%以内、望ましくは3%以内とする事により、型ユニットの成形面の形状をより安定して得る事が可能となる。
【0156】
次の第4の工程は、前記工程で得た予備成形品を型部材の成形面に接触させ、補正を施された成形面の形状を正確に予備成形品に転写し、冷却完了後の精密素子の形状を確定するために行われるものであり、予備成形品の表面が、細かな形状を転写しないような条件のもとで、プレス成形が行われる。これは、前述のような材料・材質から作られている型部材の成形面の流体の噴出孔である多孔質の穴部の形状を転写しないように、予備成形品の表面近傍の粘度が高くなった時点で、具体的には107.6dPa・s以上の粘度となった時に、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で圧力を加えて形状を修正し、補正された成形面の形状を予備成形品に転写させる事であり、この時の圧力も同様に、穴部の形状を転写しないような圧力、具体的には5MPa以下、好ましくは2MPa以下である事が望ましい。但し、この圧力は成形素材の粘度と穴部の形状が前述のような時の圧力であり、粘度が高いときや、穴部の大きさが更に細かいときには、もっと高い圧力を加えることも可能である。
【0157】
次の第5の工程での第1の冷却は、成形素材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形状を成形素材に転写させ安定した形状の予備成形品を得るために行われるものであり、第1の冷却の完了時に前述の流体の膜厚になるように、成形素材の粘度を制御しながら徐々に冷却を行う。この第1の冷却完了時において、予備成形品が成形面との間に厚さを制御された流体の膜を挟んで成形される事により、次工程に必要な予備成形品の形状精度が確保される。また、この第1の冷却完了時点では、成形素材や型ユニットや流体の温度等は前述の範囲内に収めておく事が望まれる。更にその後の第2の冷却は第1の冷却より速い速度で行うことが出来、ここでの冷却は、一旦転写された補正形状が、冷却により補正前の形状、つまり精密素子の本来の所望する形状に一致し、更に連続成形において冷却収縮等によりばらつきが生じないように行われるものである。その為には、冷却開始温度や冷却時の冷却速度や温度分布等の諸条件を正確に再現する必要がある。この再現性は、上記と同様に冷却開始時から成形素材の粘度で1012dPa・sを示す温度の範囲での温度のばらつきとして10℃以下、望ましくは5℃以下とする事により安定した形状の再現性が得られる。又この時の冷却速度や冷却時の温度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠陥を生じない範囲で成形面の補正形状を決定する時に定められるものである。
【0158】
次の第6の工程は、形状転写後の型部材の成形面と成形素材の熱収縮量の違いによる、冷却時の形状のズレを補正する工程である。これは、通常、加圧変形できる温度状態の成形素材は粘着力があり、特に型部材の成形面が精度よく鏡面状態に仕上げられて、その面状態を転写させるような成形においては、この力が成形素材の表面と成形面との間に強い密着力として働く。この力は接触面の形状や接触面の界面の微細な状態に左右され易く、それ故その力の大きさは不安定であり、その分布状態も不均一である為、接触面全体が一様に剥離せずに、部分的に徐々に剥離して行ったり、段階的に剥離して行き、その結果、出来上がった面状態が不安定で、場合によっては成形された面が不連続になったりしてしまい、最終的に所望の形状と一致させる事ができないという問題がある。この問題は、少なくとも、型の素材の間に、転写面を変形させるような大きさの密着力が働いている間に、その素子の表面と成形面の密着を維持するように、その素子の収縮に合せて型部材を追従させる事により初めて解決させることが可能となる。
【0159】
更に前記の第2の冷却を、この型部材の追従の工程が完了するまで行い、その後、型ユニットを開き成形素子を取り出す事(第7の工程)により、所望の形状に近似した形状を有する成形素子を得ることが出来る。また、この第2の冷却の終了点、つまり型部材の追従工程完了時点は、密着力如何により決められる物であるが、通常、素材の粘度で1012〜14.5dPa・sで行われるのが理想的である。
【0160】
次の第8の工程で、この所望の形状に近似した形状を有する成形素子を更に室温迄冷却する事により、熱収縮が起こり、前記素子が所望の形状を有する精密素子の形状となり、目的とする精密素子を得ることが出来る。
また、第15の方法においては、成形面の予め補正された形状を、流体の圧力、流量、温度、及び成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と多孔質の材料で作られた型部材の熱膨張率等を成形条件のパラメーターとしてシミュレーションし、事前に成形される精密素子の形状を予測し、それを基に型ユニットの成形面の形状を補正しておく事により、高精度な形状及び面精度を有する精密素子を得る事ができる。この補正は、型部材と成形素材の熱膨張差に伴う第1の補正と、成形素材の冷却に伴うヒケ等をキャンセルするための第2の補正を組み合わせたものであり、成形型の成形面の形状加工時にこの補正を行うことで、成形が完了し型ユニットより取り出し、更に冷却の完了した時点の精密素子の形状を所望の形状と一致させる事が出来る。
【0161】
ここで第1の補正は、形状転写時と型部材の形状加工時や精密素子の使用時の温度差、及び型部材と成形素材の熱膨張率の違いから発生する、型部材の成形面と精密素子の形状のズレ量の補正であり、具体的には、所望の精密素子の使用温度での形状を、第2の冷却の際の型部材の追従が終わる最終的な形状転写温度までの温度差による精密素子の形状変化量を成形素材の膨張率で算出し、更にその精密素子の形状変化量を最終的な形状転写温度から型ユニットの形成面の加工時の温度差までの型部材の形状変化量として型部材の膨張率で算出した量を型部材の成形面の形状の第1の補正の量とするものである。第2の補正は、特に精密素子が形状を転写した後に、冷却され型から取り出され、更に取り出し後の冷却による収縮やヒケ等による部分的な変形を含めた変形量の補正であり、主に冷却時に刻々と変化する成形素材の保有熱と温度伝導率に支配される、成形素材自体の温度分布とそれに伴うその時々の粘度分布と熱膨張率とそれらにより算出される応力と、成形素材独自の応力緩和係数によりヒケの量を算出し、更にその量に、その時々の成形素材の自重や外部応力の変化等による形状の変化量を算出して加算したものを第2の補正の量とするものである。
【0162】
また、第16の方法においては、予め所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有する素子を成形し、その成形中及び成形終了後の成形、形状データから得られた情報を型部材の成形面の形状へフィードバックする事により、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等を得る事ができる。この補正方法は、最初に精密素子の形状とほぼ同等の形状の成形面を有する型ユニットを用いて、予め設定し、固定された諸条件下で素子を一旦成形し、成形完了後の使用条件と同じ状態の素子の形状と、使用した型ユニットの成形面の形状を比較し、そこで判明した形状の相違量を、基本的には型ユニットの成形面への補正量として用い、成形条件の変更で補正出来るような単純な補正の場合は、成形条件をも修正する事により、成形した精密素子を所望の形状に一致させることが可能となる。また、この補正を数回繰り返すことにより、より精度のよい安定した形状を得る事も可能となり、更に前述のシミュレーションによる型ユニットの成形面の補正方法を組み合わせて実施する事で同様の効果を得る事が出来る。
【0163】
また、第17の方法は、前記成形面の多孔質部より噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御する事ができる。これは、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る際に、成形素材が型ユニットと非接触状態にある事や、成形素材が型ユニットに覆われており、外部から成形素材の温度を測定することが実質上不可能であるが、成形素材に直接に接触する流体の温度を制御し、その伝熱により成形素材の温度を間接的に制御する事で解決され、また、こうする事により、成形素材に対して、より応答性の良い確実な温度制御を行うことが出来る。ここで、流体の温度の制御方法としては、流体を供給源の近傍で直接に加熱温調して用いる事でも十分に目的を達成することが出来るが、一旦前述の様に加熱温調した流体を更に流体が成形素材に触れる直前の流体の通路である型ユニット等に組み込まれたヒーター等の加熱源により、再度温調をかけ直して用いることで、より良好な成形素材への温度制御を実現することが可能となる。
【0164】
また、第18の方法においては、前記の第17の方法と同様に、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る際に、成形素材の粘度に合わせ成形型の成形面より噴出される流体の噴出圧力と流体の流量と、型ユニットへの加圧力を制御する事により、安定的な形状を有する予備成形品を得る事ができる。ここで、成形素材の硬さに相当する粘度変化に同調させて、流体の流量や圧力と型ユニットへの加圧力を制御する事により、型ユニットの成形面と成形素材の間の流体の膜厚を確実に安定させて制御する事が出来、その結果、成形された予備成形品が、連続成形時においてもばらつきの少ない安定した形状を得る事が可能となる。
【0165】
また、第19の方法においては、第2の冷却の際の型部材の追従を、成形面と精密素子の間の密着力を利用して行う事により高精度な精密素子を得られるようにする事であり、型部材の少なくとも一つを、精密素子の肉厚方向の収縮に追従できるように、外部からの拘束を解くことにより実現される。
また、第20の方法においては、第19の方法と同様に、第2の冷却の際の型部材の追従を、型部材に外部から圧力を加える事により、より確実に実行する事により、より安定的に高精度な精密素子を得られるようにする事であり、型部材の少なくとも一つに、精密素子の肉厚方向の収縮に追従できるように、外部から圧力を加える事により実現される。
【0166】
(第12の実施形態)
次に第1の実施形態と全く同じものを成形する他の実施形態を述べる。なお、下型11の成形面11aと上型21の成形面21aは、第6の実施形態と全く同様にして、ただし最終的な形状転写時の温度を、ガラス素材が1014dPa・sの粘度を示す温度に設定し形状を求め、加工したものを用いた。
【0167】
まず、このように加工準備した型部材11,21を図1に示す成形装置に取り付け、さらに第1の実施形態で用いたと同じガラスブロックから、ガラス塊を切り出し、それを図5(a)に示す様に更に研削研磨により容積で311mm3となるようなガラス塊に仕上げ、更に、このガラス塊の研削研磨面以外の部分に、バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス塊の表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、図5(b)に示すような滑らかな表面を有する容量が311mm3のガラス塊を得た。
【0168】
次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分30リッター噴出されている成形面11aの上に載置した後、ヒータ13と加熱ヒータ33aにより、窒素ガスの温度をガラスの粘度で105.4dPa・sに相当する温度である700℃に上げガラス塊を加熱した。この時上型構成部材3も下型構成部材2の真上に移動させ、同様の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上部からも加熱した。このようにすることで、表面に有害な欠陥の全くない、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊102aを得た。
【0169】
次に、成形面11a,21aから噴射する窒素ガスの流量を毎分20リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2mmとなるまで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じ、中心肉厚が3.05mmの予備成形品を得た。
【0170】
さらに、その直後にガスの噴出を停止し、さらに型ユニット1の成形面に200kgfの圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧をし、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
また、軟化ガラス塊102aを得た直後から、予備成形品を得るまでの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、予備成形品を得た直後から第2の冷却を開始した。第2の冷却は不図示の冷却装置により型ユニット1の外部より、冷却用の窒素ガスを吹きつけることにより行われ、その時において、型構成部材2,3への外部からの拘束を解き、下型部材11及び上型部材21がレンズの収縮に追従出来るようにした。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1014dPa・sとなり、成形面11a,21aとレンズとの間の密着力が無くなった時点で型ユニット1を開き、レンズを不図示の吸着ハンドで取り出し、室温まで冷却した。さらに成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1.5本、クセがニュートンリング1本以下に収まり、十分な精度を得ることができた。
【0171】
更に、最初に準備するガラス塊の表面処理の条件を多少振りながら成形を続けた結果、表面に残る段差が5ミクロンを越えたり、鋭角的な段差が残ったりすると、加熱軟化した後に、表面を更に滑らかにするための時間が非常にかかったり、場合によっては、この加熱軟化により段差が解消せず、成形後のレンズ表面に欠陥が残ったりし、実用上、大きな問題になることが確認された。
【0172】
また、この複数回の成形の時の温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、すべての温度制御点において10°Cのばらつき範囲に収まり、また、型ユニットの開閉速度等のばらつきも5%に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなり、また、冷却速度、特に第2の冷却速度が毎分20°Cより遅くなると自重変形や窒素ガスの圧力の影響を受けやすくなり、精度が劣化することが確認された。
【0173】
(第13の実施形態)
次に第12の実施形態と同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、もう一方の面がR40mmを基準とする非球面形状をなす、レンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mmである、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レンズの成形を行った。
【0174】
第12の実施形態と同様に、下型部材11の成形面11aと上型部材21の成形面21aは、成形前にシミュレーションにより求めた数々の補正を考慮した形状に加工し、その後更に実際に成形を行い、その形状データをもとに最終的な補正を行って形状を決定した。具体的には、第14の実施形態と同様に、上型21の成形面21aの場合、図3Aに示すように、精密素子であるレンズの標準的な使用条件である20℃における形状201(R40mmを基準とする非球面形状)に対し、成形時の形状転写時の温度を、ガラスの粘度で1012dPa・sを示す温度に設定し、第1の補正の量の一部であるガラスの温度膨張による変形量を算出し、その結果から、この条件下における精密素子の形状204を求めた。次に第2の補正の量に相当する、形状転写後の冷却によるヒケ等による補正量205を求め、形状転写時の成形面の部分的な形状206を決定し、更に第1の補正の量の残りの部分に相当する、型ユニットの成形面の材料の温度収縮による補正の量から、型の冷間時、特に型の成形面の形状を加工する時の成形面の形状207及び207a(図3Aにおいて207と207aのハッチング部分の形状)を求た。そして、その形状データにより、上型部材21の成形面21aを多孔質の穴部のくぼみを除いた面をニュートンリングのずれで0.2本以内となるような鏡面状態に加工し、一旦、シミュレーションで決定した成形条件で実際にレンズを成形した。次いで、この成形したレンズの形状を測定し、所定の形状と若干ずれている部分を再度補正加工して、出っ張りのない平滑な鏡面状態に仕上げ、最終的な成形面21の形状とした。また、下型部材11の成形面11aも同様の手法で形状を求め加工した。また、型部材11、21の材料として気孔率が25%であり、最大穴径が6ミクロンである多孔質からなるAlO3を用い、流体にはクリーンなエアーを用いた。なお、この成形面の表面には、離型層としてカーボン膜を多孔質の孔が塞がらない様にして蒸着させた。この離型層は型とガラスの融着を防ぎ、成形面の鏡面性を失うものでなければ、特にカーボン膜に限定されるものではない。
【0175】
次いで、このように加工準備した型部材11、21を図1に示す成形装置に取り付け、第12の実施形態と全く同様にしてガラス塊を切り出し、切削部を研磨加工し、第12の実施形態と全く同様にして軟化状態にあるガラス塊102aを得た。
このガラス塊102aが106.5dPa・sの温度になった時点で、成形面11a,21aから噴出するエアーの流量を毎分25リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が4.6mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで噴出エアーの温度と流量を600℃(ガラスの粘度で107.9dPa・sに相当する温度)と毎分15リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が4.32mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が45kgfとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。なお、このときのガス厚は8ミクロン程度であった。
【0176】
上記の予備成形品を得るまでの間の第1の冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第12の実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時において、型構成部材2,3に外部から150kgfの圧力を加え、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515°C)となったときに、型構成部材2,3への加圧を解除すると同時に型ユニット1を開き、レンズを取り出し室温まで冷却した。さらにこの成形を数回繰り返し、またこのときの温度及び加圧・減圧等のタイミングの再現性は、5°Cの温度範囲に、速度等のばらつきも3%以内に収まる様に厳密に制御しながら成形を実施した。その後、完成した複数のレンズを20°Cの温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり、第12の実施形態以上の良好な結果を得ることができた。
【0177】
(第14の実施形態)
次に図4に示す型部材を第12の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径がΦ10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲率半径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁部の厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレンズを成形した。ここで、図4において、211、221はそれぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレンズの光学面を形成する成形面211aと221aが加工されている。更に、下型部材211と上型部材221の外周にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する成形面216aと226aを有したリング部材216,226が取り付けられている。また、下型部材211と上型部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミクロン、リング部材216,226は気孔率が10%で最大穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られていて、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,12c,22b,22cに流体を個々に独立に供給することができるようになっており、それぞれの光学面の成形面と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立に制御出来るようになっている。また、成形素材は、第12の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては窒素ガスを用いた。また、離型層として第13の実施形態と同様のものを用いた。
【0178】
この実施形態では、レンズの光学面の成形面211a,221aと周縁部の成形面216a,226aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそのまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、それを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態に仕上げた。また、予備成形における形状転写時の温度は515℃(ガラスの粘度で1012dPa・s)として実施した。
【0179】
次いで、このように準備した型部材211,221,216,226を第12の実施形態と同様に図1に示す成形装置に取り付け、さらに、第14の実施形態で用いたのと同じガラスブロックから、ガラス塊を切り出し、それをさらに研削研磨により容積が250mm3となるようなガラス塊に仕上げ、さらにこのガラス塊の研削研磨面以外の部分に、バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス塊の表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、滑らかな表面を有する容量が250mm3のガラス塊を得た。
【0180】
次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分25リッター噴出されている成形面211aの上に載置した後、窒素ガスの温度をガラスの粘度で105.4dPa・sに相当する温度である700℃に上げガラス塊を加熱した。この時上型構成部材3も下型構成部材2の真上に移動させ、成形面216a,221a,226aにも同様の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上下、外周部からも加熱した。このようにすることで、表面に有害な欠陥の全くない、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊102aを得た。
【0181】
その直後に、成形面211a,221aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、成形面216a,226aからの流量をそれぞれ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガラスの粘度で105.8dPa・sに相当する680℃となるように設定し(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2と上型構成部材3が互いに逆回転となるような回転方向で、回転数が200rpmとなるように徐々に回転速度を上げながら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じ、さらにレンズの中心肉厚が3.33mmになった時に、型ユニット1を閉じる圧力が25kgfとなる様に圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。なお、このときのガス層の厚みは平均12ミクロンであった。
【0182】
さらに、その直後にガスの噴出と型構成部材2,3の回転を停止し、さらに型ユニットに100kgfの圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧をし、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
上記の予備成形品を得るまでの間の第1の冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第12の実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時において、予備成形品の形状が成形面の形状に一致した後、型構成部材2,3に外部から75kgfの圧力を加え、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515°C)となったときに、型構成部材2,3への加圧を解除し型ユニット1を開き、レンズを取り出し、室温まで冷却した。更に成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり、十分な精度を得ることができた。
【0183】
また、この複数回の成形の時の温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、すべての温度制御点において10°Cのばらつき範囲に収まっており、また、型ユニットの開閉速度及び下型構成部材2と上型構成部材3の回転数等のばらつきも5%に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなることが確認された。
【0184】
以上第12乃至第14の実施形態をまとめると、第21の方法においては、第1の工程は、精密素子の成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの加工時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張差による形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形及び冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒケの発生位置と量を前もって成形型で補正しておく事により、成形された精密素子が所望の形状を得られるようにする事である。また、型ユニットの成形面を多孔質の材料で作り、その成形面から成形素材に向けてエアーやN2ガス等の流体を噴出させ、成形面表面にごく薄い流体膜を形成する事で高温の軟化状態の成形素材と成形面の接触を防ぐ事が出来る。この目的の為には、多孔質の最大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミクロン以下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材質には耐酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等のセラミックや、多孔質カーボン等を用い、更に成形面の表面は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないようにし、更に接触時の面精度の転写性を確保するためにも、出っ張りの無い平滑な鏡面状で、精密素子の機能を確保できる荒さに加工されている事が必要となる。
【0185】
次に第2の工程により、精密素子の成形素材を準備する際に、成形後の精密素子に欠陥が発生しないように、成形素材の成形後に機能面となる部分に対応する部分の表面を、滑らかに仕上げる工程であり、その部分に相当する部分の表面を光学的な欠点、つまり加圧成形する事により解消出来ない欠陥を予め取り除くことである。具体的には、表面を高低差が5ミクロン以上の鋭角的な段差が存在しないように仕上げることであり、傷や欠け等の微視的に見たときに鋭角的な部分が存在しないように処理する事である。この処理は、従来から行われている、研削研磨による方法や、酸処理などによる表面エッチングや、火炎や熱風による表面の軟化光揮処理等により行われる。
【0186】
更に第3の工程を実施することにより、成形素材を型ユニットの成形面と非接触の状態で加熱軟化する事が可能となるため、型ユニット上に、成形後に成形面に影響が出ることが無い、無欠陥の表面が非常に滑らかな状態の軟化した成形素材塊を得る事が出来る。この時、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度まで成形素材を加熱する事により、次の第4の工程につなげることが可能となる。
【0187】
次に第4の工程においても型の成形面から流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成形面と成形素材の接触を防ぐ事が可能となり、次工程での補正された形状の精密素子を得ることが容易になるような形状を有した、表面に欠陥の全く無い予備成形品を得ることが出来る。この工程に於いて得る予備成形品の形状は、次工程でのプレス時に、成形素材が大きな変形を起こさずに、変形が成形素材の流動ではなく、見かけ上、ほとんど曲げによる変形であるかのような微少な変形で事足りるような形状である事が望ましい。この為に、予備成形品の形状は、次の工程で得る補正された形状の精密素子のプレスの加圧方向の肉厚に対し、それよりも0〜3%厚くするか、又は肉厚より0.5mmを超えない範囲の厚さで、また、外径も同様にほとんど同じかごく僅かに小さな形状である事が望ましく、次工程での加圧力が予備成形品全体に出来るだけ均等にかかり、変形量がどこでも出来るだけ同じとなるような、成形面と相似した形状である事が望ましい。また、このような形状にする事により、次工程での成形が実質的に曲げを主体とする変形となり、成形面を形成する多孔質の材料の穴部の微細な転写が抑制され、穴部の形状が残ら無い表面を有する精密素子を得る事が出来るようになる。更にこの工程において型ユニットを閉じる速度、タイミング、圧力、及び噴出させる流体の流量・圧力、温度等を確実に再現する事により、再現性のある安定した形状の予備成形品を得る事が出来る。これは、型ユニットを、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度範囲の時に閉じ、予備成形品の形状を得た時の流体の膜厚が20ミクロン以下、より安定した形状の予備成形品を得る場合は、10ミクロン以下になるように流体の圧力と流量を制御し、又、同時に型を閉じる圧力及び速度も流体の膜厚を前記の範囲内に収まるように成形素材の温度に逆比例させながら制御する事により成形素材を成形面の補正された形状にならわす事により達成される。また、この型ユニットを閉じるときの動作は成形素材の温度に対応して制御される事が望ましく、各々の動作における温度のばらつきは10℃以下、望ましくは5℃以下とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ範囲に収める事が望ましく、流体の流量及び圧力のばらつき及び型ユニットを閉じる速度と圧力のばらつきは5%以内、望ましくは3%以内とする事により、型ユニットの成形面の形状をより安定して転写する事が可能となる。
【0188】
次の第5の工程は、前記工程で得た予備成形品を型部材の成形面に接触させ、補正を施された成形面の形状を正確に予備成形品に転写し、冷却完了後の精密素子の形状を確定するために行われる物であり、予備成形品の表面が、細かな形状を転写しないような条件のもとで、プレス成形が行われる。これは、前述のような材料・材質から作られている型部材の成形面の流体の噴出孔である多孔質の穴部の形状を転写しないように、予備成形品の表面近傍の粘度が高くなった時点で、具体的には107.6dPa・s以上の粘度となった時に、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で圧力を加えて形状を修正し、補正された成形面の形状を予備成形品に転写させる事であり、この時の圧力も同様に、穴部の形状を転写しないような圧力、具体的には5MPa以下、好ましくは2MPa以下である事が望ましい。但し、この圧力は成形素材の粘度と穴部の形状が前述のような時の圧力であり、粘度が高いときや、穴部の大きさが更に細かいときには、もっと高い圧力を加えることも可能である。
【0189】
次の第6の工程での第1の冷却は、成形素材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形状を成形素材に転写させ安定した形状の予備成形品を得るために行われるものであり、安定した形状の予備成形品が得られるように、成形素材の粘度と流体の膜厚を制御しながら徐々に冷却を行う。この第1の冷却完了時において、予備成形品が成形面との間に厚さを制御された流体の膜を挟んで成形される事により、次工程に必要な予備成形品の形状精度が確保される。また、この第1の冷却完了時点では、成形素材や型ユニットや流体の温度等は前述の範囲内に収めておく事が望まれる。更にその後の第2の冷却は第1の冷却より速い速度で行うことが出来、ここでの冷却は、一旦転写された補正形状が、冷却により補正前の形状、つまり精密素子の本来の所望する形状に一致し、更に連続成形において冷却収縮等によりばらつきが生じないように行われるものである。その為には、冷却開始温度や冷却時の冷却速度や温度分布等の諸条件を正確に再現する必要がある。この再現性は、上記と同様に冷却開始時から成形素材の粘度で1012dPa・sを示す温度の範囲での温度のばらつきとして10℃以下、望ましくは5℃以下とする事により安定した形状の再現性が得られる。また、この時の冷却速度や冷却時の温度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠陥を生じない範囲で成形面の補正形状を決定する時に定められるものである。
【0190】
次の第7の工程は、形状転写後の型部材の成形面と成形素材の熱収縮量の違いによる、冷却時の形状のズレを補正する工程である。これは、通常、加圧変形できる温度状態の成形素材は粘着力があり、特に型部材の成形面が精度よく鏡面状態に仕上げられて、その面状態を転写させるような成形に於いては、この力が成形素材の表面と成形面との間に強い密着力として働く。この力は接触面の形状や接触面の界面の微細な状態に左右され易く、それ故その力の大きさは不安定であり、その分布状態も不均一である為、接触面全体が一様に剥離せずに、部分的に徐々に剥離して行ったり、段階的に剥離して行き、その結果、出来上がった面状態が不安定で、場合によっては成形された面が不連続になったりしてしまい、最終的に所望の形状と一致させる事が出来ないという問題がある。この問題は、少なくとも、型と素材の間に、転写面を変形させるような大きさの密着力が働いている間に、その素子の表面と成形面の密着を維持するように、その素子の収縮に合せて型部材を追従させる事により初めて解決させることが可能となる。
【0191】
更に前記の第2の冷却を、この型部材の追従の工程が完了するまで行い、その後、型ユニットを開き成形素子を取り出す事(第8の工程)により、所望の形状に近似した形状を有する成形素子を得ることが出来る。また、この第2の冷却の終了点、つまり型部材の追従工程完了時点は、密着力如何により決められる物であるが、通常、素材の粘度で1012〜14.5dPa・sで行われるのが理想的である。
【0192】
次の第9の工程で、この所望の形状に近似した形状を有する成形素子を更に室温迄冷却する事により、熱収縮が起こり、前記素子が所望の形状を有する精密素子の形状となり、目的とする精密素子を得ることが出来る。
(第15の実施形態)
次に第1の実施形態と全く同じものを成形する他の実施形態を述べる。なお、下型11の成形面11aと上型21の成形面21aは、第6の実施形態と全く同様にして、ただし最終的な形状転写時の温度を、ガラス素材が108dPa・sの粘度を示す温度に設定し形状を求め、加工したものを用いた。
【0193】
まず、第1の実施例とまったく同様の方法により、成形面11a上にガラス塊102aを得た。
次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス塊102aの成形面11aで受けている下面近傍の粘度が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の粘度が103〜6dPa・sであり、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面11aと成形面21aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bとヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2mmとなるまで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで窒素ガスの温度と流量をガスの膜厚が20ミクロン程度となる様に、610℃(ガラスの粘度で107.6dPa・sに相当する温度)と毎分10リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.05mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じ、成形面への圧力が2MPaとなるように圧力を徐々に上げながら、且つ、レンズの表面近傍の粘度が107.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。
【0194】
さらに、その直後にガスの噴出を停止し、さらに型ユニット1の成形面に初期に1.5MPa、最終的に2MPaの力が加わる様に徐々に圧力を上げて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
また、軟化ガラス塊102aを得た直後から、予備成形品を得るまでの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、予備成形品を得た直後から第2の冷却を開始した。第2の冷却は不図示の冷却装置により型ユニット1の外部より、冷却用の窒素ガスを吹きつけることにより行われ、その時において、型構成部材2,3への外部からの拘束を解き、下型部材11及び上型部材21がレンズの収縮に追従出来るようにした。
【0195】
また、第2の冷却開始後すぐに、レンズの表面近傍の粘度が108dPa・sとなった時点で、成形面11a,21aから流体を15kPaの圧力で瞬間的に噴出させると同時に型ユニット1を僅かに開き、レンズを成形面から離型させ、その後直ちに流体の圧力を1.02kPa、流量をそれぞれ毎分3リッターに設定し、第3の冷却を行った。
【0196】
第3の冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515°C)となったときに型ユニット1を完全に開き、下型部材11からは窒素ガスを噴出させたままの状態で、レンズを不図示の吸着ハンドで取り出した。さらに成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20°Cの温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1.7本、クセがニュートンリング1本以下に収まり、通常の使用には十分耐えられる精度を得ることができた。
【0197】
なお、この複数回の成形のときの温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、温度については第2の冷却完了までの間に全ての温度制御点において20°Cのばらつきの範囲、その後は30°Cのばらつきの範囲に収まり、型ユニットの開閉速度等のばらつきも5%に収まっていたが、さらに条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を越えると精度が悪くなることが確認された。
【0198】
(第16の実施形態)
次に第15の実施形態と同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、もう一方の面がR40mmを基準とする非球面形状をなす、レンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mmである、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レンズの成形を行った。
【0199】
第15の実施形態と同様に、下型部材11の成形面11aと上型部材21の成形面21aは、成形前にシミュレーションにより求めた数々の補正を考慮した形状に加工し、その後更に実際に成形を行い、その形状データをもとに最終的な補正を行って形状を決定した。具体的には、第17の実施形態と同様に、上型21の成形面21aの場合、図3Aに示すように、精密素子であるレンズの標準的な使用条件である20℃における形状201(R40mmを基準とする非球面形状)に対し、成形時の形状転写時の温度を、ガラスの粘度で1012dPa・sを示す温度である515℃に設定し、第1の補正の量の一部であるガラスの温度膨張による変形量を算出し、その結果から、この条件下における精密素子の形状204を求めた。次に第2の補正の量に相当する、形状転写後の冷却によるヒケ等による補正量205を求め、形状転写時の成形面の部分的な形状206を決定し、更に第1の補正の量の残りの部分に相当する、型ユニットの成形面の材料の温度収縮による補正の量から、型の冷間時、特に型の成形面の形状を加工する時の成形面の形状207及び207a(図3Aにおいて207と207aのハッチング部分の形状)を求た。そして、その形状データにより、上型部材21の成形面21aを多孔質の穴部のくぼみを除いた面をニュートンリングのずれで0.2本以内となるような鏡面状態に加工し、一旦、シミュレーションで決定した成形条件で実際にレンズを成形した。次いで、この成形したレンズの形状を測定し、所定の形状と若干ずれている部分を再度補正加工して、出っ張りのない平滑な鏡面状態に仕上げ、最終的な成形面21の形状とした。また、下型部材11の成形面11aも同様の手法で形状を求め加工した。また、型部材11、21の材料として気孔率が25%であり、最大穴径が6ミクロンである多孔質からなるAlO3を用い、流体にはクリーンなエアーを用いた。なお、この成形面の表面には、離型層としてカーボン膜を多孔質の孔が塞がらない様にして蒸着させた。この離型層は型とガラスの融着を防ぎ、成形面の鏡面性を失うものでなければ、特にカーボン膜に限定されるものではない。
【0200】
次いで、このように加工準備した型部材11、21を図1に示す成形装置に取り付け、第15の実施形態と全く同様にして軟化状態にあるガラス塊102aを得た。
次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス塊102aの下型部材11で受けている下面近傍の粘度が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の粘度が103〜6dPa・sであり、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面11a,21aから噴出するエアーの流量を毎分25リッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が4.6mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで噴出エアーの温度と流量を600℃と毎分15リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が4.32mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じ、成形面への圧力が4.5MPaとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。なお、このときのガスの膜厚は8ミクロン程度であった。
【0201】
さらに、その直後にガスの噴出を停止し、さらに型ユニット1の成形面に初期に2MPa、形状が最初に転写しおわるときに3MPaの力が加わる様に徐々に圧力を上げて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
上記の予備成形品を得るまでの間の第1の冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第15の実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時において、予備成形品の形状が型の形状にならった後、型構成部材2,3に外部から第2の冷却完了時に最終的に8MPaの圧力となる様に圧力を徐々に加え、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。第2の冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温度で約515°C)となった時点で、下型部材2と上型部材3への加圧を解除すると同時に、第15の実施形態と同様に成形面11a,21aから流体を噴出させ、レンズを成形面から離型させた。その後さらに流量を毎分7リッターに設定して、第3の冷却を行い、レンズの表面の温度が498°C(ガラスの粘度で1013dPa・s)を下回ったときに型ユニット1を完全に開き、下型部材11からはエアーを噴出させたままの状態で、レンズを不図示の吸着ハンドで取り出した。さらにこの成形を数回繰り返し、またこのときの温度及び加圧・減圧等のタイミングの再現性は、第2の冷却完了までは10°C、その後は5°Cの温度範囲に、速度等のばらつきも3%以内に収まる様に厳密に制御しながら成形を実施した。その後、完成した複数のレンズを20°Cの温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり、第15の実施形態以上の良好な結果を得ることができた。
【0202】
(第17の実施形態)
次に図4に示す型部材を第15の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径がΦ10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲率半径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁部の厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレンズを成形した。ここで、図4において、211、221はそれぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレンズの光学面を形成する成形面211aと221aが加工されている。更に、下型部材211と上型部材221の外周にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する成形面216aと226aを有したリング部材216,226が取り付けられている。また、下型部材211と上型部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミクロン、リング部材216,226は気孔率が10%で最大穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られていて、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,12c,22b,22cに流体を個々に独立に供給することができるようになっており、それぞれの光学面の成形面と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立に制御出来るようになっている。また、成形素材は、第6の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては窒素ガスを用いた。また、離型層として第16の実施形態と同様のものを用いた。
【0203】
この実施形態では、レンズの光学面の成形面211a,221aと周縁部の成形面216a,226aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそのまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、それを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態に仕上げた。また、予備成形における形状転写時の温度は555℃(ガラスの粘度で1010dPa・s)として実施した。
【0204】
次いで、このように準備した型部材211,221,216,226を第17の実施形態と同様に図1に示す成形装置に取り付け、同様の方法で軟化ガラス塊を得た。この時の窒素ガスの温度は、ガラスを成形面211aに受ける時はガラスの転移点付近の温度である500℃に、その直後にはガラスの粘度で107.3dPa・sに相当する温度である620℃になるように温度を調整し、更に窒素ガスの流量は、溶融ガラス102を成形面211aに受ける直前までは、成形面211aで毎分18リッター、成形面216aで毎分8リッター、その後はどちらも毎分5リッターとなるように制御した。
【0205】
次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス塊102aの下型部材211で受けている下面近傍の粘度が105.6〜107dPa・s、その他の表面近傍の粘度が103〜105.6dPa・sであり、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面211a,221aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、成形面216a,226aからの流量をそれぞれ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガラスの粘度で105.8dPa・sに相当する680℃となるように設定し(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2と上型構成部材3が互いに逆回転となるような回転方向で、回転数が200rpmとなるように徐々に回転速度を上げながら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで、下型構成部材2と上型構成部材3の回転を保った状態で、窒素ガスの温度を610℃、成形面211a,221aからの流量を膜厚が12ミクロン前後となる様に毎分15リッター、成形面216a,226aからの流量がそれぞれ毎分12リッター、11リッターとなるように設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.33mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が成形面で2.5MPaとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。
【0206】
さらに、その直後にガスの噴出と回転を停止し、レンズの表面近傍の粘度が108.5dPa・sとなったときに、さらに型ユニットの成形面に10MPaの圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧をし、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
上記の予備成形品を得るまでの間の第1の冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第15の実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時において、予備成形品の形状が方にならった後更に型構成部材2,3に外部から成形面に第2の冷却の完了時に最終的に7.5MPaとなる様に圧力を徐々に減じて行きながら、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1010dPa・s(温度で約555°C)となったときに、成形面11a,21aから第17の実施形態と同様に流体を噴出させ、同時に型構成部材2,3への加圧を解除し、レンズの離型を行った。その後すぐに流体の温度を150°C、流量をそれぞれ毎分5リッターとし、同時に型構成部材2,3の回転を、それぞれの向きが逆方向となるような回転方向で、150rpmの速度で回転させ、流体の膜厚の均一化を図りながら第3の冷却を実施した。ガラスの粘度が1013dPa・sを越えたところで型構成部材2,3を停止すると同時に、型ユニット1を開き、レンズを取り出し、室温まで冷却した。更に成形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリング1.2本、クセがニュートンリング0.5本以下に収まり、十分な精度を得ることができた。
【0207】
また、この複数回の成形の時の温度及び加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、第15の実施形態と同様の範囲に収まっており、また、型ユニットの開閉速度及び下型構成部材2と上型構成部材3の回転数等のばらつきも5%に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなることが確認された。
【0208】
なお、これら前述の実施形態では、流体に圧縮性流体を用いているが溶融塩のような非圧縮性流体を用いても同様の効果が得られることは言うまでもない。
以上説明したように、上記の第15乃至第17の実施形態によれば、成形品と型の成形面との接触に起因する融着や面の転写不良及び成形面の劣化を回避することが出来、更に型の成形面と成形品の熱膨張差に起因する形状転写不良を回避することが可能となり、更に研削研磨等の加工方法により発生する、研削研磨屑等の廃棄物を極端に削減することが可能となり、光学レンズ等の精密素子を大量に安価に提供することができる。
【0209】
以上第15乃至第17の実施形態をまとめると、第22の方法においては、第1の工程は、精密素子の成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの加工時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張差による形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形及び冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒケの発生位置と量を前もって成形型で補正しておく事により、成形された精密素子が所望の形状を得られるようにする事であり、この際に、予備成形品を得る時の成形面と予備成形品との間に存在する流体の厚さも補正しておく事も必要である。また、型ユニットの成形面を多孔質の材料で作り、その成形面から成形素材に向けてエアーやN2ガス等の流体を噴出させ、成形面表面にごく薄い流体膜を形成する事で高温の軟化状態の成形素材と成形面の接触を防ぐ事が出来る。この目的のためには、多孔質の最大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミクロン以下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材質には耐酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等のセラミックや、多孔質カーボン等を用い、更に成形面の表面は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないようにし、更に補正された形状の精密素子を得る段階での、成形面と予備型品の接触時の転写性を確保するためには、出っ張りの無い平滑な鏡面状で、精密素子の機能を確保できる所望の面精度に加工されている事が必要となる。
【0210】
次に第2の工程により、型と成形素材の接触、特に溶融軟化された形状が不定の状態の成形素材をノズルから流出させ型ユニットに供給する時に発生しやすい成形素材と型ユニットの成形面との接触を防ぐ事が出来、更にこの時に、一時的に噴出する流体の温度を下げたり流量を増やすことにより、接触を確実に防ぐ事が出来る。また、型ユニットの成形面上に供給された成形素材を前記ノズルから切断分離する際に、型ユニット上に成形素材を必要量を受け止めた後、型ユニットを一旦下降させ、ノズルより流出する成形素材と型ユニット上の成形素材との間にくびれを発生させ、更に成形素材の自重と表面張力によりくびれを発達させ分離を行う事により、型ユニット上に、成形後に影響がでるような欠陥の全く無い、表面が非常に滑らかな成形素材塊を得ることが出来る。
【0211】
次に第3の工程においても型の成形面から流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成形面と高温の成形素材の接触を防ぐことが可能となり、次工程での補正された形状の精密素子を得る事が容易になるような形状を有した、表面に欠陥の全く無い予備成形品を得ることが出来る。この工程に於いて得る予備成形品の形状は、次工程でのプレス時に、成形素材が大きな変形を起こさずに、変形が成形素材の流動ではなく、みかけ上、ほとんど曲げによる変形であるかのような微少な変形で事足りるような形状である事が望ましい。この為に、予備成形品の形状は、次の工程で得る補正された形状の精密素子のプレスの加圧方向の肉厚に対し、それよりも0〜3%厚くするか、または肉厚より0.5mmを超えない範囲の厚さで、また、外径も同様にほとんど同じか極僅かに小さな形状であることが望ましく、次工程での加圧力が予備成形品全体に出来るだけ均等に掛かり、変形量がどこでもできるだけ同じとなるような、成形面と相似した形状である事が望ましい。また、このような形状にする事により、次工程での成形が実質的に曲げを主体とする変形となり、成形面を形成する多孔質の材料の穴部の微細な転写が抑制され、穴部の形状が残ら無い表面を有する精密素子を得る事が出来るようになる。更にこの工程に於いて型ユニットを閉じる速度、タイミング、圧力、及び噴出させる流体の流量・圧力、温度等を確実に再現することにより再現性のある安定した形状の予備成形品を得ること事が出来る。これは、型ユニットを、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度範囲の時に閉じ、予備成形品の形状を得た時の流体の膜厚が20ミクロン以下、より安定した形状の予備成形品を得る場合は、10ミクロン以下になるように流体の圧力と流量を制御し、又、同時に型を閉じる圧力及び速度も流体の膜厚を前記の範囲内に収まるように成形素材の温度に逆比例させながら制御する事により成形素材を成形面の補正された形状にならわすことにより達成される。また、この型ユニットを閉じる時の動作は成形素材の温度に対応して制御されることが望ましく、各々の動作における温度のばらつきは10℃以下、望ましくは5℃以下とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ範囲に収めることが望ましく、流体の流量及び圧力のばらつき及び型ユニットを閉じる速度と圧力のばらつきは5%以内、望ましくは3%以内とする事により、予備成形品の形状をより安定して得る事が可能となる。。
【0212】
次の第4の工程は、前記工程で得た予備成形品を型部材の成形面に接触させ、補正を施された成形面の形状を正確に予備成形品に転写し、冷却完了後の精密素子の形状を確定するために行われる物であり、予備成形品の表面が、細かな形状を転写しないような条件のもとで、プレス成形が行われる。これは、前述のような材料・材質から作られている型部材の成形面の流体の噴出孔である多孔質の穴部の形状を転写しないように、予備成形品の表面近傍の粘度が高くなった時点で、具体的にはガラスの軟化温度である107.6dPa・sの粘度を示す温度以下になった時に、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で圧力を加えて形状を修正し、補正された成形面の形状を予備成形品に転写させる事であり、この時の圧力も同様に、穴部の形状を転写しないような圧力、具体的には5MPa以下、好ましくは2MPa以下である事が望ましい。但し、この圧力は成形素材の粘度と穴部の形状が前述のような時の圧力であり、粘度が高い時や、穴部の大きさが更に細かい時には、もっと高い圧力を加える事も可能である。
【0213】
次の第5の工程は、補正された形状の成形面と密着している補正形状の精密素子を、成形面の多孔質の穴から流体を再度噴出させ、成形面から精密素子を浮上させる力を与えると同時に、必要に応じて外部からも成形面から精密素子を引き離す力を与えて離型させ、精密素子と成形面との間に空隙を設ける工程であり、この工程の目的は、一旦成形され補正された形状を有する精密素子の形状が、冷却時の型と成形素材の収縮差により劣化をするのを防ぐ為に行われるものであり、成形素材が成形面と離れても自重や他の外力により変形しにくく、かつ型と素材の収縮量の差が大きくならない温度範囲で実施される。具体的な温度範囲は、上限に対しては成形面との離型行為や次工程の非接触状態での冷却の初期に変形を起こさない粘度である、108dPa・s以上、望ましくは109dPa・s以上の粘度となる温度以下で行うことが必要である。又、下限の温度は、熱収縮量の差が大きくなり、成形素材が型の収縮に追従できなくなる温度以上であれば良く、成形素材と型の膨張率の差に大きく左右されるが、通常、成形素材が1012dPa・s以下の粘性を示す温度以上であることが望ましい。また、この工程の離型動作を容易にするために、型の成形面の表面がカーボンや白金等に代表される成形素材との濡れ性の悪い材料で作られていることがよりよい結果をもたらす。
【0214】
次の第6の工程での第1の冷却は、成形素材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形状を成形素材に転写させ安定した形状の予備成形品を得るために行われるものであり、第1の冷却の完了時に前述の流体の膜厚になるように、成形素材の粘度を制御しながら徐々に冷却を行う。この第1の冷却完了時において、予備成形品が成形面との間に厚さを制御された流体の膜を挟んで成形される事により、次工程に必要な予備成形品の形状精度が確保される。また、この第1の冷却完了時点では、成形素材や型ユニットや流体の温度等は前述の範囲内に収めておく事が望まれる。更にその後の第2の冷却は、一旦接触により転写された補正形状が、成形素材がほぼ固まり、離型時において形状が変化しないような前述の温度まで行われ、更に連続成形において形状のばらつきが生じないように行われるものである。その為には、冷却開始温度や冷却時の冷却速度や温度分布や、特に離型時である冷却完了時の温度及び温度分布を正確に再現する必要がある。この時の再現性は、離型時までの温度のばらつきとして20℃以下、望ましくは10℃以下とする事により安定した形状の再現性を得る事が可能となる。また、この時の冷却速度や冷却時の温度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠陥を生じない範囲で成形面の補正形状を決定する時に定められるものである。更に、その後の第3の冷却は第1、第2の冷却より速い速度で行うことが出来、ここでの冷却は、一旦離型前までに転写された補正形状が、冷却により補正前の形状、つまり精密素子の本来の所望する形状に一致し、更に連続成形において冷却収縮によりばらつきが生じないように行われるものである。そのためには、補正形状を決定した時の第3の冷却開始温度(=離型温度)や冷却時の温度分布などの諸条件を正確に再現する必要がある。この再現性は、上記と同様に冷却開始時から成形された精密素子が変形を発生させにくくなる粘度である1012dPa・sを示す温度、より精密な転写性を要求されるものや、複雑な形状のものに対しては成形素材が歪を新たに発生させない粘度である1014.5dPa・s迄の温度のばらつきとして30℃以下、望ましくは15℃以下とする事により安定した再現性が得られる。又、この時の冷却速度や冷却時の温度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠陥を生じない範囲で補正形状を決定する時に定められるものであるが、転写した形状が自重や流体の圧力により変形を起こさないようにするためには、精密素子の表面を毎分20℃以上の速度で冷却する事が望ましく、また、流体の圧力や流量にも急激な変化を与えないようにする事が望ましい。以上のような冷却を経ることで、この工程の終了時には型ユニットの成形面の形状と成形された精密素子の形状はそれぞれの膨張率の差の分の補正量や、予め見込んでおいたヒケに対する補正量のために完全に一致しないが成形面と非接触状態にあるため、精密素子の形状は型ユニットの成形面の形状に左右される事なく、所望の形状を維持できる。
【0215】
次の第7の工程は、第2の冷却中での形状転写時の型部材の成形面と成形素材の熱収縮量の違いによる、形状のズレを補正する工程である。これは、型部材の成形面が精度よく鏡面状態に仕上げられて、その面状態を転写させるような成形においては、型部材と成形素材とに冷却中の収縮量の違いがあると、成形した形状が冷却中に不均一に成形面に接触し、その時々の温度の型の成形面の形状を部分的に転写し、離型後の精密素子の成形面がいびつになったり、不連続な面形状になったりしてしまい、本来の所望とする面形状を得ることが出来なくなってしまうと言う事を防ぐための工程であり、この型と精密素子の接触冷却中に型の成形面を精密素子の表面に、精密素子の肉厚方向の収縮に追従する様に密着させておく事で始めて解決することが出来る。なお、この精密素子の表面への型部材の追従には、成形面と精密素子の間の密着力を利用して行っても良いが、より確実性を増し、精密素子の形状に左右されないようにするためには、型部材に外部から圧力を加える事によって行う事が望ましい。
【0216】
最後の第8の工程で、上記のようにすでに固化している精密素子を型ユニットから取り出すことにより、所望の形状を転写された精密素子を得る。この時も精密素子と型ユニットの成形面との間には、流体による膜が介在しているようにする事により、精密素子の表面に成形面との接触による傷などの発生を防ぐと同時に、成形面も固化した精密素子との接触による損傷を防ぐ事が出来る。
【0217】
また、第23の方法においては、前記成形面の予め補正された形状を、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と多孔質の材料で作られた型部材の熱膨張率等を成形条件のパラメーターとしてシミュレーションし、事前に成形される精密素子の形状を予測し、それを基に型ユニットの成形面の形状を補正しておく事により、高精度な形状及び面精度を有する精密素子を得る事ができる。この補正は、型部材と成形素材の熱膨張差に伴う第1の補正と、成形素材の冷却に伴うヒケ等をキャンセルするための第2の補正を組み合わせたものであり、成形型の成形面の形状加工時にこの補正を行うことで、成形が完了し型ユニットより取り出し、更に冷却の完了した時点の精密素子の形状を所望の形状と一致させる事が出来る。
【0218】
ここで第1の補正は、形状転写時と型部材の形状加工時や精密素子の使用時の温度差、及び型部材と成形素材の熱膨張率の違いから発生する、型部材の成形面と精密素子の形状のズレ量の補正であり、具体的には、所望の精密素子の使用温度での形状を、第2の冷却の際の型部材の追従が終わる最終的な形状転写温度までの温度差による精密素子の形状変化量を成形素材の膨張率で算出し、更にその精密素子の形状変化量を最終的な形状転写温度から型ユニットの成形面の加工時の温度差までの型部材の形状変化量として型部材の膨張率で算出した量を型部材の成形面の形状の第1の補正の量とするものである。第2の補正は、特に精密素子が形状を転写した後に、型内及び型からの取り出し後の冷却による収縮やヒケ等による部分的な変形を含めた変形量の補正であり、主に冷却時に刻々と変化する流体や型ユニットの温度と成形素材の保有熱と温度伝導率に支配される、成形素材自体の温度分布とそれに伴うその時々の粘度分布と熱膨張率とそれらにより算出される応力と、成形素材独自の応力緩和係数によりヒケの量を算出し、更にその量に、その時々の成形素材の自重や流体の圧力変化等による形状の変化量を算出して加算したものを第2の補正の量とするものである。
【0219】
また、第24の方法においては、予め所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有する素子を成形し、その成形中及び成形終了後の成形、形状データから得られた情報を型部材の成形面の形状へフィードバックする事により、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等を得る事ができる。この補正方法は、最初に精密素子の形状とほぼ同等の形状の成形面を有する型ユニットを用いて、予め設定し、固定された諸条件下で素子を一旦成形し、成形完了後の使用条件と同じ状態の素子の形状と、使用した型ユニットの成形面の形状を比較し、そこで判明した形状の相違量を、基本的には型ユニットの成形面への補正量として用い、成形条件の変更で補正出来るような単純な補正の場合は、成形条件をも修正する事により、成形した精密素子を所望の形状に一致させることが可能となる。また、この補正を数回繰り返すことにより、より精度のよい安定した形状を得る事も可能となり、更に前述のシミュレーションによる型ユニットの成形面の補正方法を組み合わせて実施する事で同様の効果を得る事が出来る。
【0220】
また、第25の方法においては、前記成形面の多孔質部より噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御する事ができる。これは、成形素材が型ユニットと非接触状態にある事や、成形素材が型ユニットに覆われており、外部から成形素材の温度を測定することが実質上不可能であるが、成形素材に直接に接触する流体の温度を制御し、その伝熱により成形素材の温度を間接的に制御する事で解決され、また、こうする事により、成形素材に対して、より応答性の良い確実な温度制御を行うことが出来る。ここで、流体の温度の制御方法としては、流体を供給源の近傍で直接に加熱温調して用いる事でも十分に目的を達成することが出来るが、一旦前述の様に加熱温調した流体を更に流体が成形素材に触れる直前の流体の通路である型ユニット等に組み込まれたヒーター等の加熱源により、再度温調をかけ直して用いることで、より良好な成形素材への温度制御を実現することが可能となる。
【0221】
また、第26の方法においては、成形素材の粘度に合わせ成形型の成形面より噴出させる流体の噴出圧力と流体の流量と、型ユニットへの加圧力を制御する事により、高精度な形状及び面精度を有する光学素子を得る事ができる。ここで、成形素材の硬さに相当する粘度変化に同調させて、流体の流量や圧力と型ユニットへの加圧力を制御する事により、型ユニットの成形面と成形素材の間の流体の膜厚を確実に安定させて制御する事が出来、その結果、予備成形品及びその後の完成した精密素子が、より一層、高精度で、かつ連続成形時においてもばらつきの少ない安定した形状を得る事が可能となる。
【0222】
また、第27の方法においては、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る際及び形状転写後の型内での冷却の際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力分布を制御する事により、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等を得る事が出来る。これは、加圧成形中に型部材を成形素材に対して回転摺動させる事により、成形素材と型部材の成形面との間の流体の膜厚を均一化する事が容易となり、より高精度な精密素子を得る事が出来るようになり、特に回転軸を中心とした軸対象に膜厚が容易に均一化する事により、レンズ等の機能面が軸対称の形状の球面を基本とする形状の精密素子に対しては大きな効果を発揮する事が可能となる。
【0223】
(第18の実施形態)
図6は本発明の第18の実施形態の成形方法を示すための型構造の図である。符号301は上型の第1型部材、符号302は下型の第1部材、符号303は上型の第2型部材、符号304は下型の第2型部材、符号305は第2型部材303を固定するためのリング、符号306は第2型部材304を固定するためのリング、符号307,308はガスの通路、符号309は成形品を示す。
【0224】
図7は成形品を芯取りして得た光学素子310を示す。
レンズ成形用素材としてSK12(nd=1.58313,νd=59.4,Tg=506℃,At=538℃)を用い、これによってプリフォームとして直径12mm、中心厚7mmのゴブ(ガラス塊)を作成した。
この素材からR1=16.45mm、R2=16.86mm、中心厚=4.5mm、光線有効径=Φ12mm、外径=Φ14mmの両凸レンズを作成する。
【0225】
図6に示す型の製造方法としては超硬合金よりなる型部材301,302に放電加工でガスの通路307、308を形成した。さらに多孔質アルミナ、多孔質ジルコニア、多孔質炭化珪素、多孔質ステンレス、多孔質炭素等からなる型部材303,304をレンズ面以外を加工して、型部材301,302に嵌合挿入した。さらに固定用のリング305,306を挿入し不図示の固定ピンで型部材同士を固定した。最後にレンズ面を研削研磨加工して仕上げた。
【0226】
第2部材303,304の内径はΦ12.2mmで光学素子の光線有効径よりわずかに大きくした。
N2雰囲気下の成形装置内のプレス軸に上記型を取付け、上下型間にガラス素材を投入し、型とガラスを加熱して580℃に加熱した。つぎに上型を下降させてプレスを開始した。型部材301,302によってガラスが変形を開始した後にN2ガスを型部材303,304に流し込み、上下型の隙間から成形室内に放出するようにした。N2ガスは通路307,308に入る前に不図示のヒータにより型温度と同等に加熱する。またガスの流量は不図示の流量調整器で制御する。
【0227】
変形が完了した後、型温度とガス温度を同等に保ちながら冷却し、200℃まで冷却したところで上型を上昇させて型とガラスを離型した。取り出した成形品の外観を顕微鏡で観察したところ第1の型部材に対応する部分は微細な型の表面あらさを転写していたが、第2の型部材に対応する部分は型の接触痕が全くなく滑らかな状態であって型とガラスが非接触の状態で形成されたことがわかった。成形品を芯取り加工して光学素子310を得た。得られた光学素子は光線有効径内は設計値に対しニュートンリング0.5本の精度を有していた。また光線有効径外は所定の曲面からのズレは5μm前後であったが、機械的な精度としては十分な値であった。
【0228】
上記プロセスを500ショット連続で行いその結果を図8にまとめた。
型部材303,304の材質および気孔率、ガス流量に関して各種条件で500ショットおこなったが全て外観品質は融着が無く、形状精度に関しても良好な結果を得られた。
(第19の実施形態)
第18の実施形態と同じ装置、型、ガラスを使用して同様のプロセスで両凸レンズを形成した。第18の実施形態では離型温度は200℃としたが、ここでは離型温度500℃にして成形時間を短縮することを目的とした。相違点としては変形が完了した後は上型の第2型部材に供給するガスの温度だけを低下させて第2型部材から放出されるガスの温度が、下型の第2型部材から放出されるガスの温度より10℃低く保たれるように、ガスの温度を制御した。型温度が500℃まで低下した時点で上型を上昇させて型とガラスを離型した。成形品は下型上に残っていたので直ちにオートハンドで取り出すことができた。その結果連続的に成形を500ショット繰り返すことが出来た。このことは、低い温度で離型させる場合には問題はないがTg点近くのような高い温度で離型させる場合には、上下のガスの温度差を持たせることで成形品が必ず下型に残るように制御できることを示している。
【0229】
上型と下型のガスの温度差を変えて連続成形ができるかどうかを調べた。比較例として温度差が無いかまたは少ない場合には離型した時に成形品が上型に付着した状態になることがありその後のオートハンドによる取り出しに支障を生じ、連続成形ができなかった。ガスの温度差と離型性の関係を図9に示す。
(第20の実施形態)
図10は第20の実施形態の成形方法を示すための型構造の図である。符号311は上型の第1型部材、符号312は上型の第2型部材、符号313は下型、符号314はガスの通路、符号315は成形品を示す。
【0230】
図11は成形品を芯取りして出来た光学素子316を示す。
レンズ成形用素材としてLaK12(nd=1.67790,νd=54.9,Tg=562℃,At=593℃)が用いられ、これによってプリフォームとして直径23mm、中心厚12mmのゴブ(ガラス塊)を作成した。
この素材からR1(凹)=14.232mm(非球面)、R2(凸)=155.3mm、中心厚=1.5mm、外径=Φ29mm、R1の光線有効径=Φ20mm、R2の光線有効径=Φ27mmでR1側に45度の面取りをした凹メニスカスレンズを作成する。
【0231】
図10に示す型の製造方法は超硬合金からなる型部材311に放電加工でガスの通路314を形成した。さらにモリブデンよりなる型部材312を型部材311にネジ止めした。第1型部材の非球面加工部分の外径は23mmで、第2型部材の内径は24mmとしガスが通過することを目的として型部材311と型部材312の隙間は幅0.5mmとした。第2型部材のレンズ成形面は45度のテーパー面とした。
【0232】
N2雰囲気下の成形装置内のプレス軸に上記型を取り付け、上下型間にガラス素材を投入し、型とガラスを加熱して625℃に加熱した。次に上型を下降させてプレスを開始した。型部材311,313によってガラスが変形を開始した後にN2ガスをガス通路314に流し込み型部材311と312の隙間から成形室内に放出するようにした。N2ガスの温度は通路314に入る前に不図示のヒータにより型温度と同等に加熱している。またガスの流量は不図示の流量調整器で制御する。
【0233】
変形が完了した後、型温度とガラス温度を同等に保ちながら冷却し、200℃まで冷却した所で上型を上昇させて型とガラスを離型した。取り出した成形品の外観は融着などの欠陥が無く、凹面側はΦ22の範囲で上型311と接触しており、Φ24.5からΦ30までは型部材312によって45度のテーパー面が形成されていた。また、Φ22からΦ24.5の間は完全な自由表面であった。成形品を芯取り加工して光学素子316を得た。得られた光学素子は設計値に対し凹面側(非球面)は0.3μmのずれ、凸面側(球面)はニュートンリング0.5本の精度を有していた。外周部の45度のテーパー面は設計値からのズレが3μm前後で機械的な精度としては十分な数値であった。
【0234】
上記プロセスをガスの流量を変えてそれぞれ500ショット行いその結果を図12にまとめた。全て外観品質は融着が無く、形状精度に関しても良好な結果を得られた。比較のためにガスを流さずに成形を行ったが20ショットで第2型部材312にガラスが融着し成形が不可能となった。
(第21の実施形態)
図13は第21の実施形態の成形方法を示すための型構造の図である。符号317は上型、符号318は下型の第1型部材、符号319は下型の第2型部材、符号320は固定用のリング、符号321はガスの通路、符号322は成形品を示す。図14は成形された光学素子323を示す。光学素子323は芯取り加工をせず、成形されたままの状態で鏡筒に組み込むことが出来た。
【0235】
レンズ形成用素材としてLaF010(nd=1.73310,νd=49.4,Tg=571℃,At=600℃)を用い、これによってプリフォームとして直径10.6mmの球を作成した。
上記素材からR1=18.5mm、R2=16.4mm、中心厚=5mm、光線有効径=Φ12mm、R2両側の外径がΦ13mmに規定された両凸レンズを作成する。
【0236】
図13に示す型の製造方法としては超硬合金からなる型部材318に放電加工でガスの通路321を形成した。さらに球面研磨をした後に炭素膜をコーティングした。さらに多孔質炭素よりなる型部材319を型部材318に嵌合挿入した。さらに固定用のリング320を挿入し、不図示の固定ピンで型部材同士を固定した。第2型部材319の内径はΦ13で、成形品の芯取り加工を不要にした。
【0237】
N2雰囲気下の成形装置内のプレス軸に上記型を取り付け、上下型間にガラス素材を投入し、型とガラスを加熱して640℃に加熱した。次に上型を下降させてプレスを開始した。型部材317,318によってガラスが変形を開始した後にN2ガスをガス通路321に流し込み型部材317と319の隙間から成形室内に放出するようにした。N2ガスの温度は通路321に入る前に不図示のヒータにより型温度と同等に加熱する。
【0238】
変形が完了した後、型温度とガラス温度を同等に保ちながら冷却し、200℃まで冷却した所で上型を上昇させて型とガラスを離型した。取り出した成形品の外観を顕微鏡で観察したところ第1の型部材に対応する部分は微細な型の表面あらさを転写していたが、第2の型部材に対応する部分は型の接触痕が全くなく滑らかな状態であって型とガラスが非接触の状態で形成されたことがわかった。得られた光学素子は光線有効径内は両面とも設計値に対しニュートンリング0.5本の精度を有していた。またR2面側の外径Φ13は所定の数値からのズレが2μm前後で、芯取りをしないで使用できるレベルであった。
【0239】
上記プロセスを500ショット行ったが品質上の問題は発生せず連続で成形することが可能であった。
比較として第2の型部材319の材質を、超硬合金で作成し、炭素膜をコーティングした材料を使用したが、50ショット成形したところで型部材319の水平面の部分の炭素膜が剥離し、更に成形を続けたところその部分から融着が発生した。
【0240】
(第22の実施形態)
図15は第22の実施形態の成形方法を示すための型構造の図である。符号324は上型、符号325は下型、符号326は胴型、符号327は外径を形成するための第2型部材、符号328はガスの通路、符号329は成形品を示す。
図16は得られた光学素子330を示す。
【0241】
レンズ成形用素材として第22の実施形態と同じくSK12を用い、これによってプリフォームとして直径12mm、中心厚6.3mmのゴブ(ガラス塊)を作成した。上記素材からR1=16.45mm、R2=16.86mm、中心厚4.5mm、光線有効径=Φ12mm、外径=Φ14mmの両凸レンズを作成する。
【0242】
図15に示す型の製造方法としては超硬合金からなる型部材324,325を研磨した後、炭素膜をコーティングした。さらに多孔質炭素からなる第2型部材327を胴型326に嵌合させた。型部材324,325と胴型326の隙間は10μmで、ガスの逃げ道を確保しつつ、型部材324,325の偏心を防止する量とした。
【0243】
N2雰囲気下の成形装置内のプレス軸に上記型を取り付け、上下型間にガラス素材を投入し、型とガラスを加熱して580℃に加熱した。つぎに上型を下降させてプレスを開始した。型部材324,325によってガラスが変形を開始した後にN2ガスを型部材327に流し込み、上下型と胴型の隙間から成形室内に放出するようにした。N2ガスの温度は通路328に入る前に不図示のヒータにより型温度と同等に加熱する。またガスの流量は不図示の流量調整器で制御する。
【0244】
変形が完了した後、型温度とガス温度を同等に保ちながら冷却し、200℃まで冷却したところで上型を上昇させて型とガラスを離型した。取り出した成形品の外観を顕微鏡で観察したところ球面部分は微細な型の表面あらさを転写していたが、外径部分は型の接触痕が全くなく滑らかな状態であって、型とガラスが非接触の状態で成形されたことがわかった。得られた光学素子は光線有効径内は設計値に対しニュートンリング0.5本以下の精度を有していた。又外径は設計値からのズレが5μmで、機械的な精度としては十分な値であった。
【0245】
上記プロセスを500ショット行ったが品質上の問題は発生せず、連続で成形することが可能であった。
比較として第2型部材327の材質を超硬合金で作成し、炭素膜をコーティングした材料を使用したが、第2型部材327と上下型324,325の隙間にガラスが入り込み、その結果上下型を胴型から抜き出すことができなくなった。
【0246】
上記結果から第2型部材からガスを流すことによって、上下型と胴型の隙間にガラスが入り込むことを防止できることがわかった。
以上説明したように、重量調整されたガラス素材を成形用型でプレスして光学素子を成形する方法において使用する型が、光学素子の少なくとも光線有効径内を形成するための第1の型部材とそれ以外の部分を形成するための第2の型部材で構成され、第2の型部材に形成されている通路の内部、または表面を経由してガスを成形面に流しながら成形することによって、とくに融着や膜剥離の発生しやすいレンズ周辺部で、型とガラスを非接触の状態で成形することができ、その結果、融着などのトラブルが無く連続的に成形を行うことができるようになる。
【0247】
さらに上下型でガスの温度差をつけることによって離型した時に安定的に成形品を下型上に残してハンドリングのトラブルを防止できる。
また、外径形成部材として多孔質材を使えば型の隙間にガラスが入り込まない状態で芯取りの必要のない光学素子を得ることが出来る。
上記の第18乃至第22の実施形態をまとめると、第28の方法において、光学素子周辺部に融着や型の膜剥離が発生しやすいことに注目し、周辺部に於いて型とガラスの密着力をゼロにするために非接触の状態で成形する方法を提案している。ただし光線有効系内は光学的精度を達成するために型とガラスは接触させ、光線有効径外は鏡筒などとの組み合わせ上必要な機械的精度は必要だが光学的精度は不要であるため型とガラスは非接触とした。ここで言う光学的精度とは0.5μm程度以下の形状誤差を言い、機械的精度とは10μm程度の形状誤差を言う。
【0248】
具体的な方法としては、重量調整されたガラス素材を成型用型でプレスして光学素子を成形する方法に於いて使用する型が、光学素子の少なくとも光線有効径内を形成するための第1の型部材と、それ以外の部分を形成するために第2の型部材で構成され、第2の型部材の内部または表面を経由してガスを成形面に流しながら成形することによって上記目的を達成した。また第2の型部材と成形された光学素子はガス層を介して非接触であることによって上記目的をより確実に達成できた。
【0249】
第2の型部材の表面にガス層を形成するためには型形状を工夫してガスの通過する隙間を形成し型表面にガスを放出するような構造にしても良いが、より好ましくは第2の型部材を多孔質セラミックまたは、多孔質金属または、多孔質炭素で作成することである。このような多孔質材料を使用することにより第2の型部材の表面全域に於いて均等にガスが放出されるので非接触状態で機械的精度を出すことが容易になる。
【0250】
また付随する目的として上型を構成する第2の型部材を経由するガスの温度と、下型を構成する第2の型部材を経由するガスの温度の差を10℃以上にすることによって離型する時に上面、下面のどちらを先に離型させるかを制御することもできる。これにより離型後光学素子を必ず下型上に残したいような装置構造に於いても、トラブルの発生を防止できる。
【0251】
上記の第18乃至第22の実施形態で得られる光学素子は、少なくとも光線有効径内は型と接触した面でありかつそれ以外の表面に非接触状態で型によって形状を形成された部分を持つ。光線有効径内は型と接触することで光学的精度(形状誤差0.5μm以下程度)で成形することが出来、光線有効径外は型と非接触であるが機械的精度(形状誤差10μm以下程度)を維持することで鏡筒への組立が可能である。また光線有効径外は全ての部分が機械的精度を必要とするわけではなく、全く型から拘束を受けない自由表面が存在しても差し支えない。
(第23の実施形態)
第23の実施形態では、光学素子成形用素材として適したガラス塊を、溶融ガラス流から得る方法について説明する。
【0252】
図17は、本発明の第23の実施形態であるガラス塊の製造において用いた、受け型の構成を説明する図である。
図17において、401は溶融ガラス流出パイプ、402は溶融ガラス流、403は多孔質の受け型、404は多孔質の受け型403を保持している受け型保持ブロック、405は多孔質の受け型403の背面に位置し型保持ブロック404により囲まれているガス供給室、406はガス供給室405に低温のガスを供給するための低温ガス供給管、407はガス供給室405に高温のガスを供給するための高温ガス供給管、408は高温ガス供給管407の内部に設けられたガス加熱用の白金巻線ヒータ、409は低温ガス供給管406および高温ガス供給管407の途中に設けられたガス流量調整バルブである。
【0253】
図18乃至図21は、第23の実施形態である溶融ガラス塊の製造工程を、順次説明する図である。これらの図を用いて、本実施形態における動作を説明する。
ガラス溶融るつぼ(図示せず)の内部で溶融されたガラスは、ガラス溶融るつぼの下部に設置された溶融ガラス流出パイプ401を通って流出してくる。
【0254】
溶融ガラス流を受け型に受ける工程の初期段階において、図18に示すように、溶融ガラス流402の先端は、多孔質の受け型403の上方の位置にある。この時、低温ガス供給管406および高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409は開かれており、低温ガス供給管406から低温ガスが、高温ガス供給管407からは高温ガスが、ガス供給室405の内部に供給され、混合されている。そして、この混合された温度のガスが、多孔質の受け型403の細孔を通って、受け型403の受け面に噴出している。
【0255】
更に、溶融ガラス流402の流出が進み、溶融ガラス流402の先端部の下降が進むと、図19に示すように、溶融ガラス流402の先端部が多孔質の受け型403の受け面に接近した状態になる。しかし、この時、多孔質の受け型403の受け面からは混合された温度のガスが噴出しているので、溶融ガラス流402の先端部と多孔質の受け型403とが接触することは無い。なお、この時も、低温ガス供給管406と高温ガス供給管407の両方からガスが供給されている。
【0256】
さらに溶融ガラス流402の流出が進むと、図20に示すように、溶融ガラス流402が多孔質の受け型403の上に溜り始める。この状態で、低温ガス供給管406に設けたガス流量調整バルブ409を閉じ始める。すると、ガス供給室405に供給される低温ガスの量が減り始めるので、ガス供給室405で混合されたガスの温度は上がり始め、多孔質の受け型403の受け面から噴出しているガスの温度も上がり始める。
【0257】
そして、低温ガス供給管406のガス流量調整バルブ409を閉じ、受け型403の上に溜った溶融ガラスの重量が所望の値になった後、受け型403を下方へ下降させ、溶融ガラスを括れさせ、自然切断させ、溶融ガラス塊410を得る。この状態を図21に示す。この時、低温ガス供給管406は閉じられており、高温ガス供給管407から高温のガスがガス供給室405に供給されている。そして、多孔質の受け型403の受け面から噴出している高温のガスにより溶融ガラス塊410は浮上している。
【0258】
このようにして得られたガラス塊410は、常に受け型403から浮上した状態であるので、その上下面とも自由表面からなっており、非常に滑らかである。また、ガラス塊410には、受け型403との接触痕もない。更に、ガラス塊の製造工程に最適な温度条件のガスで、ガラス塊410を浮上させているので、ガラス塊の下面が噴出ガスにより持ち上げられ凹んだ状態で固化することは無く、このようにして得られたガラス塊410の下面は、受け型403の形状にほぼ倣った形をしている。
【0259】
すなわち、このようにして得られたガラス塊410は、外観・形状ともに優れており、光学素子成形用素材として大変適している。
次に、本実施形態のより具体的な実施例について、具体的に述べる。
白金製のガラス溶融るつぼ(図示せず)の中で溶融された光学ガラスは、溶融るつぼの下部に接続された白金製の溶融ガラス流出パイプ401を通って、液滴状に流出している。この流出されている溶融ガラス流402の温度は1000℃である。
【0260】
受け型403は、多孔質のカーボンからなっており、この気孔率は30%であり、平均孔径15μmの細孔が開いている。この多孔質の受け型403の受け面は、半径15mmの球面に加工されている。受け型403の下部および側面は、ステンレス製の受け型保持部材404で囲まれている。そして、受け型403の下面と受け型保持部材404の間には、ガス供給室405となる空間部が設けられている。
【0261】
そして、このガス供給室405には、低温ガス供給管406と高温ガス供給管407の2種類のガス供給管が、受け型保持部材404を通って接続されている。低温ガス供給管406はステンレスのパイプからなっており、この低温ガス供給管406を通って、室温の窒素ガスがガス供給室405に供給される。高温ガス供給管407は、ステンレスのパイプの中に白金製の巻線ヒータ408が設置されており、このステンレスのパイプと白金巻線ヒータ408の間には、絶縁のため石英ガラスのパイプ(図示せず)が設置されている。この高温ガス供給管407の中に室温の窒素ガスを供給すると、この高温ガス供給管407の中を通過する間に、窒素ガスは加熱された白金巻線ヒータ408により加熱され、高温のガスがガス供給室405の中に供給される。
【0262】
本実施形態において、低温ガス供給管406はガス供給室405の中心部に1本設置されており、高温ガス供給管407は、低温ガス供給管406の回りに円周上に6本設置されている。
ガス流量調整バルブ409は、低温ガス供給管406および6本の高温ガス供給管407の全てに設けられている。このガス流量調整バルブ409により、ガス流量を予め設定された値から流量0まで連続的に制御することが可能である。本実施形態においては、低温ガス供給管406では最大5リットル/分の流量の窒素ガスを流すことができ、また、高温ガス供給管407では、各1本につき、最大1リットル/分の流量の500℃の温度の高温の窒素ガスを流すことができるように、ガス流量調整バルブ409は設定されている。
【0263】
そして、受け型403と一体になっている受け型保持部材404と低温ガス供給管406と高温ガス供給管407は、上下に位置制御可能な上下駆動装置(図示せず)に連結されており、上下動できるようになっている。
次に、この装置を使ってガラス塊410を得る工程の具体的な様子を、図18乃至図21を用いて説明する。
【0264】
図18は、溶融ガラス流402を受け型403に受け始める直前の様子を示している。この時、受け型403は、溶融ガラス流出パイプ401の出口の下方10mmの位置まで上昇し停止している。この時、低温ガス供給管406および6本の高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409は、全て全開になっている。従って、低温ガス供給管406から5リットル/分の流量の室温の窒素ガスが、6本の高温ガス供給管407から合計6リットル/分の流量の500℃の窒素ガスが、ガス供給室405の中に供給されている。この低温ガスと高温ガスはガス供給室405の中で混合され、このガスは多孔質の受け型403の細孔を通って受け面に噴出している。この時、受け面から噴出しているガスの温度は、300℃であった。なお、本実施形態では、受け型保持部材404の中には加熱用のヒータは設置されていない。
【0265】
図19は、溶融ガラス流402がさらに流出した時の様子を示している。この時、溶融ガラス402の先端部は、多孔質の受け型403の受け面に近接しているが、受け面からガスが噴出しているので、溶融ガラス流402の先端部と多孔質の受け型403の受け面とが接触することは無い。なお、この時も、低温ガス供給管406および6本の高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409は、全て全開になっている。なお、図19はゴブ受け開始、すなわち、図18の状態から、1秒後の様子を示している。
【0266】
図20は、溶融ガラス流402がさらに流出し、溶融ガラスが受け型403の上に溜まっている状態の様子を示している。この時、低温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409を連続的に閉じつつある。ガス流量バルブ409を閉じ始めたのは、ゴブ受け開始後2秒後からであり、その後3秒かけて、ガス流量バルブ409を連続的に徐々に閉じた。更に、ゴブ受け開始後7秒後に、受け型403の上に溜まった溶融ガラスの重量が所望の値になったので、受け型403を下方へ5mm下降させ、その状態で1秒保持する間に、溶融ガラス流を括れさせ、さらに自然切断し、溶融ガラス塊410を得た。
【0267】
この時、ガス供給室405には高温ガス供給管から高温のガスが供給されており、この高温のガスが受け型403から噴出しており、このガスによりガラス塊410は浮上保持されている。この状態を図21に示す。この時、受け型403の受け面から噴出しているガスの温度は400℃であった、このようにして得られたガラス塊410は、その重量が2.5gであり、その下面に凹み等は無く、上下面とも滑らかな自由表面からなっており、受け型403との接触痕等は無いので、光学素子成形用素材として大変適している。
【0268】
本実施形態特有の効果として、外観・形状ともに優れており、光学素子成形用素材として大変適しているガラス塊を、溶融ガラス流から得るための最適な成形条件を、ガス温度、ガス流量、低温ガス流停止タイミングの組み合わせから、容易に求めることができる点がある。従って、所望とするガラス塊の大きさや形状、また、ガラスの種類が異なった場合も、その最適成形条件を、容易に素早く求めることができる。
【0269】
(第24の実施形態)
第24の実施形態では、光学素子成形用素材として適したガラス塊を、溶融ガラス流から得る方法について説明する。
図22は、本発明の第24の実施形態であるガラス塊の製造において用いた、受け型の構成を説明する図である。
【0270】
図22において、401は溶融ガラス流出パイプ、402は溶融ガラス流、403は多孔質の受け型、404は多孔質の受け型403を保持している受け型保持ブロック、406は低温のガスを供給するための低温ガス供給管、407は高温のガスを供給するための高温ガス供給管、408は高温ガス供給管407の内部に設けられたガス加熱用の白金巻線ヒータ、409は低温ガス供給管406および高温ガス供給管407の途中に設けられたガス流量調整バルブである。また411は多孔質の受け型403の背面に位置し型保持ブロック404により囲まれているガス供給室を中心部分と外周部分との2つの空間に分割するための隔壁であり、412は隔壁411により分割された中心部ガス供給室であり、413は隔壁411により分割された外周部ガス供給室である。中心部ガス供給室412には、低温ガス供給管406と高温ガス供給管407が接続されている。また、外周部ガス供給室413には、高温ガス供給管407が接続されている。
【0271】
図23乃至図26は、本第24の実施形態である溶融ガラス塊の製造工程を、順次説明する図である。これらの図を用いて、本実施形態における動作を説明する。
ガラス溶融るつぼ(図示せず)の内部で溶融されたガラスは、ガラス溶融るつぼの下部に設置された溶融ガラス流出パイプ1を通って流出してくる。
【0272】
溶融ガラス流を受け型に受ける工程の初期段階において、図23に示すように、溶融ガラス流402の先端は、多孔質の受け型403の上方の位置にある。この時、中心部ガス供給室412に接続された低温ガス供給管406のガス流量調整バルブ409は開かれており、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409は閉められている。また、外周部ガス供給室413に接続された高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409も開かれている。従って、中心部ガス供給室412には低温のガスが供給され、外周部ガス供給室413には高温のガスが供給され、これらのガスが、多孔質の受け型403の細孔を通って、受け型403の受け面に噴出している。その結果、受け型403の受け面の中心部からは低温のガスが噴出しており、外周部からは高温のガスが噴出している。
【0273】
更に、溶融ガラス流402の流出が進み、溶融ガラス流402の先端部の下降が進むと、図24に示すように、溶融ガラス流402の先端部が多孔質の受け型403の受け面に接近した状態になる。しかし、この時、多孔質の受け型403の受け面からガスが噴出しているので、溶融ガラス流402の先端部と多孔質の受け型403とが接触することは無い。なお、この時、中心部ガス供給室412に接続された低温ガス供給管406とガス流量調整バルブ409を閉じ始め、反対に、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409を開け始めている。
【0274】
さらに溶融ガラス流402の流出が進むと、図25に示すように、溶融ガラス流402が多孔質の受け型403の上に溜り始める。この状態で、中心部ガス供給室412に接続された低温ガス供給管406のガス流量調整バルブ409は閉じられ、逆に、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409が開けられている。すると、中心部ガス供給室412に供給されるガスの温度は上がるので、多孔質の受け型403の受け面の中心部から噴出しているガスの温度が上がる。
【0275】
そして、受け型403の上に溜った溶融ガラスの重量が所望の値になった後、受け型403を下方へ下降させ、溶融ガラスを括れさせ、自然切断させ、溶融ガラス塊410を得る。この状態を図26に示す。この時、多孔質の受け型403の受け面から噴出している高温のガスにより溶融ガラス塊410は浮上している。
【0276】
このようにして得られたガラス塊410は、常に受け型403から浮上した状態であるので、その上下面とも自由表面からなっており、非常に滑らかである。また、ガラス塊410には、受け型403との接触痕もない。更に、ガラス塊の製造工程に最適な温度条件のガスで、ガラス塊410を浮上させているので、ガラス塊の下面が噴出ガスにより持ち上げられ凹んだ状態で固化することは無く、このようにして得られたガラス塊410の下面は、受け型403の形状にほぼ倣った形をしている。
【0277】
すなわち、このようにして得られたガラス塊410は、外観・形状ともに優れており、光学素子成形用素材として大変適している。
次に、本実施形態のより具体的な実施形態について、具体的に述べる。
白金製のガラス溶融るつぼ(図示せず)の中で溶融された光学ガラスは、溶融るつぼの下部に接続された白金製の溶融ガラス流出パイプ401を通って、液滴状に流出している。この流出されている溶融ガラス流402の温度は1000℃である。
【0278】
受け型403は、多孔質のカーボンからなっており、この気孔率は30%であり、平均孔径15μmの細孔が開いている。この多孔質の受け型403の受け面は、半径15mmの球面に加工されている。受け型403の下部および側面は、ステンレス製の受け型保持部材404で囲まれている。そして、受け型403の下面と受け型保持部材404の間には、ガス供給室405となる空間部が設けられている。
【0279】
このガス供給室は、その内部に設けられたステンレス製の円筒状の隔壁411により中心部ガス供給室412と外周部ガス供給室413の2つに分割されている。
中心部ガス供給室412には、低温ガス供給管406と高温ガス供給管407の2種類のガス供給管が接続されている。また、外周部ガス供給室413には、高温ガス供給管407が接続されている。低温ガス供給管406はステンレスのパイプからなっており、この低温ガス供給管406を通って、室温の窒素ガスがガス供給室に供給される。高温ガス供給管407は、ステンレスのパイプの中に白金製の巻線ヒータ408が設置されており、このステンレスのパイプと白金巻線ヒータ408の間には、絶縁のため石英ガラスのパイプ(図示せず)が設置されている。この高温ガス供給管407の中に室温の窒素ガスを供給すると、この高温ガス供給管407の中を通過する間に、窒素ガスは加熱された白金巻線ヒータ408により加熱され、高温のガスがガス供給室の中に供給される。
【0280】
本実施形態において、中心部ガス供給室412は、低温ガス供給管406と高温ガス供給管407が各1本ずつ接続されている。また、周辺部ガス供給室413には、円周上に6本の高温ガス供給管407が設置されている。
ガス流量調整バルブ409は、低温ガス供給管406および6本の高温ガス供給管407の全てに設けられている。このガス流量調整バルブ409により、ガス流量を予め設定された値から流量0まで連続的に制御することが可能である。本実施形態においては、低温ガス供給管406では最大5リットル/分の流量の窒素ガスを流すことができ、また、高温ガス供給管407では、各1本につき、最大1リットル/分の流量の500℃の温度の高温の窒素ガスを流すことができるように、ガス流量調整バルブ409は設定されている。
【0281】
そして、受け型403と一体になっている受け型保持部材404と低温ガス供給管406と高温ガス供給管407は、上下に位置制御可能な上下駆動装置(図示せず)に連結されており、上下動できるようになっている。
次に、この装置を使って溶融ガラス塊410を得る工程の具体的な様子を、図23乃至図26を用いて説明する。
【0282】
図23は、溶融ガラス流402を受け型403に受け始める直前の様子を示している。この時、受け型403は、溶融ガラス流出パイプ401の出口の下方10mmの位置まで上昇し停止している。この時、中心部ガス供給室412に接続されている低温ガス供給管406と、外周部ガス供給室413接続されている高温ガス供給管406は、全て全開になっている。従って、中心部ガス供給室412へ低温ガス供給管406から5リットル/分の流量の室温の窒素ガスが、周辺部ガス供給室413へ6本の高温ガス供給管407から合計6リットル/分の流量の500℃の窒素ガスが、供給されている。このガスは多孔質の受け型403の細孔を通って受け面に噴出している。この時、受け面から噴出しているガスの温度は、中心部で150℃、外周部で400℃であった。なお、本実施形態では、受け型保持部材404の中には加熱用のヒータは設置されていない。
【0283】
図24は、溶融ガラス流402がさらに流出した時の様子を示している。この時、溶融ガラス402の先端部は、多孔質の受け型403の受け面に近接しているが、受け面からガスが噴出しているので、溶融ガラス流402の先端部と多孔質の受け型403の受け面とが接触することは無い。なお、この時、中心部ガス供給室412に接続されている低温ガス供給管406のガス流量調整バルブ409は、閉じ始めており、逆に高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409は、開き始めている。これらのガス流量調整バルブ409の開度調整は、ゴブ受け開始、すなわち、図23の状態から、1秒後から行なわれ、その後3秒かけて、低温ガス供給管406のガス流量調整バルブ409を閉じるとともに、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409を全開にした。なお、この間、外周部ガス供給室413に供給されている高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409は全開のままである。なお、図24は、ゴブ受け開始後、1.5秒後の様子を示している。
【0284】
図25は、溶融ガラス流402がさらに流出し、溶融ガラスが受け型403の上に溜まっている状態の様子を示している。この時、中心部ガス供給室412には1リットル/分の流量の500℃の窒素ガスが、外周部ガス供給室413には6リットル/分の流量の500℃の窒素ガスが、供給されている。ゴブ受け開始後8秒後に、受け型3の上に溜まった溶融ガラスの重量が所望の値になったので、受け型403を下方へ5mm下降させ、その状態で1秒保持する間に、溶融ガラス流を括れさせ、さらに自然切断し、溶融ガラス塊410を得た。
【0285】
この時、ガス供給室には高温ガス管407から高温のガスが供給されており、この高温のガスが受け型403から噴出しており、このガスによりガラス塊410は浮上保持されている。この状態を図26に示す。この時、受け型403の受け面から噴出しているガスの温度は400℃であった、このようにして得られたガラス塊410は、その重量が2.7gであり、その下面に凹み等は無く、上下面とも滑らかな自由表面からなっており、受け型403との接触痕等は無いので、光学素子成形用素材として大変適している。
【0286】
本実施形態特有の効果として、外観・形状ともに優れており、光学素子成形用素材として大変適しているガラス塊を、溶融ガラス流から得るための最適な成形条件を、中心部ガス供給室と外周部ガス供給室に供給するガスの、ガス温度、ガス流量、低温ガス流停止タイミングの組み合わせから、第27の実施形態に比べより容易に求めることができる点がある。従って、所望とするガラス塊の大きさや形状、また、ガラスの種類が異なった場合も、その最適成形条件を、第27の実施形態に比べより容易に素早く求めることができる。
【0287】
(第25の実施形態)
第25の実施形態では、光学素子成形用素材として適した成形ガラス塊を、プレス成形して得る方法について説明する。
図27は、第25の実施形態である成形ガラス塊の製造において用いた、成形型の構成を説明する図である。
【0288】
図27において、406は低温のガスを供給するための低温ガス供給管、407は高温のガスを供給するための高温ガス供給管、408は高温ガス供給管407の内部に設けられたガス加熱用の白金線ヒータ、409は低温ガス供給管406および高温ガス供給管407の途中に設けられたガス流量調整バルブである。414は多孔質の成形型、415は多孔質の成形型414を保持している成形型保持ブロックであり、405は多孔質の成形型414の背面に位置し成形型保持ブロックで囲まれている供給室である。低温ガス供給管406と高温ガス供給管407はガス供給室405に接続されている。また、416は成形用下型であり、417は予め用意されたガラス塊である。
【0289】
図28乃至図32は、第25の実施形態である成形ガラス塊の製造工程を、順次説明する図である。これらの図を用いて、本実施形態における動作を説明する。
ガラス塊417は、実施形態27,28に記載したような方法で予め製造され、用意されている。従って、本実施形態によるガラス塊の製造工程の初期段階において、このガラス塊417は比較的低温の状態にある。
【0290】
ガラス塊を成形する工程の初期段階において、図27に示すように、予め用意されたガラス塊417は、成形用下型416の上に乗せられている。この時、成形用下型416は所望の温度に加熱されている。この時、多孔質の成形型414は、ガラス塊417の上方の位置にある。この時、低温ガス供給管406のガス流量調整バルブ409は閉じられており、一方、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409は開かれている。そして、高温のガスがガス供給室405の内部に供給され、この高温のガスが多孔質の成形型414の細孔を通って、成形型414の成形面に噴出している。
【0291】
続いて、この高温のガスが成形面から噴出している状態の成形型414を、図28に示すように、ガラス塊417の上面に近接した位置まで下降する。この状態で、成形面から噴出している高温のガスにより、ガラス塊417は熱変形可能な温度まで加熱される。
その後、成形型414を微速で下降させる。この間、成形面からは高温のガスが噴出しているので、成形型414の成形面とガラス塊417の上面とが接触することは無い。この時の様子を図29に示す。
【0292】
更に、成形型414の下降が進むと、図30に示すように、成形型保持ブロック415と下型416が接触し、ガラス塊417のプレス変形が終了する。なお、ガラス塊417をプレス成形する工程の間、成形面から高温ガスが噴射しているので、成形型414とガラス塊417が接触することは無い。
ガラス塊417のプレス変形が終了した後、そのままの状態で、図31に示すように、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409を閉じ始め、逆に、低温ガス供給管406のガス流量調整バルブを開け始めた。
【0293】
更に、図32に示すように、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブを閉め、低温ガス供給管406から低温のガスをガス供給室へ供給し、低温ガスを成形面から噴出している状態で、プレス成形された成形ガラス塊418を冷却した。
そして、取り出し可能な温度まで成形ガラス塊418を冷却した後、成形ガラス塊418を取り出した。
【0294】
このようにして得られた成形ガラス418は、その成形に先立って行う再加熱を、多孔質の成形型から噴射する高温のガスによって行うので、速い時間で成形可能な温度まで到達することができ、特に、予め用意されたガラス塊417の温度が十分に高い場合、成形に先立って行う再加熱の時間はほとんど不要になり、多孔質の成形型414の成形面から高温のガスを噴出した状態で、直ちに、ガラス塊417をプレス成形することが可能になる。また本実施形態により、成形型から噴射している高温のガスによりガラス塊417を加熱する場合、ガラス塊417の下面が過剰に加熱されることは無く、従って、ガラス塊417の下面と下型416とが融着することは無い。また、このようにして得られた成形ガラス塊418の上面は、プレス成形中、常に、成形型414から噴出しているガスにより非接触状態に保たれているので、非常に滑らかである。
【0295】
このようにして得られた成形ガラス塊418は、その上面は滑らかな自由表面であり、また、その下面は融着することも無く、このような外観精度に優れ、所望する形状となっている。
このようにして得られた成形ガラス塊418は、所望の成形光学素子に近似した形状をしているので、この成形ガラス塊418を光学素子成形用素材として用いると、成形時間が短くなる点、成形時に成形型に付けられている離型作用を有する薄膜を剥離されることが無くなる点等の利点がある。
【0296】
次に、本実施形態のより具体的な実施形態について、具体的に述べる。
成形型414は、多孔質の炭素珪素(SiC)からなっており、この気孔率は20%であり、平均孔径5μmである。この多孔質の成形型414の成形面は、半径10mmの球面に加工されている。成形型414の上部および側面は、ステンレス製の成形型保持部材415で囲まれている。そして、成形型414の上面と成形型保持部材415の間には、ガス供給室405となる空間部が設けられている。また、成形型保持部材415の中には加熱用のカートリッジヒータ(図示せず)が設置されている。
【0297】
そして、このガス供給室405には、低温ガス供給管406と高温ガス供給管407の2種類のガス供給管が、成形型保持部材415を通って接続されている。低温ガス供給管406はステンレスのパイプからなっており、この低温ガス供給管406を通って、室温の窒素ガスがガス供給室405に供給される。高温ガス供給管407は、ステンレスのパイプの中に白金製の巻線ヒータ408が設置されており、このステンレスのパイプと白金巻線ヒータ408の間には、絶縁のため石英ガラスのパイプ(図示せず)が設置されている。この高温ガス供給管407の中に室温の窒素ガスを供給すると、この高温ガス供給管407の中を通過する間に、窒素ガスは加熱された白金巻線ヒータ408により加熱され、高温のガスがガス供給室405の中に供給される。
【0298】
本実施形態において、低温ガス供給管406はガス供給室405の中に円周上に4本設置されており、高温ガス供給管407は、低温ガス供給管406と交互に円周上に4本設置されている。
ガス流量調整バルブ409は、低温ガス供給管406および高温ガス供給管407の全てに設けられている。このガス流量調整バルブ409により、ガス流量を予め設定された値から流量0まで連続的に制御することが可能である。本実施形態においては、低温ガス供給管406では、各1本につき、最大5リットル/分の流量の窒素ガスを流すことができ、また、高温ガス供給管407では、1本につき、最大5リットル/分の流量の900℃の温度の高温の窒素ガスを流すことができるように、ガス流量調整バルブ409は設定されている。
【0299】
そして、成形型414と一体になっている成形型保持部材415と低温ガス供給管406と高温ガス供給管407は、上下に位置制御可能な上下駆動装置(図示せず)に連結されており、上下動できるようになっている。
また、下型416は、カーボン材料で作られており、その成形面は半径30mmの球面に加工されている。そして、この下型416の内部には、加熱用のカートリッジヒータ(図示せず)が設置されている。
【0300】
次に、この装置を使って成形ガラス塊418を得る工程の具体的な様子を、図27乃至図32を用いて説明する。
図27は、成形工程の初期状態を示す。この時、ガラス塊217は、別の装置(図示せず)より溶融ガラス流から得られたガラス塊を、直ちにこの下型216の中に搬送したので、300℃の温度であった。そして、下型416は、内蔵するカートリッジヒータ(図示せず)により、常時400℃に加熱されている。一方、成形型保持ブロック415は内蔵するカートリッジヒータ(図示せず)により、常時600℃に加熱されている。そして、4本の高温ガス供給管407からは、合計20リットル/分の流量の900℃の高温の窒素ガスがガス供給室405の中に供給されている。そして、この高温ガスは、多孔質の成形型414の細孔を通って成形面から噴出している。この成形面から噴出しているガスの温度は700℃であった。
【0301】
ガラス塊417を下型416の上に載せた後、高温のガスが噴出している状態の成形型414を下降させ、図28に示すように、ガラス塊417の上面に接近した位置で保持した。この状態で20秒保持したところ、ガラス塊417は熱変形可能な温度まで加熱された。なお、この時のガラス塊417の温度は、上面が700℃、中央部600℃、下面が550℃であった。
【0302】
その後、直ちに、成形型414を下降させ始めた。下降速度は、0.2mm/秒であった。この時、成形型414の成形面からは高温のガスが噴出しているので、成形型414とガラス塊417が接触することは無い。このように、ガラス塊417をプレス成形している途中の様子を図29に示す。
成形型414を下降させ始めてから25秒後に、図30に示すように、成形型保持ブロック415と下型416とが突き当たり、ガラス塊417のプレス成形が完了した。
【0303】
その後、直ちに、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409を閉じ始めると同時に、低温ガス供給管406のガス流量調整バルブ409を開き始めた。図31にこの様子を示す。1秒後に、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409は完全に閉じられた。また、低温ガス供給管406のガス流量調整バルブ409は10秒かけて全開にした。図32にこの様子を示す。この間、成形型414の成形面から噴出しているガスの温度は下がるので、成形ガラス塊418は冷却される。更に、5秒冷却した時、成形ガラス塊418は取り出し可能な温度になったので、成形型414を上昇し、成形ガラス塊418を取り出した。
【0304】
このようにして得られた成形ガラス塊418は、その上面は自由表面からなっており成形型414との接触痕は無く、また、その下面は、下型416との融着は無く、滑らかであり、凹メニスカス形状のレンズを成形するための光学素子成形用素材として大変適している。
本実施形態特有の効果として、外観精度が優れており、所望の光学素子形状に近似した形状の、光学素子成形用素材として大変適している成形ガラス塊を、予め用意されたガラス塊を加熱して得るに際して、成形型から噴出するガスの温度を制御することにより、効率的な加熱冷却が可能なので、加熱および冷却に要する時間が非常に短くなり、成形時間の大幅短縮が可能になる。
【0305】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、受け型から噴出しているガスの温度を制御することにより、光学素子成形用素材として適した、下面に凹みの無いガラス塊を、容易にかつ確実に製造することができる。
また、成形型から噴出しているガスの温度を制御することにより、ガラス塊をプレス成形して所望の形状の成形ガラス塊を得る方法において、加熱および冷却に要する時間を短くすることができる。
【0306】
また、受け型から噴出しているガスの温度をより正確かつ素早く制御することにより、光学素子成形用素材として適した、下面の凹みの無いガラス塊を、より容易にかつ確実に製造することができる。
また、成形型から噴出しているガスの温度をより正確かつ素早く制御することにより、ガラス塊をプレス成形し所望の形状の成形ガラス塊を得る方法において、加熱および冷却に要する時間をより短くすることができる。
【0307】
上記の第23乃至第25の実施形態をまとめると、第29の方法においては、溶融ガラス塊製造工程において、その時間毎に所望される最適の温度のガスを多孔質の受け型の受け面から噴出するために、多孔質の受け型の背面に所望する異なった温度のガスを供給し、この所望の温度のガスを多孔質の受け型の受け面から噴出させる。
【0308】
多孔質の受け型の受け面から噴出するガスの温度を、経時的に所望の温度に制御するためには、受け型の背面に供給されるガスの温度を経時的に消耗の温度に制御することが、制御性が良く、受け型から噴出するガスの温度を短い時間で所望の温度に制御できるので望ましい。このとき、受け型の細孔を通過する間にガスの温度が下がるので、受け型の背面に供給されるガスの温度は、受け型の受け面から噴出するガスの所望の温度に比べ、高くすることが好ましい。
【0309】
なお、多孔質の受け型から噴出するガスの温度を制御する他の方法として、受け型の背面に供給するガスの温度を常時一定にし、受け型を保持する型ホルダーにヒータを内蔵し、このヒータにより型ホルダーの温度を制御し、それにより多孔質の受け型の温度を制御し、この多孔質の受け型の細孔を通過する噴出ガスの温度を制御する方法もある。しかし、この方法では、多孔質の受け型の熱伝導率が小さいため温度の追従性が悪く、本実施形態に比べ制御性が極めて悪い。
【0310】
このようにして、多孔質の受け型の受け面から噴出するガスの温度を、経時的に所望の温度に制御した場合、この受け型の上に受けられたガラス塊の下面には凹みは無く、光学素子成形用素材として優れた外観形状を有している。
なお、多孔質の受け型の受け面から噴出するガスの温度の経時的な制御としては、溶融ガラス流を受け型に受け始める初期の段階で、ガスの温度を低くし、その後、ガスの温度を高くすることが望ましい。このようにガス温度を制御することにより、溶融ガラスと受け型が接触すること無く、また、下面に凹みの無いガラス塊を、容易に、かつ、確実に得ることができる。
【0311】
なぜならば、初期の段階でガスの温度を低くすることにより、溶融ガラスと受け型が接触することを防止し、また、その後、ガスの温度を高くすることにより、ガラス塊の冷却速度が遅くなるので、下面が凹んだ状態でガラス塊が固化することを防止でき、ガラス塊の下面がその自重で下方に変形し、受け型の面の形状にほぼ倣った形になった後、固化することができるからである。
【0312】
また、第30の方法においては、ガラス塊製造工程において、その時間毎に所望される最適の温度のガスを多孔質の成形型の成形面から噴出するために、多孔質の成形型の背面に所望する異なった温度のガスを供給し、この所望の温度のガスを多孔質の成形型の成形面から噴出させる。
多孔質の成形型の成形面から噴出するガスの温度を、経時的に所望の温度に制御するためには、成形型の背面に供給されるガスの温度を経時的に所望の温度に制御することが、制御性が良く、成形型から噴出するガスの温度を短い時間で所望の温度に制御できるので望ましい。このとき、成形型の細孔を通過する間にガスの温度が下がるので、成形型の背面に供給されるガスの温度は、成形型の成形面から噴出するガスの所望の温度に比べ、高くすることが望ましい。
【0313】
このようにして、多孔質の成形型の成形面から噴出するガスの温度を、経時的に所望の温度に制御した場合、多孔質の成形型でガラス塊をプレス成形するに先立って行う、ガラス塊を再加熱する工程を、大幅に短縮、または、削減できる。なお、多孔質の成形型の成形面から噴出するガスの温度の経時的な制御としては、ガラス塊をプレス成形し始める初期の段階で、ガスの温度を高くし、その後、ガスの温度を低くすることが望ましい。このようにガス温度を制御することにより、ガラス塊を再加熱する工程を、大幅に短縮、または、削減できる。
【0314】
なぜならば、ガラス塊をプレス成形し始める初期の段階で、多孔質の成形型から噴出するガスの温度を高くすることにより、ガラス塊上部の部分を熱変形可能な温度まで、短い時間で上げることができる。この時、ガラス塊の温度が前もって十分高ければ、この工程に先立ってガラス塊を再加熱する工程は不要となる。また、そうで無い場合も、短時間の再加熱を行えば、その後の多孔質の成形型から噴出される高温のガスにより、ガラス塊上部を熱変形可能な温度まで短い時間で上げることができるからである。
【0315】
また、多孔質の成形型から噴出される高温のガスにより、ガラス塊の上部を熱変形可能な温度まで加熱する時、このガスによりガラス塊の反対側の部分が過剰に加熱されることは無い。従って、この加熱によりガラス塊が反対側の下型と融着することは無い。そのため、多孔質の成形型から噴出される高温のガスにより、ガラス塊を加熱する場合、ガラス塊を急加熱しても融着しないので、加熱に要する時間を短くできる。
【0316】
また、第31の方法においては、その時間毎に所望される最適の温度のガスを多孔質の受け型の受け面から噴出するために、多孔質の受け型の背面に所望する異なった温度のガスを供給し、この所望の温度のガスを多孔質の受け型の受け面から噴出させる。
この時、溶融ガラス塊製造工程の時間毎に所望される異なった温度のガスを、多孔質の受け型の背面に供給するために、受け型の背面に設置された、異なった温度のガスを供給できる複数のガス供給管のうちから適切なガス供給管を選択し、所望の温度のガスを多孔質の受け型の背面に供給することにより、所望の温度のガスを所望の時間に遅れることなく得ることができる。
【0317】
なぜならば、異なった温度のガスを供給できる複数のガス供給管のうちから適切なガス供給管を選択し、温度の異なったガスを混合することにより、瞬時に、所望とする温度のガスを得ることができる。
例えば、ガス温度を高くする場合は、次のようにする。先ず、最初、低温と高温の2つの温度を含む複数のガス供給管からガスを供給し、それらを混合し、低温のガスを多孔質の受け型の背面に供給する。次に、低温のガス供給管からの低温ガス供給を停止する。すると、多孔質の受け型の背面に供給されるガスの温度は直ちに上昇する。逆に、ガスの温度を低くする場合は、最初、低温のガス供給管からはガスが供給されていない状態で、高温のガスを多孔質の受け型の背面に供給する。次に、低温ガス供給管から低温ガスを供給する。すると、多孔質の受け型の背面に供給されている混合されたガスの温度が直ちに下がる。
【0318】
このように、多孔質の受け型の背面に設置された複数のガス供給管のうちから適切なガス供給管を選択し、所望の温度のガスを多孔質の受け型の背面に供給することにより、所望の温度のガスを所望の時間に遅れることなく得ることができる。
なお、この時のガス供給管の選択切替は、瞬間的に断続的に行っても、連続的に行っても良く、後者の方が、より精度の高いガス温度コントロールが可能となる。また、選択切替するガス供給管の本数は、1本に限らず複数本でも良く、その場合、これらのガス供給管の選択切替のタイミングは、各々のガス供給管毎に異なっていても良い。
【0319】
なお、多孔質の受け型の背面に供給するガスの温度を変える手段として、受け型の背面に設置された唯一のガス供給管の内部に加熱用のヒータを設け、このヒータの出力を調整することにより、供給ガスの温度を変える手段が従来から知られている。しかし、この方法では、ガスの温度を瞬時に所望の温度に制御することはできない。なぜならば、この方法では、ヒータの温度を所望の温度にし、さらに、ヒータからの熱伝達によりガスの温度を所望の温度にするのに時間がかかるためである。
【0320】
一方、本方法では、ガスの温度を瞬時に所望の温度にすることができる。従って、溶融ガラス塊を製造する工程において、最適の噴出ガスの温度制御が可能になるので、得られたガラス塊の下面には凹みは無く、光学素子成形用素材として優れた外観形状を有している。
また、第32の方法においては、その時間ごとに所望される最適の温度のガスを多孔質の成形型の成形面から噴出するために、多孔質の成形型の背面に所望する異なった温度のガスを供給し、この所望の温度のガスを多孔質の成形型の成形面から噴出させる。
【0321】
この時、成形ガラス塊製造工程の時間毎に所望される異なった温度のガスを、多孔質の成形型の背面に供給するために、成形型の背面に設置された、異なった温度のガスを供給できる複数のガス供給管のうちから適切なガス供給管を選択し、所望の温度のガスを多孔質の成形型の背面に供給することにより、所望の温度のガスを所望の時間に遅れることなく得ることができる。
【0322】
このように、本方法では、ガスの温度を瞬時に所望の温度にすることができる。従って、成形ガラス塊を製造する工程において、最適の噴出ガスの温度制御が可能になるので、多孔質の成形型でガラス塊をプレス成形するに先立って行う、ガラス塊を再加熱する工程を、大幅に短縮、または、削減できる。
(第26の実施形態)
図33は第26の実施形態に係わる光学素子成形用ガラス素材の作製方法を示す概略図である。
【0323】
図33(a)で501は図34に組成を示すガラス素材であり、所要の体積になるように直方体に切断されている。502はガラス素材の上面を形成するための多孔質カーボン材で高温ガスを吹き出す面502aはR50に加工されている。503,504はガラス素材の下面を形成するための多孔質カーボン材で高温ガス(後の成形において非酸化状態である必要があり、本実施形態ではN2を用いている)を吹き出す面503a、504aはR28に加工されている。ここで下面を形成する多孔質カーボン材を503,504と2分割にしているのは後の成形においてガラス素材を下に落とし、型に投入するためである。505,506は高温ガスを密閉するための外枠であり506は多孔質カーボン材と同様に2分割されている。507,508,509は高温ガスを導入するパイプであり、不図示の加熱装置から高温ガスが送られていくる。
【0324】
ここで高温ガスをこのガラスの粘度で106dPa・sである740℃に設定し、30リットル/分の流量で高温ガスを吹き出し、図33(b)に示すように変形させた。図33(b)で510は高温ガス、511は変形したガラス素材である。2分後、上面形成用の多孔質カーボン材502をガラス素材から遠ざけ下面形成用の多孔質カーボン材503,504から吹き出す高温ガスの流量を2リットル/分に絞った。これは吹き出す時間とガラス素材の肉厚の関係をとると、2分後に所要の肉厚8.7mmに達しており、ここで変形を抑えるために上面形成用の多孔質カーボン材502を遠ざけ、保持するに足りる流量だけ下面形成用の多孔質カーボン材503,504から高温ガスを吹き出した。また2分間の変形中、上面形成用の多孔質カーボン材502は吹き出し時間と変形量の関係から徐々に下に移動させている。
【0325】
この方法で作製したガラス素材の表面粗さを測定すると、熱変形前の切断されたブロック材ではRmaxで1μm以上あったのが0.02μmmになり、成形用のガラス素材の仕様を満たしていた。
比較例として高温ガスの温度を変化させた時の状況を図35に示す。先ず、ガラスの粘度で104.5dPa・sに相当する温度840℃に設定した時には変形が急であり流量を絞っても自重により変形が進んでしまい、図35に示すように多孔質カーボン材の外まで変形してしまう。これはガラスの粘度で105dPa・sに相当する温度800℃以下であれば高温ガスの流量を絞ることにより発生しない。逆に高温ガスの温度をガラスの粘度で108.5dPa・sに相当する温度655℃に設定した時には変形が非常に遅く所要の形状になるのに数十分を要し、表面粗さもRmaxで0.04μm以下にならなかった。しかし、ガラスの粘度で108dPa・sに相当する温度675℃以上であれば変形も数分で完了し、表面粗さもRmaxで0.04μm以下になり、ガラス素材の仕様を満たす。
【0326】
このガラス素材をプレス成形して光学素子を成形する方法を図36を用いて説明する。図36において512はレンズの上面を形成するための上型で、ガラスと接触する面512aはR54に研磨してある。513はレンズの下面を形成するための下型で、ガラスと接触する面513aはR30に研磨してある。514は上下型の軸を合わせるための胴型である。図36(a)に示すようにガラス素材を浮上させた状態で下型513の真上に持ってゆき、図36(b)に示すように多孔質カーボン部材を左右に開き下型上にガラス素材を落とす。この時、上下型はこのガラスの粘度で1012dPa・sに相当する570℃に不図示の加熱装置で調温してある。その後、多孔質カーボン材を胴型外へ出し、図36(c)のように上型を下降させプレスする。プレスはガラス素材の中心部から接触変形するようになっており、ガス残りは発生しない。プレス変形は上型のツバ部512bが胴型の上部514aに突き当たった時点で終了する。この方法で作製したレンズはフィゾー干渉計によるとアス及びクセがニュートンリング0.5本以下の良好な形状精度を有していた。型の温度をこのガラスの粘度で1013dPa・sより大きく(低温)したものは変形が完了するまでにガラスの温度が下がってしまい押し切らなかったり、レンズ表面がしわ状になる不良が発生した。逆に型の温度をこのガラスの粘度で1010dPa・sより小さく(高温)したものはプレス完了後すぐに取り出すと自重や取り出し時の外力により変形してしまい形状精度が悪化したため1010dPa・sに相当する温度以下に冷却した後、取り出さなければならなかった。また、型も劣化が激しく耐久性が低下した。以上のように本実施形態によるガラス素材の作製方法とその後のプレス成形方法によれば、切断したガラスブロックから安価に所要の容積、形状、表面粗さを有したガラス素材を作成することができ、かつ成形時間の短縮と型の耐久性の向上が図れる。
【0327】
(第27の実施形態)
図37に示すように凹レンズ成形用のガラス素材を作製した。ガラスは第26の実施形態で用いたものと同じものである。高温ガスの温度をガラスの粘度で107dPa・sに相当する705℃にし、流量を35リットル/分に設定した。3分間吹き出すことにより所要の中心厚になった。3分間吹き出した時点で上面形成用の多孔質カーボン部材518からの高温ガスの温度をガラスの粘度で109.5dPa・sに相当する620℃に、流量を5リットル/分に変更し、下面形成用の多孔質カーボン部材519からの高温ガスの温度はそのまま705℃、流量を5リットル/分に変更した。2分後、高温ガスの吹き出しを止めると同時に上面形成用の多孔質カーボン部材518への高温ガス導入パイプ522から真空引きし、ガラス素材517を上面形成用の多孔質カーボン部材518に真空吸着した。吸着前に上面形成用の多孔質カーボン部材518からの高温ガスの温度を下げたのは、ガラス素材の温度が高いと変形しやすく真空吸着によるガラス素材517と多孔質カーボン部材518との接触面積が増えるため、この後の工程でガラスを下型上へ落下させるのが困難になるためである。
【0328】
真空吸着したまま、図38(a)に示すように下型の真上にガラス素材517を運び、図38(b)に示すように少しガスを吹き出すことにより、ガラス素材517を下型526上に落とす。この時上下型525,526はガラスの粘度で1010dPa・sに相当する600℃に調温してある。ここで528は、ガラス素材を下型の中心にセットするための位置決めピンである。その後、多孔質カーボン部材を胴型外へ出し、図38(c)の様に上型525を下降させプレスする。この時、位置決めピンは、プレス変形が開始するとガラス素材517から遠ざかる。
【0329】
この方法で作製したレンズはフィゾー干渉計によるとアス及びクセがニュートンリング0.5本以下の良好な形状精度を有していた。
以上のように本実施形態によるガラス素材の作製方法とその後のプレス成形方法によれば、切断したガラスブロックから安価に所要の容積、形状、表面粗さを有したガラス素材を作製することができ、かつ成形時間の短縮と型の耐久性の向上が図れる。
【0330】
また、ガラス素材の上下面に温度差を設けて、真空吸着によりガラス素材の搬送が可能となる。
(第28の実施形態)
図39に示すように凸メニスカスレンズ成形用のガラス素材531を作製した。ガラスは図40に組成を示すガラスを用いた。第26の実施形態と同様な方法でガラス素材531の作製及びプレス成形を行った。ただし条件としては高温ガスはガラスの粘度で106dPa・sに相当する温度740℃とし、3分間40リットル/分の流量で吹き付けた。光学素子成形用の上下型の温度はガラスの粘度で1012dPa・sに相当する温度にした。
【0331】
この方法で作製したレンズは形状精度としては、フィゾー干渉計により、アス及びクセがニュートンリング0.5本以下と良好であったが、下型の劣化が激しく成形品の曇耐久が100shot程度しかなかった。そこで、下型の劣化を抑えるために、ガラス素材の作製時、形状を形成した後、下面形成用の多孔質カーボンからの高温ガスをガラスの粘度で109.5dPa・sに相当する温度にして3分間保持した後下型へ投入した。すると下型の劣化はなくなり、2000shot成形後も成形品の曇りは発生しなかった。
【0332】
以上のように本実施形態によるガラス素材の作製方法とその後のプレス成形方法によれば、切断したガラスブロックから安価に所要の容積、形状、表面粗さを有したガラス素材を作製することができ、かつ成形時間の短縮と型の耐久性の向上が図れる。
また、型の劣化が激しいガラスについてはガラス素材の下面の温度を下げることにより型の耐久を向上させることができる。
【0333】
本実施形態では多孔質部材としてカーボンを用いたがその他多孔質セラミックや金属でも同様の効果が得られた。
上記の第26乃至第28の実施形態をまとめると、第33の方法においては、切断あるいは研削により所定の体積に調寸したガラス塊を多孔質部材の間で高温ガスによりガラスの粘度で105〜108dPa・sに加熱することにより所定の形状に変形させるとともにその表面粗さをRmaxで0.04μm以下にする。これは、高温ガスによる加熱であるため型とは直接接触せず型の表面粗さの影響を受けない。またガラスの粘度で105〜108dPa・sに加熱するため立方体や直方体からレンズ形状などへの変形が可能である。
【0334】
また、第34の方法においては、上記の第33の方法で作製したガラス素材をそのガラスの粘度で1010〜1013dPa・sに相当する温度に調温した型に投入してプレス成形する。ガラス素材の温度が高温ガスで変形するほどの温度であるため型の温度がガラスの粘度で1010dPa・sより小さい(高温)とガラスの温度が高いため型の劣化が激しく、型の耐久性が落ちるとともに、プレス後、成形品の取り出し温度(ガラスの粘度で1010dPa・s以下)まで冷却する必要があり成形時間が長くなる。型の温度をガラスの粘度で1010〜1013dPa・sに相当する温度にすることにより型の劣化が少なくなり、プレス後の冷却時間が短縮される。また型の温度がガラスの粘度で1013dPa・sより大きい(低温)と変形途中でガラスが冷えてしまいプレス変形が完了しない。
【0335】
なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0336】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、成形品と型の成形面との接触に起因する融着や面の転写不良、及び型の成形面の劣化を回避することができる。また、型の成形面と成形品の熱膨張差に起因する形状転写不良を回避することが出来る。さらに、研削研磨等の加工方法により発生する研削研磨屑等の廃棄物を極端に削減することが可能となり、レンズ等の精密素子を大量に安価に提供することが出来る。
【0337】
また、融着や膜剥離の発生しやすいレンズ周辺部で、型とガラスを非接触の状態で成形することができ、その結果融着などのトラブルがなく連続的に成形を行うことが出来る。さらに、上下の型で噴出するガスに温度差をつけることによって、離型したときに安定的に成形品を下型上に残してハンドリングのトラブルを防止できる。さらに、外形成形部材として多孔質材を使用することにより、型の隙間にガラスが入り込まない状態で芯取りの必要のない光学素子を得ることが出来る。
【0338】
また、受け型から噴出しているガスの温度を制御することにより、光学素子成形用素材として適した、下面に凹みのないガラス塊を、容易にかつ確実に製造することが出来る。また、成形型から噴出しているガスの温度を制御することにより、ガラス塊をプレス成形して所望の形状の成形ガラス塊を得る方法において、加熱及び冷却に要する時間を短くすることが出来る。また、受け型から噴出しているガスの温度をより正確かつ素早く制御することにより、光学素子成形用素材として適した、下面に凹みのないガラス塊を、より容易にかつ確実に製造することが出来る。さらに、成形型から噴出しているガスの温度をより正確かつ素早く制御することにより、ガラス塊をプレス成形して所望の形状の成形ガラス塊を得る方法において、加熱及び冷却に要する時間をより短くすることが出来る。
【0339】
また、ガラスブロックから任意の曲率半径を有するレンズ状のガラス素材を安価に作製可能となる。また、型へ投入する前のガラス素材の上下面に温度差を設けることが可能となり、型への搬送が有利になり、型の耐久性の向上も図れる。また、成形時間の短縮も図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】精密素子の成形装置の概略構成図である。
【図2】成形素材の分離方法を説明するための図である。
【図3】成形面の補正方法を示す概念図である。
【図3A】成形面の補正方法を示す概念図である。
【図4】型ユニットの構造を示す図である。
【図5】成形素材の状態を示す図である。
【図6】型の構造を示す図である。
【図7】芯取り後の光学素子の形状を示す図である。
【図8】型の材料を示す図である。
【図9】上型と下型の温度差を示す図である。
【図10】型の構造を示す図である。
【図11】芯取り後の光学素子の形状を示す図である。
【図12】ガスの流量と成形品の外観品質の関係を示す図である。
【図13】型の構造を示す図である。
【図14】芯取りを不要にした光学素子を示す図である。
【図15】型の構造を示す図である。
【図16】芯取りを不要にした光学素子を示す図である。
【図17】型の構造を示す図である。
【図18】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図19】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図20】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図21】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図22】型の構造を示す図である。
【図23】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図24】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図25】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図26】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図27】型の構造を示す図である。
【図28】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図29】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図30】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図31】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図32】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図である。
【図33】凸レンズ成形用ガラス素材の製造方法を示す図である。
【図34】ガラス素材の組成を示す図である。
【図35】変形しすぎたガラス素材を示す図である。
【図36】光学素子の成形方法を示す図である。
【図37】凹レンズ成形用ガラス素材の製造方法を示す図である。
【図38】光学素子の成形方法を示す図である。
【図39】凸メニスカスレンズ成形用ガラス素材の製造方法を示す図である。
【図40】ガラス素材の組成を示す図である。
【図41】凸面成形時のガス残り状態を示す図である。
【図42】凹面成形時のガス残り状態を示す図である。
【図43】ガラス素材の容量が大きすぎた場合を示す図である。
【図44】ガラス素材の容量が小さすぎた場合を示す図である。
【符号の説明】
1 型ユニット
2 下型構成部材
3 上型構成部材
11 下型部材
11a,21a 成形面
12 下型ホルダー
12a,22a 圧力室
13,23 ヒータ
21 上型部材
22 上型ホルダー
31 供給パイプ
32a,32b 圧力・流量調節器
33a,33b 加熱ヒータ
34a,34b フレキシブルチューブ
41 コントローラ
102a ガラス塊
Claims (36)
- 光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の成形素材から直接に成形する方法において、
少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、
前記型ユニットを開き、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させるとともに、溶融軟化された成形素材を供給するノズルから、溶融軟化状態の成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で前記型ユニットに供給する工程と、
成形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユニットの成形面上に供給された成形素材を、前記ノズルから分離する工程と、
前記成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で前記型ユニットに圧力を加え、前記型ユニットを閉じ、前記成形素材を補正された成形面の状態にならわせ、補正された形状の成形品を得る工程と、
成形素材を型ユニットに供給した後から、型ユニットに圧力を加え型ユニットを閉じ、成形素材を成形面の形状に倣わせる工程の間に、成形素材への第1の冷却開始し、さらに前記型ユニットを閉じ、成形素材を成形面の形状にならわせた後に第二の冷却を開始し、成形品が所望する最終形状になるまでの間に冷却を行い精密素子の形状を得る工程と、
前記型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴とする精密素子の成形方法。 - 前記成形面の予め補正された形状が、成形面より噴出させる流体の圧力、流量、温度、及び成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率をパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴とする請求項1に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴とする請求項1に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の精密素子の成形方法。
- 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求項1に記載の精密素子の成形方法。
- 型ユニットに圧力を加え成形素材を加圧する際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の精密素子の成形方法。
- 光学素子等の精密素子を成形する方法において、
少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、
少なくとも成形後に機能面となる部分に対応する部分の表面に、高低差が5μm以上の鋭角的な段差が存在しない様に仕上げられた成形素材を準備する工程と、
前記型ユニットを開き、成形素材を型ユニットに供給すると共に、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させ、成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で加熱し、軟化させる工程と、
成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る工程と、
該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を得る工程と、
補正された形状の精密素子の少なくとも表面近傍の粘度が108dPa・s以上となったときに、成形面から流体の噴出を再開すると共に、精密素子と成形面との間に空隙を設ける工程と、
成形素材を加熱、軟化した直後から、予備成形品を得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷却を開始し、成形面からの流体の噴出を再開した直後から第3の冷却を開始し、成形品が所望する最終形状になるまでの間に冷却を行い、精密素子の形状を得る工程と、
第2の冷却の際に、その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、
型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴とする精密素子の成形方法。 - 前記成形面の予め補正された形状が、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率の少なくとも1つをパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴とする請求項7に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴とする請求項7に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴とする請求項7に記載の精密素子の成形方法。
- 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求項7に記載の精密素子の成形方法。
- 型ユニットに圧力を加え非接触の状態で成形素材を加圧する際及び形状転写後の型内での冷却の際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力を制御することを特徴とする請求項7に記載の精密素子の成形方法。
- 光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の成形素材から直接に成形する方法において、
少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、
前記型ユニットを開き、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させると共に、溶融軟化された成形素材を供給するノズルより、溶融軟化状態の成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で型ユニットに供給する工程と、
成形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユニットの成形面上に供給された成形素材を分離する工程と、
成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る工程と、
該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を得る工程と、
成形素材をノズルから分離した直後から、予備成形品を得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷却を開始する工程と、
第2の冷却の際に、少なくとも、補正された形状の精密素子の表面と成形面との間に密着力が働いている間に、その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、
少なくとも、素子の表面と成形面との間の密着力が解消するまでの冷却を行い、その後、型ユニットを開き所望の形状に近似した形状を有する成形素子を取り出す工程と、
所望の形状に近似した形状の成形素子をさらに室温まで冷却し、所望の形状の精密素子を得る工程とを具備することを特徴とする精密素子の成形方法。 - 前記成形面の予め補正された形状が、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率、及び成形素子の表面と成形面との間の密着力をパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴とする請求項13に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴とする請求項13に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴とする請求項13に記載の精密素子の成形方法。
- 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求項13に記載の精密素子の成形方法。
- 前記第2の冷却の際の型部材の追従が、成形面と精密素子の間の密着力により行われることを特徴とする請求項13に記載の精密素子の成形方法。
- 前記第2の冷却の際の型部材の追従が、型部材に圧力を加えることにより行われることを特徴とする請求項13に記載の精密素子の成形方法。
- 光学素子等の精密素子を成形する方法において、
少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、
少なくとも成形後に機能面となる部分に対応する部分の表面に、高低差が5μm以上の鋭角的な段差が存在しない様に仕上げられた成形素材を準備する工程と、
前記型ユニットを開き、成形素材を型ユニットに供給すると共に、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させ、成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で加熱し、軟化させる工程と、
成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る工程と、
該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を得る工程と、
成形素材を加熱、軟化した直後から、予備成形品を得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷却を開始する工程と、
第2の冷却の際に、少なくとも、補正された形状の精密素子の表面と成形面との間に密着力が働いている間に、その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、
少なくとも、素子の表面と成形面との間の密着力が解消するまでの冷却を行い、その後、型ユニットを開き所望の形状に近似した形状を有する成形素子を取り出す工程と、
所望の形状に近似した形状の成形素子をさらに室温まで冷却し、所望の形状の精密素子を得る工程とを具備することを特徴とする精密素子の成形方法。 - 前記成形面の予め補正された形状が、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率、及び成形素子の表面と成形面との間の密着力をパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴とする請求項20に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴とする請求項20に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴とする請求項20に記載の精密素子の成形方法。
- 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求項20に記載の精密素子の成形方法。
- 前記第2の冷却の際の型部材の追従が、成形面と精密素子の間の密着力により行われることを特徴とする請求項20に記載の精密素子の成形方法。
- 前記第2の冷却の際の型部材の追従が、型部材に圧力を加えることにより行われることを特徴とする請求項20に記載の精密素子の成形方法。
- 光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の成形素材から直接に成形する方法において、
少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程と、
前記型ユニットを開き、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させると共に、溶融軟化された成形素材を供給するノズルより、溶融軟化状態の成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で型ユニットに供給する工程と、
成形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユニットの成形面上に供給された成形素材を前記ノズルから分離する工程と、
成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る工程と、
該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を得る工程と、
補正された形状の精密素子の少なくとも表面近傍の粘度が108dPa・s以上となったときに、成形面から流体の噴出を再開すると共に、精密素子と成形面との間に空隙を設ける工程と、
成形素材をノズルから分離した直後から、予備成形品を得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷却を開始し、成形面からの流体の噴出を再開した直後から第3の冷却を開始し、成形品が所望する最終形状になるまでの間に冷却を行い精密素子の形状を得る工程と、
第2の冷却の際に、その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、
型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴とする精密素子の成形方法。 - 前記成形面の予め補正された形状が、成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率の少なくとも1つをパラメーターとして含むシミュレーションにより得られることを特徴とする請求項27に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演算処理することにより得られることを特徴とする請求項27に記載の精密素子の成形方法。
- 前記成形面の多孔質部から噴出する流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御することを特徴とする請求項27に記載の精密素子の成形方法。
- 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求項27に記載の精密素子の成形方法。
- 型ユニットに圧力を加え非接触の状態で成形素材を加圧する際及び形状転写後の型内での冷却の際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力を制御することを特徴とする請求項27に記載の精密素子の成形方法。
- 重量調整されたガラス素材を成形用型でプレスして光学素子を成形する方法において、
前記成形用型型が、光学素子の少なくとも光線有効径内を形成するための第1の型部材と、それ以外の部分を形成するための第2の型部材で構成され、第2の型部材の内部または表面を経由してガスを成形面に流しながら成形することを特徴とする光学素子の成形方法。 - プレス成形中に前記第2の型部材と成形された光学素子はガス層を介して非接触であることを特徴とする請求項33に記載の光学素子の成形方法。
- 前記第2の型部材が多孔質セラミックまたは、多孔質金属または、多孔質炭素であることを特徴とする請求項33に記載の光学素子の成形方法。
- 上型を構成する第2の型部材を経由するガスの温度と、下型を構成する第2の型部材を経由するガスの温度の差が10℃以上であることを特徴とする請求項33に記載の光学素子の成形方法。
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