JP3618959B2 - 乳酸系ポリマー二軸延伸フィルム - Google Patents

乳酸系ポリマー二軸延伸フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムに関する。詳しくは、生分解性、加水分解性を有する乳酸系ポリマーからなり、無色透明性に優れ、且つ、表裏の熱収縮率の差が少ない乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムに関する。用途として、特に、オーバーヘッドプロジェクタ用シートとして適する乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明性が良好で高い光の透過率が要求される分野にポリエチレンテレフタレートフィルム等の透明ポリエステルフィルムが使用されてきた。しかし、これらの従来から使用されているプラスチック性透明フィルムは、自然環境下で分解しないか、または分解速度が極めて低いため、使用後放置されたり土中に埋設処理された場合、半永久的に地上や地中に残存することになる。また、海洋投棄された場合は、景観を損なったり、海洋生物の生活環境を破壊したりする。さらに、焼却処理した場合、その高い燃焼熱によって焼却炉の劣化を促進するなど、消費の拡大と共に廃棄物処理が社会問題となっている。
【0003】
これらの問題を生じない分解性ポリマーを透明フィルムとして用いるための研究開発が多数行われてきた。その中で、乳酸系ポリマーは、高い透明性を有し、またいわゆる生分解性を持つことで広く知られており、カビ等の発生がなく透明性も維持されることから、さまざまな用途での利用が期待されている。例えば、乳酸系ポリマーフィルムを農業用フィルムとして使用する例が特開平7−177826号公報に開示されている。
【0004】
透明性プラスチックフィルムは表面にカラー印刷を必要とする用途が多く、そのインクの発色を考慮した場合、高い透明性と無着色性が要求される。通常、乳酸系ポリマーを合成する際に使用したモノマーの純度、乳酸系ポリマーの成形加工条件等によって、得られる乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムの透明性や無着色性が影響を受ける。また、乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムは、ガラス転移温度以上の高温で常用された場合、その表裏両面の熱収縮率に差があると、加熱された際に容易に熱変形を起こす。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、優れた透明性、無着色性を有し、且つ、フィルムの表裏両面の熱収縮率の差の少ない乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、沸点が乳酸のそれより低い成分の含有量が少ない、乳酸またはラクチドから得られた乳酸系ポリマーを原料とし二軸延伸フィルムを成形し、且つ、緊張下で熱固定した後、特定の条件下で冷却操作を実施して得られた二軸延伸フィルムが、黄色度と霞度が低く、且つ、フィルムの表裏両面の熱収縮率の差が少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明により、黄色度が1.5〜3、霞度が5%以下、フィルムの表裏両面の熱収縮率の比が0.8〜1.2である、厚み0.01〜1mmの乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムが提供される。
【0008】
本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムの特徴は、黄色度、霞度(ヘイズ)、及び、フィルムの表裏両面の熱収縮率の比が特定の範囲に限定されていることにある。すなわち、透明性及び無着色性に優れ、熱変形の少ない二軸延伸フィルムである。耐衝撃性、伸び率等の一般的機械的特性、自然環境下における加水分解性、酵素分解性等については、従来の乳酸系ポリマーフィルムと同等の特性を有するものである。
【0009】
従って、例えば、オーバーヘッドプロジェクタ用シートの如く、優れた透明性、無着色性及び非熱変形性が要求される資材として極めて好適に用いることができる。本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムは、不純物の含有量が少ない乳酸を用いて合成された乳酸系ポリマーを成形原料とし二軸延伸フィルムを成形し、且つ、緊張下で熱固定した後、特定の条件下で冷却操作を実施することにより製造される。
【0010】
尚、本発明において、黄色度、霞度、及びフィルムの表裏両面の熱収縮率の比は、後述する実施例に記載した方法により測定した値を意味する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における乳酸系ポリマーとは、乳酸単位を含む脂肪族ポリエステルであり、具体的には、(1)ポリ乳酸及び乳酸と他のヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(2)多官能多糖類及び乳酸単位を含む脂肪族ポリエステル、(3)脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位及び乳酸単位を含む脂肪族ポリエステル、及び、(4)これらの混合物である。以下、これらを総称して乳酸系ポリマーという。
【0012】
乳酸にはL−体とD−体とが存在するが、本発明において単に乳酸という場合は、特にことわりがない場合は、L−体とD−体との両者を指すこととする。また、ポリマーの分子量は特にことわりのない場合は重量平均分子量のことを指すものとする。
【0013】
本発明に用いるポリ乳酸としては、構成単位がL−乳酸のみからなるポリ(L−乳酸)、D−乳酸のみからなるポリ(D−乳酸)、およびL−乳酸単位とD−乳酸単位とが種々の割合で存在するポリ(DL−乳酸)のいずれもが使用できる。
【0014】
乳酸−他のヒドロキシカルボン酸コポリマーのヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
【0015】
本発明に用いるポリ乳酸の製造方法として、L−乳酸、D−乳酸、または、DL−乳酸を直接脱水重縮合する方法、これら各乳酸の環状2量体であるラクチドを開環重合する方法等が挙げられる。開環重合は、高級アルコール、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基を有する化合物の存在下で行ってもよい。何れの方法によって製造されたものでもよい。
【0016】
乳酸−他のヒドロキシカルボン酸コポリマーの製造方法として、上記各乳酸と上記ヒドロキシカルボン酸を脱水重縮合する方法、上記各乳酸の環状2量体であるラクチドと上記ヒドロキシカルボン酸の環状体を開環共重合する方法等が挙げられる。何れの方法によって製造されたものでもよい。共重合体に含まれる乳酸単位の量は少なくとも40モル%であることが好ましい。
【0017】
多官能多糖類及び乳酸単位を含む脂肪族ポリエステルの製造に用いる多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロース、デンプン、アミロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガム等及びこれらの混合物及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの内で特に酢酸セルロース、エチルセルロースが好ましい。
【0018】
多官能多糖類及び乳酸単位を含む脂肪族ポリエステルの製造方法として、上記多官能多糖類と上記ポリ乳酸、乳酸−他のヒドロキシカルボン酸コポリマー等を反応する方法、上記多官能多糖類と上記各乳酸、環状エステル類等を反応する方法等が挙げられる。何れの方法によって製造されたものでもよい。該脂肪族ポリエステルに含まれる乳酸単位の量は少なくとも50重量%であることが好ましい。
【0019】
脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位及び乳酸単位を含む脂肪族ポリエステルの製造に用いる脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカンニ酸、ドデカンニ酸等及びこれらの無水物が挙げられる。これらは、酸無水物であっても、酸無水物との混合物であってもよい。
【0020】
また、脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0021】
脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位及び乳酸単位を含む脂肪族ポリエステルの製造方法として、上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールと、上記ポリ乳酸、乳酸−他のヒドロキシカルボン酸コポリマー等を反応する方法、上記脂肪族多価カルボン酸及び上記脂肪族多価アルコールと、上記各乳酸、環状エステル類等を反応する方法等が挙げられる。何れの方法によって製造されたものでもよい。該脂肪族ポリエステルに含まれる乳酸単位の量は少なくとも50モル%であることが好ましい。
【0022】
乳酸系ポリマーの分子量は、フィルムの加工性、得られるフィルムの強度および分解性に影響を及ぼす。分子量が低いと得られるフィルムの強度が低下し、使用する際に張力で破断することがある。また、分解速度が速くなる。逆に高いと加工性が低下し、フィルム製膜が困難となる。かかる点を考慮すると、本発明に使用する乳酸系ポリマーの分子量は、約1万〜約100万程度の範囲が好ましい。さらに好ましい範囲は10万〜30万である。
【0023】
本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムを製造する際には、上記乳酸系ポリマーの内、純度の高いポリマーが用いられる。一般に、乳酸はデンプンを醗酵後、精製することにより高純度のものが製造され市販されている。しかし、この方法で得られる乳酸中には、主としてメタノール、エタノール、酢酸、ピルビン酸、フマル酸、乳酸メチル及び乳酸ブチル等の不純物が含まれている(以下、これらを単に不純物という)。本発明における乳酸系ポリマーの原料モノマーに対する上記不純物の含有量は合計0.3モル%以下、好ましくは0.1モル%以下、さらに好ましくは0.05モル%以下である。
【0024】
乳酸に含まれる不純物を除去する方法として、例えば、特開平7−2985公報に記載されている方法が挙げられる。その概要は、乳酸に10重量%程度の水を含ませ、それをDien−Starkトラップを備えた反応器に装入して、減圧下で加熱還流する。水層を逐次抜き出すことによって水と共に低沸点化合物を系外に除去する。加熱還流中の試料をときどき採取して、ガスクロマトグラフ等で不純物の量を定量し、0.3モル%以下であることを確認する。
【0025】
本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムに対して、その押出成形時の安定性や、ハンドリングを容易にするために原料ペレット中に滑剤を含ませることができる。ここで用いる滑剤は、例えば、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレン等の脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油等の脂肪酸系滑剤、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、リシノール酸アマイド、オキシステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド等の脂肪酸アマイド系滑剤、
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム等の炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤、グリセリン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸(部分)エステル系滑剤、ステアリン酸ブチルエステル、モンタンワックス等の長鎖エステルワックス等の脂肪酸エステル系滑剤、またはこれらを複合した複合滑剤等が挙げられる。これらの内、脂肪酸系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤及び脂肪酸エステル系滑剤が好ましい。
【0026】
滑剤の使用量は、乳酸系ポリマー100重量部に対して0.1〜2重量部である。添加量が0.1重量部未満の場合は、滑剤によって期待される滑性効果が発現されず、2重量部を超えるとフィルムの成形性が低下し、さらに得られるフィルムの平板性、透明性等が低下する。
【0027】
本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムには、主成分である乳酸系ポリマーに、滑剤の他に、本発明の目的を損なわない範囲において、紫外線吸収剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、充填剤、着色防止剤、顔料等の他の添加剤を含有させてもよい。
【0028】
次いで、本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムの製造方法の例について説明する。乳酸系ポリマーに、必要に応じて滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、充填剤、着色防止剤、顔料等の他の添加剤を配合した後、Tダイによる溶融押出法により製膜し、ロール延伸によって流れ方向に延伸後、テンター延伸によって横方向に延伸し、延伸後緊張下で熱処理することにより形成する。
【0029】
乳酸系ポリマーに滑剤等を添加、混合する方法としては、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の配合機、混合機を用いる方法、乳酸系ポリマーをクロロホルム等の溶媒に溶解するか、または乳酸系ポリマーを100〜280℃に加熱溶融させたところに、所定量の滑剤等を添加、混合する方法が挙げられる。
【0030】
上記各種の添加剤を含む乳酸系ポリマー組成物の溶融押出温度は、好ましくは100〜280℃の範囲、より好ましくは130〜250℃の範囲である。成形温度が低いと成形安定性が得難く、また過負荷に陥り易い。逆に高いと乳酸系ポリマーが分解することがあり、分子量低下、強度低下、着色等が起こすので好ましくない。
【0031】
本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムは、流れ方向(機械方向)および幅方向(機械方向と直交する方向)の二軸方向にそれぞれ1.3〜6倍延伸することにより得られる。延伸倍率が1.3倍未満であると充分に満足し得る強度を有するフィルムが得難く、また6倍を超えると延伸時にフィルムが破れ好ましくない。延伸温度は、用いる乳酸系ポリマーのガラス転移点(Tg)〜(Tg+50)℃の範囲が好ましい。さらに好ましくはTg〜(Tg+30)℃の範囲である。延伸温度がTg未満では延伸が困難であり、(Tg+50)℃を超えると延伸による強度向上が認められない。耐熱性を増すために延伸後、緊張下で(Tg+10)℃以上、融点未満の温度で熱処理を行なう。熱処理時間は通常1秒〜30分間である。
【0032】
熱処理後の冷却温度は、熱処理温度やフィルム厚みによって異なるが、通常、−40℃〜(Tg−10)℃の温度範囲において空冷する。好ましくは、0〜40℃である。この際、フィルムの表面と裏面を冷却する空気等の冷却媒体の温度差が、得られる二軸延伸フィルムの非熱変形性に影響を及ぼす。冷却気体の温度差が大き過ぎると、得られる二軸延伸フィルムの表裏両面の熱収縮率の差が大きくなり、加熱時にフィルムが歪み、ソリが生じ易くなり、変形が大きくなる。かかる点を考慮すると、フィルムの表面と裏面を冷却する空気等の冷却媒体の温度差は小さい方が好ましいが、本発明の目的を達成するためには、該温度差を5℃以内に調整することが重要である。
【0033】
上記のようにして製造される、本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムは、透明性、無着色性が優れる。透明性は、霞度で表わすと5%以下である。そのため、例えば、オーバーヘッドプロジェクタ用シートとして使用した場合、これの透過光による投影画面は、視認できる程度に充分に明るい。優れた透明性は、上記条件下で二軸延伸及び熱処理することによって達成できる。延伸倍率が1.3倍未満、あるいは熱処理温度がTg未満であると、例えば、オーバーヘッドプロジェクタ投影装置上で使用中に白化し、ヘイズが5%を超え好ましくない。
【0034】
無着色性も優れており、黄色度(Y.I.)で表わすと3以下である。そのため、本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムの表面に印刷を施した場合、発色が鮮やかである。オーバーヘッドプロジェクタ用シートとして好適である。
【0035】
また、本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムは、高温における熱変形が少ない。具体的には、100℃におけるフィルムの表面の熱収縮率とフィルムの裏面の熱収縮率との比が0.8〜1.2の範囲にある。すなわち、100℃程度の加熱した際の変形が極めて小さい。そのため、例えば、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等として使用した場合、投影中に熱変形が生じることがない。この熱収縮率の比の範囲を達成するためには、上記条件で熱処理後の冷却操作を実施することが重要である。
【0036】
本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムへの印刷性、接着性を改善するため、少なくとも片面にコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等を施して、表面を改質してもよい。
【0037】
本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムの厚みは特に制限はないが、通常、0.01〜1mmである。用途によって適宜選定される。例えば、オーバーヘッドプロジェクタ用シートとして利用し得る。その際の厚みは、好ましくは0.05〜0.3mmである。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。なお、この実施例で用いた試験方法は、以下の通りである。
(1)熱収縮率
幅20mm長さ150mmの試験片を作成する。試験片の長辺がフィルムの流れ方向となるものとフィルムの幅方向となるものを各々5枚作成する。各試験片の中央部両面に100mmの距離をおいて標点を付ける。温度100±3℃に保持された恒温箱中に試験片の長辺が鉛直方向となるように吊るして、2時間加熱した後取り出し、室温に30分間放置してから上面と下面の各標点間距離を測定して次の式により算出し、その上面と下面の各平均値を求める。ここでいう上面下面とは横延伸機(テンター)中における上面下面である。
熱収縮率(%)=100×(L1−L2)/L1
ここで、L1:加熱前の標点間距離(mm)、L2:加熱後の標点間距離(mm)
【0039】
(2)テンター内冷却温度測定(℃)
テンター内の横延伸熱処理後の冷却過程において、フィルム上面と下面から各3cmの距離に温度計をフィルムの中心線に沿って設置し、それぞれの温度を記録した。
【0040】
(3)黄色度(Y.I.値)
JIS−K7105に準拠した方法で測定した。その際透過法を用い、測定機はスガ試験機(株)製、形式:SMカラーコンピューターを使用した。
【0041】
(4)霞度(HAZE、%)
厚み0.1mmの各試料を作成し、それを空気オーブン中で100℃において1時間加熱処理した後、ASTM D1003に規定された方法に従って測定した。測定機は、(株)東洋精機製作所製、直読式ヘイズメータNo.206を使用した。
【0042】
(5)オーバーヘッドプロジェクタ用紙としての評価
得られたフィルムをA4サイズにカットし、その片面全面(マージン上下左右各30mm)にレーザープリンタ〔キャノン(株)製、LASERSHOT、A−405Jr.〕によって12ポイントのゴシック体文字を印刷し、それをランプ点灯後1時間経過したオーバーヘッドプロジェクタ装置〔プラス(株)製、CX−500〕上において暗所で2m離れたスクリーンに投影し、20分後に文字が判読できるかどうか評価した。評価人の視力;1.5、スクリーンと評価人の距離:2.5m.評価基準は以下の通り。○:文字がすべて判読できた。△:半分以上判読できた。×:半分以上判読できなかった。
【0043】
調製例1
Dien−Starkトラップを設置した100リットル反応器に、90モル%L−乳酸(不純物の含有量0.5モル%)10kgを150℃/50mmHgで3時間撹拌しながら水を留出させた後、錫末6.2gを加え、150℃/30mmHgでさらに2時間撹拌してオリゴマー化した。このオリゴマーに錫末28.8gとジフェニルエーテル21.1kgを加え、150℃/35mmHg共沸脱水反応を行い留出した水と溶媒を水分離機で分離して水層を逐次抜き出し、溶媒のみを反応器に戻した。2時間後(この時点で不純物の含有量は0.05モル%であった)、反応器に戻す有機溶媒を4.6kgモレキュラーシーブ3Aを充填したカラムに通してから反応器に戻るようにして、150℃/35mmHgで反応を行いポリスチレン換算重量平均分子量12万のポリ乳酸溶液を得た。この溶液に脱水したジフェニルエーテル44kgを加え希釈した後40℃まで冷却して、析出した結晶を濾過し、10kgのn−ヘキサンで3回洗浄して60℃/50mmHgで乾燥した。この粉末を0.5N−塩酸12kgとエタノール12kgを加え、35℃で1時間撹拌した後濾過し、60℃/50mmHgで乾燥して、平均粒径30μmのポリ乳酸粉末6.1kg(収率85%)を得た。このポリマーのポリスチレン換算重量平均分子量は約12万であった。以下、ポリマーAという。
【0044】
調製例2
留出管を設置した100リットル反応器に、90モル%L−乳酸(不純物の含有量0.5モル%)10kgを150℃/50mmHgで3時間撹拌しながら水を留出させた後、錫末6.2gを加え、150℃/30mmHgでさらに2時間撹拌してオリゴマー化した。このオリゴマーに錫末28.8gとジフェニルエーテル21.1kgを加え、150℃/35mmHg共沸脱水反応を行い留出した溶媒を4.6kgモレキュラーシーブ3Aを充填したカラムに通して反応器に戻した。2時間後(この時点で不純物の含有量は0.35モル%であった)、150℃/35mmHgで反応を行いポリスチレン換算重量平均分子量10万のポリ乳酸溶液を得た。この溶液に脱水したジフェニルエーテル44kgを加え希釈した後40℃まで冷却して、析出した結晶を濾過し、10kgのn−ヘキサンで3回洗浄して60℃/50mmHgで乾燥した。この粉末を0.5N−塩酸12kgとエタノール12kgを加え、35℃で1時間撹拌した後濾過し、60℃/50mmHgで乾燥して、平均粒径30μmのポリ乳酸粉末5.7kg(収率80%)を得た。このポリマーのポリスチレン換算重量平均分 子量は10万であった。以下、ポリマーBという。
【0045】
実施例1
調整例1で得られたポリマーA100重量部に対し、滑剤〔ヘキストジャパン(株)製、ホスタルブ−WE4〕0.3重量部、アンチブロッキング剤〔日本アエロジル(株)製、アエロジル200〕0.2重量部を含むペレットを、180℃においてTダイが装着された押出機を用いて混練、溶融して押出し、厚さ800μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを60℃に加熱した後、長さ方向にロール法によって3倍延伸した後、70℃に加熱して横方向にテンターを用いて3倍延伸を行ない、引き続き緊張下で145℃において2分間熱処理した後、30℃の空気を用いてフィルム上面及び下面を冷却して平均厚み0.1mmの二軸延伸フィルムを得た。
延伸倍率、フィルム上面下面冷却用空気温度とその差、得られたフィルムの熱収縮率及びその比、黄色度、霞度を上記方法により測定し、その結果とオーバーヘッドプロジェクタ用紙としての評価を〔表1〕に示す。
【0046】
実施例2
ポリマーA90重量%と分子量約100,000のポリブチレンサクシネート10重量%を反応させたコポリマー(以下、ポリマーCという)100重量部に対し、滑剤〔日本化成(株)製、ダイヤミッド200〕1.0重量部及びアンチブロッキング剤〔日本アエロジル(株)製、アエロジル200〕0.5重量部を含むペレットを、180℃においてTダイが装着された押出機を用いて混練、溶融して押出し、厚さ800μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを40℃に加熱した後、長さ方向にロール法によって3倍延伸した後、50℃に加熱して横方向にテンターを用いて3倍延伸を行ない、引き続き緊張下で120℃において2分間熱処理し、25℃の空気でフィルム上下面を冷却して平均厚み0.1mmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を〔表1〕に示す。
【0047】
実施例3
実施例1における2軸延伸フィルムの熱処理後のフィルム上面と下面の冷却空気の温度を〔表1〕に示したように変更した以外、実施例1と同様にして平均厚み0.1mmの二軸延伸フィルムを得た。その評価結果を〔表1〕に示す。
【0048】
実施例4
実施例1における2軸延伸フィルムの熱処理後のフィルム上面と下面の冷却空気の温度を〔表1〕に示したように変更した以外、実施例1と同様にして平均厚み0.1mmの二軸延伸フィルムを得た。その評価結果を〔表1〕に示す。
【0049】
実施例5
ポリマーA100重量部に対し、滑剤〔ヘキストジャパン(株)製、ホスタルブ−WE4〕0.3重量部、アンチブロッキング剤〔日本アエロジル(株)製、アエロジル200〕0.2重量部を含むペレットを、180℃においてTダイが装着された押出機を用いて混練、溶融して押出し、厚さ400μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを60℃に加熱した後、長さ方向にロール法によって1.4倍延伸した後、70℃に加熱して横方向にテンターを用いて3倍延伸を行ない、引き続き緊張下で145℃において2分間熱処理し、30℃の空気を用いてフィルムの上下面を冷却して平均厚み0.1mmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの評価を〔表1〕に示す。
【0050】
実施例6
実施例1におけるフィルムの2軸延伸倍率を〔表1〕に示したように変更した以外、実施例1と同様にして平均厚み0.05mmの二軸延伸フィルムを得た。その評価結果を〔表1〕に示す。
【0051】
比較例1〜2
フィルムの冷却条件を〔表1〕に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして平均厚み0.1mmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を〔表1〕に示す。
【0052】
比較例3
ポリマーA100重量部に対し、滑剤〔ヘキストジャパン(株)製、ホスタルブ−WE4〕0.3重量部、アンチブロッキング剤〔日本アエロジル(株)製、アエロジル200〕0.2重量部を含むペレットを、180℃においてTダイが装着された押出機を用いて混練、溶融して押出し、厚さ400μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを60℃に加熱した後、長さ方向にロール法によって1.2倍延伸した後、70℃に加熱して横方向にテンターを用いて2倍延伸を行ない、引き続き緊張下で145℃において2分間熱処理し、30℃の空気を用いてフィルムの上下面を冷却して平均厚み0.2mmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの評価を〔表1〕に示す。
【0053】
比較例4
フィルムの二軸延伸条件を〔表1〕に示したように変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを作成しようとした結果を〔表1〕に示す。
【0054】
比較例5
ポリマーBを使った以外は実施例1と同様にして平均厚み0.1mmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を〔表1〕に示す。
【0055】
【表1】
Figure 0003618959
【0056】
【発明の効果】
本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムは、優れた透明性、無着色性を有し、かつ、フィルムの表裏両面の熱収縮率の比が小さいことに特徴がある。従って、本発明の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムは、耐衝撃性、伸び率等の一般的機械的特性、自然環境下における加水分解性、酵素分解性等については、従来の乳酸系ポリマーフィルムと同等の特性を有し、特に、熱変形量の小さなフィルムである。また、使用後廃棄されても廃棄物として自然環境下に蓄積することがない。従って、例えば、オーバーヘッドプロジェクタ用フィルムとして極めて有用である。

Claims (3)

  1. 黄色度が1.5〜3、霞度が5%以下、フィルムの表裏両面の熱収縮率の比が0.8〜1.2である、厚み0.01〜1mmの乳酸系ポリマー二軸延伸フィルム。
  2. 乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムが、厚み0.05〜0.3mmのオーバーヘッドプロジェクタ用シートである請求項1記載の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルム。
  3. 乳酸系ポリマー二軸延伸フィルムが、メタノール、エタノール、酢酸、ピルビン酸、フマル酸、乳酸メチル及び乳酸ブチルからなる群より選ばれた少なくとも一種の不純物の総含有量が0.3モル%以下であるモノマーから得られた乳酸系ポリマーのフィルムを流れ方向及び幅方向にそれぞれ1.3〜6倍二軸延伸し、緊張下、〔ガラス転移温度(Tg)+10〕℃以上、融点未満の温度範囲において熱処理した後、−40℃〜(Tg−10)℃の温度範囲において、温度差が5℃以内の気体媒体を用いて、フィルムの表裏両面をそれぞれ冷却して得られた請求項1または2記載の乳酸系ポリマー二軸延伸フィルム。
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