JP3620930B2 - 電力系統の特性推定装置および特性推定方法 - Google Patents
電力系統の特性推定装置および特性推定方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力系統の特性を推定する装置および方法に関し、特に調相設備容量や無効電力の系統負荷特性定数の推定を容易にした電力系統の特性推定装置および特性推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、力率改善および調相のために負荷系統に調相設備が設けられているが、その容量がどれだけであるか、および系統の負荷特性の把握が、電力系統の運用上または電力系統の計画上重要なポイントの一つとなる。
【0003】
一般に、実際の負荷系統は一次変電所の二次側母線以下が縮約して模擬され、有効電力と無効電力との関係は或る一定の方程式で関係付けられる。実際の負荷系統の典型的な等価回路を図21のように表せば、有効電力Pと無効電力Qの関係は、Q=AP2 +BP−Cで表現される。ここでAは電力系統の線路のリアクタンスに関係する値であり、AP2 は線路のリアクタンスによる無効電力、Bは負荷の力率に関係する値であり、BPは負荷による無効電力、Cは電力系統の充電容量と調相設備の容量による無効電力に相当する。従って有効電力と無効電力の直角座標平面(以下「P−Q平面」という。)に、一定周期で繰り返し測定した有効電力と無効電力の対をプロットすれば、例えば図22に示すように、理想的には上記2次方程式で示される曲線(以下「P−Qカーブ」という。)上に並ぶことになる。
【0004】
そこで従来は、3相電力系統の有効電力と無効電力を分析する負荷特性記録装置を用いて得た有効電力と無効電力の対から、最小二乗法によって上記2次方程式の係数A,B,Cをそれぞれ求めている。そして、特に係数C(以下「C項」という。)に基づいて調相設備の容量を推定し、これを例えば電圧一定化のための情報として利用して、電力系統の適正な運用を計っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが実際の負荷系統は図23の等価回路に示すように負荷力率が変動するため、上記BP項の値が変動し、重要なC項の推定が困難となる場合があった。特に工場負荷系統では負荷力率の変動が激しい。ここで、工場負荷系統における有効電力と無効電力の推移を具体的に表せば図24に示すようになり、時間経過に伴って大きく変動する。そのため、有効電力と無効電力の対をP−Q平面上にプロットしても、図25に示すように大きくばらつく。(この図25に示した例では、近似曲線を2本引くことができるので、24時間の間に調相設備が投入/遮断されているものと予想される。)従ってこのようなデータを基に最小二乗法によって上記2次方程式の係数を求めても、信頼性の低い値しか求められないことになる。
【0006】
また、従来は一定周期で求めた有効電力と無効電力のデータをそのまま用いているが、一般に有効電力と無効電力はいずれも電圧変動に比例して変化するとは限らず、負荷の特性に応じて電圧変動に従って有効電力と無効電力は変動する。そのため電圧変動が生じた場合、上記2次方程式の係数を高い精度で求められないという問題があった。
【0007】
また、C項とともに系統負荷の特性そのものを知ることが、系統解析を行う上で重要であるが、従来の方法ではC項のみしか得られないという問題があった。この発明の目的は、電力系統の特性を表す上記2次方程式の係数を正確に求められるようにした電力系統の特性推定装置および特性推定方法を提供することにある。
【0008】
また、この発明の他の目的は、特に無効電力の系統負荷の特性定数を正確に求めることのできる電力系統の特性推定方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、負荷力率の変動による有効電力と無効電力の時間経過に伴う変動が生じても、P−Q平面上のプロット位置のばらつきが生じないようにするため、請求項1および請求項3に記載の通り、電力系統の有効電力と無効電力を一定周期で繰り返し分析して、これらの時系列データを求めるとともに、これらの時系列データを有効電力と無効電力についてそれぞれ平滑化し、この平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める。
【0010】
このように電力系統の有効電力と無効電力を一定周期で繰り返し求めるとともに、これをそれぞれ平滑化することによって、P−Q平面上のプロット位置のばらつきが抑えられる。すなわちこれらの平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、それらの関係を示す方程式の係数を例えば最小二乗法により求めた場合に、それらの係数は電力系統の現実の特性値をより正確に表すものとして扱えるようになる。ここで、移動平均による有効電力と無効電力の推移の例、およびこれをP−Q平面上へプロットした例を図4および図5に示す。サンプルデータは図24および図25を作成したものと同一であり、図24および図25に示した例と比較すれば明らかなように、実際の急激な負荷力率の変動による影響を受けずに、有効電力と無効電力の移動平均値は時間経過にともない緩やかに推移し、P−Q平面上の各点のばらつきは少なくなって、各々の点が線上に並ぶ。(図5に示したとおり、この例では24時間の間に調相設備が投入/遮断されているため、近似曲線が2本引ける。)なお、上記方程式の典型例は前述のとおり、Q=AP2 +BP−Cとして2次方程式で表現されるが、一般に係数Aは小さいので、Q=BP−Cとして1次方程式で表現することもできる。
【0011】
また、この発明は電圧変動が生じても、時系列データとして求めた有効電力と無効電力の複数の対からそれらの関係を示す方程式の係数を高精度に求めるため、請求項2および請求項4に記載の通り、電力系統の電圧、有効電力および無効電力を一定周期で繰り返し求めるとともに、測定による有効電力,無効電力,電圧をそれぞれP,Q,Vとし、定格電圧をV′とし、有効電力の負荷特性定数、無効電力の負荷特性定数をそれぞれnp,nqとしたとき、P′=P(V′/V)npで示される補正後の有効電力P′、およびQ′=Q(V′/V)nqで示される補正後の無効電力Q′をそれぞれ求め、この補正後の有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める。
【0012】
図7は上記補正によるP−Qカーブの変化の例を示す図であり、×印は補正前、□印は補正後のプロット位置である。このように電圧変動が生じても、定格電圧の下で求めた場合と等価な有効電力と無効電力を求め、この補正後の有効電力と無効電力の複数の対からそれらの関係を示す方程式の係数を求めることによって、電圧変動による影響を受けずに電力系統の特性を推定できるようになる。
【0013】
また、この発明は上述した負荷力率の変動による問題と電圧変動による問題の双方を解消するために、請求項5に記載の通り、電力系統の電圧、有効電力および無効電力を一定周期で繰り返し求めるとともに、測定による有効電力,無効電力,電圧をそれぞれP,Q,Vとし、定格電圧をV′とし、有効電力の負荷特性定数、無効電力の負荷特性定数をそれぞれnp,nqとしたとき、P′=P(V′/V)npで示される補正後の有効電力P′およびQ′=Q(V′/V)nqで示される補正後の無効電力Q′をそれぞれ求め、この補正後の有効電力と無効電力の時系列データをそれぞれ平滑化し、この平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める。
【0014】
この方法によって負荷力率の変動および電圧変動が比較的激しい場合であっても、電力系統の特性をより正確に推定できるようになる。
【0015】
また、この発明は上記有効電力および無効電力の負荷特性定数を自動的に求めるようにするため、請求項6に記載の通り、電力系統の有効電力と無効電力を一定周期で分析してこれらの時系列データを求め、電力系統の電圧の擾乱を検出するとともに、その擾乱前の有効電力、無効電力および電圧をPo,Qo,Voとし、擾乱後の有効電力、無効電力および電圧をP1,Q1,V1としたとき、P1=Po(V1/Vo)npで示されるnp、およびQ1=Qo(V1/Vo)nqで示されるnqをそれぞれ求め、請求項4または5に記載の有効電力の負荷特性定数npおよび無効電力の負荷特性定数nqにそれぞれ適用する。
【0016】
このように電圧のステップ変化などの擾乱があったときに、その擾乱前後の有効電力、無効電力および電圧から有効電力および無効電力の負荷特性定数np,nqが自動的に求められて、これを用いて電圧変動に応じた有効電力と無効電力の補正が行われる。
【0017】
さらに、この発明は、系統負荷の無効電力負荷特性定数を正確に求めるようにするために、請求項7に記載の通り、電力系統の有効電力、無効電力の時系列データと、電圧ステップ変化データとから下記のステップ(1)〜(3)により、無効電力の負荷特性定数nqを推定することを特徴とする。
【0018】
(1)P′=P(V′/V)np
Q′={Q+C′(V/V′)2 }(V′/V)nq−C′
より(P,Q,V)を定格電圧(V′)時に補正してC′を推定する。但し、最初はC′,nqを任意の値とし、npは、
P1 =P0 (V1 /V0 )npより求める。
【0019】
(2)上記(1)で推定したC′と電圧ステップ変化データとにより、次式からnqを推定する。
【0020】
Q1 =(Q0 +C′)(V1 /V0 )nq−C′(V1 /V0 )2
(3)上記(1)で推定したC′と(2)で推定したnqを用いて(1)以下を所定回数繰り返してnqを求める。
【0021】
但し、
P,Q,V:測定(実)データ(有効電力、無効電力、電圧)
P′,Q′,V′,C′:定格電圧時補正データ(有効電力、無効電力、電圧、負荷系統容量値(C項))
P0 ,Q0 ,V0 :電圧ステップ変化前データ(有効電力、無効電力、電圧)
P1 ,Q1 ,V1 :電圧ステップ変化後データ(有効電力、無効電力、電圧)
np :有効電力の負荷特性定数
nq :無効電力の負荷特性定数
いま、バンク二次側の66kV系以下を縮約した系統のモデルを示すと図10に示すようになる。P,Q,Vはそれぞれ有効電力、無効電力、電圧であり、C項は、このモデルにおいて−jQc として示している。
【0022】
図10に示すモデルにおいて、系統の電圧−有効電力特性、電圧−無効電力特性は、電圧VがV0 からV1 まで擾乱によってステップ状に変化した場合、次式で表される。
【0023】
【数1】
【0024】
上記式において、負荷の電圧特性は、それぞれ、定電力特性、定電流特性、定インピーダンス特性に分けることができる。
【0025】
(a)定電力特性・・・電圧が変化しても、電力が一定な負荷特性。(np、nq=0)
(b)定電流特性・・・電圧が変化したとき、電力が電圧に比例する負荷特性。(np、nq=1)
(c)定インピーダンス特性・・・電圧が変化したとき、電力が電圧の2乗に比例する負荷特性。(np、nq=2)
ここで、−jQc は定インピーダンス特性であるから、C項についてはnq=2となる。従って、V0 からV1 へのステップ電圧変化時には、C(V1 /V0 )2 のQ(無効電力)が−jQc において発生する。
【0026】
よって、ステップ電圧変化時におけるC項の変動分を考慮した場合の負荷Lにおける上記(2)式は次のようになる。ただし、ここではバンク分については無視する。
【0027】
【数2】
【0028】
同式において、右項の(Q0 +C)はステップ電圧変化前のQ、左項はステップ電圧変化後のQを表す。上記(3)式より、無効電力の負荷特性定数nqは、次の(4)式で求めることができる。
【0029】
【数3】
【0030】
なお、系統の電圧−有効電力特性を表す上記(1)式についてはC項を考慮する必要がない。従って、有効電力の負荷特性定数npは、上記(1)式においてそれぞれ電圧ステップ変化データを代入することによりnpを求めることができる。
【0031】
ところで、上記(3)式は、母線電圧(66kV)の変動を考慮していないために、nqの値は正確ではない。そこで、請求項4、請求項5に示すように、母線電圧を定格電圧に補正するのが望ましい。この場合、C項とnqは相互に関連し且つ未知数である。今、測定データ(実データ)を、P,Q,V、定格電圧補正後のデータをP′,Q′,V′とし、さらに定格電圧補正後のC項をC′とすると、この時のQ′は上記(3)式に基づいて(5)式のように表される。
【0032】
【数4】
【0033】
上記(5)式の右項のC′(V/V′)2 は、C′が定格電圧補正後の値であるために、これを実データに対応する値にするためである。すなわち、C′に(V/V′)2 を乗ずることにより実データに対応するC項を求めるようにしている。なお、有効電力分についてはC項は無関係であるために、上記電圧ステップ変化データを用いて(6)式より有効電力の負荷特性定数npを求め、このnpを用いて(7)式よりP′を求める。
【0034】
ところで、上記(5)式においてはC′およびnqが未知数かつ相互に関連する値である。そこで、最初にこのC′およびnqにそれぞれ適当な値を代入して定格電圧補正後のP−Q相関データP′,Q′,V′を、実データP,Q,Vより求める。C′,nqの適当な値としては、一例として、C′=0,nq=0,10とする。
【0035】
上記のようにして定格電圧補正後のP−Q相関データP′,Q′,V′により図11に示すようにP′−Q′相関カーブからC項(C′)を推定する。この段階で、C項の値が最初に設定した任意の値よりもより正確な値に近づく。続いて、推定したC項(C′)と電圧ステップ変化データとによりnqを推定する。このnq推定は、上記(3)式を用いる。すなわち、(3)式のCを上記のようにして推定したC′に置き換えることにより、上記(4)式によってnqを推定する。推定されたnqは、最初に設定した任意の値よりもより真の値に近づいている。
【0036】
続いて、このnqとC′を用いて上記(5)および(7)式により定格電圧補正後のP′−Q′相関データを求め、再びC項(C′)を推定する。また、上記(3)式(4)式により再びnqを推定する。この動作を繰り返していくことにより、C項(C′)とnqがより真の値に近づき収束していく。nqが適当な範囲まで集束した段階でnqおよびC項を確定する。なお、以上の繰り返し演算において、未知数のC′,nqを最初に適当な数に設定するが、この値が真の値から大きく離れていたとしても、C′やnqが発散しないことがシミュレーションにより確かめられている。
【0037】
以上の方法により、C項とnqを高精度に求めることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態である負荷特性記録装置の構成を図1〜図9を基に以下説明する。
【0039】
図1は装置全体の構成を示すブロック図である。図1において100は現場に設けられた端末装置、101は制御室に設けられた監視装置である。絶縁・変換回路1は3相電圧・電流信号を絶縁入力し、所定の変成比で電圧信号に変換する。フィルタ2はサンプリングによる折り返し誤差による影響を受けないために、所定の周波数以上の成分を除去する。サンプルホールド回路3は入力信号を所定タイミングでサンプリングしホールドする。マルチプレクサ4は複数のサンプルホールド回路3のうち1つを選択してADコンバータ5へ与える。ADコンバータ5はこれをデジタルデータに変換する。マイクロコンピュータ6はマルチプレクサ4を選択するとともに、ADコンバータ5により変換されたデータを読み取る。通信インタフェース7は端末装置100と監視装置101との間でデータ伝送を行うために用い、マイクロコンピュータ6は通信インタフェース7を介して監視装置101へ各種計測データなどを伝送する。一方、監視装置101において通信インタフェース8は端末装置100との間でデータ伝送制御を行い、マイクロコンピュータ9は通信インタフェース8を介して端末装置100から各種計測データなどを受信する。表示器11およびプロッタ13は計測値などを出力するために用い、マイクロコンピュータ9は表示インタフェース10およびプロッタインタフェース12を介してデータの出力を行う。
【0040】
図2はサンプリングおよび特性値算出の処理手順を示すフローチャートである。まず、あらかじめ定めたサンプリングタイミングとなれば、(例えば5分毎に、)3相電圧・電流信号のサンプリングを行い、AD変換値を読み取る。そして有効電力Pおよび無効電力Qを算出し、更に次式で有効電力と無効電力の負荷特性定数np,nqによる補正(以下「定格電圧補正」という。)後の有効電力P′と無効電力Q′をそれぞれ求める。
【0041】
P′=P(V′/V)np
Q′=Q(V′/V)nq
ここで、Vは測定電圧、V′は定格電圧である。
【0042】
その後、有効電力P′および無効電力Q′の移動平均値を求める。すなわちk回目に求めた有効電力をP(k)’、無効電力をQ(k)’とすれば、時刻tにおける移動平均値Pt’,Qt’ はそれぞれ次式で示される。
【0043】
【0044】
上式でmは平均化の幅であり、図4に示した例ではm=9としている。
【0045】
このようにして求めた有効電力と無効電力の移動平均値をP−Q平面上にプロットする。これにより、図5に示したように、各点のばらつきは少なくなって、各々の点が線上に並ぶ。
【0046】
以上の処理をサンプリングタイミングになる毎に繰り返す。そして、特性値算出タイミングとなれば、例えば24時間が経過する毎(5分毎にサンプリングを行った場合、288点分のサンプリングを行う毎)に、有効電力と無効電力の移動平均値の対を基に、最小二乗法によりQ=AP2 +BP−Cの曲線のあてはめを行い、各係数A,B,Cをそれぞれ算出する。そして、上記曲線をP−Qカーブとして描画するとともに、係数A,B,Cの値をそれぞれ出力する。
【0047】
図3は有効電力および無効電力の負荷特性定数算出手順を示すフローチャートである。同図に示すように、もし測定電圧にステップ変化(擾乱)が生じたことを判定すれば、その擾乱前後の有効電力、無効電力および電圧の値から有効電力の負荷特性定数npおよび無効電力の負荷特性定数nqをそれぞれ算出する。図6に示すように、例えば5分毎に求めた電圧値が前回の電圧値に比較して一定値以上の差が発生すれば、擾乱があったものと見なして、各擾乱が生じる毎にnp,nqを算出する。すなわちステップ変化前の有効電力、無効電力および電圧をPo,Qo,Voとし、ステップ変化後の有効電力、無効電力および電圧をP1,Q1,V1としたとき、次式を満足するnp,nqを求める。
【0048】
P1=Po(V1/Vo)np
Q1=Qo(V1/Vo)nq
例えば
np=log(P1/Po)/log(V1/Vo)
nq=log(Q1/Qo)/log(V1/Vo)
を算出することによってnp,nqを求める。その後、一定時間(例えば24時間)経過するまで上記処理を繰り返し、一定時間が経過すれば昼間と夜間とでそれぞれnp,nqの平均値を算出する。図2に示した有効電力と無効電力の補正ステップでは、昼間と夜間とでそれぞれのnp,nqを用いて補正を行う。
【0049】
尚、上述の例では、時系列での移動平均処理と定格電圧補正の双方を行う例を示したが、これらの処理は互いに独立であるため、いずれか一方のみの処理を行っても、電力系統の特性を表す上記2次方程式の係数の推定精度を高めることができる。例えば、住宅負荷系統のように負荷力率変動の少ない系統について、特性推定を行う場合は、移動平均処理を行わずに、定格電圧補正のみを行っても、その効果は大きい。その例を図8および図9に示す。すなわち、図8および図9は住宅地に対する定格電圧66kVのフィーダについて計測した際の、P−Q平面上のプロット例およびP−Qカーブであり、図8は定格電圧補正を行わない場合、図9は行った場合である。ここでは負荷を有効電力に対しては定電流特性、すなわちnp=1とし、無効電力については定インピーダンス特性、すなわちnq=2として補正を行った。両図に示すように、この例では定格電圧補正を行わないで求めたC項は+7.492Mvarであるのに対し、補正を行った求めたC項は+9.454Mvarとなって、大きく変化することがわかる。換言すれば、それだけ特性推定精度が高まることがわかる。
【0050】
次に、実P−Q相関データP,Q,Vを定格電圧補正し、精度の高いC項と無効電力負荷特性定数nqを求める実施形態について説明する。
【0051】
装置の構成については図1に示すものと同一である。図12は、C項およびnqを推定するための処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
有効電力Pおよび無効電力Qを算出するまでは図2に示す動作と同じであり、何回か繰り返すことによって、時系列の、実P−Q相関データP,Q,Vが算出される。そして、nq,C項を推定値出力する適当なタイミングになれば、以下の手順を繰り返す。
【0053】
(1)実P−Q相関データより、定格電圧補正後のP′−Q′相関データを求める((5)および(7)式参照)。但し、最初は、同式におけるC項(C′)およびnqが未知数であるために、適当な値(ここではC′=0、nq=0,10)に設定する。
【0054】
(2)P′−Q′相関カーブを描画する。
【0055】
(3)C項(C′)を求め、推定値とする。
【0056】
(4)電圧ステップ変化データ(V0 →V1 )を用いて、nqを求め推定値とする((3)式参照)。なお電圧ステップ変化データは、測定(実)電圧にステップ変化(擾乱)が生じたときの変化データV0 ,V1 を用いる。
【0057】
(5)nqが所定のレベルに収束するまで(ここでは、0.95<(nqi /nqi+1 )<1.05になるまで)、上記(1)〜(4)を繰り返す。
【0058】
(6)一定レベルまで収束した段階で、そのときのnqおよびC項(C′)を出力する。
【0059】
なお、上記P′−Q′相関カーブを描画してC項(C′)を推定するときに、図2で示したような移動平均処理を行うことも可能である。
【0060】
図13〜図20にシミュレーション結果を示す。このシミュレーションでは真のnp,nqをそれぞれ2、4としてバンク2次側電圧の変動がない場合とある場合、およびバンクZs のない場合とある場合、並びに線路インピーダンスZL がない場合とある場合のそれぞれのシミュレーション結果を示すものである。なお初回のnqを0,10としている。これらのシミュレーション結果に示すように、nqの推定演算を少なくとも5回行うまでにnqが収束することがわかる。すなわち、電圧にばらつきのあるP−Q相関データにおいて、nqを繰り返し演算することにより、電圧補正しない場合に比べてC項とnqを精度よく求めることができる。
【0061】
【発明の効果】
請求項1および請求項3に記載の発明によれば、電力系統の有効電力と無効電力を一定周期で繰り返し求めるとともに、これをそれぞれ平滑化したため、負荷力率の変動が激しくても、これらの平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、それらの関係を示す方程式の係数を推定した場合に、それらの係数は電力系統の現実の特性値をより正確に表すものとして扱えるようになる。
【0062】
請求項2および請求項4に記載の発明によれば、常に定格電圧の下で求めた場合と等価な有効電力と無効電力を求め、この補正後の有効電力と無効電力の複数の対からそれらの関係を示す方程式の係数を求めるようにしたため、電圧変動が生じても電力系統の特性推定の精度が高まる。
【0063】
請求項5に記載の発明によれば、負荷力率の変動および電圧変動の双方が激しい場合であっても、電力系統の特性をより正確に推定できるようになる。
【0064】
請求項6に記載の発明によれば、電圧のステップ変化などの擾乱があったときに、その擾乱前後の有効電力、無効電力および電圧から有効電力および無効電力の負荷特性定数np,nqが自動的に求められるため、有効電力および無効電力の負荷特性定数を求めるための特別な計測が不要となる。
【0065】
請求項7に記載の発明によれば、電力系統に電圧変動があった場合でも、nqを繰り返し演算することにより高精度のnqおよびC項を求めることができ、系統負荷の特性を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】負荷特性記録装置の構成を示すブロック図である。
【図2】サンプリングおよび特性値算出の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】有効電力・無効電力の負荷特性定数算出手順を示すフローチャートである。
【図4】有効電力と無効電力の時間経過にともなう推移の例を示す図である。
【図5】P−Q平面上のプロットの例を示す図である。
【図6】負荷特性定数の算出タイミングの例を示す図である。
【図7】負荷特性定数による定格電圧補正を行う前後のP−Qカーブの変化の例を示す図である。
【図8】負荷特性定数による定格電圧補正前のP−Qカーブの例を示す図である。
【図9】負荷特性定数による定格電圧補正後のP−Qカーブの例を示す図である。
【図10】バンク2次側以下を66kVに縮約した場合の電力系統のモデル図である。
【図11】P−Q相関データを定格電圧補正し、C′を求める方法を説明する図である。
【図12】nqおよびC′を繰り返し演算により収束させて推定する手順を示すフローチャートである。
【図13】〜
【図20】シミュレーション結果を示す図である。
【図21】負荷系統の等価回路図である。
【図22】P−Qカーブの例を示す図である。
【図23】変動負荷系統の等価回路図である。
【図24】有効電力と無効電力の時間経過にともなう推移の例を示す図である。
【図25】P−Q平面上のプロットの例を示す図である。
【符号の説明】
100−端末装置
101−監視装置
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力系統の特性を推定する装置および方法に関し、特に調相設備容量や無効電力の系統負荷特性定数の推定を容易にした電力系統の特性推定装置および特性推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、力率改善および調相のために負荷系統に調相設備が設けられているが、その容量がどれだけであるか、および系統の負荷特性の把握が、電力系統の運用上または電力系統の計画上重要なポイントの一つとなる。
【0003】
一般に、実際の負荷系統は一次変電所の二次側母線以下が縮約して模擬され、有効電力と無効電力との関係は或る一定の方程式で関係付けられる。実際の負荷系統の典型的な等価回路を図21のように表せば、有効電力Pと無効電力Qの関係は、Q=AP2 +BP−Cで表現される。ここでAは電力系統の線路のリアクタンスに関係する値であり、AP2 は線路のリアクタンスによる無効電力、Bは負荷の力率に関係する値であり、BPは負荷による無効電力、Cは電力系統の充電容量と調相設備の容量による無効電力に相当する。従って有効電力と無効電力の直角座標平面(以下「P−Q平面」という。)に、一定周期で繰り返し測定した有効電力と無効電力の対をプロットすれば、例えば図22に示すように、理想的には上記2次方程式で示される曲線(以下「P−Qカーブ」という。)上に並ぶことになる。
【0004】
そこで従来は、3相電力系統の有効電力と無効電力を分析する負荷特性記録装置を用いて得た有効電力と無効電力の対から、最小二乗法によって上記2次方程式の係数A,B,Cをそれぞれ求めている。そして、特に係数C(以下「C項」という。)に基づいて調相設備の容量を推定し、これを例えば電圧一定化のための情報として利用して、電力系統の適正な運用を計っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが実際の負荷系統は図23の等価回路に示すように負荷力率が変動するため、上記BP項の値が変動し、重要なC項の推定が困難となる場合があった。特に工場負荷系統では負荷力率の変動が激しい。ここで、工場負荷系統における有効電力と無効電力の推移を具体的に表せば図24に示すようになり、時間経過に伴って大きく変動する。そのため、有効電力と無効電力の対をP−Q平面上にプロットしても、図25に示すように大きくばらつく。(この図25に示した例では、近似曲線を2本引くことができるので、24時間の間に調相設備が投入/遮断されているものと予想される。)従ってこのようなデータを基に最小二乗法によって上記2次方程式の係数を求めても、信頼性の低い値しか求められないことになる。
【0006】
また、従来は一定周期で求めた有効電力と無効電力のデータをそのまま用いているが、一般に有効電力と無効電力はいずれも電圧変動に比例して変化するとは限らず、負荷の特性に応じて電圧変動に従って有効電力と無効電力は変動する。そのため電圧変動が生じた場合、上記2次方程式の係数を高い精度で求められないという問題があった。
【0007】
また、C項とともに系統負荷の特性そのものを知ることが、系統解析を行う上で重要であるが、従来の方法ではC項のみしか得られないという問題があった。この発明の目的は、電力系統の特性を表す上記2次方程式の係数を正確に求められるようにした電力系統の特性推定装置および特性推定方法を提供することにある。
【0008】
また、この発明の他の目的は、特に無効電力の系統負荷の特性定数を正確に求めることのできる電力系統の特性推定方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、負荷力率の変動による有効電力と無効電力の時間経過に伴う変動が生じても、P−Q平面上のプロット位置のばらつきが生じないようにするため、請求項1および請求項3に記載の通り、電力系統の有効電力と無効電力を一定周期で繰り返し分析して、これらの時系列データを求めるとともに、これらの時系列データを有効電力と無効電力についてそれぞれ平滑化し、この平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める。
【0010】
このように電力系統の有効電力と無効電力を一定周期で繰り返し求めるとともに、これをそれぞれ平滑化することによって、P−Q平面上のプロット位置のばらつきが抑えられる。すなわちこれらの平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、それらの関係を示す方程式の係数を例えば最小二乗法により求めた場合に、それらの係数は電力系統の現実の特性値をより正確に表すものとして扱えるようになる。ここで、移動平均による有効電力と無効電力の推移の例、およびこれをP−Q平面上へプロットした例を図4および図5に示す。サンプルデータは図24および図25を作成したものと同一であり、図24および図25に示した例と比較すれば明らかなように、実際の急激な負荷力率の変動による影響を受けずに、有効電力と無効電力の移動平均値は時間経過にともない緩やかに推移し、P−Q平面上の各点のばらつきは少なくなって、各々の点が線上に並ぶ。(図5に示したとおり、この例では24時間の間に調相設備が投入/遮断されているため、近似曲線が2本引ける。)なお、上記方程式の典型例は前述のとおり、Q=AP2 +BP−Cとして2次方程式で表現されるが、一般に係数Aは小さいので、Q=BP−Cとして1次方程式で表現することもできる。
【0011】
また、この発明は電圧変動が生じても、時系列データとして求めた有効電力と無効電力の複数の対からそれらの関係を示す方程式の係数を高精度に求めるため、請求項2および請求項4に記載の通り、電力系統の電圧、有効電力および無効電力を一定周期で繰り返し求めるとともに、測定による有効電力,無効電力,電圧をそれぞれP,Q,Vとし、定格電圧をV′とし、有効電力の負荷特性定数、無効電力の負荷特性定数をそれぞれnp,nqとしたとき、P′=P(V′/V)npで示される補正後の有効電力P′、およびQ′=Q(V′/V)nqで示される補正後の無効電力Q′をそれぞれ求め、この補正後の有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める。
【0012】
図7は上記補正によるP−Qカーブの変化の例を示す図であり、×印は補正前、□印は補正後のプロット位置である。このように電圧変動が生じても、定格電圧の下で求めた場合と等価な有効電力と無効電力を求め、この補正後の有効電力と無効電力の複数の対からそれらの関係を示す方程式の係数を求めることによって、電圧変動による影響を受けずに電力系統の特性を推定できるようになる。
【0013】
また、この発明は上述した負荷力率の変動による問題と電圧変動による問題の双方を解消するために、請求項5に記載の通り、電力系統の電圧、有効電力および無効電力を一定周期で繰り返し求めるとともに、測定による有効電力,無効電力,電圧をそれぞれP,Q,Vとし、定格電圧をV′とし、有効電力の負荷特性定数、無効電力の負荷特性定数をそれぞれnp,nqとしたとき、P′=P(V′/V)npで示される補正後の有効電力P′およびQ′=Q(V′/V)nqで示される補正後の無効電力Q′をそれぞれ求め、この補正後の有効電力と無効電力の時系列データをそれぞれ平滑化し、この平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める。
【0014】
この方法によって負荷力率の変動および電圧変動が比較的激しい場合であっても、電力系統の特性をより正確に推定できるようになる。
【0015】
また、この発明は上記有効電力および無効電力の負荷特性定数を自動的に求めるようにするため、請求項6に記載の通り、電力系統の有効電力と無効電力を一定周期で分析してこれらの時系列データを求め、電力系統の電圧の擾乱を検出するとともに、その擾乱前の有効電力、無効電力および電圧をPo,Qo,Voとし、擾乱後の有効電力、無効電力および電圧をP1,Q1,V1としたとき、P1=Po(V1/Vo)npで示されるnp、およびQ1=Qo(V1/Vo)nqで示されるnqをそれぞれ求め、請求項4または5に記載の有効電力の負荷特性定数npおよび無効電力の負荷特性定数nqにそれぞれ適用する。
【0016】
このように電圧のステップ変化などの擾乱があったときに、その擾乱前後の有効電力、無効電力および電圧から有効電力および無効電力の負荷特性定数np,nqが自動的に求められて、これを用いて電圧変動に応じた有効電力と無効電力の補正が行われる。
【0017】
さらに、この発明は、系統負荷の無効電力負荷特性定数を正確に求めるようにするために、請求項7に記載の通り、電力系統の有効電力、無効電力の時系列データと、電圧ステップ変化データとから下記のステップ(1)〜(3)により、無効電力の負荷特性定数nqを推定することを特徴とする。
【0018】
(1)P′=P(V′/V)np
Q′={Q+C′(V/V′)2 }(V′/V)nq−C′
より(P,Q,V)を定格電圧(V′)時に補正してC′を推定する。但し、最初はC′,nqを任意の値とし、npは、
P1 =P0 (V1 /V0 )npより求める。
【0019】
(2)上記(1)で推定したC′と電圧ステップ変化データとにより、次式からnqを推定する。
【0020】
Q1 =(Q0 +C′)(V1 /V0 )nq−C′(V1 /V0 )2
(3)上記(1)で推定したC′と(2)で推定したnqを用いて(1)以下を所定回数繰り返してnqを求める。
【0021】
但し、
P,Q,V:測定(実)データ(有効電力、無効電力、電圧)
P′,Q′,V′,C′:定格電圧時補正データ(有効電力、無効電力、電圧、負荷系統容量値(C項))
P0 ,Q0 ,V0 :電圧ステップ変化前データ(有効電力、無効電力、電圧)
P1 ,Q1 ,V1 :電圧ステップ変化後データ(有効電力、無効電力、電圧)
np :有効電力の負荷特性定数
nq :無効電力の負荷特性定数
いま、バンク二次側の66kV系以下を縮約した系統のモデルを示すと図10に示すようになる。P,Q,Vはそれぞれ有効電力、無効電力、電圧であり、C項は、このモデルにおいて−jQc として示している。
【0022】
図10に示すモデルにおいて、系統の電圧−有効電力特性、電圧−無効電力特性は、電圧VがV0 からV1 まで擾乱によってステップ状に変化した場合、次式で表される。
【0023】
【数1】
【0024】
上記式において、負荷の電圧特性は、それぞれ、定電力特性、定電流特性、定インピーダンス特性に分けることができる。
【0025】
(a)定電力特性・・・電圧が変化しても、電力が一定な負荷特性。(np、nq=0)
(b)定電流特性・・・電圧が変化したとき、電力が電圧に比例する負荷特性。(np、nq=1)
(c)定インピーダンス特性・・・電圧が変化したとき、電力が電圧の2乗に比例する負荷特性。(np、nq=2)
ここで、−jQc は定インピーダンス特性であるから、C項についてはnq=2となる。従って、V0 からV1 へのステップ電圧変化時には、C(V1 /V0 )2 のQ(無効電力)が−jQc において発生する。
【0026】
よって、ステップ電圧変化時におけるC項の変動分を考慮した場合の負荷Lにおける上記(2)式は次のようになる。ただし、ここではバンク分については無視する。
【0027】
【数2】
【0028】
同式において、右項の(Q0 +C)はステップ電圧変化前のQ、左項はステップ電圧変化後のQを表す。上記(3)式より、無効電力の負荷特性定数nqは、次の(4)式で求めることができる。
【0029】
【数3】
【0030】
なお、系統の電圧−有効電力特性を表す上記(1)式についてはC項を考慮する必要がない。従って、有効電力の負荷特性定数npは、上記(1)式においてそれぞれ電圧ステップ変化データを代入することによりnpを求めることができる。
【0031】
ところで、上記(3)式は、母線電圧(66kV)の変動を考慮していないために、nqの値は正確ではない。そこで、請求項4、請求項5に示すように、母線電圧を定格電圧に補正するのが望ましい。この場合、C項とnqは相互に関連し且つ未知数である。今、測定データ(実データ)を、P,Q,V、定格電圧補正後のデータをP′,Q′,V′とし、さらに定格電圧補正後のC項をC′とすると、この時のQ′は上記(3)式に基づいて(5)式のように表される。
【0032】
【数4】
【0033】
上記(5)式の右項のC′(V/V′)2 は、C′が定格電圧補正後の値であるために、これを実データに対応する値にするためである。すなわち、C′に(V/V′)2 を乗ずることにより実データに対応するC項を求めるようにしている。なお、有効電力分についてはC項は無関係であるために、上記電圧ステップ変化データを用いて(6)式より有効電力の負荷特性定数npを求め、このnpを用いて(7)式よりP′を求める。
【0034】
ところで、上記(5)式においてはC′およびnqが未知数かつ相互に関連する値である。そこで、最初にこのC′およびnqにそれぞれ適当な値を代入して定格電圧補正後のP−Q相関データP′,Q′,V′を、実データP,Q,Vより求める。C′,nqの適当な値としては、一例として、C′=0,nq=0,10とする。
【0035】
上記のようにして定格電圧補正後のP−Q相関データP′,Q′,V′により図11に示すようにP′−Q′相関カーブからC項(C′)を推定する。この段階で、C項の値が最初に設定した任意の値よりもより正確な値に近づく。続いて、推定したC項(C′)と電圧ステップ変化データとによりnqを推定する。このnq推定は、上記(3)式を用いる。すなわち、(3)式のCを上記のようにして推定したC′に置き換えることにより、上記(4)式によってnqを推定する。推定されたnqは、最初に設定した任意の値よりもより真の値に近づいている。
【0036】
続いて、このnqとC′を用いて上記(5)および(7)式により定格電圧補正後のP′−Q′相関データを求め、再びC項(C′)を推定する。また、上記(3)式(4)式により再びnqを推定する。この動作を繰り返していくことにより、C項(C′)とnqがより真の値に近づき収束していく。nqが適当な範囲まで集束した段階でnqおよびC項を確定する。なお、以上の繰り返し演算において、未知数のC′,nqを最初に適当な数に設定するが、この値が真の値から大きく離れていたとしても、C′やnqが発散しないことがシミュレーションにより確かめられている。
【0037】
以上の方法により、C項とnqを高精度に求めることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態である負荷特性記録装置の構成を図1〜図9を基に以下説明する。
【0039】
図1は装置全体の構成を示すブロック図である。図1において100は現場に設けられた端末装置、101は制御室に設けられた監視装置である。絶縁・変換回路1は3相電圧・電流信号を絶縁入力し、所定の変成比で電圧信号に変換する。フィルタ2はサンプリングによる折り返し誤差による影響を受けないために、所定の周波数以上の成分を除去する。サンプルホールド回路3は入力信号を所定タイミングでサンプリングしホールドする。マルチプレクサ4は複数のサンプルホールド回路3のうち1つを選択してADコンバータ5へ与える。ADコンバータ5はこれをデジタルデータに変換する。マイクロコンピュータ6はマルチプレクサ4を選択するとともに、ADコンバータ5により変換されたデータを読み取る。通信インタフェース7は端末装置100と監視装置101との間でデータ伝送を行うために用い、マイクロコンピュータ6は通信インタフェース7を介して監視装置101へ各種計測データなどを伝送する。一方、監視装置101において通信インタフェース8は端末装置100との間でデータ伝送制御を行い、マイクロコンピュータ9は通信インタフェース8を介して端末装置100から各種計測データなどを受信する。表示器11およびプロッタ13は計測値などを出力するために用い、マイクロコンピュータ9は表示インタフェース10およびプロッタインタフェース12を介してデータの出力を行う。
【0040】
図2はサンプリングおよび特性値算出の処理手順を示すフローチャートである。まず、あらかじめ定めたサンプリングタイミングとなれば、(例えば5分毎に、)3相電圧・電流信号のサンプリングを行い、AD変換値を読み取る。そして有効電力Pおよび無効電力Qを算出し、更に次式で有効電力と無効電力の負荷特性定数np,nqによる補正(以下「定格電圧補正」という。)後の有効電力P′と無効電力Q′をそれぞれ求める。
【0041】
P′=P(V′/V)np
Q′=Q(V′/V)nq
ここで、Vは測定電圧、V′は定格電圧である。
【0042】
その後、有効電力P′および無効電力Q′の移動平均値を求める。すなわちk回目に求めた有効電力をP(k)’、無効電力をQ(k)’とすれば、時刻tにおける移動平均値Pt’,Qt’ はそれぞれ次式で示される。
【0043】
【0044】
上式でmは平均化の幅であり、図4に示した例ではm=9としている。
【0045】
このようにして求めた有効電力と無効電力の移動平均値をP−Q平面上にプロットする。これにより、図5に示したように、各点のばらつきは少なくなって、各々の点が線上に並ぶ。
【0046】
以上の処理をサンプリングタイミングになる毎に繰り返す。そして、特性値算出タイミングとなれば、例えば24時間が経過する毎(5分毎にサンプリングを行った場合、288点分のサンプリングを行う毎)に、有効電力と無効電力の移動平均値の対を基に、最小二乗法によりQ=AP2 +BP−Cの曲線のあてはめを行い、各係数A,B,Cをそれぞれ算出する。そして、上記曲線をP−Qカーブとして描画するとともに、係数A,B,Cの値をそれぞれ出力する。
【0047】
図3は有効電力および無効電力の負荷特性定数算出手順を示すフローチャートである。同図に示すように、もし測定電圧にステップ変化(擾乱)が生じたことを判定すれば、その擾乱前後の有効電力、無効電力および電圧の値から有効電力の負荷特性定数npおよび無効電力の負荷特性定数nqをそれぞれ算出する。図6に示すように、例えば5分毎に求めた電圧値が前回の電圧値に比較して一定値以上の差が発生すれば、擾乱があったものと見なして、各擾乱が生じる毎にnp,nqを算出する。すなわちステップ変化前の有効電力、無効電力および電圧をPo,Qo,Voとし、ステップ変化後の有効電力、無効電力および電圧をP1,Q1,V1としたとき、次式を満足するnp,nqを求める。
【0048】
P1=Po(V1/Vo)np
Q1=Qo(V1/Vo)nq
例えば
np=log(P1/Po)/log(V1/Vo)
nq=log(Q1/Qo)/log(V1/Vo)
を算出することによってnp,nqを求める。その後、一定時間(例えば24時間)経過するまで上記処理を繰り返し、一定時間が経過すれば昼間と夜間とでそれぞれnp,nqの平均値を算出する。図2に示した有効電力と無効電力の補正ステップでは、昼間と夜間とでそれぞれのnp,nqを用いて補正を行う。
【0049】
尚、上述の例では、時系列での移動平均処理と定格電圧補正の双方を行う例を示したが、これらの処理は互いに独立であるため、いずれか一方のみの処理を行っても、電力系統の特性を表す上記2次方程式の係数の推定精度を高めることができる。例えば、住宅負荷系統のように負荷力率変動の少ない系統について、特性推定を行う場合は、移動平均処理を行わずに、定格電圧補正のみを行っても、その効果は大きい。その例を図8および図9に示す。すなわち、図8および図9は住宅地に対する定格電圧66kVのフィーダについて計測した際の、P−Q平面上のプロット例およびP−Qカーブであり、図8は定格電圧補正を行わない場合、図9は行った場合である。ここでは負荷を有効電力に対しては定電流特性、すなわちnp=1とし、無効電力については定インピーダンス特性、すなわちnq=2として補正を行った。両図に示すように、この例では定格電圧補正を行わないで求めたC項は+7.492Mvarであるのに対し、補正を行った求めたC項は+9.454Mvarとなって、大きく変化することがわかる。換言すれば、それだけ特性推定精度が高まることがわかる。
【0050】
次に、実P−Q相関データP,Q,Vを定格電圧補正し、精度の高いC項と無効電力負荷特性定数nqを求める実施形態について説明する。
【0051】
装置の構成については図1に示すものと同一である。図12は、C項およびnqを推定するための処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
有効電力Pおよび無効電力Qを算出するまでは図2に示す動作と同じであり、何回か繰り返すことによって、時系列の、実P−Q相関データP,Q,Vが算出される。そして、nq,C項を推定値出力する適当なタイミングになれば、以下の手順を繰り返す。
【0053】
(1)実P−Q相関データより、定格電圧補正後のP′−Q′相関データを求める((5)および(7)式参照)。但し、最初は、同式におけるC項(C′)およびnqが未知数であるために、適当な値(ここではC′=0、nq=0,10)に設定する。
【0054】
(2)P′−Q′相関カーブを描画する。
【0055】
(3)C項(C′)を求め、推定値とする。
【0056】
(4)電圧ステップ変化データ(V0 →V1 )を用いて、nqを求め推定値とする((3)式参照)。なお電圧ステップ変化データは、測定(実)電圧にステップ変化(擾乱)が生じたときの変化データV0 ,V1 を用いる。
【0057】
(5)nqが所定のレベルに収束するまで(ここでは、0.95<(nqi /nqi+1 )<1.05になるまで)、上記(1)〜(4)を繰り返す。
【0058】
(6)一定レベルまで収束した段階で、そのときのnqおよびC項(C′)を出力する。
【0059】
なお、上記P′−Q′相関カーブを描画してC項(C′)を推定するときに、図2で示したような移動平均処理を行うことも可能である。
【0060】
図13〜図20にシミュレーション結果を示す。このシミュレーションでは真のnp,nqをそれぞれ2、4としてバンク2次側電圧の変動がない場合とある場合、およびバンクZs のない場合とある場合、並びに線路インピーダンスZL がない場合とある場合のそれぞれのシミュレーション結果を示すものである。なお初回のnqを0,10としている。これらのシミュレーション結果に示すように、nqの推定演算を少なくとも5回行うまでにnqが収束することがわかる。すなわち、電圧にばらつきのあるP−Q相関データにおいて、nqを繰り返し演算することにより、電圧補正しない場合に比べてC項とnqを精度よく求めることができる。
【0061】
【発明の効果】
請求項1および請求項3に記載の発明によれば、電力系統の有効電力と無効電力を一定周期で繰り返し求めるとともに、これをそれぞれ平滑化したため、負荷力率の変動が激しくても、これらの平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、それらの関係を示す方程式の係数を推定した場合に、それらの係数は電力系統の現実の特性値をより正確に表すものとして扱えるようになる。
【0062】
請求項2および請求項4に記載の発明によれば、常に定格電圧の下で求めた場合と等価な有効電力と無効電力を求め、この補正後の有効電力と無効電力の複数の対からそれらの関係を示す方程式の係数を求めるようにしたため、電圧変動が生じても電力系統の特性推定の精度が高まる。
【0063】
請求項5に記載の発明によれば、負荷力率の変動および電圧変動の双方が激しい場合であっても、電力系統の特性をより正確に推定できるようになる。
【0064】
請求項6に記載の発明によれば、電圧のステップ変化などの擾乱があったときに、その擾乱前後の有効電力、無効電力および電圧から有効電力および無効電力の負荷特性定数np,nqが自動的に求められるため、有効電力および無効電力の負荷特性定数を求めるための特別な計測が不要となる。
【0065】
請求項7に記載の発明によれば、電力系統に電圧変動があった場合でも、nqを繰り返し演算することにより高精度のnqおよびC項を求めることができ、系統負荷の特性を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】負荷特性記録装置の構成を示すブロック図である。
【図2】サンプリングおよび特性値算出の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】有効電力・無効電力の負荷特性定数算出手順を示すフローチャートである。
【図4】有効電力と無効電力の時間経過にともなう推移の例を示す図である。
【図5】P−Q平面上のプロットの例を示す図である。
【図6】負荷特性定数の算出タイミングの例を示す図である。
【図7】負荷特性定数による定格電圧補正を行う前後のP−Qカーブの変化の例を示す図である。
【図8】負荷特性定数による定格電圧補正前のP−Qカーブの例を示す図である。
【図9】負荷特性定数による定格電圧補正後のP−Qカーブの例を示す図である。
【図10】バンク2次側以下を66kVに縮約した場合の電力系統のモデル図である。
【図11】P−Q相関データを定格電圧補正し、C′を求める方法を説明する図である。
【図12】nqおよびC′を繰り返し演算により収束させて推定する手順を示すフローチャートである。
【図13】〜
【図20】シミュレーション結果を示す図である。
【図21】負荷系統の等価回路図である。
【図22】P−Qカーブの例を示す図である。
【図23】変動負荷系統の等価回路図である。
【図24】有効電力と無効電力の時間経過にともなう推移の例を示す図である。
【図25】P−Q平面上のプロットの例を示す図である。
【符号の説明】
100−端末装置
101−監視装置
Claims (7)
- 電力系統の有効電力と無効電力の時系列データを求めるとともに、これらの時系列データを有効電力と無効電力についてそれぞれ平滑化する手段と、この平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める手段とからなる電力系統の特性推定装置。
- 電力系統の電圧、有効電力および無効電力の時系列データを求めるとともに、測定による有効電力,無効電力,電圧をそれぞれP,Q,Vとし、定格電圧をV′とし、有効電力の負荷特性定数、無効電力の負荷特性定数をそれぞれnp,nqとしたとき、P′=P(V′/V)npで示される補正後の有効電力P′、およびQ′=Q(V′/V)nqで示される補正後の無効電力Q′をそれぞれ求める手段と、この補正後の有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める手段とからなる電力系統の特性推定装置。
- 電力系統の有効電力と無効電力の時系列データを求めるとともに、これらの時系列データを有効電力と無効電力についてそれぞれ平滑化し、この平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める電力系統の特性推定方法。
- 電力系統の電圧、有効電力および無効電力の時系列データを求めるとともに、測定による有効電力,無効電力,電圧をそれぞれP,Q,Vとし、定格電圧をV′とし、有効電力の負荷特性定数、無効電力の負荷特性定数をそれぞれnp,nqとしたとき、P′=P(V′/V)npで示される補正後の有効電力P′、およびQ′=Q(V′/V)nqで示される補正後の無効電力Q′をそれぞれ求め、この補正後の有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める電力系統の特性推定方法。
- 電力系統の電圧、有効電力および無効電力の時系列データを求めるとともに、測定による有効電力,無効電力,電圧をそれぞれP,Q,Vとし、定格電圧をV′とし、有効電力の負荷特性定数、無効電力の負荷特性定数をそれぞれnp,nqとしたとき、P′=P(V′/V)npで示される補正後の有効電力P′およびQ′=Q(V′/V)nqで示される補正後の無効電力Q′をそれぞれ求め、この補正後の有効電力と無効電力の時系列データをそれぞれ平滑化し、この平滑化した有効電力と無効電力の複数の対から、これらの関係を示す方程式の係数を電力系統における特性値として求める電力系統の特性推定方法。
- 電力系統の有効電力と無効電力の時系列データを求め、電力系統の電圧の擾乱を検出するとともに、その擾乱前の有効電力、無効電力および電圧をPo,Qo,Voとし、擾乱後の有効電力、無効電力および電圧をP1,Q1,V1としたとき、P1=Po(V1/Vo)npで示されるnp、およびQ1=Qo(V1/Vo)nqで示されるnqをそれぞれ求め、請求項4または5に記載の有効電力の負荷特性定数npおよび無効電力の負荷特性定数nqにそれぞれ適用する電力系統の特性推定方法。
- 電力系統の有効電力、無効電力の時系列データと、電圧ステップ変化データとから下記のステップ(1)〜(3)により、無効電力の負荷特性定数nqを推定することを特徴とする電力系統の特性推定方法。
(1)P′=P(V′/V)np
Q′={Q+C′(V/V′)2 }(V′/V)nq−C′
より(P,Q,V)を定格電圧(V′)時に補正してC′を推定する。但し、最初はC′,nqを任意の値とし、npは、
P1 =P0 (V1 /V0 )npより求める。
(2)上記(1)で推定したC′と電圧ステップ変化データとにより、次式からnqを推定する。
Q1 =(Q0 +C′)(V1 /V0 )nq−C′(V1 /V0 )2
(3)上記(1)で推定したC′と(2)で推定したnqを用いて(1)以下を所定回数繰り返してnqを求める。
但し、
P,Q,V:測定(実)データ(有効電力、無効電力、電圧)
P′,Q′,V′,C′:定格電圧時補正データ(有効電力、無効電力、電圧、負荷系統容量値(C項))
P0 ,Q0 ,V0 :電圧ステップ変化前データ(有効電力、無効電力、電圧)
P1 ,Q1 ,V1 :電圧ステップ変化後データ(有効電力、無効電力、電圧)
np :有効電力の負荷特性定数
nq :無効電力の負荷特性定数
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