JP3629242B2 - 磁気式エンコーダおよびその高調波誤差削減方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、高調波誤差を削減できる磁気式エンコーダおよびその磁気式エンコーダの高調波誤差削減方法に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
測角手段として、磁気式エンコーダが知られている。この磁気式エンコーダを、従来の測量機器、例えばトータルステーション、セオドライトなどの測角手段として搭載する発明が提案されている。この種の磁気式エンコーダは、視準望遠鏡と共に回転する磁気ドラムとこの磁気ドラムの回転角を検出する磁気センサを備える。磁気ドラムの外周面には分割数N(Nは正の整数)にて等ピッチで着磁された多極着磁層が形成され、この多極着磁層に対向させて磁気センサが配置される。磁気センサは、例えば多極着磁層のピッチよりも小さいピッチで配置された4個の磁気抵抗素子を備える。したがって、磁気ドラムの回転に伴って変化する磁気抵抗素子の抵抗値を検出することで、磁気ドラムの回転角を多極着磁層のピッチ精度で測定し、さらにこのピッチ間の角度を内挿演算によって測定することができる。
【0003】
しかしながら、磁気式エンコーダの場合、多極着磁層の分割数を光学式エンコーダほど多く取れずしかもピッチが大きいため、寸法誤差、磁気抵抗素子の磁気抵抗曲線の理想値からのずれなどにより、分割した1ピッチ内での高調波歪みの影響、つまり高調波誤差が大きい、という問題があった。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みてなされたもので、測量機に適した、任意次数の高調波誤差を削減する磁気式エンコーダおよびその高調波誤差削減方法を提供することを目的とする。
【0005】
【発明の概要】
この目的を達成する本発明の磁気式エンコーダは、外周面に等ピッチで着磁された多極着磁層を有する磁気ドラムと、該磁気ドラムの外周面に対向させて複数個配置された磁気センサを備え、該磁気センサと該磁気ドラムが相対回転すると、該各磁気センサが相対回転角に応じて周期的に変化する検出信号を出力する磁気式エンコーダであって、
任意次数の高調波誤差を補正するように、前記多極着磁層の1ピッチよりも短い間隔であって、それぞれ検出信号の位相がθmずれるように配置されたw個の磁気センサと、
前記磁気ドラムと前記磁気センサとが相対回転するときに前記w個の磁気センサが出力する検出信号の出力レベル(Vm)と、下記数1、数2式によって、ベクトル的な二組の信号Aout、Boutを求める演算手段を備えたことを特徴とする。
【数1】
Aout=Σw m=1Vm×sinθm
【数2】
Bout=Σw m=1Vm×cosθm
該演算した信号Aout、Boutを内挿演算して前記回転部の回転角を求める。
ただし、mは補正したい高調波誤差の次数(整数)、θは電気角度である。
また本発明の高調波誤差削減方法は、周面に等ピッチで着磁された多極着磁層を有する回転部と、該回転部の外周面に対向させて複数個配置され、該回転部が回転するとその回転角に応じて周期的に変化する検出信号を出力する磁気センサを備え、任意次数の高調波誤差を補正するように前記各磁気センサを、前記多極着磁層の1ピッチよりも短い間隔であって、それぞれ検出信号の位相がθmずれるようにw個配置し、前記回転部が回転するときに検出した該w個の磁気センサの検出信号の出力レベル(Vm)を、下記数1、数2式によってベクトル的な二組の信号Aout、Boutとして演算し、
【数1】
Aout=Σw m=1Vm×sinθm
【数2】
Bout=Σw m=1Vm×cosθm
さらに該演算した信号Aout、Boutを内挿演算して前記回転部の回転角を求めること、を特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明を説明する。図1は、本発明の磁気式エンコーダを搭載したトータルステーションを、磁気式エンコーダの要部が見えるように一部を切断して示す背面図、図2は同トータルステーションを、磁気式エンコーダの要部が見えるように一部を切断して示す側面図である。
【0007】
このトータルステーション11は、周知の通り、三脚等に装着するための底板13、この底板13に3本の整準ねじ15で支持された整準台(台部)17、この整準台17に、鉛直軸19を介して回転自在に軸支され、一対の支柱部21aを有するU字形状の架台(本体)21、この架台21の2本の支柱部21a間に高度分度軸23を介して回動自在に軸支された視準望遠鏡25等を備えている。なお、高度分度軸23は、視準望遠鏡25の左右に固定され、架台21の2本の支柱部21aに対して回動自在に支持されているが、図1には左側の高度分度軸23のみを示した。
【0008】
鉛直軸19は、整準台17に固定された鉛直軸受け27に回動自在に支持されている。そして架台21は、その支柱部21aを連結する基部21bが鉛直軸19の上端部に固定され、鉛直軸19に一体として回動自在に支持されている。高度分度軸23は、架台21の一対の支柱部21aに固定された高度分度軸受け29に回動自在に軸支されている。このように視準望遠鏡25は、高度分度軸23を介して上下方向回動自在に架台21に軸支され、さらに架台21および鉛直軸19を介して方位方向回転自在に整準台17に軸支されている。
【0009】
さらに、鉛直軸19と鉛直軸受け27との間には、整準台17(鉛直軸受け27)に対する鉛直軸19(架台21に搭載された視準望遠鏡25)の相対回転角(水平角)を測定する水平分度として磁気式エンコーダ41が装着され、高度分度軸23と架台21とには、架台21に対する高度分度軸23(視準望遠鏡25)の回転角(高度角)を測定する高度分度として磁気式エンコーダ51が装着されている。これらの磁気式エンコーダ41、51はそれぞれ、軸受け27、軸23に固定された磁気ドラム43、53と、磁気ドラム43、53の外周面に形成された多極着磁層に対して所定間隔で近接対向配置された磁気センサユニット44、45、磁気センサユニット54、55を備えている。本発明において、磁気ドラム43、53の媒体形状は図示実施例に限定されず、円盤、円筒、円柱形状も含む。
この実施例において、磁気式エンコーダ41は、磁気ドラム43に対して磁気センサユニット44、45が相対回転し、磁気式エンコーダ51は、磁気センサユニット54、55に対して磁気ドラム53が相対回転する。
【0010】
また、詳細は図示しないが、各磁気センサユニット44、45、磁気センサユニット54、55の出力信号を検出して磁気式エンコーダ41、51の回転角、つまり水平角、高度角を求める信号処理手段、演算手段を含む電子回路61(図4参照)が架台21の基部21bに搭載されている。そして、トータルステーション11を操作、制御するためのキーボード、およびキーボードによって入力された基礎データや測距結果などを表示する表示器を備えた操作パネル31、32が、架台21の前後両表面に設けられている(図2参照)。
【0011】
なお、図1、2において、符号33はトータルステーション11の持ち運びに利用するためのハンドグリップ、符号34は磁気式エンコーダ41および不図示のバッテリ等を保護するために架台21に装着された防塵カバー、符号35、36はそれぞれ、視準望遠鏡25の接眼レンズ、対物レンズである。
【0012】
この磁気式エンコーダ41、51の構成についてより詳細に説明する。磁気式エンコーダ41、51の基本構成は同一なので、一方の磁気式エンコーダ51の一方の磁気センサユニット54の構成について、図3、4を参照して説明する。図3は磁気式エンコーダ51の磁気センサユニット54の各磁気センサと磁気ドラム53の多極着磁層53aとの関係を説明するための拡大図、図4は磁気センサが備えた磁気抵抗素子の結線を示す配線図である。磁気センサユニット54は、アングル56(図1参照)に固定され、アングル56を介して架台21に固定されている。
【0013】
磁気ドラム53の外周面には、分割数N(Nは正の整数)にて等ピッチで着磁された多極着磁層53aが形成されている。多極着磁層53aの各磁極53aNの磁極ピッチ(極の境界の間隔)をλとする。磁極ピッチλの電気角は2πである。この多極着磁層53aに対して所定の隙間で対向させて磁気センサユニット54が配置されている。磁気センサユニット54は、単一の平面基板54aと、多極着磁層53aと対向する平面基板54aの対向面に、λ/4ピッチ相当で設けられた8個の磁気抵抗素子4a1、4b1、4a2、4b2、4a3、4b3、4a4、4b4を備えている。そして磁気センサユニット54は、その中央に立てた垂線が磁気ドラム53の回転中心を通るように配置されている。
【0014】
この磁気式エンコーダ51は、磁気ドラム53が回転すると、多極着磁層53aが発生する磁界3の変化に依存する磁気抵抗素子4a1〜4a4、4b1〜4b4の抵抗値の変化を検出して、抵抗値の変化から磁気ドラム53の回転角ωをλ/4ピッチで検出するインクリメンタル方式の磁気式エンコーダである。なお、λ/4ピッチよりも小さい角度(細密回転角)は、いわゆる内挿演算によって求められる。
【0015】
8個の磁気抵抗素子4a1、4b1、4a2、4b2、4a3、4b3、4a4、4b4は、図3に示すように、4個の磁気抵抗素子4a1〜4a4からなるA相と、4個の磁気抵抗素子4b1〜4b4からなるB相とに分けられる。A相の各磁気抵抗素子4a1、4a2、4a3、4a4とB相の各磁気抵抗素子4b1、4b2、4b3、4b4はそれぞれ交互に配置され、かつ同一相の磁気抵抗素子4a1〜4a4、4b1〜4b4の間隔はλ/2の等ピッチ、隣合う他の相の磁気抵抗素子との間隔はλ/4の等ピッチである。
【0016】
これらA相、B相の磁気抵抗素子4a1〜4a4、4b1〜4b4はそれぞれ、図4に示すようにブリッジ結線されている。つまり、直列した磁気抵抗素子4a1、4a2と磁気抵抗素子4a3、4a4、磁気抵抗素子4b1、4b2と磁気抵抗素子4b3、4b4が並列接続され、各直列抵抗間からA相の端子e0、e1、およびB相の端子e0′、e1′が引き出されている。そして、電子回路61は、ブリッジ結線された磁気抵抗素子間に定電圧Vを印加し、A相の端子e0、e1、およびB相の端子e0′、e1′に現れる電圧の変化(位相)に基づいて磁界の変化を検出し、磁気ドラム53の回転角ωを測定する。つまり、位相の変化数をカウントして回転各ωを測定する。
【0017】
この実施の形態によれば、A相の磁気抵抗素子4a1〜4a4の抵抗値a1、a2、a3、a4は、磁気ドラム53の回転により作用する磁界3の変化によって、下記式のように変化する。
a1=R0+Rsin(Nω)
a2=R0+Rsin(Nω+π)=R0−Rsin(Nω)
a3=R0+Rsin(Nω+2π)=R0+Rsin(Nω)
a4=R0+Rsin(Nω+3π)=R0−Rsin(Nω)
ただし、ωは磁気ドラム53の回転角、R0は無磁界のときの抵抗値、Rは係数(抵抗比)、Nは多極着磁層53aの数(分割数)である。
【0018】
したがって、端子e0と端子e1の出力を差動増幅すると、A相の出力Aoutは、
Aout=α×R×V/R0×sin(Nω)
となる(ただし、αは増幅率)。
【0019】
B相の磁気抵抗素子4b1〜4b4は、A相の磁気抵抗素子4a1〜4a4に対してλ/4ピッチずらして配置してあるので、端子e0′と端子e1′の出力を差動増幅すると、B相の出力Boutは、
Bout=α×R×V/R0×cos(Nω)
となる。
【0020】
このA相の出力AoutおよびB相の出力Boutのゼロクロス点を検出すれば、磁気ドラム53の回転角を、4×N単位、つまり360/(4×N)(゜)単位で検出できる。このように、分割数Nの4倍まで検出ピッチが小さくなり、分解能が高くなる。測量機においては、(1/N)/4よりも小さい角度Δωの検出が要求され、分割数N以上の分割数が必要になることがある。そこで、A、B相の出力Aout、Boutに基づいた下記の内挿計算によって、分割数を増やすことなく、検出可能な検出ピッチを小さくし、検出ピッチ数を増やして、分解能を高めることができる。
Δω=tan−1(Aout/Bout)
【0021】
以上の磁気式エンコーダの場合、多極着磁層の分割数を光学式エンコーダほど多く取れずしかもピッチが大きいため、寸法誤差、磁気抵抗素子の磁気抵抗曲線の理想値からのずれなどにより、分割した1ピッチ内での高調波誤差(高調波歪み)の影響が大きい。そのため、高精度化の要求を満足させるのは非常に困難であり、満足させるためには高調波誤差を補正する必要があり、そのためにはセンサユニット、または磁気抵抗素子の個数を増やさなければならない。たとえば、従来技術によると、1つのn次高調波誤差を補正するためには、同様のセンサを2組用意し、各センサを電気角がΠ/nずれるように配置する必要がある。この場合、上記8個の倍の2倍の16個の磁気抵抗素子が必要となり、k個の高調波誤差をなくすためには2k倍まで磁気抵抗素子が必要になる。しかし、1個のセンサユニット内で磁気抵抗素子を増加させるとセンサユニットの幅が広がり、磁気ドラムの曲率の影響、つまり磁気ドラムから磁気抵抗素子までの距離差を受けやすくなり、誤差が大きくなってしまう問題がある。
【0022】
そこで本発明の実施の形態は、所望の高調波誤差を補正するように、1波長λ、つまり電気角2πに相当する1ピッチ内に、w個の磁気抵抗素子を任意間隔の位相差(θm)で配置し、磁気ドラムが回転するときに生じるw個の磁気抵抗素子の抵抗変化に対する出力変化Vmを、下記数1、数2式により、ベクトル的なA相の検出信号Aout、B相の検出信号Boutとして算出する。
【数1】
Aout=Σw m=1Vm×sinθm
【数2】
Bout=Σw m=1Vm×cosθm
さらに、演算した検出信号Aout、Boutに基づいて内挿演算を実行して2π/wピッチよりも小さい角度(細密角度)Δωを検出する。
Δω=tan−1(A/B)
【0023】
その実施形態を、さらに図5、6、7および8を参照して説明する。この実施形態は、図1、2に示したトータルステーションの磁気式エンコーダに適用した実施例であり、図5、7には図3に対応する部分を示してある。なお、これらの図において図1、2と共通の部材には同一の符号を付してある。
【0024】
図5、6に示した第1の実施例は、1次、2次および3次の高調波誤差を補正する磁気抵抗素子の配置構造を示している。磁気センサユニット540には、12個の磁気抵抗素子S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12が配置されている。各磁気抵抗素子S1〜S12は、外周面をN分割してN個の磁極が形成された多極着磁層53aの1ピッチ(多極着磁層53aの磁極53aNのピッチ)内(電気角では2π、1波長λ内)に、π/6の等しい位相差が発生するようにセンサユニット540に配置されている。つまり、各磁気抵抗素子S1〜S12の間隔はπ/6である。したがって、磁気ドラム53が回転すると、各磁気抵抗素子S1〜S12が受ける磁界3はπ/6づつ位相がずれて変化するので、各磁気抵抗素子S1〜S12の抵抗値は、π/6づつ位相がずれて変化する。そこで、各磁気抵抗素子S1〜S12を各基準抵抗R01を介して接地して基準電圧Vcを印加する(図6参照)。そして、各磁気抵抗素子S1〜S12と基準抵抗R01の接続点の電圧を出力レベルとしてA/D変換器63によってデジタル値、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、に変換する。このデジタル値を下記数3、数4式によって加算平均することにより、A相の検出信号AoutおよびB相の検出信号Boutに変換すると同時に、1次、2次および3次の高調波誤差を補正している。
【数3】
Aout=Σw m=1Vm×sinθm
sinθm=sin(2π/w×(m−1))
Aout=V4−V10+1/2(V2+V6−V8−V12)+3−1/2/2(V3+V5−V9−V11)
【数4】
Bout=Σw m=1Vm×cosθm
cosθm=cos(2π/w×(m−1))
Bout=−V1−V7+1/2(V3+V11−V5−V9)+31/2/2(V2+V12−V6−V8)
ただし、V1〜V12は、基準電圧Vcからの差電圧の絶対値である。
【0025】
上記演算によって求めたディジタル信号Aout、Boutのゼロクロス点をカウントすることによって、粗回転角ωが求まる。
【0026】
そして、この演算値Aout、Boutを下記式によって内挿演算することにより、1/4ピッチ(位相差π/2)よりも小さい角度(細密回転角)Δωを求めることができる。
Δω=tan−1(Aout/Bout)
【0027】
この実施例では、各磁気抵抗素子S1〜S12の出力レベルをA/D変換しているので、各磁気抵抗素子単位で磁気ドラム53の曲率の影響による磁界差を補正することも、各磁気抵抗素子の個体差により生じる誤差を補正することもできる。
【0028】
本発明の磁気センサユニットの第2の実施例を、図7に示した。この第2の実施例は、磁気センサユニット541に、複数の磁気抵抗素子を電気角2π内に配置できない場合の一実施例である。この第2の実施例では、12個の磁気抵抗素子S1〜S12を6個ずつA相群(磁気抵抗素子S1、S3、S5、S7、S9、S11)と、B相群(磁気抵抗素子S2、S4、S6、S8、S10、S12)とに分け、各A、B相群の磁気抵抗素子の間隔は電気角でπ/3に、A群とB群の間隔は電気角で2π+π/6に設定し、4π内に配置してある。つまり、各磁気抵抗素子S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12のピッチは、実質的にπ/6となる。
【0029】
これらの磁気抵抗素子S1〜S12は、図6に示した実施例と同様に接続する。そして、これらの磁気抵抗素子S1〜S12の出力をそれぞれA/D変換器63によってそれぞれA/D変換し、演算回路65によってデジタル値を上記数3、数4式に代入してA相およびB相の検出信号Aout、Boutを演算によって求め、さらに検出信号Aout、Boutに基づいて内挿演算を実行して回転角を求める。
【0030】
図6に示した実施例では、磁気抵抗素子S1〜S12全ての出力信号をA/D変換してから利用しているが、本発明の実施の形態では、出力信号の係数が同じ磁気抵抗素子をアナログ的に加算、つまり直列接続して処理することにより出力数、A/D変換処理量を減らすことも可能である。数5、数6式において、係数が同じ磁気抵抗素子をアナログ的に加算する実施例を、図8に示した。この磁気抵抗素子の結線に関する第2の実施例では磁気抵抗素子S4、S10と基準抵抗R02、磁気抵抗素子S1、S7と基準抵抗R02、磁気抵抗素子S2、S6、S8、S12と基準抵抗R02、および磁気抵抗素子S3、S5、S9、S11と基準抵抗R02がそれぞれ直列に接続され、これら直列接続された磁気抵抗素子と基準抵抗が、定電圧(Vc)端子とグランドとの間に並列に挿入されている。そして、各基準抵抗R02と磁気抵抗素子S10、S7、S12、S11との接続点の出力レベル(電圧)を出力e11、e21、e31、e41として取り出し、4個の出力e11、e21、e31、e41をA/D変換器63によってデジタル値に変換する。
【0031】
そして、デジタル値に変換したe11、e21、e31、e41を、数1、数2式に対応する下記数5、数6式に代入して検出信号Aout、Boutを求める。
【数5】
Aout=e11+1/2(e31)+3−1/2/2(e41)
【数6】
Bout=−e21+1/2(e41)+31/2/2(e31)
さらに、内挿演算、
Δω=tan−1(Aout/Bout)
によって各素子のゼロクロス点検出によるπ/6よりも小さい角度(細密回転角)Δωを求める。
【0032】
以上の通り本発明の実施の形態によれば、補正する1次、2次、3次数に応じた12個の磁気抵抗素子S1〜S12を、電気角πの1/(次数×2)の位相差θだけ離反させて配置し、各磁気抵抗素子S1〜S12の出力レベル(Vm)を、数1、数2の式によって演算してベクトル的な位相差を有する二組の検出信号Aout、Boutを求め、さらに検出信号Aout、Boutを内挿演算式に代入して演算することにより磁気ドラム53の回転角を求めるので、磁気抵抗素子を増やすことなく、多数の次数の高調波誤差を補正することができる。しかも、各磁気抵抗素子S1〜S12の出力信号をまずA/D変換するので、磁気ドラム53の曲率の影響などの誤差を、定量的に簡単に補正することができる。さらに、複数のセンサユニットを設ける必要が無いので、センサユニットの位置決めなどの手間がかからず、調整ミスなどによる人為的誤差の発生を防止できる。
【0033】
なお、本実施の形態では、多極着磁層53aの1ピッチ、2π以内に12個の磁気抵抗素子S1〜S12をπ/6の位相差を持たせて配置したが、磁気抵抗素子の数および位相差はこれに限定されることはない。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り本発明は、任意次数の高調波誤差を補正するように前記各磁気センサを、前記多極着磁層の1ピッチよりも短い間隔であって、それぞれ検出信号の位相がθmずれるようにw個配置し、該w個の磁気センサの検出信号の出力レベル(Vm)を、数1、数2式によってベクトル的な二組の信号A、Bとして求め、さらに該演算した信号A、Bを内挿演算して前記回転部の回転角を求めるので、少ない磁気センサ数で多数の高調波誤差を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した磁気式エンコーダを搭載したトータルステーションを、磁気式エンコーダの要部が見えるように一部を切断して示した背面図である。
【図2】同トータルステーションを、磁気式エンコーダの要部が見えるように一部を切断して示した側面図である。
【図3】同磁気式エンコーダの磁気ドラムと磁気センサとの関係を説明する拡大図である。
【図4】同磁気式エンコーダの磁気抵抗素子の結線の一例を示す回路図である。
【図5】図1、2に示したトータルステーションに適用した本発明の磁気式エンコーダの第1の実施例の要部を示す図である。
【図6】図5に示した磁気式エンコーダにおける磁気抵抗素子の結線の第1の実施例を示す回路図である。
【図7】図1、2に示したトータルステーションに適用した本発明の磁気式エンコーダの第2の実施例の要部を示す図である。
【図8】図5、7に示した実施例の磁気抵抗素子の結線の第2の実施例を示す回路図である。
【符号の説明】
11 トータルステーション
13 底板
15 整準ねじ
17 整準台
19 鉛直軸
21 架台
23 高度分度軸
25 視準望遠鏡
27 鉛直軸受け
29 高度分度軸受け
41 51 磁気式エンコーダ
43 53 磁気ドラム(回転部)
53a 多極着磁層
53aN 磁極
44 54 磁気センサユニット
540 541 磁気センサユニット
61 電子回路
63 A/D変換器(A/D変換手段)
65 演算回路(演算手段)
S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12 磁気抵抗素子(磁気センサ)
【発明の技術分野】
本発明は、高調波誤差を削減できる磁気式エンコーダおよびその磁気式エンコーダの高調波誤差削減方法に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
測角手段として、磁気式エンコーダが知られている。この磁気式エンコーダを、従来の測量機器、例えばトータルステーション、セオドライトなどの測角手段として搭載する発明が提案されている。この種の磁気式エンコーダは、視準望遠鏡と共に回転する磁気ドラムとこの磁気ドラムの回転角を検出する磁気センサを備える。磁気ドラムの外周面には分割数N(Nは正の整数)にて等ピッチで着磁された多極着磁層が形成され、この多極着磁層に対向させて磁気センサが配置される。磁気センサは、例えば多極着磁層のピッチよりも小さいピッチで配置された4個の磁気抵抗素子を備える。したがって、磁気ドラムの回転に伴って変化する磁気抵抗素子の抵抗値を検出することで、磁気ドラムの回転角を多極着磁層のピッチ精度で測定し、さらにこのピッチ間の角度を内挿演算によって測定することができる。
【0003】
しかしながら、磁気式エンコーダの場合、多極着磁層の分割数を光学式エンコーダほど多く取れずしかもピッチが大きいため、寸法誤差、磁気抵抗素子の磁気抵抗曲線の理想値からのずれなどにより、分割した1ピッチ内での高調波歪みの影響、つまり高調波誤差が大きい、という問題があった。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みてなされたもので、測量機に適した、任意次数の高調波誤差を削減する磁気式エンコーダおよびその高調波誤差削減方法を提供することを目的とする。
【0005】
【発明の概要】
この目的を達成する本発明の磁気式エンコーダは、外周面に等ピッチで着磁された多極着磁層を有する磁気ドラムと、該磁気ドラムの外周面に対向させて複数個配置された磁気センサを備え、該磁気センサと該磁気ドラムが相対回転すると、該各磁気センサが相対回転角に応じて周期的に変化する検出信号を出力する磁気式エンコーダであって、
任意次数の高調波誤差を補正するように、前記多極着磁層の1ピッチよりも短い間隔であって、それぞれ検出信号の位相がθmずれるように配置されたw個の磁気センサと、
前記磁気ドラムと前記磁気センサとが相対回転するときに前記w個の磁気センサが出力する検出信号の出力レベル(Vm)と、下記数1、数2式によって、ベクトル的な二組の信号Aout、Boutを求める演算手段を備えたことを特徴とする。
【数1】
Aout=Σw m=1Vm×sinθm
【数2】
Bout=Σw m=1Vm×cosθm
該演算した信号Aout、Boutを内挿演算して前記回転部の回転角を求める。
ただし、mは補正したい高調波誤差の次数(整数)、θは電気角度である。
また本発明の高調波誤差削減方法は、周面に等ピッチで着磁された多極着磁層を有する回転部と、該回転部の外周面に対向させて複数個配置され、該回転部が回転するとその回転角に応じて周期的に変化する検出信号を出力する磁気センサを備え、任意次数の高調波誤差を補正するように前記各磁気センサを、前記多極着磁層の1ピッチよりも短い間隔であって、それぞれ検出信号の位相がθmずれるようにw個配置し、前記回転部が回転するときに検出した該w個の磁気センサの検出信号の出力レベル(Vm)を、下記数1、数2式によってベクトル的な二組の信号Aout、Boutとして演算し、
【数1】
Aout=Σw m=1Vm×sinθm
【数2】
Bout=Σw m=1Vm×cosθm
さらに該演算した信号Aout、Boutを内挿演算して前記回転部の回転角を求めること、を特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明を説明する。図1は、本発明の磁気式エンコーダを搭載したトータルステーションを、磁気式エンコーダの要部が見えるように一部を切断して示す背面図、図2は同トータルステーションを、磁気式エンコーダの要部が見えるように一部を切断して示す側面図である。
【0007】
このトータルステーション11は、周知の通り、三脚等に装着するための底板13、この底板13に3本の整準ねじ15で支持された整準台(台部)17、この整準台17に、鉛直軸19を介して回転自在に軸支され、一対の支柱部21aを有するU字形状の架台(本体)21、この架台21の2本の支柱部21a間に高度分度軸23を介して回動自在に軸支された視準望遠鏡25等を備えている。なお、高度分度軸23は、視準望遠鏡25の左右に固定され、架台21の2本の支柱部21aに対して回動自在に支持されているが、図1には左側の高度分度軸23のみを示した。
【0008】
鉛直軸19は、整準台17に固定された鉛直軸受け27に回動自在に支持されている。そして架台21は、その支柱部21aを連結する基部21bが鉛直軸19の上端部に固定され、鉛直軸19に一体として回動自在に支持されている。高度分度軸23は、架台21の一対の支柱部21aに固定された高度分度軸受け29に回動自在に軸支されている。このように視準望遠鏡25は、高度分度軸23を介して上下方向回動自在に架台21に軸支され、さらに架台21および鉛直軸19を介して方位方向回転自在に整準台17に軸支されている。
【0009】
さらに、鉛直軸19と鉛直軸受け27との間には、整準台17(鉛直軸受け27)に対する鉛直軸19(架台21に搭載された視準望遠鏡25)の相対回転角(水平角)を測定する水平分度として磁気式エンコーダ41が装着され、高度分度軸23と架台21とには、架台21に対する高度分度軸23(視準望遠鏡25)の回転角(高度角)を測定する高度分度として磁気式エンコーダ51が装着されている。これらの磁気式エンコーダ41、51はそれぞれ、軸受け27、軸23に固定された磁気ドラム43、53と、磁気ドラム43、53の外周面に形成された多極着磁層に対して所定間隔で近接対向配置された磁気センサユニット44、45、磁気センサユニット54、55を備えている。本発明において、磁気ドラム43、53の媒体形状は図示実施例に限定されず、円盤、円筒、円柱形状も含む。
この実施例において、磁気式エンコーダ41は、磁気ドラム43に対して磁気センサユニット44、45が相対回転し、磁気式エンコーダ51は、磁気センサユニット54、55に対して磁気ドラム53が相対回転する。
【0010】
また、詳細は図示しないが、各磁気センサユニット44、45、磁気センサユニット54、55の出力信号を検出して磁気式エンコーダ41、51の回転角、つまり水平角、高度角を求める信号処理手段、演算手段を含む電子回路61(図4参照)が架台21の基部21bに搭載されている。そして、トータルステーション11を操作、制御するためのキーボード、およびキーボードによって入力された基礎データや測距結果などを表示する表示器を備えた操作パネル31、32が、架台21の前後両表面に設けられている(図2参照)。
【0011】
なお、図1、2において、符号33はトータルステーション11の持ち運びに利用するためのハンドグリップ、符号34は磁気式エンコーダ41および不図示のバッテリ等を保護するために架台21に装着された防塵カバー、符号35、36はそれぞれ、視準望遠鏡25の接眼レンズ、対物レンズである。
【0012】
この磁気式エンコーダ41、51の構成についてより詳細に説明する。磁気式エンコーダ41、51の基本構成は同一なので、一方の磁気式エンコーダ51の一方の磁気センサユニット54の構成について、図3、4を参照して説明する。図3は磁気式エンコーダ51の磁気センサユニット54の各磁気センサと磁気ドラム53の多極着磁層53aとの関係を説明するための拡大図、図4は磁気センサが備えた磁気抵抗素子の結線を示す配線図である。磁気センサユニット54は、アングル56(図1参照)に固定され、アングル56を介して架台21に固定されている。
【0013】
磁気ドラム53の外周面には、分割数N(Nは正の整数)にて等ピッチで着磁された多極着磁層53aが形成されている。多極着磁層53aの各磁極53aNの磁極ピッチ(極の境界の間隔)をλとする。磁極ピッチλの電気角は2πである。この多極着磁層53aに対して所定の隙間で対向させて磁気センサユニット54が配置されている。磁気センサユニット54は、単一の平面基板54aと、多極着磁層53aと対向する平面基板54aの対向面に、λ/4ピッチ相当で設けられた8個の磁気抵抗素子4a1、4b1、4a2、4b2、4a3、4b3、4a4、4b4を備えている。そして磁気センサユニット54は、その中央に立てた垂線が磁気ドラム53の回転中心を通るように配置されている。
【0014】
この磁気式エンコーダ51は、磁気ドラム53が回転すると、多極着磁層53aが発生する磁界3の変化に依存する磁気抵抗素子4a1〜4a4、4b1〜4b4の抵抗値の変化を検出して、抵抗値の変化から磁気ドラム53の回転角ωをλ/4ピッチで検出するインクリメンタル方式の磁気式エンコーダである。なお、λ/4ピッチよりも小さい角度(細密回転角)は、いわゆる内挿演算によって求められる。
【0015】
8個の磁気抵抗素子4a1、4b1、4a2、4b2、4a3、4b3、4a4、4b4は、図3に示すように、4個の磁気抵抗素子4a1〜4a4からなるA相と、4個の磁気抵抗素子4b1〜4b4からなるB相とに分けられる。A相の各磁気抵抗素子4a1、4a2、4a3、4a4とB相の各磁気抵抗素子4b1、4b2、4b3、4b4はそれぞれ交互に配置され、かつ同一相の磁気抵抗素子4a1〜4a4、4b1〜4b4の間隔はλ/2の等ピッチ、隣合う他の相の磁気抵抗素子との間隔はλ/4の等ピッチである。
【0016】
これらA相、B相の磁気抵抗素子4a1〜4a4、4b1〜4b4はそれぞれ、図4に示すようにブリッジ結線されている。つまり、直列した磁気抵抗素子4a1、4a2と磁気抵抗素子4a3、4a4、磁気抵抗素子4b1、4b2と磁気抵抗素子4b3、4b4が並列接続され、各直列抵抗間からA相の端子e0、e1、およびB相の端子e0′、e1′が引き出されている。そして、電子回路61は、ブリッジ結線された磁気抵抗素子間に定電圧Vを印加し、A相の端子e0、e1、およびB相の端子e0′、e1′に現れる電圧の変化(位相)に基づいて磁界の変化を検出し、磁気ドラム53の回転角ωを測定する。つまり、位相の変化数をカウントして回転各ωを測定する。
【0017】
この実施の形態によれば、A相の磁気抵抗素子4a1〜4a4の抵抗値a1、a2、a3、a4は、磁気ドラム53の回転により作用する磁界3の変化によって、下記式のように変化する。
a1=R0+Rsin(Nω)
a2=R0+Rsin(Nω+π)=R0−Rsin(Nω)
a3=R0+Rsin(Nω+2π)=R0+Rsin(Nω)
a4=R0+Rsin(Nω+3π)=R0−Rsin(Nω)
ただし、ωは磁気ドラム53の回転角、R0は無磁界のときの抵抗値、Rは係数(抵抗比)、Nは多極着磁層53aの数(分割数)である。
【0018】
したがって、端子e0と端子e1の出力を差動増幅すると、A相の出力Aoutは、
Aout=α×R×V/R0×sin(Nω)
となる(ただし、αは増幅率)。
【0019】
B相の磁気抵抗素子4b1〜4b4は、A相の磁気抵抗素子4a1〜4a4に対してλ/4ピッチずらして配置してあるので、端子e0′と端子e1′の出力を差動増幅すると、B相の出力Boutは、
Bout=α×R×V/R0×cos(Nω)
となる。
【0020】
このA相の出力AoutおよびB相の出力Boutのゼロクロス点を検出すれば、磁気ドラム53の回転角を、4×N単位、つまり360/(4×N)(゜)単位で検出できる。このように、分割数Nの4倍まで検出ピッチが小さくなり、分解能が高くなる。測量機においては、(1/N)/4よりも小さい角度Δωの検出が要求され、分割数N以上の分割数が必要になることがある。そこで、A、B相の出力Aout、Boutに基づいた下記の内挿計算によって、分割数を増やすことなく、検出可能な検出ピッチを小さくし、検出ピッチ数を増やして、分解能を高めることができる。
Δω=tan−1(Aout/Bout)
【0021】
以上の磁気式エンコーダの場合、多極着磁層の分割数を光学式エンコーダほど多く取れずしかもピッチが大きいため、寸法誤差、磁気抵抗素子の磁気抵抗曲線の理想値からのずれなどにより、分割した1ピッチ内での高調波誤差(高調波歪み)の影響が大きい。そのため、高精度化の要求を満足させるのは非常に困難であり、満足させるためには高調波誤差を補正する必要があり、そのためにはセンサユニット、または磁気抵抗素子の個数を増やさなければならない。たとえば、従来技術によると、1つのn次高調波誤差を補正するためには、同様のセンサを2組用意し、各センサを電気角がΠ/nずれるように配置する必要がある。この場合、上記8個の倍の2倍の16個の磁気抵抗素子が必要となり、k個の高調波誤差をなくすためには2k倍まで磁気抵抗素子が必要になる。しかし、1個のセンサユニット内で磁気抵抗素子を増加させるとセンサユニットの幅が広がり、磁気ドラムの曲率の影響、つまり磁気ドラムから磁気抵抗素子までの距離差を受けやすくなり、誤差が大きくなってしまう問題がある。
【0022】
そこで本発明の実施の形態は、所望の高調波誤差を補正するように、1波長λ、つまり電気角2πに相当する1ピッチ内に、w個の磁気抵抗素子を任意間隔の位相差(θm)で配置し、磁気ドラムが回転するときに生じるw個の磁気抵抗素子の抵抗変化に対する出力変化Vmを、下記数1、数2式により、ベクトル的なA相の検出信号Aout、B相の検出信号Boutとして算出する。
【数1】
Aout=Σw m=1Vm×sinθm
【数2】
Bout=Σw m=1Vm×cosθm
さらに、演算した検出信号Aout、Boutに基づいて内挿演算を実行して2π/wピッチよりも小さい角度(細密角度)Δωを検出する。
Δω=tan−1(A/B)
【0023】
その実施形態を、さらに図5、6、7および8を参照して説明する。この実施形態は、図1、2に示したトータルステーションの磁気式エンコーダに適用した実施例であり、図5、7には図3に対応する部分を示してある。なお、これらの図において図1、2と共通の部材には同一の符号を付してある。
【0024】
図5、6に示した第1の実施例は、1次、2次および3次の高調波誤差を補正する磁気抵抗素子の配置構造を示している。磁気センサユニット540には、12個の磁気抵抗素子S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12が配置されている。各磁気抵抗素子S1〜S12は、外周面をN分割してN個の磁極が形成された多極着磁層53aの1ピッチ(多極着磁層53aの磁極53aNのピッチ)内(電気角では2π、1波長λ内)に、π/6の等しい位相差が発生するようにセンサユニット540に配置されている。つまり、各磁気抵抗素子S1〜S12の間隔はπ/6である。したがって、磁気ドラム53が回転すると、各磁気抵抗素子S1〜S12が受ける磁界3はπ/6づつ位相がずれて変化するので、各磁気抵抗素子S1〜S12の抵抗値は、π/6づつ位相がずれて変化する。そこで、各磁気抵抗素子S1〜S12を各基準抵抗R01を介して接地して基準電圧Vcを印加する(図6参照)。そして、各磁気抵抗素子S1〜S12と基準抵抗R01の接続点の電圧を出力レベルとしてA/D変換器63によってデジタル値、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、に変換する。このデジタル値を下記数3、数4式によって加算平均することにより、A相の検出信号AoutおよびB相の検出信号Boutに変換すると同時に、1次、2次および3次の高調波誤差を補正している。
【数3】
Aout=Σw m=1Vm×sinθm
sinθm=sin(2π/w×(m−1))
Aout=V4−V10+1/2(V2+V6−V8−V12)+3−1/2/2(V3+V5−V9−V11)
【数4】
Bout=Σw m=1Vm×cosθm
cosθm=cos(2π/w×(m−1))
Bout=−V1−V7+1/2(V3+V11−V5−V9)+31/2/2(V2+V12−V6−V8)
ただし、V1〜V12は、基準電圧Vcからの差電圧の絶対値である。
【0025】
上記演算によって求めたディジタル信号Aout、Boutのゼロクロス点をカウントすることによって、粗回転角ωが求まる。
【0026】
そして、この演算値Aout、Boutを下記式によって内挿演算することにより、1/4ピッチ(位相差π/2)よりも小さい角度(細密回転角)Δωを求めることができる。
Δω=tan−1(Aout/Bout)
【0027】
この実施例では、各磁気抵抗素子S1〜S12の出力レベルをA/D変換しているので、各磁気抵抗素子単位で磁気ドラム53の曲率の影響による磁界差を補正することも、各磁気抵抗素子の個体差により生じる誤差を補正することもできる。
【0028】
本発明の磁気センサユニットの第2の実施例を、図7に示した。この第2の実施例は、磁気センサユニット541に、複数の磁気抵抗素子を電気角2π内に配置できない場合の一実施例である。この第2の実施例では、12個の磁気抵抗素子S1〜S12を6個ずつA相群(磁気抵抗素子S1、S3、S5、S7、S9、S11)と、B相群(磁気抵抗素子S2、S4、S6、S8、S10、S12)とに分け、各A、B相群の磁気抵抗素子の間隔は電気角でπ/3に、A群とB群の間隔は電気角で2π+π/6に設定し、4π内に配置してある。つまり、各磁気抵抗素子S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12のピッチは、実質的にπ/6となる。
【0029】
これらの磁気抵抗素子S1〜S12は、図6に示した実施例と同様に接続する。そして、これらの磁気抵抗素子S1〜S12の出力をそれぞれA/D変換器63によってそれぞれA/D変換し、演算回路65によってデジタル値を上記数3、数4式に代入してA相およびB相の検出信号Aout、Boutを演算によって求め、さらに検出信号Aout、Boutに基づいて内挿演算を実行して回転角を求める。
【0030】
図6に示した実施例では、磁気抵抗素子S1〜S12全ての出力信号をA/D変換してから利用しているが、本発明の実施の形態では、出力信号の係数が同じ磁気抵抗素子をアナログ的に加算、つまり直列接続して処理することにより出力数、A/D変換処理量を減らすことも可能である。数5、数6式において、係数が同じ磁気抵抗素子をアナログ的に加算する実施例を、図8に示した。この磁気抵抗素子の結線に関する第2の実施例では磁気抵抗素子S4、S10と基準抵抗R02、磁気抵抗素子S1、S7と基準抵抗R02、磁気抵抗素子S2、S6、S8、S12と基準抵抗R02、および磁気抵抗素子S3、S5、S9、S11と基準抵抗R02がそれぞれ直列に接続され、これら直列接続された磁気抵抗素子と基準抵抗が、定電圧(Vc)端子とグランドとの間に並列に挿入されている。そして、各基準抵抗R02と磁気抵抗素子S10、S7、S12、S11との接続点の出力レベル(電圧)を出力e11、e21、e31、e41として取り出し、4個の出力e11、e21、e31、e41をA/D変換器63によってデジタル値に変換する。
【0031】
そして、デジタル値に変換したe11、e21、e31、e41を、数1、数2式に対応する下記数5、数6式に代入して検出信号Aout、Boutを求める。
【数5】
Aout=e11+1/2(e31)+3−1/2/2(e41)
【数6】
Bout=−e21+1/2(e41)+31/2/2(e31)
さらに、内挿演算、
Δω=tan−1(Aout/Bout)
によって各素子のゼロクロス点検出によるπ/6よりも小さい角度(細密回転角)Δωを求める。
【0032】
以上の通り本発明の実施の形態によれば、補正する1次、2次、3次数に応じた12個の磁気抵抗素子S1〜S12を、電気角πの1/(次数×2)の位相差θだけ離反させて配置し、各磁気抵抗素子S1〜S12の出力レベル(Vm)を、数1、数2の式によって演算してベクトル的な位相差を有する二組の検出信号Aout、Boutを求め、さらに検出信号Aout、Boutを内挿演算式に代入して演算することにより磁気ドラム53の回転角を求めるので、磁気抵抗素子を増やすことなく、多数の次数の高調波誤差を補正することができる。しかも、各磁気抵抗素子S1〜S12の出力信号をまずA/D変換するので、磁気ドラム53の曲率の影響などの誤差を、定量的に簡単に補正することができる。さらに、複数のセンサユニットを設ける必要が無いので、センサユニットの位置決めなどの手間がかからず、調整ミスなどによる人為的誤差の発生を防止できる。
【0033】
なお、本実施の形態では、多極着磁層53aの1ピッチ、2π以内に12個の磁気抵抗素子S1〜S12をπ/6の位相差を持たせて配置したが、磁気抵抗素子の数および位相差はこれに限定されることはない。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り本発明は、任意次数の高調波誤差を補正するように前記各磁気センサを、前記多極着磁層の1ピッチよりも短い間隔であって、それぞれ検出信号の位相がθmずれるようにw個配置し、該w個の磁気センサの検出信号の出力レベル(Vm)を、数1、数2式によってベクトル的な二組の信号A、Bとして求め、さらに該演算した信号A、Bを内挿演算して前記回転部の回転角を求めるので、少ない磁気センサ数で多数の高調波誤差を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した磁気式エンコーダを搭載したトータルステーションを、磁気式エンコーダの要部が見えるように一部を切断して示した背面図である。
【図2】同トータルステーションを、磁気式エンコーダの要部が見えるように一部を切断して示した側面図である。
【図3】同磁気式エンコーダの磁気ドラムと磁気センサとの関係を説明する拡大図である。
【図4】同磁気式エンコーダの磁気抵抗素子の結線の一例を示す回路図である。
【図5】図1、2に示したトータルステーションに適用した本発明の磁気式エンコーダの第1の実施例の要部を示す図である。
【図6】図5に示した磁気式エンコーダにおける磁気抵抗素子の結線の第1の実施例を示す回路図である。
【図7】図1、2に示したトータルステーションに適用した本発明の磁気式エンコーダの第2の実施例の要部を示す図である。
【図8】図5、7に示した実施例の磁気抵抗素子の結線の第2の実施例を示す回路図である。
【符号の説明】
11 トータルステーション
13 底板
15 整準ねじ
17 整準台
19 鉛直軸
21 架台
23 高度分度軸
25 視準望遠鏡
27 鉛直軸受け
29 高度分度軸受け
41 51 磁気式エンコーダ
43 53 磁気ドラム(回転部)
53a 多極着磁層
53aN 磁極
44 54 磁気センサユニット
540 541 磁気センサユニット
61 電子回路
63 A/D変換器(A/D変換手段)
65 演算回路(演算手段)
S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12 磁気抵抗素子(磁気センサ)
Claims (11)
- 外周面に等ピッチで着磁された多極着磁層を有する磁気ドラムと、該磁気ドラムの外周面に対向させて複数個配置された磁気センサを備え、該磁気センサと該磁気ドラムが相対回転すると、該各磁気センサが相対回転角に応じて周期的に変化する検出信号を出力する磁気式エンコーダであって、
任意次数の高調波誤差を補正するように、前記多極着磁層の1ピッチよりも短い間隔であって、それぞれ検出信号の位相がθmずれるように配置されたw個の磁気センサと、
前記磁気ドラムと前記磁気センサとが相対回転するときに前記w個の磁気センサが出力する検出信号の出力レベル(Vm)と、下記数1、数2式によって、ベクトル的な二組の信号Aout、Boutを求める演算手段を備えたことを特徴とする磁気式エンコーダ。
- 前記演算手段はさらに、前記演算した信号Aout、Boutを内挿演算して前記相対回転角を求める請求項1記載の磁気式エンコーダ。
- 前記内挿演算は、式
tan−1(Aout/Bout)
による演算である請求項2記載の磁気式エンコーダ。 - 前記磁気センサは磁気抵抗素子であって、該磁気抵抗素子は、単一の基板に配置されている請求項2または3記載の磁気式エンコーダ。
- 前記各磁気抵抗素子の出力信号をA/D変換し、該A/D変換した各デジタル信号に基づいて前記数1、数2式によって内挿演算する請求項4記載の磁気式エンコーダ。
- 前記A/D変換した各デジタル信号に所定係数による補正をする請求項5記載の磁気式エンコーダ。
- 前記数1、数2式中で同一係数の出力信号はアナログ処理によって加算し、加算した出力信号をA/D変換する請求項5または6記載の磁気式エンコーダ。
- 前記アナログ処理は、前記対応する磁気抵抗素子を直列接続することである請求項7記載の磁気式エンコーダ。
- 前記磁気式エンコーダは、視準望遠鏡を備えた測量機に、該視準望遠鏡の高度角または方位角を測定する角度測定装置として搭載されている請求項1から8のいずれか一項記載の磁気式エンコーダ。
- 外周面に等ピッチで着磁された多極着磁層を有する磁気ドラムと、該磁気ドラムの外周に対向させて複数個配置された磁気センサを備え、該磁気センサと該磁気ドラムが相対回転したときに該各磁気センサが出力する、前記相対回転角に応じて周期的に変化する検出信号の高調波誤差削減方法であって、
任意次数の高調波誤差を補正するように前記各磁気センサを、前記多極着磁層の1ピッチよりも短い間隔であって、それぞれ検出信号の位相がθmずれるようにw個配置し、
前記磁気ドラムと前記磁気センサとが相対回転するときに前記w個の磁気センサが出力する検出信号の出力レベル(Vm)と、下記数1、数2式によってベクトル的な二組の信号Aout、Boutを演算すること、を特徴とする磁気式エンコーダの高調波誤差削減方法。
- 前記演算した信号Aout、Boutを内挿演算して前記回転部の回転角を求める段階を含むことを特徴とする請求項10記載の磁気式エンコーダの高調波誤差削減方法。
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