JP3633407B2 - 非拘束型制振材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板の片面に粘弾性層が形成されてなる非拘束型制振材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
音響ルーム用の遮音壁,建築構造体用の遮音間仕切り,車両用の防音壁等に適用され、振動や騒音を吸収する制振材としては、拘束型制振材や非拘束型制振材が用いられている。上記拘束型制振材は、基板の片面に粘弾性層を形成し、さらにその上に拘束層を形成した構成であり、上記非拘束型制振材は、基板の片面に粘弾性層のみを形成し、その上に拘束層を形成していない構成である。最近では、コストが安く、取り扱いが容易である等の理由から、上記非拘束型制振材が主流となっている。
【0003】
上記非拘束型制振材の粘弾性層としては、一般に、高分子系材料からなる高減衰材料組成物が用いられている。上記高分子系材料は、典型的な粘弾性挙動を呈するものであり、その材料部が何等かの原因で振動すると、それぞれの材料部に、複素正弦歪(ε* )が発生し、これにより複素正弦応力(σ* )が発生する。複素弾性係数(E* )は、次式に示すように、これらの比をとったものである。
複素弾性係数(E* )=複素正弦応力(σ* )/複素正弦歪(ε* )
【0004】
上記複素弾性係数(E* )の実数部は、高分子系材料の弾性的な性質に係る貯蔵弾性率(E′)と定義され、上記複素弾性係数(E* )の虚数部は、高分子系材料の粘性的な性質に係る損失弾性率(E″)と定義される。損失正接(tanδ)は、次式に示すように、これらの比をとったものである。
損失正接(tanδ)=損失弾性率(E″)/貯蔵弾性率(E′)
【0005】
上記損失正接(tanδ)は、防音・制振特性を決定する因子の一つであり、この値が高いほど力学的エネルギーを電気あるいは熱エネルギーとして吸収・放出して、優れた吸音性や制振性等の機械特性を示すことが知られている。従来、高減衰材料組成物の損失正接(tanδ)として求められる値は0.5以上であり、tanδ≧0.5を満たした材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一ポリマーに、マイカ,炭酸カルシウム等の充填剤や、可塑剤等を配合した高分子系材料が用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記高分子系材料は、従来の要求特性(tanδ≧0.5)に応えているとはいえ、これを非拘束型制振材の粘弾性層に適用した場合、つぎのような問題がある。すなわち、非拘束型制振材においては、その制振特性は、損失係数(η)が重要な因子となり、充分な高減衰性を発現するためには、損失係数(η)>0.1が要求される。そして、この損失係数(η)は温度に依存し、従来の非拘束型制振材では、低温側および高温側の損失係数(η)が0.1未満となり、非拘束型制振材の使用環境が変化した場合に、その環境温度の変化に適応することができず、温度依存性に劣るという難点がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、温度依存性に優れた非拘束型制振材の提供をその目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の非拘束型制振材は、基板の片面に粘弾性層が形成された非拘束型制振材であって、上記粘弾性層が、下記の(A)および(B)成分を母材とし、これに下記の(C)成分が配合されて形成されているという構成をとる。
(A)ガラス転移温度(Tg)が35〜60℃の範囲にある樹脂。
(B)ガラス転移温度(Tg)が−10〜20℃の範囲にあるゴム。
(C)制振フィラー。
【0009】
すなわち、本発明者らは、非拘束型制振材の損失係数(η)の温度依存性について研究を重ねた結果、非拘束型制振材の損失係数(η)は、損失正接(tanδ)よりも損失弾性率(E″)が重要な因子となり、この損失弾性率(E″)の温度依存性を改良すると、損失係数(η)の温度依存性も向上することを突き止めた。そして、さらに研究開発を続けた結果、上記非拘束型制振材の粘弾性層を、ガラス転移温度(Tg)が高温側にある樹脂(A成分)と、ガラス転移温度(Tg)が低温側にあるゴム(B成分)の2成分を母材とした非相溶系組み合わせに、制振フィラー(C成分)を配合して形成すると、A成分とB成分の相溶状態が微粉分散となる部分相溶状態になり、損失弾性率(E″)がブロードとなり、損失弾性率(E″)の温度依存性が向上することを突き止めた。その結果、低温側および高温側の損失係数(η)が0.1を超え、損失係数(η)>0.1の温度範囲が0〜60℃程度の広範囲となり、幅広い温度範囲での使用に適し、温度依存性に優れた非拘束型制振材が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
なお、本発明において、上記B成分であるゴムは、広義のゴムを意味し、エラストマーも含む趣旨である。
【0011】
また、本発明において、特定の樹脂(A成分)および特定のゴム(B成分)を母材とするとは、A成分とB成分がいわゆる海−島構造をとることを意味し、両者のどちらが「海」,「島」であるかは特に限定するものではない。
【0012】
さらに、本発明において、上記A成分のガラス転移温度(Tg)とは、粘弾性の損失正接(tanδ)〔tanδ=E″/E′〕のピーク温度を意味する。そして、上記tanδは、周波数10Hz、歪み10μm、昇温速度3℃/分の条件で、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製のDMA2980)を用いて測定した時の値である。なお、上記B成分のガラス転移温度(Tg)も、上記A成分のガラス転移温度(Tg)と同様の意味である。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0014】
本発明の非拘束型制振材は、基板の片面に粘弾性層が形成されて構成されており、上記粘弾性層が、特定の樹脂(A成分)および特定のゴム(B成分)の2成分を母材とした非相溶系組み合わせに、制振フィラー(C成分)が配合されて形成されていることが最大の特徴である。
【0015】
上記基板としては、制振材の分野で用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、鋼板、アルミニウム板、銅板、各種プラスチック板、木板、合板、コンクリート等があげられる。
【0016】
上記粘弾性層の母材となる特定の樹脂(A成分)としては、ガラス転移温度(Tg)が35〜60℃の範囲にあれば特に限定はなく、例えば、塩素化ポリプロピレン(CPP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ハイスチレン樹脂等があげられ、これらの中のいずれか一つが用いられる。
【0017】
上記特定の樹脂(A成分)は、ガラス転移温度(Tg)が35〜60℃の範囲にある必要があり、好ましくは40〜55℃である。すなわち、ガラス転移温度(Tg)が35℃未満であると、上記特定のゴム(B成分)とのTg差(ΔTg)が小さくなりすぎ、広範囲な温度での高減衰性が得られず、逆に60℃を超えると、上記特定のゴム(B成分)とのTg差(ΔTg)が大きくなりすぎ、tanδピークが鞍型となり、減衰性の低い温度域が現れるからである。
【0018】
上記特定の樹脂(A成分)とともに用いられる特定のゴム(B成分)は、前述のように、広義のゴムを意味し、エラストマーも含む趣旨である。このようなゴム(B成分)としては、ガラス転移温度(Tg)が−10〜20℃の範囲にあれば特に限定はなく、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、エチレン−アクリルゴム、塩素化ポリエチレン(CPE)、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエンゴム(RB)等があげられ、これらの中のいずれか一つが用いられる。
【0019】
上記特定のゴム(B成分)は、ガラス転移温度(Tg)が−10〜20℃の範囲にある必要があり、好ましくは0〜15℃である。すなわち、ガラス転移温度(Tg)が−10℃未満であると、上記特定の樹脂(A成分)とのTg差(ΔTg)が大きくなりすぎ、tanδピークが鞍型となり、減衰性の低い温度域が現れ、逆に20℃を超えると、上記特定の樹脂(A成分)とのTg差(ΔTg)が小さくなりすぎ、広範囲な温度での高減衰性が得られないからである。
【0020】
上記特定の樹脂(A成分)のガラス転移温度(Tg)と、特定のゴム(B成分)のガラス転移温度(Tg)のガラス転移温度の差(ΔTg)は、30〜60℃の範囲が好ましく、特に好ましくは30〜40℃である。
【0021】
上記特定の樹脂(A成分)と特定のゴム(B成分)の組み合わせは、両者の相溶状態が微粉分散となる部分相溶状態になるように組み合わされ、具体的には、両者の配合割合は、重量比で、A成分/B成分=1/9〜9/1の範囲が好ましく、特に好ましくはA成分/B成分=3/7〜7/3である。
【0022】
上記A成分,B成分とともに用いられる制振フィラー(C成分)としては、特に限定はなく、例えば、タルク、マイカ、黒鉛、炭酸カルシウム、チタン酸カルシウム、ウォラストナイト、ゾイトライト、炭素繊維、フェライト等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、母材中にある程度パラレルに分散した構造をとり、制振性に優れる点で、板状または針状のものが好適に用いられる。
【0023】
上記制振フィラー(C成分)の配合割合は、上記A成分とB成分の合計重量100重量部(以下「部」と略す)に対して、10〜1000部の範囲が好ましく、特に好ましくは100〜400部である。すなわち、10部未満であると、充分な制振特性が得られず、逆に1000部を超えると、加工性が悪化するからである。
【0024】
上記制振フィラー(C成分)の平均径(直径)は、通常、0.1〜500μmの範囲に設定され、好ましくは0.5〜100μmである。なお、上記制振フィラー(C成分)は、平均径の異なる2種以上のものを混合したものであってもよい。
【0025】
なお、上記粘弾性層は、上記A〜C成分とともに他の成分を用いて構成しても差し支えなく、他の成分としては、例えば、粘着付与剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、着色剤(顔料、染料)、光沢剤、難燃剤、発泡剤、発泡助剤、オゾン劣化防止剤、ブロッキング防止剤、耐候剤、耐熱剤、分散剤、相溶化剤、界面活性剤、帯電防止剤、滑剤等があげられる。
【0026】
上記粘着付与剤としては、特に限定はなく、例えば、石油系炭化水素樹脂、ロジン、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、マレイン酸樹脂、エステル化ロジン、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等が好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0027】
上記架橋剤としては、例えば、硫黄系架橋剤、トリアジン系架橋剤、金属石鹸系架橋剤、アミン系架橋剤、カルバメート塩系架橋剤、イミダゾール系架橋剤等があげられる。上記架橋促進剤としては、例えば、チウラム系,チアゾール系等の架橋促進剤が好適に用いられる。上記架橋助剤としては、例えば、ZnO(酸化亜鉛2種)等があげられる。
【0028】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、パラフィン系オイル等があげられる。上記加工助剤としては、例えば、ステアリン酸等があげられる。
【0029】
本発明の非拘束型制振材は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、A〜C成分および必要に応じて他の成分を加圧蓋付きニーダー(インターミキサー)等の混練装置を用いて混練して、粘弾性層形成材料を調製する。そして、この粘弾性層形成材料を所望の方法によりシート状に成形した後、これを基板上に貼り合わせることにより、基板の片面に粘弾性層が形成されてなる非拘束型制振材を作製することができる。
【0030】
なお、上記粘弾性層の形成方法としては、上記方法に限定するものでななく、従来公知の方法が適用できる。
【0031】
このようにして得られた非拘束型制振材において、粘弾性層の厚みは、通常、0.1〜8mmの範囲に設定され、好ましくは0.5〜2mmである。なお、基板の厚みは、用いる材料に応じて適宜の範囲に設定される。
【0032】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0033】
【実施例1〜8、比較例1〜3】
後記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これを加圧蓋付きニーダー(インターミキサー)を用いて60℃で10分間混練した。ついで、厚み0.8mmの基板(SPCC鋼板)上に、上記混練物からなる粘弾性層(厚み2mm)を形成し、目的とする非拘束型制振材(大きさ:200mm×10mm)を作製した。
【0034】
このようにして得られた実施例品および比較例品の非拘束型制振材を用いて、下記の基準に従い、各特性の比較評価を行った。これらの結果を後記の表1および表2に併せて示した。
【0035】
〔損失係数〕
片持梁法損失係数測定機(松下インターテクノ社製)を用いて、測定周波数250Hzで、損失係数(η)を測定した。そして、損失係数(ηMAX )およびη>0.1の温度範囲を求めた。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
上記表1および表2の結果から、実施例品の非拘束型制振材は、いずれも損失係数(η)>0.1の温度範囲が0〜60℃程度の広範囲となり、幅広い温度範囲での使用に適し、温度依存性に優れていることがわかる。
【0039】
これに対して、比較例品の非拘束型制振材は、いずれも低温側および高温側の損失係数(η)が0.1以下で、損失係数(η)>0.1の温度範囲が狭く、温度依存性に劣ることがわかる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明の非拘束型制振材は、粘弾性層が、ガラス転移温度(Tg)が高温側にある樹脂(A成分)と、ガラス転移温度(Tg)が低温側にあるゴム(B成分)の2成分を母材とした非相溶系組み合わせに、制振フィラー(C成分)が配合されて形成されているため、A成分とB成分の相溶状態が、微粉分散となる部分相溶状態になり、損失弾性率(E″)がブロードとなり、損失弾性率(E″)の温度依存性が向上する。その結果、本発明の非拘束型制振材は、低温側および高温側の損失係数(η)が0.1を超え、損失係数(η)>0.1の温度範囲が0〜60℃程度の広範囲となり、幅広い温度範囲での使用に適し、温度依存性に優れている。
【0041】
このように優れた本発明の非拘束型制振材は、その応用範囲が極めて広く、音響ルーム用の遮音壁、建築構造体用の遮音間仕切り、車両用の防音壁等に適用される他、免震材、靴底、テニスラケット,卓球ラケット,野球バット,ゴルフクラブ,ホッケークラブ等のグリップ部の制振材、電気機器等のCD読取部用制振材、パソコン落下時等の緩衝材、蛇口ハンマーリング用制振材等にも適用することができる。
Claims (3)
- 基板の片面に粘弾性層が形成された非拘束型制振材であって、上記粘弾性層が、下記の(A)および(B)成分を母材とし、これに下記の(C)成分が配合されて形成されていることを特徴とする非拘束型制振材。
(A)ガラス転移温度(Tg)が35〜60℃の範囲にある樹脂。
(B)ガラス転移温度(Tg)が−10〜20℃の範囲にあるゴム。
(C)制振フィラー。 - (A)成分が、塩素化ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびハイスチレン樹脂からなる群から選ばれたいずれか一つである請求項1記載の非拘束型制振材。
- (B)成分が、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレン−アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびポリブタジエンゴムからなる群から選ばれたいずれか一つである請求項1または2記載の非拘束型制振材。
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