JP3663536B2 - 感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、感熱孔版印刷用マスターは和紙、不織布などの薄い繊維組織に熱可塑性フィルムを接着剤等により接着し積層させた構造を有している。ここで、繊維組織の機能としては、熱可塑性フィルムを支持すると同時に穿孔箇所のインクの通過を許容することであり、そして、この繊維組織が利用している機能の本質は多孔性であり、インク透過性を有することである。
【0003】
ところで、上記のマスターを用い感熱孔版印刷によって得られる画像は、画像品質(ドットで画像を構成しているので、究極的にはドット品質ということにもなる)が今ひとつ満足できるものではない。即ち、画像上の問題としては、ドットのムラ(印刷ドット間のバラツキ)と、1ドット内の濃度ムラである。加えて、画像は1/0のデジタル的であり、昼間濃度のドット濃度を出すことができないこともある。
【0004】
上記のように、ドット間のバラツキ、ドット内の濃度ムラは和紙等に起因すると考えられる。そうしたことから現在では、熱可塑性フィルムを支持し、インキを透過させる機能を満たしつつ、表面凹凸性が小さく(表面平滑性がよい)かつ安価に製造できる多孔性材料(多孔質体)として多孔性樹脂膜が特開平9−272273号、特開平10−24667号などに提案されている。
これらの提案によれば、多孔性樹脂膜はその膜形成に使用される材料を選択し、及び製膜条件を制御することにより、好適なインク透過性を有する多孔性樹脂膜が得られるとしている。
また、この多孔性樹脂膜の孔径は和紙の孔径より細かく、従って、表面の凹凸も和紙より少なく平滑であり、高精細なドットを印刷することができ画像品質の高いものが得られる。
【0005】
しかし、これら提案されている多孔性樹脂膜によったのでは、感熱孔版印刷用マスターを製造するに際して、熱可塑性フィルム上に多孔性樹脂膜用塗布する時、この塗液がゲル化しやすいため成膜性が良好でなく、また多孔性樹脂膜となるという欠点がある。
更に、この感熱孔版印刷用マスターは薄い熱可塑性フィルムに多孔性樹脂膜を積層したものであり、剛度(剛性)が機械内で搬送できるには不十分であるという問題もあった。また、多孔性樹脂膜では和紙に比べて剛度が低下する為加熱穿孔時の熱歪みが大きく、孔の歪みが大きくなるという問題も同時に存在していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような欠点を解消するものであって、その目的は多孔性樹脂用塗液の熱可塑性フィルムへの塗布時ゲル化せず、成膜性がよく、かつ、熱可塑性フィムルに対する接着性もよく、剛度も高い多孔性樹脂膜を有する感熱孔版印刷用マスター、及びその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第一に、少なくとも熱可塑性フィルムと多孔性樹脂膜とを重ねた感熱孔版印刷用マスターにおいて、該多孔性樹脂膜は下記一般式(化1)で表される構造式を有しかつ重量平均分子量が3万〜32万のポリビニルアセタール樹脂を主体として成膜され、及び、該可塑性フィルムと該多孔性樹脂膜との間に体質顔料を含む水溶性樹脂層を設けたことを特徴とする感熱孔版印刷用マスタが提供される。
【化1】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは70〜85wt%、Yは10〜25wt%、Zは0.5〜10wt%である。)
【0008】
第二に、多孔性樹脂膜が、前記一般式(化1)で表される構造式を有しかつ重量平均分子量が3万〜32万のポリビニルアセタール樹脂を、水を含む溶媒に溶解ないし分散した塗液を塗布して形成されたものであることを特徴とする上記第一の感熱孔版印刷用マスターが提供される。
【0010】
第三に、水溶性樹脂層の含水率が3〜20重量%であることを特徴とする上記第一又は第二の感熱孔版印刷用マスターが提供される。
【0011】
第四に、水溶性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする上記第一〜三のいずれかの感熱孔版印刷用マスターが提供される。
【0012】
第五に、ポリビニルアルコールがケン化度45モル%以上、重合度300〜2000のものであることを特徴とする上記第四の感熱孔版印刷用マスターが提供される。
【0013】
第六に、体質顔料の形状が針状であることを特徴とする上記第一〜五のいずれかの感熱孔版印刷用マスターが提供される。
【0014】
第七に、針状顔料の直径の平均が0.1〜5μmであることを特徴とする上記第六の感熱孔版印刷用マスターが提供される。
【0015】
第八に、熱可塑性フィルム上に、水溶性樹脂の水溶液に体質顔料を分散させた塗液を塗布し乾燥させて水溶性樹脂層を形成し、続いて、この水溶性樹脂層上に、前記一般式(化1)で表される構造式を有しかつ重量平均分子量が3万〜32万のポリビニルアセタール樹脂を、水を含む溶媒に溶解ないし分散した塗液を塗布し乾燥させて多孔性樹脂膜を形成することを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の感熱孔版印刷用マスターは、熱可塑性フィルム上に体質顔料を含有した水溶性樹脂層を設けた後、この水溶性樹脂層上に、前記一般式(化1)で表される構造式を有しかつ重量平均分子量が3万〜32万のポリビニルアセタール樹脂を主体とした多孔性樹脂膜を設けることによって作成される。
【0017】
水溶性樹脂層は含水率3〜20重量%が適当である。ここでの「含水率」とは水溶性樹脂層用塗液を塗布、乾燥して水溶性樹脂層を設けた時から、次にこの水溶性樹脂層上に多孔性樹脂膜用塗液を塗布、乾燥させるまでの間の含水率を意味している。この含水率は乾燥前後の重量減少など公知の方法によって測定される。
【0018】
本発明の水溶性樹脂層は含水機能をもつ組成で、水溶性樹脂が特に無機顔料の体質顔料と組み合わせて形成される。水溶性樹脂層に体質顔料が加えられたことにより、感熱孔版印刷用マスターは剛度が向上する。
水溶性樹脂は成膜特性の面から選択され、体質顔料をよく固着する樹脂特性のものが好ましい。本発明の水溶性樹脂層に用いられる樹脂は有機溶剤に不溶である。また、加熱乾燥時に成膜を始める現象(MFT)を持たず、水分の除去のみにより成膜を開始する水溶性樹脂の使用が最適である。水溶性樹脂層用塗液が塗布された後の乾燥は通常60℃前後の温度下で行なうのが好ましい。高い温度で加熱すると水が飛び急激な蒸発で含水率が過剰に低下してしまう。
水溶性樹脂層の厚さは20μm以下が好ましい。これ以上では穿孔熱感度が低くなる。
【0019】
本発明に使用される水溶性樹脂は一般的に用いられる水溶性樹脂であり、例えば、デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、メチルセルローズ、ポリアクリル酸Na、ポリアクリルアミド、ポリビニルピドリロン、カルボキシルメチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ等の水溶性樹脂等が挙げられるが、より接着強度の高い樹脂としては、ポリビニルアルコールが望ましい。
【0020】
本発明に用いられるポリビニルアルコールはケン化度で限定され、45mol%以上好ましくは45mol%〜95mol%の範囲のものである。45mol%以下ではアルコール類の有機溶剤に可溶となり多孔膜の積層ができず好ましくない。95mol%以上では粘度が高くなり均一成膜性に支障を来たす。従って、ケン化度は45mol%以上が好ましく95mol%以下に限定される。また、重合度は300〜2000が好ましい。これ以上になると粘度が高くなり、均一成膜性悪くなる。また、次工程で積層する多孔性樹脂の有機溶剤に対する親和性が乏しくなり好ましくない。
【0021】
水溶性樹脂層に含有される体質顔料は、従来、多孔性樹脂膜に用いられている顔料成分に類似した組成のものが好ましく、より好ましくはウイスカー状や針状結晶の顔料、多孔性樹脂膜を形成する際に不規則に配列していることが肝要である。
水溶性樹脂層に存在する顔料状態は水溶性樹脂に包み覆われた状態で固着し、その形状は単繊維に類似した形状で平均直径0.1〜5μmの範囲が最も適し、長さは10〜50μmの範囲が好ましい。
【0022】
体質顔料を含有した水溶性樹脂層は、多孔性樹脂膜が体質顔料を含有している場合には、両層の接着性が向上する。また場合によっては、針状顔料と球状顔料を併用しても差し支えなく、併合割合に関しては針状顔料に対し球状顔料が2:1〜3:1の割合が適当である。
【0023】
本発明に用いられる代表的な体質顔料としては、一般的なものが使用が可能である。例えば、パライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸石炭粉、沈降性炭酸カルシウム、カオリン、クレイ、シリカ、含水ケイ酸、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、ブロスホワイト、サチンホワイト、亜鉛華、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化チタン等の体質顔料がある。これらは所謂フィラーと呼ばれるものである。また、それらのウイスカ状のものなら何ら支障なく使用が可能である。より好ましくは、酸化物系ウイスカ、複酸化物系ウイスカーが選択され、例えば、チタン酸カリウム類、ホウ酸カリウム類、針状酸化チタン類等は最適である。
【0024】
本発明の多孔性樹脂膜はその形状が、乾燥した糸瓜にみられる繊維が交絡した状態のものである。この多孔質は天然繊維及び合成繊維等の縦,横の繊維を交又させて繊維状とした物ではなく、枝分かれ状の繊維により3次元の広がりを有する物で、その内部に空隙が形成されており、その空隙の形状が糸瓜状のものであり、真円状ではないものである(図1)。糸瓜繊維状多孔質空隙の任意断面の開孔割合は一般に10%〜85%のものであり、繊維の太さは2μm〜10μmである。そして開孔は層方向で10μm〜50μmの深さで存在している。
【0025】
この多孔質樹脂膜を設けることによって感熱孔版印刷用マスターとして用いることができる。この場合、多孔性樹脂膜の空隙の大きさは重要な因子となっている。この多孔性樹脂膜を任意断面又は表面で観察した場合には、真円換算値で孔径は1μm〜50μmの間に分布している。この孔径が1μm未満ではインク透過性が悪くなり更に抱気効果が低下して、多孔性樹脂膜の断熱効果が抑制されるので、熱可塑性フィルムの穿孔感度を阻害し好ましくない。この対策として、低粘度インキを用いると印刷画像に画像ニジミが生じたり、印刷ドラムの側部や巻装されている感熱孔版印刷用マスターの後端からインキが滲み出す現象が発生する。またこの孔径が50μm以上になると、インキの通過が容易になりすぎるために過剰なインキが印刷個所に付着し、裏移りが発生し不具合が発生する。
【0026】
本発明における多孔性樹脂膜は、望ましくは特定の成分からなる合成樹脂組成物に特定の処理を行なうことにより作成される。すなわち、この多孔性樹脂膜のもととなる特性成分組成の合成樹脂は、特定割合のポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニルのコポリマーより構成されており、ポリマー末端基全体の構造式を示すと次のとおりである。
【化1】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは70〜85wt%、Yは10〜25wt%、Zは0.5〜10wt%である。)
【0027】
特定割合からなるポリビニルアセタール重合体の組成は前記構造式に示した各組成物の量を示すX,Y,Z(wt%)により表すことができる。
Xは70〜85、好ましくは75〜83、
Yは10〜25、好ましくは11〜22、
Z 0.5〜10、好ましくは0.5〜7、
の範囲である。
そして、X対Yの比が特定の範囲のときが有効である。X対Yの比が7対1のとき、使用する溶媒に溶解する事ができ、5対1〜4対1のときは、さらに溶媒に対する溶解度を増やす事ができる。これらの特定割合のX,Y,Zからなる組成物の樹脂の軟化点は70℃〜85℃の範囲のものが良好な結果をもたらし、ガラス点移転は50℃〜90℃の範囲のものがより良好な結果をもたらす。
【0028】
また、この合成樹脂の分子量(重量平均)は糸瓜状繊維の孔径に影響を与える。ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの組成比が一定であれば分子量に依存し、分子量が増せば糸瓜状繊維の孔径が小さくなる。以上の理由から分子量は3万から32万の範囲に選択される。分子量3万未満では大きさが大きくなりすぎて適当でない。分子量が32万を越える場合には選択使用する有機溶剤に不溶となる。
【0029】
表1に上記構造式で表わされるポリビニルアセタール共重合体の具体的な組成を示す。なお、この共重合体のアルキル基の置換基はプロピル基である。
【0030】
【表1】
【0031】
多孔性樹脂膜は次のようにして作成される。
前記の特性割合のポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール及び酢酸ビニルからなる組成物(以下「ポリビニルアセタール樹脂組成物」という)を溶剤に溶解させる。
次に、ポリビニルアセタール樹脂組成物からなる溶液に対して、ポリビニルアセタール樹脂組成物を溶解しない溶剤を添加し、よく混合し、感熱孔版印刷用マスターに用いる熱可塑性フィルムの表面に塗布する。このポリビニルアセタール樹脂に対して添加される溶剤は、ポリビニルアセタール樹脂組成物に溶解性がないので、ポリビニルアセタール樹脂組成物を溶解した溶液はゲル状を呈する。
熱可塑性フィルム表面に塗布されたゲル状となったポリビニルアセタール樹脂溶液を乾燥処理すると、溶液が蒸発し、熱可塑性フィルムの表面に目的とする糸瓜繊維状多孔性樹脂膜が形成される。
【0032】
次に、この工程をさらに詳細に述べる。
最初にポリビニルアセタール樹脂組成物を溶解させる溶剤はポリビニルアセタールを均一に溶解できるものであり、熱可塑性フィルムに塗布した状態で乾燥処理を行ったときに蒸発させることができるものである。これらの溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ケトンエステル類、ケトンアルコール類、ケトンエーテル類などを用いることができる。
【0033】
アルコール類としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルアミルアルコール、ベンジルアルコールなどをあげることができる。
【0034】
ケトン類としては、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アミルケトン、アセトニールアセトンなどをあげることができる。
【0035】
エーテル類としては、エチルエーテル、i−プロピルエーテル、ブチルエーテル、ジエチルカービートル、ジエチルセルソルブなどをあげることができる。
【0036】
ケトンエステル類としては、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチルなどをあげることができる。
【0037】
ケトンアルコール類としては、i−プロピルセロソルブ、カービトールブリシドール、セロソルブ、グリコールエーテル、ベンジルセロソルブ、ブチルカービトール、ブチルセロソルブ、メチルカービトール、メチルセロソルブ、トリエチレングリコール、モノエチルエーテルなどをあげることができる。
【0038】
ケトンエーテル類としては、アセタールエチルをあげることができる。
【0039】
これらの溶剤に対してポリビニルアセタール樹脂組成物を溶解させて、濃度を3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%とする。
ポリビニルアセタール樹脂組成物の溶液に対して、添加するポリビニルアセタール樹脂組成物を溶解しない溶剤は、水、炭化水素、塩素化炭化水素である。炭化水素としては、n−ヘキサン、シクロヘキサンをあげることができる。塩素化炭化水素としては、クロロホルム、四塩化炭素をあげることができる。
この溶剤の添加量は10〜40重量%である。添加は、白濁が生じる直前に停止する。添加は15℃〜20℃の温度で行う。
この溶剤を添加すると、ポリビニルアセタール樹脂組成物の溶液は可溶化状態となる。この溶液を十分に攪拌した後に、熱可塑性樹脂フィルムの表面に塗布する。この厚さは一般に3μm〜15μmである。生成する多孔膜は約3倍の層状となる。
【0040】
このようにして、可溶化状態となったポリビニルアセタール樹脂溶液を含む溶液を塗布した熱可塑性フィルムを、50〜60℃の熱風で加熱乾燥させる。加熱時間は30〜60秒である。これを乾燥すると厚さ10μm〜50μmの多孔性樹脂膜を得ることができる。
【0041】
特に、前記の可溶化状態となったポリビニルアセタール樹脂溶液を含む溶液に多孔性樹脂膜の強度増強のために無機顔料や天然繊維等(中でも水溶性樹脂層に含有されている体質顔料が好ましい)を添加分散させるのが望ましい。熱可塑性フィルムに塗布するゲル化したポリビニルアセタール樹脂溶液を目標とする厚みにするための付着量をあらかじめ予備実験等で把握し、さらにハンドリングも考慮したうえ、一般的なPETフィルム上に樹脂液を塗布することが有効である。
前記ポリビニルアセタール樹脂にはホルマール、ブチラールなどが含まれていてもよい。また、高い物理強度を要求された場合には、メチロール尿素などでメラミン化、イソシアネートでウレタン化或いはエポキシ化が可能である。
【0042】
本発明の多孔性樹脂膜の物理強度を上昇する目的で、無機顔料、例えば、粘度成分や金属塩などの粒子の使用が可能である。中でもシリカ粒子の添加が効果的である。本発明に用いるシリカ粒子径は1μm〜30μmの範囲が流動性及び多孔性樹脂膜の強度に優れた効果を示す。物性面の吸油量は300ml/g〜190ml/gが樹脂を良く吸着する。使用量については多孔性樹脂膜となる樹脂液の粘度を変動させるため、予め予備実験で選ぶのが良い。
【0043】
本発明の感熱孔版印刷用マスターにおける熱可塑性フィルムの素材は、具体的に例示すれば、ポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、エチレン、ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート系共重合体等が挙げられるが、ポリエステルが好ましい。実質的には非結晶のポリエステルフィルムであり、このものは3種のフタル酸、脂肪族ジカルボン酸、又は前記ジカルボン酸の炭化水素基に置換基を持つ酸成分とし、アルキレングリコール類、脂肪族飽和環状グリコール類、又は芳香族ジオール類をアルコール成分とするポリエステルから形成することが出来る。
【0044】
より具体的にはテレフタル酸又は15モル%以下のイソフタル酸及び/又はフタル酸を含むテレフタル酸を酸成分とし、エチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールを主成分とする混合ジオールをアルコール成分として縮合したポリエステルからなるフィルムである。特にアルコール成分組成をエチレングリコール60〜80モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール40〜20モル%としたポリエステルフィルムである。熱可塑性フィルムは、これらの素材を用いて押出法又は流延法により製造される。
【0045】
熱可塑性フィルムの厚さは、1μm〜15μm、好ましくは1μm〜4μmである。熱可塑性フィルムは100℃での加熱収縮応力が75〜550g/mm2好ましくは300〜550g/mm2であり、結晶化度は5%以下の樹脂フィルムが好ましい。
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、従来用いられてきたインキ透過性基材として和紙、不織布、マニラ麻のような薄用紙を使用しないため、接着剤は不要であり、穿孔感度やカールなどには問題点がない。
【0046】
本発明の感熱孔版印刷用マスターにおいては、多孔性樹脂膜とは反対側の、熱可塑性フィルム上に熱融着防止層を設けることによって、サーマルヘッドへのフィルムの熱融着によるスティックやカスの固着を防止することができる。例えば、界面活性剤、シリコーン系離型剤、滑剤等が前記目的の熱融着防止層に好適であり、より一般的には、ロール状に巻かれた感熱孔版印刷用マスターにおいて、多孔性樹脂膜に転移することなく長期間離型的性質を保持出来る材料が好ましく用いられる。該熱融着防止層には帯電防止剤を添加することも可能であり、熱融着防止層の膜厚は0.01〜1.0μmとするのが好ましい。
【0047】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
(実施例1)
ポリビニルアルコール樹脂(クラレ社製、PVA205:部分ケン化、重合度500)の5%水溶液を調整後、これの100重量部を採取した。この液に8チタン酸カリウム(大塚化学社製、ティスモD)5%とシリカ(シオノギ製薬社製、FDS−2)5%を添加後、スタ−ラ−で撹拌分散して水溶性樹脂層用塗液を調製した。
この液を熱可塑性フィルム(結晶化度1.0%で、100℃での加熱収縮応力が480〜500g/mm2で溶融温度180℃を示す厚さ2.0μmの共重合ポリエチレンフィルム)上に液付着量が10g/m2によるようにワイヤーバーで塗布し、乾燥後水分が30〜35%の範囲になるまで70℃の熱風で乾燥して水溶性樹脂層を形成した。この時の水分量は乾燥前後の重量変化で算出した。
【0049】
次に、
ポリビニルアセタール樹脂 20重量部
(表1の樹脂a、積水化学社製試作品)
エチルアルコール 79.8重量部
イオン変換水 0.2重量部
の組成からなる多孔性樹脂膜用塗液を25℃に保温しながら、前記の水溶性樹脂層上にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥後の厚みが40μmになるように多孔性樹脂膜積層した。
【0050】
このようにして得られた感熱孔版印刷用マスターの多孔性樹脂膜を電子顕微鏡(日立製作所社製、SEM.S.2400)で撮影後、ピアス社製LD555Dで画像処理し多孔性樹脂膜の形状を観察した結果、多孔性樹脂膜の孔径分布が真円換算で5μm〜30μmの糸瓜繊維状多孔性樹脂膜であった。
【0051】
(実施例2)
ポリビニルアルコール樹脂(クラレ社製、PVA217:完全ケン化、重合度700)の5%水溶液を調整後、これの100重量部を採取した。この液にシリカ(シオノギ製薬社製、FPS−2)10%を添加後、スターラーで撹拌分散して水溶性樹脂層用塗液を調整した。
この液を実施例1と同じ熱可塑性フィルム上に液付着量が10g/m2になるようにワイヤーバーで塗布し、乾燥後水分が30〜35%の範囲になるまで70℃の熱風で乾燥して水溶性樹脂層を形成した。
続いて、この水溶性樹脂層上に実施例1と同じ多孔性樹脂膜を形成して感熱孔版用印刷用マスターを得た。
【0052】
この感熱孔版印刷用マスターの多孔性樹脂膜を実施例1と同じ方法で観察したところ、孔径分布が真円換算で5〜30μmの糸瓜繊維状多孔性樹脂膜であった。
【0053】
(実施例3)
ポリビニルアルコール樹脂(日本合成社製、GL05)の5%水溶液を調整後、これの100重量部を採取した。この液にチタン酸カリウム(大塚化学社製、ティモスD)、市販の硫酸バリウムをそれぞれ5%添加後、スターラーで撹拌分散して水溶性樹脂層用塗液を調整した。
この液を実施例1と同じ熱可塑性フィルム上に液体着量が15g/m2になるように塗布し、乾燥後水分が30〜35%の範囲になるまで70℃の熱風で乾燥して水溶性樹脂層を形成した。
【0054】
次に、
ポリビニルアセタール樹脂 20重量部
(表1の樹脂b、積水化学社製試作品)
エチルアルコール 60重量部
イオン交換水 20重量部
の組成からなる多孔性樹脂膜用塗液を100g/m2の液付着量に調整しながらワイヤーバーで前記の水溶性樹脂層上に塗布し、乾燥して厚さ55μmの多孔性樹脂膜を形成し感熱孔版印刷用マスターを得た。
【0055】
この感熱孔版印刷用マスターの多孔性樹脂膜を実施例1と同じ方法で観察したところ、孔径分布が真円換算で5〜30μmの糸瓜繊維状多孔性樹脂膜であった。
【0056】
(実施例4)
多孔性樹脂膜用塗液を下記の組成のものに変えた以外は実施例3と同じにして感熱孔版印刷用マスターをつくった。
ポリビニルアセタール樹脂 20重量部
(表1の樹脂c、積水化学社製試作品)
エチルアルコール 40重量部
8チタン酸カリウム(大塚化学社製、ディスモD) 20重量部
イオン交換水 20重量部
【0057】
(実施例5)
多孔性樹脂膜用塗液を下記の組成のものに変えた以外は実施例3と同じにして感熱孔版印刷用マスターをつくった。
ポリビニルアセタール樹脂 20重量部
(表1の樹脂d、積水化学社製試作品)
エチルアルコール 40重量部
8チタン酸カリウム(大塚化学社製、トフイカYD) 20重量部
イオン交換水 20重量部
【0058】
(実施例6)
市販のカゼインを5%水溶液に調整後、これの100重量部を採取した。この液にティスモD(8チタン酸カリウム)、ティスモN(大塚化学社製、8チタン酸カリウム)をそれぞれ5%添加後、スターラーで撹拌分散して水溶性樹脂層用塗液を調整した。
この液を実施例1と同じ熱可塑性フィルム上に液付着量が15g/m2になるようにワイヤーバーで塗布し、乾燥後水分が30〜35%の範囲になるまで70℃の熱風で乾燥して水溶性樹脂層を形成した。
【0059】
次に
ポリビニルアセタール樹脂 20重量部
(表1の樹脂e、積水化学社製試作品)
エチルアルコール 60重量部
イオン交換水 20重量部
の組成からなる多孔性樹脂膜用塗液を100g/m2の液付着量に調整しながら前記の水溶性樹脂層上にワイヤーで塗布し、60℃で約3分間乾燥して厚さ55μmの多孔性樹脂膜を形成し、感熱孔版印刷用マスターを得た。
【0060】
(比較例1)
水溶性樹脂層を設けなかった以外は実施例1と同様(ただし、多孔性樹脂膜の厚さは28μmとした)にして、比較の感熱孔版印刷用マスターを得た。
【0061】
(比較例2)
ポリ酢酸ビニルエマルジョン(昭和高分子社製、ポリゾール)の5%水溶液を調整後、これの100重量部を採取した。この液に8チタン酸カリウム(大塚化学社製、ティスモD)5%とシリカ(シオノギ製薬社製、FPS−2)5%を添加後、スタ−ラ−で撹拌分散して水溶性樹脂層用塗液を調整した。
この液を実施例1と同じ熱可塑性フィルム上に10g/m2の液付着量に調整しながらワイヤーバーデ塗布し、乾燥後水分が30〜35%の範囲になるまで70℃で熱風で乾燥して水溶性樹脂層を形成した。
次に、この水溶性樹脂層上に実施例1と同じ多孔性樹脂膜(ただし、厚さは40μmとした)を形成して比較の感熱孔版印刷用マスターを作成した。
【0062】
この感熱孔版印刷用マスターの多孔性樹脂膜を実施例1と同じ方法で観察したところ、孔径分布が真円換算で3〜100μmで層を貫通し独立した円柱状の孔かなる多孔性樹脂膜となった。また、ポリ酢酸ビニルエマルジョンは溶剤溶解性を有するため、多孔性樹脂膜用塗液の塗布時エチルアルコールによって溶出・侵され、成膜性が阻害されグシャグシャの膜質となった。
【0063】
(比較例3)
酢酸ビニル重合体(ダイセル化学社製、セビアンA−700) 20重量部
エタノール 40重量部
イソプロピルアルコール 20重量部
トルエン 20重量部
からなる組成に実施例1の8チタン酸カリウムおよびシリカをそれぞれ5%添加後、撹拌分散して水溶性樹脂用塗液を調整した。
この液を実施例1と同じ熱可塑性フィルム上に10g/m2の液付着量に調整しながらワイヤーバーブで塗布し、乾燥後水分が30〜35%の範囲になるまで70℃の熱風で乾燥して水溶性樹脂層を形成した。
次に、この水溶性樹脂層上に実施例1と同じ多孔性樹脂膜(ただし、厚さは40μmとした)を形成して比較の感熱孔版印刷用マスターを作成した。
【0064】
この感熱孔版印刷用マスターの多孔性樹脂膜を実施例1と同じ方法で観察したところ、孔径分布が真円換算で3〜80μmで層を貫通し独立した円柱状の孔を有する多孔性樹脂膜となった。また、酢酸ビニル重合体は溶剤溶解性を有するため、多孔性樹脂膜用塗液の塗布時エタノールによって溶出・侵され、成膜性が阻害されグシャグシャの膜質となった。
【0065】
これら感熱孔版印刷用マスターについて孔版製版印刷機を用いてその特性(多孔性樹脂膜の膜特性)を評価した。評価結果をまとめて表2に示す。
【0066】
(1)画像濃度
感熱孔版用印刷用マスタについて、リコー社製プリポートVT−3500の製版部のライン型サーマルヘッドを使用し、調整された印加エネルギーのもとで穿孔し、黒ベタ部(標準条件、文字モードで製版、印刷した安定部分)の光学濃度をマクベス社製濃度計RD−914によって測定した。
【0067】
(2)成膜性
多孔性樹脂膜の成膜性を目視で評価した。
○:使用できるランク
×:使用できないランク
△:中間ランク(使用できると、使用できないとの中間)
【0068】
(3)白抜け評価法
感熱孔版印刷用マスターについて、リコー社製プリポートVT−3500の製版部のライン型サーマルヘッドを使用し、調整された印加エネルギーのもとで穿孔し、黒ベタ部(標準条件、文字モードで製版、印刷した安定部分)のうち、白抜けなく良好に印刷された画像の光学濃度をマクベス社製濃度計RD−914によって測定し、これを基準としたときの値をもって穿孔感度とする。
この値が、1.11以上を◎印、1.00以上を○印、0.99〜0.88を△印、0.88以下を×印とした。
【0069】
(4)画像歪率
リコー社製プリポートVT−3500の製版部のライン型サーマルヘッドを利用し、調整された印加エネルギーのもとで穿孔し、初期の印刷画像と3000枚印刷画像を、光学顕微鏡で形状を評価し所定形状の変化率を画像チャートの所定部分の寸法ひずみを百分率で表示した。
(5)曲げ剛度
感熱孔版印刷用マスターを所定の大きさにして、市販の曲げ剛度計((LORENTZEN&WETTRE社製)STIFFNESS TESTER)で計測した。
【0070】
【表2】
【0071】
表2から実施例の評価結果と比較例のそれと比較すると、水溶性樹脂層を持たない比較例1とでは画像濃度、白抜け特性は変わらないが感熱孔版印刷用マスターの剛度が大きく優れる事が理解できる。また、水溶性樹脂層を有するものはいずれも成膜性が良く、画像歪率も低い。
更にまた、水溶性樹脂層を設けても良好な多孔性樹脂膜が維持され、高い画像濃度が得られる事がわかる。本発明の感熱孔版印刷用マスターによれば、白抜けは全く無く、比較例で見られた裏汚れも見られなかった。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、多孔性樹脂膜の成膜性が向上し、感熱孔版印刷用マスターの剛度も向上する。さらに多孔性樹脂膜用塗液の塗布時、水溶性樹脂層が存在しているため熱可塑性フィルムに与えるダメージは少なく、また水溶性樹脂層自身が侵されることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】多孔性樹脂膜を模式図に示す図である。
Claims (8)
- 多孔性樹脂膜が、前記一般式(化1)で表される構造式を有しかつ重量平均分子量が3万〜32万のポリビニルアセタール樹脂を、水を含む溶媒に溶解ないし分散した塗液を塗布して形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 水溶性樹脂層の含水率が3〜20重量%であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 水溶性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
- ポリビニルアルコールがケン化度45モル%以上、重合度300〜2000のものであることを特徴とする請求項4記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 体質顔料の形状が針状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 針状顔料の直径の平均が0.1〜5μmであることを特徴とする請求項6記載の感熱孔版印刷用マスター。
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