JP3664703B2 - 耐溶湯溶損性に優れた鋳鉄及びその製造方法 - Google Patents

耐溶湯溶損性に優れた鋳鉄及びその製造方法 Download PDF

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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金や亜鉛合金の鋳造製品を製造する機器において、溶湯と接触するストーク、ルツボ、ラドルなどの部材に用いられる耐溶湯溶損性に優れた鋳鉄に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金等の低圧鋳造用器材、例えばストーク、ルツボ、ラドル、熱電対保護管などには従来からFC20〜FC25の鋳鉄に耐溶湯溶損性に優れた塗型材を塗布したものが使用されている。しかし、ルツボ及びストーク等は連続使用される場合が多く、塗型剤が剥離してくると侵食されてしまい、短寿命であるので使用者に満足は得られていない。
【0003】
そこで、FC鋳鉄に代わる耐溶湯溶損性に優れた種々の材料が研究されている。例えば、特許文献1にはキュポラで製造される耐アルミニウム溶湯溶損性をもつ合金鋳鉄が記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特公平3−46539号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
鋳鉄の融点は1200℃以上であり、アルミニウムの溶解温度は700℃前後であり、本来であれば問題なく使用できるはずであるが、鉄とアルミが接触すると、FeAl合金となり途端に融点が560℃(アルミニウム溶湯の温度以下)に下がってしまい、短時間で著しく侵食されてしまうのが現状である。例えば、ルツボから加圧溶湯を鋳型に供給するための溶湯供給管(ストーク)は、繰り返し使用するうちにどんどん侵食されてしまい短寿命であるので、頻繁に新品に交換する必要がある。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、繰り返し使用に耐えられる長寿命の耐溶湯溶損性に優れた鋳鉄を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、非鉄金属溶湯の鋳造器材に繰り返し使用に耐えられる材料について長期間にわたり鋭意研究を続けている。その過程で、SUS410が耐アルミニウム溶湯溶損性に優れているが、この材料は溶接構造となるため溶接部が脆弱であることと、複雑な形状がつくれないこととにより実用的ではなかったため、これと似た組成をもつSCS2(鋳鋼)について溶損性評価試験をおこなったが、その結果は思わしくなかった。
【0008】
さらに、本発明者は耐溶湯溶損性に優れた材料について鋭意研究を続けたところ、13クロム鋳鉄に所定量のアルミニウムを添加すると、アルミニウム溶湯に対する耐性が増大して寿命が延びることを確認した。また、さらにTiとアルカリ金属を添加すると耐溶湯溶損性が向上することを確認した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、以下の組成からなる。
【0009】
(1)本発明に係る耐溶湯溶損性に優れた鋳鉄は、質量%で、C;1.0〜3.3%、Si;0.5〜1.5%、Mn;0.5〜1.5%、Cr;10〜30%、Al;1〜5%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、組織中に網目状の高濃度クロム相を有することを特徴とする。
(2)また、本発明は、(1)に記載した鋳鉄において、溶製中の前記組成の鋳鉄溶湯に1〜5質量%のチタン酸アルカリ金属塩を添加することにより導かれたTiおよびアルカリ金属をさらに含有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る耐溶湯溶損性に優れた鋳鉄の製造方法は、質量%で、C;1.0〜2.0%、Si;0.5〜1.5%、Mn;0.5〜1.5%、Cr;12〜16%、Al;1〜3%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、この成分の溶湯にさらに1〜5%のチタン酸アルカリ金属塩を添加して導かれるTiおよびアルカリ金属をさらに含有し、該溶湯を鋳造し、鋳造後800℃〜1000℃の温度下で軟化焼鈍処理を行うことを特徴とする。
【0011】
以下、本発明の鋳鉄及びその製造方法において上記のように数値限定した理由について説明する。
【0012】
(1)C;1.0〜3.3%または1.0〜2.0%
Cは、高周波電気炉に装入する銑鉄およびスクラップに由来するものであり、鋳鉄の高温強度および硬さを増大させる重要な元素である。C含有量が1.0%を下回ると、必要最低限の機械的性質(強度、硬さ、耐溶損性、耐エロージョン性)を得ることができない。一方、C含有量が3.3%を上回ると、硬くなりすぎて加工できなくなるとともに、湯流れが悪くなり鋳造できなくなる。また、Ti及びアルカリ金属の共存下でC含有量が2.0%を上回ると、鋳造性が劣化する。
【0013】
(2)Si;0.5〜1.5%
Si含有量が0.5%を下回ると、フェライト相の粘り気(弾力)が損なわれる。一方、Si含有量が1.5%を上回ると、塑性加工性が低下する。
【0014】
(3)Mn;0.5〜1.5%
Mn含有量が0.5%を下回ると、溶湯の流動性が悪くなる。一方、Mn含有量が1.5%を上回ると、酸化物が炉材を侵食するという問題を生じる。
【0015】
(4)Cr;10〜30%または12〜16%
Crは、必要な高温強度を確保するとともに、溶湯に接触したときの耐溶損性を増大させる重要な成分元素である。鋳鉄の組織中、鉄部分が出ていると、その部分が、鉄アルミ合金となり融点が下がってしまうのが問題であるため、鉄部分を限りなく少なくすることができれば侵食を減少させることができる。Cr含有量が10%を下回ると、耐熱性が低下する。一方、Cr含有量が30%を上回ると、初晶の炭化物が生成され、網目状組織ができなくなる。また、Ti及びアルカリ金属の共存下では、Cr含有量が12%を下回ると、耐食性が低下する。一方、Ti及びアルカリ金属の共存下では、Cr含有量が16%を上回ると、均一な網目状組織が生成され難くなる。
【0016】
(5)Al;1〜5%または1〜3%
Alは、組織中に網状の高濃度クロム相を析出させるために重大な元素である。13クロム鋳鉄にアルミニウムを添加すると、図2の(a)に示すように高濃度クロム相が網目状に析出し、この網目状析出相が耐溶損性を増大させる。Al含有量が1%を下回ると、高濃度クロム析出相の網目状析出組織が生成されなくなる。一方、Al含有量が5%を上回ると、アルミナ発生量が過剰に多くなり鋳造性が損なわれる。また、Ti及びアルカリ金属の共存下では、Al含有量が3%を上回ると、アルミナおよびチタン酸アルカリ金属塩の浮遊する量が多くなり鋳造性が劣化する。
【0017】
(6)C/Cr比
クロム含有量に対する炭素含有量の比率(C/Cr比)は、7/91〜11/89の範囲とすることが好ましく、最も好ましくは1/9とする。C/Cr比が9/91〜11/89の範囲を外れると、網目状高濃度クロム相が良好に析出しなくなるからである。
【0018】
(7)Al/Cr比
クロム含有量に対するアルミニウム含有量の比率(Al/Cr比)は、9/71〜11/69の範囲とすることが好ましく、最も好ましくは1/7とする。Al/Cr比が9/71〜11/69の範囲を外れると、網目状高濃度クロム相が良好に析出しなくなるからである。
【0019】
(8)Ti及びアルカリ金属
Tiは、鋳鉄の結晶粒を微細化し、網目状組織を小さくするので、0.03〜0.10%の範囲で適量を含有することが好ましい。
【0020】
アルカリ金属は、鋳鉄中の非金属介在物の形態と分布を調整するために重要な役割を有するので、微量(0.10%未満)を含むことが好ましい。アルカリ金属にはカリウム、ナトリウム、リチウム等があるが、このうちカリウムが最も好ましく、この場合はチタン酸カリウムの形態で溶湯に添加する。
【0021】
Ti及びアルカリ金属は、チタン酸アルカリ金属塩を溶製中の溶湯に添加することにより含有量の調整がなされる。例えば、1〜5質量%のチタン酸カリウムを溶湯に添加することにより鋳鉄中に導入される。なお、1〜5質量%のチタン酸カリウムを添加した場合は、最終的には0.03〜0.10%のTiと通常の分析器では検出不能な程度の極微量(トレース程度)のカリウムが鋳鉄に含有されることになる。
【0022】
(9)不可避不純物
銑鉄およびスクラップ等から種々の不純物が不可避的に混入してくるが、不可避不純物のうち特にP,Sは低融点化合物をつくり鋳鉄を著しく脆化させるので、それぞれ含有量を可能な限り抑えるようにする。脆化に及ぼす影響が実質的に無視できるほど小さくするためには、Pを0.05%未満、Sを0.03%未満とする必要がある。
【0023】
(10)溶製方法
本発明の鋳鉄は高周波電気炉で溶製する。その理由は、溶解速度が大きいこと、および成分調整が容易であることによる。よって、本発明の鋳鉄の溶製には上記の特許文献1のキュポラは用いない。キュポラを用いると炭素含有量の調整が難しくなるからである。
【0024】
(11)軟化焼鈍処理
本発明の鋳鉄は、鋳造後に800℃〜1000℃の温度範囲に軟化焼鈍処理する。特にTi及びアルカリ金属を含む鋳鉄では、切削加工性を向上させるために軟化焼鈍処理が必須となる。焼鈍温度が800℃未満であると、伸びが低下して(増大せず)加工が困難になるからである。一方、焼鈍温度が1000℃を超えると、歪の発生および組織の変化を生じるからである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0026】
本実施形態ではアルミニウム合金の鋳造用器材としてルツボ、ストークおよび溶湯供給管に本発明の鋳鉄を用いた例をあげて説明する。
【0027】
高周波電気炉10は、図1に示すように、取鍋12を介して鋳型1の受口4に注湯するようになっている。高周波電気炉10はスクラップ等を溶解して表1に示す試料A3の鋳鉄(AlTi含有13Cr鋳鉄)をつくる。
【0028】
鋳型1は上型2と下型3からなり、上型2には受口4、湯口5、湯道6、堰7および不活性ガスシール孔9が形成されている。溶湯は、ストーク12から受口4、湯口5、湯道6、堰7を通過してキャビティに鋳込まれ、キャビティ内で凝固して鋳造品(ルツボ)8となる。なお、不活性ガスシール孔9にはアルゴンガスが供給され、溶湯の酸化防止が図られている。
【0029】
次に、表1を参照して本発明の実施例を比較例と比べて説明する。
【0030】
アルミニウム溶湯用のルツボを製作し、このルツボでアルミニウム溶解を670〜700℃で、1日17時間溶解をして通算使用日数を比較した。その結果を表1に示す。
【0031】
本発明の実施例として4種の試料A1〜A4を作製し、比較例として2種の試料B1,B2を作製した。実施例A1,A2はアルミニウムをそれぞれ1.78%,1.86%含む鋳鉄、実施例A3,A4はアルミニウムをそれぞれ1.51%,1.67%含み、かつチタンをそれぞれ0.055%,0.023%含む鋳鉄、比較例B1,B2はアルミニウムおよびチタンを共に含まない鋳鉄(JISG5510第4種に0.8%のクロムを添加した鋳鉄)からなる。いずれの試料も高周波電気炉で溶製し、鋳造後に焼戻し処理したものである。
【0032】
上記試料について同一条件下で耐アルミニウム溶湯溶損性の評価試験を行ったところ、比較例B1,B2の寿命が27日、29日であったのに対して、実施例A1,A2,A3,A4の寿命は58日、63日、65日、62日であった。このように本発明の鋳鉄は従来品に比べて2倍以上の寿命を有することが確認された。
【0033】
次に、図2を参照して本発明の鋳鉄の金属組織について考察する。
【0034】
従来の13%Cr鋳鉄では、組織に鉄部分が一様に分布しており、鉄アルミニウム合金ができやすい組織となっている。これに対して本発明では、アルミニウムを加えることにより、クロム部分が網目状組織となる。本発明鋳鉄の金属組織をX線マイクロアナライザーにより解析したところ、本発明鋳鉄中のクロム(Cr)分布は図2の(a)に示すように網目状になり、この網目状に析出したクロムは炭素と結合し、炭化クロム相となっていることが判明した。この網目状の高濃度クロム相の部分は、アルミニウム溶湯に侵食されない部分であり、この部位がアルミニウム溶湯の離型性を高めていると推察される。
【0035】
また、この炭化クロム相に囲まれた部分は、鉄、アルミニウム、シリコンが多く、アルミニウムの一部はアルミナ(Al2O3)となり、アルミニウムに溶損しないアルミナとなっている。なお、図2の(b)は本発明鋳鉄中のアルミニウム(Al)分布を示し、図2の(d)は本発明鋳鉄中の珪素(Si)分布を示す。また、図2の(c)は解析元素を特定しないオリジナル画像を示す。
【0036】
しかも、軟化焼鈍することにより機械的強度(引張強度、降伏強度)が400N/mm2以上のレベルで、1%以上2%以下の伸びが確保され、ブリネル硬度で260〜290の硬さとし、鋳鉄のなかでは加工性にも優れたものとなっている。このようなことから、本発明の鋳鉄はルツボ、ストーク、ラドル等に安全に使用することができる。
【0037】
なお、上記の実施例ではアルミニウム溶湯に対する耐溶湯溶損性について説明したが、本発明の鋳鉄を亜鉛溶湯に用いた場合も同様の効果が得られる。
【0038】
【表1】
Figure 0003664703
【0039】
【発明の効果】
本発明の鋳鉄は、高濃度Crの網目状組織を有するので、アルミニウム溶湯や亜鉛溶湯に直接接触する厳しい溶損環境下においても繰り返し使用に耐えられ、従来品に比べて長寿命となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム鋳造に用いる鋳型の一例を示す概略断面図。
【図2】(a)〜(d)は本発明の耐溶湯溶損性に優れた鋳鉄をX線マイクロアナライザーで分析した金属組織をそれぞれ示す分析画像写真。
【符号の説明】
1…鋳型、2…上型、3…下型、4…受口、5…湯口、6…湯道、7…堰、
8…鋳造品、9…不活性ガスシール孔、
10…高周波電気炉、12…取鍋。

Claims (5)

  1. 質量%で、C;1.0〜3.3%、Si;0.5〜1.5%、Mn;0.5〜1.5%、Cr;10〜30%、Al;1〜5%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、組織中に網目状の高濃度クロム相を有することを特徴とする耐溶湯溶損性に優れた鋳鉄。
  2. 溶製中の前記組成の鋳鉄溶湯に1〜5質量%のチタン酸アルカリ金属塩を添加することにより導かれたTiおよびアルカリ金属をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の鋳鉄。
  3. C/Cr比を7/91〜11/89とすることを特徴とする請求項1または2のいずれか一方に記載の鋳鉄。
  4. Al/Cr比を9/71〜11/69とすることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1記載の鋳鉄。
  5. 質量%で、C;1.0〜2.0%、Si;0.5〜1.5%、Mn;0.5〜1.5%、Cr;12〜16%、Al;1〜3%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、この成分の溶湯にさらに1〜5%のチタン酸アルカリ金属塩を添加して導かれるTiおよびアルカリ金属をさらに含有し、該溶湯を鋳造し、鋳造後800℃〜1000℃の温度下で軟化焼鈍処理を行うことを特徴とする耐溶湯溶損性に優れた鋳鉄の製造方法。
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