JP3677984B2 - 自動車のドア構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車のドア構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の中には、例えば図24に示すようにフロントピラー30の前側面に緩衝パネル31を接合して閉断面部32を構成したものが知られている(特開平9−39833号公報参照)。
【0003】
この緩衝パネル31はドアサッシュ33の外面と略整合するようにして外観を整えてあり、車両前方から飛来物体Mが衝突した際に該緩衝パネル31が潰れ変形することによって、フロントピラー30及び飛来物体Mの衝撃及び損傷を軽減させようとするものである。図24中34はフロントウインドウパネルを示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
緩衝パネル31をフロントピラー30の前側面に接合配置してあるため、飛来物体Mの衝突により該緩衝パネル31が変形した場合にその修理性が悪く、また、別部品の緩衝パネル31を用いているためコスト的におよび重量的に不利となってしまう。
【0005】
また、衝突エネルギー吸収をこの緩衝パネル31の潰れ変形により行わせるものであるから、該緩衝パネル31の潰れ変形する表面部分の質量が小さくマス効果による衝突エネルギー吸収量が少なく、飛来物体Mとの衝突により緩衝パネル31がフロントピラー30の前側面に底付きしてフロントピラー30への影響が大きくなる傾向にあり、これを回避するためには緩衝パネル31を前方へ大きく張り出して閉断面部32の前後方向寸法を大きくする必要があって、前方視界の悪化や重量増加の問題を招いてしまう。
【0006】
そこで、本発明は前方視界や重量増加を伴うことなくフロントピラーへの飛来物体の衝突時に衝突エネルギー吸収を効率よく行わせることができて、これら両者を保護することができる自動車のドア構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にあっては、アウタサッシュとインナサッシュとで閉断面に構成したドアサッシュのサッシュ前側辺をフロントピラーの側部から前部へ廻り込んで配置した構造において、前記フロントピラーの前部合わせフランジ上に接合したフロントウインドウパネルの左右側縁部よりも車幅方向外側の位置で、前記サッシュ前側辺のフロントピラー前部へ廻り込んだ前端部に車両進行方向と略平行な縦壁部を形成したことを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載のサッシュ前側辺の閉断面内に縦壁部に近接して、該縦壁部と略平行にリブ壁を配設したことを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明にあっては、請求項1,2に記載の縦壁部に車両進行方向と略平行に複数条の縦ビード部を適宜の間隔をおいて形成したことを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明にあっては、請求項3に記載の隣接する縦ビード部間に該縦ビード部と直交する方向に横ビード部を形成したことを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明にあっては、請求項1〜4に記載の縦壁部をアウタサッシュ及びインナサッシュの各前縁部を重合して形成したことを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明にあっては、請求項1〜5に記載の縦壁部に隣接してフロントピラー前側面と対向する面に衝突エネルギー吸収体を併設したことを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明にあっては、請求項1〜6に記載のサッシュ前側辺の上部側から下部側に至るに従って縦壁部の形成高さを漸次大きくしたことを特徴としている。
【0014】
請求項8の発明にあっては、アウタサッシュとインナサッシュとで閉断面に構成したドアサッシュのサッシュ前側辺をフロントピラーの側部から前部へ廻り込んで配置した構造において、前記フロントピラーの前部合わせフランジ上に接合したフロントウインドウパネルの左右側縁部よりも車幅方向外側の位置で、前記サッシュ前側辺のフロントピラー前部へ廻り込んだ前端部のフロントピラー前側面と対向する面に衝突エネルギー吸収体を設けたことを特徴としている。
【0015】
請求項9の発明にあっては、請求項6,8に記載のサッシュ前側辺の上部側から下部側に至るに従って衝突エネルギー吸収体の前後方向寸法を漸次大きくしたことを特徴としている。
【0016】
請求項10の発明にあっては、請求項6,8,9に記載の衝突エネルギー吸収体を金属薄板からなる型材で構成したことを特徴としている。
【0017】
請求項11の発明にあっては、請求項6,8,9に記載の衝突エネルギー吸収体を合成樹脂からなる型材で構成したことを特徴としている。
【0018】
請求項12の発明にあっては、請求項11に記載の型材の内側に補強リブを一体成形したことを特徴としている。
【0019】
請求項13の発明にあっては、請求項6,8,9に記載の衝突エネルギー吸収体が金属製のドアモールであることを特徴としている。
【0020】
請求項14の発明にあっては、請求項1〜13に記載の運転席側のドアサッシュのサッシュ前側辺に対して、助手席側のドアサッシュのサッシュ前側辺の閉断面を小型に形成したことを特徴としている。
【0021】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、車両走行中に前方よりフロントピラーに向けて飛来物体があると、該飛来物体は車両進行方向と略平行に飛来して来るようになることが多いが、ドアサッシュのサッシュ前側辺のフロントピラー前部へ廻り込んだ前端部に設けた縦壁部は車両進行方向と略平行に形成してあるため、飛来物体が該サッシュ前側辺の前端部に衝突した際に該縦壁部の飛来物体衝突方向に対する剛性が大きく、衝突時の初期荷重を立ち上げることができ、しかも、サッシュ前側辺の略全体的な潰れ変形を伴うため、該サッシュ前側辺のマス効果により衝突エネルギー吸収量を大きくすることができて、飛来物体およびフロントピラー相互を適正に保護することができる。
【0022】
また、このように衝突時の初期荷重を立ち上げることができるため、ある所定の衝突エネルギー吸収を行わせる場合にサッシュ前側辺の前端部の潰れ変形ストロークを極力小さくできるため、該前端部の前後方向寸法を小さくすることができて前方視界を確保でき、しかも、サッシュ前側辺を有効利用しているためコスト的におよび重量的に有利に得ることができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、縦壁部と略平行なリブ壁の存在によって衝突時の初期荷重の立ち上がりを大きくして衝突エネルギー吸収量を大きくすることができると共に、該リブ壁の形状、板厚等の選定によって衝突エネルギー吸収特性を任意にチューニングすることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1,2の発明の効果に加えて、縦ビード部の存在によって衝突時の初期荷重の立ち上がりをより大きくして衝突エネルギー吸収量を更に大きくすることができると共に、該縦ビード部の形状、大きさ、個数等の選定によって衝突エネルギー吸収特性を任意にチューニングすることができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の発明の効果に加えて、隣接する縦ビード部間の横ビード部の存在によって縦壁部にくの字状の座屈変形を促すことができて、衝突時の初期荷重レベルのコントロールを行え、衝突エネルギー吸収特性のチューニングを容易に行うことができる。
【0026】
また、縦壁部をくの字状に整然と座屈変形させて縦壁部の車幅方向への拡がりをなくし、フロントウインドウパネルへの干渉を回避できるから、該フロントウインドウパネルを保護することができる。
【0027】
更に、このように縦壁部の車幅方向への拡がりをなくすことができるため、衝突後における前方視界の確保も行うことができて安全性を高めることができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の発明の効果に加えて、縦壁部をアウタサッシュ前縁部とインナサッシュ前縁部とを重合して多重パネル構造としてあるため、飛来物体の衝突方向の剛性をより高めて衝突エネルギー吸収量を大きくすることができる。
【0029】
また、アウタサッシュ、インナサッシュの各前端部の重合幅の調整によって、衝突時の初期荷重レベルのコントロールを行え、衝突エネルギー吸収特性のチューニングを容易に行うことができる。
【0030】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5の発明の効果に加えて、衝突エネルギー吸収体の存在によって、該衝突エネルギー吸収体のばね要素による衝突エネルギー吸収作用が得られるため、衝突時の初期荷重レベルおよび衝突エネルギー吸収量のチューニングを容易に行うことができる。
【0031】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6の発明の効果に加えて、飛来物体が前方車両からの落下物であった場合、該飛来物体はサッシュ前側辺の下部側に衝突する傾向が高くなるが、縦壁部はこのサッシュ前側辺の上部側から下部側に至るに従って形成高さを漸次高めてあるため、飛来物体の衝突傾向が高い該下部側の衝突エネルギー吸収作用を適切に行わせることができる。
【0032】
請求項8に記載の発明によれば、車両走行中にフロントピラーに向けて飛来物体があると、該飛来物体はフロントピラーの前部に廻り込んだサッシュ前側辺の前端部に衝突して該サッシュ前側辺を潰れ変形させ、その後、衝突エネルギー吸収体の変形が進行するようになるため、衝突時の初期荷重を立ち上げることができると共に、サッシュ前側辺の略全体的な潰れ変形を伴うため、該サッシュ前側辺のマス効果による衝突エネルギー吸収作用と衝突エネルギー吸収体のばね要素による衝突エネルギー吸収作用とによって、衝突エネルギー吸収量を大きくすることができて、飛来物体およびフロントピラー相互を適正に保護することができる。
【0033】
また、このように衝突時の初期荷重を立ち上げることができるため、ある所定の衝突エネルギー吸収を行わせる場合に、サッシュ前側辺の前端部の潰れ変形ストロークを極力小さくできるため、該前端部の前後方向寸法を小さくすることができて前方視界を確保することができる。
【0034】
請求項9に記載の発明によれば、請求項6,8の発明の効果に加えて、飛来物体が前方車両からの落下物であった場合、該飛来物体はサッシュ前側辺の下部側に衝突する傾向が高くなるが、衝突エネルギー吸収体はこのサッシュ前側辺の上部側から下部側に至るに従って前後方向寸法を漸次大きくしてあるため、飛来物体の衝突傾向が高い該下部側の衝突エネルギー吸収作用を適切に行わせることができる。
【0035】
請求項10に記載の発明によれば、請求項6,8,9の発明の効果に加えて、衝突エネルギー吸収体を金属薄板からなる型材で構成してあるため、該型材の形状、大きさ等によって衝突エネルギー吸収特性を容易にチューニングすることができる。
【0036】
請求項11に記載の発明によれば、請求項6,8,9の発明の効果に加えて、衝突エネルギー吸収体を合成樹脂からなる型材で構成してあるため、コスト的に有利に得られる他、型材の形状、大きさ、壁厚等によって衝突エネルギー吸収特性を容易にチューニングすることができる。
【0037】
請求項12に記載の発明によれば、請求項11の発明の効果に加えて、型材の内側には補強リブを一体成形してあるため、衝突時の初期荷重を高めて衝突エネルギー吸収量を大きくすることができる。
【0038】
請求項13に記載の発明によれば、請求項6,8,9の発明の効果に加えて、衝突エネルギー吸収体として、サッシュ前側辺の前端部を装飾する金属製のドアモールを有効利用しているため専用部品を用いるのに較べてコスト的におよび重量的に有利に得ることができる。
【0039】
請求項14に記載の発明によれば、請求項1〜13の発明の効果に加えて、運転席からの前方視界を考察すると、運転席側のドアサッシュのサッシュ前側辺に対して助手席側のドアサッシュのサッシュ前側辺は視点からの距離が長くなるためその死角が狭くなるが、該助手席側のドアサッシュのサッシュ前側辺の閉断面を運転席側のドアサッシュのサッシュ前側辺の閉断面よりも小型に形成してあることによって、該助手席側のドアサッシュのサッシュ前側辺の死角を大幅に狭くすることができて前方視界を拡大することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0041】
図1,2において、1はピラーアウタ2とピラーインナ3とで閉断面に形成したフロントピラーで、該フロントピラー1の閉断面内には前、後縁部をフロントピラー1の前、後合わせフランジ1aおよび1bにそれぞれ挾着接合したピラーレインフォース4を配設して補強してある。
【0042】
左右フロントピラー1,1の前部合わせフランジ1a,1a上にはフロントウインドウパネル5の左右側縁部を接着剤6を介して接着固定してある。
【0043】
7はドア本体とドアサッシュ部とをプレス成形して構成した一般にフルドアと称されているドアのドアサッシュを示し、該ドアサッシュ7はアウタサッシュ8とインナサッシュ9とで閉断面に構成してあり、サッシュ前側辺7Fはフロントピラー1の側部から前部に廻り込んで配置してある。
【0044】
そして、該サッシュ前側辺7Fのフロントピラー1前部へ廻り込んだ前端部に、図1の矢印aで示す車両進行方向(車両中心線方向)と略平行に縦壁部10を形成してある。
【0045】
この実施形態ではインナサッシュ9の前端部を前方へ立ち上がらせて曲折成形して、その前縁をアウタサッシュ8の前縁と巻締め結合し、該巻締め結合部7aよりも内側にオフセットして所要高さLの縦壁部10を構成している。
【0046】
従って、この実施形態の構造によれば車両走行中に前方より飛来物体Mがあると、該飛来物体Mは図1の矢印bに示すように前記車両進行方向aと略平行に飛来してくることが多いが、前述のようにサッシュ前側辺7Fのフロントピラー1前部へ廻り込んだ前端部に設けた縦壁部10は車両進行方向aと略平行に形成してあるため、飛来物体Mがサッシュ前側辺7Fの前端部に衝突した際に該縦壁部10の飛来物体衝突方向bに対する剛性が大きく、この剛性の大きな縦壁部10が座屈変形もしくは倒れ変形して図2の(イ)から(ロ)に示すようにサッシュ前側辺7Fの略全体が潰れ変形するようになる。
【0047】
この結果、図3のA1 線で示すように衝突の初期荷重を立ち上げることができ、しかも、前側辺7Fの略全体的な潰れ変形を伴うため、該サッシュ前側辺のマス効果により衝突エネルギー吸収量を大きくすることができて、飛来物体Mおよびフロントピラー1の相互を適正に保護することができる。
【0048】
また、このように衝突の初期荷重を立ち上げることができるため、図3のB1 線で示すように衝突荷重が漸増する特性のものと競べた場合、図4の吸収エネルギーと変位相関特性図のA2 線、B2 線で示すように、ある所定の衝突エネルギー吸収を行わせる場合に、例えば図4の0.5Emaxのエネルギー吸収を行わせる場合に、サッシュ前側辺7Fの前端部の潰れ変形ストロークをSα分だけ極力小さくできるため、該サッシュ前側辺7Fの前端部の前後方向寸法L(図1参照)を小さくすることができて前方視界を確保することができる。
【0049】
更に、サッシュ前側辺7Fを有効利用していて従来の如き専用の緩衝パネルを用いていないため、部品点数および衝突後における修理作業の増加を伴うことがなく、従って、コスト的には勿論、重量的にも有利に得ることができる。
【0050】
図5〜9に示す実施形態は何れもサッシュ前側辺7Fの閉断面内に、縦壁部10に近接して、該縦壁部10と略平行にリブ壁11を配設して、該リブ壁11によって衝突時の初期荷重の立ち上がりを大きくして衝突エネルギー吸収量を大きくするようにしたものである。
【0051】
ここで、図5に示す実施形態にあってはリブ壁11の後縁フランジ11aをインナサッシュ9に接合し、前縁フランジ11bをアウタサッシュ8に近接配置して該リブ壁11を縦壁部10と平行に配設してあるが、図6に示すようにリブ壁11をその前端側がリブ壁10に偏寄るように若干傾斜配設して、飛来物体衝突時における該リブ壁11の前端側の開き方向への倒れ変形を抑制するようにしてもよい。
【0052】
また、図7,8は何れもリブ壁11の前縁フランジ11bをサッシュ前側辺7Fの巻締め結合部7aに挾着して、該リブ壁11の前端側の開き方向の倒れ変形を防止するようにしてあるが、図8に示すようにインナサッシュ9の後縁フランジ11aに対応する位置にインバース部12を形成し、該インバース部12に後縁フランジ11aを係合することによってインナサッシュ9への接合をなくすようにしてもよい。
【0053】
更に、図9に示すようにリブ壁11はコ字形断面に形成して前後方向の剛性を高めるようにしてもよい。
【0054】
これらの実施形態では前述のようにリブ壁11の存在によって衝突時の初期荷重の立ち上がりを大きくして衝突エネルギー吸収量を大きくすることができるが、リブ壁11の形状および板厚等の選択によって衝突エネルギー吸収特性を任意に、かつ、容易にチューニングすることができる。
【0055】
図10に示す実施形態は縦壁部10に車両進行方向と略平行に複数条の縦ビード部13を適宜の間隔をおいて形成して、該縦ビード部13によって衝突時の初期荷重の立ち上がりを大きくして衝突エネルギー吸収量を大きくするようにしたものであって、特にこの実施形態にあっては隣接する縦ビード部13,13間に、該縦ビード部13と直交する方向に横ビード部14を形成してある。
【0056】
従って、この実施形態によれば図12の(イ)に示すようにサッシュ前側辺7Fの前端部に前方より飛来物体Mが衝突した際には、縦壁部10の存在に加えて縦ビード部13の存在によって衝突時の初期荷重の立ち上がりを大きくして衝突エネルギー吸収量を大きくすることができると共に、縦ビード部13,13間の横ビード部14の存在により図12の(ロ)に示すように縦壁部10にくの字状の座屈変形を促すことができて、衝突時の初期荷重レベルのコントロールを行え、衝突エネルギー吸収特性のチューニングを容易に行うことができる。
【0057】
また、このように縦壁部10をくの字状に整然と座屈変形させて縦壁部10の車幅方向への拡がりをなくすことができるから、フロントウインドウパネル5への干渉を回避してフロントウインドウパネル5を保護することができると共に、衝突時における前方視界を確保することもできる。
【0058】
更に、前記縦ビード部13を図11の(イ),(ロ),(ハ)に示すようにその断面を半円形、三角形、方形等の形状選定により、および該縦ビード部13の大きさ、個数の選定等によって衝突エネルギー吸収特性を任意にチューニングすることができる。
【0059】
図13に示す実施形態は、縦壁部10をアウタサッシュ8およびインナサッシュ9の各前縁部を重合して多重パネル構造として構成することによって、飛来物体Mの衝突方向bの剛性を高めて衝突エネルギー吸収量を大きくするようにしたものであって、前記アウタサッシュ8,インナサッシュ9の各前縁部の重合幅Lsを調整することにより衝突時の初期荷重レベルのコントロールを行え、衝突エネルギー吸収特性のチューニングを容易に行うことができる。
【0060】
ここで、飛来物体Mが前方車両からの落下物であった場合、該飛来物体Mはサッシュ前側辺7Fの下側部に衝突する傾向が高くなる。
【0061】
そこで、前記各実施形態において、サッシュ前側辺7Fの縦壁部10の形成高さLを図14〜17に示すように、該サッシュ前側辺7Fの上部側から下部側に至るに従って漸次大きくすることによって、飛来物体Mの衝突傾向が高い該下側部の衝突エネルギー吸収作用を適切に行わせることができる。
【0062】
また、運転席からの前方視界を考察すると、図18に示すようにドライバーD側のドアサッシュのサッシュ前側辺7FRはドライバーDの視界EPからの距離が短いため死角θ1 は比較的大きくなる一方、助手席側のドアサッシュのサッシュ前側辺7FLはドライバーDの視点EPからの距離が長く死角θ2 は比較的狭くなる。
【0063】
そこで、前記各実施形態において、助手席側のドアサッシュのサッシュ前側辺7FLの閉断面を運転席側のドアサッシュのサッシュ前側辺7FRよりも若干小型に形成することによって、該閉断面を若干小型にするだけでも前記死角θ2 を大幅に狭くすることができてサッシュ剛性を損なうことなく前方視界を拡大することができる。
【0064】
図19に示す実施形態はサッシュ前側辺7Fに縦壁部10を設けるのに替えて、該サッシュ前側辺7Fのフロントピラー1前部へ廻り込んだ前端部のフロントピラー1前側面と対向する面に衝突エネルギー吸収体16を設けてある。
【0065】
サッシュインナ9には前記衝突エネルギー吸収体16を整然と配設し得るように、該衝突エネルギー吸収体16を受容し得る段部15を凹設してある。
【0066】
この実施形態の構造によれば、車両走行中にフロントピラー1に向けて飛来物体M(図19には衝突方向線bのみを示す)があると、該飛来物体Mはフロントピラー1の前部に廻り込んだサッシュ前側辺7Fの前端部に衝突して該サッシュ前側辺7Fを潰れ変形させ、その後、衝突エネルギー吸収体16の変形が進行するようになるため、前記各実施形態と同様に衝突時の初期荷重を立ち上げることができると共に、サッシュ前側辺7Fの略全体的な潰れ変形を伴うため、該サッシュ前側辺7Fのマス効果による衝突エネルギー吸収作用と衝突エネルギー吸収体16のばね要素による衝突エネルギー吸収作用とによって、衝突エネルギー吸収量を大きくすることができて、飛来物体Mおよびフロントピラー1の相互を適正に保護することができる。
【0067】
また、このように衝突時の初期荷重を立ち上げることができるため、前記第1実施形態で詳述したのと同様にある所定の衝突エネルギー吸収を行わせる場合に、サッシュ前側辺7Fの前端部の潰れ変形ストロークを極力小さくできるため、該前端部の前後方向寸法Lを小さくすることができて前方視界を確保することができる。
【0068】
前記衝突エネルギー吸収体16としては、例えば図20に示すような金属薄板からなる型材17を用いることができる。
【0069】
同図の(イ)はコ字形の型材17を横向きに配設した場合を、および(ロ)はコ字形の型材17を縦向きに配設して飛来物体Mの衝突方向の抗力壁が2つとなるようにした場合を示し、また、同図の(ハ)はL字形の型材17の一方の端末側を更に内側に向けて逆L字形に曲折して前記抗力壁が2つとなるようにした場合を示している。この実施形態の場合、型材17の形状、大きさ等によって衝突エネルギー吸収特性を容易にチューニングすることができる。
【0070】
図21は衝突エネルギー吸収体16として用いられる合成樹脂からなる型材18を示すもので、同図の(イ)はコ字形の型材18の内側に複数個の補強リブ19を一体成形したものを示し、また、(ロ)は角筒形の型材18の内側に補強リブ19を縦方向に一体成形した場合を、および(ハ)は角筒形の型材18の内側に補強リブ19を対角状に一体成形した場合を示し、この実施形態の場合も型材18の形状、大きさ、壁厚、樹脂材料、補強リブ19の有無等によって衝突エネルギー吸収特性を容易にチューニングすることができる他、樹脂材の押出し成形、射出成形等によってコスト的に有利に得ることができる。
【0071】
図22は衝突エネルギー吸収体16として金属製のドアモール20を用いた場合を示している。
【0072】
ドアモール20は断面略チャンネル形に形成してあって、インナサッシュ9の前端部にクリップ等の止着手段21により固設し、巻締め結合部7aに近接配置して斜め前方からの見栄えを向上させるためのもので、該ドアモール20のチャンネル開口部分にはドア閉時にピラーアウタ2の前側面に密接するドアウェザーストリップ22を嵌着固定してある。
【0073】
従って、この実施形態によれば、衝突エネルギー吸収体16として金属製のドアモール20を有効利用しているため、専用部品を用いるのに較べてコスト的におよび重量的に有利に得ることができる。
【0074】
図23は図1に示した実施形態における縦壁部10と、図19に示した実施形態における衝突エネルギー吸収体16とを併設したもので、本実施形態では縦壁部10の後方に衝突エネルギー吸収体16を直列的に配置し得るように、インナサッシュ9の前端部に縦壁部10に続いて段部15を形成し、この段部15に衝突エネルギー吸収体16を受容、配設してある。
【0075】
衝突エネルギー吸収体16としては、前記図20〜22に示したものを選択的に用いることができる。
【0076】
また、縦壁部10としては図10,11に示した実施形態のように縦ビード部13,横ビード部14を設けたものや、あるいは図13に示した実施形態のようにアウタサッシュ8,インナサッシュ9の各前端部を重合して縦壁部10を構成したものを採用することができ、更には、図5〜9に示したように縦壁部10の裏側に近接してリブ壁11を配設した構造を採用することができる。
【0077】
従って、この実施形態の構造によれば、前記図1〜13に示した各実施形態の効果に加えて、衝突エネルギー吸収体16の存在によって、該衝突エネルギー吸収体16のばね要素による衝突エネルギー吸収作用が得られるため、衝突時の初期荷重レベルおよび衝突エネルギー吸収量のチューニングを容易に行うことができる。
【0078】
なお、図23に示す実施形態では縦壁部10の後方に衝突エネルギー吸収体16を直列的に配設してあるが、場合によって該衝突エネルギー吸収体16を縦壁部10と並列的に併設することもできる。
【0079】
また、図19,22,23の各実施形態において、サッシュ前側辺7Fの上部側から下部側に至るに従って衝突エネルギー吸収体16の前後方向寸法を漸次大きくすれば、前記図14〜17に示した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
更には、これら図19,22,23の各実施形態の場合も、図18に示した実施形態と同様に運転席側のドアサッシュのサッシュ前側辺7FRに対して、助手席側のドアサッシュのサッシュ前側辺7FLの閉断面を若干小型に形成すれば、サッシュ剛性を損なうことなく前方視界の拡大を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の要部を示す略示的断面図。
【図2】同第1実施形態の作用を示すもので、(イ)は飛来物体の衝突時を、(ロ)は衝突後の変形状態を示す。
【図3】同第1実施形態の荷重−変位特性図。
【図4】同第1実施形態の吸収エネルギーと変位相関図。
【図5】本発明の第2実施形態の要部を示す略示的断面図。
【図6】本発明の第3実施形態の要部を示す略示的断面図。
【図7】本発明の第4実施形態の要部を示す略示的断面図。
【図8】本発明の第5実施形態の要部を示す略示的断面図。
【図9】本発明の第6実施形態の要部を示す略示的断面図。
【図10】本発明の第7実施形態の要部を示す略示的断面図。
【図11】図10のA−A線に沿う略示的断面図で、(イ),(ロ),(ハ)は縦ビード部の各異なる形状を示す。
【図12】同第7実施形態の作用を示すもので、(イ)は飛来物体の衝突時を、(ロ)は衝突後の変形状態を示す。
【図13】本発明の第8実施形態の要部を示す略示的断面図。
【図14】本発明の第9実施形態の要部を示す略示的側面図。
【図15】図14のB−B線に沿う略示的断面図。
【図16】図14のC−C線に沿う略示的断面図。
【図17】図14のD−D線に沿う略示的断面図。
【図18】本発明の第10実施形態を示す略示的断面図。
【図19】本発明の第11実施形態を示す略示的断面図。
【図20】(イ),(ロ),(ハ)は同第11実施形態の衝突エネルギー吸収体に用いられる金属薄板製型材の各異なる例を示す略示的斜視図。
【図21】(イ),(ロ),(ハ)は同第11実施形態の衝突エネルギー吸収体に用いられる合成樹脂製型材の各異なる例を示す略示的斜視図。
【図22】同第11実施形態の衝突エネルギー吸収体としてドアモールを用いた場合の要部を示す略示的断面図。
【図23】本発明の第12実施形態を示す略示的断面図。
【図24】従来の構造の要部を示す略示的断面図。
【符号の説明】
1 フロントピラー
7 ドアサッシュ
7F サッシュ前側辺
8 アウタサッシュ
9 インナサッシュ
10 縦壁部
11 リブ壁
13 縦ビード部
14 横ビード部
16 衝突エネルギー吸収体
17 金属薄板製型材
18 合成樹脂製型材
19 補強リブ
20 ドアモール
Claims (14)
- アウタサッシュとインナサッシュとで閉断面に構成したドアサッシュのサッシュ前側辺をフロントピラーの側部から前部へ廻り込んで配置した構造において、前記フロントピラーの前部合わせフランジ上に接合したフロントウインドウパネルの左右側縁部よりも車幅方向外側の位置で、前記サッシュ前側辺のフロントピラー前部へ廻り込んだ前端部に車両進行方向と略平行な縦壁部を形成したことを特徴とする自動車のドア構造。
- サッシュ前側辺の閉断面内に縦壁部に近接して、該縦壁部と略平行にリブ壁を配設したことを特徴とする請求項1に記載の自動車のドア構造。
- 縦壁部に車両進行方向と略平行に複数条の縦ビード部を適宜の間隔をおいて形成したことを特徴とする請求項1,2に記載の自動車のドア構造。
- 隣接する縦ビード部間に該縦ビード部と直交する方向に横ビード部を形成したことを特徴とする請求項3に記載の自動車のドア構造。
- 縦壁部をアウタサッシュ及びインナサッシュの各前縁部を重合して形成したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動車のドア構造。
- 縦壁部に隣接してフロントピラー前側面と対向する面に衝突エネルギー吸収体を併設したことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の自動車のドア構造。
- サッシュ前側辺の上部側から下部側に至るに従って縦壁部の形成高さを漸次大きくしたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の自動車のドア構造。
- アウタサッシュとインナサッシュとで閉断面に構成したドアサッシュのサッシュ前側辺をフロントピラーの側部から前部へ廻り込んで配置した構造において、前記フロントピラーの前部合わせフランジ上に接合したフロントウインドウパネルの左右側縁部よりも車幅方向外側の位置で、前記サッシュ前側辺のフロントピラー前部へ廻り込んだ前端部のフロントピラー前側面と対向する面に衝突エネルギー吸収体を設けたことを特徴とする自動車のドア構造。
- サッシュ前側辺の上部側から下部側に至るに従って衝突エネルギー吸収体の前後方向寸法を漸次大きくしたことを特徴とする請求項6,8に記載の自動車のドア構造。
- 衝突エネルギー吸収体を金属薄板からなる型材で構成したことを特徴とする請求項6,8,9の何れかに記載の自動車のドア構造。
- 衝突エネルギー吸収体を合成樹脂からなる型材で構成したことを特徴とする請求項6,8,9の何れかに記載の自動車のドア構造。
- 型材の内側に補強リブを一体成形したことを特徴とする請求項11に記載の自動車のドア構造。
- 衝突エネルギー吸収体が金属製のドアモールであることを特徴とする請求項6,8,9の何れかに記載の自動車のドア構造。
- 運転席側のドアサッシュのサッシュ前側辺に対して、助手席側のドアサッシュのサッシュ前側辺の閉断面を小型に形成したことを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の自動車のドア構造。
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