JP3678539B2 - 電気化学分析用フロースルーセル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気化学法又は電気化学発光法により試料水溶液中の極微量のホルモン、腫瘍マーカー、薬物、酵素、サイトカイン、核酸等を定量するのに好適な免疫分析用のフロースルーセルに関する。
【0002】
【従来の技術】
免疫分析の分野では、試料中の極微量(10-14mol・dm-3以下)の測定対象分析物の存在及び濃度を、発光ラベルを利用して測定するための分析法として、蛍光法、化学発光法及び電気化学発光法が利用されている。蛍光法は光励起により試料から発せられる発光を検出し、電気化学発光法は試料に電圧を印加したときに試料から発せられる発光を検出する。これらの方法は、ホルモン等の測定対象分析物に抗原抗体反応により発光試薬を結合させ、発光試薬由来の発光を定量するものである。なかでも電気化学発光法は原理上検出感度が高い。
【0003】
この電気化学発光法では、測定対象試料に電極を接触させることが必要であるため、一般にフロースルーセル内に試料を流しながら測定が行われる。一般には、特公平7−6912号公報に記載されているように、このフロースルーセルの発光面となる作用電極を構成する壁面の外部に磁石を配置し、磁性ビーズを用いてB/F分離を行って測定精度を向上させる方法が採用されている。B/F分離とは、抗原抗体反応により測定対象分析物と発光試薬が結合した結合成分と測定対象物質と結合していない発光試薬であるフリー成分とを分離することである。
【0004】
一方、表面に抗体を塗布した導電性ビーズを流路内に導入して、作用電極と対電極の間に配置させた後、電極間に電圧を印加して電極間の電流値又は電気抵抗値の変化を測定することで、ビーズ表面に抗原抗体反応により結合した測定対象物質を定量するフロースルーセルも考案されている〔M.Mayer, J.Ruzicka, Anal.Chem., 68, 3808-3814(1996) 参照〕。
【0005】
本明細書では、前記電気化学発光法で用いられるフロースルーセルと、電極間の電流値又は電気抵抗値を測定して分析を行うフロースルーセルとを総称して電気化学分析用フロースルーセルと呼ぶ。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来用いられてきた電気化学分析用フロースルーセルでは、測定対象分析物に対して過剰量の発光試薬を加えている。これは極微量の測定対象分析物に高確率で発光試薬を結合させるためである。しかしB/F分離が十分になされないと、測定対象分析物と結合していない発光試薬(フリー成分)由来の発光がノイズとなり、S/N比が低下する。
【0007】
例えば磁性ビーズを用いたB/F分離法では、特公平7−6912号公報に記載されているように、測定対象分析物と発光試薬が結合したもの(結合成分)を更に磁性ビーズに結合させ、磁石により磁性ビーズを捕捉したまま、水流の力でフリー成分を洗い流している。しかし、Pt等で構成される作用電極表面にフリー成分が吸着してしまう非特異吸着と呼ばれる現象が知られており、水流の力だけではB/F分離の時間が長くかかるのが現状である。また、作用電極と対電極の間に流れる電流値や電気抵抗を測定するタイプの電気化学分析用フロースルーセルでも、作用電極又は対電極表面に非特異吸着するフリー成分が電流値を乱す原因となっている。
【0008】
一方、従来用いられてきた電気化学分析用フロースルーセルの形状は平面型である。そして、光出射面である作用電極からの光は、作用電極から見て対電極の裏側にある光検出器で測定される形状となっている。このため、従来形のフロースルーセル内の作用電極上から発生した発光の全てが、実際にフォトマル、フォトダイオード等の光検出器で検出されている訳ではない。
【0009】
この第1の理由は、作用電極と光検出器の中間に配置された対電極に光の一部が遮られるためである。またフロースルーセル内部で生じた発光は、セルの一部分を構成する透明窓、及び光検出器とフロースルーセルの隙間としての空気層を経て、光検出器の受光面に入射する。光がガラス等から構成される透明窓を抜けて空気層に入る際、すなわち屈折率の大きい物質から小さい物質に光が入射する際には、その界面での反射率が高く、臨界角を越えると全反射が生じる。従ってフロースルーセル内の作用電極上での発光が光検出器に到達しない第2の理由は、透明窓と空気層との界面での光反射である。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、B/F分離の効率を高めて、短時間でB/F分離を行うことで、装置のスループットを向上させることが出来る電気化学分析用フロースルーセルを提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、試料からの極微量な発光を漏れなく検出することが出来る電気化学分析用フロースルーセルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記第1の目的は、電気化学反応を起こして測定を行う電極の流路上流側において、試料流体中のフリーなタンパク質を除去するか、あるいは減少させる機構を備えることで達成される。また、前記第1の目的は、電極表面に非特異吸着したフリー成分は、界面活性剤やアルカリ性の洗浄液を加えつつ水を流すとより短時間で洗浄される性質を利用することで達成される。前記第2の目的は、作用電極の表面から発生した光を反射させつつ光検出器へと導く役割を有する光ガイドをフロースルーセルの内部に組み込むことで達成される。
【0012】
すなわち、本発明は、試料流体が流入する試料流入部と、試料流体が流出する試料流出部と、試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路部と、試料流路部の壁面の一部を構成する作用電極と、作用電極に対する対電極とを備える電気化学分析用フロースルーセルにおいて、作用電極の上流側に、試料流体中のフリーなタンパク質を除去する手段を備え、フリーなタンパク質を除去する手段は、第2の作用電極と第2の対電極とで構成することを特徴とする。
【0013】
フリーなタンパク質を除去する手段は、前述した現状のフロースルーセルにおいて問題となっている非特異吸着現象そのものを逆に利用して、フリー成分を流路上流側において除去、あるいは減少させる方法である。上記の作用電極と対電極は、電気化学法あるいは電気化学発光法により、測定対象分析物を測定するための分析用の電極である。そして、その上流側に位置する第2の作用電極と第2の対電極は、分析用の作用電極又は対電極のいずれか、あるいは両方に吸着して測定ノイズの原因となる非特異吸着を、自らに吸着させるための電極である。
【0014】
本発明の電気化学分析用フロースルーセルは、内部の水流が層流となるように流速を制御することが出来る。水流が層流である場合、作用電極あるいは対電極に非特異吸着するフリー成分は、その上流の流路内部でも、分析用の作用電極あるいは対電極を内包する壁面の近傍を通過していると考えられる。従って、壁面近傍を通過するフリー成分を直前に配置された第2の作用電極あるいは第2の対電極で吸着することで取り除き、分析用の作用電極及び対電極に吸着するフリー成分を減少させることが出来る。なお流路内で壁面から離れた部分を通過するフリー成分は、電極に吸着されることがないので、そもそも測定ノイズの原因とはなりにくい。従って、壁面近傍を流れるフリー成分のみを取り除けば良い。しかし、壁面近傍を流れていないフリー成分についても除去効果があることも期待できる。
【0015】
いったん分析用の作用電極や対電極、あるいは第2の作用電極や対電極に吸着したフリー成分は、測定終了後に、界面活性剤やアルカリ性溶液等の洗浄液を流すといった現状のフロースルーセルの技術で十分短時間に洗い流すことができる。そこで、再度計測する際の問題点はない。
また、前記フリーなタンパク質を除去する手段は、フリーなタンパク質が吸着しやすい多孔質セラミックスや疎水性の大きい材料、あるいは抗原固定化膜などからなるフリータンパク質吸着板とすることもできる。
【0016】
前記フリーなタンパク質を除去する手段は、試料流入部の上流側の流路の途中に設けてもよいし、フロースルーセル内部の試料流路部に設けてもよい。
電気化学法を利用する場合は、作用電極と対電極間の電流値又は電気抵抗値の変化を計測する手段、具体的には電流計や抵抗計を備えることができる。また、電気化学発光法を利用する場合は、対電極を内包する壁面を光透過性材料で構成するのが好ましい。
【0017】
前記フリーなタンパク質を除去する手段を試料流路部に設けた第2の作用電極と第2の対電極とで構成する場合、作用電極に対向する壁面を光透過性とし、第2の作用電極に対向する壁面を遮光性とするのが好ましい。
作用電極に近接する壁面の外部に磁石を配置することで、磁性ビーズを用い、B/F分離を行って測定精度を向上させることもできる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図3は、本発明の一形態である、電気化学発光法を用いた電気化学分析用フロースルーセルの概略図である。図1は試料流れに対して横方向から見た側面図、図2は試料流入側から見た側面図、図3は図1のA−A方向から見た平面断面図である。
【0025】
この電気化学分析用フロースルーセルは、光透過性構造材7、非吸水性構造材8、及び支持材9を積層して構成され、中間の非吸水性構造材8をくり抜いて試料流体の流路が形成されている。光透過性構造材7にはガラスやアクリル、ポリメタクリル酸メチル等の材料を用いることができ、非吸水性構造材8や支持材9にはプラスチック等の高分子化合物、Alやステンレス等の金属、あるいはセラミックを用いることが出来る。非吸水性構造材8の試料流体と接する面を曲面とすることで、試料流体の流れをスムーズにすることが出来る。
【0026】
試料流路には分析用の作用電極1と対電極2a,2bが配置されており、これらの電極から試料流体に対して電圧を印加して発光を生じさせる。その水流の上流側に、フリー成分吸着用の作用電極3と対電極4が設置されている。分析用の作用電極1や対電極2,2bを構成する材料には、対腐食性の高いPtや、電極として一般に用いられているAl,Ag等の金属を用いることが出来る。また、フリー成分吸着用の作用電極3や対電極4を構成する材料にも、電極として一般に用いられているPt,Al,Ag等の金属を用いることが出来る。あるいは炭素電極等の有機導電性物質を用いてもよい。そして、作用電極3及び対電極4の表面は滑らかであっても、適当な凸凹があっても、フリー成分を捕らえるためには支障がない。
【0027】
作用電極1に近い側のフロースルーセル外部側壁には磁石11が配置されている。このように光出射面を構成する試料流路の壁面の外部に磁石11を配置することで、磁性ビーズを用い、B/F分離を行って測定精度を向上させる方法を採用することが出来る。この磁石11は、電磁石であってもよいし、永久磁石であっても良い。磁石11の磁力によって作用電極1上に捕捉されている磁性ビーズは、分析終了後、電磁石への通電を遮断して、あるいは永久磁石を機械的にフロースルーセルより遠ざけて磁力を弱めることにより、フロースルーセルから排出する。
【0028】
試料流体は試料流入口5からセル内部に導入され、まずフリー成分吸着用の作用電極3と対電極4の間を通過する。このとき、フリー成分はフリー成分吸着用の作用電極3及び/又は対電極4に吸着して試料流体中の濃度が減少する。その後、分析用の作用電極1と対電極2a,2bの間で、磁石11により捕捉される。続いて作用電極1と対電極2a,2bの間に電圧を印加して生じた発光を、光透過性構造材7を介してフォトマルやフォトダイオード等の光検出器10で検出する。
【0029】
測定終了後の試料は、試料流出口6から排出される。また洗浄液を試料流入口5から導入して、分析用の作用電極1及び対電極2a,2b、フリー成分吸着用の作用電極3及び対電極4の表面を洗浄する。フリー成分吸着用の作用電極3あるいは対電極4上でも、フリー成分由来の発光が生じるが、図1〜3に示すように、光検出器10に対して、フリー成分由来の発光が届きにくいか、届かない配置をとることで、あるいはフリー成分吸着用の作用電極3あるいは対電極4と光検出器10との間を遮光することで、測定対象分析物由来の発光を含む分析用の作用電極1と対電極2a,2bからの発光のみを計測することが出来る。
【0030】
図4は、分析用の作用電極1と対電極2a,2bの間にかかる電圧を、フリー成分吸着用の作用電極3と対電極4の間にかかる電圧に等しくした場合のポテンショスタット回路図である。後述するように、−0.5Vから+0.5Vの範囲内で、B/F分離の間に電圧を印加しても、発光強度は変化せずに非特異吸着のみが増加する条件が存在する。この条件で電圧をコントロールすれば、分析用の作用電極1と対電極2a,2bの間にかかる電圧を、フリー成分吸着用の作用電極3と対電極4の間にかかる電圧に等しても、本発明の目的を達成することが出来る。図4中、12,13は参照電極であり、14は増幅器である。
【0031】
図5は、2個の増幅器14a,14bを用いて、フリー成分吸着用の作用電極3と対電極4の間にかかる電圧を、分析用の作用電極1と対電極2a,2bの間にかかる電圧と独立して制御する場合のポテンショスタット回路図である。この回路構成の場合は、フリー成分吸着用の作用電極3と対電極4の電圧を発光が生じない電圧で増減させることで、ノイズの減少をより低く押さえることが可能となる。
【0032】
〔実験例1〕
Ru(bpy)3 2+(bpyはビピリジルを意味する)で標識されたビオチンがPt電極表面に吸着する量を電気化学発光法によって検出した。B/F分離時の印加電圧を変化させることで、フリー成分の吸着量がどのように変化するかを調べた。
【0033】
Ru(bpy)3 2+は、電気化学発光する代表的な物質である。Ru(bpy)3 2+標識したビオチンタンパク質(0.133マイクログラム/マイクロリットル)を用いて、Pt電極に吸着するビオチンタンパク質を、電気化学発光法で測定した。実験に用いたビオチンタンパク質の量は23.94マイクログラムである。Ru(bpy)3 2+標識したビオチンタンパク質は、抗体と結合していないフリー成分に相当するとした。B/F分離の際に18秒間、一定電圧を、フリー成分除去用Pt電極3,4に印加している。B/F分離の際の印加電圧とフリー成分の増加率との関係を〔表1〕に示す。但し、吸着増加率は、[電圧印加した場合のビオチンの吸着量(発光量)]/[電圧印加しない場合のビオチンの吸着量(発光量)]の比率である。
【0034】
【表1】
【0035】
このように+0.4V以上、あるいは−0.1V以下の電圧を18秒間印加することでフリー成分(ここではビオチン)が電極上に吸着する量が増えること、及びその吸着量が電圧の大きさに依存することが分かる。
【0036】
〔実験例2〕
Ru(bpy)3 2+で標識された磁性ビーズを磁石によりPt電極表面で捕捉して電気化学発光法によって検出した。B/F分離時の印加電圧を変化させることで、Ru(bpy)3 2+で標識された磁性ビーズの発光がどのように変化するかを調べた。
【0037】
Ru(bpy)3 2+標識したビオチンタンパク質(23.94マイクログラム)と、ストレプトアビジンで表面をコートした磁性ビーズを常温で1時間インキュベートする。すると、アビジン−ビオチン結合が起こり、磁性ビーズがRu(bpy)3 2+で標識される。しかし、Ru(bpy)3 2+標識したビオチンタンパク質の中には、ストレプトアビジンと結合しない成分があり、これを実験例1と同様にフリー成分とみなす。また、アビジン−ビオチン結合により磁性ビーズと結合したビオチンタンパク質を結合成分とみなす。
【0038】
磁石を用いて、Pt電極上に捕捉される磁性ビーズの量を、電気化学発光法で測定した。そのB/F分離の際に18秒間、一定電圧を、フリー成分除去用Pt電極3,4に印加した。なお、結合成分の量は、フリー成分の量と比較して桁違いに大きいので、測定された発光量は結合成分の量と比例する。B/F分離の際の印加電圧と結合成分の増加率との関係を〔表2〕に示す。但し、結合成分の増加率は、(電圧印加した場合の発光量)/(電圧印加しない場合の発光量)の比率である。
【0039】
【表2】
【0040】
このようにRu(bpy)3 2+を用いた系では、−0.1Vから+0.5V程度の電圧をB/F分離時に印加しても、発光値に悪影響は生じない。しかし、その範囲を超えて電圧をB/F分離時に印加すると、結合成分の電気化学発光そのものを阻害することになる。これは、Ru(bpy)3 2+が電気化学発光する際に必要となる還元剤(実験で用いたのはトリプロピルアミン)が電極上で過剰に消費されるためであると考えられる。
【0041】
実験例1の結果と総合すると、+0.3V〜+0.5Vの電圧をフリー成分除去用電極に十数秒程度印加することで、結合成分由来の発光を阻害することなく、フリー成分除去用電極にフリー成分タンパク質を吸着させることができる。その結果、電気化学発光のS/N比を向上させることができる。
図6は、本発明による電気化学分析用フロースルーセルの他の例を説明する図である。図6は、図3に相当する平面断面図である。この例では、分析用の作用電極1と対電極2a,2bの水流の上流側に、フリー成分除去用のフリータンパク質吸着板15を設置する。その他の構造は、先に説明した図1〜3の例と同様である。
【0042】
フリータンパク質吸着板15としては、ハイドロキシアパタイト等の多孔質セラミックスの細孔径を利用する。ハイドロキシアパタイト単体により、タンパク質、アミノ酸の吸着を行うことができる。また、ポリエチレンやシリコンゴムのように疎水性の大きい(表面エネルギー中の分散力成分の割合の大きい)材料を用いることができる。これらの材料は、タンパク質の吸着を受けやすいことが知られている〔先端技術材料応用辞典編集委員会編「先端技術材料応用辞典」(1990)第117頁、第388頁参照〕。フリータンパク質の成分が分かっている場合には、その物質と抗原抗体反応を生じる物質を、細孔制御チタニア、細孔制御アルミナ、細孔制御シリカ等の担体に固定化して用いてもよい。例えば、フリータンパク質としてビオチンが含まれる場合には、ストレプトアビジンを固定化して用いる。フリータンパク質吸着板15を用いる場合には、使用を続けると吸着板15の吸着性能が飽和してくるので、使い捨て式のセルとするのが好ましい。
【0043】
図7〜図9は、本発明による電気化学分析用フロースルーセルの他の例を説明する図である。図7は試料流れに対して横方向から見た側面図、図8は試料流入側から見た側面図、図9は図7のA−A方向から見た平面断面図である。説明を簡単にするため、図7〜図9において、図1〜図3と同様の機能部分には図1〜図3と同じ番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0044】
この電気化学分析用フロースルーセルは、作用電極1と対電極2a,2bにより、試料流体に対して電圧を印加して発光を生じさせる。その水流の上流側に洗浄剤を導入する側道21を設け、側道21に接続して洗浄液タンク22及び弁23を設置する。試料流体は試料流入口5からフロースルーセル内部に導入され、作用電極1と対電極2a,2bの間で、磁石11により捕捉される。
【0045】
続いて、水流を継続させたまま、側道21より洗浄液を導入して、作用電極1及び対電極2a,2bの表面に吸着したフリー成分を洗浄する。その後、作用電極1と対電極2a,2bの間に電圧を印加して生じた発光を、光検出器10で検出する。測定終了後の試料は、試料流出口6から排出される。また、洗浄液を試料流入口5からも導入して、作用電極1と対電極2a,2bの表面を洗浄することで次の測定に備える。
【0046】
側道21から導入する洗浄液としては、ドデシルポリ(エチレングリコールエーテル)、オクチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)、ポリオキシエチレンソルビタン等の非イオン性界面活性剤、あるいはソディウムドデシルサルフェート(SDS)等の陰イオン性界面活性剤を用いることができる。
洗浄液の濃度を、抗原抗体反応が切断されない濃度にしておくことで、測定対象物質の定量には支障がない条件で、非特異吸着したフリー成分をより短時間で洗浄することが出来る。抗原抗体反応が切断されない濃度は、洗浄液を加える時間により異なる。例えば、洗浄液を1秒間しか加えないのであれば、界面活性剤やアルカリ性の洗浄液の濃度は、体積比にして3%程度でよい。しかし、10秒間以上加える場合は、体積比にして0.05%程度が限度となる。
【0047】
試料流体は、例えばシリンジをパルスモータで駆動することによってフロースルーセル内に導入される。そして、シリンジを駆動するモータの回転方向を一方向とすることで、電気化学分析用セル内部の溶液の流れを一方向とすることができる。また、パルスモータの回転方向を時計回り、反時計回りに交互に変えることで、水の流れを反転して逆方向にした後、再び反転して順方向にする動作を加えることができる。試料流体に洗浄液を導入した後、セル中を流れる水の流れを反転する動作を加えることにより、作用電極1と対電極2a,2bの表面の洗浄効果を更に高めることができる。
【0048】
続いて、図10〜図14を参照して、試料からの発光を検出する効率を高めることのできる電気化学分析用フロースルーセルについて説明する。図10〜図14において、図1〜図3と同様の機能部分には図1〜図3と同じ番号を付して、その詳細な説明を省略する。また、図10〜図14における平面断面図は、いずれも図3の平面断面図に相当する図である。
【0049】
図10は、本発明による電気化学分析用フロースルーセルの他の例を説明する図であり、(a)は平面断面図、(b)は側面図である。この電気化学分析用フロースルーセルは、平板型の対電極2a,2bの外側に、対電極2a,2bと平行した平板形状の光ガイド(光反射面)31a,31bを備えている。
この電気化学分析用フロースルーセルは作用電極1と平板形対電極2a,2bにより、試料流体に対して電圧を印加して発光を生じさせる。作用電極を構成する壁面に磁石を配置し、磁性ビーズを用い、B/F分離を行って測定精度を向上させる方法を採用した場合、作用電極1が光出射面となる。作用電極1上からの発光は、光検出器10に入射してはじめて信号として検出される。
【0050】
そこで、作用電極1と光検出器10の中間に配置される対電極2a,2bの遮光面積を減少させ、作用電極1から光検出器10に向かう発光を妨げないようにする。そのために、平板型対電極2a,2bを用い、平板型対電極2a,2bの平面が作用電極1の平面にほぼ直交するように配置することで、対電極2a,2bの遮光面積を小さくし、対電極2a,2bに光ガイド機能(光を反射して光検出器10へと光を導く機能)を持たせることができる。
【0051】
対電極2a,2bの遮光面積を小さくするために電極幅を減少させた際、対電極2a,2bの断面積が小さくなることにより発生するジュール熱を低く押さえるために、対電極2a,2bの高さを大きくする必要があるが、このような平板型、あるいは後述する円筒型、楕円筒型、矩形型の電極はこの目的とも合致した形状である。
【0052】
この平板形対電極2a,2bだけでも光反射を行うが、更に光反射板(光ガイド)31a,31bを設けることで、平板形対電極2a,2bで反射して外縁方向へ逃げていく光を、再度光検出器10へと導く機能を持たせている。電気化学分析用フロースルーセルと光検出器10の接続部に光反射性ソケット32も備えれば、光のロスを更に減少させることが出来る。
【0053】
光ガイド31a,31bを構成する材料としては、化学反応による劣化が生じない場合は、Al,Ag,Au等の金属材料によるメッキや蒸着等の鏡面処理、あるいはそれらの金属そのものを用いることができる。試料流体と接する面が腐食を受ける場合は、その試料流体と接触する面にPt等の腐食に強い金属材料をメッキや蒸着するのが好ましい。
【0054】
また、光ガイド31a,31bの製作は、光透過性構造材7としてアクリルを用いる場合は、例えば、アクリル板へスルーホールを形成し、Cuメッキにより埋めた後、試料流体との接触面に白金メッキで保護膜を作ることで行うことができる。あるいは光ガイド31a,31bとして作用する白金板をアクリルに挟み、接着剤で固定後研磨するなどの一般的な方法で製作することもできる。
【0055】
図11は、本発明による電気化学分析用フロースルーセルの他の例を説明する図であり、(a)は平面断面図、(b)は側面図である。この電気化学分析用フロースルーセルは、平板型の対電極2a,2bの周囲に、光ガイドとして円筒形状の光反射面33を配置している。円筒形状の光反射面33は、作用電極1からの発光を反射して光検出器10へと集光する機能を有する。図10では平板形状の光反射面(光ガイド)31a,31bを用いたが、それを円筒形状とすることで360度方向で、集光することが出来る。
【0056】
図12は、本発明による電気化学分析用フロースルーセルの他の例を説明する図であり、(a)は平面断面図、(b)は側面図である。この電気化学分析用フロースルセルは、矩形の断面形状を有する筒状の対電極34を備えている。対電極と別個の光反射板を有していない点で図10、図11に示した電気化学分析用フロースルーセルと異なっている。
【0057】
この例の場合、矩形対電極34を、試料流路の外縁部で、試料流体と接するようにすることで、作用電極1からの発光を外部に逃がすことなく光検出器10に集光することができる。すなわち、光反射板の機能を対電極34が単独で果たすような構造である。光反射板を省略したことにより、構成がより単純になり、加工コストを更に低減することが出来る。
【0058】
図13は、本発明による電気化学分析用フロースルーセルの他の例を説明する図であり、(a)は平面断面図、(b)は側面図である。この電気化学分析用フロースルセルは、光ガイドとして光ファイバ35を用いる。作用電極1からの発光を光検出器10へと集光するために、対電極2a,2bを光ファイバ35中に埋め込んでいる。この場合、光ファイバのコアとクラッドの境界が光ガイドに相当し、360度方向で集光することが出来る。
【0059】
図14は、本発明による電気化学分析用フロースルーセルの他の例を説明する図であり、(a)は平面断面図、(b)は側面図である。この電気化学分析用フロースルセルは、透明な作用電極41と光ガイドとしての光ファイバ36を用いている。透明な作用電極41は、酸化スズ(SnO2)やインジウムティンオキサイド(Indium Tin Oxide)等によって作られる。
【0060】
作用電極41を透明とした場合には、光検出器10を対電極2の裏側に配置する必要はない。この例では、光検出器10を作用電極41の下部に配置している。支持材9中に埋め込んだ光ファイバ36は、作用電極における発光を360度方向で集光して、光検出器10に導く。他の例と異なり、対電極2を作用電極41と平行な平板電極とすることで、対電極2の方向に進んだ光を反射して光ファイバ36に入射させ、集光効率を高めることができる。光ファイバ36の代わりに、作用電極41の周囲を囲むような円筒形状、楕円筒形状、あるいは矩形形状の光ガイドを備えても同様に集光効率を向上することができる。
【0061】
これまで説明してきた試料流体のフリーなタンパク質を除去する方法、洗浄液による洗浄方法、及び電気化学発光の集光効率を向上する方法は、各々単独で用いても良いがそれらを組み合わせて用いるといっそう効果を高めることができる。
図15〜図17は、本発明による電気化学分析用フロースルーセルの他の例を説明する概略図である。図15は試料流れに対して横方向から見た側面図、図16は試料流入側から見た側面図、図17は図15のA−A方向から見た平面断面図である。説明を簡単にするため、図15〜図17において、図1〜図14と同様の機能部分には図1〜図14と同じ番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0062】
この例の電気化学分析用フロースルーセルは、電気化学発光分析用の作用電極1及び対電極2a,2bの上流側に、フリータンパク質除去用の手段(この例では、図1〜図3で説明したフリー成分吸着用の作用電極3や対電極4)、及び分析用の作用電極1及び対電極2a,2bに付着したフリータンパク質を洗浄するための洗浄液を導入する側道21を設け、さらに分析用の対電極2a,2bの近傍に光ガイド31a,31bを設けて集光力を高めたものである。この改良により、電気化学発光を用いた免疫分析装置のS/N向上、スループット向上を図る。なお、各手段の組み合わせの例は、ここに示したものに限られないのは明らかである。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について主に電気化学発光法を例として説明してきたが、化学発光を用いたものや、発光を用いない電気化学分析用セルについても、本発明は同様に適用することが可能できる。電気化学法を利用する場合は、光検出器に代えて、検出手段として電流計や抵抗計を用いることが出来る。
【0064】
【発明の効果】
本発明によると、電気化学分析用フロースルーセルの測定対象分析物を測定するための電極の上流側に、非特異吸着をして測定ノイズの原因となっているフリー成分を除去するかあるいは減少させる機構を設けることで、B/F分離の効率を高めて、短時間でB/F分離を行い、装置のスループットを向上させることが出来る。
【0065】
また、電気化学分析用フロースルーセルの測定対象分析物を測定するための電極の上流側に、非特異吸着をして測定ノイズの原因となっているフリー成分を除去するための、洗浄液の導入口を設けることで、より短時間でB/F分離を行い、装置のスループットを向上させることが出来る。
さらに、フロースルーセルの構造を集光性に優れた形状としたことで、電気化学発光法の測定感度を向上することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】第2の作用電極と対電極のペアを用いた電気化学分析用フロースルーセルを試料流れに対して横方向から見た側面図。
【図2】図1の電気化学分析用フロースルーセルを試料流入側から見た側面図。
【図3】図1のA−A方向から見た平面断面図。
【図4】分析用の作用電極と対電極の間にかかる電圧をフリー成分吸着用の作用電極と対電極の間にかかる電圧に等しくした場合のポテンショスタット回路図。
【図5】分析用の作用電極と対電極の間にかかる電圧をフリー成分吸着用の作用電極と対電極の間にかかる電圧と独立して制御する場合のポテンショスタット回路図。
【図6】フリータンパク質吸着板を用いた電気化学分析用フロースルーセルの概略図。
【図7】本発明による他の例の電気化学分析用フロースルーセルを試料流れに対して横方向から見た側面図。
【図8】図7の電気化学分析用フロースルーセルを試料流入側から見た側面図。
【図9】図7のA−A方向から見た平面断面図。
【図10】対電極と平行した平板形状の光反射面を備えた電気化学分析用フロースルーセルの説明図。
【図11】対電極の周囲に円筒形状の光反射面を配置した電気化学分析用フロースルーセルの説明図。
【図12】矩形対電極電気化学分析用フロースルセルの説明図。
【図13】光ファイバ埋め込み型対電極を有する電気化学分析用フロースルーセルの説明図。
【図14】透明な作用電極と光ファイバを用いた電気化学分析用フロースルーセルの説明図。
【図15】本発明による他の例の電気化学分析用フロースルーセルを試料流れに対して横方向から見た側面図。
【図16】図15の電気化学分析用フロースルーセルを試料流入側から見た側面図。
【図17】図15のA−A方向から見た平面断面図。
【符号の説明】
1…作用電極、2a,2b…平板形対電極、3…第2の作用電極、4…第2の対電極、5…試料流入口、6…試料流出口、7…光透過性構造材、8…非吸水性構造材、9…支持材、10…光検出器、11…磁石、12,13…参照電極、14,14a,14b…アンプ、15…フリータンパク質吸着板、21…側道、22…洗浄液タンク、23…弁、31a,31b…光反射板(光ガイド)、32…光反射性ソケット、33…円筒状光反射面、34…矩形対電極、35,36…光ファイバ
Claims (8)
- 試料流体が流入する試料流入部と、試料流体が流出する試料流出部と、前記試料流入部と試料流出部とを接続する試料流路部と、前記試料流路部の壁面の一部を構成する作用電極(1)と、前記作用電極(1)に対する対電極(2a、2b)とを備える電気化学分析用フロースルーセルにおいて、前記作用電極(1)の上流側に、試料流体中のフリーなタンパク質を除去する手段を備え、
前記フリーなタンパク質を除去する手段は、第2の作用電極(3)と第2の対電極(4)とを有する
ことを特徴とする電気化学分析用フロースルーセル。 - 請求項1記載の電気化学分析用フロースルーセルにおいて、前記フリーなタンパク質を除去する手段は、フリータンパク質吸着板であることを特徴とする電気化学分析用フロースルーセル。
- 請求項1又は2記載の電気化学分析用フロースルーセルにおいて、前記フリーなタンパク質を除去する手段を前記試料流入部の上流側の流路の途中に設けたことを特徴とする電気化学分析用フロースルーセル。
- 請求項1又は2記載の電気化学分析用フロースルーセルにおいて、前記フリーなタンパク質を除去する手段を前記試料流路部に設けたことを特徴とする電気化学分析用フロースルーセル。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の電気化学分析用フロースルーセルにおいて、前記作用電極と対電極間の電流値又は電気抵抗値の変化を計測する手段を備えることを特徴とする電気化学分析用フロースルーセル。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の電気化学分析用フロースルーセルにおいて、前記対電極を内包する壁面を光透過性材料で構成したことを特徴とする電気化学分析用フロースルーセル。
- 請求項1記載の電気化学分析用フロースルーセルにおいて、前記作用電極(1)に対向する壁面は光透過性であり、前記第2の作用電極(3)に対向する壁面は遮光性であることを特徴とする電気化学分析用フロースルーセル。
- 請求項1〜8のいずれか1項記載の電気化学分析用フロースルーセルにおいて、前記作用電極に近接する壁面の外部に磁石を配置したことを特徴とする電気化学分析用フロースルーセル。
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