JP3687624B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形時における摺動性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及びプレス成形時の摺動性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融亜鉛めっき鋼板には、主に溶融亜鉛めっき鋼板(GI)と合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)がある。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、亜鉛めっき鋼板と比較して溶接性及び塗装性に優れることから、自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用されている。そのような用途での合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス成形を施されて使用に供される場合が多い。
【0003】
しかし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、冷延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。これは、プレス成形を施す際のプレス金型との摺動抵抗が、冷延鋼板に比べて合金化溶融亜鉛めっき鋼板の方が大きいことが原因である。すなわち、金型とビードでの摺動抵抗が大きい部分で、合金化溶融亜鉛めっき鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすい。
【0004】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板に亜鉛めっきを施した後、加熱処理を行い、鋼板中のFeとめっき層中のZnが拡散する合金化反応が生じることにより、Fe−Zn合金相を形成させたものである。このFe−Zn合金相は、通常、Γ相,δ1相,ζ相からなる皮膜であり、Fe濃度が低くなるに従い、すなわちΓ相→δ1相→ζ相の順で、硬度ならびに融点が低下する傾向がある。このため、摺動性の観点からは、高硬度で、融点が高く凝着の起こりにくい高Fe濃度の皮膜が有効であり、したがって、プレス成形性を重視する合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、皮膜中の平均Fe濃度を高めに製造されている。
【0005】
しかし、高Fe濃度の皮膜では、めっき−鋼板界面に硬くて脆いΓ相が形成されやすく、加工時に界面から剥離する現象、いわゆるパウダリングが生じ易い問題を有している。このため、特開平1−319661号公報に示されているように、摺動性と耐パウダリング性を両立するために、上層に第二層として硬質のFe系合金を電気めっきなどの手法により付与する方法がとられている。
【0006】
亜鉛系めっき鋼板使用時のプレス成形性を向上させる方法としては、この他に、高い粘度の潤滑油を塗布する方法が広く用いられている。しかし、この方法では、潤滑油の高粘性のために塗装工程で脱脂不良による塗装欠陥が発生したり、また、プレス時の油切れにより、プレス性能が不安定になる等の問題がある。したがって、合金化溶融亜鉛めっき自身のプレス成形性が改善されることが強く要請されている。
【0007】
上記の問題を解決する方法として、特公平6−73684号公報には、平均粗さRa0.6μm以下の平坦部が30%以上であり、平坦部より1μm以上突き出た凸部と平坦部より2μm以上低い凹部との最近接間隔が50〜300μmである合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
【0008】
また、特許第3139231号公報には、深さ2μm以上、個数200〜8200個/mm2、相対負荷長さ率tp(2μm):30%≦tp(2μm)≦90%を満足する凹部が表面に形成されている合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
【0009】
さらに、特許第3201312号公報には、めっき厚さが平均めっき厚さの50%に満たない凹部を断面長さ率で1〜10%有し、中心線平均粗さで1.2μm以下の表面粗さを備えた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の先行技術について詳細な検討を行った結果、以下のような問題点があることがわかった。
【0011】
上記のような合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、プレス成形時の金型との摺動距離が短い場合には、鋼板表面の凹部に保持された潤滑油が金型との間に供給されるため、プレス成形性の改善効果が得られる。しかし、金型との摺動距離が長くなる場合には、必ずしもプレス成形性の改善効果が得られない。これは、先行技術で規定されている凹部の深さが比較的深いものであり、凹部の底の部分に存在する潤滑油はそのまま滞留し、金型との間に供給されないためである。
【0012】
また、先行技術では、このような凹部を形成させる手法として、下地鋼板の結晶粒径や化学成分を調整し、合金化反応により制御する方法、もしくは調質圧延ロールの粗度を調整することにより制御する方法をあげている。しかし、下地鋼板の結晶粒径や化学成分を調整すると、所望の機械特性が得られない場合がある。また、調質圧延では伸長率範囲が限定されるため、調質圧延ロールの粗度を調整しても鋼種等により所望の粗さを得られない場合があり、さらにはZnの目詰まりにより常に所定の粗さを付与することは不可能であるなど、製造の安定性に欠ける。
【0013】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を解決し、プレス成形時の摺動性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定して製造する方法を提供すること、またそのような方法により製造されたプレス成形時の摺動性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく種々の検討を加えた結果、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施した後、その鋼板表面に固体粒子を投射して微細な凹凸を形成することにより、安定して優れたプレス成形性が得られることを知見した。
【0015】
合金化処理後の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面には、合金化処理時のめっき−鋼板界面での反応性の違いにより、凹凸が存在している。そして、その後、通常は材質確保のために調質圧延が施されるが、その際に鋼板表面の凸部はつぶされて平坦化し、凹部はそのまま残存する。プレス成形時に実際にプレス金型と接触するのはこの平坦部が主体となるが、鋼板と金型とが直接接触すると凝着が生じる可能性があるため、凹部において潤滑油を保持し、ここから平坦部へ十分な潤滑油を供給する必要がある。しかし、合金化処理時に鋼板との反応により形成された凹部のみではこの潤滑油の保持能力に限界があり、特に摺動距離が長くなる条件ではその効果を十分に発揮することができない。したがって、前述したように、めっき表面の平坦部にも微細な凹凸を形成させることは、摺動性の向上に対して有効である。
【0016】
本発明者等はこのような観点から検討を進めた結果、調質圧延後の合金化溶融亜鉛めっき鋼板に固体粒子を投射してめっき表面に微細な凹凸を形成させることにより、金型との摺動距離が長い条件でも、めっき層と金型との凝着が生じず、良好な摺動性を示すことを見出した。
【0017】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
【0018】
(1)鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、加熱処理によりめっき皮膜を合金化し、さらにロール表面の平均粗さRa0.4〜2.0μmの圧延ロールを用いて調質圧延を施して前記めっき皮膜表面の凸部を平坦化した後、遠心式投射装置を用いて、該めっき皮膜表面に平均粒子径が10〜300μmで密度が2g/cm 3 以上の固体粒子を、投射速度30〜300m/secで、鋼板表面の単位面積あたりの投射密度が0.2〜40kg/m 2 となるように投射することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0022】
(2)上記(1)に記載の方法により製造した、鋼板表面の平均粗さRa0.5〜2.0μmであることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0023】
このような本発明により得られる合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき皮膜表面に固体粒子を投射されたとによる微細な凹凸を有するので、プレス成形時の摺動性に優れる。なお、本発明者等は、合金化処理を施さない溶融亜鉛めっき鋼板(GI)でも、固体粒子を投射してめっき表面に微細な凹凸を形成させることにより、プレス成形時の摺動性が良好となることを知見している。しかし、溶接性及び塗装性がより優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板の方が、総合性能として優位である。
【0024】
【発明の実施の形態】
本実施形態では、所望の溶融亜鉛めっきを施し、さらに加熱して合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板に対して、本発明の調質圧延及び固体粒子の投射を行い、プレス成形性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法について説明する。
【0025】
前述したように、合金化処理を施された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、通常、材質確保のために調質圧延が施される。その際、合金化処理時に形成された鋼板表面に存在する凹凸は、調質圧延ロールとの接触により凸部が押しつぶされ、凹凸が緩和される。したがって、このような合金化溶融亜鉛めっき鋼板にプレス成形を施す際には、金型がめっき表面の凸部を押しつぶすのに必要な力が低下し、摺動特性を向上させることができる。また、残存した凹部は潤滑油を保持し、金型と接触する平坦部へ潤滑油を供給する働きを有するので、金型と鋼板表面が直接接触せず、凝着を抑制する効果が得られ、摺動抵抗を低減することができる。しかし、金型との摺動距離が長くなると、この合金化溶融亜鉛めっき鋼板本来の表面に存在する凹部のみでは十分な潤滑油を供給することができず、油切れを生じることがあり、金型との凝着を防止することができない場合があった。
【0026】
そこで本発明では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施し、めっき皮膜の凸部を平坦化した後、この鋼板にほぼ球状の固体粒子を投射する。そして、得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜表面には、ほぼ球状の微細な固体粒子が鋼板表面の平坦部に衝突することにより生じる微細な凹部が認められた。いわゆるディンプル状の微視的凹凸である。ここで、「ディンプル」とは、表面の凹部の形状が主として曲線から構成され、球状の物体が表面に衝突して形成されるクレーター状の凹みが多数形成された状態を指す。このような表面形態は、特にプレス成形における金型との間の潤滑油の保油性を向上させる効果に優れていると考えられる。なお、ディンプル状の微視的凹凸以外でプレス成形時の摺動性を向上させている要因があるかもしれないが、現時点では明確ではない。
【0027】
以上のように、本発明により製造された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板本来の表面に存在する凹部に加えて、平坦部にも微細な凹凸を有することにより、鋼板の潤滑油の保持能力が強化され、プレス成形時の摺動性がさらに向上する。また、固体粒子の投射により鋼板に微細な凹凸を付与する方法は、形成される凹凸が亜鉛めっき皮膜層の近傍に限定されるため、母材鋼種の硬さによって影響を受けない利点がある。また、調質圧延によって圧延ロールの表面粗さを転写させる場合には、材質上制限される伸長率の範囲内において、異なる鋼種を母材とする亜鉛めっき鋼板に所定の粗さを付与することが困難であるのに対し、この方法ではそのような制限もない。
【0028】
なお、本発明における調質圧延では、ロール表面の平均粗さRa0.4〜2.0μm以下の調質圧延ロールを用いる。合金化処理を施された鋼板表面に形成されためっき皮膜の凸部を押しつぶして平坦化するためには、調質圧延に用いるロールはある程度平滑なものが望ましい。ロール表面の平均粗さRa2.0μmを超える場合には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面を十分に平坦化させることができず、その後の固体粒子の投射においても微細な凹凸を付与することができない。一方、ロール表面の粗さが小さいと、合金化溶融亜鉛めっき鋼板はより平坦化されるため、プレス成形性には有利に働く方向である。しかし、粗さが細かいがゆえに圧延ロールのメンテナンスが困難となり、微小な疵をめっき鋼板表面に形成することになるなど、製造上の問題が生じる。したがって、ロール表面の平均粗さRa0.4μmを下限とする。
【0029】
また、調質圧延により平坦化される程度は、鋼板表面積に対する平坦部の面積の割合(以下、平坦部面積率と称す)で20〜80%とするのが望ましい。平坦部面積率が20%未満では、凸部の押しつぶしが不十分であり、プレス成形時に凸部を押しつぶす力が必要となるだけでなく、平坦部面積が狭いために固体粒子を投射しても微細な凹凸を付与することによる効果がほとんど得られない。一方、平坦部面積率が80%を超える場合には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が本来有していた凹部が非常に少なくなるため、固体粒子の投射により平坦部に微細な凹凸を付与したとしても、プレス成形時に十分な摺動性が得られなくなる。
【0030】
なお、めっき表面の平坦部は、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡等で表面を観察することで容易に識別可能である。めっき表面における平坦部面積率は、上記顕微鏡写真を画像解析することにより求めることができる。
【0031】
次に、本発明の実施に供する固体粒子の投射装置及び投射方法について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施に供する固体粒子の投射装置の一例として、遠心式投射装置の概略図を示したものである。遠心式投射装置は、固体粒子を供給する供給管11、遠心力を利用して固体粒子を加速させるインペラー12及びベーン13、これらを駆動するモータ14を備えている。なお、遠心式投射装置のベーン部の外径は、一般的な300〜500mm程度とすればよい。また、インペラー12及びベーン13を含む回転部をローターと称するが、このローター回転中心から合金化溶融亜鉛めっき鋼板Sまでの距離(投射距離と称する)が大きい場合には、固体粒子の大きさが小さいために空気中での減速が大きくなってしまう。したがって、本発明では投射距離が200〜700mm以下であることが好ましい。投射距離が200mm未満であると、固体粒子の投射範囲が狭くなるため、工業的に鋼板全面に微細な凹凸を付与するためには非常に多くの装置を設置しなければならない。一方、700mmを超えると、投射範囲は広がるものの、投射範囲内における凹凸のばらつきが大きくなり、均一に所定の粗さを付与することが工業的に困難となるためである。500mm以下がより望ましい範囲である。
【0033】
タンク等に貯められた固体粒子は、粒子供給管11を通じて遠心式投射装置のインペラー12内に供給される。インペラー12及びベーン13はモータ14により回転駆動されており、インペラー12内に供給された固体粒子は遠心力により加速される。そして、インペラー12から飛び出した固体粒子は、ベーン13によりさらに加速されるとともに、合金化溶融亜鉛めっき鋼板Sへ向けて投射される。
【0034】
ところで、投射する固体粒子は、平均粒子径が10〜300μmのものを使用することが好ましい。平均粒子径が10μm未満であると、投射した固体粒子の速度が空気中で減衰するため、投射速度を非常に大きくしなければならないためである。一方、平均粒子径が300μmを超えると、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に形成される凹部が大きくなりすぎ、適切な表面粗さに制御することが困難となる。なお、固体粒子の粒子形状は、角張った形状のグリット粒子よりも、ほぼ球形のショット粒子の方が、鋼板表面の平坦部にディンプル状の微細な凹凸を付与する上では好ましい。
【0035】
さらに、固体粒子としての密度が2g/cm3以上の固体粒子を使用するのが望ましい。固体粒子の密度が2g/cm3未満の場合には、固体粒子の質量が小さく、空気中での投射速度の減衰が大きいために、鋼板に衝突するときの運動エネルギーが小さい。そのため、ローター回転数等の投射条件を変更しても、表面形態を制御できる範囲が狭くなってしまうからである。好適な固体粒子としては、例えば炭素鋼、ステンレス鋼、高速度工具鋼(ハイス)等の金属系微粒子があげられる。タングステンカーバイトのような超硬合金であってもよい。
【0036】
また、固体粒子の投射速度は、30m/sec以上とすることが望ましい。これは、投射速度がこれよりも小さい場合には、鋼板の表面に粗さを付与するために十分な大きさの運動エネルギーが得られないためである。この観点からは投射速度の上限はないが、投射速度が大き過ぎるとめっき皮膜を損傷させる可能性があることから、300m/sec以下であることが好ましい。
【0037】
さらに、固体粒子の投射密度は、0.2〜40kg/m2とすることが望ましい。ここで、投射密度とは、鋼板表面の単位面積当りに投射される固体粒子の重量のことである。厳密には、投射密度は投射された範囲において一定の分布を有するものであるが、ここでは表面に粗さが付与された面積に対する投射総重量を指すものとする。この投射密度が0.2kg/m2未満であると、鋼板の表面に投射される固体粒子がまばらとなるため、保油性を有するほどの十分な凹部を形成することが困難である。一方、40kg/m2を超えると、必要以上の固体粒子を表面に投射することとなり、一旦形成した粗さを後に投射された固体粒子がつぶしてしまうことになり、所定の粗さを付与することが困難なためである。
【0038】
そして、以上のような固体粒子の投射を行った後のめっき皮膜表面の凹凸は、中心線平均粗さRaで評価でき、前述した効果を得るためには平均粗さRa0.5〜2.0μmであることが好ましい。平均粗さRaが0.5μm未満であると、プレス成形時の潤滑油の保持が十分ではなく、場合によっては油切れを生じる恐れがある。一方、平均粗さRa0.5μm以上では、金型との間の潤滑油の供給効果は得られるが、平均粗さRa2.0μmを超えると、その効果が飽和するだけでなく、塗装後の鮮映性に悪影響を及ぼすため、平均粗さRa2.0μm以下であることが望ましい。
【0039】
なお、本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに関しては、めっき浴中にAlが添加されていることが必要であるが、Al以外の添加元素成分は特に限定されない。すなわち、Alの他に、Pb,Sb,Si,Sn,Mg,Mn,Ni,Ti,Li,Cuなどが含有または添加されていても、本発明の効果が損なわれるものではない。
【0040】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0041】
板厚0.8mmの冷延鋼板上に、常法の合金化溶融亜鉛めっき皮膜を形成し、さらにロール表面の平均粗さRa1.0μmの圧延ロールを用いて調質圧延を施した。そして、図1に示した遠心式投射装置により、鋼板表面にSUS304製の球形の固体粒子を投射し、調質圧延により鋼板表面に形成された平坦部に微細な凹凸を形成する処理を行った。この際、投射距離は500mmであり、また、固体粒子の平均粒子径、投射速度、投射密度を、表1に示すように変化させた。
【0042】
以上のようにして製造した合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、表面粗さの測定を行うとともに、プレス成形性を簡易的に評価する摩擦係数の測定と塗装後鮮映性の評価を行った。また、固体粒子の投射を行うと、一部の条件でめっき剥離が見られた。そこで、固体粒子の投射前後でのめっき量変化を希塩酸溶解後の重量法により測定し、投射前のめっき量と比較して90%以下に減少しているものを×とした。
【0043】
摩擦係数の測定および塗装後鮮映性の評価は、以下のようにして行った。
【0044】
(1)摩擦係数測定
図2は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押し上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取付けられている。上記押付力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油として、スギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを試料1の表面に塗布して試験を行った。
【0045】
図3に示すビード6の形状は、幅10mm、試料の摺動方向長さ69mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は、幅10mm、摺動方向長さ60mmの平面を有する。
【0046】
測定は、押付荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平方向移動距離):20cm/minの条件で行い、供試材とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
【0047】
(2)塗装後鮮映性評価
日本パーカライジング社製「PB−L3080」を用いて試験片に化成処理を施し、関西ペイント社製「EL−2000」,「TP−37グレー」,「TM−13(RC)」を用いて、それぞれED塗装、上塗り塗装を行った。このようにして塗装した試験片のNSIC値をスガ試験機社製「写像鮮明度測定装置NSIC型」を用いて測定した。NSIC値は、黒板研磨ガラスでは100であり、NSIC値が100に近いほど良好な鮮映性を示すことから、NSIC値が80未満のものを×と評価した。
【0048】
試験結果を表1に示す。表1に示す試験結果から、下記事項が明らかとなった。
▲1▼No.1は固体粒子による投射処理を行っていないため、表面に微細な凹凸が形成されておらず、摩擦係数が最も高い。
▲2▼No.2〜7は、固体粒子による投射処理を行っているものの、その投射条件が最適化された範囲にはない実施例である。No.2,4,6は、それぞれ平均粒子径,投射密度,投射速度が小さい場合であり、鋼板表面の平均粗さRaが本発明範囲より小さいため、No.1と比較すると摩擦係数は低くなるが、その改善効果は小さい。一方、No.3,5は、それぞれ平均粒子径,投射密度が大きい場合であり、鋼板表面の平均粗さRaが本発明範囲より大きく、摩擦係数の改善効果は見られるが、塗装後鮮映性に劣っている。また、No.7は、投射速度が大きい場合であり、鋼板表面の平均粗さRaは本発明範囲内にあり、摩擦係数の改善効果が見られ、塗装後鮮映性にも優れるが、めっきの剥離が見られ、固体粒子の投射処理後のめっき残存量が少なくなっている。
▲3▼No.8〜16は、固体粒子の投射を本発明で最適化した投射条件の範囲で行った実施例であり、鋼板表面の平均粗さRaが本発明範囲内となり、摩擦係数の改善効果が見られるとともに、塗装後鮮映性の劣化や投射後のめっき量変化も見られない。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜の凸部を平坦化し、さらに固体粒子を投射して前記平坦部に微細な凹凸を付与するので、プレス成形時の摺動抵抗が小さく、安定して優れたプレス成形性を示す合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に供する固体粒子の投射装置の一例である遠心式投射装置の概略図
【図2】摩擦係数測定装置を示す概略正面図
【図3】図2中のビード形状・寸法を示す概略斜視図
【符号の説明】
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール
11 粒子供給管
12 インペラー
13 投射機ベーン
14 投射機モータ
N 押付荷重
F 摺動抵抗力
P 引張荷重
S 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
Claims (2)
- 鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、加熱処理によりめっき皮膜を合金化し、さらにロール表面の平均粗さRa0.4〜2.0μmの圧延ロールを用いて調質圧延を施して前記めっき皮膜表面の凸部を平坦化した後、遠心式投射装置を用いて、該めっき皮膜表面に平均粒子径が10〜300μmで密度が2g/cm 3 以上の固体粒子を、投射速度30〜300m/secで、鋼板表面の単位面積あたりの投射密度が0.2〜40kg/m 2 となるように投射することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 請求項1に記載の方法により製造した、鋼板表面の平均粗さRa0.5〜2.0μmであることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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