JP3706496B2 - 光導波路の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信モジュール等に用いられる光導波路の製造方法に関し、より詳細には、光照射により屈折率を制御して作製することができる三次元導波路形状の光導波路の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光通信モジュール等において光信号を伝送するために用いられる光導波路としては、例えば石英ガラス基板やシリコン基板上に火炎堆積法により成膜したシリカ膜からなる3次元導波路形状のクラッド部およびコア部を形成したシリカ系光導波路や、ニオブ酸リチウム単結晶基板をクラッド部とし、この基板上にTiを熱拡散して3次元導波路形状にコア部を形成した光導波路等があった。
【0003】
しかしながら、これら従来の光導波路ではその製造過程において1000℃以上の高温の熱処理が必要であるため、種々の基板上への所望の光導波路の作製が困難であるという問題点があった。そこで、光導波路の作製の容易さの観点から、作製時に高温処理が必要なこれら従来の光導波路に代えて、低温形成が可能な有機系の光学材料による有機系光導波路を利用することが検討されている。この有機系光導波路に利用される有機系光学材料としては、例えばPMMA(ポリメチルメタアクリレート)・ポリカーボネート・ポリイミド・ポリシロキサン・BCB(ベンゾシクロブテン)などが検討されている。
【0004】
このような有機系光学材料からなる光導波路の作製方法としては、通常は、シリコン基板やガラス基板上に下部クラッド層を形成し、次に下部クラッド層よりも高い屈折率を持つコア層を形成し、次に薄膜微細加工技術を用いてコア層をRIE(リアクティブイオンエッチング)等のドライエッチングや溶媒を用いたウエットエッチング等により加工してコア部を形成した後、コア部よりも低い屈折率を有する上部クラッド層を被覆してクラッド部にコア部が内蔵された3次元導波路形状の光導波路を形成することが行なわれている。
【0005】
また、特開平6−172533号公報においては、基板上に下層クラッド層を形成する工程、コア部分を形成する工程、上層クラッドを形成する工程、を包含するポリシロキサン系光導波路の製造方法において、コア部分の形成を、遠紫外線あるいは電子線の照射による高分子の不溶化工程と、不要部分の除去の工程により行なうことが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光導波路を作製する際のコア部の形成において、ドライエッチングを利用した場合には、ドライエッチングの際のマスクパターンの作製工程やドライエッチング自体に複雑で高度なプロセスおよびその制御が必要であり、所望の光導波路を容易に得ることができないという問題点があった。また、種々の工程に時間がかかり、ドライエッチング自体のエッチング速度も小さいので、光導波路の作製に長時間を要するという問題点もあった。
【0007】
一方、溶媒を用いたウエットエッチングを利用した場合には、等方的にエッチングが進むためコア部の加工形状を精密に制御することが困難であり、サブミクロンの加工精度が要求される光導波路の作製ならびにそのような光導波路を用いた機能性光回路の作製が困難であるという問題点があった。
【0008】
これに対し、特開平6−172533号公報において提案されているような、遠紫外線あるいは電子線の照射による高分子の不溶化工程と不要部分の除去の工程とを用いた場合には、溶媒を用いたウエットエッチングを利用した場合に比べてコア部の加工形状をより精密に制御することができ、また、ドライエッチングを利用した場合よりも簡便な工程となる。しかしながら、不要部分の除去の工程が必要であるため依然として工程が煩雑であることや、不要部分の除去の際にコア部の壁面に荒れが生じて光の散乱損失の原因となるといった問題点があった。
【0009】
また、凸型のコア部を形成した後にクラッド部を被覆した場合には、そのクラッド部の表面に凹凸が生じるため、光導波路を上下に積層形成する場合に、後の工程で形成する光導波路のコア部を形成する際の加工精度が先に形成した光導波路の凹凸のために悪くなったり、後の工程で形成された光導波路に光を伝搬させた場合に凹凸の影響によって光の損失が生じるといった問題点があった。
【0010】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、簡便な方法で生産性が高く、しかも高い加工精度で製造できる光導波路の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の光導波路の製造方法は、シロキサン系ポリマからなる、コア部およびクラッド部を備えた光導波路の製造方法であって、
基板上に、シリコン原子にOH基と、アルキル基やフェニル基等の有機成分とが末端基として付帯したモノマーあるいはオリゴマーと、光反応型の重合促進剤と、有機溶媒と、から成るシロキサン系ポリマ膜形成用溶液の塗布層を形成する工程と、
前記塗布層の前記コア部となる領域に導波光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成させるとともに、シロキサン系ポリマ膜の屈折率が最大となる光照射量以上の照射を行なって、いったん屈折率を上昇させた後に減少させ、前記コア部となる前記領域の周囲に相対的に多量の光の照射を行なって、前記コア部およびそれを内蔵するこのコア部より屈折率を小さくしたクラッド部を形成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0016】
したがって、複数の光導波路を上下に積層形成する場合であっても、それぞれの光導波路の表面に凹凸が生じることはなく、後の工程で形成する光導波路の加工精度が先の工程で形成された光導波路の凹凸のために悪くなったり、後の工程で形成された光導波路に光を伝搬させた場合に凹凸によって光の損失が生じるといった問題もなくなる。
【0017】
また、本発明の光導波路の製造方法は、シロキサン系ポリマからなる、コア部およびクラッド部を備えた光導波路の製造方法であって、
基板上に、シリコン原子にOH基と、アルキル基やフェニル基等の有機成分とが末端基として付帯したモノマーあるいはオリゴマーと、光反応型の重合促進剤と、有機溶媒と、から成るシロキサン系ポリマ膜形成用溶液の塗布層を形成する工程と、
この層を光導波路のコア部およびクラッド部に用いて、塗布層のコア部となる領域に導波光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成させるとともに、シロキサン系ポリマ膜の屈折率が最大となる光照射量以上の照射を行なって、いったん屈折率を上昇させた後に減少させ、コア部となる領域の周囲、すなわちクラッド部となる領域に、コア部となる領域よりも相対的に多い照射量の光を照射することによって、コア部およびそれを内蔵するこのコア部より屈折率を小さくしたクラッド部を形成する工程とを具備するものである。これにより、コア部の形成に際してドライエッチングやウエットエッチングなどを用いる必要がないため、ドライエッチングやウエットエッチング等を用いたコア部の加工に伴う煩雑な工程をなくすことができ、加工形状の不備等をなくすことができて、生産性が高く、しかも高い加工精度で光導波路を製造することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光導波路の製造方法について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1(a)〜(c)は、それぞれ本発明の光導波路の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図である。図1において、1は基板、2は光導波路のクラッド部となる下部クラッド層、3は光導波路のコア部およびクラッド部が形成される層であり、この層3は導波光よりも高エネルギーの光による光照射量の増加につれて屈折率が所定範囲内で小さくなる光学材料からなるものである。そして、4は層3中に形成されたコア部、5は層3に対してコア部4となる部分の領域の周囲に、コア部4よりも相対的に多くの照射量の導波光よりも高エネルギーの光を照射することによって、コア部4より屈折率を小さくして形成したクラッド部である。また、6は上部クラッド層であり、下部クラッド層2と層3に形成されたクラッド部5と上部クラッド層6とによりこの光導波路のクラッド部が構成されている。
【0020】
本発明の光導波路の製造方法においては、まず図1(a)に示すように、基板1上に下部クラッド層2を形成する。
【0021】
基板1には、光集積回路基板や光電子混在基板等の光信号を扱う基板として使用される種々の基板、例えばシリコン基板やアルミナ基板・ガラスセラミックス基板・多層セラミック基板・プラスチック電気配線基板・ポリイミド基板等が使用できる。
【0022】
基板1上に形成する下部クラッド層2は、例えば、導波光より高エネルギーの光の照射により屈折率が変化し、光照射量の増加につれて屈折率が所定範囲内で小さくなる光学材料からなる層を形成した後、後で形成するコア部4の屈折率よりもその屈折率が小さくなるような照射量の光を照射することにより形成する。
【0023】
または、コア部4よりも小さな屈折率を有するその他の光学材料からなる膜を形成しても良い。
【0024】
次に、同じく図1(a)に示すように、下部クラッド層2上に光導波路のコア部4およびクラッド部5を形成するための層3として、導波光よりも高エネルギーの光の照射により屈折率が変化し、光照射量の増加につれて屈折率が所定範囲内で小さくなる光学材料からなる層3を形成する。
【0025】
その後、図1(b)に示すように、例えばクラッド部5となる部分のみに所定光量の光を照射することにより、コア部4の屈折率よりもクラッド部5の屈折率が小さくなり、コア部4およびクラッド部5が形成される。
【0026】
ここで、クラッド部5となる部分のみに所定光量の光を照射するには、例えば、図1(b)に示すように周知のフォトリソグラフィで用いるようなフォトマスク7(遮光部に斜線を施して示す。)を介して、あるいは層3上に直接に金属薄膜による開口パターンを形成するなどしてコア部4となる部分を遮光した上で光を照射すればよい。また、レーザ光描画法により直接クラッド部5となる領域のみに光照射してもよい。その光照射量としては、光照射量の増加につれて屈折率が小さくなる光学材料に対して、光照射量と所定範囲内における屈折率変化量との関係を予め把握しておき、所望の光導波路を構成するためのコア部4およびクラッド部5の屈折率となるような光照射量を決定すればよい。
【0027】
なお、層3のコア部4となる領域の周囲に相対的に多量の光照射を行なってコア部4およびそれを内蔵するコア部4より屈折率が小さいクラッド部5を形成する場合、コア部4となる領域にも所望の屈折率となるような光量の光照射を行なうとともにその周囲のクラッド部5となる領域にはそれ以上の光量の光照射を行なう。
【0028】
次に、図1(c)に示すように、コア部4およびクラッド部5を形成した層の上面に上部クラッド層6を形成する。上部クラッド層6としては、コア部4よりも小さく、クラッド部5と同等の屈折率を有する膜を形成すればよい。例えば、フッ素樹脂・シロキサン系ポリマなどの樹脂系材料を用いれば、屈折率の制御が容易であり、スピンコート法などの簡便な方法で成膜でき、また、光透過性も優れており好適なものとなる。なお、上部クラッド層6は、必ず必要なものではなく、コア部4およびクラッド部5が大気あるいは真空に曝されていても良い。
【0029】
下部クラッド層2の屈折率や厚さ、コア部4の高さや幅や屈折率、上部クラッド層6の厚さや屈折率は、周知の光導波路に関する理論から検討・設計して設定すれば良い。
【0030】
本発明の光導波路を形成するための、導波光よりも高エネルギーの光の照射により屈折率が変化し、光照射量の増加につれて屈折率が所定範囲内で小さくなる光学材料としては、具体的には、そのような光の照射により膜材料の分解や重合あるいは色中心の生成等の膜材料の構造に変化が生じることにより、光照射量とともに屈折率が所定範囲内で小さくなるように変化する傾向を有する光学材料を用いれば良い。また、このような光学材料からなる膜を形成する方法としては、スピンコート法・ディップコート法・スプレーコート法・ローラーコート法・真空蒸着法等を用いれば良い。
【0031】
なお、本発明にかかる光学材料の屈折率を制御するための導波光よりも高エネルギーの光としては、導波光として一般的に近赤外光や赤外光が用いられることから、通常は可視光や紫外光を用いる。このように導波光よりも波長が短い高エネルギーの光を用いることにより、光学材料中において屈折率を変化させるのに必要な化学的な変化を生じさせることによって、光照射につれて所定範囲内で屈折率を小さくして、所望の屈折率で安定させて必要な屈折率を有するコア部および/またはクラッド部を形成することができる。
【0032】
また、かかる光学材料の屈折率を制御するための光は導波光よりも高エネルギーの光であることから、得られた光導波路のコア部に導波光を通して光信号を電波させるときには、その導波光によっては光学材料の屈折率は変化することはなく、光導波路として安定した屈折率を有し、良好な特性を有するものとして使用することができる。
【0033】
ここで、このような光照射量の増加につれて屈折率が小さくなる光学材料を用いる理由は、下部クラッド層2として光照射量の増加につれて屈折率が変化する光学材料からなる層を用いて、その層2の上に同じく光照射量の増加につれて屈折率が変化する光学材料からなる層3を形成して、それらに対する光照射量の差により屈折率差を生じさせてコア部4とクラッド部5とを形成しようとするとき、光照射量の増加につれて屈折率が大きくなる材料を用いた場合には、コア部4とクラッド部5とを形成するために照射した光が下部クラッド層2にも照射されて下部クラッド層2に対する光の照射量がコア部4の照射量よりも多くなるため、その結果として下部クラッド層2の屈折率がコア部4の屈折率よりも大きくなってしまうため、光導波路としての機能に障害をもたらすためである。
【0034】
これに対し、光照射量の増加につれて屈折率が小さくなる光学材料を用いることにより、下部クラッド層2への光の照射量がコア部4への光の照射量より多くなっても、下部クラッド層2の屈折率はコア部4の屈折率よりも小さいものとなるので、光導波路として適当なものとなる。
【0035】
次に、図2(a)〜(d)に、それぞれ本発明の光導波路の製造方法の実施の形態の他の例を示す工程毎の断面図を示す。
【0036】
図2において、11は基板、12は光導波路の下部クラッド層、13は光導波路のコア部14およびクラッド部15が形成される層であり、この層13は導波光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成することによって得られるシロキサン系ポリマからなる層である。また、この層13は、屈折率がそのような光の照射につれて所定範囲内で小さくなる光学材料でもある。14は層13中に形成されたコア部、15は層13に対してコア部14となる部分の領域の周囲に、コア部14よりも相対的に多くの照射量の光を照射することによって、屈折率をコア部14より小さくして形成したクラッド部である。また、16は上部クラッド層であり、下部クラッド層12と層13に形成されたクラッド部15と上部クラッド層16とによりこの光導波路のクラッド部が構成されている。
【0037】
このような本発明の光導波路の製造方法においても、まず図2(a)に示すように、基板11上に下部クラッド層12を形成する。
【0038】
基板11にも、基板1と同様に、光集積回路基板や光電子混在基板等の光信号を扱う基板として使用される種々の基板、例えばシリコン基板やアルミナ基板・ガラスセラミックス基板・多層セラミック基板・プラスチック電気配線基板・ポリイミド板等が使用できる。
【0039】
下部クラッド層12は、基板11上に、例えば導波光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成することによって得られるシロキサン系ポリマからなる層により形成し、これに対してコア部14の屈折率よりも下部クラッド層12の屈折率が小さくなるような、コア部14となる部分よりも多くの照射量の光照射を行なうことにより形成すればよい。または、コア部14よりも小さな屈折率を有するその他の光学材料からなる層を用いても良い。
【0040】
次に、図2(b)に示すように、下部クラッド層12上に、導波光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成することによって得られるシロキサン系ポリマからなる層13を形成する。このとき、この層13の全体にコア部14として適切な屈折率となるような所定光量の光照射を行なっておくとよい。
【0041】
その後、図2(c)に示すように、コア部14となる領域の周囲、すなわちクラッド部15となる部分のみに相対的に多量の光を照射することにより、コア部14の屈折率よりもクラッド部15の屈折率を所定範囲内で小さくして、コア部14およびクラッド部15を形成する。ここで、クラッド部15となる部分のみに所定光量の光を照射する方法としては、図2(c)に示すように、周知のフォトリソグラフィで用いるようなフォトマスク17(遮光部に斜線を施して示す。)を介して、あるいは層13上に直接に金属薄膜による開口パターンを形成するなどしてコア部14となる領域の部分を遮光した上で光を照射すればよい。また、レーザ光描画法により直接クラッド部15となる領域のみに光照射してもよい。
【0042】
次に、図2(d)に示すように、コア部14およびクラッド部15を形成した層の上面に上部クラッド層16を形成する。上部クラッド層16は、コア部14よりも小さな屈折率を有する光学材料からなる膜を形成すればよい。なお、上部クラッド層16は、必ず必要なものではなく、クラッド部15およびコア部14が大気あるいは真空に曝されていても良い。
【0043】
このような本発明の光導波路に用いる、導波光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成するシロキサン系ポリマからなる層は、シリコン(Si)原子にOH基と、メチル基等のアルキル基やフェニル基等の有機成分とが末端基として付帯したモノマーあるいはオリゴマーと、光反応型の重合促進剤と、有機溶媒とから成るシロキサン系ポリマ膜形成用溶液を基板上に塗布した後、光照射を行ない、脱水重合もしくは脱アルコール重合によりシロキサン結合を形成し、その後、加熱処理によって膜中に残留した溶媒や重合促進剤、または水やアルコール等の重合の際の副生成物等を膜外へ排出することによって得られた、シロキサン結合を主骨格とするシロキサン系ポリマ膜である。このような層13を形成する方法としては、スピンコート法・ディップコート法・スプレーコート法・ローラーコート法・真空蒸着法などを用いれば良い。
【0044】
本発明者は本発明に用いるシロキサン系ポリマについて鋭意検討・研究を重ねた結果、本シロキサン系ポリマからなる膜(層)の屈折率を、シロキサン結合を形成する際の光照射量を変えることにより精密に制御できることを見いだした。
【0045】
このような本シロキサン系ポリマの膜形成の際の光照射量と膜の屈折率との関係の例を、図3に線図で示す。
【0046】
図3において、横軸は膜形成の際の光照射量(単位:mJ/cm2 )であり、縦軸は得られたシロキサン系ポリマ膜の屈折率である。また、図中の黒点は測定結果を示している。ここで、照射した光には、導波光よりも高エネルギーの光として、重合促進剤に対して有効なエネルギー成分を有する高圧水銀ランプの紫外光を用いた。
【0047】
図3より分かるように、膜形成の際の光照射量を多くしていくと、光照射当初はシロキサン結合の形成が促進されて強固なシロキサン骨格が形成されるとともに、シロキサン系ポリマ膜の屈折率は所定の値まで一旦急激に増加する。そして、シロキサン系ポリマ膜の屈折率は材料の特性に応じてある光照射量で最大となり、その後、光照射量の増加につれて材料の特性に応じた所定の値を下限値として小さくなっていく。この理由は、以下のように考えられる。
【0048】
膜形成の際の光照射量を多くすると、シロキサン結合の形成が促進され強固なシロキサン骨格が形成されるとともに、シロキサン系ポリマ膜中に残留した溶媒や重合促進剤、また水やアルコールなどの重合の際の副生成物等が、光照射後の加熱処理によって膜外へ排出され易くなる。このとき、強固なシロキサン骨格の形状が保たれたまま、それがほとんど収縮することなく排出が行なわれるので、膜の密度が減少し、膜の屈折率が小さくなる。
【0049】
なお、このとき強固なシロキサン骨格の形状が保たれたままであり、この骨格が収縮することがないので、膜形成の際に膜厚の減少はなく、膜形成用溶液を塗布した際の表面の平坦性が膜形成後においてもそのまま保たれることとなり、下地基板に凹凸や表面粗さがあっても、優れた平坦化・平滑化が達成できる。
【0050】
このような層13に対するコア部14となる領域およびその周囲のクラッド部15となる領域への光照射量としては、層13に使用する光学材料について図3に示したような光照射量と屈折率変化量との所定範囲内における関係を予め把握しておき、所望の光導波路を得るためのコア部14およびクラッド部15の屈折率となるような光照射量を決定すればよい。
【0051】
ここで、コア部14への光照射量としては、光照射により十分なシロキサン結合が形成される、つまり、図3における屈折率が最大となる光照射量以上の光照射量とすることが望ましい。これは、十分な光照射によりコア部14中に十分なシロキサン結合が形成されることにより、コア部14が強固で安定なシロキサン系ポリマとなり、所望の屈折率を有するものとなるとともに、耐候性・熱安定性等が良くなるためである。
【0052】
一方、クラッド部15への光照射量としては、コア部14へ照射した光の光照射量よりも多い、より小さい屈折率となるような光照射量とする。これにより、クラッド部15の屈折率はコア部14の屈折率よりも小さくなり、光導波路として機能させることができるものとなる。
【0053】
このように、光照射量の増加につれて屈折率が小さくなる本シロキサン系ポリマを用いれば、下部クラッド層12に光照射によりシロキサン結合を形成することによって得られるシロキサン系ポリマを用いた場合でも、下部クラッド層12を形成した後に下部クラッド層12上にコア部14およびクラッド部15を形成する際の光照射が下部クラッド層12に及んでも、下部クラッド層12の屈折率を常にコア部14の屈折率よりも小さく保つことができ、光導波路として機能させることができるものとなる。また、コア部14およびクラッド部15となる層13を形成する前に、下部クラッド層12に光照射した後に加熱処理によって光重合促進材を揮発させあるいはその作用を無効化しておけば、下部クラッド層12上にコア部14およびクラッド部15を形成する際の光照射によっても下部クラッド層12の屈折率を変化させないようにすることができる。
【0054】
本発明の光導波路にかかる光照射によりシロキサン結合を形成することによって得られるシロキサン系ポリマを形成するのに用いるシロキサン系ポリマ膜形成用溶液に包含されるシリコン(Si)原子にOH基と、メチル基やフェニル基等の有機成分とが末端基として付帯したモノマーあるいはオリゴマーとしては、その種類が単一種でも複数種でも良い。また、その末端基のメチル基やフェニル基等の有機成分については、H原子がハロゲン化あるいは重水素化されていても良い。
【0055】
また、シロキサン系ポリマを用いることによる付随的な効果として、本発明のシロキサン系ポリマを用いた光導波路は、光照射によりシロキサン結合を形成することによって得られるこのシロキサン系ポリマを光導波路のコア部14およびクラッド部15に用いるものであることから、シロキサン結合を主骨格に持つことによる優れた耐熱性を有している。さらに、PMMA・ポリカーボネート・ポリイミド・BCB等のCH主成分のポリマに比べて含有CH基量が少ないので、CH基による赤外振動吸収が小さく、導波光として用いられる光が属する近赤外光域での光透過性が優れたものとなる。
【0056】
以上のように、本発明の光導波路の製造方法によれば、導波光よりも高エネルギーの光の照射により屈折率が変化する光学材料であって、光照射量の増加につれて屈折率が所定範囲内で小さくなる光学材料により光導波路のコア部およびクラッド部を形成しており、コア部よりも相対的に多くの照射量の光をクラッド部に照射することによってクラッド部の屈折率をコア部の屈折率よりも小さくしてコア部およびクラッド部を形成することから、コア部を形成する方法としてドライエッチングやウエットエッチング等を用いる必要がないので、ドライエッチングやウエットエッチング等を用いたコア部の加工に伴う煩雑な工程や加工形状の不備がなくなり、光導波路を簡便な方法で生産性が高く、しかも高い加工精度で製造することができる。
【0057】
【実施例】
次に、本発明の光導波路の製造方法について具体例を説明する。
【0058】
〔例1〕
まず、シリコンからなる基板上に、シリコン原子にOH基とメチル基およびフェニル基とが末端基として付帯したモノマーと、光反応型の重合促進剤と、有機溶媒とから成るシロキサン系ポリマ膜形成用溶液をスピンコート法により塗布し、100 ℃/30分間の加熱処理を行ない、有機溶媒を蒸発させた。その後、高圧水銀ランプの紫外光を基板全面に1500mJ/cm2 の光照射量で照射して、150 ℃/60分間の加熱処理を行ない、膜厚15μm・屈折率1.4367のシロキサン系ポリマ膜からなる下部クラッド層を形成した。
【0059】
次に、この下部クラッド層上に、下部クラッド層を形成した際に用いたシロキサン系ポリマ膜形成用溶液をスピンコート法により塗布し、100 ℃/30分間の加熱処理を行ない、有機溶媒を蒸発させて、コア部およびクラッド部を形成するためのシロキサン系ポリマ膜からなる層を形成した。その層の厚さは5μmとした。その後、高圧水銀ランプの紫外光を基板全面に100 mJ/cm2 の光照射量で照射した。
【0060】
さらに、幅1μmから50μmの種々の幅のストライプ状の遮光部分を有するフォトマスクにより、コア部となる領域の部分を遮光して、その周囲のクラッド部となる部分に高圧水銀ランプの紫外光を1500mJ/cm2 の光照射量で照射した。
【0061】
以上により、屈折率が1.4367で厚さが15μmの下部クラッド層上に、屈折率が1.440 で種々の幅を持ち、高さが5μmのコア部と、屈折率が1.4367でコア部と同じ層に形成されたクラッド部を有し、上部クラッド層を空気層とした光導波路を作製した。
【0062】
この光導波路について、波長1.3 μmのレーザ光を入射させ伝搬させて出射光を赤外線カメラで観察したところ、幅10μm以下の遮光幅で作製した光導波路がシングルモードとなっていることを確認した。また、出射光強度を光パワーメータで測定することにより伝搬損失を評価したところ、0.2 dB/cm程度の損失であり、光導波路として十分な性能であることを確認した。
【0063】
〔例2〕
まず、シリコンからなる基板上に、シリコン原子にOH基とメチル基およびフェニル基とが末端基として付帯したモノマーと、光反応型の重合促進剤と、有機溶媒とから成るシロキサン系ポリマ膜形成用溶液をスピンコート法により塗布し、100 ℃/30分間の加熱処理を行ない、有機溶媒を蒸発させた。その後、高圧水銀ランプの紫外光を基板全面に1500mJ/cm2 の光照射量で照射して、150 ℃/60分間の加熱処理を行ない、膜厚15μm・屈折率1.4367のシロキサン系ポリマ膜からなる下部クラッド層を形成した。
【0064】
次に、この下部クラッド層上に、下部クラッド層を形成した際に用いたシロキサン系ポリマ膜形成用溶液をスピンコート法により塗布し、100 ℃/30分間の加熱処理を行ない、有機溶媒を蒸発させて、コア部およびクラッド部を形成するためのシロキサン系ポリマ膜からなる層を形成した。その層の厚さは8μmとした。その後、高圧水銀ランプの紫外光を基板全面に100 mJ/cm2 の光照射量で照射した。
【0065】
さらに、幅1μmから50μmの種々の幅のストライプ状の遮光部分を有するフォトマスクにより、コア部となる領域の部分を遮光して、その周囲のクラッド部となる部分に高圧水銀ランプの紫外光を1500mJ/cm2 の光照射量で照射し、150 ℃/60分間の加熱処理を行なった。
【0066】
次に、コア部およびクラッド部を形成した層の上に、下部クラッド層を形成した際に用いたシロキサン系ポリマ膜形成用溶液をスピンコート法により塗布し、100 ℃/30分間および150 ℃/60分間の加熱処理を行なって、光を未照射として、シロキサン系ポリマ膜からなる屈折率が1.4360で厚さが15μmの上部クラッド層を形成した。
【0067】
以上により、屈折率が1.4367で厚さが15μmの下部クラッド層上に、屈折率が1.440 で種々の幅を持ち、高さが8μmのコア部と、屈折率が1.4367でコア部と同じ層に形成されたクラッド部とを有し、上部クラッド層が屈折率が1.4360で厚さが15μmの光が未照射のシロキサン系ポリマ膜からなる光導波路を作製した。
【0068】
この光導波路について、波長1.3 μmのレーザ光を入射させ伝搬させて出射光を赤外線カメラで観察したところ、幅10μm以下の遮光幅で作製した光導波路がシングルモードとなっていることを確認した。また、出射光強度を光パワーメータで測定することにより伝搬損失を評価したところ、0.4 dB/cm程度の損失であり、光導波路として十分な性能であることを確認した。
【0069】
〔例3〕
まず、シリコンからなる基板上に、シリコン原子にOH基とメチル基およびフェニル基とが末端基として付帯したモノマーと、光反応型の重合促進剤と、有機溶媒とから成るシロキサン系ポリマ膜形成用溶液をスピンコート法により塗布し、100 ℃/30分間の加熱処理を行ない、有機溶媒を蒸発させた。その後、高圧水銀ランプの紫外光を基板全面に1500mJ/cm2 の光照射量で照射して、150 ℃/60分間の加熱処理を行ない、膜厚15μm・屈折率1.4367のシロキサン系ポリマ膜からなる下部クラッド層を形成した。
【0070】
次に、この下部クラッド層上に、下部クラッド層を形成した際に用いたシロキサン系ポリマ膜形成用溶液をスピンコート法により塗布し、100 ℃/30分間の加熱処理を行ない、有機溶媒を蒸発させて、コア部およびクラッド部を形成するためのシロキサン系ポリマ膜からなる層を形成した。その層の厚さは6μmとした。その後、高圧水銀ランプの紫外光を基板全面に100 mJ/cm2 の光照射量で照射した。
【0071】
さらに、幅1μmから50μmの種々の幅のストライプ状の遮光部分を有するフォトマスクにより、コア部となる領域の部分を遮光して、その周囲のクラッド部となる部分に高圧水銀ランプの紫外光を1500mJ/cm2 の光照射量で照射し、150 ℃/60分間の加熱処理を行なった。
【0072】
次に、コア部およびクラッド部を形成した層の上に、環化ポリフッ化エチレン樹脂をフッ素系有機溶媒に溶解した溶液をスピンコート法により塗布し、150 ℃/60分間の加熱処理を行ない、有機溶媒を蒸発させて、屈折率が1.330 で厚さが15μmの上部クラッド層を形成した。
【0073】
以上により、屈折率が1.4367で厚さが15μmの下部クラッド層上に、屈折率が1.440 で種々の幅を持ち、高さが6μmのコア部と、屈折率が1.4367でコア部と同じ層に形成されたクラッド部とを有し、上部クラッド層が屈折率が1.330 で厚さが15μmの環化ポリフッ化エチレン樹脂からなる光導波路を作製した。
【0074】
この光導波路について、波長1.3 μmのレーザ光を入射させ伝搬させて出射光を赤外線カメラで観察したところ、幅10μm以下の遮光幅で作製した光導波路がシングルモードとなっていることを確認した。また、出射光強度を光パワーメータで測定することにより伝搬損失を評価したところ、0.2 dB/cm程度の損失であり、光導波路として十分な性能であることを確認した。
【0075】
以上のように、本発明によれば、簡便な方法で高い生産性で、しかも高い加工精度で、良好な特性の有機系光導波路を作製できることが確認できた。
【0076】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更・改良を加えることは何ら差し支えない。例えば、コア部およびそれを内蔵するクラッド部を形成するための光学材料としては、屈折率を制御する光として紫外光や可視光だけではなくX線を用いて屈折率が制御できる光学材料であってもよい。
【0079】
【発明の効果】
本発明の光導波路の製造方法は、シロキサン系ポリマからなる、コア部およびクラッド部を備えた光導波路の製造方法であって、
基板上に、シリコン原子にOH基と、アルキル基やフェニル基等の有機成分とが末端基として付帯したモノマーあるいはオリゴマーと、光反応型の重合促進剤と、有機溶媒と、から成るシロキサン系ポリマ膜形成用溶液の塗布層を形成する工程と、
前記塗布層の前記コア部となる領域に導波光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成させるとともに、シロキサン系ポリマ膜の屈折率が最大となる光照射量以上の照射を行なって、いったん屈折率を上昇させた後に減少させ、前記コア部となる前記領域の周囲に相対的に多量の光の照射を行なって、前記コア部およびそれを内蔵するこのコア部より屈折率を小さくしたクラッド部を形成する工程とを具備することから、コア部の形成に際してドライエッチングやウエットエッチングなどを用いる必要がないため、ドライエッチングやウエットエッチング等を用いたコア部の加工に伴う煩雑な工程をなくすことができ、加工形状の不備等をなくすことができて、生産性が高く、しかも高い加工精度で光導波路を製造することができる。また、複数の光導波路を上下に積層形成する場合であってもそれぞれの光導波路の表面に凹凸が生じることはないので、そのような凹凸による悪影響の問題をなくすことができる。
【0080】
以上のように、本発明によれば、簡便な方法で生産性が高く、しかも高い加工精度で製造できる光導波路および光導波路の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は、それぞれ本発明の光導波路の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の光導波路の製造方法の実施の形態の他の例を示す工程毎の断面図である。
【図3】本発明の光導波路に用いる光学材料としてのシロキサン系ポリマ膜の膜形成の際の光照射量と屈折率との関係を示す線図である。
【符合の説明】
1、11・・・基板
2、12・・・下部クラッド層
3、13・・・コア部およびクラッド部を形成するための層
4、14・・・光導波路のコア部
5、15・・・光導波路のクラッド部
6、16・・・上部クラッド層
Claims (1)
- シロキサン系ポリマからなる、コア部およびクラッド部を備えた光導波路の製造方法であって、
基板上に、シリコン原子にOH基と、アルキル基やフェニル基等の有機成分とが末端基として付帯したモノマーあるいはオリゴマーと、光反応型の重合促進剤と、有機溶媒と、から成るシロキサン系ポリマ膜形成用溶液の塗布層を形成する工程と、
前記塗布層の前記コア部となる領域に導波光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成させるとともに、シロキサン系ポリマ膜の屈折率が最大となる光照射量以上の照射を行なって、いったん屈折率を上昇させた後に減少させ、前記コア部となる前記領域の周囲に相対的に多量の光の照射を行なって、前記コア部およびそれを内蔵する該コア部より屈折率を小さくしたクラッド部を形成する工程とを具備することを特徴とする光導波路の製造方法。
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