JP3714005B2 - 拡声通話機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家庭内、ビルディング、工場等で用いられる拡声通話機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インターホンや電話機あるいはPHS等の拡声通話機においては、スピーカからマイクロホンへの音響フィードバックおよびハイブリッド回路(2−4線変換回路)におけるインピーダンスの不整合により閉ループが形成され、増幅器の利得が大きすぎる等の理由により上記閉ループの利得が1倍以上になるとハウリングが生じるため、通話品質を確保する上でハウリングの抑圧が必要不可欠な課題となっていた。
【0003】
そこで従来は、送受話信号のレべルに応じて受話信号または送話信号に所定量の損失を挿入することで閉ループ利得を抑圧するというハウリング抑圧方式が用いられてきた。また、別の方式としてエコーキャンセラを用いるものもあるが、エコーキャンセラにおける適応フィルタの係数が収束していない過渡状態や系の変動によりエコー経路が急激に変化した場合等において不安定化しやすいため、挿入損失と併用する場合が多い。
【0004】
上記何れの場合においても、挿入損失量を大きくしすぎた場合には通話中に切断感を生じる(音声が途切れる)等の通話品質の劣化を招くため、挿入損失量を必要最小限とすることが望ましい。
【0005】
このような課題に対して本発明者らは既に、拡声通話系に形成される閉ループの利得余裕を随時監視し、推定された利得余裕値に基づいて挿入損失量を適応的に調整するようにした拡声通話機を提案している(特願平9−61434号参照)。
【0006】
図7(a)は上記出願に係る拡声通話機を示すブロック図であり、集音した音を送話側の音声信号(以下、送話信号と呼ぶ)として出力するマイクロホン1と、マイクロホン1からの送話信号を増幅する第1の増幅器2と、受話側の音声信号(以下、受話信号と呼ぶ)に応じて鳴動するスピーカ3と、スピーカ3へ出力される受話信号を増幅する第2の増幅器4と、送話側及び受話側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う2−4線変換手段たるハイブリッド回路5と、送話側及び受話側の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入手段たる減衰器(アッテネータ)61,62と、各減衰器61,62の損失量を可変制御する制御器7と、信号経路に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン1からスピーカ3への音響結合及びハイブリッド回路5における反射により形成される閉ループにおける利得余裕を推定するとともに制御器7を介して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段8とを備えている。なお、挿入損失量調整手段8は送話側の信号経路上に設けることも可能である。
【0007】
一方、同図(b)は上記挿入損失量調整手段8の具体的な構成を示すブロック図であり、受話側の信号経路にサンプル信号たるインパルス信号を送出するインパルス信号発生器9と、受話信号にインパルス信号を加算する加算器10と、インパルス信号に対する応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器11と、包絡線検波器11の出力信号に基づいて閉ループ系における利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部12とを備えている。ここで、閉ループ利得余裕推定部12は、包絡線検波器11の出力信号レベルを予め求めた閾値レベルと比較する比較器13と、比較結果に基づいて閉ループ系の利得余裕値を推定する判定部14とを具備している。なお、サンプル信号としてはパルス幅が充分に短い単一パルス信号であってもよいし、バースト信号(バーストノイズ)であってもよい。そして、図8に示すように、第2の増幅器4→スピーカ3→マイクロホン1→第1の増幅器2→減衰器61→ハイブリッド回路5→減衰器62→挿入損失量調整手段8→第2の増幅器4により閉ループが形成されている。
【0008】
而して、加算器10の出力信号は、上記閉ループ系にサンプル信号を入力したときの応答信号であり、加算器10の出力信号を観測することにより閉ループ系のインパルス応答を推定することができる。抽出された包絡線成分は、閉ループ系の伝達関数における支配極(複素平面上において最も虚軸に近い極)の実部と密接な関係があり、包絡線の時間軸に対する減衰特性から閉ループ系の安定度すなわち利得余裕を推定することができる。しかしながら、図7(a)における加算器10の出力信号は、サンプル信号に対する応答成分の他に送受話音声信号および周囲雑音が重畳しており、上記挿入損失量調整手段8にはサンプル信号に対する応答成分のみを抽出する手段がないため、有音声区間および周囲騒音信号のレベルが大きい場合には利得余裕値の推定精度が劣化するという問題がある。このうち送受話音声による推定精度の劣化に対しては、受話信号のレベルから(あるいは送話信号のレベルであってもよい)、通話中の無音区間を検出する無音検出器を設け、この無音検出器にて無音区間が検出された場合にのみ閉ループ系にサンプル信号(インパルス信号又はバーストノイズ)を入力し、閉ループ利得余裕推定部12にて利得余裕値の推定処理を行うことにより推定精度を改善することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記拡声通話系の閉ループ中に定常的な周囲騒音信号が存在し、かつ、そのレベルが大きい場合には、上記出願に係る拡声通話機では、利得余裕値を精度よく推定することができない。また、上記手法では、閉ループ中に音声信号が存在している状態では利得余裕値の推定処理を止める必要があるため、通話中に系の利得余裕値が変動するような場合にはこれに対応できず、系が不安定化する場合がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、閉ループ中に周囲騒音や音声信号が存在し、かつそれらの信号のレベルが大きい場合においても十分な精度で利得余裕値を推定し、常に安定した通話を実現することのできる拡声通話機を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、集音した音を送話側の音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホンからの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利得余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整手段が、信号経路にサンプル信号を送出するサンプル信号発生器と、音声信号にサンプル信号を加算する加算器と、サンプル信号に対する応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部と、所定の時間間隔でサンプル信号発生器から信号経路へ複数回にわたってサンプル信号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制御部と、包絡線検波器の前段に設けられ同期制御部からのタイミング情報を受けてサンプル信号に対する応答信号を同期加算平均処理する同期加算平均部とを具備して成ることを特徴とし、スピーカからマイクヘの音響結合や送話側及び受話側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う必要がある場合に用いられる2−4線変換手段におけるインピーダンスの不整合による反射が原因となり形成される閉ループ系に対して、サンプル信号を入力したときに観測される応答信号の包絡線成分の減衰特性により利得余裕値を推定し、所望の利得余裕値に対する過不足分を算出することで挿入損失量を調整するため、ハウリングが発生するまでの閉ループ系の利得余裕を所望の値に維持することができ、ハウリングを生じることなく安定した通話品質を維持することができるとともに、必要以上に挿入損失量を大きくすることがないため、双方向同時通話性能の実現可能性が高まる。しかも、同期制御部においてサンプル信号の送出タイミングを制御し、同期加算平均部でサンプル信号に同期した移動平均処理を行うとともに、同期加算平均部の出力信号から包絡線検波器にて包絡線成分を抽出するため、閉ループ中に存在する定常的な周囲騒音のレベルが大きい場合においても周囲騒音による影響を軽減して十分な精度で利得余裕値を推定し、挿入損失量が適切な値に設定可能となって、常に安定した通話を実現することができる。
【0012】
請求項2の発明は、上記目的を達成するために、集音した音を送話側の音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホンからの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利得余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整手段が、信号経路に周期が有限の疑似白色信号を挿入する疑似白色信号発生器と、音声信号に疑似白色信号を加算する加算器と、疑似白色信号と当該疑似白色信号に対する応答信号の相互相関値を求めるとともに求めた相互相関値に基づいて閉ループのインパルス応答を推定する相互相関演算部と、相互相関演算部により推定された閉ループのインパルス応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部とを具備して成ることを特徴とし、スピーカからマイクヘの音響結合や送話側及び受話側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う必要がある場合に用いられる2−4線変換手段におけるインピーダンスの不整合による反射が原因となり形成される閉ループ系に対して、周期が有限の疑似白色信号を入力したときに観測される応答信号と当該疑似白色信号との相互相関値を求めるとともに求めた相互相関値から推定される閉ループ系のインパルス応答信号の包絡線成分の減衰特性により利得余裕値を推定し、所望の利得余裕値に対する過不足分を算出することで挿入損失量を調整するため、ハウリングが発生するまでの閉ループ系の利得余裕を所望の値に維持することができ、ハウリングを生じることなく安定した通話品質を維持することができるとともに、必要以上に挿入損失量を大きくすることがないため、双方向同時通話性能の実現可能性が高まる。しかも、利得余裕の推定に疑似白色信号を用いるので、使用者に聴感上の不快感を与えるのを防止することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、所定の時間間隔で疑似白色信号発生器から信号経路へ複数回にわたって疑似白色信号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制御部と、包絡線検波器の前段に設けられ同期制御部からのタイミング情報を受けて相互相関演算部により推定された閉ループのインパルス応答信号を同期加算平均処理する同期加算平均部とを挿入損失量調整手段が具備して成ることを特徴とし、同期制御部において疑似白色信号の送出タイミングを制御し、同期加算平均部で疑似白色信号に同期した移動平均処理を行うとともに、同期加算平均部の出力信号から包絡線検波器にて包絡線成分を抽出するため、閉ループ中に存在する定常的な周囲騒音のレベルが大きい場合においても周囲騒音による影響を軽減して十分な精度で利得余裕値を推定し、挿入損失量が適切な値に設定可能となって、常に安定した通話を実現することができる
【0014】
請求項の発明は、請求項1又は3の発明において、閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推定する騒音レベル推定部と、騒音レベル推定部による推定結果に基づいてサンプル信号又は疑似白色信号の送出レベルを調整する送出レベル調整部とを挿入損失量調整手段が具備して成ることを特徴とし、閉ループ系に送出するサンプル信号又は疑似白色信号のレベルを周囲騒音レベルに対して充分な大きさに設定することにより、観測点において高いS/N比でサンプル信号又は疑似白色信号に対する応答信号を得ることができ、利得余裕値の推定精度を向上させることができる
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を説明する前に、基本となる先願(特願平9−61434号)に係る拡声通話機の構成並びに動作について詳細に説明する。
【0016】
従来技術でも説明したように、上記公報に記載された拡声通話機は、集音した音を送話側の音声信号(以下、送話信号と呼ぶ)として出力するマイクロホン1と、マイクロホン1からの送話信号を増幅する第1の増幅器2と、受話側の音声信号(以下、受話信号と呼ぶ)に応じて鳴動するスピーカ3と、スピーカ3へ出力される受話信号を増幅する第2の増幅器4と、送話側及び受話側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う2−4線変換手段たるハイブリッド回路5と、送話側及び受話側の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入手段たる減衰器(アッテネータ)61,62と、各減衰器61,62の損失量を可変制御する制御器7と、信号経路に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン1及びスピーカ3を通じて形成される閉ループ系における利得余裕を推定するとともに制御器7を介して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段8とを備えている。
【0017】
一方、挿入損失量調整手段8は、受話側の信号経路にサンプル信号たるインパルス信号を送出するインパルス信号発生器9と、受話信号にインパルス信号を加算する加算器10と、インパルス信号に対する応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器11と、包絡線検波器11の出力信号に基づいて閉ループ系における利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部12とを備え、マイコンやDSP(DigitalSignalProcessor)などで構成される。ここで、閉ループ利得余裕推定部12は、後述するように包絡線検波器11の出力信号レベルを予め求めた閾値レベルと比較する比較器13と、比較結果に基づいて閉ループ系の利得余裕値を推定する判定部14とを具備している。なお、サンプル信号として用いるインパルス信号は、パルス幅が充分に短い単一パルス信号であってもよい。また包絡線検波器11は、整流回路とローパスフィルタ回路の合成回路や、巡回型ローパスフィルタやリーク積分器等のデジタル回路、あるいはDSP(DigitalSignalProcessor)などの信号処理手段によって構成することができる。
【0018】
また、図8に示すように第2の増幅器4→スピーカ3→マイクロホン1→第1の増幅器2→減衰器61→ハイブリッド回路5→減衰器62→挿入損失量調整手段8→第2の増幅器4により閉ループが形成されている。ここで、各部における伝達関数を以下のように定義する。
【0019】
S :スピーカ3の電気機械変換特性
G :スピーカ3からマイクロホン1への音響伝達特性
M :マイクロホン1の音響電気変換特性
Kr:第2の増幅器4の増幅特性
Kx:第1の増幅器2の増幅特性
Ar:受話側の減衰器62の減衰特性
Ax:送話側の減衰器61の減衰特性
Γ :ハイブリッド回路5における反射伝達関数
また、インパルス信号発生器9から出力されるインパルス信号をP、外部の通話回線から伝送されてくる遠端話者音声入力信号をY(以下、「受話信号」と呼ぶ)、マイクロホン1の集音する近端話者音声信号と周囲雑音との和をX(以下、「音響信号」と呼ぶ)とすると、挿入損失量調整手段8の構成要素の一つである加算器10の出力信号(応答信号)Qは下記式で表される。
【0020】
【式1】
Figure 0003714005
【0021】
なお、上記式のL(s)は上記閉ループ系における一巡伝達関数、sはラプラス変数をそれぞれ表す。
【0022】
ここで、閉ループ系の安定性は上記一巡伝達関数L(s)により判別することができる。すなわち、極座標系における一巡伝達関数L(s)のθ成分(=∠L(s))が∠L(s)=2nπ(nは整数)となる全ての周波数において、r成分(=|L(s)|)が|L(s)|<1ならば閉ループ系は安定、|L(s)|≧1となる周波数が存在すれば閉ループ系は不安定となり、その周波数において発振してハウリングが生じる。また、閉ループ系が安定である場合に、∠L(s)=2nπとなる全ての周波数における利得の最大値をLMAXとすれば、閉ループ系の利得余裕値は1/LMAXで表される。よって、閉ループ系の安定性の尺度は閉ループ利得余裕値により評価することができる。
【0023】
一方、閉ループ利得余裕値は、閉ループ系のインパルス応答特性と密接な関係があり、閉ループ利得余裕値が大きいほどインパルス応答信号Qの振幅が時間とともに急激に減衰し、閉ループ利得余裕値が小さいほど減衰が緩やかになる。そこで、閉ループ利得余裕推定部12において閉ループ利得余裕値を推定するためのサンプル信号(インパルス信号)Pを上記閉ループ系に与えたときの応答信号Qを観測し、その応答信号Qの包絡線成分から閉ループ系の時定数に関する情報を抽出して閉ループ系におけるハウリング発生限界までの閉ループ利得余裕値の推定を行うとともに、推定結果に基づき、挿入損失量調整手段8にて上記所望の閉ループ利得余裕値に対する実際の挿入損失量の過不足分を算出して閉ループ系への挿入損失量を調整する。
【0024】
すなわち、上述のように包絡線検波器11で得られる応答信号Qの包絡線成分の時間特性が閉ループ利得余裕値が大きいほど減衰が早く且つ小さいほど減衰が緩やかになるという性質を有することから、閉ループ利得余裕推定部12において事前に学習された種々の利得余裕値に対する包絡線検波器11の出力データから閾値レベルを求めておき、比較器13において観測される包絡線検波器11の出力信号レベルを上記閾値レベルと比較することにより、その比較結果に基づいて判定部14にて閉ループ利得余裕値が推定できる。そして、その推定結果から、閉ループ利得余裕値を設計仕様で定めた値とするために必要な損失量を挿入するべく、制御器7に信号を伝送して制御器7によって減衰器61,62の減衰量を調節している。
【0025】
上述のように上記拡声通話機では、インパルス信号に対する応答信号から、閉ループ系での利得余裕値を推定し、この利得余裕値の推定値と、目標とする利得余裕値との差分を算出し、その算出結果に基づいて信号経路に挿入する損失量を調整する挿入損失量調整手段8を備えているので、通話中においても閉ループ系の安定度に応じて挿入損失量を制御し、常に利得余裕値を仕様で定めた値に維持することができ、ハウリングを生じることなく安定した通話品質を維持することができる。また、従来例に比較して必要以上に挿入損失量を大きくする必要がないため、双方向同時通話性能の実現可能性が高まるという利点もある。
【0026】
なお、上記基本構成並びに後述する各実施形態においてはサンプル信号発生器にインパルス信号発生器9を用いたが、代わりにバースト信号発生器を用いてバースト信号をサンプル信号に用いてもよい。この場合には、信号を送出している状態から送出を停止した瞬間からの閉ループ系の過渡応答を観測し、その包絡線成分から閉ループ系の時定数に関する情報を抽出する。而してサンプル信号にバースト信号を用いた場合にも、信号送出時間が閉ループ系の遅延時間に対して十分に短ければ、その応答波形の包絡線成分より閉ループ系の時定数に関する情報を抽出することができ、バースト信号の信号送出時間を適切な値とすることにより通話中における違和感をなくし、サンプル信号の送出による通話品質の劣化を抑えることができるという利点がある。但し、種々の利得余裕値に対する閾値レべルを求めておく必要があることはインパルス信号の場合と同様である。
【0027】
(実施形態1)
ところで、上記基本構成においては式1で表される応答信号Qから利得余裕値を推定しているが、上記式1からも明らかなように応答信号Qにはサンプル信号Pのみに対する応答信号(式1の右辺第1項)以外の信号が含まれている。そのため、受話信号Y及びマイクロホン1の集音する音響信号Xのレベルが大きく、式1の右辺第2項及び第3項が無視できない場合においては、利得余裕値を精度良く推定することが難しくなる。
【0028】
そこで、本発明の各実施形態においては、式1で表される応答信号Qのサンプル信号に対応する信号(式1の右辺第1項)のみを抽出することにより、その他の信号(式1の右辺第2項及び第3項)を充分に抑圧し、精度良く利得余裕値を推定することができるようにしている。
【0029】
図1は本実施形態における挿入損失量調整手段8の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態の拡声通話機の全体構成は上述の基本例と共通であるから図示並びに説明は省略し、共通する部分については同一の符号を付す。図1に示すように本実施形態における挿入損失量調整手段8は、インパルス信号発生器9、加算器10、包絡線検波器11並びに閉ループ利得余裕推定部12に加えて、所定の時間間隔でインパルス信号発生器9から信号経路へ複数回にわたってインパルス信号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制御部15と、包絡線検波器11の前段に設けられ同期制御部15からのタイミング情報を受けてインパルス信号に対する応答信号Qを同期加算平均処理する同期加算平均部16とを具備している。
【0030】
図2は同期制御部15並びに同期加算平均部16を示すブロック図である。同期制御部15は、図3に示すように所定の時間間隔T1,T2,…,TN-1毎に複数回励振されるインパルス信号(サンプル信号)P0,P1,…,PN-1(以下、{P}と表記する。)をインパルス信号発生器9から送出させるとともに、図2に示すようにインパルス信号P0…の送出に同期した同期信号を同期加算平均部16に出力する。
【0031】
一方、同期加算平均部16は、図2に示すように同期制御部15からの同期信号によってオン・オフされるスイッチ要素16aと、スイッチ要素16aを介して入力されるインパルス信号{P}の応答信号{Q}を所定の時間だけ遅延させる遅延器16b1〜16bN-1と、各遅延器16b1〜16bN-1の出力を加算する加算器16c1〜16cN-1と、全遅延器16b1〜16bN-1の出力信号の和(加算器16cN-1の出力)を同期加算回数Nで除算する除算器16dとを備えて、インパルス信号{P}に同期して加算平均処理を行って応答信号{Q}の移動平均を求めている。而して、音響信号Xや受話信号Yの位相はインパルス信号{P}が送出される時間間隔T1,T2,…,TN-1とは無関係であるため、同期加算回数Nを充分に大きくとることで式1における右辺第2項及び第3項が抑制されるとともに右辺第1項のインパルス信号{P}に対する応答成分のみが強調され、実質的に式1の右辺第1項の上記応答成分のみを抽出することが可能となる。なお、応答信号{Q}の移動平均が求められたら、同期制御部15から出力されるリセット信号により、同期加算平均部16の各遅延器16b1〜16bN-1がリセットされ、同期加算平均部16が新たに移動平均の算出可能な初期状態に復帰する。
【0032】
そして、同期加算平均部16から出力される応答信号{Q}の移動平均が包絡線検波器11に入力され、同期加算平均処理により得られたインパルス信号{P}に対する閉ループ系の応答信号の包絡線成分が抽出される。さらに、閉ループ利得余裕推定部12では、包絡線検波器11で抽出された包絡線成分の時間軸に対する減衰特性から利得余裕値を推定し、推定された利得余裕値に基づいて所要の挿入損失量を算出する。なお、インパルス信号{P}の時間間隔T1,T2,…,TN-1は、利得余裕値の推定処理に必要な応答時間τに対して充分に大きくする必要がある。また、利得余裕値の推定処理に要する加算器11の出力信号の観測時間T(=T0+T1+…+TN-1+τ)は、この時間T内における閉ループ系の特性の変動が無視できる程度に短くする必要がある。
【0033】
上述のように本実施形態では、基本構成の挿入損失量調整手段8に同期制御部15と同期加算平均部16とを付加して、インパルス信号{P}に対する応答信号{Q}の移動平均を求め、求めた移動平均を包絡線検波器11に出力するようにしているため、閉ループ中に周囲騒音や音声信号が存在する場合においても、応答信号{Q}に対する周囲騒音の影響を軽減し、利得余裕値を精度良く推定することができる。その結果、上記のような場合においても挿入損失量を適切な値に設定して、閉ループ系を安定化することができる。特に、本手法では、閉ループ中に存在する周囲騒音が広い周波数帯域を持ち、自己相関が少ない場合にその効果が大きい。
【0034】
(実施形態2)
ところで、実施形態1においては閉ループ系の利得余裕値を推定するためにサンプル信号(インパルス信号又はバースト信号)を系に与えているが、通話中にインパルス信号やバースト信号がスピーカ3から聞こえるために使用者に聴感上の不快感を与えてしまう虞がある。
【0035】
そこで本実施形態は、インパルス信号やバースト信号のように聴感上不快感を与える虞があるサンプル信号を使う代わりに、疑似白色信号を用いて利得余裕値を推定することによって、上述のような聴感上の不快感を与えるのを防止している。
【0036】
図4は本実施形態の挿入損失量調整手段8を示すブロック図であり、信号経路に周期が有限の疑似白色信号を挿入する疑似白色信号発生器24と、音声信号に疑似白色信号を加算する加算器10と、疑似白色信号と当該疑似白色信号に対する応答信号の相互相関値を求めるとともに求めた相互相関値に基づいて閉ループのインパルス応答を推定する相互相関演算部25と、相互相関演算部25により推定された閉ループのインパルス応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器11と、包絡線検波器11の出力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部12とを具備している。なお、実施形態1と共通する部分については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
ここで、疑似白色信号としては、例えばM系列信号を用いる。M系列信号とは、次式のf(x)がmod2の原始多項式であるとき、
f(x)=1+c1x+c22+…cpp
次式により生成されるmod2上の数列atで表される。
【0038】
t=c1t-1+c2t-2+…+cpt-p
また、この周期Tは2p−1である。信号経路へ送出する信号p(t)がM系列信号であり、その周期Tが充分に長ければ、M系列信号p(t)に対して次式が成り立つ。
【0039】
【式2】
Figure 0003714005
【0040】
ここで、ΨppはM系列信号p(t)の自己相関値を表すが、M系列信号の自己相関値が時間に依存しないため、次式のように表現することができる。
【0041】
Ψpp(t、t+τ)=Ψpp(τ)
相互相関演算部25においては、次式によりM系列信号p(t)と加算器10の出力信号(応答信号)q(t)との相互相関値を上記Aで規格化した値を求める。
【0042】
【式3】
Figure 0003714005
【0043】
ここで、加算器10の出力信号q(t)は次式で表される。
【0044】
【式4】
Figure 0003714005
【0045】
但し、hp(σ)、hy(σ)並びにhx(σ)は各々M系列信号p(t)の入力点から加算器10の出力点への閉ループ系のインパルス応答、受話信号Yの入力点から加算器10の出力点への閉ループ系のインパルス応答、送話信号Xの入力点から加算器10の出力点への閉ループ系のインパルス応答をそれぞれ表している。上記式4を式3に代入すると次式が得られる。
【0046】
【式5】
Figure 0003714005
【0047】
上記式5は次式のように変形できる。
【0048】
【式6】
Figure 0003714005
【0049】
但し、Ψpy及びΨpxはそれぞれM系列信号p(t)と受話信号Yとの相互相関値、M系列信号p(t)と送話信号Xとの相互相関値を表し、各々次式で与えられる。
【0050】
【式7】
Figure 0003714005
【0051】
【式8】
Figure 0003714005
【0052】
ここで、M系列信号p(t)と受話信号Y、並びにM系列信号p(t)と送話信号Xとは互いに因果関係がないため、それぞれの相互相関値Ψpy、Ψpxは時間tに依存して変化する。また、M系列信号p(t)の周期Tが充分に長いときには上記相互相関値Ψpy、Ψpxはゼロとなる。よって、この場合には上記式6の右辺第2項及び第3項がゼロとなり、次式のように変形できる。
【0053】
【式9】
Figure 0003714005
【0054】
従って、Ψpp(t、t+τ)=Ψpp(τ)で与えられるM系列信号(疑似白色信号)p(t)と応答信号q(t)との相互相関値を上記Aで規格化した値を算出することにより、M系列信号p(t)から応答信号q(t)への系のインパルス応答の遅延時間τにおける係数を求めることができる。但し、上記式9が成り立つのは、式7及び式8で与えられる相互相関値Ψpy,ΨpxがゼロとみなせるほどM系列信号p(t)の周期Tが充分に長い場合であり、それ以外の場合においては、上記式6の右辺第2項及び第3項は外乱成分となり、インパルス応答の推定精度を劣化させる要因となる。
【0055】
ところで、相互相関演算部25をデジタル回路により実現する場合には、上記Ψpp(t、t+τ)=Ψpp(τ)を上記Aで規格化した相互相関値は次式で表される
【0056】
【式10】
Figure 0003714005
【0057】
但し、Iは離散時間系におけるM系列信号p(t)の周期を表し、p(i)、q(i+j)は各々サンプル時刻i,i+jにおけるM系列信号p(t)及び応答信号q(t)のデータを表す。また、上記式7により得られる値はM系列信号p(t)から応答信号q(t)への系のインパルス応答の1係数hp(j)であり、閉ループ系の利得余裕を推定するために必要なインパルス応答観測時間をサンプル時間Jとすると、hp(0),h(1),h(2),…,h(J-1)の合計J個の係数を求める必要がある。よって、本実施形態においては、M系列信号(疑似白色信号)p(t)から応答信号q(t)への系のインパルス応答を推定するために、I×J回の積和演算を必要とする。
【0058】
上述のような演算処理により求められる疑似白色信号p(t)から応答信号q(t)への系のインパルス応答(応答信号Q)が包絡線検波器11に入力され、実施形態1で説明したように閉ループ利得余裕推定部12において包絡線検波器11で抽出された包絡線成分の時間軸に対する減衰特性から利得余裕値を推定し、推定された利得余裕値に基づいて所要の挿入損失量を算出する。
【0059】
上述のように本実施形態では、基本構成の挿入損失量調整手段8に対してインパルス信号発生器9の代わりに疑似白色信号発生器24を付加するとともに、疑似白色信号と当該疑似白色信号に対する応答信号の相互相関値を求めて相互相関値に基づいて閉ループのインパルス応答を推定する相互相関演算部25を付加して、推定したインパルス応答(応答信号)から包絡線検波器11並びに閉ループ利得余裕推定部12により利得余裕値を推定するため、使用者に聴感上の不快感を与えることなく利得余裕値を精度よく推定でき、挿入損失量を適切な値に設定して、閉ループ系を安定化することができる。
【0060】
(実施形態3)
図5は本発明の実施形態3における挿入損失量調整手段8を示すブロック図であり、実施形態2に対して実施形態1で説明した同期制御部15並びに同期加算平均部16を設けた点に特徴がある。
【0061】
本実施形態は、信号経路に送出する疑似白色信号の周期が充分に長くなく、上記式6の右辺第2項及び第3項がゼロとはみなせずに外乱要素となる場合に、同期加算平均処理によりこれらの影響を低減し、閉ループ系のインパルス応答の推定精度を向上させるものである。いま、M系列信号p(t)の周期をT1、同期加算回数をNとすると、同期加算平均部16の出力値は次式で表される。
【0062】
【式11】
Figure 0003714005
【0063】
上記式11に式6及び式9を代入して整理すると次式が得られる。
【0064】
【式12】
Figure 0003714005
【0065】
ここで、相互相関値Ψpy,Ψpxは時間tに関して不規則に変動するため、上記式12における右辺第2項及び第3項が同期加算回数Nの値を充分に大きくすることにより抑圧することができる。
【0066】
本実施形態によれば、信号経路に送出するM系列信号p(t)の周期Tを実施形態2に比較して短くすることができるため、挿入損失量調整手段8をデジタル回路で実現する場合にM系列信号p(t)の発生及び上記式10の演算に必要となる記憶装置の容量や積和回数を低減することができるという利点がある。なお、同期加算平均部16より出力される閉ループ系のインパルス応答(応答信号)は包絡線検波器11に入力され、実施形態1と同様の演算処理によって所要の挿入損失量が算出される
【0067】
(実施形態
図6は本発明の実施形態における挿入損失量調整手段8を示すブロック図であり、実施形態1に対して騒音レベル推定部20とインパルス信号送出レベル調整部21とを設けた点に特徴がある。
【0068】
騒音レベル推定部20は、インパルス信号{P}の閉ループ系への送出以前に閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推定するものであり、インパルス信号送出レベル調整部21は、推定された周囲騒音のレベルに応じてインパルス信号発生器9から出力されるインパルス信号P0…のレベルを調整するものである。すなわち、本発明に係る利得余裕値の推定処理においては、閉ループ中の周囲騒音レベルに対するインパルス信号送出レベルの比(この比をここではS/N比と定義する)が利得余裕値の推定精度に影響を及ぼすことから、閉ループにインパルス信号P0…が送出される以前の周囲騒音レベルを騒音レベル推定部20で推定し、推定された周囲騒音レベルに対して上記S/N比が所定値以上となるようにインパルス信号送出レベル調整部21にてインパルス信号P0…の送出レベルを調整することで、利得余裕値の推定精度を向上させることができる。
【0069】
上述のように本実施形態では、閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推定する騒音レベル推定部20と、騒音レベル推定部20による推定結果に基づいてサンプル信号(インパルス信号)の送出レベルを調整するインパルス信号送出レベル調整部21とを挿入損失量調整手段8に設けたので、閉ループ系に送出するインパルス信号のレベルを周囲騒音レベルに対して充分な大きさに設定することにより、観測点において高いS/N比でインパルス信号{P}に対する応答信号{Q}を得ることができ、利得余裕値の推定精度を向上させることができる。なお、実施形態3の構成に対して騒音レベル推定部20並びに疑似白色信号の送出レベルを調整する手段を設けても同様の作用効果を奏することができる
【0070】
【発明の効果】
請求項1の発明は、集音した音を送話側の音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホンからの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利得余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整手段が、信号経路にサンプル信号を送出するサンプル信号発生器と、音声信号にサンプル信号を加算する加算器と、サンプル信号に対する応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部と、所定の時間間隔でサンプル信号発生器から信号経路へ複数回にわたってサンプル信号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制御部と、包絡線検波器の前段に設けられ同期制御部からのタイミング情報を受けてサンプル信号に対する応答信号を同期加算平均処理する同期加算平均部とを具備して成るので、スピーカからマイクヘの音響結合や送話側及び受話側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う必要がある場合に用いられる2−4線変換手段におけるインピーダンスの不整合による反射が原因となり形成される閉ループ系に対して、サンプル信号を入力したときに観測される応答信号の包絡線成分の減衰特性により利得余裕値を推定し、所望の利得余裕値に対する過不足分を算出することで挿入損失量を調整するため、ハウリングが発生するまでの閉ループ系の利得余裕を所望の値に維持することができ、ハウリングを生じることなく安定した通話品質を維持することができるとともに、必要以上に挿入損失量を大きくすることがないため、双方向同時通話性能の実現可能性が高まるという効果がある。しかも、同期制御部においてサンプル信号の送出タイミングを制御し、同期加算平均部でサンプル信号に同期した移動平均処理を行うとともに、同期加算平均部の出力信号から包絡線検波器にて包絡線成分を抽出するため、閉ループ中に周囲騒音や音声信号が存在する場合であっても、これらの影響を軽減して十分な精度で利得余裕値を推定し、挿入損失量が適切な値に設定可能となって、常に安定した通話を実現することができるという効果がある。特に、本発明は、閉ループ中に存在する周囲騒音が広い周波数帯域を持ち、自己相関が少ない場合に効果が大きい。
【0071】
請求項2の発明は、集音した音を送話側の音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホンからの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利得余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整手段が、信号経路に周期が有限の疑似白色信号を挿入する疑似白色信号発生器と、音声信号に疑似白色信号を加算する加算器と、疑似白色信号と当該疑似白色信号に対する応答信号の相互相関値を求めるとともに求めた相互相関値に基づいて閉ループのインパルス応答を推定する相互相関演算部と、相互相関演算部により推定された閉ループのインパルス応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部とを具備して成るので、スピーカからマイクヘの音響結合や送話側及び受話側と外部の通話回線との間で2−4線変換を行う必要がある場合に用いられる2−4線変換手段におけるインピーダンスの不整合による反射が原因となり形成される閉ループ系に対して、周期が有限の疑似白色信号を入力したときに観測される応答信号と当該疑似白色信号との相互相関値を求めるとともに求めた相互相関値から推定される閉ループ系のインパルス応答信号の包絡線成分の減衰特性により利得余裕値を推定し、所望の利得余裕値に対する過不足分を算出することで挿入損失量を調整するため、ハウリングが発生するまでの閉ループ系の利得余裕を所望の値に維持することができ、ハウリングを生じることなく安定した通話品質を維持することができるとともに、必要以上に挿入損失量を大きくすることがないため、双方向同時通話性能の実現可能性が高まるという効果がある。しかも、利得余裕の推定に疑似白色信号を用いるので、使用者に聴感上の不快感を与えるのを防止することができるという効果がある。
【0072】
請求項3の発明は、所定の時間間隔で疑似白色信号発生器から信号経路へ複数回にわたって疑似白色信号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制御部と、包絡線検波器の前段に設けられ同期制御部からのタイミング情報を受けて相互相関演算部により推定された閉ループのインパルス応答信号を同期加算平均処理する同期加算平均部とを挿入損失量調整手段が具備して成るので、同期制御部において疑似白色信号の送出タイミングを制御し、同期加算平均部で疑似白色信号に同期した移動平均処理を行うとともに、同期加算平均部の出力信号から包絡線検波器にて包絡線成分を抽出するため、閉ループ中に存在する定常的な周囲騒音のレベルが大きい場合においても周囲騒音による影響を軽減して十分な精度で利得余裕値を推定し、挿入損失量が適切な値に設定可能となって、常に安定した通話を実現することができるという効果がある。特に、本発明は、閉ループ中に存在する周囲騒音が広い周波数帯域を持ち、自己相関が少ない場合に効果が大きい
【0073】
請求項の発明は、閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推定する騒音レベル推定部と、騒音レベル推定部による推定結果に基づいてサンプル信号又は疑似白色信号の送出レベルを調整する送出レベル調整部とを挿入損失量調整手段が具備して成るので、閉ループ系に送出するサンプル信号又は疑似白色信号のレベルを周囲騒音レベルに対して充分な大きさに設定することにより、観測点において高いS/N比でサンプル信号又は疑似白色信号に対する応答信号を得ることができ、利得余裕値の推定精度を向上させることができるという効果がある
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態1における挿入損失量調整手段を示すブロック図である。
【図2】 同上における同期制御部並びに同期加算平均部を示すブロック図である。
【図3】 同上の動作を説明するための説明図である。
【図4】 実施形態2における挿入損失量調整手段を示すブロック図である。
【図5】 実施形態3における挿入損失量調整手段を示すブロック図である。
【図6】 実施形態4における挿入損失量調整手段を示すブロック図である。
【図7】 (a)は本発明の基本構成を示すブロック図、(b)は同じく挿入損失量調整手段の基本構成を示すブロック図である。
【図8】 同上における閉ループを説明するための説明図である。
【符号の説明】
8 挿入損失量調整手段
9 インパルス信号発生器
10 加算器
11 包絡線検波器
12 閉ループ利得余裕推定部
15 同期制御部
16 同期加算平均部

Claims (4)

  1. 集音した音を送話側の音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホンからの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利得余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整手段が、信号経路にサンプル信号を送出するサンプル信号発生器と、音声信号にサンプル信号を加算する加算器と、サンプル信号に対する応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部と、所定の時間間隔でサンプル信号発生器から信号経路へ複数回にわたってサンプル信号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制御部と、包絡線検波器の前段に設けられ同期制御部からのタイミング情報を受けてサンプル信号に対する応答信号を同期加算平均処理する同期加算平均部とを具備して成ることを特徴とする拡声通話機。
  2. 集音した音を送話側の音声信号として出力するマイクロホンと、マイクロホンからの音声信号を増幅する第1の増幅手段と、受話側の音声信号に応じて鳴動するスピーカと、スピーカへ出力される音声信号を増幅する第2の増幅手段と、送話側及び受話側の少なくとも一方の信号経路に所定量の損失を挿入する損失挿入手段と、損失挿入手段から挿入される損失量を可変制御する制御手段と、信号経路に送出したサンプル信号に対する応答信号に応じて、マイクロホン及びスピーカを通じて形成される閉ループにおける利得余裕を推定するとともに制御手段を介して推定結果に基づく損失量の調整を行う挿入損失量調整手段とを備え、挿入損失量調整手段が、信号経路に周期が有限の疑似白色信号を挿入する疑似白色信号発生器と、音声信号に疑似白色信号を加算する加算器と、疑似白色信号と当該疑似白色信号に対する応答信号の相互相関値を求めるとともに求めた相互相関値に基づいて閉ループのインパルス応答を推定する相互相関演算部と、相互相関演算部により推定された閉ループのインパルス応答信号の包絡線を検波する包絡線検波器と、包絡線検波器の出力信号に基づいて閉ループにおける利得余裕を推定する閉ループ利得余裕推定部とを具備して成ることを特徴とする拡声通話機。
  3. 所定の時間間隔で疑似白色信号発生器から信号経路へ複数回にわたって疑似白色信号を送出させるためのタイミング制御を行う同期制御部と、包絡線検波器の前段に設けられ同期制御部からのタイミング情報を受けて相互相関演算部により推定された閉ループのインパルス応答信号を同期加算平均処理する同期加算平均部とを挿入損失量調整手段が具備して成ることを特徴とする請求項2記載の拡声通話機。
  4. 閉ループ中に存在する周囲騒音のレベルを推定する騒音レベル推定部と、騒音レベル推定部による推定結果に基づいてサンプル信号又は疑似白色信号の送出レベルを調整する送出レベル調整部とを挿入損失量調整手段が具備して成ることを特徴とする請求項1又は3記載の拡声通話機
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