JP3736247B2 - 密閉形蓄電池およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は密閉形蓄電池、特にバックアップ用途等に用いられる大形の密閉形鉛蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
バックアップ電源用の蓄電池として従来の液式の鉛蓄電池に代わって密閉形鉛蓄電池が広く使用されてきている。密閉形鉛蓄電池は補液等の保守点検作業を低減することができるので運用コスト面で有利である。このような中で、近年縦長形状の密閉形鉛蓄電池が普及しつつある。この縦長形状の密閉鉛蓄電池は横置きの状態で多段積みにして使用される。このような設置方法によれば設置高さを高くしても電池の端子は組電池の側面に位置するので端子間の配線作業や日常の保守点検作業の作業性を損なうことがない。また、設置高さを高くできるので設置に必要な面積は従来の液式鉛蓄電池に比較して少なくできるという利点がある。
【0003】
一方、密閉形鉛蓄電池の電槽内圧は製造工程および市場で使用される際に加圧、減圧の変化を繰り返す。この圧力の変化によって電槽の側面、底面は、加圧の時は凸に変形し、減圧の時は凹に変形する。このような変形は小形の密閉形鉛蓄電池ではそれほど問題ではなかった。ところが大容量の密閉形鉛蓄電池になると、電槽内壁の面積増加に伴って内圧上昇によって受ける力は増大する。また、特に縦長形状の電池においては大面積を有する側面にかかる大きな応力は比較的小面積である底面との狭い境界部に集中することになる。このような応力は常時同一方向に作用するのではなく、前記したような電槽内圧の変化と大気圧との関係により応力の方向は変化する。すなわち、側面が底面との境界部をヒンジとして側面と底面とのなす角度が変化するように変形する。このような変形は特に底辺の一方の外寸をa、底辺の他の一方の外寸をb、そしてこの辺に接する側面の高さ、すなわち電槽の高さ方向の外寸hとした場合にh≧1.4a、h≧1.4bの場合に特に顕著である。このような変形は電槽側面と底面との境界部にクラックを発生させることがある。このようなクラックにより電槽の気密が損なわれて蓄電池容量が低下したり、電解液が一部電槽外へ漏出するという課題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記したような密閉形蓄電池において、電槽内圧の変化によって電槽側面と底面との間の境界部に生じるクラックを抑制して信頼性に優れた密閉形蓄電池を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1記載に係る発明はエチレン−プロピレンブロック共重合体を主体とする合成樹脂からなる電槽を備えた密閉形蓄電池において、前記電槽の側面と底面との境界部に小空孔のミクロボイドを電槽の他の部分に比較して多く存在させた。
【0006】
また、本発明の請求項2記載に係る発明は請求項1の構成を有する密閉形蓄電池において、電槽の高さ方向の外寸をh、底辺の一方の外寸をa、底辺の他の一方の外寸をbとした時にh≧1.4aでかつh≧1.4bとしたものである。
【0007】
また、本発明の請求項3記載に係る発明は請求項2の構成を有する密閉形蓄電池において、電槽は一つのセル室から構成することとした。
【0008】
また、本発明の請求項4記載に係る発明は請求項2または請求項3の構成を有する密閉形蓄電池において、電槽の高さ方向の外寸hは少なくとも400mm以上とした。
【0009】
また、本発明の請求項5記載に係る発明はエチレン−プロピレンブロック共重合体を主体とする合成樹脂からなる電槽を備えた密閉形蓄電池の製造方法であって、電槽底面もしくは電槽側面に変形を与えて前記底面と前記側面との境界部にミクロボイドの集中的な発生による白色部を形成する蓄電池の製造方法とした。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について記載する。
【0011】
まず、電槽材料としてはエチレン−プロピレンブロック共重合体を用いる。このエチレン−プロピレンブロック共重合体は樹脂成形機により縦長電槽に成形される。この後、電槽側面と底面との境界部に、ある一定以上の衝撃を加える。エチレン−プロピレンブロック共重合体に、ある一定以上の衝撃を加えると樹脂材料中に分散したエチレンプロピレンラバー中もしくはエチレンプロピレンラバー中に残留するポリエチレンとの境界部にミクロボイドと云われる小空孔が発生する。このミクロボイドは非常に径が小さく10-3から10-7mmレベルのものである。このようなミクロボイドが発生した部分はヒンジ効果が発生し、繰り返しの変形によっても破断を発生させる確率を極めて低下させることが可能となる。実際にミクロボイドを発生させる手段としては、電槽を成形する際に成形機から電槽を取り出す過程、もしくは取り出した直後で電槽が雰囲気温度まで冷却される以前に、電槽の開口部から強制的に適度な圧力の変化を加えて適度に電槽側面、底面を変形させ、電槽側面、底面の周囲コーナー部にミクロボイドを形成させる。
【0012】
このようなミクロボイドが発生した場合にはミクロボイドによって光散乱が起こるので、ミクロボイドが集中的に発生した部位は電槽の他の部位に比較して白く観察され、ミクロボイドの発生の有無を容易に判別することができる。
【0013】
ここで電槽の形状としては電槽の高さ方向の外寸をh、底辺の一方の外寸をa、底辺の他の一方の外寸をbとした時に、h≧1.4aでかつh≧1.4bの縦長形状を有する電槽に適用することが特に望ましい。縦長形状を有しない電槽の場合は比較的長い電槽側面と底面との境界部が電槽側面の変形応力を受けるので比較的クラックを発生させることが少なく、結果として本発明の課題自体が縦長形状の電槽の場合ほどには顕著ではない。また、同様の理由により電槽の高さ方向の外寸hが400mm以下の場合よりも、hが少なくとも400mm以上となる場合に適用することが望ましい。
【0014】
さらには、電槽が単一セルで構成される場合にはセルの側面の変形を抑制する隣接セルが存在しないので側面の変形は比較的自由に発生する。したがって本発明の課題がより顕著に発生することから、複数セルの場合に比較して単一セルで構成される電槽に本発明の構成を適用することが特に好ましい。
【0015】
【実施例】
(実施例1)
以下に本発明の実施例とその効果について説明する。
【0016】
まず、前記した発明の実施の形態にしたがって密閉形鉛蓄電池用の電槽を作製した。この電槽1は図1に示したように単セルで構成され、縦長形状を有しており底面2の外寸はa=318mm、b=170mmである。電槽蓋との接合部までの電槽の高さはh=480mmであり、(h/a)=1.51でかつ(h/b)=2.82である。なお、電槽の肉厚は4mmである。ミクロボイドの形成方法としては電槽成形型から電槽を抜き取る際に電槽内側と成形型との間にエアーを導入して加圧し、電槽の底面2を電槽の外側に加圧変形させた。この変形量は20mmであった。この時、電槽の側面3と底面2との間の境界部4は電槽の他の部位に比較して白色化しミクロボイドが多く形成されたことを示していた。
【0017】
次に本発明による電槽1と同一樹脂材料で成型され、同一形状・寸法を有する比較例の電槽を作製した。この比較例の電槽は成型直後に電槽の底面に加圧しなかったものであり、電槽の側面と底面との境界部には白色化は発生していなかった。これは電槽の側面と底面との境界部にミクロボイドが集中的に発生していないことを示している。
【0018】
この本発明による電槽と比較例による電槽を用いてそれぞれ2V1000Ahの密閉形鉛蓄電池を作製し連続充電試験を行った。すなわち、試験環境温度を60℃として2.3Vの一定電圧で2週間連続充電後、72時間放置する。この連続充電と放置を繰り返し行い電槽の状態を確認した。この試験においては充電時には電槽内は大気圧以上に加圧され、放置中は負極板による酸素ガス吸収反応により大気圧以下に減圧される。このようにして電槽内圧を変化させた場合での電槽側面と電槽底面との境界面でクラック発生の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1に示したように比較例の電池は14ヵ月目にして電槽の側面と底面との境界部表面にクラックが発生し、16ヵ月目ではクラックがさらに成長して電槽内の気密が損なわれていたので試験を停止した。一方、本発明の電池では24ヵ月時点でも比較例の電池で発生したようなクラックは認められなかった。
【0021】
(実施例2)
次に比較例の電池の電槽および本発明例の電池の電槽について電槽の高さをそれぞれ445mm(h/a=1.4)の場合と413mm(h/a=1.30)の場合とに変化させて実施例1と同様な連続充電試験を行った。この試験については最大24ヵ月とし、電槽にクラックが発生するまでの期間を確認した。その結果、h/aの値が1.4の場合には比較例の電槽では18ヵ月目に微少なクラックの発生が見られた。一方、h/a=1.30では24ヵ月目で微少なクラックの発生が見られた。一方、本発明例の電槽を用いた場合には24ヵ月時点ではクラックは発生しなかった。よってこの比率(h/a)が1.4以上の電槽を有するものについて本発明の構成を適用することが特に好ましいことが確認できた。
【0022】
(実施例3)
次に本発明の電槽および比較例の電槽について形状を変更したものを作製した。すなわち電槽の底面の寸法は一辺を230mmの正方形状とし、電槽の高さhを450mm、400mm、350mm、310mmと変化させて実施例1と実施例2と同様の実験を行った。その結果、電槽の高さhが400mm、350mmの比較例の電槽を用いたものについては、h/aの値はそれぞれ1.74、1.52と前記した1.4以上であるにもかかわらずクラックが発生するまでの期間が20ヵ月と大幅に伸びていた。さらにh/a=1.35である310mmの比較例の電槽を用いたものについては24ヵ月時点でクラックは全く発生していなかった。なお、本発明例の電池については24ヵ月時点でもクラックは発生していなかった。この結果から比率(h/b)が1.4以上の領域であっても電槽の高さhが400mm以下となるとクラックの発生までの期間が長くなることが確認できた。よって本発明の構成はクラック発生までの期間が比較的短くなる電槽の高さ400mm以上の電池に適用することにより、本発明の効果がより顕著となることが確認できた。
【0023】
これら実施例1〜3の結果から電槽の高さhと底辺の一方の長さaの比率h/aが1.4以上であるような縦長形状を有し、かつhが400mmを超える大形電槽を使用する場合に本発明の課題が顕著に発生することから本発明はこのような場合に適用することが特に望ましいことが判る。
【0024】
(実施例4)
実施例1での本発明例の電槽と比較例での電槽について電槽肉厚をそれぞれ3mm、4mmおよび7mmのものを作製し、実施例1と同様の連続充電試験を行った。その結果、電槽の肉厚をこの領域(3〜7mm)で変化させてもクラックが発生し始める時期に変化は見られなかった。ただし、気密が損なわれるに至る期間は肉厚を7mmにすることにより比較例の電槽で20ヵ月まで長くなることが確認できた。
【0025】
【発明の効果】
前記に説明したように本発明の構成によれば、縦長形状を有する密閉形蓄電池で発生する側面と底面との間の境界部でのクラックの発生を抑制して信頼性に優れた電池を得ることができ、工業上、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による密閉形蓄電池の電槽を示す図
【符号の説明】
1 電槽
2 底面
3 境界部
a 底辺の一方の外寸
b 底辺の他の一方の外寸
c 電槽の高さ方向の外寸
Claims (5)
- エチレン−プロピレンブロック共重合体を主体とする合成樹脂からなる電槽を備えた密閉形蓄電池において、前記電槽の側面と底面との境界部に小空孔のミクロボイドを電槽の他の部分に比較して多く存在させたことを特徴とする密閉形蓄電池。
- 電槽の高さ方向の外寸をh、底辺の一方の外寸をa、底辺の他の一方の外寸をbとした時に、h≧1.4aでかつh≧1.4bとしたことを特徴とする請求項1に記載の密閉形蓄電池。
- 電槽は一つのセル室から構成されることを特徴とする請求項2に記載の密閉形蓄電池。
- 前記hは少なくとも400mm以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の密閉形蓄電池。
- エチレン−プロピレンブロック共重合体を主体とする合成樹脂からなる電槽を備えた密閉形蓄電池の製造方法であって、電槽底面もしくは電槽側面に変形を与えて前記底面と前記側面との境界部にミクロボイドの集中的な発生による白色部を形成したことを特徴とする密閉形蓄電池の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP37386399A JP3736247B2 (ja) | 1999-12-28 | 1999-12-28 | 密閉形蓄電池およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP37386399A JP3736247B2 (ja) | 1999-12-28 | 1999-12-28 | 密閉形蓄電池およびその製造方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2001185093A JP2001185093A (ja) | 2001-07-06 |
| JP3736247B2 true JP3736247B2 (ja) | 2006-01-18 |
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Family Applications (1)
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| JP37386399A Expired - Fee Related JP3736247B2 (ja) | 1999-12-28 | 1999-12-28 | 密閉形蓄電池およびその製造方法 |
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-
1999
- 1999-12-28 JP JP37386399A patent/JP3736247B2/ja not_active Expired - Fee Related
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