JP3736320B2 - 靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材ならびにその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建設、土木および鉱山等の掘削等の分野で用いられる産業機械、運搬機器等に用いられる靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材ならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建設、土木および鉱山等の掘削等の分野で用いられる産業機械、運搬機器(例えば、パワーショベル、ブルドーザ、大型ダンプトラック等)における土砂摩耗部は、その摩耗量によって寿命が支配されるため、優れた耐摩耗性を有する鋼材であることが要求されている。そのため、耐摩耗性を向上させるために、鋼材の組織をマルテンサイト組織とすることにより鋼材の硬度を高めること等がなされている。
【0003】
ところで、マルテンサイト組織とされた鋼材の硬度はC含有量により一義的に決定される。したがって、C含有量を高めることにより鋼材の硬度を向上できるが、その反面、鋼材の靭性が著しく劣化し、さらに鋼材中の水素に起因する遅れ破壊が生じ易くなるという問題があった。
【0004】
そこで、これまでは焼入れ性向上による鋼材硬度の向上、すなわち耐摩耗性を向上させるとともに、靭性および耐遅れ破壊性を確保できるように鋼成分の選定を行なうことが前提とされてきた。
【0005】
また、靭性および耐遅れ破壊性をともに向上させることを意図して、鋼を熱間圧延して空冷した後に、再加熱焼入れし、さらに必要に応じて焼戻し処理を施すことにより耐摩耗鋼材の製造はなされてきた。
【0006】
具体的には、特開平10−102185号公報には、オーステナイト再結晶温度域で圧延して旧オーステナイト粒を微細化し、再加熱操作によりCr、Mo、Vの各元素を基地中に固溶させた後に焼入れおよび焼戻しを行なう製造方法が開示されている。この製造方法により得られた鋼材は、その使用中にCr、Mo、Vの複合析出物が生成され、この生成された複合析出物により耐摩耗性が向上される。したがって、耐摩耗性の向上には寄与するが、靭性には有害なC、Mn等の含有量を低減できる。
【0007】
また、特開平11−71631号公報には、C含有量を低減し、このC量低減に伴う焼入れ性の低下をSi含有量の増加により補償し、さらにNbのピンニング効果を利用して再加熱操作時にオーステナイト粒が粗大化するのを抑制し、これにより靭性を向上させる製造方法が開示されている。
【0008】
さらに、特開昭60−59019号公報には、Mn含有量を低減することにより耐遅れ破壊性を向上させ、このMn含有量の低減に伴う焼入れ性の低下をCr、Moの添加により補償する製造方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、これら従来の製造方法は、いずれも再加熱焼入れ工程を含むため、製造工程が複雑化して製品コストの上昇が避けられないという欠点があった。さらに、Cr、Mo、V、Nb等の添加元素の増加は製造コストをより一層上昇させる。
【0010】
一方、製造コストの削減を意図して、上述の熱間圧延後の空冷操作および再加熱焼入れ操作を省略し、その代わりに直接焼入れ操作を行なう製造方法を確立することが望まれている。
【0011】
具体的には、特開平8−41535号公報には、鋼成分としてSiとNbとを組み合わせて添加し、直接焼入れした後に焼戻しする製造方法が開示されている。この製造方法によれば、Si,Nbの両元素が焼戻し脆化および焼戻し軟化をともに抑制すること、Nbが旧オーステナイト粒の微細化に作用して耐摩耗性と靭性とが両立すること、さらにMoを添加することにより焼入れ性および靭性をより向上させることができる。
【0012】
また、特開平1−255622号公報には、直接焼入れした後に、鋼板内の引張残留応力を低減して耐遅れ破壊性を向上させることを意図して高温焼戻しを行なう一方、この高温焼戻しによって生じる硬度低下をNb添加により補償する製造方法が開示されている。
【0013】
さらに、特開昭63−317623号公報には、遅れ破壊感受性を高めるMnの含有量を低減し、Mn含有量の低減に伴う鋼材の硬度低下をNb添加により補償し、かつTiを添加して直接焼入れ後に低温焼戻しを行ない、Ti窒化物、Ti炭窒化物を析出させることにより、これら析出物とマトリックスとの界面が水素のトラップサイトとして作用して耐遅れ破壊性が向上されることが開示されている。
【0014】
上述の特開平8−41535号公報、特開平1−255622号公報および特開昭63−317623号公報に記載された技術は、いずれも鋼組成の選定を行なうとともに、焼戻し処理によりマトリックスを軟化させて靭性および耐遅れ破壊性を向上させ、かつこれら靭性および耐遅れ破壊性の向上に伴う硬度低下を特定の成分元素を含有させることによって補償し、耐摩耗性の確保を意図するものである。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術に共通した問題点は、特定の成分元素の添加が必要であるのでコストの上昇を招き、これにより省プロセス化によるコスト低減を相殺してしまう可能性がある。また、いずれの従来技術も焼戻し工程が必須であるため、製造コストの上昇や生産効率の低下を招くことが懸念される。
【0016】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであって、その目的とするところは、特殊な鋼選定を行なうことなく靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、このような耐摩耗鋼材を製造するにあたり、製造コストを節減できる製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、靭性および耐摩耗性に優れた耐摩耗鋼材について鋭意研究を重ねた結果、オーステナイト未再結晶温度域で強圧下を施すことによりオーステナイト粒を形態制御した後に、直ちに直接焼入れし、かつこの焼入れを特定の温度域で途中停止することにより表層部をマルテンサイト組織とし、内質部をマルテンサイトと下部ベイナイトとの混合組織または下部ベイナイト単相組織とすることによって、優れた靭性および耐遅れ破壊性を有する耐摩耗鋼材を開発するに至った。
本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0019】
本発明に係る靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材は、質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、鋼材表面から深さ1mmの部位にあたる表層部がマルテンサイト組織であり、内質部の80%以上がマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織であり、前記内質部の残部が上部ベイナイト組織およびフェライト組織のうち少なくとも一方を含み、板厚中央部における旧オーステナイト粒径(dZ)に対する圧延方向の旧オーステナイト粒径(dL)の比(dL/dZ)で表される旧オーステナイト粒展伸度が2以上であることを特徴としている。
【0020】
質量%で、C:0.15〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下を含み、さらにCu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜1.0%、Mo:0.1〜1.0%およびV:0.01〜0.2%からなる群から選択される1種または2種以上を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、鋼材表面から深さ1mmの部位にあたる表層部がマルテンサイト組織であり、内質部の80%以上がマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織であり、前記内質部の残部が上部ベイナイト組織およびフェライト組織のうち少なくとも一方を含み、板厚中央部における旧オーステナイト粒径(dZ)に対する圧延方向の旧オーステナイト粒径(dL)の比(dL/dZ)で表される旧オーステナイト粒展伸度が2以上であることを特徴としている。
【0021】
また、質量%で、Nb:0.005〜0.1%をさらに含有させるようにしてもよい。
【0022】
本発明に係る靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材の製造方法は、質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下を含み、残部が実質的に鉄および不可避的不純物からなる鋼材を調製する調製工程と、調製された鋼材を加熱した後に、900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上に熱間圧延する圧延工程と、圧延された鋼材を直ちにAr3点以上の温度域から焼入れを開始し、Ms点−250℃以上Ms点+100℃以下の温度域で焼入れを停止する焼入れ工程と、を備えたことを特徴としている。
【0023】
質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材を調製する調製工程と、前記鋼材を加熱した後に、900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上に熱間圧延する圧延工程と、圧延された鋼材を直ちにAr3点以上の温度域から焼入れを開始し、Ms点−250℃以上Ms点+100℃以下の温度域で焼入れを停止する焼入れ工程と、を備えたことを特徴としている。
【0024】
また、調製工程の鋼材は、質量%で、Nb:0.005〜0.1%をさらに含有するようにしてもよい。
【0025】
以下、本発明に係る靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材について説明する。
【0026】
まず、上記の各成分の働きおよび成分範囲の限定理由を述べる。なお、以下の各成分範囲における「%」は「質量%」を意味する。
【0027】
(1)C:0.05〜0.40%
Cは鋼材の硬度を高めるとともに、後述するマルテンサイト組織のラス内に微細炭化物を生じさせ、靭性と耐遅れ破壊性とを向上させる働きを有する。C含有量は0.05%以上必要であるが、0.4%を超えると、溶接性が劣化し、焼き割れが生じやすくなるとともに、耐摩耗性を確保しつつ靭性および耐遅れ破壊性を向上させ難くなる。C含有量は、好ましくは0.05〜0.3%である。
【0028】
(2)Si:0.1〜0.8%
Siは製鋼時の脱酸剤としての働きを有する。脱酸剤として有効な働きをなすために、その添加量は0.1%以上必要であるが、0.8%を超える添加量にすると、溶接部靭性を損なうおそれがある。Si含有量は、好ましくは0.25〜0.55%である。
【0029】
(3)Mn:0.5〜2.0%
Mnは低コストで焼入れ性を高める働きおよび靭性を向上させる働きを有し、その含有量は0.5%以上必要であるが、2.0%を超えると溶接性を損なうおそれがあり、また遅れ破壊が生じやすくなる。Mn含有量は、好ましくは1.0〜1.6%である。
【0030】
(4)Cr:0.05〜2.0%
Crは低コストで焼入れ性を向上させる働きを有する。0.05%未満のCr含有量ではその効果が小さく、2.0%を超えると溶接性および靭性を損なうおそれがある。Cr含有量は、好ましくは0.05〜1.5%である。
【0031】
(5)Ti:0.005〜0.5%
Tiは鋼中のNと化合し、このNを固定して後述するBによる焼入れ性を確保する働きを有するとともに、TiCとして分散析出して耐摩耗性の向上に寄与する。0.005%未満のTi含有量ではこのような効果を得がたく、一方、0.5%を超えるとコスト上昇を招く傾向にある。
【0032】
(6)B:0.0005〜0.005%
Bはその微量添加によって焼入れ性を高める働きを有する。B含有量は、0.0005%未満ではその効果を発揮し難く、一方、0.005%を超えると、溶接性に有害となるおそれがあるとともに、焼入れ性の低下を招くおそれがある。
【0033】
(7)Al:0.005〜0.10%
Alは製鋼時の脱酸剤としての働きを有し、その含有量は0.005%以上必要であるが、0.10%を超えると靭性の低下を招くおそれがある。Al含有量は、好ましくは0.015〜0.035%である。
【0034】
(8)N:0.005%以下
Nは、上記のBと化合しやすく焼入れ性を阻害する。0.005%を超えるN含有量にすると、上述の特定した含有量範囲のTiによるNの固定が不十分になるおそれがある。したがって、N含有量の上限を0.005%とした。
【0035】
本発明に係る鋼材の基本成分は以上であるが、さらにその特性を向上させるために、Cu、Ni、Mo、VおよびNbから選ばれる1種または2種以上を含有させることができる。
【0036】
(9)Cu:0.1〜1.0%
Cuは焼入れ性をより向上させる働きを有する。Cu含有量が0.1%未満ではこの効果が小さく、1.0%を超えると熱間脆性を引き起こすおそれがある。Cu含有量は、好ましくは0.1〜0.3%である。
【0037】
(10)Ni:0.1〜1.0%
Niは靭性と焼入れ性とをより向上させる働きを有する。Ni含有量は0.1%以上必要であるが未満ではそれらの効果が小さく、1.0%を超えるとコスト上昇を招く傾向にある。Ni含有量は、好ましくは0.1〜0.3%である。
【0038】
(11)Mo:0.1〜1.0%
Moは焼入れ性をより向上させる働きを有し、その含有量は0.1%以上必要であるが、1.0%を超えると溶接性および靭性を損なうおそれがある。Mo含有量は、好ましくは、0.1〜0.5%である。
【0039】
(12)V:0.01〜0.2%
Vは析出硬化により鋼材硬度をより上昇させる働きを有し、その含有量は0.01%以上必要であるが、0.2%を超えると溶接性を損なうおそれがある。V含有量は、好ましくは0.01〜0.1%である。
【0040】
(13)Nb:0.005〜0.1%
Nbは上記の(1)〜(12)の各成分とは異なる作用を有し、圧延時の再結晶化を抑制して圧延によるオーステナイト粒の展伸を容易にし、靭性を向上させる働きを有する。Nb含有量は0.005%未満ではこのような働きを有効になすことができないおそれがあり、一方、0.1%を超えると溶接性を損なうおそれがある。Nb含有量は、好ましくは0.005〜0.03%である。
【0041】
本発明に係る鋼材は、上記の特定範囲の各成分を含有するものであって、表層部がマルテンサイト組織であり、内質部がマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織である。ここで表層部とは、鋼材表面から深さ1mmの部位のことをいう。
【0042】
なお、本発明においては、表層部がマルテンサイト組織であり、内質部で80%以上がマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織であればよく、内質部には一部上部ベイナイト組織やフェライト組織が混合されることを許容する。また、このマルテンサイト組織は、後述する直接焼入れ−途中停止において、途中停止後の復熱による炭化物が析出した焼戻しマルテンサイト組織であってもよい。
【0043】
さらに、本発明の鋼材は、肉厚方向の旧オーステナイト粒径(dz)に対する圧延方向の旧オーステナイト粒径(dL)の比で表される旧オーステナイト粒展伸度(dL/dz)が2以上である。本発明において旧オーステナイト粒展伸度を2以上とするのは、これにより靭性および耐遅れ破壊性の向上効果が発揮されるからである。これは、鋼板の旧オーステナイト粒展伸度と、吸収エネルギー(J)、遅れ破壊発生応力拡大係数(N/mm3/2)およびブリネル硬さ(HB10/3000)との関係を示す図1の特性線図から理解できる。
【0044】
上記の旧オーステナイト粒展伸度は、例えば、日本工業規格JIS G 0551に規定された焼入焼戻し法による熱処理粒度試験法に基づき、鋼板の肉厚方向に沿う断面および鋼板の圧延方向に沿う断面にそれぞれ現出させた旧オーステナイト粒の粒径を測定することにより求められる。なお、図1の横軸にとった旧オーステナイト粒展伸度の値は、板厚t/2部において5視野で観察したときに得られた測定値の平均値とした。
【0045】
ここで用いた鋼材試料としては、質量%で、C:0.23%、Si:0.45%、Mn:1.55%、P:0.011%、S:0.005%、Cr:0.31%、Ti:0.018%、B:0.0019%、Al:0.035%、N:0.0029%、残部が鉄である組成の鋼を種々の条件で圧延した後、表層部をマルテンサイト組織とし、内質部をマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織とした鋼板(板厚50mm)である。図1の縦軸にとったブリネル硬さの測定は、JIS Z 2243に基づいて、鋼鈑表面に直径10mmの圧子を押し込んだときに形成されるくぼみの直径を測定するブリネル硬さ(HB10/3000)試験により行なった。また、図1の縦軸にとった吸収エネルギーは、板厚中央部から採取したJIS Z 2202の規定に基づく10×10mmの2mmVノッチ試験片を用い、試料の圧延方向に対して垂直に衝撃力を与えるようにしたシャルピー衝撃試験を−40℃で行なった。なお、吸収エネルギーの値は、上記の衝撃試験を3回行ない、得られた測定値の平均値を求めたものである。さらに図1の縦軸にとった遅れ破壊発生応力拡大係数は、試験片を3.5質量%NaCl水溶液中に浸漬させるとともに試験片の圧延方向に対して垂直方向に所定の荷重を負荷する片持ち梁型の定荷重遅れ破壊試験において、破断に至る最大の応力拡大係数である。なお、このときの破断の測定は1000時間を最長とした。
【0046】
図1において、旧オーステナイト粒展伸度の値によらずブリネル硬さの値は約400程度とほぼ一定である。また、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2となるところを境にしてdL/dzが2未満である領域で吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数は著しく低く、一方、dL/dzが2以上である領域で吸収エネルギーおよび遅れ破壊応力拡大係数が急激に上昇する顕著な遷移が認められ、優れた靭性および耐遅れ破壊性を示すことが判明した。すなわち、旧オーステナイト粒展伸度を2以上とし、かつ表層部をマルテンサイト組織とし、かつ内質部をマルテンサイトと下部ベイナイトとの混合組織または下部ベイナイト単相組織とすることにより、所望の耐摩耗性を維持しつつ優れた靭性および耐遅れ破壊性を有することが判明した。
【0047】
このように靭性および耐遅れ破壊性が著しく向上するのは、マルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織においてラス長さが短くなること、および下部ベイナイトラス内で微細な炭化物が優先析出することによるものと考えられる。すなわち、靭性に関しては、(a)ラス長さが短くなることにより亀裂の屈曲や分岐が生じやすくなること、(b)ラス組織内に優先析出した微細な炭化物が亀裂の進展を抑制する障壁となること、以上(a)、(b)の両作用により靭性が向上するものと考えられる。一方、耐遅れ破壊性に関しては、ラス組織内の微細炭化物とマトリックスとの界面が水素のトラップサイトとなり、遅れ破壊の発生が抑制されるからであると考えられる。
【0048】
次に、本発明に係る靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材の製造方法について説明する。
【0049】
本発明に係る鋼材の製造方法は、まず、C、Si、Mn、Cr、Ti、B、Al、Nを上記の(1)〜(8)に示す特定範囲を満たすように含有し、残部が実質的に鉄および不可避的不純物からなる鋼材を調製する。
【0050】
この調製工程において、成分元素としてさらにCu、Ni、Mo、Vのうち1種または2種以上を上記の(9)〜(12)に示す成分範囲で含有させてもよい。また、成分元素としてNbを上記の(13)に示す成分範囲でさらに含有させてもよい。
【0051】
次に、調製された鋼材を加熱した後、900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上の圧延を行なう。ここで、900℃なる上限温度は、鋼板表面から鋼板中央部にかけての平均温度を意味し、以下の説明における温度についても同様である。なお、実際の製造では実質的に鋼板表面温度により温度管理されるが、リアルタイムで平均温度を計算して、この平均温度に基づき温度制御できるようにする必要がある。
【0052】
圧延前の鋼材の加熱温度としては、950〜1250℃であることが好ましい。この加熱温度を950℃未満にすると、鋼の変形抵抗が高くなるので圧延を行なうことが困難になる。また、1250℃を超える加熱温度にすると、鋼の結晶粒が粗大化するので、所望の強度および靭性を得ることが困難になる。
【0053】
圧延時の温度条件として900℃以下の温度域とした理由は、この900℃以下の温度域はオーステナイト再結晶温度未満の温度域に対応し、圧延により展伸させたオーステナイト粒を消失させることなくその形態を維持させるためである。
【0054】
本発明の製造方法において、上記圧延条件として、累積圧下率を50%未満にすると、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2未満となる。一方、累積圧下率を50%以上にすることによって、dL/dzを2以上にすることができる。事実、本発明者らは、900℃以下の温度域での累積圧下率(%)と、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzとの相関を示す図2の特性線図からこのことを明らかにしている。ここで用いた鋼材試料は、図1で用いたのと同様の組成の鋼を900℃以下の温度域で種々の累積圧下率に圧延し、表層部をマルテンサイト組織とし、内質部をマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織としたものである。
【0055】
図2に示されるように、累積圧下率の増加に伴って旧オーステナイト粒展伸度dL/dzはほぼ比例的に増加している。これによれば、累積圧下率50%未満の領域ではdL/dzは2未満であり、累積圧下率50%以上の領域ではdL/dzは2以上である。したがって、900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上の圧延を行なうことによって、dL/dzを2以上に形態制御できることがわかる。
【0056】
本発明の製造方法は、上述した900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上に圧延した鋼材を、直ちにAr3点以上の温度域から直接焼入れし、かつMs点−250℃以上Ms点+100℃以下の温度域で焼入れを停止する。
【0057】
ここで、上記Ar3点は、例えば、Ar3(℃)=910−310C%−80Mn%−20Cu%−15Cr%−55Ni%−80Mo%(ここで示される「%」は、いずれも各成分元素の鋼材中に占める「質量%」であり、下記Ms点についても同様である。)で表される関係式により鋼材の成分組成に基づいて導くことができる。また、上記Ms点も同様に、例えば、Ms(℃)=517−300C%−33Mn%−22Cr%−17Ni%−11Mo%−11Si%で表される関係式により鋼材の成分組成に基づいて導くことができる。
【0058】
上述のように圧延後、直接焼入れとするのは、再加熱焼入れとした場合には上記圧延効果が薄れ、焼入れ後に得られる鋼材の靭性および耐遅れ破壊性の向上効果が得られなくなるおそれがあり、また、工程が複雑化するので製造コストの上昇につながるからである。
【0059】
上記の焼入れ開始温度をAr3点以上の温度域としたのは、オーステナイト単相組織から焼入れないと所望の表面硬度(例えば、ブリネル硬さHB(10/3000)で300以上)が得られないためである。
【0060】
また、焼入れ停止温度をMs点−250℃以上Ms点+100℃以下の温度域と規定したのは、これにより鋼材の表層部をマルテンサイト組織とし、内質部をマルテンサイトと下部ベイナイトとの混合組織または下部ベイナイト単相組織とするためである。
【0061】
このように、直接焼入れ−途中停止とすることにより、冷却速度が高い鋼板表層部のみをマルテンサイト組織とすることができ、内質部はマルテンサイト単相組織とならないよう冷え切らせずに焼入れを途中停止するのでマルテンサイトと下部ベイナイトとの混合組織または下部ベイナイト単相組織とすることができる。これにより、表面硬度を確保しつつ全体として靭性および耐遅れ破壊性を向上できる複合材料的な耐摩耗鋼材を得ることができる。
【0062】
なお、直接焼入れ時の冷却速度は、10〜50℃/秒とすることが好ましく、このような冷却速度は例えば水焼入れにより容易に達成できる。
【0063】
なお、本発明においては、焼入れを途中停止した後に復熱による焼戻しがなされてもよい。
【0064】
図3は、縦軸にブリネル硬さHB(10/3000)、吸収エネルギー(J)および遅れ破壊発生応力拡大係数(N/mm3/2)をとり、横軸に焼入れ停止温度(℃)をとって、ブリネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数の3つの特性と焼入れ停止温度との関係をそれぞれ調べた結果を示す特性線図である。ここで用いた試料は、前述した図1で説明したのと同様な組成の鋼を900℃以下の温度域で圧延した後に直接焼入れするにあたり、圧延時の累積圧下率を65%および35%と変化させるとともに、焼入れ停止温度を種々変化させて得られたものである。なお、図3の縦軸にとったブリネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数の測定は、前述した図1で説明したのと同様な方法により行なった。
【0065】
図3において、白丸を結んだ曲線A1,A2,A3は900℃以下の温度域で65%の累積圧下率に圧延した場合の結果を示す特性線であり、黒丸を結んだ曲線B1,B2,B3は900℃以下の温度域で35%の累積圧下率に圧延した場合の結果を示す特性線である。
【0066】
図3の特性線B1,B2,B3に着目すると、焼入れ停止温度が485℃(Ms点+100℃)以下の領域では、ブリネル硬さが300以上と高い硬度であるものの、遅れ破壊発生応力拡大係数および吸収エネルギーが著しく低くなり、靭性および耐遅れ破壊性に著しく劣ることが判明した。また、焼入れ停止温度が485℃(Ms点+100℃)を超える領域では、遅れ破壊発生応力拡大係数および吸収エネルギーがともに上昇傾向にあるものの、ブリネル硬さは低下傾向にあり、しかも300未満と低くなり、耐摩耗性に劣ることが判明した。
【0067】
一方、特性線A1,A2,A3に着目すると、焼入れ停止温度が135℃(Ms−250℃)未満の領域ではブリネル硬さが500程度と高い値を維持しているものの、遅れ破壊発生応力拡大係数および吸収エネルギーが著しく低くなり、また、焼入れ停止温度が485℃(Ms点+100℃)を超える領域では遅れ破壊発生応力拡大係数および吸収エネルギーが高い値を示すものの、ブリネル硬さが300未満と低くなり、いずれの領域においても耐摩耗性を確保するとともに靭性および耐遅れ破壊性を向上できないことが判明した。これに対して、焼入れ停止温度が135℃(Ms点−250℃)〜485℃(Ms点+100℃)の領域内では、ブリネル硬さが300以上と高いのみならず、遅れ破壊発生応力拡大係数および吸収エネルギーが上昇して高い値を示すことから、高い表面硬度を維持しつつ、優れた靭性および耐遅れ破壊性を有することが判明した。
【0068】
なお、900℃以下の温度域で50%以上の累積圧下率で圧延することにより旧オーステナイト粒展伸度を2以上としても、焼入れ停止温度をMs点−250℃未満の温度域にすると、靭性および耐遅れ破壊性の向上効果が認められないのは、表層部から板厚中央部にわたりマルテンサイト単相組織となるからである。
【0069】
一方、Ms点+100℃を超える温度域で焼入れを停止すると、ブリネル硬さが低下するのは、表層部をマルテンサイト組織とすることができないからである。
【0070】
図4は、縦軸にブリネル硬さHB(10/3000)、吸収エネルギー(J)および遅れ破壊発生応力拡大係数(N/mm3/2)をとり、横軸に焼入れ停止温度(℃)および焼戻し温度(℃)をとって、直接焼入れ−焼戻しプロセスにより得られた鋼板について、焼戻し温度と、ブリネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数との関係を、直接焼入れ−途中停止プロセスにより得られた鋼板について、焼入れ停止温度と、ブリネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数との関係をそれぞれ調べた結果を示す特性線図である。
【0071】
図4中の白丸を結んだ曲線A4,A5,A6はそれぞれ直接焼入れ−途中停止プロセスの場合の結果を示す特性線であり、黒丸を結んだ曲線B4,B5,B6はそれぞれ直接焼入れ−焼戻しプロセスの場合の結果を示す特性線である。なお、ここで用いた試料の組成は前述した図1で説明したのと同様の鋼種である。また、直接焼入れ−途中停止プロセスにおいては900℃以下の温度域での累積圧下率を65%とした。一方、直接焼入れ−焼戻しプロセスでは900℃以下の温度域での累積圧下率を35%とし、100℃以下の温度域に直接焼入れした後に種々の焼戻し温度で焼戻しを施した。
【0072】
図4において、まず、特性線A6,B6について着目すると、焼入れ停止温度および焼戻し温度がともに同じ値であれば、ブリネル硬さはほぼ同じ値を示しており、ほぼ同じ耐摩耗性を有していることがわかる。次に、特性線A4,B4に着目すると、135℃(Ms点−250℃)〜485℃(Ms点+100℃)の温度範囲において、特性線A4は特性線B4よりも上記の温度範囲にわたり遅れ破壊発生応力拡大係数の値が大幅に高くなり、優れた耐遅れ破壊性を有することが判明した。また、特性線A5,B5に着目すると、135℃(Ms点−250℃)〜485℃(Ms点+100℃)の温度範囲において、特性線A5は特性線B5よりも上記の温度範囲にわたり吸収エネルギーの値が大幅に高くなり、優れた靭性を有することが判明した。すなわち、同じブリネル硬さを有していても、本発明のように特定した製造条件により得られた鋼板の方が、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数がより高くなり、耐摩耗性を確保しつつ優れた靭性および耐遅れ破壊性をも有することが判明した。
【0073】
なお、図4で説明した直接焼入れ−焼戻しプロセスは900℃以下の温度域での累積圧下率を50%未満である35%としたものであるが、この累積圧下率を50%以上に圧延することとすれば、圧延後に途中停止することなく焼入れた後に焼戻しするようにしても差し支えない。この場合、焼戻し温度の上限はブリネル硬さHB(10/3000)で300以上の表面硬度を確保できる温度とする。
【0074】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0075】
(実施例)
表1に示す鋼種A〜Hの成分組成に調整した鋼を各々溶製した。なお、表1には各鋼種の組成に基づき求められたAr3点(℃)およびMs点(℃)をそれぞれ併記した。
【0076】
次いで、これらの鋼種A〜Hを用い、表2に示す製造条件にしたがって鋼板を製造し、板厚15〜100mmの鋼板を得た。
【0077】
【表1】
【0078】
得られた各鋼板について、光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡により表層下1mmの位置の組織観察および板厚中央部の組織観察を行なった。なお、これらの組織観察において、例えばマルテンサイトと下部ベイナイトとは、大まかには光学顕微鏡により、詳細には透過型電子顕微鏡により薄膜サンプルを観察すれば炭化物の析出形態の差異により判別可能である。
【0079】
また、JIS G 0551の焼入焼戻し法による熱処理粒度試験方法に基づいてオーステナイト粒を現出させて板厚中央部における旧オーステナイト粒展伸度(dL/dZ)を求めた。さらに、図1で説明したのと同様にして、硬度測定、シャルピー衝撃試験および遅れ破壊試験を行なった。なお、本実施例においては、上記の硬度測定により得られたブリネル硬さ値が300以上、シャルピー衝撃試験による吸収エネルギー値が17J以上、遅れ破壊試験による遅れ破壊発生応力拡大係数値が980N/mm3/2以上を全て満たすことを条件とした。
【0080】
以上調べた評価結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示すように、特定の成分組成と特定の製造条件とを満たした実施例1〜7の各鋼材はいずれも、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2以上であり、表層部がマルテンサイト組織であり、内質部がマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織であった。実施例1〜7の各鋼材は、ブリネル硬さがいずれも300以上であり、かつ吸収エネルギーがいずれも17Jを大幅に上回り、かつ遅れ破壊発生応力拡大係数がいずれも980N/mm3/2を大幅に上回り、優れた耐摩耗性を有するのみならず優れた靭性および耐遅れ破壊性をも有する鋼材であることが判明した。
【0083】
これに対して、900℃以下の温度域での累積圧下率を50%未満とした比較例1〜4の各鋼板は、いずれも表層部がマルテンサイト組織であり、内質部がマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織ではあるものの、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzがいずれも2未満であった。比較例1〜4の各鋼板は、ブリネル硬さが300以上であるものの、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数がそれぞれ17J未満、980N/mm3/2未満となり、靭性および耐遅れ破壊性に劣ることが判明した。
【0084】
また、焼入れ停止温度を鋼種Cの組成に基づくMs点Ms点+100℃を上回る温度とした比較例5の鋼板は、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2以上であるものの、表層部が下部ベイナイト組織であり、内質部が上部ベイナイト組織であった。この鋼板はブリネル硬さが300を下回り、耐摩耗性に劣ることが判明した。
【0085】
焼入れ停止温度をMs点−250℃を下回る温度とした比較例6の鋼板は、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2以上であるものの、全板厚にわたりマルテンサイト単相組織であった。この鋼板はブリネル硬さが著しく高く、耐摩耗性に優れてはいるものの、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数がそれぞれ著しく低く、靭性および耐遅れ破壊性ともに劣ることが判明した。
【0086】
焼入れ開始温度をAr3点を下回る温度とした比較例7の鋼板は、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2以上であり、内質部がマルテンサイトと下部ベイナイトとの混合組織ではあるものの、表層部はフェライト組織が大幅に混在されたマルテンサイト組織であった。この鋼板は吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数が上記の条件を満たしているものの、ブリネル硬さは上記の条件を満たしておらず、耐摩耗性に劣ることが判明した。
【0087】
C含有量が特定範囲を低減逸脱した組成の鋼種Hを用いて製造された比較例8の鋼板は、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2以上であり、表層部組織および表層部から板厚中央部にかけての組織が特定した組織ではあるが、ブリネル硬さが著しく低くなり、耐摩耗性に劣ることが判明した。
【0088】
比較例9においては、900℃の温度域での累積圧下率を50%以上である65%としたので圧延直後では旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2以上に展伸していたと考えられるが、その後オーステナイト域に再加熱して焼入れしたため、dL/dzが1.2となり2に満たなかった。また、焼入れ停止温度をMs点−250℃を下回る温度としたため、全板厚にわたりマルテンサイト単相組織であった。この鋼板はブリネル硬さと遅れ破壊発生応力拡大係数とが上記の条件を満たすものの、吸収エネルギーが17J未満となり、靭性に劣ることが判明した。
【0089】
900℃以下の温度域での累積圧下率を50%未満である35%とし、焼入れ停止温度をMs点−250℃を下回る温度とし、さらに焼入れ後に450℃に焼戻しを施した比較例10の鋼板は、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2未満となり、全板厚にわたりマルテンサイト単相組織であった。この鋼板は吸収エネルギーと遅れ破壊発生応力拡大係数とが上記の条件を満たすものの、ブリネル硬さが300未満となり、耐摩耗性に劣ることが判明した。
【0090】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、所望の硬度を維持しつつ優れた靭性および耐遅れ破壊性を有する耐摩耗鋼材が提供される。また、本発明によれば、このような耐摩耗鋼材をオンラインで製造できるので製造コストを大幅に低減できる。したがって、本発明によれば、耐摩耗鋼材において靭性および耐遅れ破壊性をともに向上できるので、土木機械等の産業機械の信頼性向上や施工性向上等、産業に寄与する効果が極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】旧オーステナイト粒展伸度と、ブリネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数の3つの特性との関係をそれぞれ調べた結果を示す特性線図。
【図2】900℃以下の温度域で圧延した累積圧下率と、旧オーステナイト粒展伸度との関係を調べた結果を示す特性線図。
【図3】焼入れ停止温度と、ブリネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数の3つの特性との関係をそれぞれ調べた結果を示す特性線図。
【図4】直接焼入れ−焼戻しプロセスにより得られた鋼板について、焼戻し温度と、ブリネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数の3つの特性との関係を、直接焼入れ−途中停止プロセスにより得られた鋼板について、焼入れ停止温度と、ブリネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数の3つの特性との関係を、それぞれ調べた結果を示す特性線図。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、鋼材表面から深さ1mmの部位にあたる表層部がマルテンサイト組織であり、内質部の80%以上がマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織であり、前記内質部の残部が上部ベイナイト組織およびフェライト組織のうち少なくとも一方を含み、板厚中央部における旧オーステナイト粒径(dZ)に対する圧延方向の旧オーステナイト粒径(dL)の比(dL/dZ)で表される旧オーステナイト粒展伸度が2以上であることを特徴とする靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材。
- 質量%で、C:0.15〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下を含み、さらにCu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜1.0%、Mo:0.1〜1.0%およびV:0.01〜0.2%からなる群から選択される1種または2種以上を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、鋼材表面から深さ1mmの部位にあたる表層部がマルテンサイト組織であり、内質部の80%以上がマルテンサイト組織と下部ベイナイト組織との混合組織または下部ベイナイト単相組織であり、前記内質部の残部が上部ベイナイト組織およびフェライト組織のうち少なくとも一方を含み、板厚中央部における旧オーステナイト粒径(dZ)に対する圧延方向の旧オーステナイト粒径(dL)の比(dL/dZ)で表される旧オーステナイト粒展伸度が2以上であることを特徴とする靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材。
- 質量%で、Nb:0.005〜0.1%をさらに含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の耐摩耗鋼材。
- 質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材を調製する調製工程と、前記鋼材を加熱した後に、900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上に熱間圧延する圧延工程と、圧延された鋼材を直ちにAr3点以上の温度域から焼入れを開始し、Ms点−250℃以上Ms点+100℃以下の温度域で焼入れを停止する焼入れ工程と、を備えたことを特徴とする靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材の製造方法。
- 質量%で、C:0.15〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下を含み、さらにCu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜1.0%、Mo:0.1〜1.0%およびV:0.01〜0.2%からなる群から選択される1種または2種以上を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼材を調製する調製工程と、前記鋼材を加熱した後に、900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上に熱間圧延する圧延工程と、圧延された鋼材を直ちにAr3点以上の温度域から焼入れを開始し、Ms点−250℃以上Ms点+100℃以下の温度域で焼入れを停止する焼入れ工程と、
を備えたことを特徴とする靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材の製造方法。 - 前記調製工程の鋼材は、質量%で、Nb:0.005〜0.1%をさらに含有することを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の製造方法。
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