JP3763603B2 - 耐摩耗性鋳鉄およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性鋳鉄に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
耐摩耗性鋳鉄及びシリンダライナの鋳造法には、主に砂型を用いた重力鋳造法と金型を用いた遠心鋳造法がある。鋳鉄材はその組織形成から、研削またはホーニング等の加工時に表面がむしられ、荒さが大きくなるという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題点を解決するものであり、特に遠心鋳造法により製造した従来の耐摩耗性鋳鉄またはシリンダライナは、重力鋳造法に比べ細くて数が多い片状黒鉛のため黒鉛間距離が短く、研削またはホーニング加工時に内周面がむしられ、黒鉛相自身の欠落頻度が増え、加工後の内周面粗さが大きくなる傾向があった。また、研削条件またはホーニング条件によって粗さが極めて大きく左右されていた。
【0004】
そこで、研削またはホーニングの際、砂型を用いた重力鋳造法で製造した耐摩耗性鋳鉄材とは違う条件で研削またはホーニング加工する必要があった。
本発明の目的は、従来の耐摩耗性等の機能を損なうことなく研削またはホーニング加工時の内周面のむしられが小さく、内周面粗さが大きくなることを防ぐことのできる耐摩耗性鋳鉄を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、化学組成が重量%で、C:2.9〜3.5%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.5〜1.0%、P:0.1〜0.3%、S:0.01〜0.13%、Cu:0.3〜0.6%、Cr:0.1〜0.3%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつミクロ組織が面積率で、フェライト相を3%以下、ステダイト相を1%以上、黒鉛相を10〜18%含むパーライト基地からなり、かつ基地硬さがHv330以上であることを特徴とする耐摩耗性鋳鉄である。
【0006】
また本発明は、化学組成が重量%で、C:2.9〜3.5%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.5〜1.0%、P:0.1〜0.3%、S:0.01〜0.13%、Cu:0.3〜0.6%、Cr:0.1〜0.3%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつミクロ組織が面積率で、フェライト相を3%以下、ステダイト相を1%以上、黒鉛相を10〜18%含むパーライト基地からなり、かつ基地硬さがHv330以上であることを特徴とするエンジンのシリンダライナ用鋳鉄である。
【0007】
さらに本発明は、化学組成が重量%で、C:2.9〜3.5%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.5〜1.0%、P:0.1〜0.3%、S:0.01〜0.13%、Cu:0.3〜0.6%、Cr:0.1〜0.3%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる素材を用い遠心鋳造法にてミクロ組織が面積率で、フェライト相を3%以下、ステダイト相を1%以上、黒鉛相を10〜18%含むパーライト基地からなり、かつ基地硬さがHv330以上の鋳鉄を製造することを特徴とする耐摩耗性鋳鉄の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、化学組成と、ミクロ組織と、基地硬さを上記のように限定したので、耐摩耗性機能を維持しながら、研削またはホーニング加工時のむしられに伴う内周面粗さの増大を防ぐことができる。
まず、化学組成の限定理由を述べる。
【0009】
C:2.9〜3.5%
Cは、2.9%未満では黒鉛の析出量が少なく、黒鉛相の面積率が10%に満たず、摺動部材として必要な機能である耐摩耗性と耐スカッフ性が低下する。一方、3.5%超では黒鉛の析出量が過大になり、黒鉛相の面積率が18%を超え、機械構造部材としての強度が低下し実用的でなくなる。よって、Cは2.9〜3.5%の範囲に限定される。
【0010】
Si:2.0〜2.5%
Siは、Cとともに鋳鉄の主要元素で、強力な黒鉛化元素であるが、2.0%未満では、A型黒鉛が析出しにくくなり、摺動部材として必要な機能である耐摩耗性と耐スカッフ性が低下する。一方、2.5%超ではフェライト相の面積率が3%を超え、基地が軟らかくなるので好ましくない。よって、Siは2.0〜2.5%の範囲に限定される。因みに、本発明の特徴の一つは、フェライト相を減らしてステダイト相を増大させる点にある。
【0011】
Mn:0.5〜1.0%
Mnは、Sと結合しMnSとして切削性を向上させるが、0.5%未満ではその効果が不十分であり、一方、1.0%超では材質を硬く脆くする。よって、Mnは0.5〜1.0%の範囲に限定される。
P:0.1〜0.3%
Pは、鋳鉄中に含有されるとステダイト相を形成し、摺動部材として必要な機能である耐摩耗性と耐スカッフ性を向上させるが、0.1%未満ではステダイト相の面積率が1%未満となり好ましくない。一方、0.3%超ではステダイト相の面積率が過多となり、切削性を低下させる。よって、Pは0.1〜0.3%の範囲に限定される。
【0012】
S:0.01〜0.13%
Sは、Mnと結合しMnSとして切削性を向上させるが、0.01%未満ではその効果が少なく、一方、0.13%超では黒鉛組織に悪影響を及ぼす。よって、Sは0.01〜0.13%の範囲に限定される。
Cu:0.3〜0.6%
Cuは、パーライト安定化元素で、研削またはホーニング加工時のむしられを防ぐために必要な元素であり、0.3%未満ではその効果が少なく、一方、0.6%超ではその効果は飽和しており、コスト高になる。よって、Cuは0.3〜0.6%の範囲に限定される。
【0013】
Cr:0.1〜0.3%
Crは、基地硬さを向上させ、研削またはホーニング加工時にむしられるのを防ぐために必要な元素であり、0.1%未満ではその効果が少なく、基地硬さがHv330未満になる。一方、0.3%超では白銑化促進元素として作用するので黒鉛組織に悪影響を及ぼす。よって、Crは0.1〜0.3%の範囲に限定される。
【0014】
次にミクロ組織の面積率の限定理由を述べる。
フェライト相:3%以下
3%超となると局部的に基地強度が低下し、研削またはホーニング加工によるむしられが促進し、あらさが大きくなる。よって、フェライトは析出量が少ないことが望ましく、3%以下に限定する。
【0015】
ステダイト相:1%以上
ステダイト相は、Fe3P−Fe3C−Feの三元共晶組織で高硬度であるため、パーライト基地中に析出していることで、ホーニング加工時の加工負荷に対し、むしられ防止の効果を示す。ステダイト相は、析出量1%未満であるとその効果が顕著でなく、1%以上に限定する。
【0016】
黒鉛相:10〜18%
10%未満であると、摺動部材としての必要な機能である耐摩耗性、耐スカッフ性が劣る。一方、18%超であると、強度が低下し機械構造部材として実用できない。よって、黒鉛相は10〜18%に限定する。
次に、これら組織を含むパーライト基地硬さをHv330以上に限定した理由は、以下の通りである。
【0017】
パーライトは、フェライトとセメンタイトの層状組織であり、基地硬さがHv330以下であると、同じパーライト組織であってもラメラーが粗く(フェライト相が多く)なっており、ホーニング加工時のむしられに対しあまり効果を示さない。よって、基地硬さをHv330以上に限定する。
本発明の上記条件を満たす耐摩耗性鋳鉄の製造条件として、遠心鋳造用金型表面温度は重要な因子である。金型表面温度が200℃未満のときは、冷却速度が早すぎ、黒鉛化が抑制され、A型黒鉛が析出しにくくなり好ましくなく、かつ黒鉛間隔も狭くなる。一方、250℃超では、冷却速度が小さくなり、黒鉛が粗大になり基地硬さが低下するので好ましくない。
【0018】
金型内面にはケイソウ土を主成分とする塗型を塗布する。塗型厚さは、冷却速度と金型寿命を左右する重要な因子であるが、0.7mm未満であると、冷却速度が大きくチル化傾向が大きくなり、所定のミクロ組織が得られなくなる。一方、1.5mmを超えると、冷却速度が小さく黒鉛が粗大になり、基地硬さが低下し、摺動部材として必要な機能を満足しなくなる。したがって、塗型厚さは0.7〜1.5mmの範囲が好ましい。
【0019】
【実施例】
表1に、鋳鉄の化学成分、鋳造方式、金型温度、塗型厚さに併せて、フェライト相、ステダイト相、黒鉛相それぞれの面積率と基地硬さを示した。
表1に示す各シリンダライナ用鋳鉄を下記の条件でホーニング加工した。
(ホーニング条件)
その結果、図1に示す内周面粗さRmax(μm)が得られた。これより本発明の遠心鋳造方式のシリンダライナ用鋳鉄は、従来の遠心鋳造方式の鋳鉄より滑らかな表面が得られており、砂型方式の鋳鉄と比べても勝るとも劣らない滑らかな表面が得られていることが分かる。
【0020】
【表1】
なお、図2(a)は、試料No.1の砂型方式のシリンダライナ用鋳鉄の腐食しない場合の金属組織を示す倍率100倍の顕微鏡写真であり、図2(b)は、これをナイタル腐食した場合の金属組織を示す倍率200倍の顕微鏡写真である。
【0021】
また、図3(a)は、試料No.3の従来の遠心鋳造方式のシリンダライナ用鋳鉄の腐食しない場合の金属組織を示す倍率100倍の顕微鏡写真であり、図3(b)は、これをナイタル腐食した場合の金属組織を示す倍率200倍の顕微鏡写真である。
また、図4(a)は、試料No.10の本発明の遠心鋳造方式のシリンダライナ用鋳鉄の腐食しない場合の金属組織を示す倍率100倍の顕微鏡写真であり、(b)は、これをナイタル腐食した場合の金属組織を示す倍率200倍の顕微鏡写真である。
【0022】
試料No.3の従来の遠心鋳造方式のシリンダライナ用鋳鉄のナイタル腐食した場合の金属組織を示す顕微鏡写真(図3(b))には、フェライトの微細な析出相が認められる。
図5、図6、図7は、それぞれ試料No.1の砂型方式のシリンダライナ用鋳鉄、試料No.3の従来の遠心鋳造方式のシリンダライナ用鋳鉄、試料No.10の本発明の遠心鋳造方式のシリンダライナ用鋳鉄の、ホーニング加工面の電子顕微鏡によるSEM写真である。試料No.3の従来の遠心鋳造方式のシリンダライナ用鋳鉄のホーニング加工面の電子顕微鏡によるSEM写真である図6には、むしられた面が観察される。
【0023】
【発明の効果】
本発明では、耐摩耗性鋳鉄の化学組成、ミクロ組織、基地硬さを所定の範囲に規定したので、摺動部材としての特性を満足するとともにホーニング加工面のむしられによる面粗さを低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】表1の試料のホーニング面の粗さRmax を示すグラフである。
【図2】試料No.1の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図3】試料No.3の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図4】試料No.10の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図5】試料No.1の電子顕微鏡のSEM写真である。
【図6】試料No.3の電子顕微鏡のSEM写真である。
【図7】試料No.10の電子顕微鏡のSEM写真である。
Claims (3)
- 化学組成が重量%で、C:2.9〜3.5%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.5〜1.0%、P:0.1〜0.3%、S:0.01〜0.13%、Cu:0.3〜0.6%、Cr:0.1〜0.3%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつミクロ組織が面積率で、フェライト相を3%以下、ステダイト相を1%以上、黒鉛相を10〜18%含むパーライト基地からなり、かつ基地硬さがHv330以上であることを特徴とする耐摩耗性鋳鉄。
- 化学組成が重量%で、C:2.9〜3.5%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.5〜1.0%、P:0.1〜0.3%、S:0.01〜0.13%、Cu:0.3〜0.6%、Cr:0.1〜0.3%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつミクロ組織が面積率で、フェライト相を3%以下、ステダイト相を1%以上、黒鉛相を10〜18%含むパーライト基地からなり、かつ基地硬さがHv330以上であることを特徴とするエンジンのシリンダライナ用鋳鉄。
- 化学組成が重量%で、C:2.9〜3.5%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.5〜1.0%、P:0.1〜0.3%、S:0.01〜0.13%、Cu:0.3〜0.6%、Cr:0.1〜0.3%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる素材を用い遠心鋳造法にてミクロ組織が面積率で、フェライト相を3%以下、ステダイト相を1%以上、黒鉛相を10〜18%含むパーライト基地からなり、かつ基地硬さがHv330以上の鋳鉄を製造することを特徴とする耐摩耗性鋳鉄の製造方法。
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