JP3781466B2 - 近赤外線吸収化合物およびその製造方法 - Google Patents

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    • C09DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
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    • C09B47/00Porphines; Azaporphines
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    • C09B47/08Preparation from other phthalocyanine compounds, e.g. cobaltphthalocyanineamine complex

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  • Nitrogen And Oxygen Or Sulfur-Condensed Heterocyclic Ring Systems (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、近赤外線領域に吸収を有する近赤外線吸収化合物の簡便な製造法およびこの方法で得られる近赤外線吸収化合物に関する。また本発明は、この近赤外線吸収化合物を含有する近赤外線吸収樹脂組成物及び熱線吸収フィルターに関する。
【0002】
近赤外線吸収化合物は、光ディスク等の光記録媒体の記録層に利用したり、インキ化することにより近赤外線検出機で読み取り可能な近赤外線吸収インキとして利用することができる。また、バインダー樹脂と組み合わせることで塗料化しプラスチックやガラスにコーティングしたり、あるいは樹脂と混練して近赤外線吸収フィルターを製造することもできる。
【0003】
近赤外線吸収フィルターは、建造物、車、電車、船舶、航空機等の窓材として、外部からの熱線を遮断し、室内、車内の温度上昇を抑えることができる。また特定波長領域をカットすることで、光質選択利用農業用フィルムとして植物育成の制御、半導体受光素子の赤外線カット、有害な赤外線を含む光線から人間の目を保護する眼鏡等へも利用できる。
【0004】
また、近赤外線領域のレーザー光を効率よく吸収して発熱することから、高速印刷システムへの応用も考えられている。
【0005】
上記の中でも、特に熱線遮断を目的とする近赤外線吸収フィルターは、省エネルギーに寄与するため、注目されている分野である。
【0006】
【従来の技術】
熱線遮断を目的とする窓材として、PETフィルムやガラス上に酸化インジウム、酸化錫等の金属酸化物と金、銀等の金属を交互に積層した熱線反射フィルターが知られているが、複雑な製造工程故に製品コストが高いという欠点とともに、電波障害の原因となる。それらの無機型熱線反射フィルターと比較して、近赤外線吸収色素を使った近赤外線吸収フィルターは製造が簡便でかつ電波障害の問題がないため応用分野が広く、市場ニーズも大きい。しかしながら、色素のコストおよび耐久性(特に光に対する安定性)の問題で普及が進んでいないのが現状である。
【0007】
近赤外線を吸収する有機色素としては、従来、シアニン色素が良く知られている。しかし、シアニン色素は耐光堅牢性が極めて低いので、これを使用する場合には多くの制約を受けざるをえない。また特開平3−161644号公報に記載のアミニウム塩タイプの化合物、あるいは特公昭54−25060号公報、特開昭50−51549号公報等に記載の金属錯体化合物は耐熱性、耐光性の点で不十分である。また特開平3−115362号公報、特開昭62−903号公報記載のアントラキノン系の化合物も耐熱性はあるものの耐光性の点では不十分である。
【0008】
高耐久性を有する近赤外線吸収色素として、特公昭59−1311号公報、特開昭60−209583号公報、特公平2−5155号公報、特開昭61−152685号公報、特開昭61−223056号公報、特開平3−62878号公報等に記載のフタロシアニン類は製造工程が複雑で繁雑である。
【0009】
また、特開昭60−23451号公報にはナフタロシアニン化合物が開示されているが、その製造工程は長く煩雑であり、かつ工業的には高価な化合物であるため工業的使用には不十分であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、低コスト、かつ、簡便に溶解型フタロシアニン系近赤外線吸収化合物を提供することである。また、本発明の課題は、この近赤外線吸収化合物を用いた近赤外線吸収樹脂組成物及び熱線吸収フィルターを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ハロゲン原子、あるいはアルコキシ基、フェノキシ基、アルキルチオ基、またはアリールチオ基等の脱離基を持つフタロシアニンとエタンチオール誘導体を反応させることで、簡便に目的の近赤外線吸収化合物を製造できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
即ち、本発明は、一般式(1)で表わされる近赤外線吸収化合物、およびこの近赤外線吸収化合物を得るに際して、一般式(3)で表わされるフタロシアニンと、少なくとも一種の一般式(4)で表わされるエタンチオール誘導体を、塩基の存在下に反応させることを特徴とする、その製造方法に関するものである。さらに、この近赤外線吸収化合物にハロゲン化アルキル、あるいは、アルキルまたはアリール酸クロリドを反応させて得られる近赤外線吸収化合物に関するものである。
【0013】
【化5】
Figure 0003781466
〔式中、X1は各々独立にハロゲン原子、置換または未置換のアルコキシ基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基、あるいは置換または未置換のアルキルチオ基、あるいは置換または未置換のアリールチオ基を表わし、n2は0〜14の整数を表わす。R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8は各々独立に、水素原子、置換または未置換のアルキル基、あるいは置換または未置換のアリール基を表わし、Z1,Z2は各々独立に、酸素原子、硫黄原子またはNY基(Yは水素原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアルキルカルボニル基、あるいは、置換または未置換のアリールカルボニル基を表わす。)を表わし、mは1〜8の整数、lは0〜7の整数を表わす。また、n1+2l+2mは2〜16の整数を表わす。Mは2価の金属原子あるいは3価または4価の置換金属またはオキシ金属を表わす。〕
【0014】
【化6】
Figure 0003781466
〔式中、X2は各々独立にハロゲン原子、置換または未置換のアルコキシ基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基、あるいは置換または未置換のアルキルチオ基、あるいは置換または未置換のアリールチオ基を表わし、n2は8〜16の整数を表わす。R5,R6,R7,R8,Mは各々独立に、水素原子、置換または未置換のアルキル基、あるいは置換または未置換のアリール基を表し、Z2は酸素原子、硫黄原子またはNY基(Yは水素原子、置換または未置換のアルキル基、あるいは、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアルキルカルボニル基、あるいは、置換または未置換のアリールカルボニル基を表わす。)を表わし、lは0〜7の整数を表わす。また、n2+2lは10〜16の整数を表わし、Mは2価の金属原子あるいは3価または4価の置換金属またはオキシ金属を表わす。〕
【0015】
【化7】
Figure 0003781466
〔式中、R1,R2,R3,R4は各々独立に、水素原子、置換または未置換のアルキル基、あるいは置換または未置換のアリール基、Z1は酸素原子、硫黄原子またはNY基(Yは水素原子、置換または未置換のアルキル基、あるいは、置換または未置換のアリール基を表わす。)を表わす。〕
【0016】
本発明は、耐光性を有する溶解型フタロシアニン系の近赤外線吸収化合物を、簡便に提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における近赤外線吸収化合物、及びその製造方法の好ましい様態を詳述する。
【0018】
本発明における近赤外線吸収化合物は一般式(1)で表わされ、式中X1で表わされるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられ、特に好ましくは塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0019】
一般式(1)式中、X1で表わされる置換または無置換のアルコキシ基として好ましくは炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルコキシ基であって、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1,3−ジメチル-ブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、1−エチル−3−メチルブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基;
ベンジルオキシ基、sec−フェニルエトキシ基、2−フェニルエトキシ基、2−メチルベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基;
3−ジメチルアミノプロポキシ基、2−ジメチルアミノエトキシ基、2−ジイソプロピルアミノエトキシ基、2−ジエチルアミノエトキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エトキシ基等が挙げられる。
【0020】
一般式(1)式中、X1で表わされる置換または無置換のアリールオキシ基として好ましくは炭素数6〜20の置換または無置換のアリールオキシ基であって、より好ましくはフェニルオキシ基、2−メチルフェニルオキシ基、3−メチルフェニルオキシ基、4−メチルフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
一般式(1)式中、X1で表わされる置換または無置換のアルキルチオ基としては、好ましくは炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキルチオ基であって、より好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、iso−ペンチルチオ基、1,2−ジメチル−プロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、1,3−ジメチル-ブチルチオ基、1,2−ジメチルブチルチオ基、n−ヘプチルチオ基、1,4−ジメチルペンチルチオ基、1−エチル−3−メチルブチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基;
ベンジルチオ基、sec−フェニルエチルチオ基、2−フェニルエチルチオ基、2−メチルベンジルチオ基、4−メチルベンジルチオ基、2−アミノエチルチオ基、2−メチルアミノエチルチオ基、2−エチルアミノエチルチオ基、2−プロピルアミノエチルチオ基、2−ブチルアミノエチルチオ基、2−ペンチルアミノエチルチオ基、2−ヘキシルアミノエチルチオ基、2−ヘプチルアミノエチルチオ基、2−オクチルアミノエチルチオ基、2−ベンジルアミノエチルチオ基、2−(2−フェニルエチル)アミノエチルチオ基;
3−ジメチルアミノプロピルチオ基、2−ジメチルアミノエチルチオ基、2−ジイソプロピルアミノエチルチオ基、2−ジエチルアミノエチルチオ基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルチオ基等が挙げられる。
【0022】
一般式(1)式中、X1で表わされる置換または無置換のアリールチオ基としては好ましくは炭素数6〜20の置換または無置換のアリールチオ基であって、より好ましくはフェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、3−メチルフェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、2−アミノフェニルチオ基、3−アミノフェニルチオ基、4−アミノフェニルチオ基、2−メチルアミノフェニルチオ基、3−メチルアミノフェニルチオ基、4−メチルアミノフェニルチオ基、2−エチルアミノフェニルチオ基、2−プロピルアミノフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0023】
1として特に好ましくは、ハロゲンまたは、下記一般式(2)で表される置換基である。
【0024】
【化8】
Figure 0003781466
〔式中、R1〜R4、Z1は一般式(1)と同様の原子または置換基を表す。〕
一般式(1)において、n1は0〜14の整数を表わすが、より好ましくは0〜8の整数を表わす。
【0025】
また、式中R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8で表わされる置換または未置換のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、1,2−ジメチル−プロピル基、n−ヘキシル基、1,3−ジメチル-ブチル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基;
ベンジル基、sec−フェニルエチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2−フェニルエチル基;
2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基;
3−ジメチルアミノプロピル基、2−ジメチルアミノエチル基、2−ジイソプロピルアミノエチル基、2−ジエチルアミノエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、2−(1−ピペリジニル)エチル基、3−(1−ピペリジニル)プロピル基、3−(4−モルフォリニル)プロピル基、3−(4−モルフォリニル)エチル基、2−(1−ピロリジニル)エチル基、2−ピリジルメチル基、フルフリル基等が挙げられる。
【0026】
置換または未置換のアリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも特に好ましいのは炭素数が5〜20のアルキル基である。生成物が有機溶媒、樹脂等に高い溶解度を示し、近赤外線吸収フィルター樹脂中での曇り現象が生じないためには、炭素数が5以上の置換基が少なくとも一つ置換している必要がある。しかし、炭素数が20を越えると生成物が液体となり、フィルター用色素としては不適当になることがある。
【0028】
さらに、式中Z1、Z2で表わされる原子あるいは置換基としては、酸素原子、硫黄原子あるいはNY基などが挙げられ、Yは水素原子、総炭素数1〜20の置換または未置換のアルキル基、総炭素数6〜20の置換または未置換のアリール基、総炭素数1〜20の置換または未置換のアルキルカルボニル基、あるいは、総炭素数6〜20の置換または未置換のアリールカルボニル基が挙げられる。
【0029】
Yで表される置換または未置換のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、1,2−ジメチル−プロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基;ベンジル基、sec−フェニルエチル基、3−メチルベンジル基、4−エチルベンジル基、2−フェニルエチル基;
3−ジメチルアミノプロピル基、2−ジイソプロピルアミノエチル基、2−ジエチルアミノエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、2−(1−ピペリジニル)エチル基、3−(4−モルフォリニル)プロピル基、2−(1−ピロリジニル)エチル基、2−ピリジルメチル基、フルフリル基等が挙げられ、より好ましくは、iso−ブチル基、iso−ペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−フェニルエチル基、2−ジイソプロピルアミノエチル基等が挙げられる。
【0030】
Yで表される置換または未置換のアリール基の例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、1−ナフチル基等が挙げられる。
【0031】
mは1〜8の整数を表わし、より好ましく2〜6の整数を表わす。
【0032】
lは0〜7の整数を表わし、より好ましく0〜4の整数を表わす。
【0033】
また、n1+2l+2mは2〜16の整数を表わし、より好ましくは8〜16の整数を表わす。
【0034】
また、Mは2価の金属原子あるいは3価または4価の置換金属またはオキシ金属が挙げられ、好ましくはCu、AlCl、TiOまたはVO、より好ましくはCuが挙げられる。
【0035】
本発明で用いる一般式(3)で表わされるフタロシアニンにおいて、X2で表わされるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子が挙げられる。該フタロシアニンの入手法としては、X2が塩素原子、臭素原子等のものについては工業的に入手可能であるし、X2が沃素原子のものは、これらのものを、沃化カリ、沃化ナトリウム等で定法に従い処理して沃素原子と置換することにより入手できる。また、フッ素化フタロシアニンは、フッ素化フタロニトリルを Dyes and Pigment 91 頁(1992年)記載の方法で製造できる。
【0036】
さらに、X2がアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基については、上述のハロゲン化フタロシアニンに、対応するアルコールまたはチオールを反応させることにより製造できる。
【0037】
5,R6,R7,R8,Z2,Mは、一般式(1)中と同様のものが挙げられる。
【0038】
一般式(3)で表わされるフタロシアニンにおいて、特に好ましい化合物は、C.I.ピグメントグリーン 7(フタロシアニン グリーン)、C.I.ピグメントグリーン 36、あるいはC.I.ピグメントグリーン 38であり、ハロゲン化フタロシアニンとして工業的に入手容易な化合物である。
【0039】
本発明で用いる一般式(4)で表わされるエタンチオールにおいてR1,R2,R3,R4,Z1は、一般式(1)中と同様のものが挙げられる。
【0040】
一般式(3)で表わされるフタロシアニンと一般式(4)で表わされるエタンチオール誘導体との反応は、通常の求核置換反応の条件、すなわち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基、あるいはピリジン、トリエチルアミン、キノリン等の有機塩基存在下で行うことができる。
【0041】
この反応は、溶媒の存在下で行ってもよく、その際の溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、スルホラン、ピリジン等の極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。
【0042】
本発明の近赤外線吸収化合物の製造方法は、通常、一般式(3)で表わされるフタロシアニンと塩基(フタロシアニンに対して4〜100倍当量)を、溶媒(フタロシアニンに対して、1〜1000重量倍)に溶解、あるいは懸濁させて、攪拌しながら、一般式(4)で表わされるエタンチオール誘導体(フタロシアニンに対して、4〜40倍当量)を添加し、50〜220℃で反応させる。エタンチオール誘導体の添加は、昇温前におこなっても、昇温途中、あるいは昇温後に行ってもよい。また、一度に添加してもよく、分割添加してもよい。また、エタンチオール誘導体自身を溶媒として用い、塩基を加えた後に、フタロシアニンを添加してもよい。
【0043】
反応の際、触媒として、金属銅、塩化銅、臭化銅、沃化銅、酸化銅等の銅触媒を添加することも出来る。反応は、常圧下でも、加圧下で行ってもよい。
【0044】
反応の進行度合いは、例えば、反応液のλmaxを測定することにより判断することができる。
【0045】
反応終了後、反応混合物を冷却した水、あるいは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール溶液中に排出することにより、目的化合物を析出させる。析出した目的物を吸引濾過して分離し、さらに水洗浄、アルコール洗浄して、塩分、残塩基、未反応のエタンチオール誘導体等を除去し、乾燥して、本発明の近赤外線吸収化合物を単離する。得られた本発明の近赤外線吸収化合物は、トルエン、キシレン、酢酸エチル等の有機溶媒によく溶解するため、必要により、カラムクロマトグラフィーにて精製することもできる。
【0046】
本発明の方法で製造した近赤外線吸収化合物は、更に、ヨウ化メチル、ブロモエチル、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、1−クロロブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルブタン、1−ブロモ−3−メチルブタン、1−クロロペンタン、1−ブロモヘキサン、1−ブロモ−2−エチルヘキサン、1−ブロモオクタン、ベンジルクロリド等のハロゲン化アルキルと、上記と同様の条件下で反応させる、
あるいは、無水酢酸、トリフルオロアセチルクロリド、アセチルクロリド、1−ブチルクロリド、イソブチルクロリド、2−エチルヘキサノイルクロリド等のアルキル酸クロリド、または、ベンゾイルクロリド、4−メトキシベンゾイルクロリド、ナフチルクロリド等のアリール酸クロリドを塩基の存在下に反応させることにより、更にλmaxが長波長化、あるいは短波長化される近赤外線吸収化合物を得ることができる。
【0047】
この場合、上記方法で単離した近赤外線吸収化合物と塩基(近赤外線吸収化合物に対して、1〜100重量倍)を溶媒(近赤外線吸収化合物に対して、1〜1000重量倍)に溶解、あるいは懸濁させて、攪拌しながら、ハロゲン化アルキル(近赤外線吸収化合物に対して、1〜100重量倍)を添加して、50〜220℃で反応を行う。
【0048】
また、近赤外線吸収化合物を単離することなく、フタロシアニンとエタンチオール誘導体を反応させた反応混合物に、直接、ハロゲン化アルキルまたは酸ハロゲン化物を添加し、さらに反応を続けることもできる。
【0049】
反応後は、上記の方法と同様に処理することができる。
【0050】
本発明の近赤外線吸収化合物の製造法は、出発物質が安価で、耐光性も良く、樹脂、溶媒等への溶解性のある化合物が簡単に得られる方法である。
【0051】
更に、本発明の方法で得られる生成物は単一化合物ではなく、数種類の混合物として得られるため、吸収波長がブロードになり、近赤外線領域を幅広く吸収するため、近赤外線吸収フィルター等への応用が容易であり、熱線吸収用として優れた化合物である。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これによりなんら制限されるものではない。
【0053】
実施例1
C.I.ピグメントグリーン 7(フタロシアニン グリーン)(7.0g、6.21mmol)、2−アミノエタンチオール(9.57g、124mmol、20倍当量)、炭酸カリウム(30.9g、223mmol、36倍当量)を、ジメチルイミダゾリジン(200ml)中、150℃で、3時間反応させた。この反応液に、さらにn−オクチルブロミド(7.43g、38.47mmol)を加えて、1時間反応させた。反応混合物は、室温に冷却後、メタノール(800ml)中に排出した。析出物を吸引濾過により回収後、メタノール洗浄、水洗後、乾燥させ、下記式(5)の化合物を含有する近赤外線吸収混合物(8.13g)を得た。該混合物はトルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒に溶け、λmaxは846nm(クロロホルム溶媒)であった。
【0054】
【化9】
Figure 0003781466
【0055】
分光特性;λmax=846 nm、εg=3.22×104ml/g・cm(溶媒;クロロホルム)
元素分析; C128H212N20S12Cu
分析値(%) C:61.82 H:8.63 N:11.24 S:15.52 Cu:2.6
【0056】
更に、該混合物を、ユニチカ製ポリエチレンテレフタレートペレット1203と重量比0.02:1の割合で混合し、260〜280℃で溶融させ、押出機で厚み100μmのフィルムを作製した後、このフィルムを2軸延伸して厚み25μmの近赤外線吸収フィルターを作製した。該フィルターは700〜1100nmの光をよく吸収した。JIS−R−3106に従って、(株)島津製作所製分光光度計UV−3100でTV(可視光透過率)及びTE(日射透過率)を測定したところ、それぞれ68%、65%であった。
【0057】
実施例2
C.I.ピグメントグリーン 7(フタロシアニン グリーン)(10.0g、8.87mmol)、2−(n−オクチルアミノ)エタンチオール(33.6g、177mmol、20倍当量)、炭酸カリウム(39.2g、283.63mmol、32倍当量)を、ジメチルホルムアミド(200ml)中、120℃で、5時間反応させた。反応混合物は室温に冷却後、メタノール(800ml)中に排出した。析出物を吸引濾過により回収後、メタノール洗浄、水洗後、乾燥させ、下記式(6)の化合物を含有する近赤外線吸収混合物(13.2g)を得た。
【0058】
【化10】
Figure 0003781466
【0059】
該混合物はトルエン、クロロホルム等の溶媒に溶け、λmaxは843nm(クロロホルム溶媒)であった。
【0060】
分光特性;λmax=843 nm、εg=3.14×104ml/g・cm(溶媒;クロロホルム)
元素分析; C152H258N20S12Cu
分析値(%) C:60.72 H:8.92 N:9.30 S:12.62 Cu:2.1
【0061】
更に、該混合物を、実施例1と同様にして、25μmの近赤外線吸収フィルターを作製し、TV(可視光透過率)及びTE(日射透過率)を測定したところ、それぞれ65%、62%であった。
【0062】
実施例3
C.I.ピグメントグリーン 7(フタロシアニン グリーン)(7.0g、6.21mmol)、2−アミノエタンチオール(9.57g、124mmol、20倍当量)、炭酸カリウム(30.9g、223mmol、36倍当量)を、ジメチルホルムアミド(200ml)中、130℃で、3時間反応させた。この反応液を、室温に冷却後、さらにベンゾイルクロリド(17.4g、123.8mmol)を加えて、1時間反応させた。反応混合物は、メタノール(800ml)中に排出し、析出物を吸引濾過により回収後、メタノール洗浄、水洗後、乾燥させ、下記式(7)の化合物を含有する近赤外線吸収混合物(9.81g)を得た。
【0063】
該混合物はトルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒に溶け、λmaxは865nm(クロロホルム溶媒)であった。
【0064】
【化11】
Figure 0003781466
【0065】
分光特性;λmax=865 nm、εg=2.97×104ml/g・cm(溶媒;クロロホルム)
元素分析; C133H112N20S12O11Cu
分析値(%) C:61.22 H:4.33 N:10.52 S:14.77 Cu:2.4
【0066】
更に、該混合物を、実施例1と同様にして、25μmの近赤外線吸収フィルターを作製し、TV(可視光透過率)及びTE(日射透過率)を測定したところ、それぞれ68%、66%であった。
【0067】
実施例4
C.I.ピグメントグリーン 7(フタロシアニン グリーン)(10.0g、8.87mmol)、2−(n−オクチルアミノ)エタンチオール(16.8g、88.7mmol、10倍当量)、2−アミノエタンチオール(6.84g、88.7mmol、10倍当量)、炭酸カリウム(36.8g、266.1mmol、30倍当量)を、ジメチルホルムアミド(200ml)中、130℃で、5時間反応させた。反応混合物は室温に冷却後、メタノール(800ml)中に排出した。析出物を吸引濾過により回収後、メタノール洗浄、水洗後、乾燥させ、下記式(8)の化合物を含有する近赤外線吸収混合物(15.4g)を得た。
該混合物は、トルエン、クロロホルム等の溶媒に溶け、λmaxは862nm(クロロホルム溶媒)であった。
【0068】
【化12】
Figure 0003781466
【0069】
分光特性;λmax=862 nm、εg=2.84×104ml/g・cm(溶媒;クロロホルム)
元素分析; C120H196N20S12Cu
分析値(%) C:61.02 H:8.22 N:11.68 S:16.22 Cu:2.7
【0070】
実施例5
実施例4で得られたC.I.ピグメントグリーン7と2−(n−オクチルアミノ)エタンチオール及び2−アミノエタンチオールを反応させて得られたフタロシアニン化合物(5.0g)をピリジン(60ml)溶媒中、ベンゾイルクロリド(7.0g、49.8mmol)を添加(室温)後、室温で1時間反応させた。
【0071】
反応混合物は水(300ml)中に排出した。析出物を吸引濾過により回収後、水洗、メタノール洗浄後、乾燥させ、下記式(9)の化合物を含有する近近赤外線吸収混合物(7.42g)を得た。
該混合物は、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒に溶け、λmaxは874nm(クロロホルム溶媒)であった。
【0072】
【化13】
Figure 0003781466
【0073】
分光特性;λmax=874 nm、εg=2.98×104ml/g・cm(溶媒;クロロホルム)
元素分析; C176H228N20S12O8Cu
分析値(%) C:67.22 H:7.03 N:8.25 S:12.01 Cu:2.0
【0074】
実施例6
C.I.ピグメントグリーン 7(フタロシアニン グリーン)(7.0g、6.21mmol)、2−アミノエタンチオール(9.57g、124mmol、20倍当量)、炭酸カリウム(30.9g、223mmol、36倍当量)を、ジメチルホルムアミド(200ml)中、130℃で、3時間反応させた。この反応液を、室温に冷却後、さらに2ーエチルヘキサノイルクロリド(20.1g、124mmol)を加えて、1時間反応させた。反応混合物は、メタノール(800ml)中に排出し、析出物を吸引濾過により回収後、メタノール洗浄、水洗後、乾燥させ、下記式(10)の化合物を含有する近赤外線吸収混合物(12.4g)を得た。
該混合物はトルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒に溶け、λmaxは826nm(クロロホルム溶媒)であった。
【0075】
【化14】
Figure 0003781466
【0076】
分光特性;λmax=826 nm、εg=2.89×104 ml/g・cm(溶媒;クロロホルム)
元素分析; C144H222N20S12O11Cu
分析値(%) C:61.55 H:7.76 N:9.59 S:13.52 Cu:2.2
【0077】
実施例7
C.I.ピグメントグリーン 7(フタロシアニン グリーン)(7.0g、6.21mmol)、2−アミノチオフェノール(3.11g、24.8mmol、4倍当量)、炭酸カリウム(17.2g、124mmol、20倍当量)を、ジメチルホルムアミド(200ml)中、140℃で、10時間反応させた。さらにこの反応液に、炭酸カリウム(17.2g、124mmol、20倍当量)、2−アミノエタンチオール(7.18g、93mmol、15倍当量)を加えて、3時間反応させた。反応混合物は室温に冷却後、メタノール(800ml)中に排出した。析出物を吸引濾過により回収後、メタノール洗浄、水洗後、乾燥させ、下記式(11)の化合物を含有する近赤外線吸収混合物(10.2g)を得た。
該混合物はクロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒に溶け、λmaxは882nm(クロロホルム溶媒)であった。
【0078】
【化15】
Figure 0003781466
【0079】
分光特性;λmax=882 nm、εg=3.61×104 ml/g・cm(溶媒;クロロホルム)
元素分析; C64H42N16S8Cu
分析値(%) C:55.92 H:3.82 N:16.51 S:18.22 Cu:4.7
【0080】
【発明の効果】
本発明は、溶解型フタロシアニン系近赤外線吸収化合物を、簡便かつ安価に製造する方法を提供するものであり、実用上極めて価値のある方法である。

Claims (12)

  1. 一般式(1)で表わされる近赤外線吸収化合物。
    Figure 0003781466
    〔式中、X1は各々独立にハロゲン原子、置換または未置換のアルコキシ基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基、あるいは置換または未置換のアルキルチオ基、あるいは置換または未置換のアリールチオ基を表わし、n1は0〜14の整数を表わす。R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8は各々独立に、水素原子、置換または未置換のアルキル基、あるいは置換または未置換のアリール基を表わし、Z1,Z2は各々独立に、酸素原子、硫黄原子またはNY基(Yは水素原子、置換または未置換のアルキル基、あるいは、置換または未置換のアルキルカルボニル基、あるいは、置換または未置換のアリールカルボニル基を表わす。)を表わし、mは1〜8の整数、lは0〜7の整数を表わす。また、n1+2l+2mは2〜16の整数を表わす。Mは2価の金属原子あるいは3価または4価の置換金属またはオキシ金属を表わす。〕
  2. 一般式(1)において、lが0である請求項1記載の近赤外線吸収化合物。
  3. 一般式(1)において、X1がハロゲン、または、一般式(2)で表わされる請求項1または2記載の近赤外線吸収化合物。
    Figure 0003781466
    〔式中、R1〜R4、Z1は、一般式(1)と同様の原子または置換基を表す。〕
  4. 一般式(1)において、Z1がNY基(Yは水素原子、置換または未置換のアルキル基、あるいは、置換または未置換のアルキルカルボニル基、あるいは、置換または未置換のアリールカルボニル基を表わす。)で表わされる請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収化合物。
  5. Yが置換または未置換のアルキルカルボニル基、あるいは、置換または未置換のアリールカルボニル基である請求項4に記載の近赤外線吸収化合物。
  6. 一般式(1)において、MがCu、AlCl、TiOまたはVOである請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外線吸収化合物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収化合物を得るに際して、一般式(3)で表わされるフタロシアニンと、少なくとも1種の一般式(4)で表わされるエタンチオール誘導体を、塩基の存在下、フタロシアニンに対して1倍当量以上反応させることを特徴とする製造方法。
    Figure 0003781466
    〔式中、X2は各々独立にハロゲン原子、置換または未置換のアルコキシ基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基、あるいは置換または未置換のアルキルチオ基、あるいは置換または未置換のアリールチオ基を表わし、n2は8〜16の整数を表わす。R5,R6,R7,R8,Z2,Mは一般式(1)と同様の置換基あるいは同様の金属を表わし、lは一般式(1)と同様の整数を表わし、n2+2lは8〜16の整数を表わす。〕
    Figure 0003781466
    〔式中、R1,R2,R3,R4,Z1は一般式(1)と同様の置換基を表わす。〕
  8. 一般式(3)で表わされるフタロシアニンが、C.I.ピグメントグリーン 7、C.I.ピグメントグリーン 36、C.I.ピグメントグリーン 37、C.I.ピグメントグリーン 38である請求項7記載の近赤外線吸収化合物の製造方法。
  9. エタンチオール誘導体の少なくとも一種が、一般式(4)において、R1,R2,R3,R4が各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の置換または未置換のアルキル基、或いは炭素数6〜20の置換または未置換のアリール基である請求項7及び8のいずれかに記載の近赤外線吸収化合物の製造方法。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法で製造される近赤外線吸収化合物。
  11. 請求項1〜6及び10のいずれか1項に記載の近赤外線吸収化合物を含有する近赤外線吸収樹脂組成物。
  12. 請求項1〜6及び10のいずれか1項に記載の近赤外線吸収化合物を含有する熱線吸収フィルター。
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