JP3831155B2 - セラミダーゼ遺伝子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードする遺伝子に関する。更に詳しくは、セラミドの構造や機能等を解析するための脂質工学用試薬として、およびアトピー性皮膚炎の診断の指標として有用なセラミダーゼのアミノ酸配列およびそれをコードする塩基配列に関する。また、本発明は、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドの遺伝子工学的な製造方法に関する。さらに、本発明は、前記ポリペプチドの検出方法および該ポリペプチドをコードする遺伝子の検出方法に関する。さらに、本発明は、前記ポリペプチドの検出方法および遺伝子の検出方法を用いるアトピー性皮膚炎の検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミダーゼは、スフィンゴ脂質の一種であるセラミドをスフィンゴシンと脂肪酸に加水分解する酵素である。セラミドがセラミダーゼにより加水分解されて生成するスフィンゴシンは、プロテインキナーゼCの阻害、ホスフォリパーゼDの活性化、カルモジュリン依存性の酵素の阻害等の種々の生理活性を有しており、細胞の増殖や細胞内情報伝達に関与する事により、細胞機能の調節に働いていると考えられている重要な物質である。セラミダーゼはこのスフィンゴシン量の調整という重要な役割を担う酵素である。
【0003】
セラミダーゼは、その至適pHにより酸性セラミダーゼ、中性・アルカリ性セラミダーゼに分類される。これまで酸性域に至適pHを有するセラミダーゼの存在は、ラット脳[バイオケミストリー(Biochemistry)、第8 巻、第1692〜1698頁(1969)]、モルモット上皮細胞[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第270 巻、第12677 〜12684 頁(1995)]、ヒト腎臓[バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochim. Biophys. Acta)、第398 巻、第125 〜131 頁(1975)]、脾臓[バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ、第1004巻、第245 〜251 頁(1989)]、繊維芽細胞[バイオケミカル・ジャーナル(Biochem. J. )、第205 巻、第419 〜425 頁(1982)]、上皮[フェブス・レターズ(FEBS Lett.)、第268 巻、第110 〜112 頁(1990)]等の哺乳動物組織、ヒト尿 [ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、第270 巻、第11098 〜11102 頁(1995)] 等において報告されている。
【0004】
これらのセラミダーゼのうちヒト尿より精製されたセラミダーゼのアミノ酸配列および塩基配列が決定されている[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、第271 巻、第33110 〜33115 頁(1996)]。また、該遺伝子との相同性を利用してマウスのセラミダーゼ遺伝子が得られている[ジェノミックス(Genomics)、第50巻、第267 〜274 頁(1998)]。しかしこれらはいずれも哺乳類由来の酸性セラミダーゼであり、中性・アルカリ性セラミダーゼあるいは微生物由来のセラミダーゼのアミノ酸配列および塩基配列はこれまで明らかとなっていない。
【0005】
一方、アトピー性皮膚炎患者の病変部表皮にはセラミダーゼを生産する微生物が存在することが明らかにされており、該酵素がアトピー性皮膚炎の原因あるいは憎悪に関与することが示唆されているが、該酵素はアルカリ性域に至適pHを有するセラミダーゼ(以下、アルカリ性セラミダーゼという)である[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、第273 巻、第14368 〜14373 頁(1998)]。
【0006】
セラミダーゼを生産する微生物から天然のセラミダーゼを製造する場合には、酵素の生産を誘導するために培地に高価なスフィンゴ脂質を添加する必要があり、また、精製時には残存するスフィンゴ脂質またはその分解物をセラミダーゼを含有する画分から分離、除去する必要がある。さらに、培養中にスフィンゴミエリナーゼ等のセラミダーゼ以外の酵素が同時に生産されるため、これらの酵素から目的のセラミダーゼのみを分離精製することは困難である。さらに、微生物由来のアルカリ性セラミダーゼのアミノ酸配列や遺伝子構造は全く不明であり、遺伝子工学的なセラミダーゼの生産方法は利用できない。
【0007】
さらに、セラミダーゼを生産する微生物の存在はアトピー性皮膚炎の診断の指標、治療効果の確認方法として期待されているが、このような微生物を簡便に検出、同定する手段は知られていない。従来は微生物を単離後培養し、セラミダーゼ活性を測定するという非常に煩雑な操作が必要であった。このように、より安価に高純度な微生物由来のセラミダーゼを製造する方法、ならびに簡便かつ短時間の操作でセラミダーゼを生産する微生物を検出する方法が求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドを提供することにある。本発明の第2の目的は、前記ポリペプチドをコードする遺伝子を提供することにある。本発明の第3の目的は、前記遺伝子を含有した形質転換体を提供することにある。本発明の第4の目的は、前記形質転換体を利用して高純度のセラミダーゼを容易にかつ大量に製造しうる製造方法を提供することにある。本発明の第5の目的は、本発明の遺伝子に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを提供することにある。本発明の第6の目的は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片を提供することにある。本発明の第7の目的は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを用いたセラミダーゼ遺伝子の検出方法またはそれに用いるキットを提供することにある。本発明の第8の目的は、本発明の抗体またはその断片を用いたセラミダーゼの検出方法またはそれに用いるキットを提供することにある。さらに、本発明の第9の目的は、本発明のセラミダーゼ遺伝子の検出方法または本発明のセラミダーゼの検出方法を用いたアトピー性皮膚炎の検出方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を単離するべく鋭意研究を重ねた結果、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の単離とその塩基配列の解明に成功し、さらにこの知見を基に高純度のセラミダーゼを容易にかつ大量に製造しうる方法およびセラミダーゼ活性を有するポリペプチドの検出方法およびその遺伝子の検出方法を確立し、本発明の完成に至った。また、かかるセラミダーゼとアトピー性皮膚炎との相関関係を見出し、簡便なアトピー性皮膚炎の検出方法を確立することができた。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 配列表の配列番号17示された塩基配列からなるプライマー又は配列番号18に示された塩基配列からなるプライマー
〔2〕 前記〔1〕記載のプライマーを使用する、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の検出方法、
〔3〕 前記〔1〕記載のプライマーを含有してなる、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の検出に用いるためのキット、並びに
〔4〕 前記〔2〕記載の方法によりセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を検出する、アトピー性皮膚炎の検出方法、
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
(1)セラミダーゼ活性を有するポリペプチド
本発明において「セラミダーゼ」とは、前記のようにセラミドをスフィンゴシンと脂肪酸に加水分解する活性を有する酵素をいう。
【0012】
セラミダーゼ活性は、例えば、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第273 巻、第14368 〜14373 頁(1998)に記載の方法に従って測定することができる。
【0013】
本発明においては、セラミダーゼの起源は、特に限定されないが、例えば、細菌類、放線菌類、酵母類、糸状菌類、子嚢菌類、担子菌類等の微生物由来のセラミダーゼ、あるいは植物、動物、昆虫等の生物体由来のセラミダーゼが本発明に包含される。具体的には、例えば、アトピー性皮膚炎患者の皮膚より単離されたシュードモナス エルギノーザ AN−17(Pseudomonas aeruginosa AN-17)は、本発明のセラミダーゼを取得するための材料に好適であり、該菌株より得られるセラミダーゼのアミノ酸配列は配列表の配列番号:1に示されている。前記AN−17株は、平成8年6月26日より通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号:305−8566))に受託番号:FERM P−15699として寄託されている。
【0014】
なお、本明細書において、「セラミダーゼ活性を有するポリペプチド」(本明細書においては、単にセラミダーゼと記載する場合がある)とは、配列表の配列番号:1に示されたアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、さらに天然型のセラミダーゼのアミノ酸配列を有するポリペプチドのみならず、前記のような活性測定方法で測定することによって、同様のセラミダーゼ活性が認められるものであれば、天然由来のアミノ酸配列である配列表の配列番号:1に示されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含する。また前記変異は、得られたポリペプチドがセラミダーゼ活性を有する変異であれば、2種以上の変異を有していてもよい。ここで、「変異を有するアミノ酸配列」は、天然由来の変異および人為的な変異を導入されたアミノ酸配列を含む。また、「1個以上」とは、1もしくは複数個、またはそれ以上を含む意味である。
【0015】
(2)セラミダーゼ遺伝子
本発明のセラミダーゼ遺伝子とは、前記セラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子であり、すなわちセラミダーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸をいう。本発明のセラミダーゼ遺伝子としては、例えば、上記のシュードモナス エルギノーザ AN−17由来のセラミダーゼをコードする遺伝子が挙げられ、その塩基配列は、配列表の配列番号:2に記載されている。また、本発明のセラミダーゼ遺伝子は、上記した天然型のセラミダーゼのアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸に、置換、欠失、付加または挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつセラミダーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子をも包含する。
【0016】
また、本発明の遺伝子には、配列表の配列番号:2に示された塩基配列において、1個以上の塩基に、置換、欠失、付加または挿入を有する塩基配列を有し、かつセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列を有する遺伝子も包含される。
【0017】
ここで、「置換、欠失、付加または挿入を有する塩基配列」は、天然由来の変異および人為的な変異を導入された塩基配列を含む。また、「1個以上」とは、1もしくは複数個、またはそれ以上を含む意味である。
【0018】
さらに、本発明の遺伝子は、上記の遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子も包含される。ハイブリダイゼーションは、例えば1989年、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー発行、T.マニアティス(T. Maniatis )ら編集、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル第2版(Molecular Cloning : A Laboratory Manual 2nd ed. )に記載の方法により実施することができる。また、ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5×デンハルト、100mg/mlニシン精子DNAを含む溶液中、プローブとともに65℃で一晩保温するという条件があげられる。
【0019】
本発明によりセラミダーゼの一次構造及び遺伝子構造が明らかとなったことにより、本発明の遺伝子にランダムな変異あるいは部位特異的変異を導入し、天然のセラミダーゼのアミノ酸配列中に、1個以上のアミノ酸残基に、欠失、付加、挿入もしくは置換の少なくとも一つを有するポリペプチドをコードする遺伝子を得ることが可能である。これにより、セラミダーゼ活性を有するが、至適温度、安定温度、至適pH、安定pH等の性質が少し異なったセラミダーゼをコードする遺伝子を得ることが可能であり、遺伝子工学的にこれらのセラミダーゼを製造することが可能となる。
【0020】
ランダムな変異を導入する方法としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウムを用いた化学的な処理によりシトシン塩基をウラシル塩基に置換するトランジション変異を起こさせる方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・USA、第79巻、第1408〜1412頁(1982)]、マンガンを含む反応液中でPCRを行い、DNA合成時のヌクレオチドの取り込みの正確さを低くする方法[アナリティカル・バイオケミストリー(Anal. Biochem.)、第224 巻、第347 〜353 頁(1995)]等を用いることができる。
【0021】
部位特異的変異を導入する方法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法[ギャップド・デュプレックス(gapped duplex )法、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research)、第12巻、第9441〜9456頁(1984)]、dut(dUTPase )とung(ウラシル−DNAグリコシラーゼ)遺伝子を欠損した宿主を利用する方法[クンケル(Kunkel)法、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・USA、第82巻、第488 〜492 頁(1985)]、アンバー変異を利用したPCRによる方法(国際公開98/02535号パンフレット)等を用いることができる。これらの方法で目的の遺伝子に部位特異的な変異を導入するための各種のキットが市販されており、該キットを利用することにより、所望の変異を導入された遺伝子を容易に取得することが可能である。
【0022】
以下に、ハイブリダイゼーション法を用いて微生物由来のセラミダーゼ遺伝子を取得する方法について説明する。
1)まず、セラミダーゼ遺伝子をクローニングするためのプローブを作成するための情報として、セラミダーゼの部分アミノ酸配列を調べる。精製したセラミダーゼをそのまま常法に従ってエドマン分解法[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、第256 巻、第7990〜7997頁(1981)]によるアミノ酸配列分析に供するか、あるいはリジルエンドペプチダーゼやN−トシル−L −フェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)−トリプシン等の基質特異性の高い蛋白質加水分解酵素を作用させて限定加水分解を行って得られるペプチド混合物より分離精製された精製ペプチド断片についてアミノ酸配列分析を行なう。こうして明らかとなった部分アミノ酸配列の情報をもとにハイブリダイゼーション用のプローブとして使用するためのオリゴヌクレオチドを設計し、化学的に合成する。
【0023】
2)セラミダーゼを生産する微生物のゲノムDNAを調製し、これを適当な制限酵素で完全消化してアガロースゲル電気泳動で分離した後、常法に従いナイロン膜にブロッティングする。このナイロン膜上のDNA断片と、上記の合成オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションは、一般的な条件で行なう。例えばサケ精子DNAを含むプレハイブリダイゼーション溶液中でナイロン膜をブロッキングした後、32Pでラベルした合成オリゴヌクレオチドプローブとともに一晩保温する。このナイロン膜を洗浄した後、オートラジオグラムを作成して合成オリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズするDNA断片を検出する。
【0024】
3)オートラジオグラム上のシグナルに対応するDNA断片をアガロースゲルから抽出、精製する。こうして得られたDNA断片を通常用いられる方法によってベクター、例えばプラスミドベクターに組み込み、組換えDNA分子を作製する。ベクターには市販の種々のベクターが使用できる。次いで該組換えDNA分子を適当な宿主、例えば大腸菌に導入し、形質転換体を得る。形質転換の方法は通常用いられる方法、例えば上記のモレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル第2版等に記載の方法から、使用するベクターに応じたものを選んで用いることができる。
【0025】
4)次にセラミダーゼ遺伝子の断片を有する形質転換体を選択する。選択の方法はベクターの種類に応じてコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション等を適宜用いる。また、コロニーやプラークをそのまま試料として用いるPCR法や、セラミダーゼ活性の発現を指標とする方法を用いることもできる。
【0026】
5)セラミダーゼ遺伝子の断片を含む形質転換体より該断片を組み込まれた組換えDNA分子を調製し、該断片の塩基配列を解析する。塩基配列の解析は通常の方法、例えばジデオキシ法により決定することができる。決定された塩基配列と、先に得られたセラミダーゼの部分アミノ酸配列やセラミダーゼの分子量等とを比較することによって、得られたDNA断片が目的のセラミダーゼ遺伝子の全部であるか、またはその一部であるかを決定する。
【0027】
6)得られたDNA断片がセラミダーゼ遺伝子の全長を含まない場合は、該断片の一部をプローブとして用い、ゲノムDNAを他の制限酵素で消化したうえで同様にしてハイブリダイゼーション等を行い、欠損している部分を得ることにより目的のセラミダーゼ遺伝子全長を得ることができる。こうして得られたセラミダーゼ遺伝子を含むDNA断片からセラミダーゼ遺伝子の構造ならびにセラミダーゼの全アミノ酸配列を決定する。
【0028】
上記のようなハイブリダイゼーション法の他、PCR法によって本発明のセラミダーゼ遺伝子を取得することもできる。例えば、セラミダーゼのN末端アミノ酸配列や内部部分アミノ酸配列から設計されたプライマーを使用するPCR法、あるいはこれらのプライマーに加えてカセットDNAとカセットプライマーとを使用するPCR法によってセラミダーゼ遺伝子を取得することができる。
【0029】
次にシュードモナス・エルギノーザ AN−17由来のセラミダーゼの場合を例にして具体的に説明する。前記セラミダーゼは至適pHをpH8.0〜9.0に持つアルカリ性セラミダーゼである。
【0030】
まず、シュードモナス・エルギノーザ AN−17の生産するセラミダーゼの部分アミノ酸配列を調べる。前記セラミダーゼのN末端アミノ酸配列は、その対応するコドンの種類が多く、プライマーの配列の組み合わせが膨大なものとなる。また、前記プライマーを用いてPCRを行なった場合、非特異的な増幅産物が多数生じるため、そのなかから、目的とする遺伝子に由来する産物を同定することは困難である。本発明者らは、プライマーの設計に用いるためのアミノ酸配列として、対応するコドンの縮重が少ない配列を得るため、蛋白質加水分解酵素または臭化シアンなどに代表される蛋白質限定分解用の試薬を用いてペプチドマッピングを行ない、ついでプライマーの設計を試みた。しかしながら後述の実施例で述べるように、4種のプライマーの組み合わせによりPCRを試みたが、特異的な増幅産物を得ることができなかった。そこで、本発明者らは、さらに、得られたアミノ酸配列をもとに合成オリゴヌクレオチドプライマー、すなわち、セラミダーゼの部分アミノ酸配列C−89(配列番号:3)からデザインされたオリゴヌクレオチドプライマーC−89−1(配列番号:13)、部分アミノ酸配列C−91(配列番号:4)からデザインされたオリゴヌクレオチドプライマーC−91−c1(配列番号:14)をそれぞれ合成した。シュードモナス・エルギノーザ AN−17株のゲノムDNAを鋳型とし、上記の2種のプライマーを使用したPCRを行なうことにより、特異的に増幅されるDNA断片を得ることができた。該断片の塩基配列を調べ、これとセラミダーゼについて得られている上記以外の部分アミノ酸配列とを比較することにより、該断片がセラミダーゼをコードする遺伝子の一部を含むことがわかる。
【0031】
この増幅DNA断片をプローブとしてハイブリダイゼーション等を行なうことによってセラミダーゼ全長をコードする遺伝子をクローニングすることができる。
【0032】
以上のようにして得られる、シュードモナス・エルギノーザ AN−17由来のセラミダーゼをコードする遺伝子の全塩基配列を配列表の配列番号:16に示す。また、該配列より推定されるセラミダーゼのアミノ酸配列を配列表の配列番号:15に示す。さらに、このアミノ酸配列と、配列表の配列番号:8に示されたシュードモナス・エルギノーザ AN−17由来のセラミダーゼのN末端アミノ酸配列とを比較することにより、該菌株が生産するセラミダーゼはその翻訳後にN末端の24アミノ酸からなるポリペプチドが除去された成熟型酵素に転換されることがわかる。この成熟型セラミダーゼのアミノ酸配列を配列表の配列番号:1に、また、上記のセラミダーゼ遺伝子の塩基配列のうち、成熟型のセラミダーゼをコードする部分の塩基配列を配列表の配列番号:2にそれぞれ示す。なお、前記シュードモナス・エルギノーザ AN−17由来のセラミダーゼのアミノ酸配列およびそれをコードする塩基配列は、公知の酸性セラミダーゼのアミノ酸配列および塩基配列との相同性が観察されなかったため、前記シュードモナス・エルギノーザ AN−17由来の酵素は、新規なファミリーに属するセラミダーゼであることが示唆される。
【0033】
このようにして全塩基配列が明らかにされたセラミダーゼ遺伝子の全体あるいはその一部分をハイブリダイゼーション用のプローブとして用いることにより、シュードモナス・エルギノーザ AN−17以外の生物体から得たゲノムDNAあるいはcDNAのライブラリーから、セラミダーゼ遺伝子と相同性の高いDNAを選別することができる。ハイブリダイゼーションは、一般的に用いられる条件で行なうことができる。例えば、シュードモナス・エルギノーザ AN−17以外の生物から得たゲノムDNAあるいはcDNAのライブラリーを固定化したナイロン膜を作製し、6×SSC、0.5%SDS、5×デンハルト、100mg/mlニシン精子DNAを含むプレハイブリダイゼーション溶液中、65℃でナイロン膜をブロッキングした後、32Pでラベルした上記のプローブを加えて65℃で一晩保温する。このナイロン膜をまず6×SSC中、室温で10分間、次に0.1%SDSを含む2×SSC中、室温で10分間、さらに0.1%SDSを含む0.2×SSC中、45℃で30分間洗浄した後、オートラジオグラムを作製してプローブとハイブリダイズするDNAを検出する。なお、洗浄などの条件を変えることによって様々な相同性を示す遺伝子を得ることができる。
【0034】
一方、本発明のセラミダーゼ遺伝子の塩基配列からPCR用のプライマーをデザインすることができる。このプライマーを用いてPCRを行なうことによって本発明の遺伝子と相同性の高い遺伝子断片を検出したり、その遺伝子全体を得ることもでき、さらにはセラミダーゼを生産する生物を検出することが可能である。
【0035】
上記のハイブリダイゼーション、あるいはPCRによって得られた遺伝子がセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子であるかどうかを確認するには、得られた遺伝子の塩基配列を本発明のセラミダーゼ遺伝子の塩基配列またはアミノ酸配列と比較することにより推定することができる。また、下記に記載の方法を用いて、得られた遺伝子にコードされるポリペプチドを製造し、セラミダーゼ活性を測定することにより、目的の遺伝子であるかどうかを確認することができる。
【0036】
なお、縮重遺伝子コードを介して前記セラミダーゼ遺伝子の塩基配列とは異なる塩基配列を有する遺伝子も本発明のセラミダーゼ遺伝子に含まれる。
【0037】
(3)セラミダーゼ遺伝子を含有した形質転換体
本発明の形質転換体は、前記遺伝子を含有したものである。
【0038】
本発明の遺伝子は、公知のベクター等に連結し、様々な宿主において発現させることができる。なお、本発明の遺伝子を発現させる宿主により、コドン使用頻度が異なり、発現が抑制される場合があるが、この場合、本発明の遺伝子に使用されるコドンを、それぞれの宿主に合わせたコドンにかえて用いてもよい。また、前記発現ベクターは、プラスミド由来のベクターのみに限定されるものではなく、本発明の目的を妨げないものであれば、ファージ、コスミド等由来のベクターを用いてもよい。本発明のポリペプチドを容易にかつ大量に製造する観点から、外来遺伝子を誘導発現させることが可能なベクター、レポーター遺伝子産物との融合蛋白質として発現させることが可能なベクター等が望ましい。
【0039】
セラミダーゼ遺伝子を保持するベクターで宿主の形質転換を行い、本発明の形質転換体を得ることができる。宿主としては大腸菌をはじめとする微生物の他、動物細胞、植物細胞等を用いることができる。次いで該形質転換体の培養を通常用いられる条件で行なうことによってセラミダーゼ活性を有するポリペプチドを生産させることができる。
【0040】
なお、前記シュードモナス・エルギノーザ AN−17由来のセラミダーゼ遺伝子を有する形質転換体は、Escherichia coli JM109/pTCDS7と命名・表示され、平成10年8月4日(原寄託日)より通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所〔あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号:305−8566)〕に寄託されている〔受託番号:FERM BP−6728〕。
【0041】
セラミダーゼの発現の確認は、セラミダーゼ活性を測定することにより行なうことができる。活性測定は、例えば形質転換体の細胞抽出液を試料としてジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、第273 巻、第14368 〜14373 頁(1998)に記載の方法で行なうことができる。また、セラミダーゼに対する抗体を使用することもできるが、セラミダーゼを他のポリペプチドとの融合体として発現させる場合にはそのポリペプチド部分に対する抗体を用いてもよい。抗体を使用する場合には、例えば形質転換体の細胞抽出液をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)膜上に転写し、この膜上で抗体を用いて検出することができる。
【0042】
(4)セラミダーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法
本発明のセラミダーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法は、前記形質転換体を培養し、得られた培養物からセラミダーゼ活性を有するポリペプチドを採取する工程を含むことを1つの大きな特徴とする。
【0043】
本発明の製造方法において、該形質転換体が微生物あるいは培養細胞である場合には、培地組成、培地のpH、培養温度、培養時間の他、インデューサーの使用量、使用時間等についてセラミダーゼの発現の最適な条件を決定することによって、効率よくセラミダーゼを生産させることができる。
【0044】
形質転換体の培養物からセラミダーゼを精製するには通常の方法が用いられる。形質転換体が大腸菌のように細胞内にセラミダーゼが蓄積する場合には、培養終了後、遠心分離によって形質転換体細胞を集め、得られた細胞を超音波処理などによって破砕した後、遠心分離等によって無細胞抽出液を得る。これを出発材料とし、塩析法の他、イオン交換、ゲル濾過、疎水、アフィニティーなどの各種クロマトグラフィー等の一般的なタンパク質精製法により精製することができる。用いる形質転換体によっては発現産物が細胞外に分泌される場合があるが、このような場合は培養上清から同様に精製を行なえばよい。
【0045】
形質転換体が生産するセラミダーゼには、それが細胞内に生産されるときは細胞内の諸酵素、タンパク質が共存するが、これらは発現されるセラミダーゼの量に比べて微量にすぎないため、その精製は極めて容易である。また、ベクターとして菌体外分泌型のベクターを用いた場合、セラミダーゼが菌体外に分泌され、セラミダーゼを含む画分には、培地成分などが共存する。しかしながら、これらは通常セラミダーゼの精製の妨げとなるようなタンパク質成分をほとんど含まないため、例えば、シュードモナス・エルギノーザ AN−17の培養物からのセラミダーゼの精製に必要であった煩雑な分離精製操作を必要としない。
【0046】
また、例えば、宿主が大腸菌の場合、発現産物が不溶性の封入体(inclusion body)として形成されることがある。この場合、培養終了後遠心分離によって菌体を集め、これを超音波処理などによって破砕した後、遠心分離等を行なうことにより封入体を含む不溶性画分を集める。封入体を洗浄した後、通常用いられるタンパク質可溶化剤、例えば尿素やグアニジン塩酸塩等で可溶化し、必要に応じてこれをイオン交換、ゲル濾過、疎水、アフィニティーなどの各種クロマトグラフィーを行なうことにより精製した後、透析法あるいは希釈法などを用いたリフォールディング操作を行なうことによってセラミダーゼ活性を保持したポリペプチドを含む標品を得ることができる。必要に応じてこの標品を更に各種クロマトグラフィーによって精製すれば、高純度のセラミダーゼ活性を有するポリペプチドを得ることができる。
【0047】
(5)オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー
本発明のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、前記セラミダーゼ遺伝子、または該遺伝子に相補的な塩基配列を有する遺伝子にストリンジェントな条件下にハイブリダイズするものであれば、特に限定されるものではない。
【0048】
前記「ストリンジェントな条件」とは、特に限定されないが、例えば、6×SSC、0.5%SDS、5×デンハルト、100mg/mlニシン精子DNAを含む溶液中、〔Tm −25℃〕の温度で一晩保温する条件などをいう。
【0049】
オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーのTm は、例えば、下記の式により求められる。
【0050】
m =81.5−16.6 (log10[Na+ ])+0.41 (%G+C)−(600/N)
【0051】
(式中、Nはオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーの鎖長であり、%G+Cはオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー中のグアニンおよびシトシン残基の含有量である。)
【0052】
また、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーの鎖長が18塩基より短い場合、Tm は、例えば、A+T(アデニン+チミン)残基の含有量と2℃との積と、G+C残基の含有量と4℃との積との和〔(A+T) ×2+(G+C) ×4 〕により推定することができる。
【0053】
前記オリゴヌクレオチドプローブは、本発明のセラミダーゼ遺伝子の塩基配列をもとに設計し、例えば、常法により化学的に合成し作製することができる。
【0054】
前記オリゴヌクレオチドプローブの鎖長としては、特に限定はないが、非特異的なハイブリダイゼーションを防止する観点から、15塩基以上であることが好ましく、18塩基以上であることがさらに好ましい。
【0055】
また、本発明のプライマーにおいても、前記オリゴヌクレオチドプローブと同様の塩基配列を有する核酸が挙げられる。例えば、本発明の遺伝子の塩基配列をもとに設計し、化学的に合成すること等により作製することができる。プライマーの鎖長には、特に限定はないが、例えば、15〜40塩基の鎖長のものを使用することができ、特に17〜30塩基の鎖長のものを好適に使用することができる。前記プライマーはポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)法をはじめとする種々の遺伝子増幅法に使用することが可能であり、これによって本発明のセラミダーゼ遺伝子の検出を行なうことができる。
【0056】
また、前記オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーとして、天然由来のセラミダーゼをコードする核酸を、制限酵素処理、エキソ型ヌクレアーゼ処理等の酵素的処理、超音波等の物理的処理等により断片化し、得られた断片を、アガロースゲル等に代表される各種核酸分離法により分離精製することにより得られた核酸を用いてもよい。前記のようにして得られた核酸は、セラミダーゼに特徴的な配列を有する領域由来であることが望ましい。
【0057】
前記オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、公知の方法にしたがって適当な標識を施し、本発明のセラミダーゼ遺伝子の検出に使用することができる。標識には、特に限定するものではないが、放射性同位元素の他、蛍光物質、ビオチンやジゴキシゲニンのようなリガンド等を用いることができる。
【0058】
(6)遺伝子の検出方法
本発明の遺伝子の検出方法は、前記オリゴヌクレオチドプローブおよび/またはプライマーを使用し検出用試料中の遺伝子を検出することを1つの大きな特徴とする。
【0059】
本発明の検出方法においては、前記オリゴヌクレオチドプローブを用いてハイブリダイゼーション法などにより遺伝子の検出を行なってもよく、また、前記プライマーを用いて、PCR法などのDNA増幅方法により遺伝子の検出を行なってもよい。
【0060】
オリゴヌクレオチドプローブを用いる場合、検出用試料としては、例えば、微生物のコロニーや組織切片のような試料、これらの試料中のDNAやRNAを膜上に固定したもの、これらの試料から抽出されたDNAやRNAなどが挙げられる。なかでも試料の安定性の観点から、膜上に固定されたDNAあるいは抽出されたDNAが好ましい。
【0061】
オリゴヌクレオチドプローブを用いる場合、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル第2版等に記載の公知のハイブリダイゼーション法などにより遺伝子の検出を行なうことができる。
【0062】
前記ハイブリダイゼーションの条件は、用いるプローブのTm値、標的DNAのGC含量などにより適宜決定することができる。例えば、前記モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル 第2版に記載の条件などを適用できる。
【0063】
プライマーを用いる場合、検出用試料としては、例えば、微生物培養液、微生物コロニー、微生物菌体のような微生物試料、皮膚、組織、組織切片のような生体由来試料などが挙げられる。
【0064】
前記プライマーを用いる場合の検出用試料は、例えば、単離した微生物をそのままの状態で用いてもよく、適切な処置を施した状態で用いてもよい。また組織のような固体試料は浸出液や懸濁液を調製して使用することができる。また、これらの試料の上清またはこれらの試料について界面活性剤処理のような細胞溶解処理が施された試料やその上清も使用することができる。さらに、検出対象である核酸を損なわない範囲で試料中の他の成分を除去する操作が施されていてもよい。
【0065】
前記プライマーを用いてPCR法により検出を行なう場合、PCR条件は、用いるプライマーのTm値、増幅し検出する対象の領域の長さなどにより、適宜選択することができる。
【0066】
前記プライマーを用いる場合、PCR法などのDNA増幅方法により増幅し、PCR増幅産物の有無を確認することにより検出することができる。増幅の有無の確認法には特に限定はないが、例えば核酸増幅反応液をアガロースゲル電気泳動に供した後、ゲルを適当な核酸染色試薬、例えばエチジウムブロマイド、SYBER Green I 等で染色し、紫外線を照射して生じるバンドの有無を検出することにより確認できる。バンドの検出は肉眼で観察してもよいが、例えば蛍光イメージアナライザー等を用いて検出することもできる。
【0067】
本発明の検出方法においては、検出感度を上昇させるために、前記プローブおよびプライマーを併用してもよい。例えば、前記プライマーを用いて、PCR法により、試料中に微量に存在するセラミダーゼ遺伝子を増幅し、ついで、プローブを用いて該遺伝子とハイブリダイズさせることによって、高感度かつ正確に検出することができる。
【0068】
本発明の検出方法によりセラミダーゼ遺伝子の検出を行ない、さらに該遺伝子の発現量を決定する場合には、ハイブリダイズしたプローブに由来するシグナルの強度、プライマーを用いて増幅された産物に由来するバンドの蛍光強度などを定量することにより行なうことができる。
【0069】
(7)本発明の遺伝子の検出に用いるためのキット
本発明の遺伝子の検出に用いるためのキットは、前記オリゴヌクレオチドプローブおよび/またはプローブを含有することを1つの特徴とする。
【0070】
本発明のキットには、さらに、核酸を固定するための膜やハイブリダイゼーション緩衝液などに代表されるハイブリダイゼーション用の各種試薬、耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTP混合液、PCR用緩衝液などに代表されるPCR用試薬、プローブや増幅されたDNAを検出するための試薬や微生物増殖用の培地、試料より核酸を抽出するための試薬などを含有してもよい。
【0071】
(8)セラミダーゼ活性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片
本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片は、該ポリペプチドに特異的に結合する能力を有するものであれば、特に限定はなく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のどちらでもよい。さらに、公知技術により修飾された抗体や抗体の誘導体、例えばヒト化抗体、Fabフラグメント、単鎖抗体等を使用することもできる。本発明の抗体は、例えば、1992年、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Weily & Sons, Inc)発行、ジョン・E・コリガン(John E. Coligan )編集、カレント・プロトコルズ・イン・イムノロジー(Current Protocols in Immunology )に記載の方法により、本発明のポリペプチドの全部または一部を用いてウサギやマウス等を免疫することにより、容易に作製され得る。また、遺伝子工学的に抗体を作製することもできる。また、ポリペプチドのある部分断片に特異的に結合しうる抗体またはその断片も含まれる。
【0072】
さらに、得られた抗体を精製後、ペプチダーゼ等により処理することにより、抗体の断片が得られる。得られた抗体またはその断片の用途としては、セラミダーゼ生産菌の検出、アフィニティークロマトグラフィー、各種ライブラリー(ゲノムDNAまたはcDNA)のスクリーニング、医薬、診断薬、研究用試薬等への応用が考えられる。
【0073】
さらに、本発明の抗体またはその断片は、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法などによる検出を容易にするために、各種修飾をしてもよい。
【0074】
(9)ポリペプチドの検出方法
本発明のポリペプチドの検出方法は、前記抗体またはその断片を使用し、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドを検出することに1つの大きな特徴がある。
【0075】
本発明においては、検出用試料として、例えば、微生物の細胞破砕物、皮膚等の組織の抽出液あるいは洗浄液、組織や微生物由来のタンパク質が固定された膜などのタンパク質試料を用いることができる。
【0076】
抗体またはその断片の前記ポリペプチドへの特異的な結合の検出は、公知の方法が利用できるが、例えば、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法などが挙げられる。
【0077】
(10)本発明のポリペプチドの検出方法に用いるためのキット
本発明のポリペプチドの検出方法に用いるためのキットは、前記抗体またはその断片を含有することを1つの特徴とする。
【0078】
本発明のキットには、さらに、反応用緩衝液、標識二次抗体、発色試薬などを含有してもよい。
【0079】
(11)アトピー性皮膚炎の検出方法
前記のように、セラミダーゼを生産する微生物は、アトピー性皮膚炎の原因となる、もしくはその憎悪に関与すると考えられている。
【0080】
本発明のアトピー性皮膚炎の検出方法によれば、皮膚由来の試料についてセラミダーゼ活性を有するポリペプチドを検出すること、あるいは該ポリペプチドをコードする遺伝子を検出することにより、アトピー性皮膚炎を検出することができる。
【0081】
本発明のアトピー性皮膚炎の検出方法に使用される皮膚由来の試料としては、特に限定されるものではないが、例えば、被検者の皮膚の落屑、皮膚を綿棒やガーゼ等で拭ったもの、皮膚を洗浄して得られる洗浄液等が挙げられる。これらの試料の採取方法にも特に限定はなく、被検者の皮膚からの落屑をそのまま採取する方法、被検者の皮膚を綿棒やガーゼ等で拭う方法、被検者の皮膚に適当な大きさの円筒を密着させ、その中に生理食塩水やリン酸緩衝液のような適当な洗浄液を入れて皮膚面を洗浄することにより洗浄液を採取する方法などを利用することができる。
【0082】
これらの試料はそのまま前記ポリペプチドの検出または該ポリペプチドをコードする遺伝子の検出に用いることができる。さらに、該試料中の微生物を適当な培地で培養して得られる培養物を試料として検出を行なうことにより、検出感度を向上させることができる。微生物の培養に使用される培地は、皮膚由来の試料中の微生物が増殖でき、かつ、セラミダーゼが効率よく生産される培地であれば特に限定はない。例えば、炭素源および/または窒素源として、グリセロール、グルコース、スクロース、糖蜜、酵母エキス、ペプトン、コーンスティープリカー、肉エキス、脱脂大豆、硫安、硝酸アンモニウム等が含まれる培地が適当である。このほか、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、リン酸塩等の無機質または金属塩を加えてもよい。また、培地にスフィンゴミエリン、セラミド等の脂質、あるいはタウロデオキシコール酸塩等の界面活性剤を0.001〜1%の範囲で添加し、セラミダーゼの発現量を高めて検出感度を上げることができる。微生物の培養条件には特に限定はないが、25〜37℃で1〜7日培養することが好ましい。培養終了後、培養物をそのまま検出操作に使用してもよいが、ポリペプチドの検出には培養物を遠心分離して得られる培養液上清を試料に用いてもよい。
【0083】
本発明のアトピー性皮膚炎の検出方法は、上記のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを使用してセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を検出することにより実施することができ、また、上記のセラミダーゼ活性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片を使用してセラミダーゼ活性を有するポリペプチドを検出することにより実施することもできる。また、簡便にアトピー性皮膚炎の検出を行なうために、上記のセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を検出するためのキット、または上記のセラミダーゼ活性を有するポリペプチドを検出するためのキットを使用することができる。また、前記キットに加え、後述の試料を採取するための道具、例えば、綿棒、培養用培地などを、さらに含有したキットを使用することができる。
【0084】
本発明のアトピー性皮膚炎の検出方法において、オリゴヌクレオチドプローブを使用してセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を検出する場合には、例えば、被検者の皮膚由来の試料より公知方法により調製した核酸と、セラミダーゼ遺伝子の塩基配列を基に設計されたオリゴヌクレオチドプローブとを適切なハイブリダイゼーション条件下にハイブリダイズさせ、生じたハイブリッドを検出することにより実施することができる。例えば、皮膚由来の試料より調製した核酸をニトロセルロース膜などに固定して行なうドットブロットハイブリダイゼーション法などにより、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を検出することができる。また、試料を直接ニトロセルロース膜などに固定し、適切な溶解処理を行なって、試料中の核酸を露出させ、ハイブリダイゼーションを行なうことにより生じたハイブリッドを検出することができる。
【0085】
本発明のアトピー性皮膚炎の検出方法において、遺伝子増幅法によりセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の検出を行なう場合には、被検者の皮膚由来の試料、もしくは該試料より調製した核酸と、セラミダーゼ遺伝子の塩基配列をもとに設計されたプライマーとを含有する反応液を調製し、遺伝子増幅反応を行なう。遺伝子増幅反応としてPCR法を用いる場合には、前記(6)に記載の操作などによりDNAの増幅を行い、また、増幅されたDNAの検出を行えばよい。例えば、セラミダーゼ遺伝子の塩基配列をもとに作成された1対のプライマーと皮膚由来の試料と、さらにDNAポリメラーゼやdNTP等とを含有する反応液を調製し、プライマーの配列や増幅が期待される領域の鎖長に応じた適切な条件で増幅反応を実施する。反応終了後、反応液をアガロースゲル電気泳動等により分析し、目的の遺伝子に由来するDNA断片の増幅の有無を調べればよい。
【0086】
上記の方法により、皮膚由来の試料からセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子が検出されれば、当該試料が採取された部位の皮膚はアトピー性皮膚炎に罹患していると判断される。
【0087】
本発明のアトピー性皮膚炎の検出方法において、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドを検出する場合には、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片を使用し、被検者の皮膚由来の試料中に上記抗体またはその断片と結合するポリペプチドが存在するかどうかを調べる。このようなポリペプチドの検出は、公知の免疫学的実験手法、例えば、免疫拡散法、ラテックス凝集法、酵素免疫法等により行うことができる。検出感度、簡便さの点からは、酵素免疫法が最も実用的である。
【0088】
上記の方法により、皮膚由来の試料からセラミダーゼ活性を有するポリペプチドが検出されれば、当該試料が採取された部位の皮膚はアトピー性皮膚炎に罹患していると判断される。
【0089】
(12)アトピー性皮膚炎の検出用キット
前記アトピー性皮膚炎の検出をより簡便に行なうために、上記のセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を検出するためのキット、または上記のセラミダーゼ活性を有するポリペプチドの検出するためのキットに加え、さらに試料を採取するための道具、例えば、綿棒、培養用培地などを含有することができる。
【0090】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
実施例1 セラミダーゼ構造遺伝子のクローニング
(1)ゲノムDNAの抽出精製
セラミダーゼの生産菌であるシュードモナス・エルギノーザ AN−17(FERM P−15699)をPY培地(0.5%ポリペプトン、0.1%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.2)200mlに接種し、25℃で23時間培養した。培養終了後、得られた培養液を遠心分離して菌体を集め、10mlのTE緩衝液(10mM トリス−塩酸、1mM EDTA、pH8.0)に懸濁した後、さらに50mg/mlの卵白リゾチーム溶液0.2mlを加えて30℃で15分間反応させた。ついで、反応終了後に得られた溶液に2mlの10%SDSを加えて穏やかに撹拌し、溶液が粘性を持つようになってから即座に10mlのTE緩衝液飽和フェノールと1.5mlの5M NaClとを加えて室温で1時間緩やかに撹拌した。攪拌後に得られた溶液を2500rpmで10分間遠心分離した後、上層を回収した。得られた溶液に等量のクロロホルムを加えて10分間撹拌したのち、1500rpmで10分間遠心分離して回収した上層に、さらにもう一度等量のクロロホルムを加えて攪拌後、遠心分離して上層を回収した(以下、この一連の操作をフェノール−クロロホルム処理と記載する)。回収した溶液に等量のイソプロパノールをゆっくりと加えて界面に析出するDNAをパスツールピペットで巻きとり、10mlのTE緩衝液に溶解した。得られた溶液に20μlのRNase A(10mM トリス−塩酸、pH7.5、15mM NaClに10mg/mlとなるように溶解し、100℃で15分間加熱処理したもの)を加えて50℃で1時間保温した。さらに保温後に得られた溶液に10μlの20mg/mlプロテアーゼK溶液、200μlの5M NaCl、400μlの10% SDSを加えて37℃で1時間保温することにより、反応させた。反応後に得られた溶液を室温に戻し、フェノール−クロロホルム処理を行った。これを2回繰り返し、得られた水層に等量のイソプロパノールと1/10容量の3M 酢酸ナトリウムを加えて−20℃で1時間冷却した後、10000rpmで10分間遠心分離して得られた沈殿を70%エタノールでリンスしてTE緩衝液に溶解してゲノムDNA溶液とした。この操作により1.1mgのゲノムDNAが得られた。
【0092】
(2)セラミダーゼの部分アミノ酸配列の決定
シュードモナス・エルギノーザ AN−17(FERM P−15699)の生産するセラミダーゼをジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、第273 巻、第23号、第14368 〜14373 頁(1998)に記載の方法に従って精製した。得られたセラミダーゼ約5μgをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、電気泳動を行なった。次いでエレクトロブロッティング法によりゲル上のタンパク質をPVDF膜(Immobilon-P 、ミリポア社製)に転写した。この膜のセラミダーゼのバンドに対応する部分(約50pmol)を切り出し、0.2mgのリジルエンドペプチダーゼ(0.9ユニット)、8%アセトニトリルを含む20mM トリス−塩酸緩衝液100μl中で振とうしながら37℃、16時間保温することにより、酵素消化を行なった。この酵素消化液を逆相クロマトグラフィーに供し、ペプチド断片の精製を行なった。得られたペプチド断片をモデル477気相式ペプチドシークエンサー(アプライド・バイオシステム社製)を用いたエドマン分解法により分析することにより、セラミダーゼの内部部分アミノ酸配列C−89(配列表の配列番号:3) 、C−91(配列表の配列番号:4)、S−90(配列表の配列番号:5)、C−86(配列表の配列番号:6)、C−121(配列表の配列番号:7)を決定した。
【0093】
また、これとは別に上記のPVDF膜をリジルエンドペプチダーゼ処理することなくペプチドシークエンサーに供し、N末端アミノ酸配列N−Term(配列表の配列番号:8)を決定した。
【0094】
(3)セラミダーゼ遺伝子を含むDNA断片のPCR法による増幅
実施例1−(2)で決定したセラミダーゼのN末端アミノ酸配列、および内部部分アミノ酸配列より、配列表の配列番号:9〜11でそれぞれ表わされるプライマーをデザインし、DNA合成機で合成した。
【0095】
すなわち、配列番号:5で表わされるS−90に対応して、配列番号:9で表わされるセンスミックスプライマーS90−1および配列番号:10で表わされるセンスミックスプライマーS90−2を、配列番号:3で表わされるC−89に対応して、配列番号:11で表わされるアンチセンスミックスプライマーC89−c1、配列番号:12で表わされるアンチセンスミックスプライマーC89−c2および配列番号:13で表わされるセンスミックスプライマーC89−1を、配列番号:4 で表わされるC−91に対応し、配列番号:14で表わされるアンチセンスミックスプライマーC91−c1をそれぞれ合成した。
【0096】
これらのプライマーを用いてPCR反応を行なった。PCRはパーキン−エルマー・シータス・インスツルメント社製、ジーンアンプ・リエージェントキット(Gene Amp Reagent Kit)を用いて行なった。反応は94℃:0.5分、51℃:0.5分、72℃:1分を1サイクルとした反応サイクルを40サイクル行なった。
【0097】
実施例1−(1)で得られたゲノムDNAを鋳型とし、プライマーC89−1とプライマーC91−c1の組み合わせによるPCR反応では、約350bpに相当する特異的なバンドの増幅が検出された。S90−1とC89−c1、S90−1とC89−c2、S90−2とC89−c1、S90−2とC89−c2のプライマーの組み合わせでは特異的なバンドは増幅しなかった。
【0098】
上記の約350bpの増幅DNA断片をアガロースゲル電気泳動後のゲルより回収し、これをpGEM-T easy ベクター(プロメガ社製)に連結した組換えプラスミドを作製した。該プラスミドを鋳型とし、ジデオキシ法で上記の増幅DNA断片の塩基配列を決定した。その結果、得られた塩基配列中にセラミダーゼの部分アミノ酸配列C−89、C−86、C−121およびC−91のそれぞれをコードする塩基配列が見出され、この増幅DNA断片が目的のセラミダーゼをコードする遺伝子の一部であることが明らかとなった。
【0099】
(4)セラミダーゼ遺伝子を含むDNA断片の検出
実施例1−(3)で得られたPCR増幅DNA断片をプローブに用い、セラミダーゼ遺伝子を含むゲノムDNA断片のスクリーニングを行なった。
【0100】
まず、実施例1−(1)で調製したゲノムDNA5μgを、それぞれ制限酵素SphI、ApaI、KpnI、XhoI、SalI、HincII、HindIII 、EcoRV、EcoRI、PstI、SmaI、BamHI、NotIおよびSacII各100ユニットを用い、37℃で22時間消化した後、得られた制限酵素消化DNAを1% アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後、サザンブロット法により、ナイロン膜[ハイボンド−N+(Hybond-N+ )、アマシャム社製]にDNAを転写した。ハイブリダイゼーションのプローブとしては、実施例1−(3)で得たPCR増幅DNA断片0.1μgをDNAラベリングキット[レディー・トゥー・ゴー(ReadyTo Go)、ファルマシア社製]を用いて、同キットのプロトコールに従って32Pで標識したものを用いた。
【0101】
上記のナイロン膜を0.5Mチャーチ(Church)法リン酸緩衝液[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・USA、第81巻、第1991〜1995頁(1984)]pH7.0、7%SDS、1mM EDTAを含むハイブリダイゼーション溶液中、65℃で1時間以上プレハイブリダイゼーションを行なった後、上記の標識プローブを6fmol/mlとなるように加え、65℃で一晩ハイブリダイゼーションを行なった。次に65℃に加温しておいた洗浄液(組成:1% SDS、40mM リン酸ナトリウム緩衝液)中、65℃で15分間の洗浄を3回繰り返した。ナイロン膜より余分な水分を除いた後、これを富士フィルム社製イメージングプレート(富士フィルム社製)に20分間接触させて感光させた。感光後のイメージングプレートをBAS1000イメージングアナライザー(富士フィルム社製)で分析し、ナイロン膜上のプローブを検出した。その結果、SphI、ApaI、KpnI、XhoI、SalI、HincII、HindIII 、EcoRV、EcoRI、PstI、SmaI、BamHI、NotIおよびSacIIの各消化物でそれぞれ約7.1 kb 、約2.8kb、約12.6kb、約5.8kb、約1.8kb、約1.8kb、約13.7kb、約12.6kb、約9kb、約6kb、約3.5kb、約6.7kb、約11.8kb、約1.5kbの位置にハイブリダイズしたプローブに由来するシグナルが認められた。
【0102】
(5)セラミダーゼ遺伝子のクローニング
実施例1−(4)の結果に基づき、約2.8kbのApaI断片のクローニングを行なった。ApaI消化したゲノムDNA10mgを1%アガロースゲル電気泳動で分離し、約2.8kbのサイズに対応する位置のアガロースゲルを切り出した。ゲルからセファグラス・バンドプレップ・キット(Sephaglas BandPrep Kit、アマシャムファルマシア社製)によりDNA断片を抽出精製し、該DNA断片をpBluescript II SK (東洋紡社製) のApaIサイトに挿入した組換えプラスミドを作製した。前記プラスミドで大腸菌JM109を形質転換し、アンピシリン100μg/mlを含むL寒天培地(組成:1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1% NaCl、pH7.2)プレート上で一晩培養して出現したコロニーより300コロニーを選択し、同じ培地プレート上においたナイロン膜[ハイボンド−N (Hybond-N)、アマシャム社製]上に接種した。37℃で16時間培養した後、このナイロン膜をアルカリ変性溶液(組成:0.5M NaOH、1.5M NaCl)に浸したろ紙上で5分間(変性)、中和溶液(組成:0.5M トリス−塩酸(pH7.5)、3M NaCl)に浸したろ紙上で5分間(中和)処理した後、2×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)でリンスした。
【0103】
このナイロン膜について実施例1−(3)で得たPCR増幅DNA断片をプローブに用い、上記と同じ条件でハイブリダイゼーションを行なったところ、2個のコロニーに対してシグナルが得られた。このうちの一つのコロニーよりプラスミドを調製してpSCA59と命名し、該プラスミドの挿入DNA断片の塩基配列の決定を行なった。その結果、実施例1−(2)で得られたアミノ酸配列C−89、C−86、C−121およびC−91のそれぞれに対応する配列およびそれらの配列と同じフレームに停止コドンが見いだされたが、N末端アミノ酸配列N−Term及びS−90に対応する塩基配列は見いだされなかった。すなわちこのプラスミドはセラミダーゼ遺伝子の停止コドンを含む3’末端部分(C末端領域)を含むが、5’末端部分(N末端領域)を欠如していることが明らかとなった。
【0104】
ついで、セラミダーゼ遺伝子の全長をカバーするために、pSCA59では欠損していたN末端付近をコードするDNA断片をさらに上記と同様にしてサザンハイブリダイゼーション法によりスクリーニングした。プローブにはセラミダーゼ遺伝子の5’末端部分に近い配列を含む、約560bpのpSCA59のKpnI、SacII消化断片を用いた。アガロースゲル電気泳動によって単離した約560bpのKpnI、SacII断片を上記と同様の方法で32P標識した後、上記と同様の方法でサザンハイブリダイゼージョンを行なった。その結果、用いたプローブに対して、SphI消化物で約7.1kb、ApaI消化物で約2.8kb、XhoI消化物で約5.8kb、EcoRI消化物で約9kb、PstI消化物で約6kb、SmaI消化物で約3.5kb、BamHI消化物で約2.1kb、SacII消化物で約2.5kbの位置に、それぞれプローブがハイブリダイズすることが示された。
【0105】
以上の結果より約2.1kbのBamHI断片のクローニングを行なった。BamHI消化したゲノムDNA10mgを1%アガロースゲル電気泳動で分離し、約2.1kbのサイズに対応する位置のアガロースゲルを切り出し、ゲルからセファグラス・バンドプレップ・キットにより抽出精製したDNA断片をpGEM-3Zf(+) (プロメガ社製)のBamHIサイトに挿入した。このプラスミドで大腸菌JM109を形質転換して上記と同様の方法によりコロニーハイブリダイゼーションを行なった結果、9個の陽性コロニーを得た。このうちの一つからプラスミドを調製してこれをpGCB38と命名し、その挿入DNA断片の塩基配列の決定を行なった。まず、このプラスミドを制限酵素PstI、XbaIで消化し、さらに定法に従ってエキソヌクレアーゼIII (Exonuclease III 、ニッポンジーン社製)、及びマングビーン・ヌクレアーゼ(Mung Bean Nuclease、ニッポンジーン社製)を用いて種々の欠失変異体を作製した。ジデオキシ法によってこれらの変異体及びpGCB38の塩基配列を解析し、pGCB38に挿入されたセラミダーゼ遺伝子の塩基配列を決定した。その結果、セラミダーゼのN末端アミノ酸配列N−Term、およびS−90に対応する塩基配列がみいだされ、pGCB38はセラミダーゼ遺伝子のN末端部分をコードする部分を含むことが明らかとなった。
【0106】
プラスミドpSCA59、pGCB38の挿入DNA断片の制限酵素地図を図1に示す。この両プラスミドの塩基配列の解析結果より、セラミダーゼ遺伝子の全塩基配列及びセラミダーゼのアミノ酸配列が決定された。シュードモナス・エルギノーザ AN−17の生産するセラミダーゼをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)の塩基配列を配列表の配列番号:16に、また、このORFがコードするアミノ酸配列を配列表の配列番号:15にそれぞれ示す。また、実施例1−(2)で得られたセラミダーゼのN末端アミノ酸配列N−Term(配列表の配列番号:8)から明らかとなった、成熟型セラミダーゼをコードする塩基配列を配列表の配列番号:2に、この塩基配列がコードする成熟型セラミダーゼのアミノ酸配列を配列表の配列番号:1にそれぞれ示す。
【0107】
実施例2 セラミダーゼポリペプチドを発現するプラスミドの構築
セラミダーゼを発現するプラスミドを以下の操作にしたがって構築した。
実施例1−(5)で作成されたプラスミドpGCB38の欠失変異体、pGCB38−D13にはセラミダーゼをコードするORFの開始コドンの上流15塩基までが挿入されている。該プラスミドを制限酵素HindIII 及びBamHIで消化して生じる約1.3kbのDNA断片を1%アガロースゲル電気泳動により単離、精製してこれをDNA断片−1とした。一方、プラスミドpSCA59を制限酵素HindIII 及びBamHIで消化して生じる約1.6kbのDNA断片を1%アガロースゲル電気泳動により単離、精製してこれをDNA断片−2とした。次に、HindIII 消化したプラスミドpTV119N(宝酒造社製)と上記のDNA断片−1、DNA断片−2とを混合してライゲーションを行い、挿入断片がpTV119Nのlacプロモーターの下流にDNA断片−1、DNA断片−2の順に正しく挿入されている組換えプラスミドを選択し、これをpTCD11とした。さらに、pTCD11を制限酵素SmaIで消化することにより、500bpのSmaIフラグメントを欠失させたプラスミドpTCDS7を作成した。このプラスミドで形質転換された大腸菌JM109はEscherichia coli JM109/pTCDS7 と命名、表示され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−6728として寄託されている。
【0108】
実施例3 セラミダーゼの形質転換大腸菌における発現
実施例2で得られたEscherichia coli JM109/pTCDS7 を100μg/mlのアンピシリンを含む5mlのL培地に接種して37℃で一晩振とう培養し、その1mlを200mlの同培地に接種した。37℃で培養し、濁度(600nmの吸光度)がおよそ0.6に達した段階で、終濃度0.1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)を加え、さらに37℃で8時間振とう培養を行なった。培養終了後、培養液を遠心分離し、菌体を集め、0.5mM フッ化4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニル塩酸塩を含む10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)3mlに懸濁して超音波処理を行い菌体を破砕した。得られた破砕液を遠心分離して上清を採取し、これを粗酵素液とした。
【0109】
この粗酵素液のセラミダーゼ活性をジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、第273 巻、第14368 〜14373 頁(1998)に記載の方法に従い、C12−NBD−セラミドを基質とし測定した。すなわち、20μlの25mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.5)中に550pmolのC12−NBD−セラミド、2.5mM塩化カルシウム、0.25%(w/v)トリトンX−100(Triton X-100)および適当量の粗酵素液を溶解した反応液を調製し、37℃にて20分間インキュベートした。反応液を沸騰水浴で5分インキュベートして反応を停止し、反応液は更に減圧乾固した。乾固物をクロロホルム/メタノール=2/1(重量比)に溶解した後、シリカゲル薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/メタノール/25%アンモニア水=90/20/0.5(体積比)で展開した後、CS−9300クロマトスキャナー(島津製作所製)を用い、励起波長475nm、蛍光波長525nmでC12−NBD−セラミド、ならびにその分解物であるC12−NBD−脂肪酸の量を測定した。本酵素の1ユニットは、上記の条件下で1分間当たり1μmolのC12−NBD−脂肪酸が生成されるのに要する酵素量と定義した。その結果、本発明のセラミダーゼ遺伝子を有するEscherichia coli JM109/pTCDS7 は培養液1リットル当たりに約32ユニットのセラミダーゼを生産することが示された。
【0110】
実施例4 アトピー性皮膚炎の検出
セラミダーゼ遺伝子を検出するためのプライマーとして、上記のセラミダーゼ遺伝子の塩基配列より、上流プライマーであるプライマー382U、下流プライマーであるプライマー884Lを設計、合成した。配列表の配列番号17、18にそれぞれプライマー382U、プライマー884Lの塩基配列を示す。この2種のプライマーを使用し、配列表の配列番号2に示す塩基配列のセラミダーゼ遺伝子を鋳型としてPCRを行った場合には523bpのDNA断片が増幅される。
【0111】
24名のアトピー性皮膚炎患者、及び8名の健常者の皮膚より、以下の操作で皮膚由来の試料を採取した。被検者の皮膚を滅菌綿棒で拭い、この綿棒を200μlの滅菌蒸留水中に浸して激しく撹拌したのち液を回収した。なお、アトピー性皮膚炎患者については患部の皮膚を綿棒で拭い試料を採取した。回収された液を100℃、5分間加熱してPCR用の試料液とした。
【0112】
PCRはEXTaq(宝酒造社製)を使用して実施した。5μlの試料液、それぞれ0.2μMのプライマー382Uおよびプライマー884L、それぞれ2mMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、2.5UのEXTaqを含む100μlのPCR反応液をEXTaqに添付の反応緩衝液を使用して調製し、94℃:1分、60℃:1分、72℃:1分を1サイクルとした反応を40サイクル行った。この反応液の一部をアガロースゲル電気泳動に供し、泳動後のゲルをエチジウムブロマイド染色してDNA断片の増幅の有無を調べた。
【0113】
この結果、アトピー性皮膚炎患者24名中、15名の試料について、セラミダーゼ遺伝子の存在を示す約500bpのDNA断片の特異的な増幅が認められた。一方、健常人由来の8つの試料ではこのような断片の増幅は認められなかった。
【0114】
配列表フリーテキスト
配列番号:9
デザインされたオリゴヌクレオチドは、配列番号:5に示されたアミノ酸配列に基づく。
【0115】
配列番号:10
デザインされたオリゴヌクレオチドは、配列番号:5に示されたアミノ酸配列に基づく。
【0116】
配列番号:11
デザインされたオリゴヌクレオチドは、配列番号:3に示されたアミノ酸配列に基づく。
【0117】
配列番号:12
デザインされたオリゴヌクレオチドは、配列番号:3に示されたアミノ酸配列に基づく。
【0118】
配列番号:13
デザインされたオリゴヌクレオチドは、配列番号:3に示されたアミノ酸配列に基づく。
【0119】
配列番号:14
デザインされたオリゴヌクレオチドは、配列番号:4に示されたアミノ酸配列に基づく。
【0120】
【発明の効果】
本発明によりアルカリ性セラミダーゼのアミノ酸配列ならびにそれをコードする塩基配列が初めて提供され、それにより、該遺伝子を用いるセラミダーゼ活性を有するポリペプチドの遺伝子工学的な製造方法、該セラミダーゼの検出方法、さらには、アトピー性皮膚炎の検出方法が提供される。本発明のセラミダーゼ製造方法においては、セラミダーゼの発現を誘導するために培地にスフィンゴ脂質を添加する必要がなく、同時に誘導されるスフィンゴミエリナーゼなどの酵素や、培地に加えたスフィンゴ脂質あるいはその分解物の混在もなく、目的のセラミダーゼを容易に精製することが可能である。また、本発明のセラミダーゼ遺伝子に特異的にハイブリダイズするプローブおよびプライマー、本発明のセラミダーゼ活性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片が提供される。かかるプローブ、プライマー、ならびに抗体またはその断片により、簡便、かつ高感度にセラミダーゼを検出することができる。また、前記プローブ、プライマー、ならびに抗体またはその断片を用いることにより、アトピー性皮膚炎を簡便に検出することが可能になるという優れた効果を奏する。
【0121】
【配列表】
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【0122】
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【0123】
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【0124】
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【0125】
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【0126】
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【0127】
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【0128】
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【0129】
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【0130】
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【0131】
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【0132】
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【0133】
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【0134】
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【0135】
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【0136】
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【0137】
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【0138】
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【0139】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、プラスミドpSCA59およびpGCB38のそれぞれの挿入DNA断片の制限酵素地図を示す。

Claims (4)

  1. 配列表の配列番号17示された塩基配列からなるプライマー又は配列番号18に示された塩基配列からなるプライマー
  2. 求項記載のプライマーを使用する、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の検出方法。
  3. 求項記載のプライマーを含有してなる、セラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の検出に用いるためのキット。
  4. 請求項記載の方法によりセラミダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を検出する、アトピー性皮膚炎の検出方法。
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