JP3832802B2 - 燃料電池システムおよびその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素と酸素の化学反応により発電する燃料電池システムおよびその制御方法に関し、詳しくは、その発電量を増減させる際の過渡時における性能を向上させた燃料電池システムおよびその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、従来のエンジンに替えて走行用モータを搭載する各種の電気自動車が開発されている。この種の電気自動車の一つとして、例えばPEMFC(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)と略称される水素イオン交換膜型燃料電池(以下、PEM型燃料電池または燃料電池という。)を走行用モータの電源として搭載する燃料電池自動車の開発が急速に進められている。
【0003】
前記PEM型燃料電池は、発電単位であるセルを多数積層した構造のスタックとして構成されている。前記各セルは、水素供給路を有するアノード側セパレータと酸素供給路を有するカソード側セパレータとの間にMEA(Membrane Electrode Assembly)と略称される膜・電極接合体を挟み込んだ構造を有している。このMEAは、PEM(Proton Exchange Membrane)と略称される固体高分子材料の水素イオン交換膜の片面にアノード側電極触媒層およびガス拡散層が順次積層され、前記PEM(水素イオン交換膜)の他の片面にカソード側電極触媒層およびガス拡散層が順次積層されて構成されている。
【0004】
この種のPEM型燃料電池では、水素ガスが前記水素供給路をアノード入口側からアノード出口側へ向って流通し、酸素を含む空気が前記酸素供給路をカソード入口側からカソード出口側へ向って流通すると、各セルのアノード側から水素イオンが湿潤状態のMEAのPEM(水素イオン交換膜)を透過してカソード側へ移動することにより、各セルが1V程度の起電力を発生する。このような発電メカニズムを有するPEM型燃料電池においては、空気および水素ガスを連続的に供給して発電を継続させるため、例えば過給機により空気を圧送する空気供給系がカソード入口側に付設され、カソード出口側には例えば背圧制御弁を有する空気排出系が付設されている。また、アノード入口側には、イジェクタにより水素ガスを供給する水素ガス供給系が付設されている。
【0005】
前記のように燃料電池に空気供給系、空気排出系および水素ガス供給系が付設された燃料電池システムにおいては、過給機の回転速度を増減制御してカソード入口側への空気流量を増減することにより、発電量(発電電流または発電電力)が増減制御される。その際、燃料電池内の前記MEAの両側に作用する水素ガス圧と空気圧との極間差圧が大きくなると、MEAを構成する前記PEM(固体高分子材料からなる水素イオン交換膜)が破損する恐れがあるため、通常、前記極間差圧が許容値内となるように、アノード入口側の水素ガス圧およびカソード入口側の空気圧がそれぞれ制御される。すなわち、従来の燃料電池システムにおいては、カソード入口側への空気流量が目標空気流量となるように前記空気供給系の過給機の回転速度が目標値に制御されると共に、カソード入口側の空気圧が目標空気圧となるように前記空気排出系の背圧制御弁の弁開度が目標値に制御されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記過給機の回転速度が目標値に到達してカソード入口側への空気流量が目標空気流量となるまでの時間に較べ、前記背圧制御弁の弁開度が目標値に到達するまでの時間は各段に短い。それにも拘らず、従来の燃料電池システムにおいては、目標空気流量に対応した目標空気圧となるように背圧制御弁の弁開度を急激に目標値に制御している。例えば、図5に示すように、空気流量Qを所定の目標空気流量QTまで増大させる際、背圧制御弁開度γを破線で示すように急激に目標空気流量QTに対応する目標値に制御している。このため、空気流量Qが目標空気流量QTに到達するまでの過渡時においては、背圧制御弁が先に目標空気流入量QTに対応する目標値の弁開度まで過剰に開いてしまい、過給機によりカソード入口側へ圧送される空気の空気圧Pを背圧制御弁の下流側に逃してしまう。その結果、カソード入口側の空気圧Pは、一旦低下した後に目標空気圧PTとなり、その圧力上昇が遅れるという挙動を示す。なお、空気流量Qを所定の目標空気流量QTまで減少させる際には、空気流量Qが目標空気流量QTに到達するまでの過渡時において空気圧Pが一旦上昇した後に目標空気圧PTとなり、その圧力低下が遅れるという挙動を示す。
【0007】
このように従来の燃料電池システムでは、発電量の増減に応じてカソード入口側への空気流量を目標空気流量まで増減させる際の過渡時において、カソード入口側の空気圧が一旦低下または上昇するため、燃料電池内の極間差圧(MEAのPEMに印加されるアノード側とカソード側の圧力差)が増大するという問題がある。また、カソード入口側の空気圧が目標空気圧となるまでに時間的遅れがあり、応答性が悪いという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、カソード入口側への空気流量が目標空気流量に到達するまでの過渡時において、燃料電池内の極間差圧の上昇を防止でき、かつ、カソード入口側の空気圧が目標空気圧となるまでの時間的遅れを解消できる燃料電池システムおよびその制御方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決する手段として、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池のカソード入口側へ空気を圧送する過給機と、燃料電池のカソード出口側から排出される空気の背圧を制御可能な背圧制御弁と、前記過給機の回転速度を制御することにより前記カソード入口側への空気流量を燃料電池の目標発電量に応じた目標空気流量に制御する空気流量制御手段と、前記背圧制御弁の弁開度を制御することにより前記カソード入口側の空気圧を前記目標空気流量に応じた目標空気圧に制御する空気圧制御手段とを備えた燃料電池システムにおいて、前記目標発電量の変化に伴って前記空気流量が目標空気流量に向って漸次変化する過渡時は、前記空気圧が、逐次変化する空気流量に対応した前記目標空気圧になるように前記背圧制御弁の弁開度を逐次制御することにより前記空気圧を逐次目標空気圧に制御する過渡時空気圧制御手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る燃料電池システムでは、前記目標発電量の変化に伴って燃料電池のカソード入口側への空気流量が目標空気流量に向って漸次変化する過渡時において、前記流量センサにより逐次検出されるカソード入口側への空気流量の変化に対応して前記過渡時空気圧制御手段がカソード入口側の空気圧を逐次目標空気圧に制御する。このため、燃料電池内の極間差圧の上昇が未然に防止されると共に、カソード入口側の空気圧が目標空気圧となるまでの時間的遅れが解消される。
【0011】
本発明の燃料電池システムにおいて、前記過渡時空気圧制御手段は、カソード入口側への空気流量が目標空気流量に到達するまで作動を継続する。この場合、過渡時空気圧制御手段は、前記流量センサにより逐次検出される空気流量と、前記目標空気流量に応じた目標空気圧とに応じて、例えばマップ検索等の手法により、前記背圧制御弁の弁開度を逐次制御する。
【0012】
また、前記の課題を解決する手段として、本発明に係る燃料電池システムの制御方法は、燃料電池のカソード入口側へ圧送される空気の流量および圧力を目標空気流量および目標空気圧に制御することにより燃料電池の発電量を制御する燃料電池システムの制御方法であって、燃料電池の発電量の変化に伴い前記空気流量が目標空気流量に向って漸次変化する過渡時は、漸次変化する空気流量に対応して前記空気圧を逐次目標空気圧に制御することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る燃料電池システムおよびその制御方法の実施の形態を説明する。参照する図面において、図1は一実施形態として車両に搭載された燃料電池システムを含む車両の駆動系の構成図、図2は一実施形態に係る燃料電池システムの制御系の機能ブロック図、図3は一実施形態に係る燃料電池システムにおける目標空気流量と目標空気圧との関係を示す線図である。
【0014】
一実施形態に係る燃料電池システムを説明するに当り、まず、この燃料電池システムを搭載した車両の駆動系の構造を図1により説明する。この車両は、いわゆる燃料電池電気自動車であり、駆動輪1を回転駆動する走行用モータ(EVM)2の電源として、燃料電池(FC)3が搭載されている。この燃料電池(FC)3は、高圧分配器(DC/DC)4を介して駆動ユニット(PDU)5およびバッテリ6に給電するように回路構成されている。そして、この駆動ユニット5が少なくとも前記走行用モータ(EVM)2および後記する過給機(S/C)7Bの駆動モータ7Fを駆動するように回路構成されている。
【0015】
前記燃料電池(FC)3は、発電単位である多数のセルが積層された構造のPEM型燃料電池である。この燃料電池(FC)3には、カソード入口側に空気(酸素)を供給する空気供給系7と、カソード出口側から空気を排出する空気排出系8とが付設されている。また、この燃料電池(FC)3には、アノード入口側に水素ガスを供給する水素ガス供給系9が付設されている。
【0016】
前記燃料電池(FC)3の空気供給系7には、上流側から下流側へ向ってエアクリーナ(A/C)7A、過給機(S/C)7B、インタークーラ(H/E)7Cが配設されている。そして、この空気供給系7には、過給機(S/C)7Bの上流側において燃料電池(FC)3のカソード入口側への空気流量Qを検出する流量センサ7Dと、燃料電池(FC)3のカソード入口付近において空気圧Pを検出する圧力センサ7Eとが設けられている。
【0017】
前記エアクリーナ(A/C)7Aは、流入空気のフィルタ機能を有する限り、如何なる形式のものであってもよい。このエアクリーナ(A/C)7Aの上流側にはレゾネータ等の吸気消音器を配設してもよい。
【0018】
前記過給機(S/C)7Bは、0〜12000rpmの回転速度範囲を有し、回転速度に応じて空気流量Qを直線的に変化させることができる。この過給機(S/C)7Bは、前記駆動モータ7Fが前記駆動ユニット(PDU)5から供給される所定のディーティ比の駆動電流によって回転駆動されることにより、12000rpm/secの変化率で回転速度が可変に制御される。
【0019】
前記インタークーラ(H/E)7Cは、図示しない冷却液循環系、すなわち、前記走行用モータ(EVM)2、燃料電池(FC)3、高圧分配器(DC/DC)4、駆動ユニット(PDU)5および駆動モータ7Fを冷却する冷却液循環系との間で熱交換可能に構成されている。
【0020】
前記流量センサ7Dとしては、ベーン式、カルマン渦式、熱線式などの種々の形式のエアフローメータを使用することができる。また、前記圧力センサ7Eとしては、半導体圧力センサなどの適宜の形式のものを使用することができる。
【0021】
また、前記燃料電池(FC)3の空気排出系8には、燃料電池(FC)3のカソード入口側の空気圧Pを制御するための背圧制御弁8Aが介設されている。この背圧制御弁8Aは、CV(Capacity of Valve)値が約8.5であり、弁の開閉速度は8000deg/sec程度である。そして、この背圧制御弁8Aは、10ms毎の周期で弁開度が制御される。
【0022】
一方、燃料電池(FC)3の水素ガス供給系9には、上流側から下流側へ向かって水素タンク9A、圧力制御弁9B、イジェクタ9Cが配設されている。なお、発電に使用されずにアノード出口側から排出される水素ガスは、前記イジェクタ9Cに還流されるように構成されている。
【0023】
ここで、一実施形態に係る燃料電池システムは、少なくとも前記流量センサ7D、圧力センサ7Eおよび後記するアクセルセンサ10からそれぞれ検出信号を入力し、駆動ユニット(PDU)5、背圧制御弁8Aおよび圧力制御弁9Bにそれぞれ制御信号を出力する制御装置11を備えている。この制御装置11は、前記流量センサ7D、圧力センサ7E、アクセルセンサ10、背圧制御弁8A、圧力制御弁9B等との間の入出力インターフェースI/O、前記流量センサ7D、圧力センサ7E、アクセルセンサ10から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータの他、各種のデータやプログラムを記憶しているROM(Read Only Memory)、各種のデータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、各種の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)等をハードウェアとして備えている。
【0024】
前記制御装置11には、燃料電池システムを制御するソフトウェア構成として、前記過給機(S/C)7Bの回転速度を制御することにより燃料電池(FC)3のカソード入口側への空気流量Qを燃料電池(FC)3の目標発電量に応じた目標空気流量に制御する空気流量制御手段と、前記背圧制御弁8Aの弁開度を制御することにより前記カソード入口側の空気圧Pを前記目標空気流量に応じた目標空気圧に制御する空気圧制御手段とが構成されている。また、前記圧力制御弁9Bの弁開度を制御することにより前記アノード入口側の水素ガス圧を前記目標空気圧に応じた目標水素ガス圧に制御する水素ガス圧制御手段が構成されている。そして、特に、前記目標発電量の変化に伴って前記空気流量Qが目標空気流量に向って漸次変化する過渡時において、前記流量センサ7Dにより逐次検出される空気流量Qの変化に対応して前記背圧制御弁8Aの弁開度を逐次制御することにより前記空気圧Pを逐次目標空気圧に制御する過渡時空気圧制御手段が構成されている。
【0025】
前記空気流量制御手段、空気圧制御手段、水素ガス圧制御手段および過渡時空気圧制御手段の各機能を達成するため、前記制御装置11は、図2に示すような各機能ブロックを備えている。すなわち、空気流量制御手段の機能を達成するブロックとして、目標発電量設定部11A、目標空気流量設定部11B、空気流量フィードバック制御部11C、駆動モータ制御信号出力部11Dを備えている。また、空気圧制御手段の機能を達成するブロックとして、目標空気圧設定部11E、空気圧フィードバック制御部11F、背圧制御弁開度指示部11G、入力切換部11J、弁開度制御信号出力部11Kを備えている。そして、過渡時空気圧制御手段の機能を達成するブロックとして、前記目標空気圧設定部11E、入力切換部11J、弁開度制御信号出力部11Kと共に、背圧制御弁開度設定部11Hを備えている。なお、水素ガス圧制御手段の機能を達成するブロックとして、圧力制御弁開度設定部11Lおよび圧力制御弁開度制御信号出力部11Mを備えている。
【0026】
前記制御装置11の各機能ブロックについて説明すると、目標発電量設定部11Aには、アクセルセンサ10からのアクセル角度信号αが入力される。このアクセルセンサ10は、例えばポテンショメータからなり、燃料電池自動車の負荷変動に応じたアクセルペダル(図示省略)の踏み込み角度をアクセル角度αとして検出する。そして、このアクセルセンサ10が出力するアクセル角度αのアナログ信号は、デジタル信号に変換されて目標発電量設定部11Aに入力される。この目標発電量設定部11Aは、アクセル角度信号αに応じた目標発電量をマップ検索し、その目標発電量ITの信号を目標空気流量設定部11Bに出力する。
【0027】
目標空気流量設定部11Bは、前記目標発電量設定部11Aから入力した目標発電量ITの信号に基き、目標発電量ITを達成するのに必要な空気流量をマップ検索し、その目標空気流量QTの信号を空気流量フィードバック制御部11Cおよび目標空気圧設定部11Eに出力する。
【0028】
空気流量フィードバック制御部11Cには、前記目標空気流量設定部11Bからの目標空気流量QTの信号が入力されると共に、前記流量センサ7Dが出力する空気流量Qのアナログ信号がデジタル信号に変換されて入力される。この空気流量フィードバック制御部11Cは、前記目標空気流量QTに対する空気流量Qの偏差に対して、比例(Proportional)、積分(Integral)、微分(Differential)の各動作を与えることにより、その偏差を迅速にゼロに収束させるためのPID動作信号QCを駆動モータ制御信号出力部11Dに出力する。
【0029】
前記駆動モータ制御信号出力部11Dは、前記PID動作信号QCに基いて駆動モータ7Fに流す電流をパルス幅変調により制御するためのPWM(Pulse Width Modulation)制御信号QPを生成し、これを駆動ユニット(PDU)5に出力する。
【0030】
前記駆動ユニット(PDU)5は、駆動モータ制御信号出力部11DからのPWM制御信号QPに基いて図示しないパワーFET(Field Effect Transistor)のブリッジ回路をスイッチング駆動することにより、駆動モータ7Fを所定の極性およびデューティ比の駆動電流によって回転駆動する。すなわち、過給機(S/C)7Bが目標空気流量QTを達成するように駆動モータ7Fを回転駆動する。なお、詳細な説明は省略するが、前記駆動ユニット(PDU)5は、アクセルセンサ10のアクセル角度αの信号に基き、走行用モータ(EVM)2を所定のディーティ比の駆動電流によって回転駆動するように構成されている。
【0031】
目標空気圧設定部11Eは、前記目標空気流量設定部11Bからの目標空気流量QTの信号に基き、図3に示す特性のマップを参照して、目標空気流量QTを達成するのに必要な空気圧を前記背圧制御弁8AのCV値の範囲でマップ検索する。そして、検索した目標空気圧PTの信号を空気圧フィードバック制御部11F、背圧制御弁開度設定部11Hおよび圧力制御弁開度設定部11Lに出力する。
【0032】
空気圧フィードバック制御部11Fには、前記目標空気圧設定部11Eからの目標空気圧PTの信号が入力されると共に、前記圧力センサ7Eが出力する空気圧Pのアナログ信号がデジタル信号に変換されて入力される。この空気圧フィードバック制御部11Fは、前記目標空気圧PTに対する空気圧Pの偏差に対して比例(P)、積分(I)、微分(D)の各動作を与えることにより、その偏差を迅速にゼロに収束させるためのPID動作信号PCを背圧制御弁開度指示部11Gに出力する。
【0033】
背圧制御弁開度指示部11Gは、前記PID動作信号PCに基き、背圧制御弁8AのCV値の範囲内で目標空気圧PTを達成するのに必要な背圧制御弁8Aの弁開度をマップ検索し、その弁開度指示信号βを入力切換部11Jに出力する。
【0034】
前記背圧制御弁開度設定部11Hには、目標空気圧設定部11Eからの目標空気圧PTの信号が入力されると共に、前記流量センサ7Dからの空気流量Qの信号が10ms周期で入力される。この背圧制御弁開度設定部11Hは、目標空気圧PTの信号および目標空気流量QTに向って漸次変化する空気流量Qの信号に基き、背圧制御弁8AのCV値の範囲内で目標空気圧PTを逐次達成するのに必要な背圧制御弁8Aの弁開度を10ms周期でマップ検索し、その弁開度設定信号γを10ms周期で更新しつつ入力切換部11Jに出力する。
【0035】
入力切換部11Jには、前記背圧制御弁開度指示部11Gからの弁開度指示信号βおよび前記背圧制御弁開度設定部11Hからの弁開度設定信号γが入力されると共に、前記流量センサ7Dからの空気流量Qの信号および前記目標空気流量設定部11Bからの目標空気流量QTの信号が入力される。この入力切換部11Jは、空気流量Qと目標空気流量QTとの比較により、空気流量Qが目標空気流量QTに到達するまでの過渡時には、背圧制御弁開度設定部11Hからの弁開度設定信号γを弁開度制御信号出力部11Kに出力し、空気流量Qが目標空気流量QTに到達した以降の定常状態では、背圧制御弁開度指示部11Gからの弁開度指示信号βを弁開度制御信号出力部11Kに出力する。
【0036】
弁開度制御信号出力部11Kは、前記背圧制御弁開度設定部11Hからの弁開度設定信号γまたは背圧制御弁開度指示部11Gからの弁開度指示信号βに基き、前記背圧制御弁8Aの弁開度をPWM制御するための所定の極性およびデューティ比の駆動信号D1を背圧制御弁8Aに出力する。
【0037】
圧力制御弁開度設定部11Lは、前記目標空気圧設定部11Eからの目標空気圧PTに基き、これより若干高い圧力の目標水素ガス圧をマップ検索し、さらに、この目標水素ガス圧を達成するのに必要な圧力制御弁9Bの弁開度をマップ検索し、その弁開度設定信号δを圧力制御弁開度制御信号出力部11Mに出力する。
【0038】
圧力制御弁開度制御信号出力部11Mは、前記弁開度設定信号δに基き、前記圧力制御弁9Bの弁開度をPWM制御するための所定の極性およびデューティ比の駆動信号D2を圧力制御弁9Bに出力する。
【0039】
以上のように構成された一実施形態の燃料電池システムにおいては、例えば図示しないアクセルペダルが踏み込まれて燃料電池(FC)3の発電量の増大が要求されると、図1および図2に示すアクセルセンサ10がアクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセル開度信号αを制御装置11に出力する。そして、この制御装置11は、図2に示す機能ブロック図および図4に示すフローチャートに示すように、燃料電池(FC)3の目標発電量の変化に伴ってカソード入口側へ圧送される空気の流量および圧力を目標空気流量QTおよび目標空気圧PTに制御することにより、燃料電池(FC)3の発電量を目標発電量に制御する。その際、燃料電池(FC)3のカソード入口側への空気流量Qが目標空気流量QTに向って漸次変化する過渡時には、漸次変化する空気流量Qに対応してカソード入口側の空気圧Pを逐次目標空気圧PTに制御する。
【0040】
制御装置11においては、アクセルセンサ10からアクセル開度信号αを入力した目標発電量設定部11Aがアクセル角度信号αに応じた目標発電量ITをマップ検索し(S1)、その信号を目標空気流量設定部11Bに出力する。続いて、目標空気流量設定部11Bが目標発電量ITを達成するのに必要な目標空気流量QTをマップ検索し(S2)、その目標空気流量QTの信号を空気流量フィードバック制御部11Cおよび目標空気圧設定部11Eに出力する。また、流量センサ7Dが燃料電池(FC)3のカソード入口側への空気流量Qを検出し(S3)、その信号を空気流量フィードバック制御部11C、背圧制御弁開度設定部11H、入力切換部11Jにそれぞれ出力する。
【0041】
次に、検出された実際の空気流量Qが目標空気流量QTに収束するように、空気流量フィードバック制御部11C、駆動モータ制御信号出力部11D、駆動ユニット(PDU)5が過給機(S/C)7Bの回転数をフィードバック制御する(S4)。すなわち、目標空気流量QTの信号および流量センサ7Dからの空気流量Qの信号を入力した空気流量フィードバック制御部11Cは、目標空気流入量QTと検出された空気流入量Qとの偏差を迅速にゼロに収束させるためのPID動作信号QCを駆動モータ制御信号出力部11Dに出力する。PID動作信号QCを入力した駆動モータ制御信号出力部11Dは、そのPID動作信号QCに基いてPWM制御信号QPを生成し、これを駆動ユニット(PDU)5に出力する。そして、この駆動ユニット(PDU)5がPWM制御信号QPに基いて駆動モータ7Fを所定の極性およびデューティ比の駆動電流によって回転駆動することにより、過給機(S/C)7Bの回転速度が漸次増大し、燃料電池(FC)3のカソード入口側へ流入する空気流入量Qは、図5に示すように、目標空気流入量QTに向って漸次増大する。
【0042】
一方、目標空気流量設定部11Bから目標空気流量QTの信号を入力した目標空気圧設定部11Eは、前記背圧制御弁8AのCV値の範囲で目標空気流量QTを達成するのに必要な目標空気圧PTの信号を空気圧フィードバック制御部11F、背圧制御弁開度設定部11Hおよび圧力制御弁開度設定部11Lに出力する。
【0043】
前記目標空気圧PTの信号を入力した圧力制御弁開度設定部11Lは、目標空気圧PTより若干高い適正圧力の目標水素ガス圧を設定し、この目標水素ガス圧を達成するのに必要な圧力制御弁9Bの弁開度設定信号δを圧力制御弁開度制御信号出力部11Mに出力する。そして、圧力制御弁開度制御信号出力部11Mが弁開度設定信号δに応じて前記圧力制御弁9Bの弁開度をPWM制御するための所定の極性およびデューティ比の駆動信号D2を圧力制御弁9Bに出力する。こうして燃料電池(FC)3のアノード入口側に供給される水素ガスの圧力は、前記目標空気圧PTより若干高い適正圧力に調整される。
【0044】
ここで、図4のフローチャートにおいては、アクセル開度信号αの時間的変化Δαまたは目標空気流量QTの時間的変化ΔQTに基き、目標発電量ITが変更されたか否かが判定される(S5)。このステップS5の判定結果がYESの場合、続いて、空気流量Qが目標空気流量QTに収束したか否かが判定される(S6)。
【0045】
前記ステップS6の判定結果がNOであって、燃料電池(FC)3のカソード入口側への空気流量Qが目標空気流量QTに向って漸次変化する過渡時には、背圧制御弁開度設定部11H、入力切換部11J、弁開度制御信号出力部11Kが、漸次変化する空気流量Qに対応してカソード入口側の空気圧Pを逐次目標空気圧PTに制御する。すなわち、前記目標空気圧PTの信号および流量センサ7Dからの空気流量Qの信号を入力した背圧制御弁開度設定部11Hは、図5に示すように目標空気流量QTに向って漸次増大する空気流量Qに対応して目標空気圧PTを逐次達成するのに必要な背圧制御弁8Aの弁開度をマップ検索し(S7)、この弁開度設定信号γを10ms周期で更新しつつ入力切換部11Jに出力する。続いて、入力切換部11Jが背圧制御弁開度設定部11Hから入力した弁開度設定信号γを弁開度制御信号出力部11Kに出力し、弁開度制御信号出力部11Kが背圧制御弁8Aの弁開度を前記弁開度設定信号γに応じてPWM制御するための所定の極性およびデューティ比の駆動信号D1を背圧制御弁8Aに出力することにより、背圧制御弁8Aの弁開度をγに制御する(S8)。この場合、前記弁開度設定信号γの値は、空気流入量Qが上昇し始める初期段階においては、図5に示すように一旦低下し、その後空気流入量Qの上昇に従って増大するような特性に設定されている。このため、燃料電池(FC)3のカソード入口側の空気圧Pは、破線で示す従来例のように一旦低下することがなく、目標空気圧PTに向って漸次増大する。
【0046】
一方、図4のフローチャートにおいて、ステップS5の判定結果がNOの場合、または、ステップS6の判定結果がYESの場合であって、流量センサ7Dで検出された実際の空気流量Qが目標空気流量QTに到達した以降においては、圧力センサ7Eで検出された実際の空気圧Pが目標空気圧PTに収束するように、空気圧フィードバック制御部11F、背圧制御弁開度指示部11G、入力切換部11J、弁開度制御信号出力部11Kが背圧制御弁8Aの弁開度をβにフィードバック制御する。すなわち、目標空気圧PTの信号および圧力センサ7Eからの空気圧Pの信号を入力した空気圧フィードバック制御部11Fは、目標空気圧PTと検出された空気圧Pとの偏差を迅速にゼロに収束させるためのPID動作信号PCを背圧制御弁開度指示部11Gに出力する。そして、PID動作信号PCを入力した背圧制御弁開度指示部11Gは、そのPID動作信号PCに基き、目標空気流入圧PTを達成するのに必要な背圧制御弁8Aの弁開度をマップ検索し(S9)、その弁開度指示信号βを入力切換部11Jに出力する。続いて、入力切換部11Jが背圧制御弁開度指示部11Gから入力した弁開度設定信号βを弁開度制御信号出力部11Kに出力し、弁開度制御信号出力部11Kが背圧制御弁8Aの弁開度を前記弁開度設定信号βに応じてPWM制御するための所定の極性およびデューティ比の駆動信号D1を背圧制御弁8Aに出力することにより、背圧制御弁8Aの弁開度をβに制御する(S10)。
【0047】
すなわち、一実施形態の燃料電池システムによれば、燃料電池(FC)3のカソード入口側への空気流量Qが目標空気流量QTに向って漸次変化する過渡時において、流量センサ7Dにより逐次検出されるカソード入口側への空気流量Qの変化に対応して過渡時空気圧制御手段がカソード入口側の空気圧Pを逐次目標空気圧PTに制御する。従って、燃料電池(FC)3内の極間差圧の上昇を未然に防止することができ、燃料電池(FC)3のMEAを構成するPEM(水素イオン交換膜)の破損を確実に防止することができる。しかも、カソード入口側の空気圧Pが目標空気圧PTとなるまでの時間的遅れを解消でき、燃料電池(FC)3の発電量の増減に対する応答性を向上させることができる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る燃料電池システムによれば、前記目標発電量の変化に伴って燃料電池のカソード入口側への空気流量が目標空気流量に向って漸次変化する過渡状態において、流量センサにより逐次検出されるカソード入口側への空気流量の変化に対応して過渡時空気圧制御手段がカソード入口側の空気圧を逐次目標空気圧に制御する。従って、燃料電池内の極間差圧の上昇を未然に防止することができ、燃料電池のMEAを構成するPEM(水素イオン交換膜)の破損を確実に防止することができる。しかも、カソード入口側の空気圧が目標空気圧となるまでの時間的遅れを解消でき、燃料電池の発電量の増減に対する応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態として車両に搭載された燃料電池システムを含む車両駆動系の構成図である。
【図2】一実施形態に係る燃料電池システムの制御系の機能ブロック図である。
【図3】一実施形態に係る燃料電池システムにおける目標空気流量と目標空気圧との関係を示す線図である。
【図4】一実施形態に係る燃料電池システムの作動手順を示すフローチャートである。
【図5】一実施形態に係る燃料電池システムにおける過渡時の制御特性を示す線図である。
【符号の説明】
2 :走行用モータ(EVM)
3 :燃料電池(FC)
5 :駆動ユニット(PDU)
7 :空気供給系
7B:過給機(S/C)
7D:流量センサ
7E:圧力センサ
7F:駆動モータ
8 :空気排出系
8A:背圧制御弁
9 :水素ガス供給系
9B:圧力制御弁
10 :アクセルセンサ
11 :制御装置
11A:目標発電量設定部
11B:目標空気流入量設定部
11C:空気流入量フィードバック制御部
11D:駆動モータ制御信号出力部
11E:目標空気流入圧設定部
11F:空気流入圧フィードバック制御部
11G:背圧制御弁開度指示部
11H:背圧制御弁開度設定部
11J:入力切換部
11K:弁開度制御信号出力部
11L:圧力制御弁開度設定部
11M:圧力制御弁開度制御信号出力部
Claims (6)
- 燃料電池と、燃料電池のカソード入口側へ空気を圧送する過給機と、燃料電池のカソード出口側から排出される空気の背圧を制御可能な背圧制御弁と、前記過給機の回転速度を制御することにより前記カソード入口側への空気流量を燃料電池の目標発電量に応じた目標空気流量に制御する空気流量制御手段と、前記背圧制御弁の弁開度を制御することにより前記カソード入口側の空気圧を前記目標空気流量に応じた目標空気圧に制御する空気圧制御手段と
を備えた燃料電池システムにおいて、
前記目標発電量の変化に伴って前記空気流量が前記過給機の回転速度の増減により目標空気流量に向って漸次変化する過渡時は、
前記空気圧が、逐次変化する空気流量に対応した前記目標空気圧になるように前記背圧制御弁の弁開度を制御する過渡時空気圧制御手段を設けたこと
を特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1に記載された燃料電池システムであって、
前記過渡時空気圧制御手段は、前記流量センサにより逐次検出される空気流量および前記目標空気圧に応じて前記背圧制御弁の弁開度を逐次制御すること
を特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1または請求項2に記載された燃料電池システムであって、
前記過渡時空気圧制御手段は、前記空気流量が前記目標空気流量に到達するまで作動を継続すること
を特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載された燃料電池システムであって、
前記制御手段は、
前記目標流量及び前記目標空気圧が変化する過渡時において、前記目標空気圧が増加する際は、空気流量が増加する初期段階に一旦前記背圧弁の弁開度を低下すること
を特徴とする燃料電池システム。 - 燃料電池のカソード入口側へ過給機により圧送される空気の流量および圧力を目標空気流量および目標空気圧に制御することにより燃料電池の発電量を制御する燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池が備える制御手段は、
燃料電池の発電量の変化に伴って前記空気流量が前記過給機の回転速度の増減により前記目標空気流量に向って漸次変化する過渡時に、漸次変化する空気流量に対応して前記燃料電池の下流側に設けられた背圧弁の弁開度を増減して前記空気圧を逐次目標空気圧に制御すること
を特徴とする燃料電池システムの制御方法。 - 請求項5に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記制御手段は、
前記目標流量及び前記目標空気圧が変化する過渡時において、前記目標空気圧が増加する際は、空気流量が増加する初期段階に一旦前記背圧弁の弁開度を低下すること
を特徴とする燃料電池システムの制御方法。
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