JP3846064B2 - 方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として電力用変圧器の鉄心材料としての用途に供して好適な方向性電磁鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板の製造に際しては、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して最終仕上焼鈍中にゴス方位({110}<001>)の二次再結晶粒を生じさせることが一般的な方法として利用されている。
例えば、代表的な技術として、特公昭40−15644 号公報にはAlN, MnSを使用する方法が、また特公昭51−13469 号公報にはMnS, MnSe を使用する方法がそれぞれ開示され、いずれも工業的に実用化されている。
これらとは別に、CuSeとBNを添加する技術が特公昭58−42244 号公報に、またTi,Zr,V等の窒化物を使用する方法が特公昭46−40855 号公報に提案されるなど、その他にも数多くの技術が知られている。
【0003】
これらのインヒビターを用いる方法は、安定して二次再結晶粒を発達させるには有用な方法ではあるが、析出物を微細に分散させる必要があるので、熱延前のスラブ加熱温度を1300℃以上の高温とする必要がある。
しかしながら、スラブの高温加熱は、設備コストが嵩むことの他、熱延時に生成するスケール量も増大することから、歩留りが低下するだけでなく、設備のメンテナンスが煩雑になるなど問題も多くなる。
【0004】
もう一つのインヒビターを使用する技術の問題点は、最終仕上焼鈍後にこれらの成分が残存すると磁気特性の劣化を招くという点である。そのためインヒビター成分である、Al,B,SeおよびS等を鋼中から除去する目的で、二次再結晶完了に引き続いて1100℃以上の水素雰囲気中で数時間にわたる純化焼鈍が必要となる。
しかしながら、このような高温純化焼鈍のために、鋼板の機械的強度が低下してコイルの下部が座屈し、製品の歩留りが著しく低下するという問題がある。
そこで、上記のようなインヒビターを使用しない技術がこうした問題の解決手段となる。
【0005】
インヒビターを使用しないで方向性電磁鋼板を製造する方法としては、例えば特開昭64−55339 号、特開平2−57635 号、特開平7−76732 号および特開平7−197126号各公報に開示の技術が知られている。
これらの技術に共通していることは、表面エネルギーを駆動力として{110}面を優先的に成長させることを意図していることである。表面エネルギー差を有効に利用するためには、表面の寄与を大きくするために板厚を薄くすることが必然的に要求され、例えば特開昭64−55339 号公報に開示の技術では板厚が0.2 mm以下、また特開平2−57635 号公報に開示の技術では板厚が0.15mm以下に制限されている。
この点、特開平7−76732 号公報に開示の技術では板厚は特に制限されていないが、実施例1によると、板厚が0.30mmの場合には磁束密度はB8 で 1.700T以下と方位集積度は極めて悪い。また、実施例中で良好な磁束密度が得られる板厚は0.10mmに限られている。
同様に、特開平7−197126号公報に開示の技術でも板厚は制限されていないが、この技術は50〜75%の三次冷間圧延を施す技術であるので、板厚は必然的に薄くなり、実施例では0.10mm厚である。
現在使用されている方向性電磁鋼板の板厚は0.20mm以上がほとんどであるので、通常の製品を上記のような表面エネルギーを利用する方法で得ることは困難である。
【0006】
さらに表面エネルギーを利用するためには、表面酸化物の生成を抑制した状態で高温の最終仕上焼鈍を行わなければならない。例えば、特開昭64−55339 号公報に開示の技術では、1180℃以上の温度で、しかも焼鈍雰囲気として、真空または不活性ガス、あるいは水素ガスまたは水素ガスと窒素ガスの混合ガスを使用することが記載されている。
また、特開平2−57635 号公報に開示の技術では、950 〜1100℃の温度で、不活性ガス雰囲気あるいは水素ガスまたは水素ガスと不活性ガスの混合雰囲気で、しかもこれらを減圧することが推奨されている。
さらに、特開平7−197126号公報に開示の技術では、1000〜1300℃の温度で酸素分圧が0.5 Pa以下の非酸化性雰囲気中または真空中で最終仕上焼鈍を行うことが記載されている。
【0007】
このように、表面エネルギーを利用して良好な磁気特性を得ようとすると、最終仕上焼鈍の雰囲気は不活性ガスや水素が必要とされ、また推奨される条件として真空とすることが要求されるけれども、高温と真空の両立は設備的には極めて難しく、またコスト高ともなる。
【0008】
さらに、表面エネルギーを利用した場合には、原理的には{110}面の選択のみが可能であるにすぎず、圧延方向に<001>方向が揃ったゴス粒の成長が選択されるわけではない。
方向性電磁鋼板は、圧延方向に磁化容易軸<001>を揃えてこそ磁気特性が向上するので、{110}面の選択のみでは原理的に良好な磁気特性は得られない。そのため、表面エネルギーを利用する方法で良好な磁気特性を得ることができる圧延条件や焼鈍条件は極めて限られたものとなり、その結果、得られる磁気特性は不安定とならざるを得ない
【0009】
またさらに、表面エネルギーを利用する方法では、表面酸化層の形成を抑制して最終仕上焼鈍を行わねばならず、たとえばMgO のような焼鈍分離剤を塗布焼鈍することができないので、最終仕上焼鈍後に通常の方向性電磁鋼板と同様な酸化物被膜を形成することはできない。例えば、フォルステライト被膜は、焼鈍分離剤としてMgO を主成分として塗布した時に形成される被膜であるが、この被膜は鋼板表面に張力を与えるだけでなく、フォルステライト被膜の上にさらに塗布焼き付けるリン酸塩を主体とする絶縁張力コーティングの密着性を確保する機能を担っている。従って、フォルステライト被膜の無い場合には鉄損は大幅に劣化する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、インヒビターを使用しない場合であっても、鋼板の板厚が制限されず、また二次再結晶方位の集積が劣化することもなく、さらには表面酸化被膜を積極的に形成して鉄損を効果的に改善することができる方向性電磁鋼板を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以下、この発明の解明経緯について説明する。
さて、発明者らは、以前、ゴス方位粒が二次再結晶する機構について鋭意研究を重ねた結果、一次再結晶組織における方位差角が20〜45°である粒界が重要な役割を果たしていることを発見し、Acta Material 45巻(1997)85頁に報告した。
図1は、方向性電磁鋼板の一次再結晶組織における方位差角が20〜45°である粒界の各方位粒に対する存在頻度(%)であるが、ゴス方位が最も高い頻度を持つ。そして、方位差角が20〜45°の粒界は、C. G. Dunnらによる実験データ(AIME Transaction 188巻(1949)368 頁)によれば、高エネルギー粒界である。この高エネルギー粒界は粒界内の自由空間が大きく乱雑な構造をしている。粒界拡散は粒界を通じて原子が移動する過程であるので、粒界中の自由空間の大きい、高エネルギー粒界の方が粒界拡散は速い。
二次再結晶は、インヒビターと呼ばれる析出物の拡散律速による成長に伴って発現することが知られている。高エネルギー粒界上の析出物は、仕上焼鈍中に優先的に粗大化が進行するので、優先的にピン止めがはずれて、粒界移動を開始しゴス粒が成長する機構を示した。
【0012】
発明者らは、この研究をさらに発展させて、ゴス方位粒の二次再結晶の本質的要因は、一次再結晶組織中の高エネルギー粒界の分布状態にあり、インヒビターの役割は、高エネルギー粒界と他の粒界の移動速度差を生じさせることにあることを見い出した。
それ故、この理論に従えば、インヒビターを用いなくとも、粒界の移動速度差を生じさせることができれば、二次再結晶させることが可能となる。
【0013】
さて、鋼中に存在する不純物元素は、粒界とくに高エネルギー粒界に偏析し易いため、不純物元素を多く含む場合には、高エネルギー粒界と他の粒界の移動速度に差がなくなっているものと考えられる。
この点、素材の高純度化によって、上記したような不純物元素の影響を排除することができれば、高エネルギー粒界の構造に依存する本来的な移動速度差が顕在化して、ゴス方位粒の二次再結晶が可能になるものと考えられる。
【0014】
発明者らは、上記の考えに立脚して鋭意研究を進めた結果、インヒビター成分を含まない成分系において、素材の高純度化と微量窒素の働きによって、二次再結晶が進行することを新たに知見し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至ったのである。
この技術は、結晶粒界における析出物や不純物を排除する点で従来の二次再結晶手法と全く逆の思想であり、また表面エネルギーを利用する技術とも異なるので、仮に鋼板表面に酸化物が存在していても良好に二次再結晶させることができるのである。
【0015】
すなわち、本発明は、Si:1.0 〜8.0 wt%および Mn : 0.92wt %以下を含み、残部は Fe および不可避的不純物の組成になり、鋼板表面にフォルステライト (Mg2SiO4)を主体とした酸化物被膜を有し、かつ該酸化物被膜を含む鋼板全体におけるAl,B,SeおよびSの含有量がそれぞれ20 ppm以下であることを特徴とする方向性電磁鋼板である。
また、本発明は、鋼板がさらに、 Ni : 0.005 〜 1.50wt %を含有する組成になることを特徴とする方向性電磁鋼板である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の成功を導くに至った実験結果について説明する。
さて、発明者らは、最終仕上焼鈍後に鋼板に残存する微量成分の影響について検討を進めた。
成分としては、Cを0.07wt%、Siを3.3 wt%、Mnを0.06wt%に固定して、種々のインヒビター成分を含むスラブを用い、1400℃で30分間加熱したのち、熱間圧延により2.3 mm厚の熱延板とした。ついで、1100℃, 60秒間の熱延板焼鈍後、冷間圧延を行って0.35mmの最終板厚に仕上げた。ついで、水素:50%、窒素:50%で、露点:60℃の雰囲気中で 850℃で3分間の脱炭焼鈍を施したのち、焼鈍分離剤として MgOを10g/m2 の割合で塗布してから、水素雰囲気中において1200℃まで15℃/hの速度で昇温する最終仕上焼鈍を施して、方向性電磁鋼板を製造した。
【0017】
かくして得られたフォルステライト被膜付き電磁鋼板全体におけるAl,B,Se,Sの含有量と磁気特性の関係について調査した。
なお、フォルステライト被膜を除去した地鉄中においては、各成分とも5ppm 以下に低減されていたが、フォルステライト被膜付き鋼板全体の分析値は素材に含有されるインヒビター成分の種類や量によって変化する。そこで、各元素の影響を独立に調査するため、各インヒビターは単独で添加した。
磁束密度の同じ製品について、各成分の分析値と鉄損値との関係を図2にまとめて示す。
なお、同図においては、表示している成分以外は全て5ppm 以下まで低減しており、従って同図では各成分の影響が単独で示されている。
【0018】
図2から明らかなように、Al,B,SeおよびSいずれについても、その含有量が 20ppmを超えると鉄損が劣化しはじめ、特に 50ppmを超えると鉄損は著しく劣化した。
この調査結果は、鋼中から不純物を除去したとしても、酸化被膜中にAlやB,Se,S等が残存すると鉄損が著しく劣化するということを如実に示している。
とはいえ、素材としてインヒビター成分を用いない製造方法を用いれば、酸化被膜中におけるAl,B,Se,S量を効果的に低減することができ、特にかかる元素の含有量を各々 20ppm以下に低減してやれば、良好な鉄損を得られることが新たに知見されたのである。
【0019】
一般に、AlN, MnSe, MnSなどのインヒビターを使用する従来の技術では、フォルステライト被膜中にAl,B,Se,Sが残留するが、被膜中に残留したSe,S等についてはこれらを除去する目的で、例えば特開昭58−144429号公報では最終仕上焼鈍後に酸洗を行う技術が開示されている。
しかしながら、酸洗は鋼板表面を荒すほか、フォルステライト被膜を必然的に浸食するため、密着性が低下し、それに伴って鉄損は著しく劣化する。また酸洗では、表面から浸食されるため、地鉄の被膜界面付近に存在する不純物の除去は実質的に不可能である。
【0020】
実際、特開昭58−144429号公報による技術では、強酸洗を行った場合でも、SやSeの量は 20ppm以下まで低滅されていない。
それ故、フォルステライト被膜中においてAl,B,Se,Sを 20ppm以下に低滅するためには、インヒビターを用いない高純度材を用いて二次再結晶粒を発現させる製造方法がはるかに優れている。
【0021】
上記の実験結果は、インヒビターを使用する従来の技術よりも、本発明によるインヒビターを使用しない素材で二次再結晶させる方法の方が良好な鉄損が得られることを示唆している。
【0022】
なお、焼鈍分離剤としてMgO を塗布した場合には、最終仕上焼鈍を終えた鋼板表面にはフォルステライトを主体とした酸化物の下地被膜が形成され、かかる被膜にも張力付与効果はあるけれども、一般にはかような下地被膜に重ねてコロイダルシリカを含むリン酸塩系の張力被膜を被成することが鉄損を低減する上で一層有利である。
【0023】
【作用】
本発明によって、低鉄損が得られる理由については、必ずしも明確に解明されたわけではないが、発明者らは次のように考えている。
素材としてインヒビター成分を用いる場合には、最終仕上焼鈍時に二次再結晶粒を発現させるために、鋼中においてAlN, BN, MnSe, MnSなどの析出物によって一次再結晶粒の粒界移動を抑制することが必要である。二次再結晶完了後には、このような析出物は不要になり、逆に残存する場合には磁壁の移動を抑制するために鉄損が劣化する。そのため、インヒビター成分であるAl,B,Se,Sなどは、純化焼鈍とよばれる1100℃以上の高温域における水素焼鈍により鋼中より除去される技術が一般的に実施されている。
【0024】
かような高温純化焼鈍によって、鋼中におけるAl,B,Se,S等の含有量をそれぞれ 20ppm以下まで低減することは可能である。
しかしながら、鋼中から除去されるAl,B,Se,S等の成分はフォルステライト被膜中ではむしろ濃縮されている。そのため、被膜と地鉄界面には、Al, BやSe,Sなどの単体もしくは化合物が不可避的に残存する。このような物質の存在は磁壁の移動を妨げて鉄損を増加させる原因となる。
従って、酸化被膜中においても、インヒビター成分であるAl,B,Se,S等を低減することにより、電磁鋼板の鉄損が良好になるものと考えられる。
そして、フォルステライト被膜中においてAl,B,Se,Sを低減するためには、インヒビターを用いない高純度材を用いて二次再結晶粒を発現させる製造方法が優れているのである。
【0025】
次に、本発明の構成用件の限定理由について述べる。
本発明の電磁鋼板の成分としては、Siを含有させて、電気抵抗を増大させ鉄損を低減する必要がある。そのためには少なくとも 1.0wt%の添加が必要であるが、 8.0wt%を超えると磁束密度が低下するだけでなく、製品の二次加工性が著しく劣化するので、Si含有量は 1.0〜8.0 wt%の範囲に限定した。
特に好適なSi量の範囲は 2.0〜4.5 wt%である。
また、本発明では、後述する実施例にも示したとおり、 Mn を 0.92wt %以下で含有させるものとした。
【0026】
さらに、本発明では、鉄損を効果的に低減するために、鋼板中の微量成分を極力低減する必要がある。
すなわち、前掲図2に示したように、酸化物被膜を含んだ鋼板全体において、Al,B,SeおよびSの各含有量をそれぞれ 20ppm以下に抑制することが肝要であり、これ以上の含有量では鉄損は劣化する。
【0027】
次に、本発明の電磁鋼板を製造する際に好適な成分範囲について述べる。
Cは、組織改善により磁気特性を向上させる有用元素であるが、含有量が0.12wt%を超えると脱炭焼鈍で除去するのが困難になるので、上限を0.12wt%程度とする。下限に関しては、Cを含まない素材でも二次再結晶が可能であるので特に設けない。特にCを素材段階から30ppm 以下に低減しておくと脱炭焼鈍の省略が可能であり、生産コストの面で有利となるので、低級品の製造の場合にはCを低減した素材を用いることが有利である。
【0028】
その他の不純物元素については極力低滅する必要があるが、特に二次再結晶粒の発生に対して有害なだけでなく、地鉄中に残存して鉄損を劣化させるAl,B,S,Se,O等については以後の工程で除去が困難なこともあるので、素材段階でB,S,Se,Oについては30ppm 以下、Alについては70 ppm以下に低減しておくことが好ましい。
【0029】
なお、本発明では、磁気特性改善のためにNiを含有させることができる。
すなわち、Niは、組織を改善して磁気特性を向上させる有用元素であり、必要に応じて添加することができる。しかしながら、含有量が0.005 wt%に満たないと磁気特性の改善量が小さく、一方1.50wt%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するので、Niは 0.005〜1.50wt%の範囲で含有させることが好ましい。
【0030】
次に、本発明鋼板の好適製造工程について説明する。
まず、上記の好適成分組成に調整した溶鋼から、スラブを製造するが、かかるスラブは、通常の造塊−分塊法、連続鋳造法で製造しても良いし、また 100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造しても良い。
スラブは、通常、加熱して熱間圧延するが、鋳造後、加熱せずに直ちに熱延しても良い。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に供給しても良い。
なお、スラブ加熱温度については、素材中にインヒビター成分を含まないので、熱間圧延が可能な最低限の1100℃程度で十分である。
【0031】
ついで、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで必要に応じて脱炭焼鈍を施し、その後 MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施す。
ここに、熱延板焼鈍を施すことによって、磁気特性を向上させることが可能である。また、中間焼鈍を冷間圧延の間に挟むことも磁気特性の安定化に有用である。しかしながら、いずれも生産コストを上昇させることになるので、経済的観点から熱延板焼鈍や中間焼鈍の取捨選択が決定される。
なお、熱延板焼鈍および中間焼鈍の好適温度範囲は 700℃以上、1200℃以下である。というのは、焼鈍温度が 700℃に満たないと焼鈍時の再結晶が進行しないため効果が薄く、一方1200℃を超えると鋼板の機械強度が低下してライン通板が困難になるからである。
【0032】
脱炭焼鈍は、Cを含有しない素材を用いる場合には特に必要ない。また、鋼板表面の酸化は最終仕上焼鈍時に焼鈍分離剤中の酸化物、水酸化物によってなされるので、必ずしも最終仕上げ焼鈍前の酸化が必要とは限らない。
さらに、最終仕上焼鈍に先立って浸珪法によって冷間圧延終了後にSi量を増加させる技術を併用してもよい。
【0033】
本発明では、良好な鉄損特性を得るために、鋼板表面にフォルステライト (Mg2SiO4)を主体とした酸化物被膜を形成し、しかも酸化物被膜を含んだ鋼板全体におけるAl,B,Se,Sの含有量を各々 20ppm以下に低減する必要がある。
ここに、酸化物被膜を含んだ鋼板全体におけるAl,B,Se,Sの含有量をそれぞれ 20ppm以下に低減するためには、前述したとおり、かような元素を素材段階で十分に低減しておくことが重要であるが、焼鈍分離剤中にかような元素を含有させないことも重要である。
【0034】
なお、鉄損をさらに改善するためには、鋼板表面に張力被膜を生成させることが有効である。この目的のためには2種類以上の被膜からなる多層膜構造としても良い。
また用途に応じて、樹脂等を混合させたコーティングを施しても良い。
さらに、良好な鉄損を得るために、磁区細分化技術を用いることができる。ここに、磁区細分化方法としては、特公昭57−2252号公報記載のパルスレーザーを製品板に照射する方法、特開昭62−96617 号公報記載の製品板にプラズマ炎を照射する方法、特公平3−69968 号公報に開示の脱炭焼鈍前にエッチングにより溝を付与する方法等が有効である。
【0035】
【実施例】
実施例1
表1に示す成分組成になる鋼スラブを連続鋳造にて製造したのち、各スラブを1250℃で20分加熱後、熱間圧延によって2.8 mm厚の熱延板とした。ついで、1000℃, 60秒間の熱延板焼鈍を施したのち、冷間圧延によって0.29mmの最終板厚に仕上げた。
ついで、水素:75%、窒素:25%で、露点:40℃の雰囲気中にて 850℃, 120秒の脱炭焼鈍を施して鋼中Cを0.0020wt%まで低減したのち、表2に示す成分を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施した。
なお、最終仕上焼鈍は、窒素:50%、水素:50%の混合雰囲気中において、20℃/hの速度で1180℃まで昇温し、この温度にて水素雰囲気中に5時間保持する方法で行った。
かくして得られた各製品板について磁束密度B8 および鉄損W17/50 を測定した。また、最終仕上焼鈍後の鋼板を被膜付きのまま成分分析し、Al,B,Se,S量について調査した。
得られた結果を、表2に併記する。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
同表から明らかなように、この発明に従い、最終仕上焼鈍後の被膜付き電磁鋼板中におけるAl,B,Se,S量をそれぞれ 20ppm以下に低減した場合には、良好な鉄損の製品が得られている。
【0039】
実施例2
表3に示す成分組成になる鋼スラブを連続鋳造にて製造したのち、各スラブを1100℃で20分加熱後、熱間圧延によって2.4 mm厚の熱延板とした。ついで、冷間圧延により 1.8mmの中間厚としたのち、1100℃、30秒の中間焼鈍を施してから、200 ℃の温間圧延によって0.22mmの最終板厚に仕上げた。
ついで、水素:75%、窒素:25%で、露点:60℃の雰囲気中にて 880℃, 100秒の脱炭焼鈍を施して鋼中Cを0.0020wt%まで低減したのち、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施した。
ここに、最終仕上焼鈍は、窒素:50%、水素:50%の混合雰囲気中において、1100℃まで20℃/hの速度で昇温する方法で行った。
【0040】
上記の最終仕上焼鈍後、コロイダルシリカを50%含有するリン酸マグネシウムを塗布し、 800℃で2分間の平坦化焼鈍を兼ねて焼き付けた。ついで、焼付後、圧延方向と直角方向に15mm間隔でパルスレーザーを照射する磁区細分化処理を施した。
かくして得られた各製品板の磁束密度B8 と鉄損W17/50 を測定した。また、最終仕上焼鈍後の鋼板を被膜付きのまま成分分析し、Al,B,Se,S量について調査した。
得られた結果を、表3に併記する。
【0041】
【表3】
【0042】
同表に示したとおり、最終仕上焼鈍後に、被膜付き電磁鋼板中におけるAl,B,Se,S量がそれぞれ 20ppm以下まで低減された場合には、良好な鉄損の製品が得られている。
【0043】
【発明の効果】
かくして、本発明に従い、表面の酸化物被膜を含んだ鋼板全体における、Al,B,Se,Sの含有量をそれぞれ 20ppm以下に抑制することによって、鉄損の良好な方向性電磁鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上焼鈍前における方位差角が20〜45°である粒界の各方位粒に対する存在頻度(%)を示す図である。
【図2】被膜付き電磁鋼板中における微量成分が鉄損に及ぼす影響を示したグラフである。
Claims (2)
- Si:1.0 〜8.0 wt%および Mn : 0.92wt %以下を含み、残部は Fe および不可避的不純物の組成になり、鋼板表面にフォルステライト (Mg2SiO4)を主体とした酸化物被膜を有し、かつ該酸化物被膜を含む鋼板全体におけるAl,B,SeおよびSの含有量がそれぞれ20 ppm以下であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
- 請求項1において、鋼板がさらに、 Ni : 0.005 〜 1.50wt %を含有する組成になることを特徴とする方向性電磁鋼板。
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