JP3882103B2 - 張力付与異方性被膜を有する低鉄損一方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変圧器や発電器の鉄心等に利用される方向性電磁鋼板に関し、特に該鋼板の表面に被成する張力付与型被膜に張力付与異方性を付加することによって、鉄損特性の一層の改善を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
Siを含有し、かつ結晶方位が(110)〔001〕方位に配向した方向性電磁鋼板は、優れた軟磁気特性を有することから商用周波数域での各種鉄心材料として広く用いられている。かかる電磁鋼板において特に重要な特性は、一般に50Hzの周波数で 1.7Tに磁化させた場合の損失であるW17/50 (W/kg)で表わされるところの鉄損が低いことである。
【0003】
鉄損のうち、渦電流損(We )を低減するのに有効な方法としては、Siを含有させて電気抵抗を高める方法、鋼板板厚を薄くする方法、さらには結晶粒径を低減する方法などが、一方ヒステリシス損(Wh )を低減する方法としては、圧延方向に<001>軸を高度に揃える方法が知られている。
このうち、Siを多量に含有させる方法は、飽和磁束密度の低下を招き鉄心のサイズ拡大の原因になるため、自ずから限界があった。
また、結晶方位を揃える方法も、すでに磁束密度B8 にして1.96Tや1.97Tという優れた値の製品が得られており、これ以上の改善の余地は少なくなっている。
さらに、製品板厚を減少する方法にしても、過度に薄い板厚の製品は圧延が困難であることから、工業的には現実的ではない。
【0004】
その他、鉄損の低減に有効な方法として、鋼板に張力を付加する方法が知られていて、工業的には、鋼板より熱膨張係数の小さい材質からなる被膜を被成することによって、鋼板に対して張力を付与している。
すなわち、最終的に結晶方位を揃える2次再結晶と鋼板の純化を兼ねる最終仕上焼鈍工程で、鋼板表面の酸化物(シリカを主体とする)と鋼板表面に塗布した焼鈍分離剤(マグネシアを主成分とする)とが反応してフォルステライト (Mg2SiO4)を主成分とする被膜が形成されるが、この被膜は鋼板に与える張力が大きく、鉄損低減に効果がある。さらに、この張力効果を増大するために、上記したフォルステライト質被膜上に、低熱膨張性のコーティング(張力付与型の絶縁コーティング)を上塗りして、製品とすることが一般的である。
【0005】
現在、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に適用される張力付与型の絶縁コーティングとしては、Alやアルカリ土類金属のリン酸塩とコロイダルシリカ、無水クロム酸またはクロム酸塩を主成分とした処理液を塗布し、焼付けることによって形成されるものが多い。この絶縁コーティングによる張力付与の機構は、コロイダルシリカに代表される地鉄より熱膨張係数の小さい無機質を大量に含有する被膜を高温で焼付けることにより、地鉄と絶縁コーティングとの熱膨張差に基づいて、常温では鋼板に張力が付与される現象を利用している。
この方法で形成される絶縁被膜は、鋼板に対する張力付与効果が大きく、鉄損低減に極めて有効である。かかる絶縁被膜の代表的形成方法については、例えば特公昭53−28375 号公報や特公昭56−52117 号公報等に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
さて、鋼板と被膜との熱膨張係数差を利用して鋼板に張力を付与する場合、その張力値σは次式(1) で表されることが知られている(例えば特許第2664323 号公報)。
σ=2Ec ・Ac (T−T0 )(αm −αc )÷Am --- (1)
ここで、Ec :被膜のヤング率
Ac , Am :被膜、鋼板の断面積
T:被膜の被成温度(軟化温度)
T0 :測定温度(室温)
αc , αm :被膜、鋼板の熱膨張係数
上掲式(1) に従えば、被膜のヤング率が高く、熱膨張係数が鋼板のそれと比較して小さいほど、張力値σは大きくなる。
しかしながら、現行以上に被膜のヤング率や熱膨張係数を変更しても、所望の低鉄損は得られなかった。
【0007】
以下、この理由について述べる。
フォルステライトを主成分とする鉱物質の一次被膜にしても、上塗りの低熱膨張性の張力付与型コーティングにしても、被膜が発生させる応力は2次元的には等方的であり、面内のすべての方向に一様に張力を付与する。これらの被膜を鋼板に被成することによって磁区細分化効果が発揮され、鉄損値が低下するのは、2次再結晶した方向性電磁鋼板の結晶が圧延方向に対し、(110)〔001〕方位に集積しているためである。
なぜなら、ほぼ単結晶に近いほど方位集積している方向性電磁鋼板は、圧延方向には<100>軸、圧延方向と直角方向には<110>軸を持つ結晶群から成っている。Fe等の体心立方格子を有する金属は一般的に<100>方位のヤング率が最も小さい。下記のヤング率の定義式(2) で示されるように、同一の応力σが付加された場合、ヤング率が小さいほど物質の変形量は大きくなる。
付加応力σ=ヤング率E×変形量ΔL --- (2)
【0008】
従って、方向性電磁鋼板に対して一様な応力を付与した場合であっても、特に圧延方向に最も伸張変形する。圧延方向に張力が加わった場合、圧延方向とほぼ平行な磁区は細分化され、鉄損値は低減する。逆に圧延方向と直角に張力を付与した場合には、磁区パターンは乱れたり消失したりして、鉄損値の増大を招く。
しかしながら、フォルステライトや上塗りコーティング等、等方的に張力を付与する被膜でも、上述したように鋼板自身の変形に対する異方性から圧延方向への張力効果が最大となるので、鉄損値が低減するのである。
【0009】
前掲式(1) から明らかなように、被膜の膜厚を増加させたり、ヤング率を高めたり、熱膨張係数を小さくすることによって、付与応力を増大させることは可能である。
しかしながら、この方法では同時に磁区細分化に有害な圧延方向と直角方向への張力成分も増加するため、等方的な性質を有する被膜の各種因子を単に変更するだけでは、鉄損低減効果は飽和し、現状以上の鉄損低減効果は得られない。
上記したような理由により、鋼板への張力付与による鉄損低減技術には、新しい発展が近年認められなかったのである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、発明者らは、上記の限界を打破すべく種々検討を加えた結果、被膜自身に張力付与異方性を付加するという全く新しい着想を得た。
すなわち、鉄損低減に有害な圧延方向と直角方向への張力付与効果を低減し、より有効な圧延方向への張力付与を増加させるべく鋭意研究を進めた結果、自身が張力付与異方性を有する被膜を新たに開発し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0011】
すなわち、 本究明の要旨構成は次のとおりである。
1.方向性電磁鋼板の表面に被成する張力付与型被膜について、その鋼板圧延方向と平行方向における被膜断面積を、鋼板圧延方向と直角方向にわたって反復して変化させることを特徴とする張力付与異方性被膜を有する低鉄損一方向性電磁鋼板。
【0012】
2.鋼板圧延方向と平行方向に線状溝を所定の間隔を隔てて反復して形成した鋼板の表面に、張力付与型被膜を被成したことを特徴とする上記1記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
【0013】
3.平滑化した鋼板の表面に、鋼板圧延方向と平行に所定の間隔を隔てて反復して形成した線状溝を有する張力付与型被膜を被成したことを特徴とする上記1記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
【0014】
4.平滑化した鋼板の表面に、鋼板圧延方向と平行に、線状の張力付与型被膜を所定の間隔を隔てて反復して被成したことを特徴とする上記1記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
【0015】
5.張力付与型被膜における圧延方向張力の被膜有効厚みをt RD 、圧延直角方向張力の被膜有効厚みをt TD としたとき、これらの比がt RD /t TD >1を満足することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
Si:3mass%を含有する最終仕上げ焼鈍済み方向性電磁鋼板(板厚:0.23mm)のフォルステライト被膜に、圧延方向と平行にレーザー照射により溝幅:10μm、深さ:2μm の線状溝を形成した。 この時溝の間隔は20μm とした。その後、コロイダルシリカとリン酸マグネシウムを主成分とする張力付与型の絶縁被膜を片面当たり 8.0 g/m2 被成した。また、比較のため、圧延直角方向に同様の線状溝を形成させた素材と溝形成を行わずにそのまま絶縁被膜を被成した素材を作製した。
表1に、各素材の鉄損W17/50 について調査した結果を比較して示す。
また、鋼板の片面のみにレーザー照射による線状溝形成とその後の張力付与型コーティングを施し、試料の反り量から鋼板の圧延方向への付与応力を算出し、その値も併記した。
【0017】
【表1】
【0018】
同表に示したとおり、圧延方向と平行に線状溝を設けた試料(発明例)では、標準材と比較して、鉄損値、引張張力ともに向上した。
これに対し、圧延直角方向に線状溝を設けた試料(比較例)では、鉄損値および引張張力とも標準材よりも劣化した。
【0019】
上記したとおり、発明例において鉄損値が向上した理由は、圧延直角方向に引張応力を発生させるためのコーティングの有効断面積が溝の形成により減少し、磁気特性に有害な圧延直角方向の引張応力が減少したことによるものと考えられる。
【0020】
また、鋼板の反り量から圧延方向の付与張力を測定したところ、試料No.1では従来よりも増加していることが判明した。
この理由は、標準材である試料No.3と比較して張力コーティングの塗布量は同じなので、鋼板の圧延方向に付与される応力は同一なはずであるが、圧延直角方向の引張応力が減少した分だけ直角方向の変形量が減少するので、逆に圧延方向への伸張が容易となり、その結果、増加したためと考えられる。
なお、圧延方向の鋼板変形の増加量は、固体弾性論で良く知られたポアソン比を考慮して算出可能である。
【0021】
例えば、圧延直角方向の被膜の有効断面積が半分になり、付与張力が半減した場合、方向性電磁鋼板では圧延方向の伸びは約10%程度増加すると予想される。従って、圧延方向の付与張力が同一でも、圧延直角方向の応力減少によって実際の圧延方向での変形量は大きくなり、磁気特性改善に対して相乗的な効果が生じたものと考えられる。
逆に、圧延直角方向に線状溝を形成した試料No.2の場合、磁気特性に有効な圧延方向の付与張力はその有効断面積の減少と共に低下してしまい、かつ圧延方向の伸張が減少した分だけ、圧延直角方向の引張変形量が増大し、その結果、一層の磁気特性の劣化を招いたものと考えられる。
【0022】
すなわち、本発明の原理は、前掲式(1) で示される被膜の断面積Ac を圧延方向と圧延直角方向とで変化させることによって、圧延方向の引張応力を圧延直角方向のそれよりも高めることにあり、その手段として、それぞれの方向の被膜の有効断面積を変化させるのである。
【0023】
ここで、被膜の断面積について詳述する。
図1に、本発明の被膜断面を標準材のそれと比較して模式的に示す。
同図に示したとおり、標準材のように厚みが一様な被膜では、その断面積はどの方向でも同じであり、平均的な厚みによって決定される。
これに対し、本発明のように被膜断面積に異方性がある被膜の場合、例えば圧延方向の被膜応力は、圧延方向の断面積がSRDであるから、式(1) においてAc=SRDとして算出される値となる。他方、圧延直角方向の被膜応力を考えた場合、直角方向の厚みは大きく変動し厚い部分と薄い部分が混在しているが、応力に寄与する断面積は応力方向に投影したときの最小面積STDであり、それより厚い箇所はいわば被膜応力には寄与しない無駄な部分と見なすことができる。
【0024】
実際の被膜有効断面積は、図2に示すように、その有効厚みを計測しれやれば良い。
例えば、一方向に線状溝を設けたような被膜の場合、圧延方向張力の被膜有効厚みtRDはコーティングの塗布量と密度から算出したり、断面積SEM 観察などで直接計測することが可能である。
また、圧延直角方向張力の被膜有効厚みtTDは、 tRD−1/2 Ryで表せる。 ここで、Ry(圧延直角方向) は、表面粗さを表すJIS の最大高さRyのことであり、 疵と見なされるような並外れて高い山および低い谷がない部分から基準長さだけ抜き取って計測された値である。
張力付与型被膜の最表面に凹凸を設けて張力異方性を発生させた場合にはその表面を、 また下地のフォルステライト膜に線状溝等を設けて、 その形状を転写する形で異方性を持たせた場合には、 張力付与型被膜のみを除去した後にレプリカであるフォルステライト膜の形状を粗度計等で計測してやれば良い。
【0025】
圧延方向の被膜応力を決定する有効断面積SRDが、圧延直角方向の被膜応力を決定する有効断面積STDより大きければ、式(1) に基づいて圧延方向の引張応力が圧延直角方向のそれよりも大きな張力付与型被膜を得ることができる。従って、例えば図1中で標準材と発明材に等量の張力付与型コートを塗布、被成した場合、両者のSRDは同一であり、STDだけが発明材で小さくなる。
【0026】
上記の例は、最終仕上げ焼純時に形成されるフォルステライト膜に線状溝を設け、その上に張力付与型のコーティングを被成することで間接的にコーティングの被膜断面積に異方性を持たせた場合であるが、直接コーティング自身に線状溝を設けたり、コーティングを線状に塗布したりして、その断面積に異方性を持たせることも可能である。また、仕上げ焼鈍後にフォルステライト被膜を有さない鋼板表面に対して線状溝を形成させることをも可能である。
【0027】
また、被膜の有効断面積に異方性を持たせる手段としては、溝等を形成させるのが最も簡便であるが、これだけに限定されるものではない。なお、溝等についても、圧延方向と平行に形成するのが最も有効と考えられるが、磁気特性等を考慮して圧延方向に対して斜めに線状あるいは点線状に溝やピットを形成しても構わない。要は、張力付与型コーティングの圧延方向の引張応力値が、圧延直角方向のそれを上回るような被膜断面が得られるパターンであれば良い。
また、溝等を形成させる手段としては、レーザー照射を始めとして、エメリー研磨紙を鋼板表面に押しつけて研削するヘアライン処理のような手法も有効であるし、フォルステライト被膜形成の一次原料である一次再結晶焼純時に生成するシリカを主体とする酸化物膜を線状に除去するなどして、フォルステライト被膜の断面積に異方性を持たせる方法も有効な手段である。
さらに、鋼板自身に圧延ロール等で断面異方性を持たせることも、鋼板の圧延方向への伸張がより容易になる形状であれば有効である。
【0028】
以上述べたとおり、本発明では、圧延方向張力の被膜有効断面積SRDを圧延直角方向張力の被膜有効断面積STDよりも大きくする、換言すれば圧延方向張力の被膜有効厚みtRDを圧延直角方向張力の被膜有効厚みtTDよりも大きくすることによって、圧延方向における引張応力を増大させ、効果的に磁区を細分化して鉄損の一層の低減を図るのである。
【0029】
次に、本発明で対象とする電磁鋼板の好適成分組成について説明する。
本発明で対象とする電磁鋼板については、その成分組成が特に限定されることはないが、Siを 1.5〜7.0 mass%、Mnを0.03〜2.5 mass%程度含有させることが望ましい。
ここに、SiやMnは、製品の電気抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効な成分であるが、Siは 7.0mass%を超えると硬度が高くなって製造や加工が困難となり、一方Mnは 2.5mass%を超えると熱処理時にγ変態を誘起して磁気特性を劣化させるおそれがある。
また、鋼中には、上記の元素の他に、方向性電磁鋼板の製造に適するインヒビター成分として知られている、Al, B, Bi, Sb, Mo, Te, Sn, P, Ge, As, Nb,Cr, Ti, Cu, Pb, ZnおよびInなどの公知元素を単独または複合して含有させることができる。
なお、C、S、Nなどの不純物はいずれも、磁気特性上有害な作用があり、特に鉄損を劣化させるので、それぞれC:0.003 mass%以下、S:0.002 mass%以下、N:0.002 mass%以下程度に抑制することが望ましい。
【0030】
張力付与型の絶縁コーティングの種類としては、従来からフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に用いられているリン酸塩−コロイダルシリカ−クロム酸系のコーティング等が、その効果およびコスト、均一処理性などの点から好適である。
コーティングの厚みについては、張力付与効果や占積率、被膜密着性等の点から 0.3〜10μm 程度とするのが好ましい。
また、張力コーティングとしては、これ以外にも特開平6−65754 号公報、特開平6−65755 号公報および特開平6−299366号公報などで提案されているホウ酸−アルミナ等の酸化物系被膜を適用することも可能である。
【0031】
さらに、圧延方向に初めからより大きな張力付与効果をもたらすような、被膜自身が張力異方性を有するものであればなおさら都合がよい。圧延方向により大きな張力付与効果をもたらす被膜としては、前掲式(1) より明らかなように、ヤング率や熱膨張係数に異方性を持つものでも良く、圧延方向のヤング率が圧延直角方向のそれよりも大きかったり、逆に熱膨張係数が低いものであっても構わない。。
また、被膜のマトリックスは等方的な性質を有するものであっても、繊維状の組織を含み、例えばそれらが圧延方向に平行になっていて、異方性を発揮するような被膜も有効である。
【0032】
【実施例】
実施例1
Si:3.0 mass%を含有する最終板厚:0.20mmに圧延された冷延板に、線状溝を形成し、脱炭・一次再結晶焼鈍後、MgOを主成分とする焼純分離剤を塗布してから、二次再結晶過程と純化過程を含む最終仕上げ焼純を施すことによって、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板を製造した。
このフォルステライト被膜に、粗さ#600 のエメリー紙で圧延方向または圧延直角方向に研磨時の荷重を変えて線状に溝を形成した後、張力付与型コーティングとしてリン酸マグネシウム、コロイダルシリカおよびクロム酸マグネシウムを主成分とする水性処理液を塗布し、 800℃で焼き付けて、鋼板片面当たり約 6.0g/m2の厚さの被膜を形成させた。
コーティング被成後の断面SEM 観察から圧延方向と平行方向および直角方向のコーティングの有効断面積を厚みとして計測した。
また、各鋼板の鉄損値W17/50 を測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
同表から明らかなように、圧延方向と平行にエメリー研磨を行い、圧延直角方向のコーティング有効厚みを、圧延方向のそれよりも減少させた発明例(No.1,2)はいずれも、何の処理も行わなかった標準材(No.5)と比較して鉄損値の改善が見られた。
これに対し、圧延方向の被膜張力を決める有効厚みが直角方向のそれよりも小さい比較例(No.3, 4)では、鉄損値はむしろ劣化した。
【0035】
実施例2
Si:3.0 mass%を含有する最終板厚:0.20mmに圧延された冷延板に、線状溝を形成し、脱炭・一次再結晶焼純後、MgOを主成分とする焼純分離剤を塗布してから、二次再結晶過程と純化過程を含む最終仕上げ焼鈍を施すことによって、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板を製造した。
このフォルステライト被膜に、レーザー照射により、圧延方向または圧延直角方向に線状溝を形成させた。この時のビーム径は約2μm である。ついで、張力付与型コーティングとしてリン酸アルミニウムおよびコロイダルシリカを主成分とする水性処理液を塗布し、 850℃で焼き付けて、鋼板片面当たり約 5.0 g/m2の厚さの被膜を形成させた。
コーティング被成後の断面SEM 観察から圧延方向と平行方向および直角方向のコーティングの有効断面積を厚みとして計測し、その比を求めた。
また、各鋼板の鉄損値W17/50 を測定した。
得られた結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
同表から明らかなように、圧延方向と平行にレーザー照射を行い、圧延直角方向のコーティング有効厚みを減少させ、圧延方向と圧延直角方向の有効厚み比を1よりも大きくした発明例(No.1, 2)はいずれも、何の処理も行わなかった標準材(No.5)と比較して、圧延方向のコーティング張力が増加し、鉄損値が低下した。
これに対し、圧延直角方向にレーザー照射を行い、コーティングの有効厚み比が1よりも小さくなった比較例(No.3, 4)では、圧延方向のコーティング張力が減少し、鉄損値は劣化した。
【0038】
【発明の効果】
かくして、本発明に従い、方向性電磁鋼板の表面に、磁区細分化に有効な圧延方向に平行な張力成分が、磁区細分化に有害な圧延直角方向の張力成分よりも大きくなるように、張力付与型被膜の被膜断面積に異方性を持たせることにより、従来に比べて格段に鉄損値を低減することができ、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の被膜断面を標準材と比較して示した図である。
【図2】 圧延方向張力の被膜有効厚みtRDと圧延直角方向張力の被膜有効厚みtTDの説明図である。
Claims (5)
- 方向性電磁鋼板の表面に被成する張力付与型被膜について、その鋼板圧延方向と平行方向における被膜断面積を、鋼板圧延方向と直角方向にわたって反復して変化させることを特徴とする張力付与異方性被膜を有する低鉄損一方向性電磁鋼板。
- 鋼板圧延方向と平行方向に線状溝を所定の間隔を隔てて反復して形成した鋼板の表面に、張力付与型被膜を被成したことを特徴とする請求項1記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
- 平滑化した鋼板の表面に、鋼板圧延方向と平行に所定の間隔を隔てて反復して形成した線状溝を有する張力付与型被膜を被成したことを特徴とする請求項1記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
- 平滑化した鋼板の表面に、鋼板圧延方向と平行に、線状の張力付与型被膜を所定の間隔を隔てて反復して被成したことを特徴とする請求項1記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
- 張力付与型被膜における圧延方向張力の被膜有効厚みをt RD 、圧延直角方向張力の被膜有効厚みをt TD としたとき、これらの比がt RD /t TD >1を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低鉄損一方向性電磁鋼板。
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