JP3898632B2 - 血清または血漿分離用組成物、及びこれを収容した血液検査用容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液成分の比重差を利用して血清又は血漿を分離する際に用いられる組成物及びこれを収容した血液検査用容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、チクソトロピー性を有する血清又は血漿分離用組成物、例えばシリコーンとシリカとからなる混合物を採血管内底部に予め収容した血液検査用容器が下記特許文献1に開示されている。この採血管内に血液を採取し、適当時間静置後遠心分離を行うと、その遠心力によってゲル状の血清又は血漿分離用組成物は流動性を有するようになる。また、ゲル状の血清又は血漿分離用組成物は血清又は血漿成分(比重約1.02)の比重と血餅又は血球成分(比重約1.08)のそれとの中間比重(1.03−1.07)を有するため、採取した血液中を管底部から次第に上昇し、血清又は血漿層と血餅又は血球層との中間に位置して隔壁を形成する。従って、血清又は血漿成分と、血餅又は血球成分とを分離することができる。このように血餅又は血球成分から分離された血清又は血漿成分は、採血管から容易に取り出され、各種の検査に供されることができ、また他の容器に移すことなく保存され得る。
【0003】
このようなチクソトロピー性の血清又は血漿分離用組成物の主成分としては、上記のシリコーンの他に、ハロゲン化炭化水素系オリゴマー(下記特許文献2,3)、アクリル酸エステル系オリゴマー(下記特許文献4,5)、エステル系オリゴマー(下記特許文献6,7)、αオレフィン−マレイン酸エステル系オリゴマー(下記特許文献8)、環式炭化水素系オリゴマー(下記特許文献9,10)等のオリゴマーに、比重、粘度及び/またはチクソトロピー性等の調整のために、シリカやカオリン等の無機微粒子や、ベンジリデンソルビトール等の有機ゲル化剤を添加した分離用組成物が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記シリコーン系樹脂は無機微粒子からなる比重、粘度調整剤との相溶性が著しく悪く、短時間で相分離を起こしやすい。また、放射線(γ線、電子線など)滅菌により硬化反応が生じるため、シリコーン系樹脂は現在ではほとんど使われていない。
【0005】
また、ハロゲン化炭化水素系は、使用後焼却廃棄する際に、ハロゲン化水素ガスを発生させるため、焼却炉を損傷したり、環境に悪影響を及ぼす可能性があった。
【0006】
さらに、アクリル酸エステル系、エステル系、αオレフィン/マレイン酸エステル系の各オリゴマーは、分子内に極性基を多く含有するために、血中薬物濃度のモニタリングにおいて薬物吸着を起こしやすいといった問題があった。
【0007】
一方、下記特許文献10に開示されている環式炭化水素系オリゴマーとしてのシクロペンタジエン系樹脂と、フタル酸エステルとを含有する組成物は、薬物吸着を起こしにくく、有害な焼却ガスを発生しない点で優れている。しかし、組成物成分同士の相溶性が乏しく、稀に分離した油状成分が遠心分離後の血清または血漿中に浮遊してしまうことがあった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭51−83654号公報
【特許文献2】
特開昭55−43462号公報
【特許文献3】
特開平09−124743号公報
【特許文献4】
特開昭53−42283号公報
【特許文献5】
特開平4−337458号公報
【特許文献6】
特開昭58−137757号公報
【特許文献7】
特表平9−501192号公報
【特許文献8】
特開昭58−35463号公報
【特許文献9】
特開平02−95257号公報
【特許文献10】
特開平09−15238号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記先行技術の問題点を解決するものであり、その目的は、シクロペンタジエン系オリゴマーとフタル酸エステルとの相溶性を改善し、遠心分離条件の如何にかかわらず、遠心分離後の血清または血漿中に油状成分が浮遊することがない血清または血漿分離用組成物及びこれを用いた血液検査用容器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のある広い局面によれば、分子内に不飽和および/または飽和環式構造を有し、且つ凝固点または流動点が0℃以下である多環式炭化水素化合物、シクロペンタジエン系オリゴマー、及びフタル酸エステルを含有する血清または血漿分離用組成物が提供される。
【0011】
本発明の血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、多環式炭化水素化合物の不飽和環式構造は芳香環である。
本発明の血清または血漿分離用組成物の他の特定の局面では、シクロペンタジエン系オリゴマー100重量部に対し、分子内に不飽和および/または飽和環式構造を有し、且つ凝固点または流動点が0℃以下である多環式炭化水素化合物を1から300重量部、及びフタル酸エステルを5から40重量部が含有される。
【0012】
また、本発明のさらに他の特定の局面では、本発明に従って構成された血清または血漿分離用組成物を収容した血液検査用容器が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
従来フタル酸エステルとシクロペンタジエン系オリゴマーからなる血清または血漿分離用組成物を、長期間保存すると該組成物から分離した油状成分が、遠心分離した血清あるいは血漿中に漂うことがあるという問題があった。
【0014】
この問題に対し鋭意検討した結果、我々はこの分離の原因が、フタル酸エステルが分子内にエステル結合に由来する極性相互作用を有する物質であるのに対し、シクロペンタジエン系オリゴマーは全くの非極性炭化水素であるために、相溶性が悪いことにあることを突き止めた。
【0015】
そこで、これらの相溶化剤となる成分として、さらに検討した結果、疎水性相互作用を強める働きを有するものとして、分子内に不飽和および/または飽和環式構造を有し、且つ凝固点または流動点が0℃以下である多環式炭化水素化合物を含有せしめることで相溶性の良い組成物となることを見出した。
【0016】
これにより、従来、遠心分離時の隔壁形成過程において、本組成物から稀に発生することのあった油状成分が、分離装置のサンプリングノズルを詰まらせたり、反応セルを汚染したりすることを抑制することができた。
【0017】
本発明におけるシクロペンタジエン系オリゴマー(以下、単にオリゴマーと記す場合がある)とは、シクロペンタジエン系モノマーが多量化されたもの(重合体)であり、水素添加(部分水素添加を含む)されたシクロペンタジエン系オリゴマーであってもよい。
【0018】
また、上記オリゴマーとしては、シクロペンタジエン系オリゴマーと水素添加シクロペンタジエン系オリゴマーが、それぞれ単独で用いられても、また2種以上が混合されて用いられても良い。
【0019】
上記シクロペンタジエン系モノマー(以下、単にモノマーと記す場合がある)としては、特に限定されず、例えばシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンのアルキル置換体(例えばメチルシクロペンタジエン)等が挙げられる。
【0020】
上記オリゴマーでは、これらの単独重合体であっても、またこれらを2種以上組合せた共重合体であってもよい。あるいは、上記オリゴマーでは、芳香族オレフィン等の他のモノマー成分が共重合されていてもよい。さらには、上記オリゴマーは、このような重合体もしくは共重合体の混合物であってもよい。
【0021】
上記オリゴマーは、上記モノマーを、例えば、ディールスアルダー反応等を利用して多量体化することにより製造され得る。上記オリゴマーは、シクロペンタジエン系石油樹脂、または、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)と呼ばれることもある。なお、上記オリゴマーでは、さらに水素添加をして残存する二重結合を飽和させておくことが好ましい。
【0022】
上記シクロペンタジエン系オリゴマーの製造方法は、特に限定されず、例えば、上記特許文献10等に開示されている従来の方法を用いることができる。
上記オリゴマーのJIS K 6863−1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」によって測定される軟化点は、好ましい下限が70℃、好ましい上限が140℃、さらに好ましい下限は80℃であり、さらに好ましい上限が120℃である。軟化点が70℃より低いと、血清または血漿分離用組成物の相分離が発生し易くなることがあり、140℃より高いと、溶融しにくくなり製造が困難になることがある。
【0023】
上記オリゴマーのJIS K 6862−1984「ホットメルト接着剤の溶融粘度試験方法」中のA法によって測定される180℃での溶融粘度は、好ましい下限が0.03Pa・s、好ましい上限が0.5Pa・sであり、さらに好ましい下限が0.05Pa・s、さらに好ましい上限が0.15Pa・sである。溶融粘度が0.03Pa・sより低いと、本組成物の粘度が不足することがあり、0.5Pa・sより高いと、本組成物の粘度が過剰になることがある。
【0024】
上記オリゴマーの25℃における比重(硫酸銅溶液を用いた浮沈法試験による)は、好ましい下限が1.02、好ましい上限が1.10であり、さらに好ましい下限が1.03、さらに好ましい上限が1.09である。比重が1.02未満或いは1.10を越えた場合は、本組成物の比重を好適に調整しにくくなることがある。
【0025】
上記フタル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、フタル酸ブチルペンチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ブチルヘキシル、フタル酸ブチルヘプチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ペンチルヘプチル、フタル酸ブチルノニル、フタル酸ペンチルオクチル、フタル酸キシルヘプチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ヘプチルオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸オクチルノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸デシルウンデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ブチルベンジルが挙げられる。
【0026】
上記フタル酸エステル中の二つのエステル基を形成するアルコール残基のそれぞれの炭素数が大きすぎると本組成物の比重を好適な範囲に調整しにくくなるので、該炭素数は11以下が好ましい。
【0027】
上記フタル酸エステルの使用量は、シクロペンタジエン系オリゴマー100重量部に対して、好ましい下限が5重量部、好ましい上限が40重量部であり、さらに好ましい下限が7重量部、さらに好ましい上限が30重量部である。使用量が5重量部未満又は40重量部を越えると、本組成物の粘度及び相溶性を好適に調整しにくくなることがある。
【0028】
本発明で言う分子内に不飽和および/または飽和環式構造を有する多環式炭化水素化合物(以下、単に多環式化合物と記す場合がある)とは、環式構造を分子内に少なくとも二つ以上有するものであり、環の結合様式としては、例えばビフェニルのように2個以上の環が別々に含まれるものと、例えばナフタレンのように縮合環を持つものがある。また、置換基として鎖状炭化水素が含まれていてもよい。
【0029】
また、多環式化合物の分子内にはエーテル結合性のO、N、S等のヘテロ元素が含まれていてもよい。
本発明で言う不飽和環式構造とは、環式構造の中に不飽和結合を有する化合物を意味するが、上記環式構造の中に不飽和結合を有する化合物には、芳香族性を有する環式化合物、芳香族環式炭化水素(例えば、ベンゼン環)等も含む。
【0030】
多環式化合物の凝固点または流動点は、フタル酸エステルの凝固点が0℃以下であるため、同じく0℃以下である必要がある。0℃より高いと、フタル酸エステルと多環式化合物間の相溶力よりも多環式化合物同志の凝集力の方が勝り、分離する恐れがある。尚、多環式化合物の凝固点または流動は、JIS K 2265に準じて測定されるものである。
【0031】
また、多環式化合物の25℃における比重は0.9以上が好ましい。0.9より小さいと、本組成物の比重を好適に調整しにくくなることがある。
また、多環式化合物の20℃における粘度は、0.1Pa・s以下であることが好ましい。より大きいと、本組成物の粘度を好適に調整しにくくなることがある。
【0032】
上記2個以上の環が別々に含まれる多環式化合物としては、特に限定されず、例えば、アルキルビフェニル(流動点−40℃以下、比重0.96、約0.025Pa・s)、トリフェニル部分水素添加物(流動点−10℃以下、比重1.01、約0.07Pa・s)、ジベンジルトルエン(流動点−30℃以下、比重1.04、約0.05Pa・s)等及びこれらの各種誘導体や部分水素添加物が挙げられる。
【0033】
さらに、トリフェニルやジベンジルトルエン骨格からなる多環式化合物においては、フェニルやジベンジル環が、それぞれオルト位、メタ位、パラ位に結合したもの及びこれらの混合物が含まれる。
【0034】
上記縮合環を有する多環式化合物としては、特に限定されず、例えば、テトラヒドロナフタレン(融点−30℃以下、比重0.98、約0.002Pa・s)、アルキルナフタレン(流動点−10℃以下、比重1.00、約0.003Pa・s)等及びこれらの各種誘導体のや部分水素添加物等が挙げられる。
【0035】
さらに、これらの多環式化合物は、例えば、不飽和環式炭化水素化合物を部分水素添加したもの、また不飽和環式炭化水素化合物と飽和環式炭化水素化合物とが別々に製造され後に化学結合されて得られたものでも構わない。
【0036】
本発明の血清または血漿分離用組成物(以下、単に組成物と記す場合がある)の配合比は、シクロペンタジエン系オリゴマー100重量部に対して、多環式化合物の好ましい下限が1重量部、好ましい上限が300重量部、さらに好ましい下限が30重量部、さらに好ましい上限が100重量部、また、フタル酸エステルの好ましい下限が5重量部、好ましい上限が40重量部、さらに好ましい下限が7重量部、さらに好ましい上限が30重量部である。
【0037】
多環式化合物の配合量が1重量部より少ないか、あるいはフタル酸エステルの配合量が40重量部より多いと、シクロペンタジエン系オリゴマーとフタル酸エステルの相溶性が充分でないことがあり、また、フタル酸エステルの配合量が5重量部より少ないか、あるいは多環式化合物の配合量が300重量部より多いと組成物全体の極性基量(フタル酸エステルのエステル残基量)が少なくなるため、比重やチクソトロピー性の調整剤である無機微粉末や有機ゲル化剤との相溶性が乏しくなることがあり、かつ組成物の粘度が低くなりすぎることがある。
【0038】
本発明の組成物の粘度は、通常の遠心分離操作によって、本組成物を血清または血漿層と、血餅または血球層の中間部に位置させる点や、真空採血管用等の血液検査容器への充填作業のし易さの点から、ブルックフィールド社製(BROOKFIELD社製)の回転粘度計におけるシェアレート(ずり速度)が1(1/sec)の時の50℃での粘度の好ましい下限が0.1Pa・s、好ましい上限が100Pa・sである。また25℃での粘度の好ましい下限が10Pa・s、好ましい上限が500Pa・sである。粘度が低すぎると、油状成分の分離・浮遊が生じることがあり、高すぎると、血清または血漿層と、血餅または血球層の中間部に位置させることが困難となることがある。
【0039】
本発明の組成物の比重は、白血球成分の分別や、血液検体の希釈必要性の有無等その用途に応じて変わり得るが、25℃において好ましい下限が1.00、好ましい上限が1.10、さらに好ましい下限が1.02、さらに好ましい上限が1.08である。比重が低すぎると、油状成分の分離・浮遊が生じることがあり、高すぎると、血清または血漿層と、血餅または血球層の中間部に位置させることが困難となることがある。
【0040】
本発明の組成物にはさらに、その用途に応じて、各種添加剤を含むことができる。そのような添加剤としては、例えば、比重あるいは流動性調整剤として、例えばシリカ(二酸化珪素)、アルミナ、ガラス、タルク、カオリン、ベントナイト、チタニア、ジルコニウム、アスベストなどの無機質微粉末や、例えばポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレートなどの有機ポリマー微粉末等(平均粒径500μm以下のものが好ましい)、また、他の流動性調整剤として有機ゲル化剤、劣化防止剤として抗酸化剤や光安定剤等を挙げることができる。
【0041】
上記無機質微粉末では微粉末シリカが好ましく、さらにシリカの一次粒子表面の水酸基の一部をアルキル基で置換した疎水性微粉末シリカが好ましく、さらに好ましくは気相法による非晶質乾式シリカが比表面積が大きく、本組成物中における分散性が優れるので好ましい。
【0042】
上記乾式シリカは、疎水性を有するため、シクロペンタジエンのオリゴマー、フタル酸エステル、および多環式化合物からなる組成物に良好に分散する一方、血液に溶けて溶血させることがない。従って、赤血球中の成分が血清または血漿に混入する恐れがなく、臨床検査値に悪影響を及ぼすことが少ないので、乾式シリカは好適に用いられる。
【0043】
上記微粉末シリカの比表面積は、好ましい下限が10m2/g、好ましい上限が1000m2/g、さらに好ましい下限が30m2/g、さらに好ましい上限が500m2/gである。比表面積が上記範囲にあることで、本組成物のチクソトロピー性を好適に調整することができる。
【0044】
上記微粉末シリカの一次粒子径は、好ましい下限が1nm、好ましい上限が100nm、さらに好ましい下限が5nm、さらに好ましい上限が50nmである。一次粒子径が上記範囲にあることで、本組成物のチクソトロピー性を好適に調整することができる。
【0045】
上記微粉末シリカの使用量は、シクロペンタジエン系オリゴマー100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部、さらに好ましい下限が2重量部、さらに好ましい上限が10重量部である。微粉末シリカの使用量が上記範囲にあることで、本組成物の比重及びチクソトロピー性を好適に調整することができる。
【0046】
上記有機ゲル化剤としては、ソルビトールと芳香族アルデヒドの縮合物として、ジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール、アルキル置換ジベンジリデンソルビトール等が、またアミノ酸系ゲル化剤として、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α,γ-ジ-n-ブチルアミドが好適な例として示される。これらは、吸水性や水溶性を有しないため、長時間、血液と接触しても本組成物が吸水白濁することがなく、また血液を濃縮するなどの副作用がない。
【0047】
上記有機ゲル化剤の使用量は、シクロペンタジエン系オリゴマー100重量部に対して、好ましい下限が0.03重量部、好ましい上限が5重量部、さらに好ましい下限が0.06重量部、さらに好ましい上限が3重量部である。有機ゲル化剤の量が上記範囲にあることで、本組成物のチクソトロピー性を好適に調整することができる。有機ゲル化剤の添加量が少なすぎると、油状成分の分離・浮遊が生じることがあり、高すぎると、血清または血漿層と、血餅または血球層の中間部に位置させることが困難となることがある。
【0048】
本発明の組成物には、さらに必要に応じて、有機ゲル化剤の分散剤や溶媒が添加されてもよい。
上記有機ゲル化剤の分散剤としては、HLB値の好ましい下限が1.0、好ましい上限が9.0、さらに好ましい下限が4.0、さらに好ましい上限が6.0のものが用いられる。このような分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステルのようなノニオン系界面活性剤およびこれらの混合物よりなる群から選ばれるものである。
【0049】
上記ノニオン系界面活性剤のHLB値が上記範囲にあると、有機ゲル化剤の分散効果が向上し、本組成物のチクソトロピー性や疎水性を好適な範囲に調整することができる。さらに本組成物の使用時に血液中に溶けて血液を溶血させることがなく、赤血球中の成分が血清または血漿に混入することがないので、正確な検査結果が得られる。
【0050】
上記ノニオン系界面活性剤の使用量は、シクロペンタジエン系オリゴマー100重量部に対して好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が15重量部、さらに好ましい下限が1重量部、さらに好ましい上限が5重量部である。ノニオン系界面活性剤の使用量が上記範囲にあると、有機ゲル化剤の分散効果やシクロペンタジエンのオリゴマーとの相溶性が向上し、さらに本組成物のチクソトロピー性も向上する。
【0051】
また、上記有機ゲル化剤は加熱溶解させてもよいが、溶媒に溶解して用いる場合は、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)等が用いられる。1−メチル−2−ピロリドンは、有機ゲル化剤を良好に溶解する点、血液と反応して溶血を起こさない点、および上記組成物の滅菌を目的とした放射線の照射による分解がない点等から好適に用いられる。
【0052】
上記溶媒の使用量は、ジシクロペンタジエン系オリゴマー100重量部に対して好ましい上限が5重量部、さらに好ましい上限が3重量部である。5重量部より多いと血液中の水分を吸収して本組成物が白濁することがある。
【0053】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されることなく通常の高粘度タイプの混合装置により行われる。
上記混合装置としては、例えば、プラネタリーミキサー、ロールミル、ホモジナイザー等の撹拌装置が挙げられる。この様な攪拌装置には加温冷却槽等が付加されていても良い。
【0054】
また、本発明の組成物は、血清または血漿と血餅または血球との分離に用いられるばかりでなく、白血球の分離にも用いられる。この場合は、組成物の粘度や比重等を何通りか作り分ける必要があるが、これらを区別するために異なった色調に着色すべく、染料や顔料等が添加されてもよい。
【0055】
本発明には、液体分離容器に上記血清または血漿分離用組成物を収容した血液検査用容器も含まれる。
上記液体分離容器の形状としては、特に限定されるものではないが、例えば図1に示す有底の管状容器1を用いるのが好ましい。管状容器1内に、上記血清もしくは血漿分離用組成物2が収納されている。なお、分離用組成物2は、血液を投入後に遠心分離されると、血清もしくは血漿と、固形分との間に位置されることになる。
【0056】
上記液体分離管の素材としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アクリロニトリル-スチレン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂、また、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、エチルキチン等の変性天然樹脂、さらにソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラス、石英ガラスなどのガラス、及びこれらを主成分とするもの、あるいはこれらを組み合わせたもの等、従来公知のものが挙げられる。
【0057】
上記血液検査用容器はいわゆる真空採血管として用いることもできる。この場合には、図1に示すように、管状容器1の開口部を密封するように栓体3が取付けられる。栓体3は、血液が外部に漏出することがないように液密性に構成されており、さらに真空度の維持の点から空気非透過性であることが好ましい。このような栓体の素材としては、特に限定されず、天然ゴム、合成ゴムおよび熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも一種の弾性体、あるいは、アルミラミネートまたはアルミ蒸着シート等従来公知のものが挙げられる。
【0058】
上記血液検査用容器には、検査目的に応じて、その内部に血液の凝固剤あるいは抗凝固剤、解糖阻止剤、除蛋白剤等、また、目的成分の安定剤や阻害剤、活性化剤等の試薬類、これら試薬の担体、さらにはこれら試薬と血液との混和を補助する部材等、従来公知の付加物が収容されていても良い。
【0059】
【実施例】
以下の実施例および比較例において、組成物の配合成分として使用した材料は以下の通りである。
【0060】
1)シクロペンタジエン系オリゴマー
・シクロペンタジエンのオリゴマー:軟化点103℃、トーネックス社製、商品名:エスコレッツ251(ECR251)
2)フタル酸エステル
・フタル酸ジデシル:三菱ガス化学社製、商品名:PL200(流動点−18℃、比重0.96、粘度(20℃)約0.06Pa・s)
3)多環式炭化水素化合物
・トリフェニル部分水素化物:新日鐵化学社製、商品名:サームエス900(水素添加率約40%、流動点−10℃以下、比重1.01、粘度(20℃)約0.07Pa・s)
4)有機ゲル化剤
・ジベンジリデンソルビトール(DBS):新日本理化社製、商品名:ゲルオールD
5)微粉末シリカ
・比表面積250m2/g、トクヤマ社製、商品名:レオロシールDM30S
6)その他の多環式炭化水素化合物
・ジベンジルトルエン:綜研化学社製、商品名:NeoSK-OIL1400(流動点−30℃以下、比重1.04、粘度(20℃)約0.05Pa・s)
・アルキル(ビ)フェニル:綜研化学社製、商品名:NeoSK-OIL1300(流動点−40℃以下、比重0.96、粘度(20℃)約0.025Pa・s)
・アルキルナフタリン:新日鐵化学社製、商品名:サームエス200S(流動点−10℃以下、比重1.00、粘度(20℃)約0.003Pa・s)
・シクロヘキシルベンゼン:Aldrich社製、試薬(凝固点4℃、比重0.94、粘度(20℃)約0.003Pa・s)
・ジシクロヘキシル:Aldrich社製、試薬(凝固点4℃、比重0.86、粘度(20℃)約0.01Pa・s)
7)非多環式炭化水素化合物
・塩化パラフィン:東ソー社製、商品名:トヨパラックス(凝固点−20℃、比重1.16、粘度(20℃)約2.5Pa・s)
【0061】
(実施例1〜12)
[分離用組成物・採血管の調製]
表1及び表2に示す組成となるように、1リットル容量のガラス製ビーカーに、フタル酸エステルとしてフタル酸ジデシル、多環式炭化水素化合物、有機ゲル化剤としてジベンジリデンソルビトール(DBS)を仕込み、130℃で加熱溶解させた後、さらにシクロペンタジエン系オリゴマーを添加し、加熱溶解させた。
【0062】
次に該溶解物に微粉末シリカを35℃以下で添加し、これをプラネタリーミキサーで混練し、比重が1.04〜1.06の分離用組成物を得た。
次いで、10ml容量の硬質ガラス製試験管20本に、上記分離用組成物を各1.5gずつ収容し採血管を調製した。
【0063】
[性能評価]
採血管20本のうち、10本は室温保存し、残り10本は55℃で一週間、加熱保存した。その後全ての採血管に羊のクエン酸添加保存血液を各3mlずつ採取し、1800Gで5分間遠心分離し、形成された分離剤隔壁による血漿と血球の分離状態、溶血の有無、油状浮遊物の有無を目視観察した。
【0064】
[結果]
結果を表4に示す。実施例1〜12のいずれにおいても油状浮遊物は発生しなかった。
【0065】
(比較例1〜9)
[分離用組成物・採血管の調製]
表1及び表3に示すように各成分を配合したこと以外は、実施例1〜12と同様にして、比重が1.03〜1.06の比較例1〜9の各分離用組成物を得た。なお、比較例2では、非多環式炭化水素として塩化パラフィンを多環式炭化水素の代わりに用いた。
次いで、10ml容量の硬質ガラス製試験管20本に、上記分離用組成物を各1.5gずつ収容し採血管を調製した。
【0066】
[性能評価]
遠心力が1800Gまたは5000Gである他は実施例と同様にして、形成された分離剤隔壁による血漿と血球の分離状態、溶血の有無、油状浮遊物の有無を目視観察した。
【0067】
[結果]
結果を表5に示す。
比較例7では有機ゲル化剤が過剰であったため、5000Gの遠心力においても隔壁を形成できず、分離用組成物としての機能を果たせなかった。比較例1〜6,8,9ではいずれにおいても加熱試験後、あるいは室温保存及び加熱試験後の両方において油状浮遊物が血漿中に観察された。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【発明の効果】
本発明の血清または血漿分離用組成物は、上記構成のごとく多環式炭化水素化合物を含有するので、シクロペンタジエン系オリゴマーとフタル酸エステルとの相溶性と相溶化安定性が飛躍的に高められる。
【0074】
しかも多環式炭化水素化合物が非極性であるため、これを含有する本発明の組成物は血中薬物の吸着を起こさず、血中濃度のモニタリングの精度を高めることができる。
【0075】
また、本発明の組成物を用いることにより、長期あるいは加熱条件下で保存された場合においても、遠心分離後の血清または血漿中に油状成分が浮遊することがない血液検査容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る血液検査用容器の一例を模式的に示す縦断面図。
【符号の説明】
1…管状容器
2…血清または血漿分離用組成物
3…栓体
Claims (4)
- 分子内に不飽和および/または飽和環式構造を有し、且つ凝固点または流動点が0℃以下である多環式炭化水素化合物、シクロペンタジエン系オリゴマー、及びフタル酸エステルを含有することを特徴とする血清または血漿分離用組成物。
- 多環式炭化水素化合物の不飽和環式構造が芳香環である請求項1に記載の血清または血漿分離用組成物。
- シクロペンタジエン系オリゴマー100重量部に対し、分子内に不飽和または飽和環式構造を有し、且つ凝固点または流動点が0℃以下である多環式炭化水素化合物を1から300重量部、及びフタル酸エステルを5から40重量部含有することを特徴とする請求項1から3に記載の血清または血漿分離用組成物。
- 請求項1から4に記載の血清または血漿分離用組成物を収容した血液検査用容器。
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