JP3908902B2 - 薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム及び薄肉鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、普通鋼、ステンレス鋼、合金鋼、珪素鋼及びその他の鋼や合金、金属の溶湯から、直接、薄肉鋳片を鋳造する、単ドラム式連続鋳造機または双ドラム式連続鋳造機の冷却ドラムの表面構造及び表面材質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一対の冷却ドラム(以下「ドラム」ということがある。)を備えた双ドラム式連続鋳造装置、または、一個の冷却ドラムを備えた単ドラム式連続鋳造装置により、板厚1〜10mmの薄肉鋳片(以下「鋳片」ということがある。)を連続鋳造する技術が開発されている。
【0003】
この技術は、最終製品に近い形状と肉厚の薄肉鋳片を製造するものであるから、歩留り良く、所要レベルの品質を有する最終製品を最終的に得るために、該技術に対しては、割れや亀裂等の表面欠陥や、酸洗むらが皆無の鋳造鋳片を得ることが不可欠のこととして要求される。
特に、ステンレス鋼の薄板製品においては、高品質の表面性状が求められるので、酸洗むらのない薄肉鋳片を鋳造することが大きな課題となる。
【0004】
この表面欠陥は、薄肉鋳片を連続鋳造する際、冷却ドラムの表面において、凝固シェルの生成が一様でない、即ち、溶鋼の急冷・凝固の態様が一様でないことに起因する熱収縮応力の不均衡に基づいて形成されるものであることが知られていて、これまで、この熱収縮応力の不均衡が鋳片内部に極力残らないように溶鋼を冷却、凝固せしめる冷却ドラムの周面構造が種々提案されている。
【0005】
例えば、特開平4−238651号公報には、周面に50〜200μmの深さの窪みを15〜30%の面積率で形成するとともに、10〜50μmの深さの窪みを40〜60%の面積率で形成した連続鋳造用の冷却ドラムが開示されている。また、特開平6−328204号公報には、周面に直径100〜300μm、深さ100〜500μmの窪みを15〜50%の面積率で形成するとともに、直径400〜1000μm、深さ10〜100μm、周面の接線に対し垂直な線と窪みの側面とのなす角度が45〜75°の窪みを40〜60%の面積率で形成した連続鋳造用の冷却ドラムが開示されている。
【0006】
そして、これらの冷却ドラムは、鋳片表面における表面割れや亀裂の発生を抑制するとともに、もう一方の代表的な表面欠陥である酸洗むらの発現を抑制するもので、光沢むらのないステンレス鋼薄板製品を製造する上において、顕著な効果を奏するものである。
また、特開平11−179494号公報には、周面に多数の突起(好ましくは、高さ20μm以上、直径0.2〜1.0μm、最近接間隔0.2〜1.0mm)を形成した連続鋳造用の冷却ドラムが開示されている。この冷却ドラムは、薄肉鋳片の連続鋳造において、表面欠陥を皆無に近い状態にまで抑制できるものである。
【0007】
さらに、特開平9−103849号公報には、周面に、Ni層と厚み10〜500μmのCo層とが順に形成されており、該Ni層とCo層の厚みの和が500μm〜2mmであり、該Co層の表面には平均深さ30〜150μmの窪みが形成されている冷却ドラムが開示され、また、特開平9−103850号公報には、周面にNi層を形成し、該Ni層にショットブラスト処理を施して平均深さ10〜50μmの窪みを設けた後、厚み10〜500μmの電気メッキを施し、該窪みの平均深さを30〜150μmにした冷却ドラムが開示されている。
【0008】
これらの冷却ドラムは、ドラムの周面構造及び周面材質を改善・工夫することにより、薄肉鋳片における割れの発生の抑制や、ドラム寿命の延長を図ったもので、顕著な効果を奏するものである。
このように、板厚1〜10mmの薄肉鋳片を連続鋳造する技術においては、冷却ドラムの周面構造や周面材質を改善・工夫することにより、酸洗むらを含む表面欠陥を抑制するのに、大きな成功を納めている。
【0009】
しかしながら、操業中、冷却ドラムとその両側に当接するサイド堰で形成される溶鋼を受容する湯溜まり部を不活性雰囲気で包囲し、スカムの生成をできるだけ抑制しても、溶鋼の内部から、介在物や混入したスラグが浮上したりして、相当量のスカムが、溶鋼表面上に浮遊し、凝集することは避けられない。そして、このスカムが冷却ドラムと溶鋼の間に巻き込まれて、薄肉鋳片の表面に酸洗むらが発現する。
【0010】
この酸洗むらの部分は、最終薄板製品においては、光沢むらとして発現し、製品素材としての価値を低めるから、最終薄板製品の品質と歩留りを、さらに高めるためには、薄肉鋳片を連続鋳造する際、スカムの生成を極力抑制することに加え、スカムが巻き込まれても、薄肉鋳片に酸洗むらが発生するのを極力抑制できる、できれば該発生を皆無にすることができる、何らかの対策が必要とされている。
【0011】
そこで、本発明者は、その対策を探るべく、酸洗むらが発現した薄肉鋳片について詳細に調査した。その結果、本発明者は、酸洗むらが発現した領域とそうでない領域との境界近傍に、従前知られている表面割れとは形態の異なる“割れ”が発生しているのを発見した。この“割れ”(以下「酸洗むら付随割れ」という。)を、図1に示す。
【0012】
図1から分かるように、“酸洗むら付随割れ”は、酸洗むらの発生していない部位で発生する表面割れ(以下「ディンプル割れ」ということがある。)とは、当然に、割れの起源、位置、形態等の点で異質なものである。
したがって、これまでの手段では、上記異質な“酸洗むら付随割れ”を防止することは困難である。
【0013】
このように、薄肉鋳片の連続鋳造においては、“ディンプル割れ”及び“酸洗むら”の発生を抑制するという課題の他に、“酸洗むら付随割れ”の発生を抑制するという課題を、新たに抱えることになった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、薄肉鋳片の連続鋳造において、“ディンプル割れ”の発生を抑制するとともに、“酸洗むら”及び“酸洗むら付随割れ”の発生を抑制することを課題とし、該課題を、溶鋼の凝固態様に大きく影響する冷却ドラムの周面周面構造及び周面材質の点から解決することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
酸洗むらは、スカムが付着した部位において溶鋼の凝固が遅れ、その結果、スカム付着部の凝固組織が、その周辺の凝固組織と異なるものになることに起因して、酸洗後、鋳片表面に“むら”として発現したものであるから、冷却ドラムの表面上での溶鋼の凝固態様が、“酸洗むら付随割れ”の発生にも、大きく関与しているものと推測される。
【0016】
そこで、本発明者は、まず、図1に示すような“酸洗むら付随割れ”が発生した薄肉鋳片の凝固態様について調査したところ、“酸洗むら付随割れ”は、基本的には、スカムの流入、付着によって、冷却ドラムと溶鋼との界面の熱抵抗が変化し、スカムが付着した部位とそうでない部位とで、形成される凝固シェルの厚さに差が生じることに起因するものであるところ、具体的には、凝固シェル厚の不均一度が20%を超える部位で発生していることが判明した。
【0017】
図2に、その発生機構を模式的に示す。スカム1が付着した部位では、冷却ドラム10と溶鋼9との界面における熱抵抗が変化し、溶鋼の凝固が遅れるので、凝固シェル2の厚さは、他の部位における凝固シェルの厚さより薄いものとなるが、スカム1とディンプル3の凹面との間に形成されるガスギャップ4との相乗作用により、厚い凝固シェルと薄い凝固シェルとの境界部(凝固シェル厚の不均一部分)に、“歪み”が発生し、蓄積される。そして、この凝固シェル厚の不均一度が、20%を超えると、図2に示すように、上記境界部で“酸洗むら付随割れ5”が発生する。
【0018】
上記のように、“酸洗むら付随割れ5”の原因となる“歪み”の発生、蓄積には、スカム1とディンプル3の凹部との間に形成されるガスギャプ4の存在も関連しているので、本発明者は、さらに、ディンプルの“深さ”を変えることにより溶鋼の凝固態様を変化させ、凝固態様の変化(この変化を示す指標として、“ディンプル深さ”を用いた。)と、“ディンプル割れ”及び“酸洗むら付随割れ”の発生状況(発生状況を示す指標として、“割れ長さ”を用いた。)との関連性を調査した。
【0019】
その結果を、図3に示す。この図によれば、ディンプルの深さ(μm)を浅くすれば、“ディンプル割れ”の発生を防止できるが、逆に、“酸洗むら付随割れ”の発生を助長することが分かる。
このように、本発明者は、“酸洗むら付随割れ”と“ディンプル割れ”の発生もしくは発生抑制は、冷却ドラムの周面に形成したディンプルの深さとの関係でみると、トレードオフの関係にあることを見いだした。
【0020】
ここで、図4に、“ディンプル割れ”の発生機構を模式的に示す。ディンプル3の頂部に当接した溶鋼部位に凝固核が生成し(図中「6」参照)、ここから凝固が進行するが、ディンプル3の凹部に侵入して形成される溶鋼の凸部7が凝固するとき、凝固はディンプル単位で比べると不均一であり、この不均一に起因して、ディンプル単位毎に不均一応力・歪みが蓄積される。そして、この不均一応力・歪みが原因となって、“ディンプル割れ8”が発生する。
【0021】
溶鋼の凸部7が凝固するとき、スカム1が付着した部位では、スカムが熱抵抗となり、当然に凝固が遅れるが、この場合、凝固の遅れにより、上記不均一応力・歪みが緩和される。
以上の調査結果から得られた知見をまとめると、以下のとおりである。
(a)溶鋼は、ディンプルの頂部に当接するが、ガスギャップの存在により、その底部には、完全に当接しない。
(b)ディンプルの頂部に当接した溶鋼は、頂部に当接していない溶鋼より速く凝固する。
(c)溶鋼とディンプル表面との間にガスギャップが存在すると、ガスギャップが熱抵抗として作用し、溶鋼の凝固が遅くなる。
(d)スカムが付着した溶鋼とディンプル表面との間にガスギャップが存在すると、スカムとガスギャップが熱抵抗として作用し、溶鋼の凝固がより遅くなる。その結果、スカムが付着した部位の凝固シェルの厚さと、そうでない部位の凝固シェルの厚さに差が生じ、厚み境界部に、不均一応力・歪みが蓄積される。これが、“酸洗むら付随割れ”の原因となる。
(e)“ディンプル深さ”が浅ければ、溶鋼のディンプル凹部への侵入高さ(凸部の高さ)は低いので、ディンプル単位毎の不均一応力・歪みの蓄積が緩和され、“ディンプル割れ”の発生が抑制されるが、逆に、スカムとガスギャップに基づく凝固遅れに起因する不均一応力・歪みの蓄積が助長され、“酸洗むら”とともに“酸洗むら付随割れ”が頻発する。
(f)“ディンプル深さ”が深ければ、溶鋼のディンプル凹部への侵入高さ(凸部の高さ)は高いので、ディンプル単位毎の不均一応力・歪みの蓄積が助長され、“ディンプル割れ”が頻発するが、逆に、スカムとガスギャップに基づく凝固遅れに起因する不均一応力・歪みの蓄積は緩和されるので、“酸洗むら”とともに“酸洗むら付随割れ”の発生が抑制される。
【0022】
そして、本発明者は、これらの知見に基づき、ディンプルの形態において、まず、“ディンプル割れ”を抑制できる“ディンプル深さ”を確保し、この“ディンプル深さ”を前提に、ディンプルの表面に、
(x)熱抵抗となるガスギャップを形成しない、
(y)頂部に当接した溶鋼の凝固を遅らせる、及び、
(z)底部に当接した溶鋼の凝固を促進する、
機能を付与すれば、従来、スカム付着部位での凝固遅れに基づき、凝固シェルの厚み境界部に蓄積される不均一応力・歪みを低減することができ、結果として、“ディンプル割れ”の発生、及び、“酸洗むら”と“酸洗むら付随割れ”の発生の両方を抑制できるのでないかとの発想に至った。
【0023】
そして、本発明者は、上記発想の下において、冷却ドラムの周面に形成するディンプルにおいて、上記(x)の機能を果たす表面について、鋭意、調査研究を行った。その結果、ガスギャップの存在は、冷却ドラムの表面とスカムとの濡れ性に大きく関係していて、
(X)冷却ドラム表面に、スカムとの濡れ性が良い物質が存在すると、スカムが該表面になじみ、ガスギャップが形成され難い、
との知見を得た。
【0024】
なお、冷却ドラムの表面には、通常、Niメッキが施されるが、スカムとの濡れ性が良い物質としてNi−W合金が好適であることが判明した。
さらに、本発明者は、同様に、上記(y)及び(z)の機能を果たす表面について、鋭意、調査研究を行った。その結果、
(Y)ディンプルの頂部に、所定形状の“丸み”をつけるか、もしくは、所定形状の“細孔”を形成すると、ディンプル頂部に当接した溶鋼の凝固を遅らせることができる、
との知見を得た。
【0025】
また、ガスギャップの形成を抑制し、かつ、ディンプルの頂部に“丸み”をつけたり“細孔”を形成したりすると、溶鋼は、冷却ドラムの圧下力の下で、容易にディンプルの底部に当接し、発生した凝固核を起点にして凝固するが、
(Z)ディンプルの底部に、“微小突起”を形成しておくと、凝固核の生成が促進されて、溶鋼の凝固がより速く進行する、
との知見を得た。
【0026】
本発明は、以上の知見に基づき、さらにディンプルの形状と、ディンプルの頂部に形成する“丸み”や“細孔”の形状、また、ディンプルの底部に形成する“微小突起”の形状との好ましい関係を確認してなされたものである。
そして、薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラムに係る発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されて窪みの頂部は鋭角的な形状をなしているとともに、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(2)薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されて窪みの頂部は鋭角的な形状をなしているとともに、該窪みの表面に、窪みの平均深さよりも小さい高さの微小突起であって、高さが1〜50μm、円相当の径が5〜200μmの微小突起が形成されていて、さらに、該表面には、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(3)薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されているとともに、該窪みの頂部に、高さが1〜50μm、円相当の径が30〜200μmの微小突起が、相互に隣接して形成されていて、さらに、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(4)薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されているとともに、該窪みの頂部に、高さが1〜50μm、円相当の径が5〜200μmの微小突起が、相互に隣接して形成され、かつ、該窪みの表面に、窪みの平均深さよりも小さい高さの微小突起であって、高さが1〜50μm、円相当の径が5〜200μmの微小突起が形成されていて、さらに、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(5)薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されているとともに、該窪みの頂部に、深さが5〜100μm、円相当の径が5〜200μmの細孔が形成され、かつ、該窪みの表面に、窪みの平均深さよりも小さい高さの微小突起であって、高さが1〜50μm、円相当の径が5〜200μmの微小突起が形成されていて、さらに、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(6)前記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質が、連続鋳造される溶鋼を構成する元素と同一の元素の酸化物であることを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)または(5)記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(7)前記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質が、冷却ドラム周面上のメッキを構成する元素の酸化物であることを特徴とする前記(1)、(2)、(3)、(4)または(5)記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(8)前記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が、冷却ドラム周面上のメッキが酸化して形成された皮膜であることを特徴とする(1)または(2)記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(9)前記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が、冷却ドラム周面上のメッキに、溶鋼中の成分元素が酸化して生成した酸化物が付着して形成された皮膜であることを特徴とする(1)または(2)記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(10)前記メッキが、Niよりも酸化され易い元素を含むメッキであることを特徴とする前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(8)または(9)記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
(11)前記メッキが、W、Co、Fe、Crの1種または2種以上を含むメッキであることを特徴とする前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(8)または(9)記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
【0027】
また、前記(1)〜(11)のいずれかに記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラムを用いる連続鋳造方法に係る発明の要旨は、以下のとおりである。
(12)一方向に回転する、前記(1)〜(11)のいずれかに記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラムの周面上に溶鋼を注入し、該溶鋼を該冷却ドラムの周面上で冷却、凝固させ、薄肉鋳片を連続鋳造することを特徴とする薄肉鋳片の連続鋳造方法。
(13)平行に配置され互いに逆方向に回転する一対の、前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラムの周面の一部に湯溜り部を形成し、該湯溜り部に注入した溶鋼を、該冷却ドラムの周面上で冷却、凝固させ、薄肉鋳片を連続鋳造することを特徴とする薄肉鋳片の連続鋳造方法。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム(以下「本発明の冷却ドラム」という。)は、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されているとともに、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜が形成されていることを基本的な技術思想とする。
【0029】
これは、前記知見に従い、メッキが施されたドラム周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜を形成することにより、冷却ドラムの周面に、該周面と溶鋼との間で熱抵抗となるガスギャップの生成を極力抑制することができる機能を付与したものである。
冷却ドラムの周面上で、凝固シェルが形成される際、スギャップが存在しなければ、スカムが流入し、スカムが付着した部位の溶鋼の凝固が遅れても、スカムが付着していない溶鋼の凝固との間に、“酸洗むら付随割れ”を誘起するに足る凝固不均一は生じない。
【0030】
通常、薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラムの表面には、緩冷却化と長寿命化(熱応力による表面の亀裂の発生防止)のために、Cuより熱伝導率が低く、かつ、硬くて熱応力に強いNiメッキを施すが、該メッキは、Niよりも酸化され易い元素、例えば、W、Co、Fe、Crの1種または2種以上を含むメッキであることが好ましい。
【0031】
本発明の冷却ドラムにおいては、ドラムの表面における緩冷却化と長寿命化を維持しつつ、スカムとの濡れ性を改善するため、該表面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜を形成する。
スカムは、溶鋼を構成する元素の酸化物の凝集体であるから、上記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質としては、連続鋳造される溶鋼を構成する元素の酸化物が好ましい。
【0032】
そして、上記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜は、溶鋼を構成する元素の酸化物を、スプレーやロールコーター等の手段で、冷却ドラムのメッキ周面に被覆した皮膜でもよいし、また、操業中、冷却ドラム周面上のメッキに、溶鋼中の成分元素が酸化して生成した酸化物が付着して形成された皮膜でもよい。
【0033】
また、上記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質は、冷却ドラム周面上のメッキを構成する元素の酸化物であってもよい。これは、冷却ドラム周面上のメッキが溶鋼の熱で酸化されて生成した酸化物は、スカムとの濡れ性が、該メッキよりも良いからである。
それ故、実際には、冷却ドラム周面上に、改めて、メッキを構成する元素の酸化物の皮膜を形成する必要はなく、操業中、溶鋼の熱で冷却ドラムの周面上に形成されたメッキの酸化物をそのまま残して使用することができる。
【0034】
本発明の冷却ドラムにおいては、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されている。
窪み(ディンプル)の平均深さは40〜200μmとする。この平均深さが40μm未満であると、ディンプルによるマクロな応力歪みの緩和効果が得られないので、下限は40μmとする。一方、平均深さが200μmを超えると、ディンプル底部への溶鋼の侵入が不充分となり、ディンプルの不均一性が増大するので、上限は200μmとする。
【0035】
窪みの大きさは、円相当の径で0.5〜3mmとする。この径が0.5mm未満であると、ディンプル底部への溶鋼の侵入が不充分となり、ディンプルの不均一性が増大するので、下限は0.5mmとする。一方、円相当の径が3mmを超えると、ディンプル単位での応力・歪みの蓄積量が多くなり、ディンプル割れが発生し易くなるので、上限は3mmとする。そして、本発明の冷却ドラムにおいては、上記形状の窪みを、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成する。
【0036】
このような窪みを形成すると、窪みそれぞれが、凝固シェルに働く応力・歪みを分散化することができ、凝固シェルに働くマクロな応力・歪みを低減することが可能となる。
本発明の冷却ドラムにおいては、上記形状の窪みの表面に、高さが1〜50μm、円相当の径が5〜200μmの微小突起を形成することが好ましい。この微小突起により、窪みの表面に当接した溶鋼の凝固を促進することができる。
【0037】
高さが1μm未満であると、突起が溶鋼と充分に接触することができず、凝固核の生成が起こらず、溶鋼の凝固を促進することができないので、下限は1μmとする。一方、高さが50μmを超えると、突起底部での溶鋼の凝固が遅れ、窪み内での凝固シェルの不均一が発生するので、上限は50μmとする。
また、円相当の径が5μm未満であると、突起での冷却が不充分となり、凝固核の生成が起こらないので、下限は5μmとする。一方、円相当の径が200μmを超えると、突起への溶鋼の接触が不充分な部位が発生し、凝固核の生成が不均一となるので、上限は200μmとする。
【0038】
そして、上記微小突起は、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜が形成されているものである。
また、本発明の冷却ドラムにおいて、上記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜が形成されている微小突起は、溶鋼中の成分元素が酸化して生成した酸化物が付着した微小突起であってもよい。上記微小突起に、溶鋼中の成分元素が酸化して生成した酸化物が付着することにより、微小突起とスカムとの濡れ性がより向上し、該微小突起に当接した溶鋼部位において、より多くの凝固核発生起点の生成を促し、溶鋼の凝固を速めることができる。
【0039】
本発明の冷却ドラムにおいては、上記形状の窪みの頂部に、高さが1〜50μm、円相当の径が30〜200μmで、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜が形成されている微小突起が、相互に隣接して形成されていることが好ましい。
ディンプルを形成したままのディンプルの頂部は、鋭角的な形状をなしているが、該頂部に、多数の上記微小突起を相互に隣接した態様で形成することとにより、“丸み”をつけることができる。この“丸み”により、ディンプルの頂部に当接した溶鋼においては、凝固核の生成が遅延し、凝固の進行が遅れることになる。また、上記“丸み”を帯びたディンプル頂部は、ディンプルの凹部に溶鋼が侵入するのを促進する作用をなす。その結果、溶鋼は、溶鋼の静圧や冷却ドラムの圧下力の下で、容易にディンプルの底部に当接することになる。
【0040】
高さが1μm未満であると、ディンプル頂上部での凝固核生成の遅延効果が得られないので、下限は1μmとする。一方、高さが50μmを超えると、ディンプル底部への溶鋼の侵入が不充分となるので、上限は50μmとする。
また、円相当の径が、30μm未満であると、ディンプル頂上部での凝固核生成の遅延効果が得られないので、下限は30μmとする。一方、円相当の径が200μmを超えると、ディンプルによる応力・歪みの緩和効果が得られないので、上限は200μmとする。
【0041】
さらに、ディンプルを形成したままで、鋭角的な形状をなしているディンプルの頂部に、微小突起の替わりに、深さが5μm以上、円相当の径が5〜200μmの“細孔”を形成することが好ましい。この“細孔”の形成により、ディンプルの頂部における鋭角的な形状が消滅するとともに、ガスを保持する緩冷却部(エアギャップ)が形成されるので、“細孔”を有するディンプル頂部は、該頂部に当接した溶鋼における凝固核の生成を遅延せしめ、凝固の進行を遅くらせる作用をなす。また、“細孔”を有するディンプル頂部は、ディンプルの凹部に溶鋼が侵入するのを促進する作用をなす。その結果、溶鋼は、溶鋼の静圧や冷却ドラムの圧下力の下で、容易にディンプルの底部に当接することになる。
【0042】
深さが5μm未満であると、細孔部でのエアギャップの形成が不充分となり、凝固核生成の遅延効果が得られないので、下限は5μmとする。
また、円相当の径が5μm未満であると、細孔部以外の頂上近傍で凝固核が生成し、ディンプル底部への溶鋼の侵入促進効果が得られないので、下限は10μmとする。一方、円相当の径が200μmを超えると、ディンプル頂上部の高さが見かけ上低くなり、応力・歪みの緩和効果が得られないので、上限は200μmとする。
【0043】
本発明の冷却ドラムにおいては、鋼種や、所望の板厚、品質に応じ、上記微小突起及び細孔を、適宜、組合せて、冷却ドラムの周面構造を構成することができるが、最大の特長とするところは、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜を形成することである。
即ち、本発明の冷却ドラムは、“ディンプル割れ”の発生、及び、“酸洗むら”及び“酸洗むら付随割れ”の発生の両方を抑制し、高品質の薄肉鋳片、最終薄板製品を歩留り良く製造するため、ドラムの周面構造及び周面材質の両観点から改善をしたものである。
【0044】
そして、本発明の冷却ドラムは、単ロール式の連続鋳造、及び、双ロール式の連続鋳造のいずれにも使用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、実施例で用いた冷却ドラムの周面構造及び周面材質、及び、連続鋳造条件に限定されるものではない。
【0045】
【実施例】
SUS304系ステンレス鋼を双ドラム式連続鋳造機により、板厚3mmの帯状薄肉鋳片に鋳造し、冷間圧延して板厚0.5mmの薄板製品を製造した。上記鋳片を鋳造するに際し、幅1330mm、直径1200mmの冷却ドラムの外筒部は銅製とし、外筒部の周面には厚み1mmのNiメッキを施した後、表1に示す被覆層を形成した。
【0046】
なお、表1において、窪みは、ショットブラストで加工したものである。
割れ・光沢むらは、薄肉鋳片を冷間圧延及び酸洗焼鈍後に、肉眼観察により判定した。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、表面割れ、亀裂等の表面欠陥や、酸洗むらに加え、酸洗むら付随割れのない薄肉鋳片を能率よく製造することができる。
したがって、本発明は、表面性状に優れ、かつ、光沢むらのない高品質のステンレス鋼薄鋼板を、歩留り良く安価に提供することができ、ステンレス鋼を、製品素材や、建材として使用する消費財製造業や、建築業等の発展に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続鋳造した薄肉鋳片の表面に発現した“酸洗むら”と“酸洗むら付随割れ”の態様を示す図である。
【図2】図1に示す“酸洗むら付随割れ”の発生機構を模式的に示す図である。
【図3】“ディンプル深さ”(凝固態様)と、“ディンプル割れ”及び“酸洗むら付随割れ”の“割れ長さ”(発生状況)との関連性を示す図である。
【図4】“ディンプル割れ”の発生機構を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…スカム
2…凝固シェル
3…ディンプル
4…ガスギャップ
5…酸洗むら付随割れ
6…凝固核生成
7…溶鋼の凸部
8…ディンプル割れ
9…溶鋼
10…冷却ドラム
Claims (13)
- 薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されて窪みの頂部は鋭角的な形状をなしているとともに、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されて窪みの頂部は鋭角的な形状をなしているとともに、該窪みの表面に、窪みの平均深さよりも小さい高さの微小突起であって、高さが1〜50μm、円相当の径が5〜200μmの微小突起が形成されていて、さらに、該表面には、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されているとともに、該窪みの頂部に、高さが1〜50μm、円相当の径が5〜200μmの微小突起が、相互に隣接して形成されていて、さらに、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されているとともに、該窪みの頂部に、高さが1〜50μm、円相当の径が30〜200μmの微小突起が相互に隣接して形成され、かつ、該窪みの表面に、窪みの平均深さよりも小さい高さの微小突起であって、高さが1〜50μm、円相当の径が5〜200μmの微小突起が形成されていて、さらに、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、メッキが施されたドラム周面に、平均深さが40〜200μm、円相当の径が0.5〜3mmの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形成されているとともに、該窪みの頂部に、深さが5〜100μm、円相当の径が5〜200μmの細孔が形成され、かつ、該窪みの表面に、窪みの平均深さよりも小さい高さの微小突起であって、高さが1〜50μm、円相当の径が5〜200μmの微小突起が形成されていて、さらに、該周面に、スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が形成されていることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 前記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質が、連続鋳造される溶鋼を構成する元素と同一の元素の酸化物であることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 前記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質が、冷却ドラム周面上のメッキを構成する元素の酸化物であることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 前記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が、冷却ドラム周面上のメッキが酸化して形成された皮膜であることを特徴とする請求項1または2記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 前記スカムとの濡れ性がNiよりも良い物質を含む皮膜であって、スカムとの濡れ性がNiよりも良い皮膜が、冷却ドラム周面上のメッキに、溶鋼中の成分元素が酸化して生成した酸化物が付着して形成された皮膜であることを特徴とする請求項1または2記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 前記メッキが、Niよりも酸化され易い元素を含むメッキであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、8または9記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 前記メッキが、W、Co、Fe、Crの1種または2種以上を含むメッキであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、8または9記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラム。
- 一方向に回転する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラムの周面上に溶鋼を注入し、該溶鋼を該冷却ドラムの周面上で冷却、凝固させ、薄肉鋳片を連続鋳造することを特徴とする薄肉鋳片の連続鋳造方法。
- 平行に配置され互いに逆方向に回転する一対の、請求項1〜11のいずれか1項に記載の薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラムの周面の一部に湯溜り部を形成し、該湯溜り部に注入した溶鋼を、該冷却ドラムの周面上で冷却、凝固させ、薄肉鋳片を連続鋳造することを特徴とする薄肉鋳片の連続鋳造方法。
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