JP3932083B2 - 光触媒機能を有する被膜の形成方法 - Google Patents

光触媒機能を有する被膜の形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂製品などの樹脂製基材の表面上に、光触媒機能を有する被膜を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光触媒は、光エネルギーを利用して有機物を分解するという光触媒作用を有する。こうした光触媒が含まれる被膜を樹脂製基材の表面上に形成すれば、その被膜の表面上に有機物が付着しても、その有機物は光触媒により分解されて自然に浄化される。
【0003】
しかしながら、こうした光触媒機能を有する被膜(以下、光触媒被膜と称する)を樹脂製基材の表面上に直接形成すると、光触媒被膜は、その表面に付着した有機物だけでなく、接する樹脂製基材の界面も分解してしまう。その結果、その樹脂製基材の界面が劣化して、光触媒被膜が樹脂製基材から剥離してしまうことがある。
【0004】
そこで、従来より、樹脂製基材の表面上にシリコーン系硬化重合組成物のような光触媒で分解されない塗料を用いて下地層を形成した後、その下地層上に光触媒を含む光触媒層を形成することにより、光触媒被膜を形成する方法が提案されている。このような下地層と光触媒層との2層から構成される光触媒被膜では、下地層が光触媒層の光触媒による樹脂製基材の分解を防ぐことができるため、光触媒被膜が接する樹脂製基材の界面の劣化を防止することができ、樹脂製基材からの光触媒被膜の剥離を防止することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで光触媒被膜は、光が当たる環境で用いられるため、外部から引っ掻きや摩擦力などを受けたりする可能性が高い。それゆえ、光触媒被膜には耐摩耗性も要求されることが多い。そこで光触媒被膜に耐摩耗性を付与する方法として、硬度の高い下地層を形成することが考えられる。
【0006】
例えば前記シリコーン系硬化重合組成物の一種にシラン誘導体がある。このシラン誘導体は、加水分解反応できる官能基の数により、図2に示すように4官能型、3官能型及び2官能型に分けられる。これら3種類のシラン誘導体のうち4官能型のシラン誘導体を用いれば、重合に関わる結合数を多くすることができ、下地層の硬度を高くすることができる可能性がある。
【0007】
しかし、4官能型のシラン誘導体を多量に用いると、樹脂製基材と下地層との硬度差が大きくなる。その結果、光触媒被膜の形成時又はその使用時において起こりうる体積変化の度合いの違いにより、下地層にクラックが発生しやすくなる。このことは、特開平9−227829号公報においても示唆されている(この公報によれば、被膜における加水分解性4官能シラン誘導体の含有量が30モル%を超える場合、被膜にクラックが生じやすくなることが記載されている。)
このように下地層の硬度を単に高くするだけでは、樹脂製基材と下地層との硬度差が大きくなり、下地層にクラックが発生しやすくなってしまう。こうしたクラックが発生すると、樹脂製基材と下地層との密着性が損なわれて、光触媒被膜が樹脂製基材から剥がれてしまう。
【0008】
他方、特開平10−67873号公報に開示されているように、樹脂製基材の表面上に、先ずプライマー樹脂層たる下地層を形成し、その下地層上にシリコーン系熱硬化重合組成物からなる中間層を形成した後、その中間層上に光触媒を含む光触媒層を形成することにより、光触媒被膜を形成する方法が提案されている。このような下地層と中間層と光触媒層との3層から構成される光触媒被膜では、下地層が樹脂製基材と中間層との密着性に優れるため、光触媒被膜の樹脂製基材からの剥がれを十分に防止することができる。
【0009】
しかしながら、上記公報に開示されているような従来の下地層と中間層と光触媒層との3層から構成される光触媒被膜の形成方法においては、未だ耐摩耗性の点で不十分なことがあった。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、樹脂製基材との密着性に優れ、かつ従来の光触媒被膜よりもさらに耐摩耗性に優れた光触媒被膜を容易に形成することができる方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の光触媒機能を有する被膜(光触媒被膜)は、樹脂製基材の表面上に、シラノール基をもつポリシロキサン組成物を含有させた有機系組成物からなる未硬化下地層を形成した後、該有機系組成物を重合させて、該未硬化下地層を該樹脂製基材より硬度の高い下地層とする下地層形成工程と、該未硬化下地層又は該下地層上に、主として加水分解性4官能シラン誘導体を30モル%を超える量含有するように調製されたシリコーン系重合硬化組成物を用いて未硬化中間層を形成した後、該シリコーン系重合硬化組成物を重合させて該未硬化中間層を該下地層より硬度の高い中間層とする中間層形成工程と、該中間層上に光触媒が含まれる光触媒層を形成する光触媒層形成工程と、から構成されることを特徴とする。
【0012】
下地層形成工程においては、樹脂製基材に対して親和性(相溶性など)に優れた有機質の下地層を形成する。それゆえ、形成される下地層は樹脂製基材に対して優れた密着性を有する。
【0013】
中間層形成工程においては、主として加水分解性4官能シラン誘導体を30モル%を超える量含有するように調製されたシリコーン系重合硬化組成物を用いて中間層を形成するため、極めて硬度の高い中間層を形成することができる。この中間層は、従来の光触媒被膜の中間層よりも硬度の高いものであるため、光触媒被膜の耐摩耗性を従来のものよりもさらに高いものとすることができる。
【0014】
また、中間層は樹脂製基材よりも硬度の高い下地層上に形成される。すなわち、中間層は樹脂製基材よりも硬度差の小さい下地層の表面上に形成されるため、中間層には下地との高度差の違いによるクラックが生じにくくなる。その結果、下地層と中間層との間で優れた密着性が得られる。
【0015】
さらに、中間層は、光触媒によって分解されることのないシリコーン系重合硬化組成物より形成されるため、続く光触媒層形成工程で形成される光触媒層によって分解されることはない。
【0016】
以上のように、本発明によれば、樹脂製基材と光触媒被膜との間で優れた密着性が得られ、従来の光触媒被膜よりもさらに耐摩耗性に優れた光触媒被膜を容易に形成することができるようになる。こうした効果は、樹脂製基材の硬度が比較的低い場合に特に有効に得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、工程に分けて本発明の実施形態を説明する。
[下地層形成工程]
樹脂製基材については、その形状及び材質については特に限定されるものではない。例えば、自動車等の窓に使用するのであれば透明基板を採用することができ、歯車等に使用するのであれば不透明な基板を採用することもできる。例えば、アクリル系樹脂基板、メタクリル系樹脂基板、ポリカーボネート基板等を採用することができる。
【0018】
未硬化下地層の形成方法としては、有機系組成物を含む液状又はペースト状の合剤(第1合剤)を調製し、その第1合剤を樹脂製基材の表面上に塗布して形成する方法を挙げることができる。第1合剤には、有機系組成物の重合を促進させる硬化触媒を含有させてもよい。この硬化触媒により、未硬化下地層を容易に硬化させることができるようになる。
【0019】
ここで有機系組成物としては、樹脂製基材に対して優れた密着性をもち、かつ樹脂製基材よりも高い硬度を付与することができるものであれば特に限定されるものではないが、アクリル系重合硬化組成物を挙げることができる。
【0020】
アクリル系重合硬化組成物は、アクリル成分が樹脂製基材に対して高い親和性をもつ上、重合して高い架橋度の架橋組織を形成するため、樹脂製基材に対して優れた密着性をもち、かつ優れた耐摩耗性をもつようになる。それゆえ、有機系組成物としてアクリル系重合硬化組成物を用いることが望ましい。この場合には、アクリル系重合硬化組成物が含まれる未硬化下地層を形成した後、この未硬化下地層を重合させることにより耐摩耗性に優れた下地層を得ることができる。
【0021】
こうして形成された下地層は、上述したようなシリコーン系硬化重合組成物からなる中間層に比べれば低い硬度を有するものの、例えばポリカーボネートよりも高い硬度を有するものである。従って、樹脂製基材としてポリカーボネートよりなるものを用いる場合、有機系組成物としてアクリル系重合硬化組成物を用いる手段は特に有効である。
【0022】
ところで、下地層が樹脂製基材に対して十分に高い硬度をもたないと、中間層と下地層との硬度差を十分に小さくすることができず、中間層におけるクラックの発生を防止することができないことがある。こうしたクラックが発生すると、中間層と下地層との密着性が損なわれて、それらの層の間に剥がれが生じてしまう恐れがある。その結果、耐摩耗性に優れた光触媒被膜を得ることが難しくなる。
【0023】
特に中間層と樹脂製基材との中間の硬度をもつ下地層を形成すれば、樹脂製基材、下地層及び中間層の順に硬度が階段的に大きくなって、光触媒被膜が形成されるため、樹脂製基材と下地層との硬度差、及び下地層と中間層との硬度差の両方の差を十分に小さくすることができる。その結果、樹脂製基材と下地層との間、及び下地層と中間層との間で優れた密着性が得られ、さらに耐摩耗性に優れた光触媒被膜を容易に形成することができるようになる。
【0024】
前記アクリル系重合硬化組成物を用いれば、樹脂製基材に対して十分に高い硬度をもつ下地層を容易に形成することができる。
【0025】
前記アクリル系重合硬化組成物の種類については、所定の方法によって重合して硬化するものであれば特に限定されるものではなく、紫外線によって重合するアクリル系紫外線重合硬化組成物や、熱によって重合するアクリル系熱重合硬化組成物、電子線によって重合するアクリル系電子線重合硬化組成物などを挙げることができる。中でも、アクリル系紫外線重合硬化組成物を用いれば、樹脂製基材に損傷を与えることなく、樹脂製基材に対して十分に高い硬度をもつ下地層を容易に形成することができる。その他、ホスファゼン系重合硬化組成物(例えば、出光製PPZ)等を採用することができる。
【0026】
一方、有機系組成物として、Si−アクリル系重合硬化物等の無機−有機ハイブリッド材料を用いてもよい。具体的には、無機粒子に光重合反応性のある有機成分が結合している紫外線硬化型ハードコート材等(例えば、JSR製Z7503)を用いることができる。
【0027】
また、前記未硬化下地層には、シラノール基を有するポリシロキサン組成物を含有させることが望ましい。こうしたポリシロキサン組成物としては、シランカップリング剤やシリコーン系熱重合硬化組成物等を採用することができる。
【0028】
そのようなシランカップリング剤としては、特にシラノール基並びにメタクリル基、アクリル基、エポキシ基、アミノ基及びビニル基の少なくとも1種の有機系官能基を有するものが好ましい。こうしたシランカップリング剤として、シラノール基を有するシランカップリング剤(例えば、三菱化学製MSEP2HM)、マクロモレキュラーカップリング剤(例えば、日本ユニカー製MMCA)、エポキシ官能性シラン(例えば、信越化学工業製KBM−403、KBZ−402、KBE−403)、アクリル官能性シラン(例えば、信越化学工業製KBM−5102、KBM−5103)、紫外線硬化型シリコーンハードコート剤(例えば、信越化学工業製X−12−2400)等を採用することができる。メタクリル基又はアクリル基を有するシランカップリング剤として例えば、信越化学工業製KBM−503、KBM−502、KBE−502等、ビニル基を有するシランカップリング剤として例えば信越化学工業製KBE−1003、KBM−1003、KA−1003等を採用することが好ましい。さらに、有機系組成物が、シラノール基を有する無機−有機ハイブリッド材料であってもよい。
【0029】
上記のようなシラノール基を有するポリシロキサン組成物を未硬化下地層に含有させれば、シラノール基が未硬化下地層の表面側に位置するようになる。これは下地層が硬化しても変わらず、次いで下地層上に未硬化中間層を形成すれば、下地層にはシラノール基を介して未硬化中間層が被覆される。そして、未硬化中間層を硬化させれば、下地層のシラノール基と未硬化中間層のシラノール基とが脱水結合反応によりシロキサン結合され、下地層と中間層とが強固に結合する。こうして得られる光触媒被膜では、下地層と中間層とがさらに十分に密着するため、耐摩耗性がさらに向上する。
【0030】
下地層の層厚は1000nm以上であることが好ましい。下地層の層厚が1000nm未満であると、樹脂製基材及び中間層に対して優れた密着性を得ることが難しくなる。
[中間層形成工程]
未硬化中間層の形成方法としては、前記シリコーン系重合硬化組成物が含まれる液状又はペースト状の合剤(第2合剤)を調製し、その第2合剤を下地層上に塗布して形成する方法を挙げることができる。なお、本発明では、シリコーン系重合硬化組成物の加水分解性4官能シラン誘導体の含有量については特に限定されるものではないが、シリコーン系重合硬化組成物の全体を100モル%とすると、シリコーン系重合硬化組成物における加水分解性4官能シラン誘導体の含有量は30モル%を超える量であることが望ましい。加水分解性4官能シラン誘導体の含有量が30モル%以下では中間層に十分に高い硬度を付与するのに不十分である。特に、加水分解性4官能シラン誘導体のみを含むシリコーン系重合硬化組成物を用いることが特に望ましい。
【0031】
一方、第2合剤には、シリコーン系重合硬化組成物の重合を促進させる硬化触媒を含有させてもよい。この硬化触媒の働きにより、シリコーン系重合硬化組成物の重合の反応速度が大きくなって、中間層における重合の緻密さをさらに向上させることができる。
【0032】
なお、未硬化中間層が形成されるとき、下地層は必ずしも硬化していなくてもよい。すなわち、未硬化下地層上に未硬化中間層を形成してもよい。この場合、未硬化中間層を硬化させる際に未硬化下地層も同時に硬化させればよい。
【0033】
一般式SiX4で表される加水分解性4官能シラン誘導体としては、Xが炭素数1〜8のアルコキシル基又は塩素、臭素である加水分解性4官能シラン誘導体を採用でき、例えばテトラエトキシシランやテトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等を採用することが好ましい。特に、熱によって重合する加水分解性4官能シラン誘導体を採用すること、すなわちシリコーン系熱重合硬化組成物を用いることが好ましい。
【0034】
また、未硬化中間層はシリカを含むことが好ましい。このシリカにより中間層の硬度をさらに向上させることができる。
【0035】
未硬化中間層の層厚は、100〜2000nmであることが好ましい。未硬化中間層の層厚が2000nmを超える場合には硬化時の収縮によりクラックが発生しやすく、耐摩耗性が低下する。また、未硬化中間層の層厚が100nm未満では均一な塗膜が得られにくく、耐摩耗性が低下する。特に、後述するようにアルカリ処理を行う場合には、アルカリ液によりエッチングされて、層厚の均一性が失われ、耐摩耗性が低下する。
[光触媒層形成工程]
光触媒と結着剤とを含む第3合剤を調製し、その第3合剤を中間層上に塗布して形成することができる。第3合剤には、結着剤の光触媒及び中間層に対する結着速度を促進させる触媒を含有させてもよい。
【0036】
光触媒作用をもつ光触媒としては、公知となっている光触媒を用いることができ、例えばTiO2、ZnO、SnO2、SrTiO3、WO3、Bi23、Fe23などの金属酸化物を挙げることができる。中でも、TiO2(チタニア)は、優れた光触媒作用をもつ上に、生体に無害であってかつ化学的にも安定であるため、最適な光触媒である。なお、光触媒層は大きな硬度をもたなくても、その層厚を小さくして形成すれば、光触媒被膜は下地層及び中間層の影響を受け、特に中間層の影響を大きく受け、耐摩耗性が維持される。すなわち、中間層の硬度が十分に大きければ、光触媒被膜において優れた耐摩耗性を得ることができる。
【0037】
結着剤としてシリコーン系重合硬化組成物を用いれば、光触媒層自体の硬度を大きくすることができるため、光触媒被膜の耐摩耗性を向上させることができる。
【0038】
さらに、光触媒層の層厚は、1000nm以下であることが好ましい。光触媒層の厚みが1000nmを超えると、干渉や白化などが起こる可能性がある。特に光触媒としてチタニアを用いる場合、チタニアは高屈折率を有するため、干渉や白化などが起こりやすくなる。
【0039】
本発明では、中間層の表面を親水化処理した後、光触媒層を形成することが望ましい。中間層の表面を親水化処理することにより、光触媒層におけるチタニア等の光触媒たる金属酸化物が中間層に結合し、優れた耐久性を発揮できるようになる。この親水化処理の方法としては、アルカリ性液で処理する方法、プラズマを用いて処理する方法等が挙げられる。
【0040】
ところで、従来の光触媒被膜の形成方法では、下地層が酸で劣化してしまうものであった。このため、先ずpH5〜6程度の弱酸性のシリコーン系重合硬化組成物を含む合剤を調製し、この合剤を下地層上に塗布して未硬化中間層を形成した後、未硬化中間層に含まれるシリコーン系重合硬化組成物を重合させて中間層としていた。
【0041】
これに対して本発明では、シリコーン系重合硬化組成物は強酸を含むことが好ましい。本手段によれば、強酸によりシリコーン系重合硬化組成物の保存安定性を向上させることができる。これによりシリコーン系重合硬化組成物をいったん大量に調製しておけば、それを長期にわたって利用しても硬度の高い中間層を安定的に形成することができるようになる。このようなシリコーン系重合硬化組成物の大量調製によりその調製コストの低減を図ることができ、光触媒被膜の形成コストを低減することができるようになる。
【0042】
ただし、本手段では、下地層には、少なくともその表面部が耐強酸性を有する層を形成することが望ましい。例えば、樹脂製基材の表面上に有機系耐酸性組成物が含まれる未硬化下地層を形成した後、該未硬化下地層を硬化させて下地層とすることができる。
【0043】
上述したようにアクリル系重合硬化組成物が含まれる未硬化下地層を形成した後、この未硬化下地層に含まれるアクリル系重合硬化組成物を重合させて該未硬化下地層を硬化させて得た下地層は、耐酸性にも優れることがわかった。こうして形成した下地層であれば、シリコーン系重合硬化組成物を含む合剤が強酸性であっても劣化しにくい。そこで、pH1程度の強酸性のシリコーン系重合硬化組成物を含む合剤を調製し、この合剤を下地層上に塗布して未硬化中間層を形成した。その結果、その下地層では、強酸性の合剤によっても劣化しないことが確認された。
【0044】
ここで、未硬化中間層に含まれるシリコーン系硬化重合組成物を重合させて得られた中間層は、従来の光触媒被膜の形成方法で形成されていた中間層よりもさらに緻密な組織を有すると考えられる。それというのも、強酸の働きによってシリコーン系重合硬化組成物の重合の反応性が高くなった結果、その重合の反応速度が大きくなって組織の緻密化が促進されていると考えられるからである。
【0045】
本手段では、シリコーン系重合硬化組成物と強酸とが含まれる未硬化中間層を形成した後、その未硬化中間層に含まれるシリコーン系重合硬化組成物を重合させて中間層を形成するため、先述のように、従来の光触媒被膜の形成方法で形成されていた中間層よりも緻密な組織を有する中間層を形成することができる。一般に樹脂よりなる層ではその組織が緻密になるほどその硬度が大きくなるため、本発明に係る中間層は、従来の形成方法で形成されていた中間層よりも硬度が大きくなっていると考えられる。
【0046】
また、有機系耐酸性組成物からなる下地層は有機系であるため、樹脂製基材に対して優れた密着性が得られる上、耐酸性を有することから強酸が含まれる未硬化中間層によって劣化されにくい。それゆえ、中間層の形成中に下地層と未硬化中間層との密着性が低下しにくく、未硬化中間層が硬化して中間層が得られた後も下地層と中間層との密着性が保持される。
【0047】
ここで強酸の種類についても特に限定されるものではなく、塩酸や硝酸、硫酸などを挙げることができる。ただし、シリコーン系重合硬化組成物を劣化することのないものを用いる必要がある。
【0048】
未硬化中間層の酸性度は特に限定されるものではないが、下地層に用いる有機系耐酸性組成物の耐酸性度に応じて、できる限りpHの低い未硬化中間層を形成することが好ましい。これにより、シリコーン系重合硬化組成物の保存安定性をさらに向上させることができる。また、中間層の組織の緻密さをさらに向上させることも期待できる。
【0049】
特に、有機系耐酸性組成物としてアクリル系重合硬化組成物を用いれば、pH1の酸性度を有する未硬化中間層を形成することができる。このような未硬化中間層を形成することにより、極めて緻密な組織を有する中間層が形成されると考えられる。その結果、従来の形成方法で形成されていた中間層よりも硬度の高い中間層を形成できるようになると考えられる。
【0050】
ここで有機系耐酸性組成物としては、樹脂製基材に対して優れた密着性をもち、かつ中間層の強酸に対して耐酸性をもつ有機系の組成物であれば特に限定されるものではないが、耐酸性及び耐摩耗性に優れた有機系重合硬化組成物を用いることが望ましい。こうした有機系重合硬化組成物を用いて下地層を形成すれば、光触媒被膜の耐摩耗性をさらに向上させることができる。耐酸性及び耐摩耗性に優れた有機系重合硬化組成物としては、例えば先のアクリル系重合硬化組成物を挙げることができる。
【0051】
中でも、アクリル系重合硬化組成物は、重合して高い架橋度の架橋組織を形成するため、優れた耐酸性をもつようになる。それゆえ、有機系耐酸性組成物としてアクリル系重合硬化組成物を用いることが望ましい。この場合には、アクリル系重合硬化組成物が含まれる未硬化下地層を形成した後、この未硬化下地層を重合させることにより耐酸性に優れた下地層を得ることができる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を具体化した実施例を説明する。
(実施例1)
本実施例では、図1に示す手順により、樹脂製基材の表面上に、下地層、中間層及び光触媒層の3層から構成される光触媒被膜を形成した。
[下地層形成工程]
樹脂製基材として、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンML300)からなる樹脂基板1(100mm×100mm×4mm)を3枚用意した。
【0053】
また、アクリル系紫外線重合硬化組成物(日本精化製NSC−EX−2020)と、シラノール基を有するポリシロキサン組成物であるシランカップリング剤(三菱化学製MSEP2HM)とを混合して第1合剤を調製した。ここでは、アクリル系紫外線重合硬化組成物の固形分を100重量部とすると、シランカップリング剤を20重量部混合した。こうして得られた第1合剤を、イソプロピルアルコール(IPA)にて洗浄された先の各樹脂基板の表面上にフローコート法によりそれぞれ塗布し、未硬化下地層2aを形成した。ここでは、いずれの未硬化下地層2aについても層厚を2000nmとした。
【0054】
各未硬化下地層2aを80℃で5分間乾燥させて、未硬化下地層2a中の溶剤を除去した。所定位置に対して80W/cmの紫外線を照射できる紫外線ランプが2灯並列された紫外線照射装置を用意し、各未硬化下地層2aを1.5m/分の速度で所定位置を通過させた。このように各未硬化下地層2aに紫外線を照射し、未硬化下地層2aに含まれるアクリル系重合硬化組成物を重合させて下地層2を得た。
[中間層形成工程]
シリコーン系熱重合硬化組成物としてテトラエトキシシランのみを用い、このシリコーン系熱重合硬化組成物が含まれる第2合剤#1を次のように調製した。
【0055】
容器に0.1Nの塩酸を含む水溶液22重量部を入れ、その液温を10℃以下に保ちながら十分に攪拌する。この水溶液中にテトラエトキシシラン50重量部(関東化学)を添加し、液温を10℃に保ちながら3時間攪拌した。その後、このテトラエトキシシランを含有させた溶液#1を液温が20℃になるように加熱し、IPA15重量部を含有させた。
【0056】
なお、第2合剤#1は、そのpHが3を超えると数時間でゲル化してしまう。そこで、第2合剤の保存安定性を向上させるため、合剤のpHが3以下になるように塩酸を用いた。また、IPAの含有量は、合剤のpHが3を超えないように選択した。
【0057】
この第2合剤#1を上記のようにして得た各下地層2上にフローコート法により塗布し、未硬化中間層3aを形成した。ここでは、いずれの未硬化中間層3aについても層厚を500nmとした。
【0058】
未硬化中間層3aを120℃の温度で1時間加熱し、未硬化中間層3aに含まれるシリコーン系熱重合硬化組成物を重合させて中間層3を得た。
[光触媒層形成工程]
上記で得られた各中間層3の表面をアルカリ処理液で親水化処理した。ここでは、アルカリ処理液として、NaOHを0.1Nの濃度で含む水溶液を用いた。このアルカリ処理液に上記のように中間層が形成された試料を3分間浸漬し、中間層の表面にアルカリ処理を施した。このアルカリ処理後、試料を水洗いし、80℃の温度で5分間乾燥した。
【0059】
その一方で、チタニアのゾル(TiO2の水分散液;TiO2には石原産業製STS−02を用いた)と、結着剤(シリコーン系重合硬化組成物;第2合剤#1を調製する際に用いた溶液#1)と、分散媒(分散媒全体を100体積%とすると、水60体積%及びIPA40体積%からなる混合溶液)とを混合して第3合剤を調製した。ここでは、第3合剤として、チタニアのゾルと結着剤とが、チタニア:結着剤=4:1、1:1及び1:4の各重量比で混合されている3種類の第3合剤(#1−1、#1−2及び#1−3)を調製した。
【0060】
これらの第3合剤を先述のように親水化処理した中間層3の表面上にそれぞれスピンコート法により塗布し、未硬化光触媒層4aを形成した。ここでは2000rpmのスピン回転数で塗布した。これらいずれの未硬化光触媒層4aについても層厚を100nmとした。
【0061】
各未硬化光触媒層4aを120℃の温度で60分間加熱し、未硬化光触媒層4aに含まれるシリコーン系熱重合硬化組成物を重合させて、光触媒層4を得た。
【0062】
以上のように、光触媒層4の形成において(第3合剤の調製において)チタニアのゾルと結着剤と混合比を変えて、光触媒被膜を計3種類形成した。これらの光触媒被膜について、耐摩耗性を次の条件により調べた。
【0063】
▲1▼耐摩耗性
テーバ摩耗試験機(TELEDYNETABE社製5130ABRASER)を用い、摩耗輪がCS10F、荷重が500gであるときの500サイクル後のヘーズ変化量(ΔH(%))をヘーズメータ(スガ試験機社製HGM−3DP)により測定した。このヘーズ変化量の測定を2回行った。
【0064】
その耐摩耗性試験の結果を表1に示す。なお、第3合剤の欄のカッコ内の比は、チタニアと結着剤との重量比を表す。
【0065】
【表1】
Figure 0003932083
【0066】
表1より、上記3種類の光触媒被膜のいずれにおいても、ヘーズ変化量が極めて小さく、耐摩耗性に優れることがわかった。また、上記3種類の光触媒被膜のいずれのヘーズ変化量も、後述する比較例3の光触媒被膜のヘーズ変化量(5.5)よりも小さいものである。このことからも、本実施例の形成方法によれば、従来の光触媒被膜の形成方法よりも耐摩耗性に優れた光触媒被膜を容易に形成できることがわかる。
【0067】
また、それらのヘーズ変化量に大きな差はなく、第3合剤の調製において設定されるチタニアと結着剤との混合割合は、光触媒被膜の耐摩耗性に影響を及ぼさないことがわかった。上記3種類の光触媒被膜のいずれにおいても、光触媒層はその層厚が極めて小さく光触媒被膜の硬度の向上に大きく寄与していないと見られる。このことから、光触媒被膜の耐摩耗性は、下地層及び中間層の硬度、特に中間層の硬度の影響を大きく受けていることがわかる。
(実施例2)
中間層形成工程で使用する第2合剤として次の合剤を用い、光触媒層形成工程で使用する第3合剤としてその後に述べる合剤を用いて、フローコート法及びスピンコート法の各塗布方法により未硬化光触媒層を形成した。この他は、実施例1と同様にして光触媒被膜を形成した。
【0068】
シリコーン系熱重合硬化組成物を含む第2合剤として、第2合剤#1にコロイダルシリカを含有させた第2合剤#2を調製した。すなわち、前記溶液#1にコロイダルシリカを含有させた溶液を調製し、その溶液をIPAで希釈して第2合剤#2を得た。この溶液は、溶液#1を100重量部とするとコロイダルシリカを25重量部含有させたものである(溶液#2)。また、IPAによる希釈については、固形分濃度が1重量%となるようにした。この第2合剤#2もpH3以下の酸性度を有する。
【0069】
一方、第3合剤については、チタニアのゾル(TiO2の水分散液;多木化学製M−6)と、結着剤(シリコーン系重合硬化組成物;前記溶液#2)と、分散媒(分散媒全体を100体積%とすると、水60体積%及びIPA40体積%からなる混合溶液)とを混合して第3合剤を調製した。ここでは、第3合剤として、合剤全体を100重量%とすると、固形分がそれぞれ1重量%、2重量%及び3重量%の濃度で含まれている3種類の第3合剤(#2−1、#2−2及び#2−3)を調製した。これらいずれの第3合剤においてもチタニアと結着剤とが等重量比で混合されている。
【0070】
これらの第3合剤を、先述のように親水化処理した中間層の表面上にそれぞれフローコート法及びスピンコート法の各塗布方法により塗布し、未硬化光触媒層を形成した。なお、フローコート法では、第3合剤#2として、固形分濃度が1重量%及び2重量%の2種類の合剤をそれぞれ用いて未硬化光触媒層を形成した。また、ここでのスピンコート法では、2000rpmと4000rpmとの2種類のスピン回転数で塗布した。
【0071】
以上のように、光触媒層の形成において、第3合剤の固形分濃度及びその塗布方法をそれぞれ変え、光触媒被膜を計8種類形成した。これらの光触媒被膜の耐摩耗性を実施例1と同様にして調べた。その耐摩耗性試験の結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
Figure 0003932083
【0073】
表2より、上記8種類の光触媒被膜のいずれにおいても、ヘーズ変化量が極めて小さく、耐摩耗性に優れることがわかった。また、それらの光触媒被膜のいずれのヘーズ変化量も、後述する比較例3の光触媒被膜のヘーズ変化量(5.5)よりも小さいものである。このことからも、本実施例の形成方法によれば、従来の光触媒被膜の形成方法よりも耐摩耗性に優れた光触媒被膜を容易に形成できることがわかる。
【0074】
ただし、未硬化光触媒層がフローコート法により形成された光触媒被膜と、スピンコート法により形成された光触媒被膜とにおいて、それらのヘーズ変化量を比べると、後者の光触媒被膜の方がヘーズ変化量がやや小さいことがわかる。また、前者の光触媒被膜では、干渉縞がやや見られ、外観不良があることがわかった。この結果より、フローコート法とスピンコート法とを上記の形成条件で比較した場合には、後者の方が未硬化光触媒層の形成方法に優れていることがわかる。
【0075】
また、いずれの光触媒被膜においても、第3合剤の固形分濃度が異ってもそれらのヘーズ変化量に大きな差が生じていないことから、第3合剤の調製において設定される固形分濃度は、光触媒被膜の耐摩耗性に影響を及ぼさないことがわかった。上記8種類の光触媒被膜のいずれにおいても、光触媒層はその層厚が極めて小さく、光触媒被膜の硬度の向上に大きく寄与していないと見られる。このことから、光触媒被膜の耐摩耗性は、下地層及び中間層の硬度、特に中間層の硬度の影響を大きく受けていることがわかる。
(実施例3)
光触媒層形成工程において、第3合剤を中間層上にバーコート法により塗布して未硬化光触媒層を形成した。この他は、実施例2と同様にして光触媒被膜を形成した。ここでは、バー番定を、002番、004番及び006番にそれぞれ設定して、3種類の光触媒被膜を形成した。いずれの設定においても、引く速度を3.5cm/分とした。また、第3合剤として、固形分濃度が3重量%、5重量%及び7重量%の3種類の第3合剤(#3−1、#3−2及び#3−3)をそれぞれ用いて未硬化光触媒層を形成した。
【0076】
以上のように、本発明において光触媒層の形成方法を一部変えて光触媒被膜を計9種類形成した。これらの光触媒被膜について、実施例1と同様にして耐摩耗性を調べるとともに、密着性を次の条件により調べた。また、クラック及び干渉縞の有無についても、それらの光触媒被膜の外観を観察して調べた。なお、第3合剤#3−3については、バー番定002番及び004番のみに設定した。
【0077】
▲2▼密着性(JISK5400に準ずる。)
各光触媒被膜の表面をカッターナイフにより傷付ける。傷は1mm間隔に縦横直交する各々10本であり、これにより1mm角の升目計100個からなる碁盤目をそれぞれの光触媒被膜に形成する。各光触媒被膜の碁盤目全てを覆うように粘着テープ(ニチバン社製:セロハンテープ)を付着した後、一気に粘着テープを引き剥がす。この時、粘着テープに付着する光触媒被膜の升目の有無を観察する。なお、光触媒被膜の形成直後における密着性を初期密着性と称する。
【0078】
▲3▼耐温水性
各光触媒被膜を40℃の温水中に240時間浸漬後、上記密着性の試験条件に従い、粘着テープに付着する光触媒被膜の升目の有無を観察する。
【0079】
各光触媒被膜の耐摩耗性及び密着性の試験結果及び外観の観察結果をそれぞれ表3〜5に示す。
【0080】
【表3】
Figure 0003932083
【0081】
【表4】
Figure 0003932083
【0082】
【表5】
Figure 0003932083
【0083】
表3〜5より、上記9種類の光触媒被膜のいずれにおいても、ヘーズ変化量が極めて小さく、耐摩耗性に優れることがわかった。また、それらの光触媒被膜のいずれのヘーズ変化量も、後述する比較例3の光触媒被膜のヘーズ変化量(5.5)よりも小さいものである。このことからも、本実施例の形成方法によれば、従来の光触媒被膜の形成方法よりも耐摩耗性に優れた光触媒被膜を容易に形成することができることがわかる。
【0084】
また、光触媒層の形成においてバー番定を002と低く設定して形成した光触媒被膜においては、第3合剤の固形分濃度が3〜7のいずれに設定されていても、干渉縞の発生が少なくなっていることがわかる。一方、光触媒層の形成においてバー番定を006と高く設定して形成した光触媒被膜においては、第3合剤の固形分濃度が大きくなるにつれて、干渉縞の発生が多くなっていることがわかる。
【0085】
これらの結果から、バーコート法による光触媒層の形成においては、バーの使用番定を低くすれば、干渉縞の発生を抑制することができ、特に002番を用いればその干渉縞の発生を効果的に抑制できることがわかった。さらに、第3合剤の固形分濃度は5重量%以下に設定することが好ましい。
(実施例4)
中間層形成工程で使用する第2合剤として次の合剤を用い、光触媒層形成工程で使用する第3合剤としてその後に述べる合剤を用いた他は、実施例2と同様にして光触媒被膜を形成した。
【0086】
先ず、第2合剤については、前記溶液#1をIPAで固形分濃度が1%となるように希釈した第2合剤#4−1を調製した。
【0087】
一方、第3合剤については、チタニアのゾル(TiO2の水分散液;多木化学製M−6)と、結着剤(シリコーン系重合硬化組成物;前記溶液#1)と、分散媒(分散媒全体を100体積%とすると、水60体積%及びIPA40体積%からなる混合溶液)とを混合して調製した第3合剤#4−1と、結着剤として前記溶液#2の代わりに前記溶液#2を用いた他は第3合剤#4−1と同様にして調製した第3合剤#4−2と、をそれぞれ用意した。なお、これらの第3合剤においても、チタニアと結着剤とが等重量比で混合されており、第3合剤全体を100重量%とすると、固形分が約2重量%の濃度で含まれている。
【0088】
また、これらの第3合剤を、先述のように親水化処理した中間層の表面上にそれぞれスピンコート法により塗布し、未硬化光触媒層を形成した。ここでのスピンコート法では、2000rpmと4000rpmとの2種類のスピン回転数で塗布した。
【0089】
以上のように、本発明において中間層及び光触媒層の形成方法を一部変えて光触媒被膜を計4種類形成した。これらの光触媒被膜についても、実施例1と同様にして耐摩耗性を調べるとともに、実施例2と同様にして密着性を調べた。この耐摩耗性試験の結果を表6に示す。
【0090】
【表6】
Figure 0003932083
【0091】
表6より、上記4種類の光触媒被膜のいずれにおいても、ヘーズ変化量が極めて小さく、耐摩耗性に優れることがわかった。また、それらの光触媒被膜のいずれのヘーズ変化量も、後述する比較例3の光触媒被膜のヘーズ変化量(5.5)よりも小さいものである。このことからも、本実施例の形成方法によれば、従来の光触媒被膜の形成方法よりも耐摩耗性に優れた光触媒被膜を容易に形成できることがわかる。
【0092】
また、上記4種類の光触媒被膜のいずれにおいても、光触媒層はその層厚が極めて小さく、光触媒被膜の硬度の向上に大きく寄与していないと見られる。このことから、光触媒被膜の耐摩耗性は、下地層及び中間層の硬度、特に中間層の硬度の影響を大きく受けていることがわかる。
【0093】
一方、本実施例で得られた光触媒被膜は、いずれも初期密着性及び温水密着性について良好なものであった。
(実施例5)
光触媒層形成工程において、中間層の表面を次のようにプラズマを用いて親水化処理した。この他は、実施例4と同様にして光触媒被膜を形成した。
【0094】
本実施例では、コロナ放電により発生させたプラズマに、中間層の表面を3m/分の速度で2回かざした。ここでは、300Wの出力でコロナ放電を起こした。
【0095】
以上のように、本発明において光触媒層の形成方法を一部変えて光触媒被膜を計4種類形成した。これらの光触媒被膜についても、実施例1と同様にして耐摩耗性を調べるとともに、実施例2と同様にして密着性を調べた。この耐摩耗性試験の結果を表7に示す。
【0096】
【表7】
Figure 0003932083
【0097】
表7より、上記4種類の光触媒被膜のいずれにおいても、ヘーズ変化量が極めて小さく、耐摩耗性に優れることがわかった。また、それらの光触媒被膜のいずれのヘーズ変化量も、後述する比較例3の光触媒被膜のヘーズ変化量(5.5)よりも小さいものである。このことからも、本実施例の形成方法によれば、従来の光触媒被膜の形成方法よりも耐摩耗性に優れた光触媒被膜を容易に形成することができることがわかる。
【0098】
また、上記4種類の光触媒被膜のいずれにおいても、光触媒層はその層厚が極めて小さく、光触媒被膜の硬度の向上に大きく寄与していないと見られる。このことから、光触媒被膜の耐摩耗性は、下地層及び中間層の硬度、特に中間層の硬度の影響を大きく受けていることがわかる。
【0099】
さらに、スピン回転数の違いによる耐摩耗性の大きな変化は見られなかった。
【0100】
一方、本実施例で得られた光触媒被膜は、いずれも初期密着性及び温水密着性について良好なものであった。
(実施例6)
光触媒層形成工程において、次のように光触媒層を形成した。この他は実施例2と同様にして光触媒被膜を形成した。
【0101】
チタニアのゾル(TiO2の水分散液;多木化学製M−10)と、結着剤(シリコーン系重合硬化組成物;前記溶液#2)と、分散媒(分散媒全体を100体積%とすると、水60体積%及びイソプロピルアルコール40体積%からなる混合溶液)とを混合して第3合剤を調製した。なお、この第3合剤においても、チタニアと結着剤とが等重量比で混合されている。ここでは、第3合剤として、合剤全体を100重量%とすると、固形分がそれぞれ10重量%の濃度で含まれている合剤を調製した。
【0102】
この第3合剤を先述のように親水化処理した中間層の表面上にスピンコート法により塗布し、未硬化光触媒層を形成した。ここでは、未硬化光触媒層の層厚を27nm、35nm、43nm及び55nmにそれぞれ設定して、4種類の未硬化光触媒層を形成した。なお、ここでのスピンコート法では、4000rpmのスピン回転数で塗布した。
【0103】
各未硬化光触媒層を120℃の温度で60分間加熱し、未硬化光触媒層に含まれるシリコーン系熱重合硬化組成物を重合させて、光触媒層を得た。
【0104】
以上のように、本発明において光触媒層の層厚が異なる光触媒被膜を計4種類形成した。これらの光触媒被膜についても、実施例1と同様にして耐摩耗性を調べるとともに、実施例2と同様にして密着性を調べた。また、クラック及び干渉縞の有無についても、それらの光触媒被膜の外観を観察して調べた。なお、クラックの有無については、光触媒被膜を形成した直後(初期)と、40℃の温水中に240時間浸漬後(耐温水)とでそれぞれ調べた。これらの評価結果を表8に示す。
【0105】
【表8】
Figure 0003932083
【0106】
表8より、上記4種類の光触媒被膜のいずれにおいても、ヘーズ変化量が極めて小さく、耐摩耗性に優れることがわかった。また、それらの光触媒被膜のいずれのヘーズ変化量も、後述する比較例3の光触媒被膜のヘーズ変化量(5.5)よりも小さいものである。このことからも、本実施例の形成方法によれば、従来の光触媒被膜の形成方法よりも耐摩耗性に優れた光触媒被膜を容易に形成することができることがわかる。
【0107】
また、光触媒層の層厚を27〜43nmの範囲内に設定した光触媒被膜においては、いずれも耐摩耗性及び密着性に優れ、クラック及び干渉縞についても観察されなかったのに対し、光触媒層の層厚を55nmに設定した光触媒被膜においては、耐摩耗性及び初期密着性には優れるが、耐温水性がやや劣り、干渉縞もやや見られた。このことから、光触媒層の層厚を55nm未満に設定することが望ましいことがわかる。
(比較例1)
本比較例では、次のように樹脂製基材上に下地層を形成した後、中間層を形成せずにその下地層上に光触媒層を形成した。
【0108】
樹脂製基材としては実施例1で用いた樹脂基板と同じものを用意した。また、下地層硬化組成物(堺化学製LAC PR−04)を用意した。なお、この合剤には、合剤全体を100重量%とすると、固形分が8重量%の濃度で含まれる。この合剤をIPAにて洗浄された樹脂基板の表面上にフローコート法により塗布し、未硬化下地層を形成した。ここでは、未硬化下地層の層厚を2000nmとした。
【0109】
その一方で、チタニアを含む主剤(堺化学製LAC TI−03−A)と、シリコーン系重合硬化組成物を含む硬化剤(堺化学製LAC TI−03−B)とを体積比1:1で混合して合剤を調製した。なお、この合剤には、合剤全体を100重量%とすると、固形分が5重量%の濃度で含まれる。また、この合剤を希釈溶剤(溶剤全体を100重量%とすると、水50重量%とエタノール25重量%とIPA25重量%とを混合したもの)で希釈して、固形分濃度が2重量%の合剤を調製した。これらの合剤をそれぞれ下地層上にスピンコート法により塗布して未硬化光触媒層を形成した。
【0110】
各未硬化下地層を120℃の温度で1時間加熱し、未硬化光触媒層に含まれるシリコーン系熱重合硬化組成物を重合させて、光触媒層を得た。
【0111】
こうして、下地層と光触媒層との2層よりなる光触媒被膜を光触媒層の形成方法を一部変えて計2種類形成した。これらの光触媒被膜について、耐摩耗性を実施例1と同様にして調べた。
【0112】
その耐摩耗性試験の結果、固形分濃度が2重量%の合剤を用いて光触媒層を形成した光触媒被膜では、ヘーズ変化量が29.6と高い値を示した。また、固形分濃度が5重量%の合剤を用いて光触媒層を形成した光触媒被膜では、ヘーズ変化量が32.0とさらに高い値を示した。これらの結果より、本比較例の光触媒被膜の形成方法では、優れた耐摩耗性を有する光触媒被膜を形成することが難しいことがわかる。
(比較例2)
本比較例でも、次のように樹脂製基材上に下地層を形成した後、中間層を形成せずにその下地層上に光触媒層を形成した。
【0113】
樹脂製基材としては実施例1で用いた樹脂基板と同じものを用意した。また、石原産業製プライマーAを用意した。なお、この溶液には、溶液全体を100重量%とすると、固形分が3重量%の濃度で含まれている。この合剤をIPAにて洗浄された樹脂基板の表面上にフローコート法により塗布し、未硬化下地層を形成した。ここでは、未硬化下地層の層厚を1000nmとした。
【0114】
この未硬化下地層を80℃の温度30分間加熱し、未硬化下地層中の溶剤を除去するとともに、未硬化下地層に含まれるアクリル系重合硬化物を重合させて、下地層を得た。
【0115】
その一方で、チタニアを含む合剤(石原産業製ST−K03)を用意した。なお、この石原産業製ST−K03には、合剤全体を100重量%とすると、固形分が10重量%の濃度で含まれている。また、この合剤を希釈溶剤(溶剤全体を100重量%とすると、水60重量%とIPA40重量%とを混合したもの)で希釈して、固形分濃度が2重量%の合剤を調製した。これらの合剤をそれぞれ下地層上にスピンコート法により塗布して未硬化光触媒層を形成した。
【0116】
各未硬化下地層を120℃の温度で1時間加熱し、未硬化光触媒層に含まれるシリコーン系熱重合硬化組成物を重合させて、光触媒層を得た。
【0117】
こうして、下地層と光触媒層との2層よりなる光触媒被膜を光触媒層の形成方法を一部変えて計2種類形成した。これらの光触媒被膜について、耐摩耗性を実施例1と同様にして調べた。
【0118】
その耐摩耗性試験の結果、固形分濃度が2重量%の合剤を用いて光触媒層を形成した光触媒被膜では、ヘーズ変化量が39.7と高い値を示した。また、固形分濃度が3重量%の合剤を用いて光触媒層を形成した光触媒被膜では、ヘーズ変化量が39.4とさらに高い値を示した。これらの結果より、本比較例の光触媒被膜の形成方法では、優れた耐摩耗性を有する光触媒被膜を形成することが難しいことがわかる。
(比較例3)
本比較例では、ハードコート処理済みポリカシート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンシートMR05)(なお、このポリカシートは、下地層(プライマー層)とシリコーンハードコート層とが処理済みのものである。))を用意し、そのシリコーンハードコート層上に比較例2と同様にして光触媒層を形成した。
【0119】
なお、光触媒層を形成する前に、実施例4と同様にしてプラズマを用いた親水化処理をシリコーンハードコート層に行った。また、光触媒層を形成する際、チタニアを含む合剤としては、多木化学製CZP−221が前記希釈溶剤で希釈されて固形分濃度が2重量%とされた合剤を用いた。
【0120】
こうして形成された光触媒被膜について、その耐摩耗性を実施例1と同様にして調べた。
【0121】
その耐摩耗性試験の結果、本比較例で得られた光触媒被膜では、ヘーズ変化量が5.5と低い値を示した。この結果より、本比較例の光触媒被膜の形成方法では、優れた耐摩耗性を有する光触媒被膜を形成することができることがわかる。しかし、先述したように、その耐摩耗性は、上記実施例の形成方法で得られた光触媒被膜のものより劣る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の光触媒被膜の形成において、その手順の流れを模式的示した流れ図である。
【図2】 各種のシラン誘導体を用いることにより出来るシリコーン分子の基本構成単位を示した図である。
(a)加水分解性4官能シラン誘導体を用いることにより出来る。(b)加水分解性3官能シラン誘導体を用いることにより出来る。(c)加水分解性2官能シラン誘導体を用いることにより出来る。なお、(b)及び(c)の図中RとしてはCH3やC25等が挙げられる。

Claims (7)

  1. 樹脂製基材の表面上に、シラノール基をもつポリシロキサン組成物を含有させた有機系組成物からなる未硬化下地層を形成した後、該有機系組成物を重合させて、該未硬化下地層を該樹脂製基材より硬度の高い下地層とする下地層形成工程と、
    該未硬化下地層又は該下地層上に、加水分解性4官能シラン誘導体を30モル%を超える量含有するように調製されたシリコーン系重合硬化組成物を用いて未硬化中間層を形成した後、該シリコーン系重合硬化組成物を重合させて該未硬化中間層を該下地層より硬度の高い中間層とする中間層形成工程と、
    該中間層上に光触媒が含まれる光触媒層を形成する光触媒層形成工程と、
    から構成されることを特徴とする光触媒機能を有する被膜の形成方法。
  2. 前記有機系組成物は、アクリル系重合硬化組成物であり、前記シラノール基をもつポリシロキサン組成物はシランカップリング剤を含む請求項1に記載の光触媒機能を有する被膜の形成方法。
  3. 前記アクリル系重合硬化組成物は、紫外線によって重合するアクリル系紫外線重合硬化組成物である請求項2に記載の光触媒機能を有する被膜の形成方法。
  4. 前記有機系組成物は、Si−アクリル系重合硬化組成物からなる無機−有機ハイブリッド材料である請求項1に記載の光触媒機能を有する被膜の形成方法。
  5. 前記シリコーン系重合硬化組成物は、熱によって重合するシリコーン系熱重合硬化組成物である請求項1乃至4のいずれかに記載の光触媒機能を有する被膜の形成方法。
  6. 前記シリコーン系重合硬化組成物は強酸を含む請求項1乃至5のいずれかに記載の光触媒機能を有する被膜の形成方法。
  7. 前記中間層の表面を親水化処理した後、前記光触媒層を形成する請求項1乃至6のいずれかに記載の光触媒機能を有する被膜の形成方法。
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