JP3932377B2 - 高比重安定液組成物、及び安定液掘削工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高比重安定液組成物、及び安定液掘削工法に関し、詳しくは例えば地盤調査ボーリング・場所打ち杭や連続地中壁(鉄筋コンクリート製または鋼コンクリート製などの連続地中壁)などの構築のために行う孔・溝掘削に使用する高性能高比重安定液組成物、及び該高比重安定液組成物を用いた安定液掘工法に関し、更に詳しくは、作業地盤面より自噴するような高い被圧水頭を有する地下水条件下、過圧密粘土地盤、もしくは地下水流速の大きな地盤など、過酷な条件下での孔・溝掘削を、崩落や滑落などの事故を起こすことなく行うことのできる安定液掘削工法、及びこの工法に用いる高性能高比重安定液組成物に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
場所打ち杭工法の一つであるアースドリル工法やRC連続地中壁工法等の安定液掘削工法は近年、大深度地下開発、インフラーストラクチャーの各施設構築等に多用されている。この安定液掘削工法では、バケット系や、回転ビットリバース系の掘削機により、安定液を用いて掘削孔(溝)壁を保護しながら地盤を所定の断面で掘削し、その後、鉄筋かご、あるいは鋼製部材を挿入して、トレミー工法によりコンクリートを打設する。
【0003】
上記したような安定液掘削工法は、場合によっては、作業地盤面より自噴するような高い被圧水頭を有する地下水条件下での孔・溝掘削、あるいは洪積層の過圧密粘土地盤や地下水流速の大きな地盤に対する孔・溝掘削など、過酷な条件下での掘削を余儀なくされることがある。
【0004】
このような掘削は、崩落や滑落などの事故を起こす可能性が大きいので、これを回避すべく使用する安定液にも工夫が必要となる。説明を加えると、上記したような過酷な条件下で掘削を安全に行うには、掘削部での地盤地下水圧に対して安定液圧が0.1〜0.3kgf/cm2程度上回ることと、この液圧を有効に作用させるため、地盤透水性に応じて掘削壁面に薄く強い泥膜を形成させる必要がある。
【0005】
しかしながら、従来の安定液(ポリマー系安定液など)は比重が1.03〜1.10であるため、上述したような過酷な条件では、掘削壁面に対して強い泥膜を形成させることができず、掘削には不適であった。従って、安定液の比重を高くして掘削壁面に対して強い泥膜を形成しやすくする必要がある。
【0006】
石油掘削用泥水の増重剤としてバライト(硫酸バリウム)がよく知られている。しかしながら、このような増重剤も、静置時間の長い安定液掘削工法では、前記バライトが沈降して安定液から分離しやすく、分散安定性の保持が困難であった。
【0007】
微粉末炭酸カルシウムの配合も一応考えられる。微粉末炭酸カルシウムは反応性が低いので、打設コンクリートによる性状劣化に関しては、さほど問題はないが、調製後の安定液の静置時の分散安定性が低く、孔・溝掘削時の性能に問題となった。
【0008】
[発明の目的]
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来、施工不可能であった自噴するような高い被圧水頭を有する地下水条件下での孔掘削・溝掘削、あるいは洪積層の過圧密粘土地盤や地下水流速の大きな地盤に対する孔・溝掘削など、過酷な条件下での掘削を可能にし、また長期にわたる分散安定性能に優れ、かつコンクリート置換性が良好な高性能な安定液組成物を提供するところにあり、前記高性能安定液組成物を使用して適応性をより広めた安定液掘削工法を提供するところにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の高比重安定液組成物は、アースドリル杭や連続地中壁を構築すべく地盤に孔や溝を掘削するための安定液掘削工法に使用される高比重安定液組成物であって、水、ベントナイト、カオリン鉱物、カルボキシメチルセルロース、及び分散剤を含有し、1.1を超える液比重を有してなるものである。
【0010】
請求項2に記載の高比重安定液組成物は、水1m 3 に対し、ベントナイト10〜50kg、カオリン鉱物100〜800kg、カルボキシメチルセルロース0.5〜10kg、及び分散剤0.1〜20kgが配合されてなるものである。
【0011】
請求項3記載の高比重安定液組成物は、請求項1または2記載の高比重安定液組成物において、前記カオリン鉱物の比表面積が10,000cm 2 /g以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の安定液掘削工法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高比重安定液組成物を掘削孔内に供給し、これによって掘削内周地盤面に泥膜を形成させながら更なる掘削を行なうようにした掘削工法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
粘土鉱物
本発明で使用される粘土鉱物としては、特に限定はないが、カオリン鉱物と総称される粉末粘土を使用することが好ましい。
【0016】
カオリン鉱物はカオリナイト・デッカイト・ナクライトの3種の鉱物がポリタイプの関係にあって存在する。このカオリン鉱物には、カオリンに限らず、ボールクレー・ファイアークレー・木節粘土・蛙目粘土などの種々の粘土の主成分をなしている。
【0017】
このカオリン鉱物はpHを高めて分散安定性を改善した時、増粘性が少なく、経時による粘度変化も小さいので安定液の比重増加用として好適である。また、反応性が少ないので、コンクリート打設時のゲル化や劣化が生じにくい。
【0018】
カオリン鉱物として良く知られる木節粘土の粒度は産地によって変動は大きいが、多くの木節粘土の粒度は25μm以下の比率が80%でBET比表面積(以下、単に「比表面積」という)が10,000cm2/g以上あり、特に水簸精製した粘土では25μm以下が100%で比表面積も300,000cm2/gにも達する製品も存在する。この木節粘土や蛙目粘土は安価で多量入手が容易なので本発明材料として適している。粘土の比表面積として20,000cm2/g以上あれば充分に静置安定性の良好な安定液を作成することできる。
【0019】
粉末粘土としてよく使用される岡山産笠岡粘土に代表されるイライトやモンモリロナイトも本発明における粘土鉱物として使用することができるが、これを含有する粘土類は、高比重安定液の増重材として使用した場合において経時による増粘性が大きくなる傾向が少しあり、また多価イオンとの反応性が少し高いので、どちらかといえば好ましくない。
【0020】
本発明の安定液組成物は、粘土鉱物、特に好ましくはカオリン鉱物の粉末を配合することにより、さらに好ましくは、比表面積10,000cm2/g以上のカオリン鉱物を配合することにより、1.1を超える液比重を有してなる高比重安定液組成物である。
【0021】
安定液組成物の比重が1.1以下といった従来の安定液で掘削すると、次のような不都合(問題)が生じる。すなわち、安定液掘削工法では、安全掘削上必要な安定液面位は、最低でも地下水位+1.0m、被圧地下水位+1.5mが必要になるので、例えば、被圧地下水位がGL+3.5mあるとすれば、安定液面位は最低GL+5.0mが必要である。この条件を確保するには、施工地盤面3.5m以上の嵩上げが必要となり、盛土などによる場合は大量の土砂搬入と嵩上げに要するコストは膨大になる。ケーシング等で安定液面位を高くすることは可能であるが、高さ3m以上のケーシング設置は掘削が困難となり、盛土+ケーシング高さ2mがコンクリート打設他から施工上好ましい条件となる。
【0022】
粘土鉱物、好ましくはカオリン鉱物の粉末を使用することにより、安定液に炭酸塩等の分散剤が存在していても増粘は少なく、増重効果や分散効果が維持される。
【0023】
また、カオリン鉱物の粉末は、多価カチオンとの反応性が低いので、セメントから溶出されるCaイオンが安定液中に混入しても、ゲル化が生じにくい。
【0024】
なお、粘土鉱物の添加量は、被圧地下水圧や過圧密粘土の圧密度によって必要とされる液圧から比重(通常は1.4以下)を求めて定めるが、およそのところ清水1m3に対し、100〜800kgである。100kg未満の場合、ベントナイト量50kgでも比重1.1を超える安定液組成物が得られないという問題が発生する可能性があり、800kgを超える場合、安定液比重が1.4を超えるので、コンクリート打設時、コンクリートと高比重安定液との置換が困難になりかねないという問題が発生する可能性がある。
【0025】
分散剤
本発明の安定液組成物には、好適には、カチオン混入による安定液のゲル化防止や流動性改良を目的に分散剤が添加される。分散剤としては、無機分散剤と有機分散剤とに分類され、無機分散剤としては、炭酸塩が好適に使用される。炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウム・炭酸ナトリウム・炭酸水素カリウム・炭酸カリウム・炭酸水素リチウム・炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩やヘキサメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。有機分散剤としては、低分子量ポリアクリル酸塩・リグニンスルフォン酸塩等が挙げられる(前記低分子量としては、例えば平均分子量3,000〜50,000が好適であり、この範囲を超えると分散性能は低下する傾向にある。通常は10,000前後。)。前者の無機分散剤は添加量が多くなると安定液の粘度が上昇するので、安定液の粘度を低下させる方向に働く後者の有機分散剤との併用が好ましい。添加量には特に限定はないが、清水1m3に対し、0〜20.0kgであることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜20.0kg、さらに好ましくは0.5〜10.0kg程度である。20kgを超える場合、過剰添加となる可能性があり、安定液作製費(調製費)が高くなる(経済的不利益を招く)という問題が発生する可能性がある。なお、前記分散剤は、清水1m3に対して0.1kg以上添加した場合から、その添加による作用効果が期待できる。
【0026】
なお、分散剤として、前記した無機分散剤の1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。また、同様に、有機分散剤の1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。あるいは、無機分散剤から1種あるいは2種以上と、有機分散剤から1種あるいは2種以上を併用することもできる。
【0027】
無機系増粘剤および有機系増粘剤
安定液全体の分散安定性と造壁性確保のため、増粘剤を併用することが好ましい。増粘剤としては、無機系増粘剤および有機系増粘剤に分類され、無機系増粘剤としては、ベントナイト・セピオライト・アタパルジャイト・アスベストなどが挙げられる。このうち、増粘性が高く、造壁性評価指標となる濾水量が少なく、分散安定性が良好という理由でベントナイトの使用が好適である。無機系増粘剤の添加量は、粘土の種類、性質や安定液比重、及び用いる増粘剤の種類(品種、増粘性能)によって変わるので一概には言えないが、およそのところ清水1m3に対し、10〜50kgである。10kg未満の場合、静置安定性の不足と濾水量が多くなるという問題が発生する可能性があり、50kgを超える場合、静置安定性と濾水量は良好であるが、コンクリート打設時のゲル化を生じ易くなるという問題が発生する可能性がある。
【0028】
有機系増粘剤としては、ポリアクリルアミド部分加水分解物・キサンタンガムやグァーガム等の水溶性高分子化合物も使用できるが、次のような理由でカルボキシメチルセルロース(CMC)の使用が最適である。すなわち、CMCは少量の添加で、造壁性評価指標となる濾水量をベントナイトと相乗的に小さく出来、また増粘性が大きくて安定液中に懸濁させた粒子を保持する(沈降させない)性質が高くなる。また、コンクリート打設時のセメントとの接触時の劣化が少ない。
【0029】
有機系増粘剤の添加量は、粘土の種類・性質や安定液比重、及び用いるCMC等の増粘剤の種類(品種・増粘性能)によって変わるので一概には言えないが、およそのところ清水1m3に対し、0.5〜10kgである。0.5kg未満の場合、ベントナイト50kg以内に限定すると粘度不足が生じるという問題が発生する可能性があり、10kgを超える場合、安定液の粘度が高くなりすぎて、管理規格の上限を超えるという問題が発生する可能性がある。
【0030】
粘土等の固形分が多い場合は増粘性が高くなるので比較的粘度の低い低粘度CMCを使用するが、この場合の添加量は清水1m3に対し、1〜3kgである。
【0031】
[作用]
本発明の安定液組成物を用いた安定液掘削工法では、掘削壁面に薄くて強い泥膜が形成され、必要な液圧を掘削壁面に作用することが可能となる。これにより、過酷な条件での孔・溝掘削を、地盤の嵩上げや周辺地盤の沈下あるいは井戸水枯れ等の問題を起こしやすい地下水低下工法や地下水汚染につながる地盤改良等の補助工法を施すことなく安全に行うことができるので、工期や工費の大幅な削減が可能となり、施工の合理化・省力化に大きく寄与する。
【0032】
また、洪積層の過圧密粘土地盤では孔・溝掘削時に、水平方向の応力解放により滑落や崩落を生じることがあり、これに対しても、本発明の安定液を使用することにより、掘削壁面に十分な液圧を作用させることで、崩落を起こさない安全な掘削が可能となる。同様に、地下水流速が3m/minを超すような地盤でも、安定液比重と粘度を高めることで崩落を防止することができる。
【0033】
さらに、本発明の安定液組成物は、高比重でありながら、分散性や流動性が高いので、当該安定液で満たされた掘削孔・溝の形状を確認するための超音波孔(溝)壁測定が可能となり、孔や溝の形状を正確に把握でき精度や品質の判断が可能となる。また、打設するコンクリートとの置換性も良好なことから、従来の安定液(比重:1.1以下)と同様な高品質な地下躯体の構築が可能である。
【0034】
本発明の安定液組成物を使用した高性能高比重安定液掘削工法は、従来の機器材・仕様ですべて対応できる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を挙げて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0036】
実施例1および比較例1(安定液の性状と静置安定性(比重1.20))
下記[表1][表2]に記載の成分を、同表記載の割合に従って配合し、通常の方法で安定液組成物を調製した。
【0037】
得られた安定液組成物について、(1)ファンネル粘度、(2)濾水量(ml)/ケーキ厚(mm)、(3)pH、(4)B型粘度(mPa・s)、(5)静置安定性(上澄%/沈殿%)、(6)一夜間静置後の流動性をそれぞれ測定した。結果を[表1][表2]に併記する。
【0038】
なお、上記(1)のファンネル粘度は500ml/500mlロート型粘度計により測定し、(2)の濾水量はAPI規格濾過試験機3kgf/cm2−30分で測定し、またケーキ厚は濾過試験後のケーキの厚み、(5)の静置安定性は1000mlガラス性メスシリンダーに1000ml入れ、24時間静置後の上澄量/沈殿物量(%)を示す。
【0039】
【表1】
ベントナイト SA−B:三立鉱業株式会社製ベントナイト(250メッシュ品)、
DKハイポリマー50:第一工業製薬株式会社製のCMC、
マーゼルSH:第一工業製薬株式会社製の低分子量(約10,000)アクリル酸ソーダ、
カオリン:SATINTONE WHITE TEX 林化成(株)製 表面積60,800cm2/g、
水簸木節粘土:(株)富丸製 表面積232,500cm2/g、
FCP−10:ファイヤークレーパウダー (株)富丸製 表面積123,500cm2/g
【表2】
バライト:テルゲル (株)テルナイト製 表面積8,300cm2/g、
超微粉炭酸カルシウム:TP−111 奥多摩工業(株)製 43,900cm2/g。
【0040】
上記[表1]、[表2]から分かるように、粘土鉱物以外のものを使用した液比重1.1を超える安定液は粘度が高くなったり、また一夜間静置するとゲル化性質を強く示す。しかしながら、カオリン鉱物の粉末(木節粘土)は経時的な粘度変化が少なく、ゲル化を生じない。また、同一粘度で比較しても静置時の沈降物発生もほとんど見られない。
【0041】
実施例2(安定液の耐セメント性(液比重1.30))
下記[表3]に記載の成分を、同表記載の割合に従って配合し、通常の方法で安定液組成物を調製した。[表3]からも分かるように、配合成分として、ポルトランドセメントを清水1m3に対し、0・3・5・7及び10kgを添加した。 得られた安定液組成物について、(1)ファンネル粘度、(2)濾水量(ml)/ケーキ厚(mm)、(3)pH、(4)B型粘度(mPa・s)、(5)静置安定性(上澄%/沈殿%)、(6)一夜間静置後の流動性をそれぞれ測定した。結果を[表3]に併記する。なお、上記(1)のファンネル粘度は500ml/500mlロート型粘度計により測定し、(2)の濾水量はAPI規格濾過試験機3kgf/cm2−30分で測定し、またケーキ厚は濾過試験後のケーキの厚み、(5)の静置安定性は100mlガラス性円筒管に100ml入れ、24時間静置後の上澄量/沈殿物量(%)を示す。
【0042】
【表3】
ベントナイト SA−B:三立鉱業株式会社製ベントナイト(250メッシュ品)、
FCP−7:ファイヤークレーパウダー (株)富丸製 表面積128,000cm2/g、
笠岡粘土:笠岡粘土工業(株)製 表面積293,000cm2/g、
DKハイポリマー50:第一工業製薬株式会社製のCMC、
マーゼルSH:第一工業製薬株式会社製の低分子量(約10,000)アクリル酸ソーダ。
【0043】
上記[表3]から分かるように、本発明の安定液組成物は、多価カチオンとの反応性の少ない粘土を用いているので、耐セメント性が著しく向上している。
【0044】
実施例3(場所打ち杭:アースドリル工法への適用)
高被圧水頭下でアースドリル杭に本発明の高比重安定液を適用し、通常の施工と同様に、掘削→ポンプリフトによるスライム処理/良液置換→コンクリート打設、まで問題の無いことを確認した。結果の概要を下記に示す。
【0045】
1)アースドリル杭(諸元)
直径:1.3m、深度:GL−20m、設計杭天:GL−1.5m。
【0046】
2)地盤・地下水概要
GL−13m程まで、N値5〜25に漸増する沖積の緩い砂質土層、以深がN値40〜50以上の砂礫・礫混じり粗砂層である。地下水位は常水位面がGL−1.5m内外で、以深が被圧帯水層となり、その水頭はGL−4m深度でGL面に、GL−10m深度でGL+1.1m、GL−15m深度でGL+3.6m、GL−23深度でGL+4.2mと自噴する高被圧条件である。
【0047】
3)安定液(諸元)
上記被圧条件より、安定液面位をGL+1mに保持することで安定液の必要液比重は安全率を見込み、1.25とした。安定液の配合を下記[表4]に示す。
【0048】
【表4】
ベントナイト SA−B:三立鉱業株式会社製ベントナイト(250メッシュ品)、
FCP−10:ファイヤークレーパウダー (株)富丸製 表面積123,500cm2/g、
DKハイポリマー50:第一工業製薬株式会社製のCMC、
マーゼルSH:第一工業製薬株式会社製の低分子量(約10,000)アクリル酸ソーダ。
【0049】
4)工事結果
表層ケーシングは直径1.5m、長さ6m、地上面2m(地中4m)として、圧入により設置し、ドリリングバケット掘削に入った。安定液は、掘削深度GL−1.5mより投入し、以深の掘削は安定液面位をGL+1〜1.2mに保持して行なった。掘削中の逸水量は、0.1〜0.2m3/hrと少なく、超音波孔壁測定から、肌落ちもほとんどなく、通常と同様の掘削が可能であった。
【0050】
掘削完了後の安定液性状(掘削孔 上部〜下部より採取)は、比重:1.26〜1.28、ファンネル粘度:31〜32秒、(造壁性)濾水量:7.6〜8.0ml/ケーキ厚:1.4〜1.6mm、pH:8.5〜8.6、砂分保有率:3〜5%と良好な値が維持されていた。
【0051】
スライムの堆積厚は、一晩放置(13時間)でも12cmと少なく、底ざらい無しで先端ポンプ方式の良液置換〜スライム除去処理を行なった。鉄筋かご・トレミー管を挿入し、コンクリート打設前の残存スライムは皆無であった。
【0052】
打設したコンクリートは、呼び強度:27、スランプ:18〜19cm、空気量:4.5%で、コンクリートの余打率(設計量に対する打設量の増分)は3.3%であった。
【0053】
回収された安定液は、コンクリート天端上30cmまで性状劣化が見られず、その性状は、比重:1.25〜1.26、ファンネル粘度:30〜31秒、(造壁性)濾水量:7.2〜8.0ml/ケーキ厚:1.6〜2.5mm、pH:8.8〜9.2、砂分保有率:1〜3%と性状変化はわずかであった。
【0054】
杭体構築後、杭上部2.5mまで鉛直方向にコア採取(径:100mm)を杭中央部・鉄筋かご際の2カ所で行ない、杭体コンクリートの圧縮強度(4週)を調査した。杭体上部50cmの余盛り部で28〜30N/mm2、以深40〜50N/mm2と設計基準強度を上回ることが確認できた。
【0055】
(安定液が1.1を超える高比重を有していることによる格別の作用効果)
上記実施例3の場合、安定液比重は1.25とし、安定液面位をGL(Ground Level)+1mとした。この程度に安定液面位を上げるには表層ケーシングを地表面上2m程立ち上げることで、掘削やコンクリート打設に特別の装置や機械を使用することなく、通常の施工仕様で施工が可能となる。
【0056】
比較例には示していないが、通常比重(1.1未満)の安定液で掘削すると、次のような不都合(問題)が生じる。すなわち、安定液掘削工法では、安全掘削上必要な安定液面位は、最低でも地下水位+1.0m、被圧地下水位+1.5mが必要になるので、例えば、被圧地下水位がGL+3.5mあるとすれば、安定液面位は最低GL+5.0mが必要である。この条件を確保するには、施工地盤面3.5m以上の嵩上げが必要となり、盛土などによる場合は大量の土砂搬入と嵩上げに要するコストは膨大になる。ケーシング等で安定液面位を高くすることは可能であるが、高さ3m以上のケーシング設置は掘削が困難となり、盛土+ケーシング高さ2mがコンクリート打設他から施工上好ましい条件となる。
【0057】
【発明の効果】
本発明により、従来、施工困難もしくは不可能であった自噴するような高い被圧水頭を有する地下水条件下での孔・溝掘削、あるいは洪積層の過圧密粘土地盤や地下水流速の大きな地盤に対する孔・溝掘削など、過酷な条件下での掘削を可能にし、また長期にわたる分散安定性能に優れ、かつコンクリート置換性にも優れた安定液組成物を提供することができ、この安定剤組成物を使用することにより、安定液掘削工法の安全性と適応性をより高めることができる。
Claims (4)
- アースドリル杭や連続地中壁を構築すべく地盤に孔や溝を掘削するための安定液掘削工法に使用される高比重安定液組成物であって、
水、ベントナイト、カオリン鉱物、カルボキシメチルセルロース、及び分散剤を含有し、1.1を超える液比重を有してなることを特徴とする高比重安定液組成物。 - 水1m 3 に対し、ベントナイト10〜50kg、カオリン鉱物100〜800kg、カルボキシメチルセルロース0.5〜10kg、及び分散剤0.1〜20kgが配合されてなることを特徴とする請求項1記載の高比重安定液組成物。
- 前記カオリン鉱物の比表面積が10,000cm 2 /g以上であることを特徴とする請求項1または2記載の高比重安定液組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の高比重安定液組成物を掘削孔内に供給し、これによって掘削内周地盤面に泥膜を形成させながら更なる掘削を行なうようにした安定液掘削工法。
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