JP3932433B2 - 水素エンジンのバックファイヤ防止方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素エンジンのバックファイヤ防止方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、水素エンジンは、他の内燃機関と比較して排気特性が極めて優れているので、公害防止の面からその早急な実用化が期待されている。水素エンジンの燃料供給法としては内部混合方式と外部混合方式があるが、後者の方が、機構が簡単で運転操作も容易である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、外部混合方式の水素エンジンは、空気過剰率λ=3〜2付近でバックファイヤが発生するという問題点がある。このバックファイヤが外部混合方式の水素エンジンの実用化を遅らせている要因の一つとなっている。このバックファイヤの発生メカニズムについては、これまでに多くの研究がなされてきたが、完全に原因を説明できるものではなかった。
【0004】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、外部混合方式の水素エンジンにおいて、空気過剰率λ=3〜2付近でのバックファイヤの発生を防止することができる方法および装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、空気過剰率λ=3〜2付近でのバックファイヤの発生メカニズムを次のような試験を行って解明し、本発明に到ったものである。
(1)試験設備
供試エンジンは自動車用水冷4気筒4サイクルガソリンエンジンを外部混合方式の水素エンジンに改造したものである。表1に供試エンジンの主要諸元を示す。
【0006】
【表1】
図3は、供試エンジンに用いられている点火システムを示す回路図である。本点火システムには、高回転高負荷時の要求電圧増加に対応するために各々の点火プラグ2に点火プラグケーブル3を介して点火コイル1を設けたダイレクトイグニション方式を使用した。なお、前記点火コイル1はパワートランジスター5を介してコントロールユニット6により制御される。また、1次側電流の立ち上がり時における2次側の逆起電力による放電を防ぐために点火コイル1の2次側にはダイオード7が取り付けられている。なお、上述したダイレクトイグニション方式の代えて、デイストリビュータータイプの点火システムを使用してもよい。
図4は、点火コイル1から点火プラグケーブル(1kΩ)3に供給された2次側の高電圧を、電気抵抗R11,R12を有するアースケーブル14によって分圧し、アースに流したときの電気抵抗R12間の電位差を測定し、信号をオシロスコープで読みとる装置を示している。
【0007】
(2)実験結果
図4に示した装置により、点火コイル1から点火プラグ2までの高電圧部分の浮遊容量に蓄積された残存電気エネルギー量の変化を測定した。この時の電気抵抗値は、Rl=605MΩ,R2=50kΩとしている。
【0008】
図5に水素エンジンとガソリンエンジンにおける測定結果の比較を示す。この時のエンジンスピードは2000rpmとし、水素エンジンの空気過剰率λは2.78としている。図5(a)に示す水素エンジンの場合、点火系高電圧部分の浮遊容量に蓄積された残存電気エネルギー量が燃焼中にほぼ直線的に緩やかに減少している。図5(b)に示すガソリンエンジンの場合、点火系高電圧部分の浮遊容量に蓄積された残存電気エネルギー量が燃焼中に指数関数的に急激に減少している。この結果より水素エンジンの場合、高い残存電気エネルギーが点火系高電圧部分に蓄積していることが分かる。なお、前記点火系高電圧部分には、点火プラグケーブル並びに点火コイル及び点火プラグが含まれる。
【0009】
また、図6に水素エンジンにおいて異常放電(異常点火)が発生したときの残存電気エネルギー量の変化を示す。この時のエンジンスピードは2000rpmとし、空気過剰率λは2.78としている。同図に示すように異常放電の発生と同時に残存電気エネルギーは瞬時に低下している。これより異常放電は点火コイル1から点火プラグ2までの高電圧部分の浮遊容量に蓄積された残存電気エネルギ−によって発生することが分かる。
【0010】
上述した試験結果に基づき、残存電気エネルギーの蓄積および異常放電の原因について次のように考察した。
【0011】
酸素−水素火炎内のイオン濃度が炭化水素系燃料の燃焼火炎内のイオン濃度と比較して極めて少ないことは知られている。このことにより、火炎の抵抗値が増加し、その結果、正常放電終了時にプラグギャップ間には大きな電位差が残存する。ガソリンなどの炭化水素系燃料の場合は、火炎内にH30+,C3H3 +などのイオンが豊富に存在するのでプラグギャップ間に残存する電位差は少なく、残存電気エネルギーも火炎内の豊富なイオンによるイオン電流により瞬時に減少する。しかし、水素エンジンの場合、残存電気エネルギーは火炎内にイオンが少ないために放出されず、次のサイクルまで存在している。この時、燃焼が終了し、シリンダー内圧力が減少してプラグギャップ間の要求電圧が低下して、残存電気エネルギー量と一致したときに異常放電が発生する。異常放電の発生位置は、残存電気エネルギー量とプラグギャップ間の要求電圧によって決まるため不規則であり、異常放電が吸気行程中に発生して混合気に着火したときにバックファイヤとなると考えられる。
【0012】
そこで、本発明では、水素エンジンにおける空気過剰率λ=3〜2付近でのバックファイヤの発生を、点火コイル1から点火プラグ2までの高電圧部分の浮遊容量に蓄積された残存電気エネルギーを速やかに放出することによって解決した。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による水素エンジンのバックファイヤ防止方法は、外部混合方式の水素エンジンの点火コイルから点火プラグまでの高電圧部分の浮遊容量に残存電気エネルギーが蓄積しないようにすることにより異常放電によるバックファイヤの発生を防止することを特徴とする。前記残存電気エネルギーは少なくとも吸気行程まで蓄積しないようにすることが必要である。
【0014】
本発明による水素エンジンのバックファイヤ防止装置は、外部混合方式の水素エンジンの点火コイルから点火プラグまでの高電圧部分に、残存電気エネルギー放出手段を設けたことを特徴とする。なお、前記高電圧部分は、点火プラグケーブル並びに点火コイル及び点火プラグが含まれる。また、前記残存電気エネルギー放出手段は、電気抵抗を有するアースケーブルであることが好ましい。
【0015】
【実施例】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0016】
本発明者等は、問題を解決するための手段の欄で詳述したように、水素エンジンにおける空気過剰率λ=3〜2付近でのバックファイヤの発生メカニズムの一つとして、酸素−水素火炎内のイオン濃度が炭化水素系燃料と比較して非常に少ないためにプラグギャップ間にイオン電流が殆ど流れず点火系高電圧部分に多くの電気エネルギーが残存し、燃焼終了後、シリンダー内圧力が大気圧付近まで低下する吸気行程においてプラグギャップ間の要求電圧が低下して残存電気エネルギー量と一致したとき異常放電を発生し、バックファイヤとなることを解明し、バックファイヤの発生を防止するには、点火系高電圧部分の浮遊容量に蓄積されている残存電気エネルギーを速やかに放出する必要があるとの結論を得た。
【0017】
図1は、点火系高電圧部分の浮遊容量に残存電気エネルギーが蓄積しないようにするための水素エンジンのバックファイヤ防止装置の一実施例を示す概略図である。
【0018】
同図に示すように、本発明による水素エンジンのバックファイヤ防止装置は、点火コイル1と点火プラグ2間に設けられた点火プラグケーブル(1kΩ)に、残存電気エネルギー放出手段である電気抵抗Rlを有するアースケーブル4を接続して構成されている。すなわち、このアースケーブル4によって、高電圧部分から分圧し、常にアース側に残存電気エネルギーを放出している。
【0019】
次に、上記バックファイヤ防止装置を使用した試験について説明する。
【0020】
本試験では、電流を流れやすくするために、電気抵抗値をRl=5MΩとしている。
【0021】
図2に上述したバックファイヤ防止装置を有する水素エンジンにおける測定結果を示す。この時のエンジンスピードは1600rpmとし、空気過剰率λは1.01としている。点火信号波形を見ると残存電気エネルギーは速やかに減衰していることが分かる。
【0022】
すなわち、点火プラグケーブル3に電気抵抗R1を有するアースケーブル4を設けて運転した場合、空気過剰率=3〜2付近でのバックファイヤを防止することができ、エンジンスピード1600rpm時に、空気過剰率λ=1.0での運転が可能となった。
【0023】
上述した実施例では、点火系高電圧部分の電気エネルギーを電気抵抗R1を有するアースケーブル4によって、常にアース側に放電させているが、この電気抵抗R1の代わりにダイオードを用いて残存電気エネルギーだけを放出し、無駄に電力を消費させないようにすることもできる。また、プラグギャップ間隔を広くするなどの方法により、プラグギャップ間の要求電圧を高くすることにより残存電気エネルギ−のレベルを高くして、吸気行程前の膨張および排気行程時のプラグギャップ間の要求電圧において残存電気エネルギーを放電させてしまうこともできる。すなわち、残存電気エネルギー放出手段としては、点火系高電圧部分に蓄積される残存電気エネルギーを吸気行程までに放出できるものであればどのような構成のものでも良い。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されているため、外部混合方式の水素エンジンにおいて、空気過剰率=3〜2付近での異常放電によるバックファイヤの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による水素エンジンのバックファイヤ防止装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】 本発明によるバックファイヤ防止装置を有する水素エンジンにおける測定結果を示すインジケータ線図である。
【図3】 供試エンジンに用いられている点火システムを示す回路図である。
【図4】 点火プラグケーブルに供給された2次側の高電圧を分圧し、抵抗を介してアースに流したときの抵抗間の電位差を測定し、信号を読みとる装置を示す回路図である。
【図5】 水素エンジンとガソリンエンジンにおける残存電気エネルギーの測定結果の比較を示すインジケータ線図であり、図5(a)は水素エンジン、図5(b)はガソリンエンジンの測定結果を示している。
【図6】 異常放電(点火)が発生したときの残存電気エネルギー量の測定結果を示すインジケータ線図である。
【符号の説明】
1 点火コイル
2 点火プラグ
3 点火プラグケーブル
4 アースケーブル(残存電気エネルギー放出手段)
5 パワートランジスター
6 コントロールユニット
7 ダイオード
R1、R11、R12 電気抵抗
Claims (4)
- 外部混合方式の水素エンジンの点火コイル(1)から点火プラグ(2)までの高電圧部分の浮遊容量に、燃焼期間中の水素−酸素火炎内に放電できない残存電気エネルギーが蓄積しないようにすることにより、前記残存電気エネルギーの異常放電によるバックファイヤの発生を防止することを特徴とする水素エンジンのバックファイヤ防止方法。
- 前記残存電気エネルギーが吸気行程まで蓄積しないようにすることを特徴とする請求項1記載の水素エンジンのバックファイヤ防止方法。
- 外部混合方式の水素エンジンの点火コイル(1)から点火プラグ(2)までの高電圧部分に、異常放電するとバックファイアを発生させる残存電気エネルギーが燃焼期間中の水素−酸素火炎内に放電できずに蓄積するのを防止する残存電気エネルギー放出手段(4)を設けたことを特徴とする水素エンジンのバックファイヤ防止装置。
- 前記残存電気エネルギー放出手段が、電気抵抗(R1)を有するアースケーブル(4)であることを特徴とする請求項3記載の水素エンジンのバックファイヤ防止装置。
Priority Applications (1)
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|---|---|---|---|
| JP12707496A JP3932433B2 (ja) | 1996-05-22 | 1996-05-22 | 水素エンジンのバックファイヤ防止方法およびその装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP12707496A JP3932433B2 (ja) | 1996-05-22 | 1996-05-22 | 水素エンジンのバックファイヤ防止方法およびその装置 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH09310668A JPH09310668A (ja) | 1997-12-02 |
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Family
ID=14950939
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP12707496A Expired - Lifetime JP3932433B2 (ja) | 1996-05-22 | 1996-05-22 | 水素エンジンのバックファイヤ防止方法およびその装置 |
Country Status (1)
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-
1996
- 1996-05-22 JP JP12707496A patent/JP3932433B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
| Publication number | Publication date |
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| JPH09310668A (ja) | 1997-12-02 |
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