JP3948444B2 - 近接スイッチ - Google Patents

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Description

この発明は、高周波磁界を用いて、金属製の被検出物体を非接触で検出する近接スイッチに関する。
図17は、従来の代表的な近接スイッチの外観を示す。この近接スイッチは、本体ケース101の外周に金属製ケース102が被せられて成る。この金属製ケース102は、近接スイッチを取り付けるためのねじ部として機能するように、外周面の長さ方向に沿って多数の溝部102aが形成されるとともに、ナット103が嵌め込まれている。本体ケース101内の前部には、検出コイルやコアなど(図示せず。)が収容されている。この本体ケース101,検出コイル、コアにより、近接スイッチの検出部が構成されるもので、本体ケース101の前面を介して前方に進行した高周波磁界により、被検査物体を検出するための検出エリアが設定される。
上記図17の近接スイッチは、前記金属製ケース102により本体ケース101が全長にわたって被覆されたシールドタイプのスイッチである。このシールドタイプの近接スイッチでは、検出コイルからその径方向へと拡がる磁束は金属製ケース102によって抑制されるようになる。このシールドタイプの近接スイッチは、主として、金属体に埋め込んで固定した状態で使用されるが、径方向への磁束が抑制されると、検出方向である前方向への磁束も減少し、検出距離が短くなる、という欠点がある。
このほか近接スイッチには、検出部の前端部を露出させた非シールドタイプのものがある。この非シールドタイプの近接スイッチでは、検出コイルから径方向に拡がる磁束が制限されることがないので、磁束は前方側にも大きく広がり、シールドタイプの近接スイッチと比較すると、より遠方の物体まで検出することができる。ただし、この種の近接スイッチには、周囲金属の影響を受けやすい、という欠点があるので、金属体に埋め込まずに固定することが可能な環境で使用される。
前記したように、シールドタイプの近接スイッチでは、金属製ケースのシールド機能によって検出コイルからの磁束が弱められてしまうので、非シールドタイプの近接スイッチと比較すると、検出距離は著しく短くなる。この問題を解決するために、出願人は、先般、検出部と金属製ケースとの間に、強磁性金属による磁束誘導部材を設け、この部材を介して検出コイルから径方向に広がる磁束を検出方向側に誘導することを提案した(特許文献1参照)。
特開2001−155604号公報 (4〜5頁,図1〜図5)
しかしながらその後の研究により、上記のような強磁性体による磁束誘導部材を用いると、この磁束誘導部材自体での渦電流による損失が増加し、十分な検出感度を得られなくなることが判明した。以下、その理由について説明する。
前記特許文献1に記載の近接センサでは、表皮深さ(磁束が浸透する深さ)に対する磁束誘導部材の厚みが大きいため、この磁束誘導部材に生じた渦電流による損失Weは、つぎの(1)式により表される。
We ∝ (μ・ρ)1/2・t ・・・(1)
上記(1)式において、μは金属体の透磁率,ρは体積抵抗率,tは厚みである。この(1)式に示すように、体積抵抗率ρが高くなるほど、また物体の厚みtが大きくなるほど、損失Weは大きくなる。強磁性金属体では、体積抵抗率ρが大きくなるので、前記磁束誘導部材として強磁性金属体を使用すると、この部材の体積抵抗率や厚みによって渦電流による損失が増加してしまう。
一方、近接スイッチの検出感度は、距離感度により表すことができる。距離感度とは、近接スイッチと被検出物体との距離の変化に対するコンダクタンスの変化の割合Δglとして表されるもので、この距離感度Δglの値が大きいほど物体検出能力が高い、ということができる。
距離感度Δglの具体的な算出式は、つぎの(2)式のとおりである。なお、この(2)式において、GL0は、被検出物体が任意の距離L0だけ離れている場合に得られるコンダクタンスであり、抵抗R,近接スイッチ内のキャパシタンスC,コイルや磁束誘導部材などのインダクタンスLを(3)式にあてはめることにより求められる。
Figure 0003948444
Figure 0003948444
前記(3)式の抵抗Rは、主として、コイルにおける銅損や渦電流をはじめとする鉄損に起因する。渦電流による損失Weが増加すると、抵抗Rの増加によってコンダクタンスGL0も増加することになる。このようにコンダクタンスGL0が増加すると、(2)式の分母の値が大きくなることになるから、距離感度Δglは、小さくなる方向に変化する、ということになる。
したがって、前記特許文献1に記載された強磁性の磁束誘導部材は、検出部からの磁束を検出方向に導きはするものの、この磁束誘導部材での渦電流による損失が大きくなるために距離感度Δglが低下し、物体の検出能力を十分に高められない、ということになる。
この発明は上記問題点に着目してなされたもので、強磁性体による磁束誘導の効果を持ちつつ、従来の強磁性体の磁束誘導部材において発生した磁束の損失を少なくすることによって、従来よりも検出感度を高めた近接スイッチを提供することを目的とする。
この発明にかかる第1の近接スイッチは、コイルおよびコアを含む検出部と、前記検出部の外周に配備される非磁性金属より成る金属製ケースとを具備する。前記検出部の外側または検出部内の前記コアよりも外側であって、前記金属製ケースとの間には、コイルからの磁束を検出方向に誘導するための磁束誘導部材が配備される。この磁束誘導部材は、前記金属製ケースより体積抵抗率が小さい非磁性金属体を母材として、その母材の表面の少なくとも一部に強磁性の金属薄膜を形成して構成されて成るものである。
前記検出部は、コイルが挿入されたコアを、ポリブチレンテレフラレート(PBT)樹脂のような耐熱性の高い樹脂でモールドして構成することができる。この検出部では、コイルおよびコアの一方の端面を被覆する部分の表面が、物体検出用の磁界を発する検出面として機能することになる。なお、この明細書では、検出面を近接スイッチの前面として、各部材間の前後関係を示す。
前記金属製ケースは、黄銅(Cu),ステンレス(SUS)などの非磁性金属により構成するのが望ましい。またこの金属製ケースには、スイッチ取り付け用のねじ部としての機能を付与することができる。
前記金属製ケースは、前記検出部の外周をほぼ全長にわたって被覆するか、または、コイルおよびコアに対応する外周部分を露出させた状態で配備することができる。前者の構成は前記したシールドタイプの近接スイッチに相当し、後者の構成は非シールドタイプの近接スイッチに相当する。
上記構成の近接スイッチによれば、磁束誘導部材は、検出体の外側、または検出体内のコアよりも外側に配備されるので、コイルからその径方向に沿って拡がる磁束を受け付けることができる。ここで磁束誘導部材の表面には、強磁性の金属薄膜が形成されているので、前記コイルからその径方向に沿って拡がる磁束は、この金属薄膜を介して検出方向(ケース体の前面から前方に向かう方向)に誘導されるようになる。
前記磁束誘導部材の表面に形成される金属薄膜の厚みは表皮深さに近い、と考えることができる。このような表皮深さに近い厚みの金属での渦電流による損失Weは、前記した(1)式で表されるのではなく、つぎの(4)式により表されることになる。
We ∝ (μ/ρ)・t・v ・・・(4)
上記(4)式において、μ,ρ,tは、前記(1)式と同じパラメータであり、vは金属体の体積である。前記の金属薄膜は、強磁性金属により形成されるので、透磁率μは高いが、tやvの値は、きわめて小さくなる。よって、この強磁性の金属薄膜に起因する損失を小さくすることができる。
一方、磁束誘導部材の母材による損失には、前記(1)式が適用されるが、この母材は非磁性の金属体であるので、(1)式のμの値が小さくなる。したがって金属薄膜を通過して母材側へと漏れる磁束により生じる損失を小さくすることができる。
このように、磁束誘導部材の母材,金属薄膜のいずれにおいても、渦電流による損失を小さくすることができる。したがって、前記(3)式の抵抗Rを小さくしてコンダクタンスGL0を小さくすることができ、もって前記距離感度Δglを向上させることが可能となる。
つぎに、この発明にかかる第2の近接スイッチは、ケース体の内部にコイルおよびコアが収容された検出部と、前記ケース体の外周に取り付けられた非磁性金属より成る金属製ケースとを具備する。前記検出部には、コイルからの磁束を検出方向に誘導するための磁束誘導部材が前記ケース体の外周面または内周面に接した状態で配備される。この磁束誘導部材は、前記金属製ケースより体積抵抗率が小さい非磁性金属体を母材として、その母材の表面の少なくとも一部に強磁性の金属薄膜を形成して構成されて成るものである。
前記検出部のケース体は、PBT樹脂のような耐熱性の高い樹脂により成型されるのが望ましい。なお、このケース体の表面のうち、コイルおよびコアの一端面に対応する部分が前記した検出面、すなわち近接スイッチの前面として機能することになる。
前記ケース体には、コイルおよびコアのほか、共振回路などの回路が配線された基板を収容できるだけの長さをもたせてもよい。また、ケース体の空洞部分には、樹脂を充填するのが望ましい。
前記金属製ケースは、第1の近接スイッチと同様に、黄銅(Cu),ステンレス(SUS)などの非磁性金属により構成するのが望ましい。またこの金属製ケースにも、スイッチ取り付け用のねじ部としての機能を付与することができる。
この金属製ケースは、前記ケース体に対し、外側から嵌め込む方法で取り付けることができる。ここで、前記コイルおよびコアに対応する部分を含め、ケース体の外周のほぼ全長にわたる範囲が被覆されるように金属製ケースを取り付けた場合には、前記したシールドタイプの近接スイッチが提供されることになる。また前記コイルおよびコアに対応する部分を被覆せずに、ケース体の後端位置に金属製ケースの前端を対応させた場合には、非シールドタイプの近接スイッチが提供されることになる。
上記第2の近接スイッチでも、磁束誘導部材は、第1の近接スイッチと同様に、検出体の外側、または検出体内のコアよりも外側に配備されることになるので、コイルからその径方向に沿って拡がる磁束を受け付けることができる。よって、第1の近接スイッチについて述べたのと同様の原理により、コイルからの磁束を検出方向に誘導することができる。また、磁束誘導部材の母材,金属薄膜のいずれにおいても、渦電流による損失を小さくすることができるから、距離感度Δglを向上させることが可能となる。
なお、第1,第2のいずれの近接スイッチにおいても、シールドタイプの近接スイッチとして構成される場合には、磁束誘導部材は、近接スイッチの長さ方向において、少なくともコイルに対応する範囲に設けられるのが望ましい。一方、非シールドタイプの近接スイッチとして構成される場合の磁束誘導部材は、コイルよりも後方に配備してもよい。
また、第1,第2のいずれの近接スイッチでも、磁束誘導部材は、周壁部(磁束誘導部材の前端と後端との間の部分)が全周にわたって連なった形態をとるのが望ましい。ただし、これに限らず、周壁部の一部に間隙が形成された形態のものを使用してもよい。
上記した第2の近接スイッチには、つぎの2種類の磁束誘導部材を使用することができる。
第1の磁束誘導部材は、両端が開口された中空の本体部の一端にフランジ部が形成されて成る。これに対し、第2の磁束誘導部材は、両端が開口された中空体(すなわち第1の磁束誘導部材の本体部のみ)として構成される。
第1の磁束誘導部材を用いた場合には、つぎの2つの態様を考えることができる。
まず、第1の態様では、前記磁束誘導部材は、本体部がケース体と金属製ケースとの間に位置し、かつ前記フランジ部が金属製ケースの前端縁よりも前方に位置するように配備される。すなわち、この態様では、磁束誘導部材の本体部の内周面がケース体の外周面に接した状態とすることができる。
上記態様にかかる近接スイッチは、金属製ケースの内周面またはケース体の外周面に磁束誘導部材の本体部を嵌め込むための凹部を形成し、この凹部により磁束誘導部材を固定することにより製作することができる。または、インサート成型により磁束誘導部材をケース体の外周面に一体化することもできる。
第1の磁束誘導部材を用いた第2の態様の近接スイッチでは、前記磁束誘導部材は、フランジ部を前にした状態で、フランジ部および本体部がケース体の内面に設けられる。この態様にかかる近接スイッチでは、ケース体の内周面にフランジ部や本体部の形状に応じた凹部を形成し、この凹部内に磁束誘導部材を嵌め込むことによって、磁束誘導部材とケース体とを一体化してもよい。または、1番目の態様と同様に、インサート成型により磁束誘導部材が一体化されたケース体を製作することもできる。
なお、上記いずれの製作方法をとる場合にも、前記フランジ部は、ケース体の前面側の肉厚内に位置させることができる。またケース体の周壁部(コアの周囲を取り囲む部分であり、前記内周面を構成する。)の肉厚が十分であれば、前面側に所定の厚みを確保し、その厚み分だけ後退した位置にフランジ部を配備してもよい。いずれの構成をとる場合にも、フランジ部の前端面は、ケース体の前面により被覆された状態となる。
第1の磁束誘導部材について、上記2つの態様のいずれを採用する場合も、強磁性の金属薄膜は、少なくとも、前記フランジ部の前端面および外周面と、フランジ部および本体部にかかる内周面全体とに形成される。すなわち、コイルに近い磁束誘導部材の内周面と、検出方向に近いフランジ部の前端面やフランジ部の外周面に、強磁性の金属薄膜が形成されることになる。コイルからその径方向に沿って拡がった磁束は、磁束誘導部材の内周面で集められた後にフランジ部の前端面へと誘導される。また前記内周面の金属薄膜を通過して本体部の外周側へと逃げた磁束についても、前記フランジ部の外周面の金属薄膜を介してフランジ部の前端面に誘導することが可能となる。このように磁束を効率良く誘導して、検出方向への磁束を大きくすることが可能となる。
前記第2の近接スイッチに第2の磁束誘導部材を適用する場合には、以下の3つの態様を考えることができる。まず、1番目の態様では、前記磁束誘導部材は、ケース体と金属製ケースとの間に配備される。すなわち、磁束誘導部材を構成する中空体の内周面をケース体の外周面に接した状態にすることができる。
上記の態様でも、第1の磁束誘導部材にかかる第1の態様と同様に、金属製ケースの内周面またはケース体の外周面に凹部を形成し、その凹部内に磁束誘導部材を固定することができる。また、インサート成型により、磁束誘導部材をケース体の外周面に一体化することもできる。
なお、この態様では、中空体の全長がケース体と金属製ケースとの間に含まれるようにしても良いが、これに限らず、たとえば、金属製ケースの前端縁に対し、中空体を若干前方に突出させて配備してもよい。また、この態様にかかる中空体の前端面は、ケース体の前面に位置合わせされるなど、露出した状態であってもよい。
2番目の態様では、磁束誘導部材は、中空体の前端面がケース体の前面よりも後方に位置するようにして、ケース体の外周面に設けられる。たとえば、ケース体の周壁部の外周側に中空体の形状に応じた凹部を形成し、この凹部に前記中空体を嵌め込むことにより、ケース体と磁束誘導部材とを一体化することができる。また、この態様でも、前記第1の磁束誘導部材の場合と同様に、インサート成型により磁束誘導部材が一体化されたケース体を製作することができる。なおいずれの製作方法を用いる場合にも、ケース体に一体化された中空体の外周面とそれより後方のケース体の外周面との間に段差ができないようにするのが望ましい。
3番目の態様では、磁束誘導部材は、前記ケース体の内周面に設けられる。この場合には、ケース体の周壁部の内周側に中空体の形状に応じた凹部を形成し、この凹部内に中空体を嵌め込むことによって、ケース体と磁束誘導部材とを一体化することができる。または、インサート成型により、磁束誘導部材が一体化されたケース体を製作することもできる。
第2の磁束誘導部材について、上記3つの態様のいずれを採用する場合にも、強磁性の金属薄膜は、少なくとも、前記中空体の前端面および内周面、ならびに外周面の前端部に形成される。すなわち、中空体の表面のうち、コイルに近い内周面と、検出方向に近い前端面および外周面の前端部とに、強磁性の金属薄膜が形成されることになる。よって、コイルからその径方向に拡がった磁束を、磁束誘導部材の内周面で集めた後に前端面に誘導することができる。また、内周面の金属薄膜を通過して外周面の後方側に逃げる磁束についても、中空体の外周面の前端部に形成された金属薄膜を介して前方の検出方向へと誘導することができる。
このように、第1、第2のいずれの磁束誘導部材を用いた場合にも、センサの前面側に磁束を効率良く誘導して、検出方向への磁束を大きくすることが可能となる。なお、第1の磁束誘導部材では、フランジ部の前端面の存在により、検出方向に磁束を誘導する力が第2の磁束誘導部材よりも高められると考えることができる。
また、第1の磁束誘導部材にかかる第2の態様、および第2の磁束誘導部材にかかる第2、第3の態様によれば、ケース体によって磁束誘導部材の前端部を保護することができるので、前端の金属薄膜が露出して損傷するのを防ぐことができる。また、第1の磁束部材誘導部材にかかる第2の態様、および第2の磁束誘導部材にかかる第3の態様によれば、磁束誘導部材全体がケース体の内部で保護されるので、水や油から金属薄膜を保護することができる。
なお、上記第1,第2の磁束誘導部材は、前記した第1の近接スイッチに使用することもできる。たとえば、第1の磁束誘導部材については、本体部を検出部と金属製ケースとの間に位置させ、かつフランジ部を金属製ケースの前端縁よりも前方に位置させた状態で配備することができる。同様に、第2の磁束誘導部材を使用する場合にも、前記中空体を検出部と金属製ケースとの間に配備することができる。
また、第1,第2の磁束誘導部材を前記コイルおよびコアとともに樹脂モールドすることにより、これらの磁束誘導部材を検出部内に配備することができる。
つぎに、第1,第2の近接スイッチに共通する態様について説明する。まず、一の態様では、前記強磁性の金属薄膜は、磁束誘導部材の全面にわたって形成される。このようにすれば、磁束誘導部材の内周面側の金属薄膜から後端部に逃げた磁束も集められて検出方向へと導かれるようになり、磁束の誘導量をより大きくすることができる。
より好ましい態様の近接スイッチでは、前記強磁性の金属薄膜を、前記母材より体積抵抗率ρが高い金属により形成するようにしている。前出の(4)式によれば、金属薄膜の体積抵抗率ρが高くなると、渦電流による損失Weを小さくできるから、距離感度Δglをより向上できることになる。
この態様にかかる金属薄膜としては、たとえば、ニッケル(Ni),鉄(Fe),コバルト(Co)などの金属による合金(NiFe,CoFe,CoNiFeなど),またはこれら金属の窒素化合物あるいは酸素化合物を用いることができる。
さらに好ましい態様の近接スイッチでは、前記磁束誘導部材は、前記金属製ケースより体積抵抗率が低い非磁性金属体を母材として構成される。たとえば、純銅(Cu),アルミニウム(Al)などを母材として使用することができる。
体積抵抗率が低い非磁性金属体を母材とすると、前記(1)式におけるρの値を小さくすることができる。したがって母材での渦電流による損失Weを抑えてコンダクタンスGL0をより小さくすることができるので、距離感度Δglをより向上させることが可能となる。
前記図17に示した従来の一般的な近接スイッチでも、外側の金属製ケース102を、体積抵抗率が小さい非磁性金属体により形成することによって、この金属製ケース102での渦電流による損失Weを小さくすることができるはずである。しかしながら、純銅などの体積抵抗率が小さい金属には、機械強度が小さいという欠点があるため、保護機能を兼ねる金属製ケースの材料とするのは困難である。
これに対し、この発明では、機械強度を担保するために、体積抵抗率が大きい非磁性金属を金属体ケースとして使用する一方で、体積抵抗率が小さい非磁性金属体を磁束誘導部材の母材として使用することにより、非磁性金属体において発生する渦電流による損失を抑えることができる。よって、機械強度を低下させることなく、従来よりも距離感度を向上させた近接スイッチを提供することが可能となるのである。
この発明によれば、非磁性の金属体の表面に強磁性の金属薄膜が形成された磁束誘導部材を、コイルから径方向に拡がる磁束を受け付けられるように配置することにより、金属薄膜を介して検出方向に磁束を誘導することが可能となる。また、この発明では、金属薄膜や母材である非磁性金属体での渦電流による損失を少なくして抵抗成分を小さくすることができるので、距離感度Δglを向上させることができる。特に、シールドタイプの近接スイッチにこの発明を適用した場合、従来の同種の近接スイッチよりも検出距離を長くすることができ、非シールドタイプの近接スイッチに近い検出能力を持たせることができる。
図1(A)は、この発明が適用されたシールドタイプの近接スイッチの構成を示す。
この近接スイッチ1は、コイルケース5の内部に検出コイル6やコア7が収容された検出部2を具備する。前記コイルケース5はPBT樹脂などの耐熱性を持つ樹脂を成型加工したもので、円筒状の周壁部5bの前端を前板5aにより塞いだ構成のものである。前記検出コイル6からの磁束の大半は、前板5aを通過して前方へと向かうもので、この磁路により被検出物体の検出エリアが設定される。
前記コイルケース5には、ほぼ全長にわたって筒状の金属製ケース3が被せられる。この金属製ケース3は、コイルケース5の周壁部5bよりも十分に長く形成されている。この金属製ケース3内において、検出部2の後方に生じた空間には、共振回路などを構成する電子部品8が搭載された基板9が、基板面を水平に維持した状態で設置される。また金属製ケース3の後端の開口部には、接続ケーブル10の取付孔11aを具備する支持部材11が嵌め込まれる。
なお、この金属製ケース3の外周面には、スイッチ取付のためのナット(図示せず。)を嵌め込むための溝部3aが、外周面の全長にわたって形成される。また、前記コイルケース5および金属製ケース3内の空洞部には、樹脂が充填されている(図では、この充填樹脂の部分を網点の塗りつぶしとして示す。以下の実施例でも同様にして示す。)
前記金属製ケース3の内周面の前端部には、所定長さの凹部3bが内周面全体にわたって形成されている。この実施例では、凹部3bによる空間を用いて、金属製ケース3とコイルケース5との間に金属製の磁束誘導部材4を介在させている。この磁束誘導部材4は、筒状体4aの前端にフランジ部4bが連続形成されて成るもので、筒状体4aの厚み,長さはそれぞれ前記凹部3bの深み,長さに対応し、またその内径はコイルケース5の外径に対応するように形成されている。磁束誘導部材4は、フランジ部4bの筒状体4aに連なる面が金属製ケース3の前縁部に当接し、かつ筒状体4aの周面が金属製ケース3の凹部3bに嵌め込まれた状態で固定配備される。
図1(B)には、前記図1(A)の破線で囲んだ領域Rにおける磁束誘導部材4の断面形状を拡大して示してある。この実施例の磁束誘導部材4は、銅,アルミニウムなどの非磁性の金属体を母材41として、この母材41の内外の全面にわたって、強磁性の金属薄膜42(以下、「強磁性薄膜42」という。)が形成されている。なお、この強磁性薄膜42は、メッキまたは蒸着加工により形成されるものである。
上記構成によれば、検出コイル6から径方向に拡がる磁束は、磁束誘導部材4の内面の強磁性薄膜42に入る。これらの磁束の一部は、母材41や金属製ケース3の側に進行するが、大半の磁束は、強磁性薄膜42内をその膜面に沿って進行し、開放端であるフランジ部4bの前面へと導かれるようになる。また、内面側の強磁性薄膜42から母材41の方に逃げた磁束も、外周部や後端部の強磁性薄膜42を介してフランジ部4b側に誘導される。
図2は、上記構成の近接スイッチ1と、磁束誘導部材4を持たない従来の近接スイッチ1´とについて、検出能力を比較して示す。なお、従来の近接スイッチ1´においても、磁束誘導部材4が導入されていない以外は、この実施例と同様の構成となるので、この実施例の近接スイッチ1と共通する構成は同じ符号により示す。
また検出部2からの磁束Gは、一点鎖線で示す。また図中の12は被検出物体であり、13は、この被検出物体の表面における渦電流の出現エリアを示す。
従来のシールドタイプの近接スイッチ1´では、検出コイル6から径方向に伸びた磁束が周囲に広がらないように、これら磁束を金属製ケース3により遮蔽するようにしている。しかしながら、この近接スイッチ1´では、磁束を誘導させる強磁性金属体がないため、検出方向に磁束を大きく誘導させることができず、検出距離を伸ばすのは困難であった。
これに対し、この実施例の近接スイッチ1では、検出コイル6から径方向への磁束を、前記磁束誘導部材4の表面の強磁性薄膜42において集め、検出方向に誘導することができる。またこの強磁性薄膜42は、表皮深さに近い厚みを持つものとなるので、渦電流による損失Weの計算式として前記した(4)式を適用することができる。ここで(4)式における透磁率μの値は大きくなるものの、厚みtや体積vの値はきわめて小さくなるから、損失Weを小さくすることができる。さらに、母材41に起因する損失には、前記(1)式が適用されるが、この母材41は非磁性金属体であるから、(1)式におけるμの値を小さくすることができ、母材41側に漏れた磁束により生じた渦電流による損失を小さくすることができる。
よって、この実施例の磁束誘導部材4を前出の特許文献1に記載された金属部品と比較すると、磁束誘導部材4での渦電流による損失Weを大幅に小さくすることができる。このため、コンダクタンスGL0も小さくなり、距離感度Δglを向上することができる。
このようなことから、この実施例の近接スイッチ1では、図2中の矢印Fに示すように、従来の近接スイッチ1´での最大検出距離よりも遠方にある被検出物体12にまで十分に届くだけの磁束Gを作用させ、かつこの磁束Gによって、被検出物体を精度よく検出することができる。
図3は、ニッケル・鉄系の合金による強磁性薄膜42を持つ磁束誘導部材4を導入した本願発明にかかる近接スイッチ(図3の(1)〜(3))と、強磁性薄膜42が形成されていない非磁性の母材41のみを導入した近接スイッチ(図3の(4))とについて、それぞれ物体検出の感度を計測した結果を示す。なお、(1)〜(3)の各強磁性薄膜42は、全面メッキ加工されたもので、図中の膜厚は、加工後の薄膜を計測して得たものである。また(1)〜(3)における磁束誘導部材4の母材41には、いずれも(4)と同じ材質のもの(この実施例では、タフピッチ銅)を用いている。
この図3および以下の説明で使用する距離感度Δglは、前記した(2)(3)式に基づいて算出されたものである。この距離感度Δglの値が大きいほど、物体検出能力が高い、ということができる。なお、図3(1)〜(4)の各近接スイッチとも、それぞれ距離L1,L2,L3(L1<L2<L3)についての距離感度Δglを計測している。
図3によれば、(1)〜(3)の強磁性薄膜42を具備する磁束誘導部材4と(4)の非磁性金属体のみから成る部材との間には、距離感度Δglに大きな差が認められる。このように本願発明にかかる近接スイッチによれば、距離感度を大きく向上することができる。
図4は、本願発明にかかる近接スイッチとして、ニッケル・鉄合金による強磁性薄膜42の厚みが異なる複数の近接スイッチを用意し、これらの近接スイッチについて、それぞれある距離に対する距離感度Δglを所定回数ずつ測定して得た測定結果を示す。なお、この測定に使用した各スイッチの磁束誘導部材4は、黄銅を母材として、この母材の全面に強磁性薄膜をメッキ加工により形成して成るものである。この図4に示すΔglの数値範囲は、前記図3に示した数値範囲とはかなり異なっているが、これは、磁束誘導部材の径と母材の材質の違いによるものである。
この図4によれば、薄膜の厚みが4〜8μm程度であるときには高い感度が得られるのに対し、膜厚が10μmを超えると、以後は、膜厚が大きくなるほど感度が低下する、という結果になっている。この結果は、磁束誘導部材4における強磁性金属の厚みが大きくなると、(4)式のtやvの値が大きくなって渦電流による損失Weが増加し、抵抗RならびにコンダクタンスGL0が増加したことによるものと、推測することができる。
図5は、前記磁束誘導部材4について、強磁性薄膜42を部分的に形成して距離感度Δglを測定した結果を示す。なお、この測定に使用された各磁束誘導部材4は、黄銅を母材41として、その表面に、ニッケル・鉄合金による厚み8μmの強磁性薄膜42を形成したものである。
図5(1)は、磁束誘導部材4の表面を番号1〜6により区分けして示したもので、1は前記フランジ部4bの前面に、2はフランジ部4bの外周面に、3はフランジ部4bおよび筒状体4aの内周面に、4はフランジ部4bの背面(前記金属製ケース3の前端面に接する面)に、5は筒状体4aの外周面に、6は筒状体4aの後端面(筒状体4aの端縁を構成する面)に、それぞれ相当する。
図5(2)は、強磁性薄膜42の形成位置と距離感度Δglの測定結果とを対応づけて示す。図中のAは、1〜6の各面、すなわち、前記図1に示したように、磁束誘導部材4の全面にわたって強磁性薄膜42を形成した場合における測定結果である。B以下は、前記6つの面のうちの2以上の面を選択して強磁性薄膜42を形成した場合の測定結果である。なお、各事例A〜Eでは、強磁性薄膜42に同じ材料を使用し、膜厚もほぼ同一に形成された状態の磁束誘導部材4を用いて、測定を行っている。
図5(2)によれば、Bの事例、すなわち磁束誘導部材4の内周面全体,フランジ部4bの前面,およびフランジ部4bの外周面に強磁性薄膜42を形成した場合には、全面にわたって強磁性薄膜42を形成したAの事例に匹敵する感度が得られている。これに対し、強磁性薄膜42が部分形成されたその他の事例C,D,Eでは、距離感度Δglは、事例Bに比べてかなり低下している。特に内周面(3の部分)に強磁性薄膜42を形成しなかったEの事例での距離感度Δglは、最も低い値を示している。
上記においてBの事例における距離感度Δglが高くなったのは、検出コイル6に最も近い内周面の薄膜(3の部分)に検出コイル6からの磁束が集められ、さらにフランジ部4bの強磁性薄膜42(1,2の部分)の存在により、これらの磁束が内面に沿って前方へと誘導されたためである、と考えることができる。特にこのBの事例をCの事例と比較した結果によれば、内周面の強磁性薄膜42からフランジ部4bの後方側に逃げた磁束がフランジ部4bの外周部分の強磁性薄膜42(2の部分)に誘導された後、検出方向側に導かれたものと、推測することができる。
またAの事例においてBより若干高い感度を得ることができたのは、内周面の強磁性薄膜42から筒状体4aの後方に逃げた磁束が、後端や外周部分の強磁性薄膜42(4,5,6の部分)を介して前方に導かれたためであると、推測することができる。
図6は、磁束誘導部材4の薄膜の材質が距離感度Δglに与える影響を、CAEにより解析した結果を示す。図中、(a)は、薄膜が形成されない非磁性の母材のみの部材であり、(b)は、この母材の表面に体積抵抗率ρ(以下、単に「抵抗率ρ」という。)が高い非磁性体の薄膜が形成された部材である。(c)(d)(e)は、いずれも強磁性薄膜が形成された部材であるが、(c)の薄膜は、透磁率μが中程度で抵抗率ρが高い金属により形成される。(d)の薄膜は、透磁率μは高いが抵抗率ρが低い金属により形成され、さらに(e)の薄膜は、透磁率μ,抵抗率ρがともに高い金属により形成される。
図6(1)は、上記(a)〜(e)の各磁束誘導部材4について、母材や金属薄膜の特性を示すパラメータを具体的に設定してCAE解析を行い、その解析により得られた距離感度Δglを示す。図6(2)は、これらの磁束誘導部材について、前記CAE解析のために設定した透磁率や抵抗率の具体的な数値を示す。
図6(2)では、(a)については非磁性の母材の透磁率および抵抗率を示す一方、(b)〜(e)については、表面の薄膜における透磁率および抵抗率を、それぞれ示している。なお、(b)〜(e)の各母材のパラメータは、いずれも(a)と同様に設定される。また、この図6(2)によれば、透磁率μではなく、比透磁率μγが、パラメータとして使用されている。この比透磁率μγは、透磁率μおよび真空内における透磁率μを用いて、μγ=μ/μの式により求められるものである。
またこのCAE解析では、各磁束誘導部材4の強磁性薄膜42は、前記図5(1)の「1」の部分のみに形成されたものとしてあり、その膜厚を5μmに設定している。また各磁束誘導部材4の母材は、黄銅に設定している。
図6(1)において、(a)(b)の非磁性金属のみから成る部材と、(c)(d)(e)の強磁性薄膜を具備する部材とを比較すると、距離感度Δglには顕著な差が現れている。また強磁性薄膜の材質別に比較すると、透磁率μが高いほど距離感度Δglが向上する、と考えることができる。さらに透磁率μ,抵抗率ρがともに高い金属により強磁性薄膜を形成することにより、距離感度Δglをより一層高めることができる、と考えることができる。
つぎに、この発明にかかる強磁性薄膜を有する磁束誘導部材は、シールドタイプの近接スイッチに限らず、非シールドタイプの近接スイッチに使用することもできる。
図7は、前記図1と同様の磁束誘導部材4が導入された非シールドタイプの近接スイッチ1Aの構成を示す。なお、この近接スイッチ1Aは、金属製ケース3が短くなる以外は、図1のシールドタイプの近接スイッチ1と同様の構成を具備するので、ここでは各構成に図1と同様の符号を付けることで、詳細な説明を省略する。
この実施例の近接スイッチ1Aでも、磁束誘導部材4は、前記図1の実施例と同様に、フランジ部4bの後端面が金属製ケース3の前端面に当接し、筒状体4aが金属製ケース3の内面の凹部3bに嵌め込まれた状態で固定配備される。なお、金属製ケース3や磁束誘導部材4の配置位置は、図示例に限らず、検出に差し支えない範囲で、前端部を前方側に伸ばすこともできる。
つぎに、図1,7の実施例では、金属製ケース3の内面に凹部3bを形成し、この凹部3bに磁束誘導部材4を嵌め込むようにしたが、これに代えて、コイルケース5の外周面または内周面に、磁束誘導部材4を一体化するようにしてもよい。
図8〜10は、磁束誘導部材4がコイルケース5の外周面または内周面に一体に設けられた近接スイッチを示す(以下、それぞれを1B,1C,1Dとする。)。なお、図8〜10、および後記する図13,14では、近接スイッチの内部構成のうち前半分のみを図示する。いずれの図でも、図1,7と同じ機能を持つ部材を同じ符号で示すことにより、詳細な説明を省略する。また基板9上の電子部品8やコネクタについては、図示を省略する。
図8,9の各実施例での磁束誘導部材4は、前記したフランジ部4b付きのものではなく、筒状体4aのみから構成される。
図8に示す近接スイッチ1Bでは、コイルケース5の周壁部5bに図1の実施例よりも肉厚を持たせ、その外周面に形成された凹部5cに、磁束誘導部材4を嵌め込んでいる。この実施例の周壁部5bは、前板5aの外径を維持した前端部5dより後方の部分を内側に変位させた形態をとるので、外周面に段差が生じる。前記凹部5cは、前端部5dの肉厚部分から前記段差より後方の外周面にかけて形成されるもので、筒状体4aの長さに対応する長さと、筒状体4aの厚みに対応する深みとを具備する。よって、筒状体4aは、前記凹部5c内に、それより後方の周壁部5bの外周面と段差なく連なった状態で配備される。金属製ケース3は、この段差のない外周面の径に対応する内径を具備するもので、前記前端部5dの終端に前端面を当接させた状態で、コイルケース5に取り付けられる。
上記構成によれば、磁束誘導部材4を構成する筒状体4aは、コイルケース5と金属製ケース3との間に挟まれた状態で固定される。また、筒状体4aの両端面も、コイルケース5の肉厚内にあるので、磁束誘導部材4の全体が被覆されることになる。
図9に示す近接スイッチ1Cでは、周壁部5bの内周面の始端位置から所定位置までの範囲に、筒状体4aの形状に応じた凹部5eを形成し、この凹部5eに磁束誘導部材4を嵌め込んでいる。なお、この実施例の周壁部5bの外周面にも、前端部5dとそれより後方の部分との間に段差が設定され、前端部5dの終端に前端面を当接させた状態で、金属製ケース3が取り付けられる。
上記図9の構成によれば、磁束誘導部材4を構成する筒状体4aは、内周面を除き、コイルケース5に被覆された状態となる。また、コイルケース5の内部には、樹脂が充填されるので、筒状体4aの内周面も被覆された状態となる。
つぎに、図10に示す近接スイッチ1Dでは、前記図1や図7の近接スイッチ1,1Aと同様に、フランジ部4b付きの磁束誘導部材4を使用する。この実施例では、周壁部5bの内周面の始端位置から所定位置までの範囲に、筒状体4aおよびフランジ部4bの形状に応じた凹部5fを形成し、この凹部5f内に磁束誘導部材4を嵌め込んでいる。なお、この実施例でも、周壁部5bの外周面には、前端部5dとそれより後方の部分との間に段差が形成されており、前板5aの厚みを残し、前端部5dの肉厚部分にフランジ部4bが位置するように、凹部5fの形成位置を調整している。また、図8や図9の実施例と同様に、金属製ケース3は、前端部5dの終端に前端面を当接させた状態でコイルケース5に取り付けられる。
上記図8,9,10に示した近接スイッチ1B,1C,1Dでは、いずれも磁束誘導部材4は、全面が被覆された状態で配備される。したがって、強磁性薄膜42が剥離するのを防止することができ、磁束誘導部材4の寿命を長くすることができる。
また、図9,10に示した近接スイッチ1C,1Dでは、磁束誘導部材4がコイルケース5の内面に設けられるので、仮に、コイルケース5の前端部5dと金属製ケース3との間の隙間から水や油が浸透しても、その浸透物が磁束誘導部材4にまで及ぶおそれがなく、強磁性薄膜42を保護することができる。
図11は、上記3つのタイプの近接スイッチ1B,1C,1Dについて、磁束誘導部材4による距離感度Δglを高める上で最低限必要な強磁性薄膜42の形成範囲を示す。図中の(1)(2)(3)は、それぞれ図8,9,10の実施例に対応するもので、それぞれ対応する図に示した構成の上半分を拡大したものである(網点による充填樹脂の図示は省略する。)。また、図1と同様に、磁束誘導部材4の母材を41の符号により、強磁性薄膜を42の符号により、それぞれ示す。
近接スイッチ1Dの磁束誘導部材4については、図1に示した近接スイッチ1と同様に、前記図5の測定結果から導き出される原理を適用することができる。すなわち、図11(3)に示すように、内周面全体、フランジ部4bの前端面、およびフランジ部4bの外周面に強磁性薄膜42を形成することにより、距離感度Δglが高められると考えることができる。
また、フランジ部4bを持たない磁束誘導部材4を用いた近接スイッチ1B,1Cについても、コイル6からの磁束を検出方向側に導く上での原理は、同様であると考えることができる。したがって、図11(1)(2)に示すように、筒状体4aの内周面全体、前端面、および外周面の前端部に強磁性薄膜42を形成すれば、距離感度Δglを高められると考えることができる。
なお、上記近接スイッチ1B,1C,1Dのいずれにおいても、磁束誘導部材4の全面にわたって強磁性薄膜42を形成することにより、距離感度Δglをより高めることができる。
図12は、近接スイッチの組立工程を示す。なお、この図12では、図9の実施例の近接スイッチ1Cを例にして、その組立工程を示しているが、図8や図10の近接スイッチ1B,1Dについても、これと同様の工程により製作することができる。
この実施例にかかる組立工程には、A,B,Cの3つの工程が含まれる。工程Aは、近接スイッチ1C内に収容される部材を組み立てるものである。この工程Aについては、詳細は図示していないが、共振回路などが配線された基板9を製作する工程、コイル線を巻き付けた検出コイル6をコア7に挿入する工程、前記検出コイル6と前記基板9とを接続する工程などを含む。
工程Bは、非磁性金属を成型加工して母材41を作成する工程B1と、前記母材41の表面に強磁性体薄膜42を形成する工程B2と、工程B1,B2により完成した磁束誘導部材4とコイルケース5とを組み立てる工程B3とを含む。なお、工程B1では、切削またはプレス加工により、母材41を筒状体4aとして成型し、工程B2では、メッキまたは蒸着加工を行う。また工程B3では、金型内に磁束誘導部材4をセットしてから樹脂を注入するインサート成型、または先にコイルケース5を成型してから、その凹部に磁束誘導部材4を嵌め込む方法により、磁束誘導部材4が一体化されたコイルケース5を製作する。
工程Cは、前記工程Bで製作されたコイルケース5内に、工程Aで製作された組立品(検出コイル、コア、基板から成るもの)を挿入する工程C1と、工程C1実行後のコイルケース5内に樹脂を充填する工程C2と、工程C2実行後のコイルケース5の外周面に金属製ケース3を嵌め込む工程C3とを含む。
上記工程Cを経た組立品は、さらに、後工程に送られる。この後工程については図示しないが、金属製ケース3の空洞部に樹脂を充填する工程や、樹脂充填後の金属製ケース3に前記した支持部材11(図1を参照。)を取り付ける工程などが実施される。
つぎに、上記図12に示した組立工程は、前記図1に示したタイプの近接スイッチ1に適用することができる。この場合の近接スイッチは、図13に示すような形態に変更されることになる。
図13の近接スイッチ1Eでは、図8〜10の実施例と同様に、コイルケース5の周壁部5bに肉厚を持たせ、その外周の前端縁から所定位置までの範囲に、凹部5gを形成する。この凹部5gは、フランジ部4b付きの磁束誘導部材4の長さに対応する長さと、筒状体4aの厚みに対応する深みを持つように形成される。
磁束誘導部材4は、フランジ部4bの前面を前板5aの前面に合わせて、凹部5g内に配備される。金属製ケース3は、その前端面を前記フランジ部4bの背面に当接させた状態でコイルケース5に取り付けられる。これにより、磁束誘導部材4は、筒状体4aがコイルケース5と金属製ケース3との間に挟まれた状態で固定される。また、フランジ部4bの前面および外周面は、図1と同様に、露出した状態となる。
さらに、図12に示した組立工程は、非シールドタイプの近接スイッチにも適用することができる。図14に、その適用例を示す。
この実施例の近接スイッチ1Fは、筒状体4aのみから成る磁束誘導部材4を使用したもので、前記図9の近接スイッチ1Cと同様に、コイルケース5の内周面に凹部5eを形成し、この凹部5e内に磁束誘導部材4を配備した構成をとる。なお、この実施例の凹部5eは、コイル6よりも後方に形成される。また、コイルケース5の周壁部5bの段差も、磁束誘導部材4の配置位置よりも後方に設定され、その段差形成位置より後方に金属製ケース3が取り付けられる。
なお、上記図14は、図9の近接スイッチ1Cに対応するものであるが、図8,10,13の各近接スイッチ1B,1D,1Eについても同様に、対応する構成の非シールドタイプの近接スイッチを製作することができる。
また、これまでに示した各実施例では、いずれも、コイルケース5や金属製ケース3を円筒状にして、磁束誘導部材4も、これらケースに適合する形状としたが、各ケースや磁束誘導部材の横断面形状は円形に限定されるものではない。たとえば、金属製ケース3にねじ部を設ける必要がない場合には、各ケースを角柱状に形成してもよい。また、図15に示すように、周壁部の長さ方向にわたって間隙40が形成された構成の磁束誘導部材4Aを使用してもよい。また、磁束誘導部材の横断面形状は円形であるが、周面に、前記間隙40に相当する強磁性薄膜42の未形成部分を設けてもよい。
図16は、前記図8,9,10,13に示した4種類のタイプの近接スイッチ1B,1C,1D,1Eについて、距離感度Δglを測定して得た測定結果を示す。図中のBタイプ、Cタイプ、Dタイプ、Eタイプは、それぞれ近接スイッチ1B,1C,1D,1Eに対応する。
上記(1)〜(4)の測定に使用された近接スイッチ1B,1C,1D,1Eでの検出コイル6、コア7、基板8上の回路については、すべて同一に設計されている。また、磁束誘導部材4の母材41や強磁性薄膜42についても、センサ間で共通の材料を使用している。また、いずれのセンサでも、強磁性薄膜42は、磁束誘導部材4の全面にわたって形成されており、距離感度Δglの測定条件も同様に設定されている。
さらに、図16の(5)は、母材41のみから成る部材を導入した近接スイッチについて、上記(1)〜(4)の測定と同様の条件により距離感度Δglを測定した結果を示す。なお、この(5)の測定に使用された近接スイッチは、前記図13の近接スイッチ1Eと同様の構成を具備するが、磁束誘導部材4に代えて、強磁性薄膜42が形成されていない母材41のみから成る部材が組み込まれる。母材41の材質は、(1)〜(4)の測定にかかるセンサと同一である。
図16の測定結果によれば、磁束誘導部材4が導入された4種類の近接スイッチ1B,1C,1D,1Eでは、いずれも、母材のみから成る部材を導入した近接スイッチに比べ、距離感度Δglが格段に向上する。中でも、フランジ部4bを具備する磁束誘導部材4を使用した近接スイッチ1E,1Dでは、フランジ部4bを持たない磁束誘導部材4を使用した近接スイッチ1B,1Cよりも、距離感度Δglが高くなっている。これは、フランジ部4bの存在によって、検出方向への磁束の誘導がより促進されたことによる、と考えることができる。
この発明が適用されたシールドタイプの近接スイッチの構成を示す断面図である。 図1の近接スイッチと従来の近接スイッチとの検出能力を比較して示す図である。 この発明にかかる近接スイッチと、非磁性金属の母材のみを導入した近接スイッチとについて、距離感度を測定した結果を示すテーブルである。 磁束誘導体の強磁性薄膜の膜厚が異なる複数の近接スイッチについて、距離感度を測定した結果を示すグラフである。 強磁性薄膜の形成対象位置を示す説明図、および強磁性薄膜の形成パターン毎に距離感度を測定した結果を示すテーブルである。 薄膜の材質が距離感度に及ぼす影響をCAEにより解析した結果を示すグラフ、およびこの解析に使用したパラメータの設定値を示すテーブルである。 この発明が適用された非シールドタイプの近接スイッチの構成を示す断面図である。 シールドタイプの近接スイッチにかかる第2実施例を示す断面図である。 シールドタイプの近接スイッチにかかる第3実施例を示す断面図である。 シールドタイプの近接スイッチにかかる第4実施例を示す断面図である。 図8,9,10の各実施例の近接スイッチに使用される磁束誘導部材について、最低限必要な強磁性薄膜の形成範囲を示す説明図である。 近接スイッチの組立工程を示す説明図である。 図12の組立工程により図1の近接スイッチを製作した場合の構成を示す断面図である。 図12の組立工程により図7の近接スイッチを製作した場合の構成を示す断面図である。 磁束誘導部材の他の例を示す斜視図である。 図8,9,10,13の各近接スイッチと、磁束誘導部材の母材のみが導入された近接スイッチとについて、距離感度を測定した結果を示すグラフである。 シールドタイプの近接スイッチの外観を示す斜視図である。
符号の説明
1,1A,1B,1C,1D,1E 近接スイッチ
2 検出部
3 金属製ケース
4 磁束誘導部材
5 コイルケース
6 検出コイル
4a 筒状体
4b フランジ部
41 母材
42 強磁性薄膜

Claims (9)

  1. コイルおよびコアを含む検出部と、前記検出部の外周に配備される非磁性金属より成る金属製ケースとを具備する近接スイッチであって、
    前記検出部の外側または検出部内の前記コアよりも外側であって、前記金属製ケースとの間には、コイルからの磁束を検出方向に誘導するための磁束誘導部材が配備されており、前記磁束誘導部材は、前記金属製ケースより体積抵抗率が小さい非磁性金属体を母材として、その母材の表面の少なくとも一部に強磁性の金属薄膜を形成して構成されて成る近接スイッチ。
  2. ケース体の内部にコイルおよびコアが収容された検出部と、前記ケース体の外周に配備される非磁性金属より成る金属製ケースとを具備する近接スイッチであって、
    前記検出部には、コイルからの磁束を検出方向に誘導するための磁束誘導部材が前記ケース体の外周面または内周面に接した状態で配備されており、前記磁束誘導部材は、前記金属製ケースより体積抵抗率が小さい非磁性金属体を母材として、その母材の表面の少なくとも一部に強磁性の金属薄膜を形成して構成されて成る近接スイッチ。
  3. 前記磁束誘導部材は、両端が開口された中空の本体部の一端にフランジ部が形成されて成り、前記本体部がケース体と金属製ケースとの間に位置し、かつ前記フランジ部が金属製ケースの前端縁よりも前方に位置するように配備され、
    前記強磁性の金属薄膜は、少なくとも、フランジ部の前端面および外周面と、フランジ部および本体部にかかる内周面全体とに形成されて成る請求項2に記載された近接スイッチ。
  4. 前記磁束誘導部材は、両端が開口された中空の本体部の一端にフランジ部が形成されて成り、前記フランジ部を前にした状態で、フランジ部および本体部がケース体の内面に設けられており、
    前記強磁性の金属薄膜は、少なくとも、フランジ部の前端面および外周面と、フランジ部および本体部にかかる内周面全体とに形成されて成る請求項2に記載された近接スイッチ。
  5. 前記磁束誘導部材は、両端が開口された中空体であって、前記ケース体と金属製ケースとの間に配備され、
    前記強磁性の金属薄膜は、少なくとも、前記中空体の前端面および内周面と、外周面の前端部とに形成されて成る請求項2に記載された近接スイッチ。
  6. 前記磁束誘導部材は、前記中空体の前端面がケース体の前面よりも後方に位置するようにして、ケース体の外周面に設けられて成る請求項5に記載された近接スイッチ。
  7. 前記磁束誘導部材は、両端が開口された中空体であって、前記ケース体の内周面に設けられており、
    前記強磁性の金属薄膜は、少なくとも、前記中空体の前端面および内周面と、外周面の前端部とに形成されて成る請求項2に記載された近接スイッチ。
  8. 前記強磁性の金属薄膜は、前記磁束誘導部材の全面にわたって形成されて成る請求項1または2に記載された近接スイッチ。
  9. 前記磁束誘導部材の金属薄膜は、前記母材より体積抵抗率が大きい金属により形成されて成る請求項1または2に記載された近接スイッチ。
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