JP3955959B2 - レーザ照射装置およびレーザ照射方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非単結晶半導体薄膜にパルスレーザ光を照射してアニールを行うレーザ照射方法に関し、特に液晶ディスプレイや密着型イメージセンサ等に用いられる多結晶シリコン薄膜トランジスタのチャネル層を形成するレーザ照射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多結晶シリコン薄膜トランジスタにより、安価なガラス基板上に駆動回路を備えた液晶表示装置を形成することが可能となっている。多結晶シリコン薄膜の形成法としては、プロセス温度の低温化および高スループット化の観点から、エキシマレーザ光を照射することにより非晶質シリコン薄膜を結晶化させて多結晶シリコン薄膜を得るエキシマレーザ結晶化法が広く用いられている。
【0003】
ところがエキシマレーザ結晶化法は、レーザ光がパルスレーザ光であるために薄膜の熱処理される時間が限られてしまい、得られる結晶粒子の大きさが制限されてしまうという問題がある。そのため、得られた多結晶シリコン薄膜を利用して薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を作製した場合、その移動度は100cm2/Vs程度に留まり、現在望まれているような高移動度の素子形成は困難である。
【0004】
そこで多結晶シリコン薄膜の大粒径化技術に関し、これまで種々の検討がなされてきた。
【0005】
特開平9−246183号公報には、線幅方向に台形状ビームプロファイルを有するレーザ光を照射する方法が開示されている。この方法は、台形状ビームプロファイルのレーザを照射し、多結晶組織を得るものである。台形状ビームプロファイルの中央部エネルギー密度を非晶質半導体(非晶質シリコン)の微結晶化しきい値以上としているため、台形状プロファイルの傾斜部において、微結晶化しきい値よりも若干低いエネルギーの部分が存在することとなる。この領域において、結晶粒子径が大きな多結晶半導体領域を得ることができるとされている。しかしながらこの方法では、たしかに微結晶化しきい値よりも若干低いエネルギーの部分において結晶粒子径が大きな多結晶半導体領域を得ることができるものの、その大粒径粒子の配列は無秩序であり、粒径分布も一般に広くなる。したがって、このような多結晶半導体領域をたとえばTFTのチャネル層として利用した場合、移動度等のTFT特性のばらつきをもたらすこととなる。
【0006】
また、特開平10−275781号公報および第42回応用物理学関係連合講演会講演予稿集第2分冊694頁には、複数のレーザパルスを合成してレーザ照射を行う技術が開示されている。しかしながらこれらの方法を用いた場合においても、結晶粒子の大粒径化を図ることはできるものの、その配列や粒径分布を揃えることは困難であった。
【0007】
また、MRS BullEtin 21巻(1996年)、3月号、39頁には、島状に形成した非晶質シリコン薄膜に、幅5μmの極めて微細な線状ビームを0.75μmピッチでスキャン照射することにより、結晶粒子界がほぼ平行に整列している一方向成長多結晶シリコン薄膜を形成する技術が開示されている。この方法であれば多結晶粒子の均一性も確保されるが、スループットが低下する上、サブミクロンのステージ動作精度を確保する必要性から搬送系が複雑化するという問題が生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、粒径分布が均一で、かつ粒子の配列状態が良好な大粒径多結晶半導体膜を形成するレーザ照射技術を提供することを目的とする。また、目的の場所に位置精度良く多結晶半導体膜を形成するレーザ照射技術を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明によれば、以下に示すレーザ照射装置およびレーザ照射方法が提供される。
[1] レーザ光を発生させるレーザ光源と、発生したレーザ光のエネルギー分布を調整する手段とを備え、エネルギー分布を調整した後のレーザ光を非単結晶半導体薄膜に照射し多結晶半導体薄膜を形成するレーザ照射装置であって、
前記非単結晶半導体薄膜に照射するレーザ光の照射領域中の一方向に沿ったエネルギー密度分布が、非晶質半導体薄膜の微結晶化エネルギーをEuとして、エネルギー密度Eu未満の第一の領域と、該第一の領域の両側に位置するエネルギー密度Eu以上の第二の領域とを有し、前記第一の領域の幅が3μm以下であることを特徴とするレーザ照射装置。
[2] 前記第一の領域の幅が1.8μm以下であることを特徴とする[1]に記載のレーザ照射装置。
[3] 前記第一の領域が急峻な谷形状を有することを特徴とする[1]または[2]に記載のレーザ照射装置。
[4] レーザ光のエネルギー分布を調整する手段が、基材および該基材の一部を覆う誘電体膜からなるマスクであって、基材のみを透過したレーザ光による照射領域と、基材および誘電体膜を透過したレーザ光による照射領域との境界面近傍に、前記第一の領域を生成することを特徴とする[1]乃至[3]いずれかに記載のレーザ照射装置。
[5] 前記エネルギー密度分布を有する第一のレーザ光と、該エネルギー密度分布を有し、平均エネルギー密度が第一のレーザ光より低い第二のレーザ光とを、この順で同一地点に照射するように調整されたことを特徴とする[1]乃至[4]いずれかに記載のレーザ照射装置。
[6] レーザ光を非単結晶半導体薄膜に照射し多結晶半導体薄膜を形成するレーザ照射方法であって、該レーザ光の光照射領域中の一方向に沿ったエネルギー密度分布が、非晶質半導体薄膜の微結晶化エネルギーをEuとしたときに、エネルギー密度Eu未満の第一の領域と、該第一の領域の両側に位置するエネルギー密度Eu以上の第二の領域とを有し、前記第一の領域の幅が3μm以下であることを特徴とするレーザ照射方法。
[7] 前記第一の領域の幅が1.8μm以下であることを特徴とする[6]に記載のレーザ照射装置。
[8] 前記第一の領域が急峻な谷形状を有することを特徴とする[6]または[7]に記載のレーザ照射方法。
[9] 基材および該基材の一部を覆う誘電体膜からなるマスクにレーザ光透過させ、基材のみを透過したレーザ光による照射領域と、基材および誘電体膜を透過したレーザ光による照射領域との境界面近傍に、前記第一の領域を生成することを特徴とする[6]乃至[8]いずれかに記載のレーザ照射方法。
[10] 前記エネルギー密度分布を有する第一のレーザ光と、該エネルギー密度分布を有し、平均エネルギー密度が第一のレーザ光より低い第二のレーザ光とを、この順で同一地点に照射することを特徴とする[6]乃至[9]いずれかに記載のレーザ照射方法。
【0010】
上記したように本発明においては、3μm以下の狭い幅を有する第一の領域が、エネルギー密度Eu以上の第二の領域に挟まれた形態のエネルギー密度分布となっている。このため、第一の領域において、図1および図6に示すように、多結晶粒子が一列または二列に整然と形成することができる上、多結晶粒子の形成箇所を所望の位置に精度良く形成できる。核成長の起点が限られた狭い領域、すなわち第一の領域内にのみ発生するためである。3μm以下の狭い幅には、多結晶粒子の成長核は、一列または二列しか発生しないため、上記のように、多結晶粒子が一列または二列に整然と配列した状態で形成されるのである。
【0011】
また、本発明においては、多結晶粒子の粒径が均一となる。本発明においては、第一の領域の両側に存在する第二の領域のエネルギー密度がEu以上であるため、第一の領域を起点として高エネルギー領域側に向かって進行する核成長が、第二の領域において発生した微結晶のところで停止することとなる。このため、個々の多結晶粒子間で核成長速度のばらつきがあっても最終的に形成される多結晶粒子の粒径はほぼ均一となるのである。
【0012】
上記[2]または[7]の発明によれば、多結晶粒子の粒径を顕著に大粒径化できる上、多結晶粒子の配列を一層良好にすることができる。第一の領域に成長核が一列のみ発生するため、結晶粒子の成長が双方向に進むためである。
【0013】
上記[3]または[8]の発明によれば、谷形状の底部に精度良く成長核を発生させることができ、粒子の配列性を一層良好にすることができ、粒径も充分に大きくすることができる。
【0014】
上記[4]または[9]の発明によれば、上記[1]等に規定する特定のエネルギー密度分布を簡便な方法で精度良く実現することができ、生産性に優れる等の利点が得られる。
【0015】
また、上記[5]および[10]の発明によれば、膜の溶融時間を長くすることができるため、より大粒径の多結晶粒子が得られる。
【0016】
以上のように本発明によれば、大粒径かつ粒径均一性に優れた多結晶組織を、整然とした配列した状態で位置精度良く形成することができる。この多結晶組織を利用することにより、高移動度を有する薄膜トランジスタ素子を大面積基板上に均一に形成することが可能となる。
【0017】
【実施の形態】
本発明はレーザ光、特にパルスレーザ光を非単結晶半導体薄膜に照射するものである。本発明においては、多結晶粒子を形成すべき領域全体に対してレーザ光を一括照射する形態とすることが好ましい。すなわち、レーザ光の照射領域を、多結晶粒子を形成すべき領域全体と一致させる形態とすることが好ましい。これにより高い生産性を実現することができる。また、これ以外に、線状あるいは矩形状の照射領域を有するレーザ光を用い、レーザ光をスキャンしながら照射を行う方式とすることもできる。たとえば線状の照射領域のレーザ光を用いる場合は、照射領域をその短軸方向に移動させ、所望の領域全体に対してレーザ照射を行う。なお、本発明に係るレーザ照射は、基板を加熱しながら行うこともできる。
【0018】
本発明において、非単結晶半導体薄膜とは単結晶でない半導体薄膜をいい、非晶質シリコンなどの非晶質薄膜や、多結晶シリコンなどの多結晶薄膜をいう。また本発明における多結晶半導体薄膜を構成する結晶粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。このような大粒径の粒子により多結晶半導体薄膜を構成することにより、高効率の素子を得ることができる。
【0019】
本発明における非晶質の微結晶化エネルギーEuについて以下、説明する。非晶質シリコンのレーザアニールにおいて、形成される多結晶シリコンの結晶粒子径は、レーザエネルギー密度に依存する。エネルギー密度が増加するにしたがい粒径は増加するが、ある特定のエネルギー密度を越えると粒径が20nm以下と極めて微細になることが知られている。このときのエネルギー密度を非晶質の微結晶化しきい値といい、Euと表す。微結晶化は、薄膜の溶融状態の変化により、再結晶化時の核発生機構が、基板薄膜界面を核発生サイトとした不均一核発生から、均一核発生へと変化することにより発生すると考えられている。この核発生機構の変化は、薄膜の到達温度と冷却速度に依存する。従って微結晶化しきい値Euは、薄膜の膜厚、薄膜の構造、パルスレーザ光の波長、パルス幅、などに依存して変化する。例えば、一旦レーザ結晶化した多結晶シリコン薄膜のEuは、非晶質シリコン薄膜のEuに対して約14%大きな値となる。これは、膜表面のレーザに対する反射率および熱物性が異なるためである。
【0020】
エネルギー密度Eu以上の領域とEu未満の領域を含むプロファイルのレーザ光を非単結晶半導体薄膜に照射した場合、エネルギー密度がEuよりもわずかに低い領域に、大粒径の多結晶粒子が形成される。図7はその一例を示すものである。このような多結晶粒子は、主として低エネルギー側から高エネルギー側へと成長する傾向にある。核発生は、低エネルギー側の方でより早く起こるからである。
【0021】
図1は、本発明において用いるレーザ光のエネルギー密度分布の一例を示すものである。このレーザ光は矩形状の照射領域を有するレーザであり、図のエネルギー密度分布は、長辺方向に沿ったプロファイルを示している。図に示したエネルギー密度分布は、略平坦な領域と、平坦な領域の内部に急峻な谷部を有する形状となっている。すなわち、非晶質半導体薄膜の微結晶化エネルギーをEuとして、エネルギー密度Eu未満の第一の領域と、該第一の領域の両側に位置するエネルギー密度Eu以上の第二の領域とを有するプロファイルとなっている。第一の領域は急峻な谷形状を有しており、その幅(W1)は1.8μm以下となっている。この図では第二の領域はフラットな形状となっているが、エネルギー密度Eu以上である限り、これに限られず任意の形状とすることができる。
【0022】
上記のようなエネルギー分布は、基材およびその一部を覆う誘電体膜からなるマスクを用いることにより実現できる。このようなマスクを用いることにより、基材および誘電体膜を透過したレーザ光による照射領域との境界面近傍に、第二の領域が生成される。図2はこのようなマスクの一例を示すものであり、石英板201の表面の一部にSiO2膜202がコーティングされている。SiO2の代わりにSiN等を用いることもできる。このマスクは、一回反転型の位相シフトマスクである。通常のトップフラット型プロファイルのレーザ光が、位相シフトマスクを通過するとき、SiO2膜202により、位相が反転し、急峻な谷形状を有するプロファイルとなる。谷形状については、位相シフトマスクを含めた光学系の設計次第により、任意の形状とすることができる。位相シフトマスクを利用した上記方法の詳細については、SPIE vol.1463 Optical Laser Microlithography IV (1991) p74-86,p87-100に記載されている。
【0023】
図9は、本発明に係るレーザ照射装置の概略図である。レーザ光源1から発したレーザビームは、光学系2を経た後、マスク6を通過してチャンバ3内のステージ4上に保持された基板5に照射される。マスク6は図2に示した構造を有している。このような特殊な構造のマスクを透過させることにより、マスク透過前においてトップフラット型のエネルギー密度分布を有していたレーザ光が、マスク透過後、図2に示したように急峻な谷部を有するエネルギー密度分布のレーザ光となる。
【0024】
本発明者らの検討によれば、第一の領域に発生する大粒径多結晶粒子の数は、第一の領域の幅(W1)に依存することが確認されている。W1を多結晶粒子の粒径の2倍以上の幅とした場合、各々のエネルギー勾配に沿って多結晶粒子が2個以上(2列以上)発生する。一方、W1が多結晶粒子の粒径の2倍未満、特に1.2倍未満とした場合、具体的には1.8μm未満、特に1μm未満とした場合、多結晶粒子は1個(一列)のみ形成され、同時に粒径も顕著な拡大を示す。この原因としては、W1が狭まったために、核発生が一箇所になり、かつ粒子の成長方向が双方のエネルギー勾配に沿って進むためであると考えられる。
【0025】
図1の場合、W1を1.8μm以下としているため、多結晶粒子は1個(一列)のみ形成され、大粒径かつ粒径均一性の良好な多結晶粒子が秩序性良く形成される。一方、図6はW1を2.5μm程度とした場合の例であり、各々のエネルギー勾配に沿って多結晶粒子が1列ずつ、合計2列形成されている。また図10はW1を5μm程度とした場合の例であり、各々のエネルギー勾配に沿って多結晶粒子が複数列ずつ形成されている。この場合、高エネルギー側に近づくにつれて多結晶粒子の配列が無秩序になるとともに、粒径も不均一になっていく。
【0026】
以上のことから本発明においてはW1を3μm以下としている。これにより、第一の領域中に多結晶粒子の成長核が一列または二列のみ発生することとなり、粒径分布が均一で、かつ粒子の配列状態が良好な大粒径多結晶粒子を所望の位置に精度良く形成される。
【0027】
本発明において、W1を1.8μm以下、特に、1μm以下とすれば、多結晶粒子の粒径を顕著に大粒径化できる上、多結晶粒子の配列を一層良好にすることができる。これは、前述したように結晶粒子の成長が双方向に進むことによると考えられる。多結晶粒子の成長は、エネルギーの低い領域から高い領域に向かって進行する。図6のように第一の領域に二列の成長核が発生した場合は、各列の成長核は、もう一方の成長核と隣接する側では成長が抑制され、主として高エネルギー側に成長していく。これに対して図1のように第一の領域に一列の成長核が発生した場合は、成長核は両側の高エネルギー側に成長していく。したがって、第一の領域に一列の成長核が発生した場合は、成長核が二列に発生した場合に比べ、核成長がおよそ2倍となり、粒径が顕著に大きくなると考えられる。また、第一の領域に一列の成長核が発生した場合は、核成長を経た後も粒子の配列秩序の乱れが生じにくいため、二列の成長核が発生した場合に比べ粒子の配列状態を一層良好となる。
【0028】
なお、第一の領域に一列の成長核を発生させるにはW1を1.8μm以下とすることが好適であるが、特にW1を1μm以下とすれば、より確実に一列の成長核を発生させることができる。
【0029】
本発明において、第一の領域のエネルギー分布の形状は種々のものとすることができるが、図1等に示すような谷形状であることが好ましい。このような形状とすれば、谷形状の底部に精度良く成長核を発生させることができ、粒子の配列性を一層良好にすることができ、粒径も充分に大きくすることができる。
【0030】
本発明においては、目的に応じて第一の領域を複数箇所設けることができる。このようにすれば、一回の照射で複数の多結晶組織を形成することが可能となる。図1には説明の便宜のため谷形状の第一の領域を一箇所のみ示したが、実際には、図11のように二箇所設けても良く、あるいは三箇所以上設けることもできる。本発明によれば位置精度良く多結晶組織を形成できることから、上記のように複数の第一の領域を設けることにより目的の多結晶膜を好適に作製することができる。
【0031】
本発明は、照射領域中の一方向に沿ったエネルギー密度分布を規定するものであるが、上記一方向と直交する方向に沿ったエネルギー密度分布については任意の形状とすることができる。図12は、直交方向のエネルギー密度分布を設けない例である。直交方向のいずれの位置においても同一のプロファイルとなっている。図13は直交方向に谷部を設けた例である。直交方向の谷部の幅については、多結晶粒子を形成する面積に応じて適宜設定される。
【0032】
本発明においては、所定のプロファイルのレーザ光を同一地点に複数回照射してもよい。すなわち所定のエネルギー密度プロファイルを有するレーザ光を、照射位置をずらすことなく、同一地点に複数回照射してもよい。このようにした場合、多結晶粒子を一層大粒径化することができる。前述したように、第一の領域を起点として高エネルギー領域側に向かって進行する核成長は、第二の領域において発生した微結晶のところで停止する。したがって、第二の領域において微結晶粒子の発生する時期が遅くなれば第一の領域を起点とする核成長時間はより長くなり、結果として多結晶粒子の粒径がより大きくなる。複数回照射を行う場合、第二の領域における膜の溶融時間が長くなり、微結晶粒子の発生が抑制されるため、上記理由により多結晶粒子がより大粒径化するのである。
【0033】
第一および第二のレーザ光をこの順で照射する場合、第二のレーザ光の平均エネルギー密度は、第一のレーザ光の平均エネルギー密度より低くすることが好ましい。第二のレーザ光の平均エネルギー密度が高すぎると、第一のレーザ光により多結晶化した部分が微結晶化する場合がある。第二のレーザ光の平均エネルギー密度を下げる場合においては、エネルギー密度の最高値と最低値の比を第一のレーザ光と第二のレーザ光とで略一致させる構成とすることが好ましい。このようにすれば、第一のレーザ光を生成するのに用いた光学系をそのまま用い、レーザ強度を下げるだけで第二のレーザ光を生成することが可能となり、簡便な構造の照射装置で、上記照射を実現することができる。
【0034】
第一のレーザ光照射開始時から第二のレーザ光照射開始時までの照射間隔は、第一のレーザ光のパルス幅の6倍以下とすることが好ましい。膜の溶融時間は、通常、パルス幅の6倍程度以内であることから、上記のような照射間隔とすることによって第二の領域における微結晶粒子の発生する時期を有効に遅延させることができ、多結晶粒子を一層大粒径化できるからである。ここで、膜溶融時間は、レーザ光の時間に依存したパルス形状およびパルス幅に依存する。一般にエキシマレーザ光のパルス形状は、図4に示すような複数の山からなるパルス形状を示し、パルス幅とは半値幅を指す。ここで、パルスの立ち上がりから最大値までの時間(t1)が長くなると、過渡的な冷却が働くために、膜の最大到達温度が低下し、エネルギー効率が低下してしまう。従って、t1は小さな方が良く、20ns以下が望ましい。
【0035】
複数回照射を行う場合の照射回数は特に制限がないが、プロセス効率向上の観点から、できるだけ少ない方が望ましい。照射回数は、好ましくは2〜10回、さらに好ましくは2回とする。本発明の照射方法では、2回程度の照射により、目的とする多結晶シリコン薄膜の形成が充分可能だからである。
【0036】
図3は、一度めのレーザ照射により膜が溶融している間に同一地点に重ねて二度めのレーザ照射を行う、いわゆるダブルパルス照射を行うレーザ照射装置の一例である。図に示した2個の光源301、302を制御装置303で同期させ、位相シフトマスクを含む光学系304を通って急峻な谷部を有するように整形した2個のパルスレーザ光を、チャンバ305内に設置された基板306にダブルパルス照射を行う。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0038】
実施例1
レーザ照射を行う前に、レーザ光のプロファイル決定のための予備実験を行った。その結果、膜厚50nmの非晶質シリコン膜に、波長308nmでパルス幅50nsのXeClレーザ光を室温で照射するときのEuは470mJ/cm2であり、微結晶化しきい値直下で形成される多結晶粒子の粒径は約0.9μmであることが確認された。
【0039】
つづいて、レーザ照射対象となる基板を作製した。まずガラス基板上に、プラズマCVD法を用いて下地絶縁膜として二酸化シリコン薄膜を200nm成膜した。次いで減圧CVD法を用いて非晶質シリコン薄膜を50nm成膜した。非晶質シリコン薄膜の成膜方法としては、他にPECVD法、スパッタ法などを用いることもできるが、減圧CVD法を用いれば、非晶質シリコン薄膜中にガスが混入することが防止される。
【0040】
上記のようにして得られた非晶質シリコン薄膜に、波長308nm、パルス幅50nsのXeClレーザ光を照射した。レーザ光のエネルギー密度分布は、図1と同様の形状とした。すなわち、500mJ/cm2の概略平坦な領域と、エネルギー最低値が400mJ/cm2、W1が1μmとなる急峻な谷部とを有するプロファイルのレーザ光を照射した。基板の加熱は行わなかった。
【0041】
得られた薄膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、粒子径が約1.7μmの大粒子が一列に規則正しく整列した大粒径均質組織が発生していることが確認された。形成された結晶粒子の中心位置は、プロファイルにおけるエネルギー最低地点に相当していた。本実施例の結果から、本発明によれば、顕著に成長した結晶粒子を位置精度良く作製できることが判る。
【0042】
実施例2
レーザ照射時の基板を400℃に加熱すること以外は実施例1と同様にしてレーザ照射を行った。得られた多結晶粒子の平均粒径は2.6μmとなった。
【0043】
実施例3
W1を1.8μm以上とすること以外は実施例1と同様にしてレーザ照射を行った。0.9μmの大粒径多結晶粒子が2列配列した多結晶組織が得られた。
【0044】
比較例1
図8に示す通常のトップフラット型ビームを用い、対照実験を行った。最大エネルギー密度は実施例1と同様である。得られた多結晶組織は粒子径約1μmの大粒子を含んでいたが、これらは図8に模式的に示したように無秩序に配列していた。また、この領域の粒径分布はおよそ0.02〜1μmであり、不均質な組織となっていた。
【0045】
実施例4
レーザ照射を行う前に、レーザ光のプロファイル決定のための予備実験を行った。その結果、膜厚50nmの非晶質シリコン膜に、波長308nmでパルス幅50nsのXeClレーザ光を室温で照射するときのEuは470mJ/cm2であり、微結晶化しきい値直下で形成される大粒径多結晶粒子の粒径は約0.9μmであることが確認された。
【0046】
つづいて、レーザ照射対象となる基板を作製した。まずガラス基板上に、PECVD法を用いて下地絶縁膜として窒化シリコン薄膜を100nm成膜した。次いで減圧CVD法を用いて非晶質シリコン薄膜を50nm成膜した。
【0047】
上記のようにして得られた非晶質シリコン薄膜に、波長308nm、パルス幅50nsのXeClレーザ光を用いてレーザ照射を行った。図3に示した2個の光源301、302を制御装置303で同期させ、位相シフトマスクを含む光学系304を通って急峻な谷部を有するように整形した2個のパルスレーザ光を、チャンバ305内に設置された基板306にダブルパルス照射を行った。ダブルパルス照射条件としては、第1のレーザ光の概略平坦な領域を480mJ/cm2、エネルギー最低値を380mJ/cm2、W1を1μmとし、第2のレーザ光は第1のレーザ光と略相似形のプロファイルを有しているが、そのエネルギー密度は第1のレーザ光の2/5とし、照射間隔を80nsとした。第1のレーザ光および第2のレーザ光のパルス幅はそれぞれ50および35nsである。
【0048】
得られた薄膜を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、図5のように粒子径が約4.4μmの大粒子が一列に規則正しく整列した大粒径均質組織が発生していることが確認された。プロファイル上谷部で核発生した結晶粒子の成長が終了する時点は、高エネルギー域での微結晶が核発生する時点である。従って、第2のレーザ光により高エネルギー域での核発生が抑制された本実施例では、第1の実施例よりも顕著な成長が実現可能となった。
【0049】
また、形成された結晶粒子の中心位置は、プロファイルにおけるエネルギー最低地点に相当しており、本発明によれば、顕著に成長した結晶粒子を位置精度良く作製できることが確認された。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、狭い幅を有する第一の領域が、エネルギー密度Eu以上の第二の領域に挟まれた形態のエネルギー密度分布となっているため、粒径分布が均一で、かつ粒子の配列状態が良好な大粒径多結晶半導体膜を、目的の場所に位置精度良く形成することができる。この多結晶半導体膜を利用することにより、高移動度を有する薄膜トランジスタ素子を大面積基板上に均一に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いられるレーザ光のエネルギー密度分布、および、このレーザ光により形成される多結晶半導体粒子の状態を示す図である。
【図2】本発明において用いられるマスクの構造を示す図である。
【図3】本発明に係るレーザ照射装置の概略図である。
【図4】レーザ強度の時間依存性を説明するための図である。
【図5】本発明において用いられるレーザ光のエネルギー密度分布、および、このレーザ光により形成される多結晶半導体粒子の状態を示す図である。
【図6】レーザ光のエネルギー密度分布、および、このレーザ光により形成される多結晶半導体粒子の状態を示す図である。
【図7】レーザ光のエネルギー密度分布、および、このレーザ光により形成される多結晶半導体粒子の状態を示す図である。
【図8】従来のレーザ光のエネルギー密度分布、および、このレーザ光により形成される多結晶半導体粒子の状態を示す図である。
【図9】本発明に係るレーザ照射装置の概略図である。
【図10】レーザ光のエネルギー密度分布、および、このレーザ光により形成される多結晶半導体粒子の状態を示す図である。
【図11】本発明において用いられるレーザ光のエネルギー密度分布を示す図である。
【図12】本発明において用いられるレーザ光のエネルギー密度分布を示す図である。
【図13】本発明において用いられるレーザ光のエネルギー密度分布を示す図である。
【符号の説明】
1 パルスレーザ光源
2 光学系
3 チャンバ
4 ステージ
5 基板
6 スリット
201 石英板
202 SiO2膜
301、302 光源
303 制御装置
304 光学系
305 チャンバ
306 基板
Claims (10)
- レーザ光を発生させるレーザ光源と、発生したレーザ光のエネルギー分布を調整する手段とを備え、エネルギー分布を調整した後のレーザ光を非単結晶半導体薄膜に照射し多結晶半導体薄膜を形成するレーザ照射装置であって、
前記非単結晶半導体薄膜に照射するレーザ光の照射領域中の一方向に沿ったエネルギー密度分布が、非晶質半導体薄膜の微結晶化エネルギーをEuとして、エネルギー密度Eu未満の第一の領域と、該第一の領域の両側に位置するエネルギー密度Eu以上の第二の領域とを有し、
前記第一の領域の幅が3μm以下であり、
前記第一の領域が急峻な谷形状を有し、
前記急峻な谷形状におけるエネルギー密度の最低値は、前記エネルギー密度E u より、少なくとも70mJ/cm 2 低く設定されている
ことを特徴とするレーザ照射装置。 - 前記第一の領域の幅が1.8μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ照射装置。 - レーザ光のエネルギー分布を調整する手段が、基材および該基材の一部を覆う誘電体膜からなるマスクであって、
基材のみを透過したレーザ光による照射領域と、基材および誘電体膜を透過したレーザ光による照射領域との境界面近傍に、前記第一の領域を生成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ照射装置。 - 前記エネルギー密度分布を有する第一のレーザ光と、該エネルギー密度分布を有し、平均エネルギー密度が第一のレーザ光より低い第二のレーザ光とを、この順で同一地点に照射するように調整されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザ照射装置。 - 前記レーザ光源で発生されるレーザ光は、パルス形状で照射され、該パルス形状は、パルスの立ち上がりから最大値までの時間t1が、20ns以下に選択されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ照射装置。 - レーザ光を非単結晶半導体薄膜に照射し多結晶半導体薄膜を形成するレーザ照射方法であって、
該レーザ光は、レーザ光源で発生され、
該レーザ光の光照射領域中の一方向に沿ったエネルギー密度分布が、非晶質半導体薄膜の微結晶化エネルギーをEuとしたときに、エネルギー密度Eu未満の第一の領域と、該第一の領域の両側に位置するエネルギー密度Eu以上の第二の領域とを有し、
前記第一の領域の幅が3μm以下であり、
前記第一の領域が急峻な谷形状を有し、
前記急峻な谷形状におけるエネルギー密度の最低値は、前記エネルギー密度E u より、少なくとも70mJ/cm 2 低く設定されている
ことを特徴とするレーザ照射方法。 - 前記第一の領域の幅が1.8μm以下である
ことを特徴とする請求項6に記載のレーザ照射方法。 - 基材および該基材の一部を覆う誘電体膜からなるマスクにレーザ光透過させ、基材のみを透過したレーザ光による照射領域と、基材および誘電体膜を透過したレーザ光による照射領域との境界面近傍に、前記第一の領域を生成する
ことを特徴とする請求項6または7に記載のレーザ照射方法。 - 前記エネルギー密度分布を有する第一のレーザ光と、該エネルギー密度分布を有し、平均エネルギー密度が第一のレーザ光より低い第二のレーザ光とを、この順で同一地点に照射する
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のレーザ照射方法。 - 前記レーザ光源で発生されるレーザ光は、パルス形状で照射され、該パルス形状は、パルスの立ち上がりから最大値までの時間t1が、20ns以下に選択されている
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載のレーザ照射方法。
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