JP3961887B2 - 垂直磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、垂直磁気記録媒体、その製造方法およびその垂直磁気録媒体を搭載した磁気記憶装置に係り、特に高密度記録に適した垂直磁気記録媒体、その製造方法およびその垂直磁気録媒体を搭載した磁気記憶装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記憶装置の大容量化およびコンパクト化が急速に進み、それに伴って、例えば、面内磁気記録方式の磁気ディスク装置では、記録密度が年率100%の伸びを示している。
【0003】
一方、垂直磁気記録方式は、隣接する記録した磁化同士は反発しないため反磁場の影響が少なく、面内記録方式よりさらなる高密度記録化の可能性を有しており、最近、再び注目されている。
【0004】
垂直磁気記録媒体の記録密度を向上するためには、信号出力を確保すると共に、記録層の媒体ノイズを低減することが必要である。それには、記録層に用いられる硬質磁性金属薄膜の結晶粒径を微細かつ均一化することが必要である。従来、記録層には、CoCr系合金の薄膜が用いられている。CoCr系合金にVやNbなどを添加し、粒径を微細化する手法がとられている。しかし、微細化と共に結晶粒径分布を抑制しなければならないため、さらなる高密度記録に適した記録層を製造することは困難である。
【0005】
記録層において、微細かつ均一な粒径の硬質磁性微粒子を比較的容易に得る手法として、SunらのScience 第287巻 第17号 (2000)pp.1989および特開2000−54012号公報に開示されている化学的な手法が注目されている。本公報などによれば、化学的に合成されたナノサイズの硬質磁性微粒子が分子間力で自己配列するため、この手法は、規則正しく硬質磁性微粒子を配列させることができる。このように微粒子が配列された記録層では、粒子間交換相互作用および静磁気的相互作用が低減され、媒体ノイズは減少する。しかし、これらの相互作用が減少するため、記録した磁化の熱的安定性が悪化する。
【0006】
かかる熱的安定性を向上するためには、高い磁気異方性エネルギーを有する材料を用いる必要があるとされる。このような材料として、FePt、CoFe、FePdなどの規則合金が検討されている。
【0007】
このFePtなどの微粒子は、上記の手法で化学的に合成して得られた状態では、磁気異方性エネルギーおよび保磁力が低く、そのままでは記録再生に用いることができない。そこで、FePtなどを規則合金化して磁気異方性エネルギーを高めるために、600℃程度の温度で熱処理が行われている。また、このような熱処理は微粒子の酸化を防止する観点から真空の環境で実施される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、単にこのような熱処理をしても、硬質磁性微粒子の磁気的配向は3次元ランダムとなっている。したがって、垂直記録方式で高密度記録を行なおうとしても十分な再生出力が得られず、高密度記録が行えないという問題が生ずる。
【0009】
また、垂直磁気記録媒体に用いられている軟磁性裏打ち層は、非晶質あるいは微結晶からなる多結晶のパーマロイなどが用いられているが、高温での熱処理により、保磁力および磁気歪みが増加し、軟磁性裏打ち層の軟磁性の高周波特性が劣化し、高密度記録が行えないという問題が生ずる。
【0010】
さらに、このような高温の熱処理では、垂直磁気記録媒体の基板に用いられているガラス基板やアルミ基板は、軟化し、平坦度が悪化する。高密度記録を行うには記録再生ヘッドを垂直磁気記録媒体に数十nmに近接させなければならず、このような平坦度の悪化した垂直磁気記録媒体では、ヘッドクラッシュなどの障害が生じ、高密度記録が行えないという問題が生ずる。
【0011】
したがって、本発明は上記の問題点を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体、その製造方法並びにその垂直磁気記録媒体を搭載した磁気記憶装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の如く、基板の上方に硬質磁性微粒子を配列して形成した記録層を有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、前記硬質磁性微粒子は Fe 、 Co および Ni よりなる群のうち少なくとも1種と、 Pt および Pd のうち少なくとも1種の元素を含み、前記記録層に垂直方向に磁場を印加しつつ、前記記録層を加圧ガス雰囲気中で加熱する磁場中熱処理工程を含み、該磁場中熱処理工程は、前記加圧ガス雰囲気圧力が高いほど、より低温で熱処理されると共に、前記記録層の磁化容易軸を前記基板の面に対して垂直方向にする。
【0013】
請求項1記載の発明によれば、記録層に垂直方向に磁場を印加して、前記記録層を加圧ガス雰囲気中で加熱することにより、硬質磁性微粒子を構成する合金の原子配列の規則化とともに磁化容易軸を基板の面に対して垂直方向にすることができる。よって、垂直保磁力が増加し、高密度記録を行うことができる。
また、同じ熱処理温度では、磁場中熱処理工程のガス雰囲気圧力が高いほど、垂直保磁力が高くなる。したがって、ガス雰囲気圧力を高くすることにより、より低い熱処理温度で所望の垂直保磁力の垂直磁気記録媒体を得ることができ、基板の平坦度および軟磁性裏打ち層の高周波特性の悪化を防止することができる。
【0014】
なお、「前記記録層の磁化容易軸が前記基板の面に対して垂直である。」とは、個々の硬質磁性微粒子の磁化容易軸が、この垂直方向を中心として角度分布しているということである。この角度分布は、基板面すなわち記録層の膜面に対して垂直方向の保磁力Hc1(以下「垂直保磁力」という。)と、基板面に平行方向の保磁力Hc2(以下「面内保磁力」という。)との比Hc2/Hc1により表される。Hc2/Hc1は、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である。このような範囲では、記録後の残留磁化状態の磁化遷移領域の幅が狭小となり、高密度記録に適した垂直磁気記録媒体が得られる。
【0019】
また、請求項2に記載される如く、請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法において、前記加圧ガス雰囲気のガス圧は、2.5×105Paである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0024】
図1は、本実施形態の垂直磁気記録媒体の断面図である。図1を参照するに、垂直磁気記録媒体10は、基板11上に、軟磁性裏打ち層12、非磁性中間層13、硬質磁性微粒子17からなる記録層14、保護層15および潤滑層16をこの順に積層した構成となっている。
【0025】
基板11は、例えば、結晶化ガラス基板、強化ガラス基板、アルミ基板、Siウェハ、プラスチック基板、PETフィルムなどを用いることができる。好ましくは、耐熱性の観点から、結晶化ガラス基板、Siウェハなどを用いることができる。
【0026】
軟磁性裏打ち層12は、例えば、厚さが100nmから2μmであり、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ta、Ti、Zr、Hf、V、Nb、CおよびBよりなる群から選択されたうち少なくとも1種類の元素を含む非晶質もしくは微結晶の合金、またはこれらの合金の積層膜などの、飽和磁束密度Bsの高い軟磁性材料により構成される。例えば、FeAlSi、FeTaC、NiFeNb(Bs=0.7T)、CoCrNb(Bs=1.2T)などが用いられる。軟磁性裏打ち層12は、メッキ法、スパッタ法、蒸着法、CVD法(化学気相成長法)などにより形成される。軟磁性裏打ち層12は、単磁極ヘッドにより記録する場合に、単磁極のヘッドからの全磁束を吸収するためのもので、飽和記録するためには、飽和磁束密度Bsと膜厚の積の値が大きい方が好ましい。また、軟磁性裏打ち層12は、軟磁性の高周波特性、例えば、高周波透磁率が高い方が好ましい。高転送速度での記録が可能となる。なお、リング型ヘッドにより記録する場合は、軟磁性裏打ち層12を設けなくてもよい。
【0027】
非磁性中間層13は、例えば、厚さが1nmから50nmであり、Ti、C、Pt、TiCr、CoCr、SiO2、MgO、Al2O3などの非磁性材料により構成される。また、非磁性中間層13は、これらの合金を用いた積層膜であってもよい。非磁性中間層13は、スパッタ法、蒸着法、CVD法などにより形成される。非磁性中間層13は、軟磁性裏打ち層12と記録層の静磁気的相互作用を遮断するなどのために設けられている。
【0028】
記録層14は、配列された球形状の硬質磁性微粒子17と、その硬質磁性微粒子17間を埋めるようにして配列を固定する、例えば、アモルファスカーボンとから構成されている。記録層14は、例えば、厚さが3nmから50nmに設定される。また、記録層14は、硬質磁性微粒子17の層が膜厚方向に数層で積層されていてもよく、単層であってもよい。
【0029】
硬質磁性微粒子17は、例えば、FePt、FePd、CoPtまたはCoPd等の合金が用いられている。これらの合金は磁気異方性エネルギーが高く、より高い垂直保磁力を得ることができる。例えば、Fe100−XPtX、Fe100−XPdX、Co100−XPtX、およびCo100−XPdXは、好ましくは、X=20at%〜60at%、さらに好ましくはX=35at%〜55at%の範囲から選択される。このような範囲の組成では、より磁気異方性エネルギーが高く、より高い垂直保磁力を得ることができる。
【0030】
さらに、これらの合金に第3の元素として、例えばN、B、CまたはPなどが添加されていてもよい。さらに磁気異方性ネルギーを高め、より高い垂直保磁力が得られる。
【0031】
硬質磁性微粒子17の平均粒径は、2nm以上10nm以下の範囲に設定される。平均粒径が10nmを越えると、硬質磁性微粒子17間の非磁性である間隙部分の体積が大きくなり、媒体ノイズが増加する。平均粒径が2nm未満になると、硬質磁性微粒子17は室温において超常磁性になりやすく、強磁性を保てない。
【0032】
また、硬質磁性微粒子17の粒径の標準偏差は、平均粒径の10%以下の範囲に設定される。平均粒径の10%を越えると、硬質磁性微粒子17の静磁気的相互作用の分布が大きくなり、媒体ノイズが増加する。
【0033】
さらに、硬質磁性微粒子17間の平均間隙、すなわち、隣り合う硬質磁性微粒子17間の間隙の平均値は、0.2以上5nm以下の範囲に設定される。平均間隙が5nmを越えると、硬質磁性微粒子17間の非磁性である間隙部分の体積が大きくなり、媒体ノイズが増加し、あるいは再生出力が低下する。平均間隙が0.2nm未満であると、硬質磁性微粒子17間の交換相互作用が増加し、媒体ノイズが増加する。
【0034】
記録層14の磁化容易軸は、基板面に対して垂直方向に向いている。すなわち、個々の硬質磁性微粒子17の磁化容易軸が、この垂直方向を中心として角度分布している。この角度分布は、垂直保磁力Hc1と面内保磁力Hc2との比Hc2/Hc1により表される。Hc2/Hc1は、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である。このような範囲では、記録後の残留磁化状態の磁化遷移領域の幅が狭小となり、高密度記録に適した垂直磁気記録媒体が得られる。
【0035】
保護層15は、例えば、厚さが0.5nmから15nmであり、カーボン、水素化カーボン、窒化カーボンなどにより構成される。保護層15は、スパッタ法、CVD法などにより形成される。
【0036】
さらにこの上に、潤滑層16が、厚さが0.5nmから5nmであり、例えば、パーフルオロポリエーテルが主鎖の潤滑剤などのより構成される。潤滑層16は、ディップ法などにより形成される。
【0037】
以下、図2を参照して、本実施形態の垂直磁気記録媒体10の製造方法について説明する。図2は、垂直磁気記録媒体10の製造工程を示す図である。
【0038】
図2を参照するに、垂直磁気記録媒体10の製造工程は、微粒子ヘキサン溶液を調製する工程(ステップ101〜ステップ103)と、微粒子ヘキサン溶液を塗布するための基板21を準備する工程(ステップ104、ステップ105)と、微粒子ヘキサン溶液を塗布し記録層14を形成して磁場中熱処理等する工程(ステップ106〜ステップ109)とによりなっている。
【0039】
まず、微粒子ヘキサン溶液を調製する工程(ステップ101〜ステップ103)においては、金属前駆体溶液の形成(ステップ101)、微粒子の生成(ステップ102)、微粒子の精製(ステップ103)をこの順に行う。
【0040】
(金属前駆体溶液の形成(ステップ101))
Pt錯体、例えば、0.5mmolのアセチルアセトナト白金Pt(C5H7O2)2と、還元剤、例えば、1.5mmolの1,2−ヘキサデカンジオールとを溶媒である20cm3のジオクチルエーテルに、N2雰囲気中100℃で溶解する。
【0041】
ここに、Fe錯体、例えば、1mmolのペンタカルボニル鉄Fe(CO)5と、安定剤、例えば、0.5mmolのオレイン酸および0.5mmolのオレイルアミンとを加える。これが金属前駆体溶液である。そして、これらを還流、撹拌しながら、297℃まで加熱する。なお、Pt錯体とFe錯体の量の比により、生成するFePtの微粒子の組成を制御することができる。
【0042】
(微粒子の生成(ステップ102))
次に、前記金属前駆体溶液を297℃で30分間撹拌し、微粒子を成長させる。これにより、Fe50Pt50の粒径6nm、平均間隙4nmの微粒子が生成される。微粒子は、前記安定剤によって表面が覆われ安定となり、空気中でも取り扱うことができる。
【0043】
なお、微粒子のへ平均間隙は、安定剤の種類により制御することができる。例えば、ヘキサン酸とヘキシルアミンを用いると、微粒子の平均間隙を1nmとすることができる。また、この微粒子は、後述する磁場中熱処理により強磁性を有する硬質微粒子となるが、この段階では強磁性を有していない。
【0044】
(微粒子の精製(ステップ103))
次に、微粒子に付着している合成副産物や未反応の試薬を除去する。エタノールを加え、微粒子を沈殿させ、遠心分離機により上澄みを除去する。さらにヘキサンに再分散させ、エタノールを加え、微粒子を沈殿させ、遠心分離機により上澄みを除去して再精製する。
【0045】
次に、図2を参照するに、微粒子ヘキサン溶液を塗布するための基板21を準備する工程においては、基板11上への軟磁性裏打ち層の成膜(ステップ104)、非磁性中間層13の成膜(ステップ105)をこの順に行う。
【0046】
(軟磁性裏打ち層の成膜(ステップ104))
例えば、2.5インチのSi基板の表面を熱酸化してSiO2を形成した基板11上に、上述した軟磁性裏打ち層12の成膜101を、メッキ法、スパッタ法、蒸着法などにより行う。
【0047】
(非磁性中間層13の成膜(ステップ105))
軟磁性裏打ち層12上に、上述した非磁性中間層13の成膜102を、メッキ法、スパッタ法、蒸着法、CVD法などにより行う。
【0048】
次に、図2を参照するに、微粒子ヘキサン溶液を塗布し記録層を形成して、磁場中熱処理等する工程(ステップ106〜ステップ109)においては、非磁性中間層13まで成膜した基板21上への微粒子ヘキサン溶液の塗布(ステップ106)と、次に微粒子を規則化し強磁性および垂直磁気異方性を生じさせるための磁場中熱処理(ステップ107)と、記録層14上への保護層15の成膜(ステップ108)と、保護層15上への潤滑層16の塗布(ステップ109)とをこの順に行う。
【0049】
(微粒子ヘキサン溶液の塗布(ステップ106))
微粒子をヘキサンに再分散させた、濃度が5mg/cm3のヘキサン溶液約1.3cm3を、非磁性中間層13まで積層した基板21に、例えば、スピンコータにより塗布する。図3は、スピンコータ30の概略構成を示す図である。図3を参照するに、スピンコータ30は微粒子を分散させたヘキサン溶液を滴下する供給器31と、基板21を回転させるスピンドル32とよりなる。まず、非磁性中間層13まで形成された基板21をスピンドル32に取り付け、スピンドル32を例えば、図3に示す矢印方向に低速で回転させる。所定の量が滴下した後、矢印方向に高速で回転にして、ヘキサン溶液を基板21全面に拡散させる。この高速回転の速度またはヘキサン溶液の濃度を調製することにより、微粒子の層数を制御することができる。
【0050】
また、スピンコータによる方法に換えて、ディップ法により基板21の両面に同時に、微粒子を分散させたヘキサン溶液を塗布することができる。図4は、ディップコータの概略構成を示す図である。図4を参照するに、前記の所定の濃度に調整されたヘキサン溶液を充たした槽41に、基板21を一定時間浸漬後、基板21を図4に示す矢印Zの方向に一定速度で引き上げる。この速度またはヘキサン溶液の濃度を調製することにより、微粒子の層数を制御できる。
【0051】
次に、ヘキサン溶液を塗布した基板22を約5分間乾燥させる。FePtの微粒子は、自己組織化して、多層テラス状の超格子構造をとる。以上により、微粒子を配列した記録層14が非磁性中間層13上に形成される。なお、この段階では、微粒子は室温で強磁性を有していないので、記録層14は、強磁性を有していない。
【0052】
(磁場中熱処理(ステップ107))
次に、磁場中で熱処理を行う。まず、後述する磁場中熱処理装置のチャンバ内に記録層14を形成した基板22を配置し、チャンバ内を、例えば、約10−5Pa程度まで排気し、後述する気体で所定の雰囲気圧力にする。磁場を印加しながら所定の熱処理温度まで昇温し、一定時間保持して熱処理を行い、降温する。
【0053】
図5は、磁場中熱処理装置の一例を示す図である。図5は、常伝導磁石を用いた磁場中熱処理装置50の構成を示す断面図である。
【0054】
図5を参照するに、磁場中熱処理装置50は、異なる磁極を有し対向する常伝導磁石52と、その内側に2つの対向するヒータ51と、さらにその内側に、記録層14を形成した基板22を配置する治具(図示せず)と、基板22を囲むチャンバ53とを含む構成となっている。ヒータ51は、例えば、セラミックヒータ(PBNヒータ(熱分解窒化ホウ素ヒータ))または、ランプヒータなどが用いられる。また、常伝導磁石52は、直流磁場を印加するためのもので、基板22全面に均一の磁場が印加されるようになっている。
【0055】
基板22を治具に配置し、常伝導磁石52により直流磁場を基板22に対して垂直方向、例えば図5に示す矢印Hの方向に印加し、同時にヒータ51により基板22を加熱する。
【0056】
また、磁場中熱処理装置は、常伝導磁石52に換えて超伝導磁石を用いた装置でもよい。図6は、超伝導磁石を用いた磁場中熱処理装置60の構成を示す断面図である。
【0057】
図6を参照するに、磁場中熱処理装置60は、円筒状の超伝導磁石63と、超伝導磁石63の中央開口部に配置されたヒータ62と、そのヒータ62の内部に基板22を配置するための枚葉式の治具(図示せず)と、基板22を囲むチャンバ61とを含む構成となっている。ヒータ62は、磁場中熱処理装置50のヒータ51と同様のものが用いられる。基板22を治具に配置し、超伝導磁石63により直流磁場を基板22に対して垂直方向、例えば図6に示す矢印Hの方向に印加しながら、ヒータ62により基板22を加熱する。
【0058】
磁場の大きさは、790kA/m(10kOe)〜7900kA/m(100kOe)の範囲に設定される。790kA/m(10kOe)未満では、硬質磁性微粒子17の垂直配向性が十分促進せず、7900kA/mより大きいと超伝導磁石63などが大規模となり実用的ではない。
【0059】
熱処理の温度は、200℃から600℃の範囲に設定される。600℃を越えると、高い保磁力は得られるものの、結晶化ガラス基板などの基板が軟化し平坦度が悪化する。また、200℃より低いと、硬質磁性微粒子17の十分な保磁力が得ることができない。熱処理の温度は、好ましくは、300℃から500℃の範囲に設定される。この温度範囲では、基板材料に強化ガラスを用いることができ、軟磁性裏打ち層の磁気特性の劣化を防止できる。
【0060】
熱処理のガス雰囲気の気体は、N2、He、Ne、Ar、Kr、XeおよびH2よりなる群から少なくとも1種類の気体が選択される。不活性あるいは還元性を有する気体により、硬質磁性微粒子17および磁性裏打ち層12の酸化を防止することができる。ガス雰囲気の気体は、好ましくは、N2が選択される。N2は、FePtなどの硬質磁性微粒子17を構成する合金と侵入型合金を形成すると考えられ、Arなどと比較して、高い垂直保磁力を達成でき、したがって、熱処理温度を低くすることができる。
【0061】
また、熱処理のガス雰囲気の圧力は、1Paから10+6Paの範囲に設定される。同じ熱処理温度では、圧力が大きいほど、記録層14の保磁力が増加する。1Paより低いと、保磁力が増加しない。より好ましくは、10+3Paから10+6Paの範囲に設定される。
【0062】
熱処理時間、すなわち上述した磁場を印加しながら、上述した熱処理温度に保持する時間は、10分から120分に設定される。熱処理時間が長いほど保磁力が増加するが、生産効率の観点から、30分が好ましい。
【0063】
(保護層15の成膜(ステップ108))
次に、記録層14の上に保護層15の成膜を行う。保護層15には、カーボン、水素化カーボン、窒化カーボンなどが用いられる。例えばH2ガス分圧が調整されたArガスとH2ガスの混合雰囲気でカーボンをスパッタリングすることにより、上述した膜厚の水素化カーボンよりなる保護層15を形成する。
【0064】
(潤滑層16の塗布(ステップ109))
次に、保護層15の上に潤滑層16の塗布を行う。潤滑層16には、例えば、パーフルオロポリエーテルが主鎖の潤滑剤が用いられる。例えば、アウジモント社製のFomblin AM3001溶液を用いてディップ法により、上述した膜厚の潤滑層を塗布する。
【0065】
以上により、図1に示す垂直磁気記録媒体10が形成される。
【0066】
以下、本発明なる実施例1〜3、参考例1〜4および本発明によらない比較例を説明する。
(参考例1)
本参考例の垂直磁気記録媒体は、図1に示すように、Siウェハの表面を熱酸化してSiO2を形成した基板11上に、厚さ200nmの微結晶FeAlSiよりなる軟磁性裏打ち層12と、厚さ10nmのAl2O3よりなる非磁性中間層13と、Fe50Pt50の硬質磁性微粒子により形成された記録層14と、厚さ4nmの水素化カーボンよりなる保護層16と、厚さ1.0nmのFomblin AM3001よりなる潤滑層とから構成されている。
【0067】
記録層14形成後の磁場中熱処理は、減圧N2雰囲気(N2ガス圧1.5×104Pa)において、磁場3950kA/m(50kOe)を印加して、30分間行った。熱処理温度を3条件として、それぞれ460℃、480℃、530℃とした。
【0068】
記録層は、Fe50Pt50の硬質磁性微粒子17よりなる。硬質磁性微粒子17の平均粒径は6.0nm、粒径の標準偏差は、平均粒径に対して8%、平均間隙は、4.0nmであった。なお、測定は、HRTEM(高分解能透過型電子顕微鏡)を用いて、記録層14の像を撮影した。その写真(写真上で2百万倍)を用いて、100個の硬質磁性微粒子17について、個々の硬質磁性微粒子17の像の面積を測定し、その像が円であると仮定して直径を求め、平均粒径および粒径の標準偏差を求めた。硬質磁性微粒子17の平均間隙は、100個の硬質磁性微粒子17間の間隙を測定した。
【0069】
(参考例2)
本参考例の垂直磁気記録媒体は、参考例1と同様に構成されている。
【0070】
記録層14形成後の磁場中熱処理は、減圧Ar雰囲気(Arガス圧1.5×104Pa)において、磁場3950kA/m(50kOe)を印加して、30分間行った。熱処理温度を4条件として、それぞれ460℃、480℃、530℃、560℃とした。
【0071】
(実施例1)
本実施例の垂直磁気記録媒体は、参考例1と同様に構成されている。
【0072】
記録層14形成後の磁場中熱処理は、加圧N2雰囲気(N2ガス圧力2.5×105Pa)において、磁場3950kA/m(50kOe)を印加して、30分間行った。熱処理温度を2条件として、それぞれ360℃、400℃とした。
【0073】
(実施例2)
本実施例の垂直磁気記録媒体は、参考例1と同様に構成されている。
【0074】
記録層14形成後の磁場中熱処理は、加圧Ar雰囲気(Arガス圧力2.5×105Pa)において、磁場3950kA/m(50kOe)を印加して、30分間行った。熱処理温度を3条件として、それぞれ360℃、400℃、430℃とした。
【0075】
(比較例1)
本発明によらない比較例の垂直磁気記録媒体は、参考例1と同様に構成されている。
【0076】
記録層形成後の磁場中熱処理は、真空中(真空度2×10−4Pa)において、磁場3950kA/m(50kOe)を印加して、30分間行った。熱処理温度を2条件として、それぞれ530℃、580℃とした。
【0077】
図7は、垂直保磁力と熱処理温度の関係を示す図である。図7を参照するに、参考例1、2及び実施例1、2の垂直磁気記録媒体は、熱処理温度を高くすると、垂直保磁力Hc1が増加していることがわかる。例えば、実施例1の熱処理温度が400℃の場合は、垂直保磁力Hc1が514kA/mである。さらに、この場合面内方向の保磁力Hc2は130kA/mであるので、Hc2/Hc1=25%となり、磁化容易軸が基板に対して垂直になっていることがわかる。
【0078】
一方、比較例1の垂直磁気記録媒体は、580℃の熱処理温度でも、垂直保磁力が増加しないことがわかる。
【0079】
また、参考例1と実施例1、または参考例2と実施例2を比較すると、同じガス雰囲気の気体では、ガス雰囲気の圧力が高いほど、より低い熱処理温度で同じ垂直保磁力が得られることがわかる。
【0080】
また、参考例1と参考例2、または実施例1と実施例2を比較すると、同じ雰囲気圧力では、Arガス雰囲気よりN2ガス雰囲気の方がより低い熱処理温度で同じ垂直保磁力を得られることがわかる。
【0081】
図8は、硬質磁性微粒子を構成するFePtのc軸の格子定数と熱処理温度の関係を示す図である。図8を参照するに、熱処理温度を高くすると、c軸の格子定数が小さくなっている。FePtは一般に規則化に伴ってc軸の格子定数が小さくなるので、熱処理温度を高くすると、規則化が促進されることがわかる。特に、参考例1と実施例1、または参考例2と実施例2を比較すると、同じ雰囲気圧力で、Arガス雰囲気よりN2ガス雰囲気で熱処理した方がc軸の格子定数が小さくなっているので、より規則化が促進していることがわかる。なお、格子定数は、X線ディフラクトメータ法により求めた。
【0082】
(参考例3)
本参考例の垂直磁気記録媒体は、参考例1と同様に構成されている。
【0083】
記録層14形成後の磁場中熱処理を、N2雰囲気において、磁場3950kA/m(50kOe)を印加して、530℃で30分間行った。N2ガス圧力を3条件として、それぞれ5Pa、1.5×102Pa、1.5×104Paとした。
(比較例2)
本発明によらない比較例の垂直磁気記録媒体は、参考例1と同様に構成されている。
【0084】
記録層14形成後の磁場中熱処理を、N2ガス圧力を2×10−4Paとした他は参考例3と同様とした。
【0085】
図9は、参考例3および比較例2の垂直磁気記録媒体の垂直保磁力とN2雰囲気ガス圧力との関係を示す図である。図9を参照するに、比較例2に対して、参考例3は、N2雰囲気ガス圧力が高いほど、垂直保磁力が高くなることがわかる。特に約1Pa以上で垂直保磁力が増加していることがわかる。
【0086】
(参考例4)
本参考例の垂直磁気記録媒体は、参考例1と同様に構成されている。
【0087】
記録層14形成後の磁場中熱処理は、減圧N2雰囲気(N2ガス圧力1.5×104Pa)において、磁場3950kA/m(50kOe)を印加して、30分間行った。熱処理温度を460℃とした。
【0088】
(実施例3)
本実施例の垂直磁気記録媒体は、参考例1と同様に構成されている。
【0089】
記録層14形成後の磁場中熱処理は、加圧N2雰囲気(N2ガス圧力2.5×105Pa)において、磁場3950kA/m(50kOe)を印加して、30分間行った。熱処理温度を460℃とした。
【0090】
図10は、参考例4および実施例3の垂直磁気記録媒体のX線ディフラクションパターンを示す図である。図10を参照するに、参考例4および実施例3とも、FePt規則合金の面心正方格子を示すピークが確認され、FePt規則合金の規則化が確認できる。特に、参考4より実施例3、すなわち、熱処理の圧力が高い方がFePt合金を示すピークが鋭く、より規則化が促進されていることがわかる。
【0091】
次に、本発明になる磁気記憶装置の一実施例を図11及び図12と共に説明する。図11は、磁気記憶装置の一実施例の要部を示す断面図である。図12は、磁気記憶装置の一実施例の要部を示す平面図である。
【0092】
図11及び図12に示すように、磁気記憶装置120は大略ハウジング123からなる。ハウジング123内には、モータ124、ハブ125、複数の垂直磁気記録媒体126、複数の記録再生ヘッド127、複数のサスペンション128、複数のアーム129及びアクチュエータユニット121が設けられている。垂直磁気記録媒体126は、モータ124より回転されるハブ125に取り付けられている。記録再生ヘッド127は、MR素子(磁気抵抗効果型素子)、GMR素子(巨大磁気抵抗効果型素子)、又はTMR素子(トンネル磁気効果型)の再生ヘッドと薄膜ヘッドの記録ヘッドとの複合型ヘッドからなる。記録ヘッドは単磁極ヘッドでもよく、リング型ヘッドでもよい。各記録再生ヘッド127は対応するアーム129の先端にサスペンション128を介して取り付けられている。アーム129はアクチュエータユニット121により駆動される。この磁気記憶装置の基本構成自体は周知であり、その詳細な説明は本明細書では省略する。
【0093】
磁気記憶装置120の本実施例は、垂直磁気記録媒体126に特徴がある。垂直磁気記録媒体126は、例えば、図1の積層構成を有する実施形態および実施例1〜7などの垂直磁気記録媒体である。勿論垂直磁気記録媒体126の枚数は3枚に限定されず、1枚でも、2枚又は4枚以上であっても良い。
【0094】
磁気記憶装置120の基本構成は、図11及び図12に示すものに限定されるものではない。本発明で用いる垂直磁気記録媒体126は、磁気ディスクに限定されない。
【0095】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態および実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0096】
なお、上述した本発明による実施形態および実施例では、垂直磁気記録媒体が軟磁性裏打ち層12および非磁性中間層13を有する場合について説明したが、これらは必須のものではない。例えば、記録ヘッドの方式、例えば単磁極ヘッド方式に合わせて軟磁性裏打ち層12は設けられる。また、軟磁性裏打ち層12および非磁性中間層13を有しない構成であっても、実施例1から3についての図8から図11に示される特性は同様のものとなることが確認できた。
【0097】
なお、本発明は、以下の付記に示す構成により実施することができる。
(付記1) 基板の上方に硬質磁性微粒子を配列して形成した記録層を有する垂直磁気記録媒体であって、前記硬質磁性微粒子の粒径の平均が2nm以上10nm以下、前記粒径の標準偏差が前記粒径の平均の10%以下、前記硬質磁性微粒子間の平均間隙が0.2nm以上5nm以下であり、前記記録層の磁化容易軸が前記基板の面に対して垂直であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
(付記2) 前記硬質磁性微粒子は、Fe、Co、Ni、PtおよびPdよりなる群から選択された少なくとも2種類以上の元素を含むことを特徴とする付記1記載の垂直磁気記録媒体。
(付記3) 前記基板と記録層との間に、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ta、Ti、Zr、Hf、V、Nb、CおよびBよりなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含む軟磁性裏打ち層をさらに有することを特徴とする付記1から3のいずれか1項記載の垂直磁気記録媒体。
(付記4) 基板の上方に硬質磁性微粒子を配列して形成した記録層を有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、前記記録層に垂直方向に磁場を印加しつつ、前記記録層をガス雰囲気中で加熱する磁場中熱処理工程を含み、該磁場中熱処理工程は、前記記録層の磁化容易軸を前記基板の面に対して垂直方向にすることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
(付記5) 前記磁場中熱処理工程は、前記ガス雰囲気圧力が高いほど、より低温で熱処理することを特徴とする付記4記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(付記6) 前記磁場中熱処理工程は、前記磁場の大きさを790kA/mから3950kA/mの範囲とし、前記ガス雰囲気の圧力を10+3Paから10+6Paの範囲とし、温度を200℃以上600℃未満の範囲とすることを特徴とする付記4または5記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(付記7) 前記ガス雰囲気の気体は、N2、He、Ne、Ar、Kr、XeおよびH2よりなる群から選択された少なくとも1種類の気体であることを特徴とする付記4から6のいずれか1項記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(付記8) 付記1から3のいずれか1項記載の垂直磁気記録媒体を備えた磁気記憶装置。
【0098】
付記3記載の発明によれば、このような合金の軟磁性裏打ち層を有することにより、単磁極ヘッドのヘッド磁界が記録層の面内方向に広がらずに、記録層に垂直に印加され、磁化遷移領域の狭小な記録ビットが形成される。
【0099】
付記6記載の発明によれば、これらの範囲では、さらにより低い熱処理温度で所望の垂直保磁力の垂直磁気記録媒体を得ることができ、基板の平坦度および軟磁性裏打ち層の高周波特性の悪化を防止することができる。
【0100】
付記7記載の発明によれば、熱処理工程において、ガス雰囲気の気体は、硬質磁性微粒子の酸化を防止する気体が用いられる。酸化による保磁力の低下を防止することができる。なお、前記ガス雰囲気の気体には、好ましくはN2が用いられる。より低い熱処理温度で所望の垂直保磁力を得ることができる。
【0101】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、本発明によれば、基板の平坦度および軟磁性裏打ち層の軟磁気特性を悪化させることなく、硬質磁性粒子に垂直磁気配向性を付与して、高密度記録可能な垂直磁気記録媒体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態の垂直磁気記録媒体の構成を示す断面図である。
【図2】 本実施形態の垂直磁気記録媒体の製造工程を示す図である。
【図3】 スピンコータの概略構成を示す図である。
【図4】 ディップコータの概略構成を示す図である。
【図5】 常伝導磁石を用いた磁場中熱処理装置の構成を示す断面図である。
【図6】 超伝導磁石を用いた磁場中熱処理装置の構成を示す断面図である。
【図7】 垂直保磁力と熱処理温度の関係を示す図である。
【図8】 硬質磁性微粒子を構成するFePtのc軸の格子定数と熱処理温度の関係を示す図である。
【図9】 参考例3の垂直磁気記録媒体の垂直保磁力とN2ガス雰囲気圧力との関係を示す図である。
【図10】 参考例4および実施例3の垂直磁気記録媒体のX線ディフラクションパターンを示す図である。
【図11】 磁気記憶装置の一実施例の要部を示す断面図である。
【図12】 図11に示す磁気記憶装置の一実施例の要部を示す平面図である。
Claims (2)
- 基板の上方に硬質磁性微粒子を配列して形成した記録層を有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、
前記硬質磁性微粒子は Fe 、 Co および Ni よりなる群のうち少なくとも1種と、 Pt および Pd のうち少なくとも1種の元素を含み、
前記記録層に垂直方向に磁場を印加しつつ、前記記録層を加圧ガス雰囲気中で加熱する磁場中熱処理工程を含み、
該磁場中熱処理工程は、前記加圧ガス雰囲気圧力が高いほど、より低温で熱処理されると共に、前記記録層の磁化容易軸を前記基板の面に対して垂直方向にすることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。 - 前記加圧ガス雰囲気のガス圧は、2.5×105Paであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
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