JP3965760B2 - 加工用低ヤング率鋼板およびその製造方法 - Google Patents
加工用低ヤング率鋼板およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3965760B2 JP3965760B2 JP05496898A JP5496898A JP3965760B2 JP 3965760 B2 JP3965760 B2 JP 3965760B2 JP 05496898 A JP05496898 A JP 05496898A JP 5496898 A JP5496898 A JP 5496898A JP 3965760 B2 JP3965760 B2 JP 3965760B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- rolling
- modulus
- rolling direction
- steel sheet
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、主にプレス加工などの加工を施して自動車の車体などに用いて好適な鋼板に関し、とくに低ヤング率特性を有する新規な鋼板およびその製造方法に関するものである。なお、加工用鋼板として要求される低コストを確保するために、本発明はその対象をフェライト相を主相とする (体積比で50%以上がフェライト相である) 鋼板に限定する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境の上から自動車の軽量化が指向されるようになって、自動車の車体に用いられる鋼板の板厚が薄くなる傾向にある。鋼板の板厚が減少すれば、一般に、車体の剛性を確保することが困難になる。
このため、最近になって、車体の設計にあたり、部品によっては弾性範囲内である程度の歪みが生じることを許容することが検討されている。このような設計方針の下では、同じ降伏応力であれば、塑性変形が生じるまでの歪みが大きいこと、すなわち、ヤング率が低いことが望ましい。
【0003】
しかしながら、鋼板のヤング率を低下させる方法については、今日までほとんど知られていないのが実情である。例えば、鋼板のヤング率に関する従来の知見は、特開平4−143216号公報に開示されているように、高ヤング率を得ようとするものばかりであって、ヤング率を低下させようとするものは見当たらない。なお、ヤング率が低い鉄系材料として、鋳鉄が知られているものの、板形状に製造することが工業的に困難であり、また、安定した低ヤング率を得ることも難しいといった問題があった。
【0004】
なお、組織学の観点からは、単結晶において<100> 方向のヤング率が低いことが知られており (例えば特開昭56−139619号公報) 、また、ND//<100> 集合組織を発達させるにはAr3変態点以下で仕上圧延を行うことが好適であることが特開昭62−284016号公報等で知られている。したがって、Ar3変態点以下で仕上圧延を施すことが、ヤング率の低下にも有効であると思われる。しかしながら、漫然とAr3変態点以下での仕上圧延を行っても、実際には十分な低ヤング率を安定して得ることは困難であり、また低ヤング率化のための熱延条件の適正化についてはよく知られていないのが現状である。
また、Si添加など、合金化によりND//<100> 集合組織を発達させる方法も考えられるが、一般に加工性の劣化が加工用鋼板として十分な成形性を兼ね備えさせるのは困難であった。すなわち、加工用鋼板としては30%程度の延性は必要である (好ましくは40%以上) が、このような加工性を低ヤング率と共に有する鋼板は従来安定して得ることができなかった。
なお、主相をフェライト相でなくオーステナイト相とする、たとえばオーステナイト系ステンレス鋼などはヤング率が低めであるが、加工用鋼板としては合金コストがかかりすぎる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、最近の設計思想に適応した、低ヤング率特性を有する新規な加工用鋼板とその製造方法を提供することにある。また、本発明の具体的な目的は、ヤング率Eが室温において熱延鋼板は 160GPa 以下、冷延鋼板は 170GPa 以下である鋼板とその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意実験、検討を行った結果、Ar3変態点以下の温度で、圧延時の歪みの蓄積を回避しつつ、所定量以上の圧下率を付与することにより、目的が達成できることを知見し、本発明を完成するに到った。その要旨構成は以下のとおりである。すなわち、
【0009】
(a) C:0.10wt%以下、Si:1.0wt%以下、Mn:1.0wt%以下、P:0.15wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.10wt%以下、N:0.010wt%以下を含み、かつTi:0.50wt%以下、Nb:0.50wt%以下およびV:0.50wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相を主相とし、かつ下記(1)式で定義されるEが室温において160GPa以下であることを特徴とする加工用低ヤング率熱延鋼板。
記
E=(E0 +2E45+E90)/4 ・・・・・・ (1)
ただし、E0 、E45、E90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa)
【0010】
(b) C:0.10wt%以下、Si:1.0wt%以下、Mn:1.0wt%以下、P:0.15wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.10wt%以下、N:0.010wt%以下を含み、かつTi:0.50wt%以下、Nb:0.50wt%以下およびV:0.50wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相を主相とし、かつ下記(1)式で定義されるEが室温において160GPa以下、かつ下記(2)式で定義されるYRが0.8以上であることを特徴とする加工用低ヤング率熱延鋼板。
記
E=(E0 +2E45+E90)/4 ・・・・・・ (1)
ただし、E0 、E45、E90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa)
YR=(YS0 +2YS45+YS90)/(TS0 +2TS45+TS90) ・・・・・・ (2)
ただし、YS0 、YS45、YS90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向の降伏応力(MPa)
TS0 、TS45、TS90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向の破断応力(MPa)
【0011】
(c) 上記(a)または(b)において、成分組成が、さらにB:0.01wt%以下を含有することを特徴とする加工用低ヤング率熱延鋼板。なおここで、室温とは、0℃〜30℃程度を指し、とくに測定温度としては10〜25℃が好適である。
(d) C: 0.10wt %以下、 Si : 1.0wt %以下、 Mn : 1.0wt %以下、P: 0.15wt %以下、S: 0.02wt %以下、 Al : 0.10wt %以下、N: 0.010wt %以下を含み、かつ Ti : 0.50wt %以下、 Nb : 0.50wt %以下およびV: 0.50wt %以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部は Fe および不可避的不純物からなり、フェライト相を主相とし、かつ下記 (1) 式で定義されるEが室温において 170GPa 以下であることを特徴とする加工用低ヤング率冷延鋼板。
記
E=(E 0 +2E 45 +E 90 )/4 ・・・・・・ (1)
ただし、E 0 、E 45 、E 90 は、それぞれ圧延方向、圧延方向に 45 °の方向、圧延方向に 90 °の方向のヤング率 (GPa)
(e) C: 0.10wt %以下、 Si : 1.0wt %以下、 Mn : 1.0wt %以下、P: 0.15wt %以下、S: 0.02wt %以下、 Al : 0.10wt %以下、N: 0.010wt %以下を含み、かつ Ti : 0.50wt %以下、 Nb : 0.50wt %以下およびV: 0.50wt %以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部は Fe および不可避的不純物からなり、フェライト相を主相とし、かつ下記 (1) 式で定義されるEが室温において 170GPa 以下、かつ下記 (2) 式で定義されるYRが 0.8 以上であることを特徴とする加工用低ヤング率冷延鋼板。
記
E=(E 0 +2E 45 +E 90 )/4 ・・・・・・ (1)
ただし、E 0 、E 45 、E 90 は、それぞれ圧延方向、圧延方向に 45 °の方向、圧延方向に 90 °の方向のヤング率 (GPa)
YR=(YS 0 +2YS 45 +YS 90 )/(TS 0 +2TS 45 +TS 90 ) ・・・・・・ (2)
ただし、YS 0 、YS 45 、YS 90 は、それぞれ圧延方向、圧延方向に 45 °の方向、圧延方向に 90 °の方向の降伏応力 (MPa)
TS 0 、TS 45 、TS 90 は、それぞれ圧延方向、圧延方向に 45 °の方向、圧延方向に 90 °の方向の破断応力 (MPa)
(f) 上記 (d) または (e) において、成分組成が、さらにB: 0.01wt %以下を含有することを特徴とする加工用低ヤング率冷延鋼板。なおここで、室温とは、0℃〜 30 ℃程度を指し、とくに測定温度としては 10 〜 25 ℃が好適である。
【0012】
(g) C:0.10wt%以下、Si:1.0wt%以下、Mn:1.0wt%以下、P:0.15wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.10wt%以下、N:0.010wt%以下を含み、かつTi:0.50wt%以下、Nb:0.50wt%以下およびV:0.50wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有する鋼素材を、Ar3変態点〜(Ar3変態点−100℃)の温度域における圧下率が50%以上、最終パスの圧下率が15%以下、かつ終了温度が(Ar3変態点−100℃)以上、さらに、A r 3 変態点以下の最終パスを除くパスの圧下率が 30 %/パス以下、圧延パス数が5パス以上となるように熱間圧延することを特徴とする、加工用低ヤング率熱延鋼板の製造方法。
【0014】
(h) 上記(g)の方法で得た熱延鋼板を冷間圧延し、再結晶焼鈍を施すことを特徴とする、加工用低ヤング率冷延鋼板の製造方法。
【0015】
なお、(g) および (h)において、熱延鋼板に、必要に応じて軟質化・加工性向上等を目的とした焼鈍を施すことは、本発明の趣旨を何ら逸脱するものではない。また、(g) および (h)の方法により得られた鋼板にYRの向上等を目的とした調質圧延を施すことも、本発明の趣旨を何ら損ねるものではない。
【0016】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明について、その根拠となった実験結果に基づいて説明する。一般に用いられている鋼板のヤング率は、室温で約210〜220GPaの範囲にある。そこで、発明者らは、目標とするヤング率を、従来得られていなかった熱延鋼板は 160GPa 以下、冷延鋼板は 170GPa 以下に設定し、かかる低ヤング率鋼板を製造する方法について、種々の検討を行った。その結果、鋼板の熱間圧延において、Ar3変態点〜(Ar3変態点−100℃)の温度域での圧下率が50%以上、最終パスの圧下率が15%以下、かつ終了温度が(Ar3変態点−100℃)以上となるように圧延することにより、低ヤング率鋼板の製造が可能になることが明らかとなった。
【0017】
図1は、板面(100) 方位の集合組織の集積度に及ぼす、熱間仕上げ圧延における圧延温度および圧下率の影響を調べたものである。また図2は、同様に、これら圧延温度および圧下率が、ヤング率の平均を表すE(=(E0 +2E45+E90)/4 ただし、E0 、E45、E90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa) である)に及ぼす影響を調べたものである。
図1および図2から、Ar3変態点以下、(Ar3変態点−100 ℃)以上の温度域で、50%以上の圧下率で圧延することが、板面(100) (すなわち、ND//<100> )方位の集積度を高め、Eを低下させるのに効果的であることがわかる。圧延温度がこの温度範囲よりも高くても低くても、その効果は急激に低下することも明らかである。
また、同じ圧下率 (50%) では、パス数が3パスより5パスの方がEを低下させるのに効果的である。
【0018】
なお、図1および図2における実験条件は下記のとおりである。
後述する実施例表1のNo.1に示す化学成分の鋼を、実験室にて1100℃に加熱後粗圧延し、さらに図中の各温度で3パス (全圧下率40%, 50%, 60%の3条件) もしくは5パス (同50%) の仕上圧延を施した。この間、圧延材は適宜炉内で保温し、各パスにおける圧延温度を一定に保った。各パスの圧下率は、圧下率40%の場合は20%−15%−10%、圧下率50%の場合は30%−20%−10%、圧下率60%の場合は30%−30%−15%、また50% (5パス) の場合は15%−15%−15%−10%−10%とした。
なお、図1のインバース強度比は、鋼板の板厚中央付近について測定したものである。また、図2のヤング率は、縦振動の共振法により測定したものであり、測定時の室温は20℃であった。
【0019】
発明者らは、この実験結果を基にして、さらに詳細な検討を進めたところ、このような効果を得るためには、Ar3変態点〜(Ar3変態点−100℃)の温度域で全圧下率(単に、「圧下率」と略記)にして50%以上とすればよいこと、また同時に、最終パスの圧下率を15%以下に抑制し、かつ圧延終了温度を(Ar3変態点−100℃)以上とすることが必要であることが明らかとなった。さらに、上記効果をより高め、Eを熱延鋼板は 160GPa 以下、冷延鋼板は 170GPa 以下とするためには、最終パスを除くパスの圧下率を30%/パス以下として、Ar3変態点以下での圧延パス数を5パス以上とする熱延条件を採用する必要があることも明らかとなった。
【0020】
上記条件で熱間圧延することにより、ヤング率の低減に有効な集合組織が発達する機構については、必ずしも明らかではないが、フェライト域で圧延することにより、圧延集合組織として、ND//<100> 、ND//<211> 、ND//<111> が発達するが、この圧延条件では、いずれの圧延集合組織においても再結晶を生じるほど歪みが蓄積しないために、回復の速いND//<100> 集合組織が他の集合組織を侵食して、ND//<100> 集合組織が優先的に形成するからであると考えられる。
【0021】
そして、熱間圧延条件を定めた理由は以下のように説明される。圧下率を規制する温度をAr3変態点〜(Ar3変態点−100 ℃)の範囲とするのは、Ar3変態点を超える温度で圧延すると、フェライト域での圧延とならないために、ND//<100> 集合組織が形成されないからであり、一方(Ar3変態点−100 ℃)を下回って圧延すると歪が蓄積し、その結果、とくに歪の蓄積しやすいND//<111> が優先的に再結晶, 成長するからである。また、この温度域での圧下率を50%以上とするのは、50%未満の圧下率では、結晶の回転が少なく、十分な量の集合組織が形成されないからである。
また、最終パスの圧下率を15%以下に抑制するのは、最終的な歪みの蓄積量にもっとも影響が大きいのは最終パスであり、このパスの圧下率をもっとも厳しく制限する必要があるからである。なお、終了温度を(Ar3変態点−100 ℃)以上とするのは、前述したND//<111> の方位粒の再結晶・成長を防止するためである。
【0022】
さらに、Ar3変態点以下での圧延において、最終パスを除くパスの圧下率を30%/パス以下として、パス数を5パス以上とするのは、これらの条件を外れると、ND//<100> 集合組織の形成が弱まるからである。
その機構として考えられるのは、これらの条件を外れると、熱延中の歪み蓄積が増して、1) <111>//NDの再結晶が促進されて、<100>//ND 集合組織が弱められること、2)蓄積した歪みそのものが結晶回転による集合組織の集積を阻害すること、が挙げられる。
【0023】
上述した理由により、Ar3以下の温度で、歪みの蓄積を回避するようにしつつ、Ar3〜(Ar3変態点−100 ℃)の温度域で50%以上の圧下率で圧延することにより、低ヤング率Eの達成に効果的な集合組織を効果的に形成することができるようになる。
【0024】
このようにして、熱延ままで、いったんND//<100> の集合組織が十分に発達すると、その後、この熱延板を、焼鈍して熱延焼鈍板としても、ND//<100> 集合組織が維持されることを確認した。また、その後、冷延−焼鈍、または、焼鈍−冷延−焼鈍を行っても、同様に、ND//<100> の集合組織が維持され、低ヤング率のままである。さらに、調質圧延(軽圧下率の圧延)はヤング率にほとんど影響を及ぼさないので、ヤング率を維持したまま、鋼板の降伏応力を高めることが可能である。
したがって、本発明鋼板は、熱延鋼板、熱延−焼鈍鋼板、(焼鈍)−冷延−焼鈍鋼板、(焼鈍)−冷延−焼鈍−調質鋼板などの鋼板すべてを含むものである。これら製造工程の個々の好適条件は、例えば、熱延−焼鈍鋼板においては、熱延後、ベル型炉で、 (Ac1-200℃) 〜(Ac1-100℃) の焼鈍、または連続炉で、(Ac1-150℃) 〜Ac1の焼鈍を行う。また、(焼鈍)−冷延−焼鈍鋼板においては、熱延後、ベル型炉で、 (Ac1-200℃) 〜(Ac1-100℃) の焼鈍、または連続炉で、(Ac1-150℃) 〜Ac1の焼鈍後、さらに、50〜90%の圧下率で冷間圧延を行い、引き続き、ベル型炉で、 (Ac1-200℃) 〜(Ac1-100℃) の再結晶焼鈍、または連続炉で(Ac1-150℃) 〜Ac1の再結晶焼鈍を行えば良い。この時、冷延前の焼鈍を省略することも可能である。また、 (焼鈍) −冷延−焼鈍−調質鋼板においては、 (焼鈍) −冷延−焼鈍鋼板の製造工程ののちに、30%以下の圧下率で調質圧延を行えば良い。
【0025】
以上、目標とするヤング率とこれを達成するための熱延条件について説明したが、本発明は、降伏比YR(=降伏応力/破断応力)が高い鋼板に適用すると、いっそう大きな効果が得られる。YR≧0.8 とした理由を以下に説明する。
塑性変形を生じるまでの弾性変形エネルギーは (YS)2/(2E)で表される。この式から明らかなように、弾性変形のエネルギーを大きくするためにはYSを高くすることが最も有効である。従来から、YSを高くするためには、一般に、スキンパスや焼き付け硬化といった処理が行われてきた。しかし、YRが0.8 以上の鋼板を、従来の手法を用いて、さらに高YSにすると、加工性や信頼性を著しく損なうことになる。
【0026】
これに対して、本発明による低ヤング率鋼板は、このようなYRが0.8 以上の鋼板であっても、前述の問題を生じることなく、弾性変形エネルギーを大きくすることができ、本発明の特徴が発揮される。このために、YRを0.8 以上とした。
なお、YRは、 (1)式と同様に、(降伏応力YSの平均)/(破断応力TSの平均)から求めたものとし、結果的に、次式で表されるものである。
YR=(YS0 +2YS45+YS90)/(TS0 +2TS45+TS90)
ただし、YS0 、YS45、YS90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向の降伏応力(MPa)
TS0 、TS45、TS90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向の破断応力(MPa)
なお、YR≧0.8 とする方法としては、前述したスキンパス圧延が良く知られている。また、固溶強化元素であるPやSiを添加することや、固溶C, 固溶N等を鋼中に存在させることも、YRを向上させるためには有効である。
【0027】
本発明において適用しうる、鋼板の成分組成は、加工用鋼板に必要な加工性を有するものであれば、基本的に、Ar3変態点〜(Ar3変態点−100 ℃)での熱間圧延時に、回復が十分に早く生じる成分であればよい。このため、以下の成分とするのがよい。
【0028】
C:0.10wt%以下
Cは、所定の強度を得るために、必要に応じて含有させるが、C量が0.1 wt%を超えると、熱間圧延時に蓄積される歪量が大きくなったり、Ar3温度が著しく低くなって、Ar3変態点以下で圧延することが困難になるために、上限を0.1 wt%とする。
【0029】
Si:1.0 wt%以下
Siは、所定の強度を得るために、また、脱酸元素として必要に応じて添加される。しかし、Si量が1.0 wt%を超えると、製品板の延性が著しく低下して加工が困難になるために、上限を1.0 wt%とする。
【0030】
Mn:1.0 wt%以下
Mnは、所定の強度を得るために、また、Sを固定して熱間加工性を向上させるために必要に応じて添加される。しかし、Mn量が1.0 wt%を超えると、Ar3温度が著しく低くなってフェライト域での圧延することが困難になるために、上限を1.0 wt%とする。
【0031】
P:0.15wt%以下
Pは、所定の強度を得るために、必要に応じて添加される。しかし、P含有量が0.15wt%を超えると製品板の延性が著しく低下して加工が困難になるために、上限を0.15wt%とする。
【0032】
S:0.02wt%以下
Sは、熱間加工性を低下させ、また、製品板の延性を低下させるために低いほど望ましいが、0.02wt%以下であれば許容できるため、上限を0.02wt%とする。
【0033】
Al:0.10wt%以下
Alは、脱酸元素として、また、Nを固定して製品板の延性を向上させるために、必要に応じて添加される。しかし、Al量が0.10wt%を超えると熱間圧延時に蓄積される歪量が大きくなるために、上限を0.10wt%とする。
【0034】
N:0.010 wt%以下
Nは、所定の強度を得るために必要に応じて添加されるが、N量が0.010 wt%を超えると延性が低下する。また、固溶Nが過剰とならない (あるいは存在しない) ように添加されるAl, Ti等の成分コストも増大する。したがって、0.010 wt%以下とする。
【0035】
Ti:0.50wt%以下
Tiは、C, N, Sを固定して熱間圧延時の歪の蓄積を抑制し、かつ製品板の延性を向上させるために添加される。しかし、Ti量が0.50wt%を超えると、熱間圧延時に蓄積される歪量が著しく大きくなるために、上限を0.50wt%とする。
【0036】
Nb:0.50wt%以下
Nbは、C, Nを固定して熱間圧延時の歪の蓄積を抑制し、かつ製品板の延性を向上させるために添加される。しかし、Nb量が0.50wt%を超えると、熱間圧延時に蓄積される歪量がむしろ著しく大きくなるために、上限を0.50wt%とする。
【0037】
V:0.50wt%以下
Vは、C, Nを固定して熱間圧延時の歪の蓄積を抑制し、かつ製品板の延性を向上させるために添加される。しかし、V量が0.50wt%を超えると熱間圧延時に蓄積される歪量がむしろ著しく大きくなるために、上限を0.50wt%とする。
【0038】
B:0.01wt%以下
Bは、二次加工脆性を改善するために、必要に応じて添加される。しかし、B量が0.01wt%を超えると熱間圧延時に蓄積される歪量が著しく大きくなるために、上限を0.01wt%とする。
【0039】
なお、上記の成分および製造条件により得られる鋼板は、フェライト相が主相 (体積比率で50%以上) となる。
【0040】
【実施例】
表1に示す組成になる鋼スラブを、表2に示す条件で熱間仕上げ圧延した。得られた熱延鋼板の一部から試験片を採取し、前述した方法と同様にして、ヤング率を測定した。測定時室温は15℃であった。
残りの熱延鋼板には、さらに以下の各種工程を施し、それぞれの工程を経た供試材を採取し、同様にヤング率を測定した。なお、調質圧延した場合のみYRおよび単位面積当たりの弾性変形エネルギーも求めた。
・熱間圧延−750 ℃×5hの焼鈍
・熱間圧延−75%の圧下率で冷延−850 ℃×40sec の焼鈍
・熱間圧延−750 ℃×5hの焼鈍−75%の圧下率で冷延−850 ℃×40sec の再結晶焼鈍
・熱間圧延−750 ℃×5hの焼鈍−75%の圧下率で冷延−850 ℃×40sec の再結晶焼鈍−圧下率5%の調質圧延
得られた試験結果を、まとめて表2に示す。
なお、各鋼種とも、体積比率で95%以上がフェライト相であった。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表2から、本発明に従って熱間仕上圧延した各種の鋼板は、いずれも、ヤング率Eが熱延鋼板では 160GPa 以下、冷延鋼板では 170GPa 以下となることが分かる。また、本発明に従って熱間仕上圧延した鋼板は、ヤング率Eが低いので、同じTSおよびYRの鋼板と比べて塑性変形が生じるまでの弾性エネルギーが高いことが分かる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による低ヤング率鋼板によれば、同じ降伏応力の鋼板で比較すると、塑性変形を生じるまでの弾性エネルギーが大きい、自動車の車体用として有用な、鋼板を提供できる。また、この低ヤング率鋼板は、小石が当たった時等でも、その外力を塑性変形なしに吸収することができる。さらに、ヤング率が低下することにより、共振周波数が低下し、防振範囲が広がることも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱延板のND//<100> の集合組織に及ぼす熱間仕上げ圧延における圧延温度と圧下率の影響を示すグラフである。
【図2】熱延板のヤング率に及ぼす熱間仕上げ圧延における圧延温度と圧下率の影響を示すグラフである。
Claims (8)
- C:0.10wt%以下、Si:1.0wt%以下、Mn:1.0wt%以下、P:0.15wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.10wt%以下、N:0.010wt%以下を含み、かつTi:0.50wt%以下、Nb:0.50wt%以下およびV:0.50wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相を主相とし、かつ下記(1)式で定義されるEが室温において160GPa以下であることを特徴とする加工用低ヤング率熱延鋼板。
記
E=(E0 +2E45+E90)/4 ・・・・・・ (1)
ただし、E0 、E45、E90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa) - C:0.10wt%以下、Si:1.0wt%以下、Mn:1.0wt%以下、P:0.15wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.10wt%以下、N:0.010wt%以下を含み、かつTi:0.50wt%以下、Nb:0.50wt%以下およびV:0.50wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相を主相とし、かつ下記(1)式で定義されるEが室温において160GPa以下、かつ下記(2)式で定義されるYRが0.8以上であることを特徴とする加工用低ヤング率熱延鋼板。
記
E=(E0 +2E45+E90)/4 ・・・・・・ (1)
ただし、E0 、E45、E90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa)
YR=(YS0 +2YS45+YS90)/(TS0 +2TS45+TS90) ・・・・・・ (2)
ただし、YS0 、YS45、YS90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向の降伏応力(MPa)
TS0 、TS45、TS90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に45°の方向、圧延方向に90°の方向の破断応力(MPa) - 請求項1または請求項2において、成分組成が、さらにB:0.01wt%以下を含有することを特徴とする加工用低ヤング率熱延鋼板。
- C: 0.10wt %以下、 Si : 1.0wt %以下、 Mn : 1.0wt %以下、P: 0.15wt %以下、S: 0.02wt %以下、 Al : 0.10wt %以下、N: 0.010wt %以下を含み、かつ Ti : 0.50wt %以下、 Nb : 0.50wt %以下およびV: 0.50wt %以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部は Fe および不可避的不純物からなり、フェライト相を主相とし、かつ下記 (1) 式で定義されるEが室温において 170GPa 以下であることを特徴とする加工用低ヤング率冷延鋼板。
記
E=(E 0 +2E 45 +E 90 )/4 ・・・・・・ (1)
ただし、E 0 、E 45 、E 90 は、それぞれ圧延方向、圧延方向に 45 °の方向、圧延方向に 90 °の方向のヤング率 (GPa) - C: 0.10wt %以下、 Si : 1.0wt %以下、 Mn : 1.0wt %以下、P: 0.15wt %以下、S: 0.02wt %以下、 Al : 0.10wt %以下、N: 0.010wt %以下を含み、かつ Ti : 0.50wt %以下、 Nb : 0.50wt %以下およびV: 0.50wt %以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部は Fe および不可避的不純物からなり、フェライト相を主相とし、かつ下記 (1) 式で定義されるEが室温において 170GPa 以下、かつ下記 (2) 式で定義されるYRが 0.8 以上であることを特徴とする加工用低ヤング率冷延鋼板。
記
E=(E 0 +2E 45 +E 90 )/4 ・・・・・・ (1)
ただし、E 0 、E 45 、E 90 は、それぞれ圧延方向、圧延方向に 45 °の方向、圧延方向に 90 °の方向のヤング率 (GPa)
YR=(YS 0 +2YS 45 +YS 90 )/(TS 0 +2TS 45 +TS 90 ) ・・・・・・ (2)
ただし、YS 0 、YS 45 、YS 90 は、それぞれ圧延方向、圧延方向に 45 °の方向、圧延方向に 90 °の方向の降伏応力 (MPa)
TS 0 、TS 45 、TS 90 は、それぞれ圧延方向、圧延方向に 45 °の方向、圧延方向に 90 °の方向の破断応力 (MPa) - 請求項4または請求項5において、成分組成が、さらにB: 0.01wt %以下を含有することを特徴とする加工用低ヤング率冷延鋼板。
- C:0.10wt%以下、Si:1.0wt%以下、Mn:1.0wt%以下、P:0.15wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.10wt%以下、N:0.010wt%以下を含み、かつTi:0.50wt%以下、Nb:0.50wt%以下およびV:0.50wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有する鋼素材を、Ar3変態点〜(Ar3変態点−100℃)の温度域における圧下率が50%以上、最終パスの圧下率が15%以下、かつ終了温度が(Ar3変態点−100℃)以上、さらに、A r 3 変態点以下の最終パスを除くパスの圧下率が 30 %/パス以下、圧延パス数が5パス以上となるように熱間圧延することを特徴とする、加工用低ヤング率熱延鋼板の製造方法。
- 請求項7に記載の熱延鋼板を冷間圧延し、再結晶焼鈍を施すことを特徴とする、加工用低ヤング率冷延鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP05496898A JP3965760B2 (ja) | 1998-03-06 | 1998-03-06 | 加工用低ヤング率鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP05496898A JP3965760B2 (ja) | 1998-03-06 | 1998-03-06 | 加工用低ヤング率鋼板およびその製造方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH11256265A JPH11256265A (ja) | 1999-09-21 |
| JP3965760B2 true JP3965760B2 (ja) | 2007-08-29 |
Family
ID=12985471
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP05496898A Expired - Fee Related JP3965760B2 (ja) | 1998-03-06 | 1998-03-06 | 加工用低ヤング率鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3965760B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP5257387B2 (ja) * | 2010-03-15 | 2013-08-07 | 住友大阪セメント株式会社 | 光素子用基板の製造方法 |
-
1998
- 1998-03-06 JP JP05496898A patent/JP3965760B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH11256265A (ja) | 1999-09-21 |
Similar Documents
| Publication | Publication Date | Title |
|---|---|---|
| JP4071948B2 (ja) | 高予歪み時において高い焼付け硬化能を持つ高強度鋼板及びその製造方法 | |
| KR101030207B1 (ko) | 냉연 강판 및 그 제조 방법, 전지 및 그 제조 방법 | |
| KR20170107057A (ko) | 고강도 냉연 강판 및 그의 제조 방법 | |
| EP0475096B1 (en) | High strength steel sheet adapted for press forming and method of producing the same | |
| JP2010121162A (ja) | Ni節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法並びにスラブおよび熱延鋼板 | |
| JP3572894B2 (ja) | 耐衝突特性と成形性に優れる複合組織熱延鋼板およびその製造方法 | |
| JP2011052295A (ja) | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 | |
| JP3858770B2 (ja) | 高張力熱延鋼板およびその製造方法 | |
| JP5729213B2 (ja) | 熱間プレス部材の製造方法 | |
| JP5302840B2 (ja) | 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板 | |
| US11186900B2 (en) | High-strength cold rolled steel sheet and method for manufacturing the same | |
| JP3603726B2 (ja) | 電子機器部品用オーステナイト系ステンレス鋼板 | |
| JP3965760B2 (ja) | 加工用低ヤング率鋼板およびその製造方法 | |
| JP3674502B2 (ja) | 焼付け硬化型冷延鋼板およびその製造方法 | |
| EP3572546A1 (en) | High-strength cold-rolled steel sheet and method for manufacturing same | |
| JP3299287B2 (ja) | 成形加工用高強度鋼板とその製造方法 | |
| JPH07118805A (ja) | 加工性に優れた2相系ステンレス鋼およびその加工方法 | |
| JP4132582B2 (ja) | 成形性と張り剛性に優れた低炭素冷延鋼板およびその製造方法 | |
| JP4342061B2 (ja) | フレーム用フェライト系ステンレス鋼材およびその製造方法 | |
| JP3911075B2 (ja) | 焼付硬化性に優れる超深絞り用鋼板の製造方法 | |
| JP4286700B2 (ja) | 高強度・高靭性非調質鋼 | |
| JP4319940B2 (ja) | 加工性と、焼入れ性、熱処理後の靭性の優れた高炭素鋼板 | |
| JP3606135B2 (ja) | ばね用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法 | |
| JP3596045B2 (ja) | 成形性に優れる焼付硬化型冷延鋼板の製造方法 | |
| JP4042897B2 (ja) | ブラウン管フレーム用鋼板 |
Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040305 |
|
| A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040323 |
|
| A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040514 |
|
| A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050308 |
|
| A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050427 |
|
| TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
| A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070508 |
|
| A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070521 |
|
| R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110608 Year of fee payment: 4 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120608 Year of fee payment: 5 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120608 Year of fee payment: 5 |
|
| FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130608 Year of fee payment: 6 |
|
| LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |
