JP3995532B2 - 緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法 - Google Patents

緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式紡糸によって、力学特性、耐熱性等の良好なメタフェニレンイソフタルアミド骨格を主たる成分とするメタ型全芳香族ポリアミド繊維を高い生産性で製造する方法およびその方法によって得られる実質的に塩類を含まないメタ型全芳香族ポリアミド繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジクロリドとから製造される全芳香族ポリアミドが耐熱性に優れかつ難燃性に優れることは従来周知であり、また、これらの全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に可溶であって、これらの重合体溶液から乾式紡糸、湿式紡糸、半乾半湿式紡糸等の方法によって繊維となし得ることも良く知られている。
【0003】
かかる全芳香族ポリアミドのうち、ポリメタフェニレンイソフタルアミドで代表されるメタ型全芳香族ポリアミド(以下「メタアラミド」と略称することがある)の繊維は、耐熱・難燃性繊維として特に有用なものであり、かかるメタアラミド繊維は、現在、主に次の(イ)(ロ)の2つの方法によって工業的な生産が行われていると言われており、さらに、これ以外にもメタアラミド繊維の製造法として、次の(ハ)〜(ヘ)のような方法が提案されている。
【0004】
(イ)メタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロライドとをN,N−ジメチルアセトアミド中で低温溶液重合させることによってポリメタフェニレンイソフタルアミド溶液を調製し、しかる後、該溶液中に副生した塩酸を水酸化カルシウムで中和して得た塩化カルシウムを含む重合体溶液を、乾式紡糸することによりポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造する方法(特公昭35−14399号公報、米国特許第3360595号明細書参照)。
【0005】
(ロ)メタフェニレンジアミン塩とイソフタル酸クロライドとを含む生成ポリアミドの良溶媒ではない有機溶剤系(例えばテトラヒドロフラン)と無機の酸受容剤ならびに可溶性中性塩を含む水溶液系とを接触させることによってポリメタフェニレンイソフタラルアミド重合体の粉末を単離し(特公昭47−10863号公報参照)、この重合体粉末をアミド系溶媒に再溶解した後、無機塩含有水性凝固浴中に湿式紡糸する方法(特公昭48−17551号公報参照)。
【0006】
(ハ)溶液重合法で合成・単離したメタアラミドをアミド系溶媒に溶解した、無機塩を含まないかまたは僅かな量(2〜3%)の塩化リチウムを含むメタアラミド溶液から、湿式成形法によって繊維等の成形物を製造する方法(特開昭50−52167号公報参照)。
【0007】
(ニ)アミド系溶媒中で溶液重合し、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等で中和して生成した塩化カルシウムと水とを含むメタアラミド重合体溶液を、オリフィスから気体中に押し出して、気体中を通過せしめた後、水性凝固浴に導入し、次いで、塩化カルシウム等の無機塩水溶液中を通過せしめて糸条物に成形する方法(特開昭56−31009号公報参照)。
【0008】
(ホ)アミド系溶媒中で溶液重合し、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等で中和して生成した塩化カルシウムと水とを含むメタアラミド重合体溶液を、オリフィスから、塩化カルシウムを高濃度に含む水性凝固浴中に紡出せしめて糸条物に成形する方法(特開平8−074121号公報、特開平10−88421号公報等参照)。
【0009】
(ヘ)メタアラミドの無機塩を含有するアミド系溶媒溶液を高温の紡糸筒に吐出し、紡糸筒から出た直後に低温の水性溶液で冷却して膨潤させ、これを可塑化塩を含有する水性延伸浴中で延伸することにより、非常に微細な気孔を多数有する密度1.3g/cm3未満の易染性多孔質繊維を製造する方法(特公昭52−43930号公報参照)。
【0010】
上記(イ)の方法は、重合体を単離せずに紡糸用の重合体溶液(紡糸原液)を調製できる利点はあるが、沸点の高いアミド系溶媒を用いる乾式紡糸のため、製造上のエネルギーコストが高く、しかも紡糸口金当たりの孔数を増大すると紡糸安定性が急速に低下する。また、この重合体溶液を水性凝固浴中に湿式紡糸しようとしても失透の多い弱い繊維しか得られないことが多いため、未だに溶液重合によるメタアラミド重合体溶液を水性凝固浴を用いて湿式紡糸する方法は、多くの困難があると考えられており、工業的に実施されていない。一方、(ロ)(ハ)の方法は、上述した乾式紡糸の問題は回避されるが、重合系と紡糸系とで溶媒が異なること、一度単離された重合体を再溶解するための工程を要すること、再溶解して安定な溶液を得るには特別の配慮と細心の工程管理が要求されることが問題となる(特公昭48−4661号公報参照)。また、(ニ)の方法では、紡糸口金から空気中に紡糸する場合、口金当たりの孔数を増大すると紡糸安定性が著しく低下するため、生産性が低く効率的でない。さらに、(ホ)の方法は、良好な物性の繊維を与えるものの、紡糸速度を上げることが困難であるため、生産性に問題がある。(ヘ)の方法は密度が1.3g/cm3よりかなり小さい多孔質繊維を製造する方法であるが、これは乾式紡糸法の応用的な技術であり、乾式紡糸法と同様の問題点を有する。
【0011】
また、メタアラミド繊維はその耐熱性、絶縁性から電子材料として用いられているが、電子材料として用いるためにはイオン性物質等のコンタミネーションを極力減らすことが求められており、できれば無機イオン性物質を全く含まないことが好ましい。しかし、これまでに知られている製造法では、紡糸過程において、紡糸原液や凝固浴中に塩化カルシウム、塩化リチウム等ポリマードープに対しても非常に親和性が高く、溶解しやすい塩類をかなり高い濃度で含むことが必須であり、そのために製造した繊維中に多量の塩類を含むことは避けられない。そして繊維中に残存する塩類を取り除くには大規模な水洗工程を設ける必要があり、それでも繊維の塩類を完全に取り除くことは不可能であった。
【0012】
このような問題を改善する手段として、特開2001−303365号公報には、(ロ)と同方法で得たメタフェニレンイソフタルアミドを主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解してなる、塩類を実質的に含まない重合体溶液を、アミド系溶媒と水とからなり、かつ塩類を実質的に含まない凝固浴中に吐出して多孔質の線状体として凝固せしめ、続いて、これをアミド系溶媒の水性溶液からなる可塑延伸浴中にて延伸し、水洗後、熱処理して塩類(無機イオン性物質)が実質的に含まれていない緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維を製造する方法が、また、特開2001−348726号公報には、同じく多孔質の線状体として凝固せしめ、続いて、これをそのままかもしくは可塑液を含浸させた後に空気中で加熱延伸し、次いで一旦乾燥させることなく100〜200℃の低温で加熱処理した後さらに250〜400℃の高温で熱処理する方法が提案されている。
【0013】
確かにこれらの方法は、塩類を実質的に含まないメタアラミド繊維を得る方法として優れてはいるものの、十分な配向および結晶化が行なわれていないためと考えられ、十分な繊維物性が得られず、特に熱収縮安定性に劣るものしか得られず、工業的生産方法としては有用ではない。
【0014】
このように、繊維物性を満足し、しかも塩類を全く含まないメタアラミド繊維を、実質工業的生産レベルで製造し得る方法は、未だ提案されていないのが実状である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主たる目的は、力学特性、熱的性質の良好な塩類を含まないメタアラミド繊維を実質工業生産レベルにて有利に生産し得る新規な方法を提供することにある。本発明の他の目的は、実質的に塩類を含有しない緻密かつ熱収縮安定性に優れるメタアラミド繊維を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の本発明の主たる目的は、メタフェニレンイソフタルアミド骨格を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解しているメタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液を湿式紡糸することによりメタ型全芳香族ポリアミド繊維を製造する方法において、(1)紡糸原液として塩類を実質的に含まない重合体溶液を用い、これを紡糸口金からアミド系溶媒と水とからなりかつ塩類を実質的に含まない温度(T1)が20〜70℃の凝固浴中に吐出して、多孔質の線状体として凝固せしめ、(2)アミド系溶媒の水性溶液からなる、温度(T2)が(T1+5℃)〜90℃の可塑浴中に浸漬して、繊維中の含水率および含アミド系溶媒率が下記式(a)および(b)を満足するように調整した後、(3)アミド系溶媒の水性溶液からなる可塑延伸浴中にて延伸し、(4)次いで、水あるいはアミド系溶媒を含んだ水にて洗浄し、(5)これを温度100〜250℃で熱処理した後、(6)さらに温度270〜400℃で熱処理することを特徴とする緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法により達成できることが見いされた。
(a)0.3≦N/(P+N)≦0.7
(b)0≦W/(P+W)≦0.3
但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
【0018】
この際、上記紡糸工程(1)において凝固浴をアミド系溶媒と水との組成が重量比にして40/60〜70/30とすると共に上記工程(2)において可塑浴をアミド系溶媒と水との組成が重量比にして40/60〜70/30となし、上記可塑延伸工程(3)においてアミド系溶媒と水の組成が重量比で20/80〜70/30であり温度が20〜90℃である延伸浴を用いて1.5倍〜10倍の範囲で延伸すると共に上記洗浄工程(4)において繊維中の含水率および含アミド系溶媒率が下記(c)および(d)を満足するように調整し、
(c)0.3≦N/(P+N)≦0.7
(d)0.4≦W/(P+W)≦0.7
あるいは、上記可塑延伸工程(3)においてアミド系溶媒と水の組成が重量比で20/80〜70/30であり温度が20〜90℃である延伸浴を用いて1.5倍〜10倍の範囲で延伸すると共に上記洗浄工程(4)において繊維中の含水率および含アミド系溶媒率が下記(e)および(f)を満足するように調整し、
(e)0.1≦N/(P+N)≦0.3
(f)0.4≦W/(P+W)≦0.7
再度、水またはアミド系溶媒の組成が重量比で0/100〜40/60であり温度が20〜100℃である可塑延伸浴中にて1.0〜3倍に再延伸する工程と、水またはアミド系溶媒の水性溶液にて洗浄した後に温度100〜250℃で再熱処理する工程とをとうした後に上記工程(6)で熱処理することによって、特に良好な物性を有し塩類を実質的に含まない緻密かつ熱収縮安定性に優れるメタアラミド繊維を良好な生産性で製造することができる。
【0019】
そして、このような方法により、300℃乾熱収縮率が5%以下で、さらに好ましくは繊維の密度が1.2g/cm3より大(好ましくは1.3g/cm3以上)、繊維中の全無機イオン性物質の含有量が500ppm以下、カルシウム濃度が100ppm以下、塩化物の濃度が150ppm以下であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を容易に製造することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、メタフェニレンイソフタルアミド骨格を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドを含むアミド系溶媒からなる重合体溶液を湿式紡糸することにより実質的に塩類を含まない緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維を製造する方法であって、以下に詳述する特定の工程(1)〜(6)の工程を順次行うことによって、実質的に塩類を含まない緻密かつ熱安定性に優れるメタ型全芳香族ポリアミド繊維が製造される。
【0021】
以下、順を追って、詳細に説明する。
本発明において使用されるメタ型全芳香族ポリアミドは、メタフェニレンイソフタルアミドを主骨格とするものであり、その製造方法は特に限定されず、例えば、メタ型芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
【0022】
かかる原料の一つであるメタ型芳香族ジアミンとしては、主として下記式で示されるジアミンが使用される。
【0023】
【化1】
Figure 0003995532
【0024】
かかるメタ型芳香族ジアミンの具体例としては、メタフェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、2,4−ジアミノクロルベンゼン、2,6−ジアミノクロルベンゼン等が挙げられる。その他のメタ型芳香族ジアミンとしては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0025】
本発明では、なかでも、メタフェニレンジアミンまたはこれを主体とする混合ジアミンが好ましい。メタフェニレンジアミンと併用する他の芳香族ジアミンとしては、上記のメタ型芳香族ジアミンのほかにパラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノクロルベンゼン、2,5−ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジン等のようなベンゼン誘導体、1,5−ナフチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニケトン、ビス(アミノフェニル)フェニルアミン、ビス(パラアミノフェニル)メタン等が用いられる。
【0026】
溶解性の良い重合体が望まれる場合には、このような他の芳香族ジアミンは全体の20モル%程度まで使用可能であるが、高結晶性の重合体が望まれる場合には、メタフェニレンジアミンが90モル%以上、特に95モル%以上含まれることが好ましい。
【0027】
一方、本発明で使用する芳香族ジカルボン酸クロライドは、イソフタル酸クロライドまたはこれを主体とする芳香族ジカルボン酸クロライドである。イソフタル酸クロライドと併用し得る他の芳香族ジカルボン酸クロライドとしては、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、5−クロルイソフタル酸クロライド、5−メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテル等が挙げられる。
【0028】
本発明の実施に当たって、溶解性の良好な重合体が望まれる場合は、これらの他の芳香族ジカルボン酸の高率(20モル%程度まで)混合も可能であるが、高結晶性の重合体が望まれる場合は、イソフタル酸クロライドが90モル%以上、特に95モル%以上含まれることが好ましい。
【0029】
上記のメタ型全芳香族ポリアミドの中でも、全ポリマー繰返し単位の90〜100モル%がメタフェニレンイソフタルアミド単位である重合体であって、塩類を実質的に含まないものが好適に使用される。
【0030】
本発明においては、上記メタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解しており、かつ塩類(無機イオン性物質)を実質的に含まない重合体溶液を、後述する工程に供給する。かかる重合体溶液は、上記溶液重合等で得られたメタ型全芳香族ポリアミドを含むアミド系溶媒溶液から塩類を除去したものを用いてもよいし、上記溶液重合、界面重合等で得られたメタ型全芳香族ポリアミドを含む溶液から該メタ型全芳香族ポリアミドを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用いてもよい。ここで「塩類を実質的に含まない」とは、重合体溶液中の塩類の合計量が0.1重量%未満であることを意味し、ごく少量の塩類が含有することは許容されるが、その量は少なければ少ない方がよく0〜0.01重量%であることが好ましい。
【0031】
ここで用いられるアミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等を例示することができるが、特に、溶液重合から湿式紡糸工程に至るまでの重合体溶液の安定性等から、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0032】
本発明において紡糸原液に用いる重合体溶液は、水を含んでいてもよい。このような水は必要に応じて添加することもあるが、溶液調製プロセスで必然的に生成するものであってもかまわない。その濃度としては、溶液が安定に存在する範囲であるならばいかなる濃度でもかまわないが、例えばポリマー重量に対して0〜60重量%の範囲で添加、含有されるのが通常好ましく、特に15重量%以下であることが好ましい。これを超える濃度では、ポリマー溶液の安定性が損なわれ、ポリマーの析出、ゲル化によって紡糸性が著しく損なわれることがある。
【0033】
本発明において、重合体溶液を凝固浴中に吐出する場合、紡糸口金としては多ホールのものを用いることができる。実用上ホール数の上限は約50000ホールであり、好ましくは300〜30000ホール、特に3000〜10000ホールの紡糸口金が使用される。
【0034】
本発明における凝固浴は、塩類を実質的に含まず、アミド系溶媒と水(H2O)との2成分から実質的になる水溶液で構成される。この凝固浴組成において、アミド系溶媒としてはメタアラミドを溶解し、水と良好に混和するものであれば好適に用いることができるが、特に、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン等を好適に用いることができる。溶媒の回収等を考慮すれば、紡糸原液中のアミド系溶媒と同じ種類のものを使用するのが好ましい。
【0035】
アミド系溶媒と水との最適な混合比は、重合体溶液の条件によっても若干変化するが、凝固浴液中のアミド系溶媒の濃度が40〜70重量%、特に50〜65重量%の範囲であることが好ましい。アミド系溶媒の濃度がこの範囲を下回る条件では、糸中に非常に大きなボイドが生じやすくなり、その後の糸切れの原因となりやすい。一方、この範囲を上回る条件では、凝固が進まず、糸条物同士の融着が起こりやすくなる。
【0036】
凝固浴の温度(T1)は凝固液組成と密接な関係があるが、一般的には高温である方が、生成糸条物中にフィンガーとよばれる粗大な気泡上の空孔ができ難くなるので好ましい。しかし凝固液濃度が高い場合には、あまり高温にすると糸条物同士の融着が激しくなるので、凝固浴の好適な温度は20〜70℃であり、より好ましくは40〜65℃の範囲である。
【0037】
凝固液は、実質的にアミド系溶媒と水だけで構成されることが好ましいが、これ以外に塩類が少量含まれていても差し支えない。特に、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等の塩類は、微量残存しているポリマー溶液中から抽出されてくることがあるが、これは多孔凝固に対して何らこれを阻害することはなく、例えば凝固液に対し10重量%以下、特に1重量%以下の低濃度であれば塩類が含まれていても問題はない。したがって、塩類の好適濃度は凝固液に対し0〜10重量%の範囲である。凝固浴中での糸条物の浸漬時間は0.1〜30秒が好ましい。浸漬時間が短かすぎると糸条物の形成が不十分となり断糸が発生するおそれがある。
【0038】
次に、本発明における可塑浴は、前記凝固浴と同じく塩類を実質的に含まず、アミド系溶媒と水(H2O)との2成分から実質的になる水溶液で構成される。アミド系溶媒と水との最適な混合比は、多孔質線状体の条件によっても若干変化するが、可塑浴中のアミド系溶媒の濃度が40〜70重量%、特に50〜65重量%の範囲であることが好ましい。一方可塑浴の温度(T2)は、(T1+5)℃〜90℃の範囲とする必要があり、この温度範囲とすることにより、多孔質線状体中のアミド化合物溶媒重量と水分重量を増加せしめて、より均質な多孔質の繊維を形成することができる。この温度がT1+5℃未満である場合には、可塑浴に浸漬してもアミド化合物溶媒重量と水分重量を十分増加させることができず、多孔内に凝固液を含んだ凝固糸と差がなくなる。一方T2が90℃を超える場合には、糸条物同士の融着が激しくなったり、部分的に再溶解して単糸切れを生じるので好ましくない。
【0039】
可塑液も凝固液と同じく、実質的にアミド系溶媒と水だけで構成されることが好ましいが、これ以外に塩類が少量含まれていても差し支えない。例えば可塑液に対し10重量%以下、特に1重量%以下の低濃度であれば塩類が含まれていても問題はない。したがって、塩類の好適濃度は可塑液に対し0〜10重量%の範囲である。可塑浴中での糸条物の浸漬時間は0.1〜30秒が好ましい。浸漬時間が短かすぎるとアミド系溶媒重量と水分重量とを十分増加させることができず、多孔内に凝固液を含んだ凝固糸と差がなくなる。
【0040】
本発明においては、上記可塑浴中への浸漬の工程を経た繊維は、その含水率および含アミド系溶媒率が下記式(a)および(b)を満足するように調整する必要があり、かくすることにより、より均質な多孔質の繊維を形成することができる。
(a)0.3≦N/(P+N)≦0.7、好ましくは0.45≦N/(P+N)≦0.65
(b)0.1≦W/(P+W)≦0.3、好ましくは0.15≦W/(P+W)≦0.25
但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
【0041】
このようにして、繊維中のアミド系溶媒率および含水率が調整された多孔質の線状体は、アミド系溶媒の水性溶液中で可塑延伸する必要がある。ここで用いられるアミド系溶媒としては、メタ型全芳香族ポリアミドを膨潤させ、水と良好に混和するものであればよいが、特にN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン等は好適に用いることができる。またさらに好適には、凝固浴に用いたものと同じ溶媒を用いることが好ましい。凝固浴と同種の溶媒を用いれば、回収工程が簡略化され、経済的に有益である。
【0042】
すなわち、重合体溶液、凝固浴、可塑浴および可塑延伸浴中のアミド系溶媒はすべて同種のものを使用するのが好ましく、かかる溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドを単独で使用するかまたは2種以上を併用することが好都合である。
【0043】
可塑延伸浴の組成と温度とはそれぞれ密接な関係にあるが、まず第1段目の可塑延伸では、該可塑延伸浴中のアミド系溶媒の濃度は20〜70重量%、温度は20〜90℃の範囲が好適に用いられる。この範囲より低い領域では可塑化が十分に進まず、十分な延伸倍率をとることが困難であり、これを上回る範囲では糸の表面が溶解して融着しやすく良好な紡糸が困難になることが多い。
【0044】
可塑延伸は、通常1.5〜10倍、好ましくは2〜10倍の倍率で延伸するが、特に2.1〜6.0倍の倍率で延伸することがより好ましい。このように高倍率に延伸をかけることにより、メタアラミド繊維の強度、弾性率が向上し良好な物性を示すようになると同時に、多孔構造の孔が引きつぶされ、後述する可塑延伸後に行われる熱処理による緻密化が良好に進行するようになる。但し、極端に高倍率に延伸した場合には、工程の調子が悪化して良好な製糸が困難になる。
【0045】
上記可塑延伸浴の工程を経た浴上がりの繊維は、水あるいはアミド系溶媒の水性溶液にて洗浄するが、洗浄後そのまま後述する熱処理に供する場合には、その繊維中の含水率および含アミド系溶媒率を、下記式(c)および(d)を満足するように調整することが好ましい。
(c)0.3≦N/(P+N)≦0.7、好ましくは0.35≦N/(P+N)≦0.65
(d)0.4≦W/(P+W)≦0.7、好ましくは0.45≦W/(P+W)≦0.65
但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
【0046】
含水率および含アミド系溶媒率を上記範囲に調整することにより、引続いて施される100〜250℃の温度範囲での熱処理において、該熱処理時のポリマーの流動性が向上する。そして、引続きアミド系溶媒が蒸発して繊維から脱却する際に、配向および結晶化が促進されると考えられる。また、適量の水とアミド系溶媒とが共存することにより、これらが共沸してアミド系溶媒の蒸発を促進するものと考えられる。
【0047】
ここでN/(P+N)が0.3未満であると、この熱処理時のポリマー流動性向上効果が小さく、良好な繊維物性は得難くなる。一方0.7を超えると、アミド化合物溶媒の蒸発に時間がかかり生産性およびエネルギー的に不利であり、また繊維の着色も起こりやすくなる。また、W/(P+W)が0.4未満であると、熱処理時に繊維同士が融着して繊維物性の低下を招く懸念があり、一方0.7を超えると、水の蒸発に時間がかかり生産性およびエネルギー的に不利である。
【0048】
なお、含水率および含アミド系溶媒率を上記範囲に調整する方法としては、可塑延伸後に10〜70℃の水浴あるいは10〜40℃のアミド系溶媒/水の混合浴等を通過させ、浸漬長を糸掛けターン数により調整するなどして容易に行なうことができる。
【0049】
本発明においては、可塑延伸・洗浄された繊維は、(5)の熱処理工程の後に第2段の可塑延伸を施しても構わない。その際には、水あるいはアミド系溶媒の水性溶液にて洗浄後の繊維中の含水率および含アミド系溶媒率は、下記式(e)および(f)を満足するように調整することが好ましい。
(e)0.1≦N/(P+N)≦0.3、好ましくは0.15≦N/(P+N)≦0.25
(f)0.4≦W/(P+W)≦0.7、好ましくは0.45≦W/(P+W)≦0.65
但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
【0050】
含水率および含アミド系溶媒率を上記範囲に調整することにより、引続いて施される100〜250℃での熱処理において、該熱処理時のポリマーの流動性が適度に向上し、配向は進むが結晶化は抑制されて、繊維の緻密化が促進されるものと考えられる。
【0051】
なお、含水率および含アミド系溶媒率を上記範囲に調整する方法としては、第1段目の可塑延伸後に10〜70℃の水浴あるいは10〜40℃のアミド系溶媒/水の混合浴等を通過させ、浸漬長を糸掛けターン数により調整するなどして容易に行なうことができる。
【0052】
このように繊維中の含水率および含アミド化合物溶媒率が調整された繊維は、加熱ローラ、加熱板、熱風等によって一旦100〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度範囲にて熱処理された後に第2段の可塑延伸される。
【0053】
なお、先述のN/(P+N)が0.1未満であると、この熱処理時のポリマー流動性向上への効果が不十分となり、繊維の緻密化が不十分となって良好な繊維物性が得ることが困難になる。一方0.3を超えると、熱処理時の結晶化が進みやすくなると同時に繊維の密着も発生しやすくなるため、同じく良好な繊維物性を得ることが困難になる。また、W/(P+W)が0.4未満であると、熱処理時にポリマーの流動性が低下して繊維の緻密化が不十分となり、繊維物性の低下を招く懸念がある。一方0.7を超えると、水の蒸発に時間がかかり生産性およびエネルギー的に不利である。
【0054】
この第2段の可塑延伸浴の組成と温度も、第1段の可塑延伸と同じく密接な関係にあるが、アミド系溶媒の濃度は低めの0〜40重量%、温度は20〜100℃の範囲が好適に用いられる。アミド系溶媒の濃度や温度が高くなりすぎると、繊維の配向が不十分となって繊維物性が低下しやすい。延伸倍率は、1倍〜3倍、好ましくは1〜2倍の範囲が適当であるが、特に1.0〜1.5倍が好ましい。第2段目以後の延伸工程を加える多段延伸とすることにより、メタアラミド繊維の強度、弾性率がさらに向上し良好な物性を示すようになる。
【0055】
このように1段または2段以上に多段の可塑延伸された繊維は、工程(4)の水またはアミド系溶媒の水性溶液で洗浄した後に、工程(5)の加熱ローラ、加熱板、熱風等によって一旦100〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度範囲にて熱処理、好ましくは乾熱処理が施される。
【0056】
続いて施される工程(6)の温度270〜400℃下の熱処理は、その処理温度と繊維密度とには密接な関係があり、好ましくは300〜370℃の温度で処理する。400℃を超える高温の処理では糸が激しく劣化し、着色し、場合によっては断糸する場合がある。一方270℃を下回る温度では十分に緻密化することができず、所望の繊維物性を発現することが困難となる。なお、ここでいう処理温度は熱板、加熱ローラ等の加熱手段の設定温度をいい、乾熱処理が特に好ましい。
【0057】
このときの延伸倍率は、弾性率、強度の発現に密接な関係を有し、必要に応じて任意の倍率をとることができるが、通常、0.7〜3.0倍、特に1.0〜2.7倍の範囲に設定することで、良好な熱延伸性と、強度、弾性率の発現が得られる。なお、ここで延伸倍率0.7倍とは糸条が熱処理によって処理前の原長の30%収縮することを意味し、本発明の熱処理は処理時に一定範囲内の制限収縮熱処理であっても差し支えないことを意味する。熱処理の延伸倍率は上述した可塑延伸の倍率を考慮して選定するのが好ましく、糸条物の緻密化と物性の発現、安定した製糸性の実現の観点から、可塑延伸および熱延伸を含めた全延伸倍率が3.0〜12倍となるようにすること、さらには2.5〜6倍となるように設定すること、がより好ましい。本発明によるメタアラミド繊維は、延伸性がよく、可塑延伸や熱延伸時に断糸や毛羽の発生をともなうことなく円滑に高倍率まで延伸することができる。
【0058】
さらに、このようにして製造された繊維は、必要に応じて捲縮加工が施され、適当な繊維長に切断され、紡績その他の次工程に提供される。
【0059】
以上のごとき本発明によるメタ型全芳香族ポリアミド(メタアラミド)繊維は、通常のメタアラミド繊維と同様の緻密な構造を有し、300℃乾熱収縮率が5%以下といった熱安定性に優れた特性を有する。また、繊維の密度が1.2g/cm3より大で、好ましくは1.3g/cm3以上で、かつ繊維中の塩類の含有量が極めて小さく、繊維中の塩類の量が無機イオン性物質の全含有量にして500ppm以下、好ましくは300ppm以下のものを容易に得ることができる。さらに、好ましい態様では、繊維物性や耐熱性、後加工性への悪影響が懸念される繊維中のカルシウム濃度が0〜100ppmであり、また電気絶縁性等の電気特性に悪影響を及ぼす繊維中の塩化物の濃度が0〜150ppmであるという利点を有する。
【0060】
以上のごとき本発明によるメタ型全芳香族ポリアミド(メタアラミド)繊維は、その耐熱性、耐炎性、力学特性を生かした各種の用途に応用することができ、特にイオン性物質の混入を嫌う用途には好適に用いることができる。例えば、単独あるいは他の繊維と組み合わせ、織編物にして消防服、防護服等の耐熱耐炎衣料、耐炎性の寝具、インテリア材料として有用であり、特に不織布としてフィルター等各種工業材料、あるいは合成紙、複合材料の原料として有効に使用することができるほか、イオン性物質の含有量がきわめて少ないため、織編物、不織布、合成紙等として電気絶縁材料、電子機器用部品、プリント配線基板等の分野で特に有効である。
【0061】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例及び比較例中、還元粘度(I.V.)は、重合体溶液から芳香族ポリアミドポリマーを単離して乾燥した後、濃硫酸中、ポリマー濃度100mg/100ml硫酸で30℃において測定した値である。また、「部」及び「%」は特に断らない限りすべて重量に基づくものであり、量比は特に断らない限り重量比を示す。さらに、紡糸に用いる重合体溶液(紡糸原液)における重合体濃度(PN濃度)は、全重量部に対する重合体の重量%、すなわち{重合体/(重合体+溶媒+その他)}100(%)である。
【0062】
また、凝固により得られた多孔質の線状体の密度は、ASTM D2130にしたがって測定した繊維径と繊度から算出した。
【0063】
得られた繊維中の金属濃度は、アルカリ金属については原子吸光法を用いて、その他の金属イオン濃度はICPを用いて定量を行なった。また、塩化物の濃度はドーマン微量電量滴定法により定量した。
得られた繊維の300℃乾熱収縮率は、以下の方法により測定した。すなわち、3300dtex(3000デニール)のトウに98cN(100g)の荷重を吊るし、30cm離れた箇所に印をつける。荷重を除去後、トウを300℃雰囲気下に15分間置いた後の印間長Lを測定する。(30−L)/30×100の値を300℃乾熱収縮率(%)とした。
【0064】
100〜250℃熱処理前の繊維中のポリマー重量率P、アミド系溶媒重量率N、水分重量率Wは、以下の方法により測定した。
100〜250℃熱処理前の繊維を遠心分離機(回転数5000rpm)に10分かけ、このときの繊維重量M1を測定する。この繊維をメタノール中で4時間煮沸し、繊維中のアミド化合物溶媒および水を抽出する。抽出後の繊維と抽出液の全重量M2を測定する。また抽出後の繊維を取出して105℃雰囲気下で乾燥させ、乾燥後の繊維重量を測定し、これをP1とする。抽出液中のアミド化合物溶媒重量濃度C(%)を、ガスクロマトグラフにより求める。これらより、N1=(M2−P1)×C/100、W1=M1−P1−N1を算出し、ついで、次式よりP、N、Wを算出する。
P=P1/(P1+N1+W1)×100
N=N1/(P1+N1+W1)×100
W=W1/(P1+N1+W1)×100
【0065】
[実施例1]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造したI.V.=1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末21.5重量部を、−10℃に冷却したN−メチル−2−ピロリドン78.5重量部中に懸濁させ、スラリー状にした後、60℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液Aを得た。なお、上記ポリマー粉末の無機イオン濃度は、Na:730ppm、K:8.8ppm、Ca:5ppm、Fe:2.3ppmであった。また、上記ポリマー溶液のポリマー濃度は21.5%であった。
【0066】
ポリマー溶液Aを紡糸原液として、孔径0.07mm、孔数5000の紡糸口金より浴温度50℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴は、水/NMP=40/60の組成の浴を用い、浸漬長(有効凝固浴長)30cmにて糸速7m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出して、ポリマー重量率P、アミド系溶媒重量率N、水分重量率WがN/(P+N)=0.44、W/(P+W)=0.09を満たす凝固糸を得た。
【0067】
次いで、水/NMP=40/60の組成で温度60℃の可塑浴により、浸漬長80cmにて可塑液を含ませた後、ポリマー重量率P、アミド系溶媒重量率N、水分重量率Wの関係N/(P+N)=0.55、W/(P+W)=0.17である多孔質の繊維を得た。
【0068】
引続き、可塑延伸浴中にて3.6倍の延伸倍率で延伸を行った。この時の可塑延伸浴は、水/NMP=40/60の組成で、温度20℃であった。延伸後、20℃の水/NMP=70/30浴に通し(浸漬長1.8m)、さらに20℃の水浴に通した(浸漬長1.8m)。このときN/(P+N)=0.41、W/(P+W)=0.60であった。その後、表面温度120℃ローラーに巻き回して乾熱処理し、引続き表面温度160℃ローラーに巻き回して乾熱処理した。さらに表面温度330℃の熱板で定長にて乾熱処理を施し、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
【0069】
この繊維の力学的特性は、繊度2.2dtex(2.0de)、密度1.36g/cm3、引張強度3.95cN/dtex(4.50g/de)、伸度36.0%、であり、良好な数値を示した。また、300℃乾熱収縮率は3.5%であり、優れた熱収縮安定性を示した。
【0070】
得られた繊維のイオン濃度は、Na75ppm、K5ppm、Ca5ppm、Fe7ppm、Cl90ppm、全イオン性物質192ppmであり、きわめて低い含量を示した。
【0071】
[実施例2および比較例1〜4]
実施例1で用いたポリマー溶液Aを紡糸原液とし、孔径0.07mm、孔数5000の紡糸口金より浴温度55℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴は、水/NMP=40/60の組成の浴を用い、浸漬長(有効凝固浴長)20cmにて糸速7m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出し、ポリマー重量率P、アミド系溶媒重量率N、水分重量率WがN/(P+N)=0.44、W/(P+W)=0.09の関係を満たす凝固糸を得た。次いで、表1記載のとおりの条件で、可塑浴処理なしまたは可塑浴の温度と浸漬長を変更する以外は実施例1と同条件で処理した。可塑浴処理後の多孔質の繊維のN/(P+N)、W/(P+W)を、実施例1と併せて表1に示す。引続き、可塑延伸浴中にて3.6倍の延伸倍率で延伸を行った。この時の可塑延伸浴は、水/NMP=40/60の組成の浴を用い、温度20℃であった。延伸後の水浴の温度と浸漬長を表1記載のとおり変更して、水洗後のN/(P+N)とW/(P+W)を変更する以外は実施例1と同条件で熱処理して得たポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の密度、引張強度、伸度、300℃乾熱収縮率の値を、実施例1と併せて表1に示す。
【0072】
【表1】
Figure 0003995532
【0073】
[実施例3]
実施例1で用いたポリマー溶液Aを紡糸原液として、孔径0.07mm、孔数5000の紡糸口金より浴温度50℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴は、水/NMP=40/60の組成の浴を用い、浸漬長(有効凝固浴長)40cmにて糸速7m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出し、ポリマー重量率P、アミド系溶媒重量率N、水分重量率WがN/(P+N)=0.44、W/(P+W)=0.09を満たす凝固糸を得た。次いで、水/NMP=40/60、温度60℃の可塑浴を用い、浸漬長80cmにて可塑液を含ませてポリマー重量率P、アミド系溶媒重量率N、水分重量率Wの関係がN/(P+N)=0.55、W/(P+W)=0.17である多孔質の繊維を得た。
【0074】
引続き、可塑延伸浴中にて3.6倍の延伸倍率で延伸を行った。この時の可塑延伸浴は、水/NMP=40/60の組成の浴を用い、温度20℃であった。延伸後、20℃の水浴に通した(浸漬長9.0m)。このときN/(P+N)=0.21、W/(P+W)=0.60であった。その後、表面温度120℃ローラーに巻き回して乾熱処理した。
【0075】
続いて、第2段目の可塑延伸浴中にて1.4倍の延伸倍率で延伸を行った。この時の可塑延伸浴は、水/NMP=99/1の組成の浴を用い、温度90℃であった。延伸後、90℃の水浴に通した(浸漬長3.6m)。その後、表面温度120℃ローラーに巻き回して乾熱処理し、引続き表面温度160℃ローラーに巻き回して乾熱処理した。さらに表面温度330℃の熱板で定長にて乾熱処理を施し、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
【0076】
得られた繊維の力学的特性は、繊度2.22dtex(2.0de)、密度1.36g/cm3、引張強度4.06cN/dtex(4.60g/de)、伸度34.0%であり、良好な数値を示した。また、300℃乾熱収縮率は4.3%であり、優れた熱収縮安定性を示した。さらに繊維中のイオン濃度は、Na75ppm、K7ppm、Ca5ppm、Fe6ppm、Cl100ppm、全イオン性物質205ppmであり、きわめて低い含量を示した。
【0077】
[実施例4および比較例5〜8]
実施例1で用いたポリマー溶液Aを紡糸原液とし、孔径0.07mm、孔数5000の紡糸口金より浴温度50℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴は、水/NMP=40/60の組成の浴を用い、浸漬長(有効凝固浴長)40cmにて糸速7m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出し、ポリマー重量率P、アミド系溶媒重量率N、水分重量率WがN/(P+N)=0.44、W/(P+W)=0.09を満たす凝固糸を得た。次いで、可塑浴処理なしまたは可塑浴の温度と浸漬長を変更する以外は実施例1と同条件で処理した。可塑浴の温度、浸漬長、可塑浴処理後の多孔質の繊維のN/(P+N)、W/(P+W)を、実施例3と併せて表2に示す。
【0078】
引続き、第1段目の可塑延伸浴中にて3.6倍の延伸倍率で延伸を行った。この時の可塑延伸浴は、水/NMP=40/60の組成の浴を用い、温度20℃であった。延伸後の水浴の温度と浸漬長を変更して、水洗後のN/(P+N)とW/(P+W)を変更する以外は実施例3と同条件で延伸して得たポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の密度、引張強度、伸度、300℃乾熱収縮率の値を、実施例3と併せて表2に示す。
【0079】
【表2】
Figure 0003995532
【0080】
【発明の効果】
本発明方法によれば、力学特性、耐熱性等の良好で実質的に塩類を含まない緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維(特にポリメタフェニレンイソフタルアミド系繊維)を実質工業的な生産性で製造することができる。このような塩類を実質的に含まないすなわち無機イオン性物質の濃度が極限的に低いメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、耐熱性、難燃性、電気絶縁性等のメタ型全芳香族ポリアミド繊維が本来もつ性質に加えて、電気特性等に影響する実質的な量の無機イオンを含まないため、電子用材料として用いる際に電気特性を損なわない等の特性を有するので有効に使用することができる。
【0081】
このように、本発明によるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その耐熱性、耐炎性、力学特性を生かした各種の用途に応用することができ、特に無機イオン性物質の混入を嫌う用途には特に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. メタフェニレンイソフタルアミド骨格を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解しているメタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液を湿式紡糸することによりメタ型全芳香族ポリアミド繊維を製造する方法において、(1)紡糸原液として塩類を実質的に含まない重合体溶液を用い、これを紡糸口金からアミド系溶媒と水とからなりかつ塩類を実質的に含まない温度(T1)が20〜70℃の凝固浴中に吐出して、多孔質の線状体として凝固せしめ、(2)アミド系溶媒の水性溶液からなる、温度(T2)が(T1+5℃)〜90℃の可塑浴中に浸漬して、繊維中の含水率および含アミド系溶媒率が下記式(a)および(b)を満足するように調整した後、(3)アミド系溶媒の水性溶液からなる可塑延伸浴中にて延伸し、(4)次いで、水あるいはアミド系溶媒を含んだ水にて洗浄し、(5)これを温度100〜250℃で熱処理した後、(6)さらに温度270〜400℃で熱処理することを特徴とする緻密なメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法。
    (a)0.3≦N/(P+N)≦0.7
    (b)0≦W/(P+W)≦0.3
    但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
  2. 上記工程(1)の凝固浴および工程(2)の可塑浴におけるアミド系溶媒と水の組成が、それぞれ重量比で40/60〜70/30である請求項1記載のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法。
  3. 上記工程(3)において、アミド系溶媒と水の組成が重量比で20/80〜70/30であり温度が20〜90℃である可塑延伸浴中で1.5倍〜10倍の延伸倍率で延伸し、次いで上記工程(4)において、水あるいはアミド系溶媒を含んだ水にて洗浄して繊維中の含水率および含アミド系溶媒率が下記式(c)および(d)を満足するように調整する請求項1または請求項2記載のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法。
    (c)0.3≦N/(P+N)≦0.7
    (d)0.4≦W/(P+W)≦0.7
    但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
  4. 上記工程(3)において、アミド系溶媒と水の組成が重量比で20/80〜70/30であり温度が20〜90℃である可塑延伸浴中で1.5倍〜10倍の延伸倍率で延伸し、次いで上記工程(4)において、水あるいはアミド系溶媒を含んだ水にて洗浄して繊維中の含水率および含アミド系溶媒率が下記式(e)および(f)を満足するように調整し、さらに上記工程(5)および(6)の間で、下記一連の工程(7)〜(8)を少なくとも1回行う請求項1または請求項2記載のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法。
    (e)0.1≦N/(P+N)≦0.3
    (f)0.4≦W/(P+W)≦0.7
    但し、P、N、Wは、それぞれ繊維中の含ポリマー重量率、含アミド系溶媒重量率、含水重量率を表す。
    (7)水またはアミド系溶媒の組成が重量比で0/100〜40/60であり温度が20〜100℃である可塑延伸浴中にて1.0〜3倍に再延伸する工程
    (8)水またはアミド系溶媒の水性溶液にて洗浄した後に温度100〜250℃で再熱処理する工程
  5. 上記工程(6)において、270〜400℃の温度範囲で0.7〜4倍の延伸下に熱処理する請求項1〜請求項4のいずれかに記載のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法。
  6. 重合体溶液、凝固浴および可塑延伸浴に含まれるアミド系溶媒がN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種で構成される請求項1〜請求項5のいずれかに記載のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造法。
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