JP4010201B2 - 中空体内外両表面へのイオン注入法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、イオン注入法を用いて中空体の内部表面と外部表面の改質を同時に行う中空体内外両表面へのイオン注入法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリンダーなどの中空体内壁面に対し、耐摩耗性、摺動性などの機械的表面特性を付与すること、あるいは、中空体内壁面に優れた機能性を付与する技術開発は産業界から求められていた。
一方、プラズマに曝した被処理材に負の高電圧パルスを印加することを基本原理としたプラズマソースイオン注入法は、立体物全面へのイオン注入法および薄膜作製法として最近注目されている方法である。
プラズマソースイオン注入法は、数10keV〜MeVに加速した粒子(イオン)を固体に照射し、固体内部に打ち込む技術である。イオンは、固体表面原子をスパッタリング効果によって弾き飛ばす作用もあるが、多くは固体内部につきささる。このような大きな運動エネルギーを持ったイオンが固体表面に衝突し侵入する際に、様々な物理的現象及び化学的現象が起こり、これを利用して固体表面の表層改質を図ることができるのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、イオン注入法を用いて中空体の内部表面と外部表面の改質を別々に行うと、例えば中空体の内部表面の改質を先に行うと、内部表面の改質は良好に行えるが、外部表面の一部も少し改質されることがあり、しかもこの外部表面の一部改質は中途半端で不十分であるため、その後に、中空体の外部表面の改質を行う場合には、この中途半端に改質された部分の表面を一度スパッタクリーニングする必要があり、二重手間になる不都合があった。
【0004】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、中空体の内部表面及び外部表面の改質を同時に行って別々に行う場合に生じる二重手間を回避し、また、密着性に優れた膜を中空体の内部表面及び外部表面に同時に形成することのできる中空体内外両表面へのイオン注入法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、減圧状態のプラズマ発生用原料ガス雰囲気中に、少なくとも一端が開口された導電性の中空体を設置し、該中空体の内部及び外部にグロー放電励起用のアンテナを中空体と絶縁状態で放電を生じない間隔をあけてそれぞれ設置し、高周波放電或いはマイクロ波放電によって上記中空体の内外部にプラズマを発生させると共に、上記中空体に接地電位に対し負の高電圧パルスを印加し、プラズマ雰囲気中のイオンを中空体の内部表面及び外部表面に注入させる手段よりなるものである。
【0006】
また、請求項2の発明は、炭化水素系有機化合物ガスを含む減圧状態のプラズマ発生用原料ガス雰囲気中に、少なくとも一端が開口された導電性の中空体を設置し、該中空体の内部及び外部にグロー放電励起用のアンテナを中空体と絶縁状態で放電を生じない間隔をあけてそれぞれ設置し、高周波放電或いはマイクロ波放電によって上記中空体の内外部にプラズマを発生させると共に、上記中空体に接地電位に対し負の高電圧パルスを印加し、プラズマ雰囲気中の炭素イオンを中空体の内部表面及び外部表面に注入させる手段よりなるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に記載の発明の実施の形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
ここで、図1は装置の概略構成図、図2は中空体の内部表面及び外部表面にイオンが注入される概念図である。
【0008】
図において、イオン注入装置1は、減圧状態のプラズマ発生用原料ガス雰囲気中の導電性の例えばステンレス管などの中空体2の内部表面及び外部表面に同時にイオンを注入させる装置である。中空体2は一端又は両端が開口されていて、中空体2の内部と外部とは開口された端部を通じて連通状態になっている。この実施の形態では、中空体2は両端が開口した円筒形の形状からなる。
【0009】
このイオン注入装置1は、真空状態となる真空容器3、真空容器3の内部の中空体2の内部及び外部に非接触状態で設置されたアンテナ4、真空容器3の内部に設置され中空体2を保持する中空体ホルダー5、真空容器3内部の中空体2にマイナス電位のパルス電圧を印加する高電圧パルス電源6、真空容器3の内部にプラズマ発生用原料ガスを供給するプラズマ発生用原料ガス供給装置7、真空容器3の空気を排出して真空状態にする真空排気装置8などから構成されている。
【0010】
真空容器3は、内部の空気を排出して真空状態にして、内部でプラズマaが発生する環境を造り出す場所である。真空容器3の内部には、プラズマ雰囲気のイオンが中空体2の内部表面及び外部表面に注入し易いように、中空体2の内部及び外部に内部表面及び外部表面と非接触状態で放電を生じない間隔をあけてアンテナ4が各々平行に設置されている。
【0011】
中空体2の内部に設置される内部のアンテナ4は、円筒形中空体2の中心軸上に非接触状態で放電を生じない間隔をあけて設置され、その両端は中空体2の内部両端から外部に一部突出している。また、中空体2の外部に設置される外部のアンテナ4は、内部のアンテナ4を中心として円筒形中空体2の外周の円周方向に非接触状態で放電を生じない間隔をあけて等間隔で複数設置され、その両端は中空体2の両端から外部に一部突出している。
【0012】
この円周方向に設置された複数の外部のアンテナ4はその一端が円形のリングホルダー4aに接続され、リングホルダー4a及び内部のアンテナ4の一端はアンテナホルダー4bに接続されている。このアンテナホルダー4bは真空容器3の外部の高周波電源4cに電気的に接続されており、中空体2の内部及び外部に設置された各アンテナ4はリングホルダー4a及びアンテナホルダー4bを介して高周波電源4cに電気的に接続されている。また、内部のアンテナ4は絶縁材の例えばセラミック管4dによって被覆されていて、高電圧を印加したときに内部のアンテナ4と中空体2との間で放電を生じるのを防ぐためである。
【0013】
中空体ホルダー5は、中空体2を保持するもので、真空容器3の内部に設置されている。中空体ホルダー5は真空容器3の内部壁面に例えばアルミナ絶縁板5aを介して支持部材5bによって支持されている。中空体ホルダー5は中空体2の内部表面及び外部表面が内部及び外部に各々設置されたアンテナに平行になるように保持して、プラズマ雰囲気のイオンが内部表面及び外部表面に注入し易いようにしている。中空体ホルダー5は導電性の材料から造られている。
【0014】
高電圧パルス電源6は、例えば、電圧−12kV、周波数200Hz、パルスオン時間20μsのパルス電圧を導電性の中空体ホルダー5を介して中空体2に印加するものであり、通常の電圧に比べて、少ない電気エネルギーで大きな電圧を得ることができる。高電圧パルス電源6の一端は真空容器3内に延設されて中空体ホルダー5に接続されている。高電圧パルス電源6には低電圧パルス電源6aやオシロスコープ6bが接続されている
【0015】
プラズマ発生用原料ガス供給装置7は、真空容器3の内部にプラズマ発生用原料ガスを供給する装置で、真空容器3に一端が接続されている。プラズマ発生用原料ガス供給装置7は複数の流量調整器(MFC)7aの切り替えを通じて、プラズマ発生用原料ガスとしての例えば窒素ガス、炭化水素系有機化合物ガスとしての例えばアセチレンガス等を適宜、真空容器3に供給することができるようになっている。
【0016】
真空排気装置8は、真空容器3の内部の空気を排出して真空状態にする装置で、図示しない真空ポンプを装備している。真空排気装置8は真空容器3の内部を真空に近い状態まで減圧してプラズマaが発生し易い状態にする。
【0017】
次に、上記発明の実施の形態の構成に基づく中空体内外両表面へのイオンの注入方法について以下説明する。
真空容器3に中空体2及びアンテナ4を入れ、中空体2の内部の中心軸上に内部のアンテナ4を設置し、円筒形中空体2の外部の円周方向に等間隔で複数のアンテナ4を設置する。そして中空体2を中空体ホルダー5に取り付けて保持させる。同様に内部のアンテナ4をアンテナホルダー4bに外部のアンテナ4をリングホルダー4aを介してアンテナホルダー4bに取り付けて保持させる。この場合、中空体2と内部及び外部のアンテナ4とは、非接触状態でしかも放電しない距離に離してそれぞれ平行に設置する。
【0018】
その後、真空排気装置8を作動して、真空容器3の空気を排出する。真空容器3の内部の空気は真空排気装置8の図示しない真空ポンプの作動により排出されて内部は真空状態になる。真空状態としては例えば10-2パスカルの真空度である。
【0019】
真空容器3を真空状態にした後、プラズマ発生用原料ガス供給装置7の流量調整器(MFC)7aを切り替え調整してプラズマ発生用原料ガスとしての例えば窒素ガスと炭化水素系有機化合物ガスの例えばアセチレンガスを真空容器3内に導入して、高周波電源4cから高周波電力を中空体2の内部及び外部に設置された各アンテナ4に給電して作動させると、内部及び外部に設置された各アンテナ4はプラズマ発生源となり、アンテナ4の周辺の窒素ガス及びアセチレンガスからプラズマaが発生する。発生したプラズマaは中空体2の内部及び外部をプラズマ雰囲気にする。
【0020】
そして、中空体2の内部及び外部がプラズマ雰囲気になった後、高電圧パルス電源6により、接地電位に対してマイナスの電圧をかけて中空体2をマイナスの電位状態にする。
【0021】
中空体2がマイナスの電位状態になると、中空体2と内部アンテナ4との間の内部のアセチレンガスのプラズマ雰囲気からプラスの電位状態のイオンは、マイナスの電位状態の中空体2の内部表面に吸引加速され、運動エネルギーを持ち中空体2の内部表面に衝突して、中空体2の内部表面に炭素が注入されて、中空体2の内部表面を炭素膜でコーティングする。
【0022】
同様に、中空体2と外部アンテナ4との間の外部のアセチレンガスのプラズマ雰囲気からプラスの電位状態のイオンは、マイナスの電位状態の中空体2の外部表面に吸引加速され、運動エネルギーを持ち中空体2の外部表面に衝突して、中空体2の外部表面に炭素が注入されて、中空体2の外部表面を炭素膜でコーティングする。
【0023】
また、中空体2の内外両表面の炭素膜の膜厚の調整は、炭化水素系有機化合物ガスの導入量を調整したり、作業時間で調整する。炭素の膜厚を厚くしたい場合には作業時間を長くする。中空体2の内外両表面に窒素イオンなどガスイオンのみを導入したい場合には窒素ガスのみを導入する。
【0024】
本願発明は、真空容器3内に絶縁された中空体2を設置し、真空容器3内に所望のプラズマ発生用原料ガスを導入すると同時に減圧状態に維持し、高周波電力を中空体2の内部及び外部に設置した各アンテナ4に給電することによりプラズマを生成し、中空体2にマイナス電位のパルス電圧を繰り返し印加することによって中空体2の内部表面及び外部表面にプラズマ中の正イオンを引き込み、照射する手段よりなる。これにより中空体2の内外両表面にイオンを注入して内外両表面の改質を同時に達成すること、および原料ガスの一部として炭化水素を用いた場合、中空体2の内外両表面を同時に炭素膜のコーティングを行うことができる。
【0025】
【実験例】
中空体2として両端開口の円筒形のステンレス管を使用した。
〔実験条件〕
ステンレス管サイズ:内径100mm、長さ300mm
導入ガス :窒素ガス
窒素ガス圧力 :2.5パスカル
高周波電力 :40W
パルス電圧 :−12KV
パルス周波数 :200Hz
パルス幅 :20μs
処理時間 :1時間
〔実験結果〕
図4に、図3で図示する中空体2(ステンレス管)の内部表面の3箇所(A、B、C)、中空体2(ステンレス管)の外部表面の3箇所(D、E、F)にシリコン基板を設置し、それぞれの窒素イオン注入深さ分布をAES(オージェ電子分光分析)で測定した結果を示す。繰り返し窒素イオンが注入されることにより、中空体2(ステンレス管)の内部表面及び外部表面の全面に均一に注入されていることが図4からわかる。
【0026】
なお、本願発明は上記発明の実施の形態に限定されるものではなく、本願発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。例えば前記発明の実施の形態では、高周波放電によって中空体2の内部及び外部にプラズマを発生させる場合で説明したが、高周波に代えてマイクロ波を使用してもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上の記載より明らかなように、請求項1、請求項2の発明に係る中空体内外両表面へのイオン注入法によれば、高周波放電或いはマイクロ波放電によって上記中空体の内外部にプラズマを発生させると共に、中空体に接地電位に対し負の高電圧パルスを繰り返し印加することによって、中空体の内部表面及び外部表面に同時にイオンを注入させることができ、中空体の内部表面及び外部表面の表層改質を同時に達成することができる。これにより、中空体の内部表面と外部表面との改質を別々に行う場合に比べて二重手間を回避することができる。また、本技術の応用としては、内燃機関などのシリンダー、機械金属部品、金型などが想定される。
また、請求項2の発明にあっては、中空体の内部表面及び外部表面へのイオン注入を併用した薄膜作製が可能になる等、極めて新規的有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示す装置の概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態を示す中空体の内部表面及び外部表面にイオンが注入される概念図である。
【図3】この発明の実験例における中空体(ステンレス管)の内部表面3箇所と外部表面3箇所の各測定個所を示す模式図である。
【図4】図3の内部表面3箇所と外部表面3箇所の各測定個所におけるイオン注入深さ分布図である。
【符号の説明】
1 イオン注入装置
2 中空体
3 真空容器
4 アンテナ
4a リングホルダー
4b アンテナホルダー
4c 高周波電源
4d セラミック管
5 中空体ホルダー
5a アルミナ絶縁板
5b 支持部材
6 高電圧パルス電源
6a 低電圧パルス電源
6b オシロスコープ
7 プラズマ発生用原料ガス供給装置
7a 流量調整器(MFC)
8 真空排気装置
a プラズマ
Claims (2)
- 減圧状態のプラズマ発生用原料ガス雰囲気中に、少なくとも一端が開口された導電性の中空体を設置し、該中空体の内部及び外部にグロー放電励起用のアンテナを中空体と絶縁状態で放電を生じない間隔をあけてそれぞれ設置し、高周波放電或いはマイクロ波放電によって上記中空体の内外部にプラズマを発生させると共に、上記中空体に接地電位に対し負の高電圧パルスを印加し、プラズマ雰囲気中のイオンを中空体の内部表面及び外部表面に注入させることを特徴とする中空体内外両表面へのイオン注入法。
- 炭化水素系有機化合物ガスを含む減圧状態のプラズマ発生用原料ガス雰囲気中に、少なくとも一端が開口された導電性の中空体を設置し、該中空体の内部及び外部にグロー放電励起用のアンテナを中空体と絶縁状態で放電を生じない間隔をあけてそれぞれ設置し、高周波放電或いはマイクロ波放電によって上記中空体の内外部にプラズマを発生させると共に、上記中空体に接地電位に対し負の高電圧パルスを印加し、プラズマ雰囲気中の炭素イオンを中空体の内部表面及び外部表面に注入させることを特徴とする中空体内外両表面へのイオン注入法。
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