JP4014805B2 - 全反射減衰を利用したセンサー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面プラズモンの発生を利用して試料中の物質を定量分析する表面プラズモンセンサー等の、全反射減衰を利用したセンサーに関し、特に詳細には、全反射減衰によって測定光に生じる暗線を、複数の受光素子が所定方向に並設されてなるアレイ状の光検出手段を用いて検出するタイプの、全反射減衰を利用したセンサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属中においては、自由電子が集団的に振動して、プラズマ波と呼ばれる粗密波が生じる。そして、金属表面に生じるこの粗密波を量子化したものは、表面プラズモンと呼ばれている。
【0003】
従来より、この表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、試料中の物質を定量分析する表面プラズモンセンサーが種々提案されている。そして、それらの中で特に良く知られているものとして、 Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特開平6−167443号参照)。
【0004】
上記の系を用いる表面プラズモンセンサーは基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られ、かつ表面プラズモン共鳴による全反射減衰が生じ得るように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態、つまり全反射減衰の状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
【0005】
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを偏向させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、光ビームの偏向にともなって反射角が変化する光ビームを、光ビームの偏向に同期移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
【0006】
上記構成の表面プラズモンセンサーにおいて、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角θSPで入射させると、該金属膜に接している試料中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と試料との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。
【0007】
なお上記の共鳴は、入射ビームがp偏光のときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
【0008】
この全反射減衰(ATR)が生じる入射角θSPより表面プラズモンの波数が分かると、試料の誘電率が求められる。すなわち表面プラズモンの波数をKSP、表面プラズモンの角周波数をω、cを真空中の光速、εとεをそれぞれ金属、試料の誘電率とすると、以下の関係がある。
【0009】
【数1】
Figure 0004014805
試料の誘電率εが分かれば、所定の較正曲線等に基づいて試料中の特定物質の濃度が分かるので、結局、上記反射光強度が低下する入射角θSPを知ることにより、試料の誘電率つまりは屈折率に関連する特性を求めることができる。
【0010】
なおこの種の表面プラズモンセンサーにおいては、全反射解消角θSPを精度良く、しかも大きなダイナミックレンジで測定することを目的として、特開平11−326194号に示されるように、アレイ状の光検出手段を用いることが考えられている。この光検出手段は、複数の受光素子が所定方向に並設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設されたものである。
【0011】
そしてその場合は、上記アレイ状の光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の並設方向に関して微分する微分手段が設けられ、この微分手段が出力する微分値に基づいて試料の屈折率に関連する特性を求めることが多い。
【0012】
また、全反射減衰(ATR)を利用する類似のセンサーとして、例えば「分光研究」第47巻 第1号(1998)の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある漏洩モードセンサーも知られている。この漏洩モードセンサーは基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られ、かつ光導波層での導波モードの励起による全反射減衰が生じ得るように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
【0013】
上記構成の漏洩モードセンサーにおいて、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の試料の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、試料の屈折率や、それに関連する試料の特性を分析することができる。
【0014】
なおこの漏洩モードセンサーにおいても、全反射減衰によって反射光に生じる暗線の位置を検出するために、前述したアレイ状の光検出手段を用いることができ、またそれと併せて前述の微分手段が適用されることも多い。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した表面プラズモンセンサーや漏洩モードセンサーにおいては、誘電体ブロックが、光ビームの入射面、出射面および前記薄膜層(表面プラズモンセンサーの場合は金属膜であり、漏洩モードセンサーの場合はクラッド層および光導波層)が形成される一面の全てを含む1つのブロックとして形成され、この誘電体ブロックに薄膜層が一体化されて測定チップとして構成されることがある(例えば本出願人による特願2000−212125号参照)。このように誘電体ブロックをチップ化したものは、使い捨ての形態で使用するのに好適で、試料分析の能率向上に寄与するものとなる。
【0016】
しかし、そのように使い捨てされる測定チップは、それぞれを構成する誘電体の屈折率の差や、薄膜層の膜厚の差等に起因して、個体間で感度にバラツキが生じやすいものとなっている。そのように感度のバラツキが有る測定チップを用いると、当然、試料分析を正確に行なうことが不可能となる。
【0017】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、誘電体ブロックや薄膜層の特性バラツキによる測定感度の違いを補償して試料分析を正確に行なうことができる、全反射減衰を利用したセンサーを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明による一つの全反射減衰を利用したセンサーは、前述したように、
誘電体ブロックと、
この誘電体ブロックの一面に形成されて、試料に接触させられる薄膜層と、
光ビームを発生させる光源と、
上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと上記薄膜層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、
複数の受光素子が所定方向に並設されてなり、上記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設された光検出手段と、
この光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の並設方向に関して微分する微分手段とを備えてなる全反射減衰を利用したセンサーにおいて、
上記受光素子の並設方向に亘る相異なる位置に関する複数の微分値についての変化率を求め、試料の特性を求めるために採用する微分値をこの変化率によって除算する補正手段を備えたことを特徴とするものである。
【0019】
本発明による別の全反射減衰を利用したセンサーは、特に前述の表面プラズモンセンサーとして構成されたものであり、
誘電体ブロックと、
この誘電体ブロックの一面に形成されて、試料に接触させられる金属膜からなる薄膜層と、
光ビームを発生させる光源と、
上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、
複数の受光素子が所定方向に並設されてなり、上記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設された光検出手段と、
この光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の並設方向に関して微分する微分手段とを備えてなる全反射減衰を利用したセンサーにおいて、
上記受光素子の並設方向に亘る相異なる位置に関する複数の微分値についての変化率を求め、試料の特性を求めるために採用する微分値をこの変化率によって除算する補正手段を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明によるさらに別の全反射減衰を利用したセンサーは、特に前述の漏洩モードセンサーとして構成されたものであり、
誘電体ブロックと、
この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層、およびこのクラッド層の上に形成されて試料に接触させられる光導波層からなる薄膜層と、
光ビームを発生させる光源と、
上記光ビームを前記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、
複数の受光素子が所定方向に並設されてなり、上記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設された光検出手段と、
この光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の並設方向に関して微分する微分手段とを備えてなる全反射減衰を利用したセンサーにおいて、
上記受光素子の並設方向に亘る相異なる位置に関する複数の微分値についての変化率を求め、試料の特性を求めるために採用する微分値をこの変化率によって除算する補正手段を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
上記除算後の微分値は、そのまま表示手段に表示して試料の特性分析に使われるようにしてもよいし、そこから自動的に全反射解消角θSPを求めて、その全反射解消角θSPを表示手段に表示するようにしてもよい。またこの微分値から、所定時間経過に伴う微分値の変化量を求め、その変化量に基づいて試料分析することもできる。さらには、全反射解消角θSPおよび、予め用意された所定の較正曲線等に基づいて試料中の特定物質を自動的に定量分析して、その分析結果をリアルタイムで表示手段に表示させるようにしてもよい。
【0022】
なお、本発明の全反射減衰を利用したセンサーにおいては、誘電体ブロックが、前記光ビームの入射面、出射面および前記薄膜層が形成される一面の全てを含む1つのブロックとして形成され、この誘電体ブロックに前記薄膜層が一体化されて測定チップとして構成されていることが望ましい。
【0023】
一方微分手段としては、光検出手段の相隣接する受光素子が出力する光検出信号の差分値を求めるものを好適に用いることができる。また光検出手段としては、例えばフォトダイオードアレイ等を好適に用いることができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明による全反射減衰を利用したセンサーにおいては、複数の受光素子が並設されてなるアレイ状の光検出手段を用い、この光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、微分手段によって該受光素子の並設方向に関して微分しているが、その微分値に着目すると、受光素子の並設方向に亘る相異なる位置に関する複数の微分値についての変化率は、測定感度を示している。つまり測定感度が高いほど、この変化率は大きくなる。
【0025】
そこで、試料に関する特性を求めるための微分値をこの変化率により除算して規格化すれば、その除算後の微分値は、誘電体ブロックや薄膜層による感度のバラツキを補償したものとなる。したがってこの除算後の微分値に基づいて試料に関する特性を求めれば、上記感度のバラツキの影響を排除して、正確に試料分析を行なうことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による表面プラズモンセンサーの側面形状を示すものである。この表面プラズモンセンサーは、例えば概略四角錐の一部が切り取られた形状とされた誘電体ブロック10と、この誘電体ブロック10の一面(図中の上面)に形成された、例えば金、銀、銅、アルミニウム等からなる金属膜12とを有している。
【0027】
誘電体ブロック10は例えば透明樹脂等からなり、金属膜12が形成された部分の周囲が嵩上げされた形とされ、この嵩上げされた部分10aは液体の試料11を貯える試料保持部として機能する。なお本例では、金属膜12の上にセンシング媒体30が固定されるが、このセンシング媒体30については後述する。
【0028】
誘電体ブロック10は金属膜12とともに、使い捨ての測定チップを構成しており、例えばターンテーブル31に複数設けられたチップ保持孔31aに1個ずつ嵌合固定される。誘電体ブロック10がこのようにターンテーブル31に固定された後、ターンテーブル31が一定角度ずつ間欠的に回動され、所定位置に停止した誘電体ブロック10に対して液体試料11が滴下され、該液体試料11が試料保持部10a内に保持される。その後さらにターンテーブル31が一定角度回動されると、誘電体ブロック10がこの図1に示した測定位置に送られ、そこで停止する。
【0029】
本実施形態の表面プラズモンセンサーは、上記誘電体ブロック10に加えてさらに、1本の光ビーム13を発生させる半導体レーザ等からなるレーザ光源14と、上記光ビーム13を誘電体ブロック10に通し、該誘電体ブロック10と金属膜12との界面10bに対して、種々の入射角が得られるように入射させる光学系15と、上記界面10bで全反射した光ビーム13を平行光化するコリメーターレンズ16と、この平行光化された光ビーム13を検出する光検出手段17と、この光検出手段17に接続された差動アンプアレイ18と、ドライバ19と、コンピュータシステム等からなる信号処理部20と、この信号処理部20に接続された表示手段21とを備えている。
【0030】
図2は、この表面プラズモンセンサーの電気的構成を示すブロック図である。図示の通り上記ドライバ19は、差動アンプアレイ18の各差動アンプ18a、18b、18c……の出力をサンプルホールドするサンプルホールド回路22a、22b、22c……、これらのサンプルホールド回路22a、22b、22c……の各出力が入力されるマルチプレクサ23、このマルチプレクサ23の出力をデジタル化して信号処理部20に入力するA/D変換器24、マルチプレクサ23とサンプルホールド回路22a、22b、22c……とを駆動する駆動回路25、および信号処理部20からの指示に基づいて駆動回路25の動作を制御するコントローラ26から構成されている。
【0031】
図1に示す通り、レーザ光源14から発散光状態で出射した光ビーム13は、光学系15の作用により、誘電体ブロック10と金属膜12との界面10b上で集束する。したがって光ビーム13は、界面10bに対して種々の入射角θで入射する成分を含むことになる。なおこの入射角θは、全反射角以上の角度とされる。そこで、光ビーム13は界面10bで全反射し、この反射した光ビーム13には、種々の反射角で反射する成分が含まれることになる。
【0032】
なお光ビーム13は、界面10bに対してp偏光で入射させる。そのようにするためには、予めレーザ光源14をその偏光方向が所定方向となるように配設すればよい。その他、波長板や偏光板で光ビーム13の偏光の向きを制御してもよい。
【0033】
界面10bで全反射した後、コリメーターレンズ16によって平行光化された光ビーム13は、光検出手段17により検出される。本例における光検出手段17は、複数のフォトダイオード17a、17b、17c……が1列に並設されてなるフォトダイオードアレイであり、図1の図示面内において、平行光化された光ビーム13の進行方向に対してフォトダイオード並設方向がほぼ直角となる向きに配設されている。したがって、上記界面10bにおいて種々の反射角で全反射した光ビーム13の各成分を、それぞれ異なるフォトダイオード17a、17b、17c……が受光することになる。
【0034】
上記フォトダイオード17a、17b、17c……の各出力は、差動アンプアレイ18の各差動アンプ18a、18b、18c……に入力される。この際、互いに隣接する2つのフォトダイオードの出力が、共通の差動アンプに入力される。したがって各差動アンプ18a、18b、18c……の出力は、複数のフォトダイオード17a、17b、17c……が出力する光検出信号を、それらの並設方向に関して微分したものと考えることができる。
【0035】
各差動アンプ18a、18b、18c……の出力は、それぞれサンプルホールド回路22a、22b、22c……により所定のタイミングでサンプルホールドされ、マルチプレクサ23に入力される。マルチプレクサ23は、サンプルホールドされた各差動アンプ18a、18b、18c……の出力を、所定の順序に従ってA/D変換器24に入力する。A/D変換器24はこれらの出力をデジタル化して信号処理部20に入力する。
【0036】
図3は、界面10bで全反射した光ビーム13の入射角θ毎の光強度と、差動アンプ18a、18b、18c……の出力との関係を説明するものである。ここで、光ビーム13の界面10bへの入射角θと上記光強度Iとの関係は、同図(1)のグラフに示すようなものであるとする。
【0037】
界面10bにある特定の入射角θSPで入射した光は、金属膜12と試料11との界面に表面プラズモンを励起させるので、この光については反射光強度Iが鋭く低下する。つまりθSPが全反射解消角であり、この角度θSPにおいて反射光強度Iは最小値を取る。この反射光強度Iの低下は、図1にDで示すように、反射光中の暗線として観察される。
【0038】
また図3の(2)は、フォトダイオード17a、17b、17c……の並設方向を示しており、先に説明した通り、これらのフォトダイオード17a、17b、17c……の並設方向位置は上記入射角θと一義的に対応している。
【0039】
そしてフォトダイオード17a、17b、17c……の並設方向位置、つまりは入射角θと、差動アンプ18a、18b、18c……の出力I’(反射光強度Iの微分値)との関係は、同図(3)に示すようなものとなる。
【0040】
信号処理部20は、A/D変換器24から入力された微分値I’の値に基づいて、差動アンプ18a、18b、18c……の中から、全反射解消角θSPに対応する微分値I’=0に最も近い出力が得られているもの(図3の例では差動アンプ18dとなる)を選択し、それが出力する微分値I’に後述の補正処理を施してから、その値を表示手段21に表示させる。なお、場合によっては微分値I’=0を出力している差動アンプが存在することもあり、そのときは当然その差動アンプが選択される。
【0041】
以後、所定時間が経過する毎に上記選択された差動アンプ18dが出力する微分値I’が、上記補正処理を受けてから表示手段21に表示される。この微分値I’は、測定チップの金属膜12(図1参照)に接している物質の誘電率つまりは屈折率が変化して、図3(1)に示す曲線が左右方向に移動する形で変化すると、それに応じて上下する。したがって、この微分値I’を時間の経過とともに測定し続けることにより、金属膜12に接している物質の屈折率変化、つまりは特性の変化を調べることができる。
【0042】
特に本実施形態では金属膜12に、液体試料11の中の特定物質と結合するセンシング媒体30を固定しており、それらの結合状態に応じてセンシング媒体30の屈折率が変化するので、上記微分値I’を測定し続けることにより、この結合状態の変化の様子を調べることができる。つまりこの場合は、液体試料11およびセンシング媒体30の双方が、分析対象の試料となる。そのような特定物質とセンシング媒体30との組合せとしては、例えば抗原と抗体等が挙げられる。
【0043】
以上の説明から明かなように本実施形態では、光検出手段17として複数のフォトダイオード17a、17b、17c……が1列に並設されてなるフォトダイオードアレイを用いているので、液体試料11に応じて図3(1)に示す曲線が左右方向に移動する形である程度大きく変化しても、暗線検出が可能である。つまり、このようなアレイ状の光検出手段17を用いることにより、測定のダイナミックレンジを大きく確保することができる。
【0044】
なお、複数の差動アンプ18a、18b、18c……からなる差動アンプアレイ18を用いる代わりに1つの差動アンプを設け、フォトダイオード17a、17b、17c……の各出力をマルチプレクサで切り替えて、それらのうちの隣接する2つの出力をこの1つの差動アンプに順次入力するようにしても構わない。
【0045】
次に、微分値I’に対してなされる上述の補正処理について詳しく説明する。誘電体ブロック10および金属膜12からなる測定チップにおいては、ブロック材料である合成樹脂の屈折率や、金属膜12の膜厚にバラツキが存在し得る。そのようなチップ特性の差異は、測定感度の違いとなって表れる。上記補正処理は、この測定感度のバラツキを補償するためになされるものである。
【0046】
図2に示した信号処理部20は、前述したように差動アンプ18a、18b、18c……から出力(微分値)I’を受けたとき、その最大値を示した差動アンプと最小値を示した差動アンプの間における複数の微分値I’についての変化率(フォトダイオード17a、17b、17c……の並設方向に亘る変化率)を求める。例えば図3(3)に示す場合ならば、丸囲み数字の3,4,5および6の信号線から出力される微分値I’に関する変化率が求められる。
【0047】
例えば、微分値I’=0またはそれに最も近い値を出力している差動アンプと、それに隣接する1つの差動アンプの出力を利用する場合、つまり図3(3)の例ならば丸囲み数字の3および4の信号線の出力を利用する場合は、それらが示す2つの微分値I’の差δI’の、フォトダイオード17a、17b、17c……の並設ピッチLに対する比R=δI’/Lが変化率とされる。ここで微分値I’は、通常は各差動アンプの出力電圧Vで規定される。
【0048】
なお、微分値I’=0またはそれに最も近い値を出力している差動アンプの両側の差動アンプの出力、つまり図3(3)の例ならば丸囲み数字の3および5の信号線の出力を利用して、それらが示す2つの微分値I’の差を、上記比Rを求める上でのδI’として規定しても構わない。
【0049】
信号処理部20は、以上のようにして求めた変化率Rを図示外の記憶手段に記憶しておき、前述のように微分値を表示手段21に表示させる際には、微分値I’をこの変化率Rで除算して規格化し、I’/Rの値を表示手段21に表示させる。このようにすることにより、測定チップの特性バラツキによる測定感度の違いが補償されて、正確な試料分析が可能となる。
【0050】
なお、液体試料11の中の特定物質とセンシング媒体30との結合状態の変化の様子を時間経過とともに調べるためには、所定時間が経過する毎の微分値I’を求めて表示する他、最初に計測した微分値I’(0)と所定時間経過時に計測した微分値I’(t)との差ΔI’を求めて表示してもよい。そのようにする場合でも、このΔI’を前記変化率Rで除算して規格化すれば、同様に測定チップの特性バラツキによる測定感度の違いが補償されて、正確な試料分析が可能となる。
【0051】
また、以上説明した実施形態においては、誘電体ブロック10が金属膜12とともに、使い捨てされる測定チップを構成しているが、誘電体ブロック10がチップ化されずに表面プラズモンセンサー本体に組み込まれる場合でも、その個体間に屈折率のバラツキが存在したり、また金属膜12の膜厚にバラツキが存在することがあり、したがってそのような場合に本発明を適用しても、同様の効果を奏することができる。
【0052】
次に、図4を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なおこの図4において、図1中の要素と同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要の無い限り省略する。
【0053】
この第2実施形態の全反射減衰を利用したセンサーは、先に説明した漏洩モードセンサーであり、本例でも測定チップ化された誘電体ブロック10を用いるように構成されている。この誘電体ブロック10の一面(図中の上面)にはクラッド層40が形成され、さらにその上には光導波層41が形成されている。
【0054】
誘電体ブロック10は、例えば合成樹脂やBK7等の光学ガラスを用いて形成されている。一方クラッド層40は、誘電体ブロック10よりも低屈折率の誘電体や、金等の金属を用いて薄膜状に形成されている。また光導波層41は、クラッド層40よりも高屈折率の誘電体、例えばPMMAを用いてこれも薄膜状に形成されている。クラッド層40の膜厚は、例えば金薄膜から形成する場合で36.5nm、光導波層41の膜厚は、例えばPMMAから形成する場合で700nm程度とされる。
【0055】
上記構成の漏洩モードセンサーにおいて、レーザ光源14から出射した光ビーム13を誘電体ブロック10を通してクラッド層40に対して全反射角以上の入射角で入射させると、該光ビーム13が誘電体ブロック10とクラッド層40との界面10bで全反射するが、クラッド層40を透過して光導波層41に特定入射角で入射した特定波数の光は、該光導波層41を導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層41に取り込まれるので、上記界面10bで全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。
【0056】
光導波層41における導波光の波数は、該光導波層41の上の試料11の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、試料11の屈折率や、それに関連する試料11の特性を分析することができる。そして、上記特定入射角の近傍における反射光強度Iや、差動アンプアレイ18の各差動アンプが出力する微分値I’に基づいて試料11の特性を分析することもできる。
【0057】
本実施形態でも、信号処理部20において上記微分値I’に対して第1実施形態におけるのと同様の補正処理がなされる。それにより本実施形態でも、誘電体ブロック10、クラッド層40および光導波層41からなる測定チップの特性バラツキによる測定感度の違いが補償されて、正確な試料分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による表面プラズモンセンサーの側面図
【図2】上記表面プラズモンセンサーの電気的構成を示すブロック図
【図3】上記表面プラズモンセンサーにおける光ビーム入射角と検出光強度との関係、並びに光ビーム入射角と光強度検出信号の微分値との関係を示す概略図
【図4】本発明の第2の実施形態による漏洩モードセンサーの側面図
【符号の説明】
10 誘電体ブロック
10a 誘電体ブロックの試料保持部
10b 誘電体ブロックと金属膜との界面
11 試料
12 金属膜
13 光ビーム
14 レーザ光源
15 光学系
16 コリメーターレンズ
17 光検出手段(フォトダイオードアレイ)
17a、17b、17c…… フォトダイオード
18 差動アンプアレイ
18a、18b、18c…… 差動アンプ
19 ドライバ
20 信号処理部
21 表示手段
22a、22b、22c……サンプルホールド回路
23 マルチプレクサ
24 A/D変換器
25 駆動回路
26 コントローラ
30 センシング媒体
31 ターンテーブル
40 クラッド層
41 光導波層

Claims (6)

  1. 誘電体ブロックと、
    この誘電体ブロックの一面に形成されて、試料に接触させられる薄膜層と、
    光ビームを発生させる光源と、
    前記光ビームを前記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと前記薄膜層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、
    複数の受光素子が所定方向に並設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設された光検出手段と、
    この光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の並設方向に関して微分する微分手段とを備えてなる全反射減衰を利用したセンサーにおいて、
    前記受光素子の並設方向に亘る相異なる位置に関する複数の微分値についての変化率を求め、試料の特性を求めるために採用する微分値をこの変化率によって除算する補正手段を備えたことを特徴とする全反射減衰を利用したセンサー。
  2. 誘電体ブロックと、
    この誘電体ブロックの一面に形成されて、試料に接触させられる金属膜からなる薄膜層と、
    光ビームを発生させる光源と、
    前記光ビームを前記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、
    複数の受光素子が所定方向に並設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設された光検出手段と、
    この光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の並設方向に関して微分する微分手段とを備えてなる全反射減衰を利用したセンサーにおいて、
    前記受光素子の並設方向に亘る相異なる位置に関する複数の微分値についての変化率を求め、試料の特性を求めるために採用する微分値をこの変化率によって除算する補正手段を備えたことを特徴とする全反射減衰を利用したセンサー。
  3. 誘電体ブロックと、
    この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層、およびこのクラッド層の上に形成されて試料に接触させられる光導波層からなる薄膜層と、
    光ビームを発生させる光源と、
    前記光ビームを前記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、
    複数の受光素子が所定方向に並設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設された光検出手段と、
    この光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の並設方向に関して微分する微分手段とを備えてなる全反射減衰を利用したセンサーにおいて、
    前記受光素子の並設方向に亘る相異なる位置に関する複数の微分値についての変化率を求め、試料の特性を求めるために採用する微分値をこの変化率によって除算する補正手段を備えたことを特徴とする全反射減衰を利用したセンサー。
  4. 前記誘電体ブロックが、前記光ビームの入射面、出射面および前記薄膜層が形成される一面の全てを含む1つのブロックとして形成され、
    この誘電体ブロックに前記薄膜層が一体化されて測定チップとして構成されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の全反射減衰を利用したセンサー。
  5. 前記微分手段が、前記光検出手段の相隣接する受光素子が出力する光検出信号の差分値を求めるものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の全反射減衰を利用したセンサー。
  6. 前記光検出手段がフォトダイオードアレイであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の全反射減衰を利用したセンサー。
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