JP4029862B2 - 車両の動力伝達制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、モーター四輪駆動車の従駆動輪の駆動ユニット等に適用される制御型の2ウェイクラッチを用いた車両の動力伝達制御装置に関する。
従来、制御型の2ウェイクラッチを用いた4輪駆動システムは、エンジン負荷状態を検出するセンサーを追加入力し、そのセンサーの出力信号を基に、運転者の加速意志を判断することによって、電磁コイルへの電流を早めに加え、2ウェイクラッチをロックさせることにより、低μ路での急発進時において大きなショックの発生を防止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−342761号公報
しかしながら、従来の2ウェイクラッチを用いた4輪駆動システムにあっては、2ウェイクラッチの係合指令時にクラッチ入力回転数の上昇速度が高い場合、2ウェイクラッチのローラが駆動側のくさび角から弾かれ、反対側のくさび角に当たる、いわゆる、「ローラジャンプ」という現象が発生し、クラッチ係合不良や異音やショックが発生するという問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、2ウェイクラッチの係合時、ローラが駆動側のくさび角から弾かれて反対側のくさび角に当たるローラジャンプの発生を防止することができる車両の動力伝達制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、駆動源から入力される駆動入力を、断続機構及び減速機を介して出力する車両の動力伝達制御装置において、
前記断続機構として、外輪部材と内輪部材とローラと保持器とを有し、外部からの指令により、前記ローラをくさび空間へ移動させるクラッチ係合と、前記ローラを中立位置に保持するクラッチ解放と、が制御される2ウェイクラッチを設け、
前記2ウェイクラッチの係合時、クラッチ入力回転数の上昇速度を、ローラジャンプを発生させない上昇速度制限値以下に規定するクラッチ係合制御手段を設けた。
よって、本発明の車両の動力伝達制御装置にあっては、2ウェイクラッチの係合時、クラッチ係合制御手段において、クラッチ入力回転数の上昇速度が、ローラジャンプを発生させない上昇速度制限値以下に規定される。この結果、2ウェイクラッチの係合時、ローラが駆動側のくさび角から弾かれて反対側のくさび角に当たるローラジャンプの発生を防止することができる。
以下、本発明の車両の動力伝達制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の動力伝達制御装置が適用されたモーター四輪駆動車を示す全体システム図であり、左右前輪1L,1R(主駆動輪)が内燃機関であるエンジン2によって駆動され、左右後輪3L,3R(従駆動輪)がモーター4(電動モーター)によって駆動可能な前輪駆動ベース車両の例である。すなわち、トランスファーやプロペラシャフトを持たず4WD機能を軽量・コンパクトに実現させた4WDシステムとし、2WD車と同様の広い足元空間を確保し、かつ、4WD作動を発進時と前輪スリップ時等の必要時に限ることで燃費の悪化を最小限に抑えている。
前記エンジン2の出力トルクが、変速機&デフギア5を介して左右前輪1L,1Rに伝達されるようになっている。また、エンジン2の出力トルクの一部は、無端ベルト6を介してジェネレーター7(発電機)に伝達される。e-4WDコントロールユニット8によって制御されるジェネレーター7が発電した電力は、パワーケーブル9a,9bを介してモーター4に供給可能になっている。そのパワーケーブル9a,9bの途中位置には、ジャンクションボックス10が設けられている。前記モーター4の駆動トルクは、ファイナルドライブ11を介して左右後輪3L,3Rに伝達可能になっている。なお、モーター4とファイナルドライブ11により、後輪駆動ユニットRTが構成される。
前記ジェネレーター7は、無端ベルト6を介して伝達された回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、e-4WDコントロールユニット8からの発電指令に応じた電力をモーター4へ伝達する。なお、エンジン冷却方式および永久磁石内蔵構造を採用することで、高出力化を図っている。
前記ジャンクションボックス10は、内蔵したモニター回路により通電電流、ジェネレーター電圧、モーター電圧(逆起電圧)をリアルタイムに監視し、システム制御信号及びフェイルセーフ判断信号をe-4WDコントロールユニット8に伝達し、大容量リレーにて電源のON/OFFを行う。なお、車室内空間を犠牲にしない室外レイアウトとしている。
前記パワーケーブル9a,9bは、ジャンクションボックス10を介してジェネレーター7とモーター4を電気的に接続し、左右後輪3L,3Rを駆動する電力を伝達する。なお、ジャンクションボックス10と同様に、車室内空間を犠牲にしない室外レイアウトとしている。
前記モーター4は、パワーケーブル9bを介して供給された電力により駆動力を発生する。モーター4の回転方向や回転数等は、e-4WDコントロールユニット8からのモーター制御指令により制御される。このモーター4の外部出力部(モーター軸)は、ファイナルドライブ11に連結されていて、回転力をファイナルドライブ11に伝達する。なお、モーター4の内部にはサーミスタが設置してあり、e-4WDコントロールユニット8でモーター4の温度を監視している。
前記ファイナルドライブ11は、2ウェイクラッチ12(断続機構)と、電磁クラッチ13と、ギア減速機14と、ディファレンシャルギア15を有し、4WD走行時には2ウェイクラッチ12を係合し、2WD走行時には2ウェイクラッチ12を解放することにより後輪フリクションを低減させるようにしている。このファイナルドライブ11の詳しい説明は後述する。
前記e-4WDコントロールユニット8は、4WDスイッチ20により「4WD」が選択されているとき、必要に応じて4WD制御を行う制御手段である。このe-4WDコントロールユニット8には、4WDスイッチ20からのスイッチ信号、ABSコントロールユニット21からの4輪の各車輪速信号、自動変速機コントロールユニット22からのシフト位置信号、エンジンコントロールユニット23からのアクセル開度信号、油温センサ27(ユニットフリクション検出手段)および油量センサ28(ユニットフリクション検出手段)からのセンサ信号、等が入力される。e-4WDコントロールユニット8では、入力情報に基づいて演算処理を行い、ジェネレーター7に対してジェネレーター制御指令、2ウェイクラッチ12に対してクラッチ制御指令、モーター4に対してモーター制御指令、ジャンクションボックス10に対してリレー制御指令、をそれぞれ出力する。
前記e-4WDコントロールユニット8での制御概要を説明すると、4WDスイッチ20により「4WD」が選択されている時に発進から必要に応じて4WD制御を行う。つまり、e-4WDコントロールユニット8では、「4WD」の選択時で、かつ、発進時または前輪スリップ時には、最適な後輪駆動トルクを演算し、そのトルクが得られるようにジェネレーター7と2ウェイクラッチ12とモーター4とをそれぞれ制御する。このとき、e-4WDコントロールユニット8とエンジンコントロールユニット23との間ではCAN通信(Controller Area Network通信)が行われ、エンジン出力を調整し、4WDらしい安心感のある走行を確保している。また、前輪スリップの発生に伴い4WD制御を開始した後、左右前輪1L,1Rのスリップが収まると、ジェネレーター7の発電を停止し、後輪駆動ユニットRTの2ウェイクラッチ12を切り離して2WD状態にする。
一方、4WDスイッチ20により「2WD」が選択されている時は、2ウェイクラッチ12を切り離して後輪フリクションを小さい状態に保つことで燃費の悪化を防いでいる。なお、システムに異常が発生した場合には、コンビネーションメーター24内の4WD警告灯25を点灯させて異常を知らせる。さらに、4WD走行時には、4WD表示灯26を点灯させて4WD走行中であることをドライバーに知らせる。
図2は実施例1の動力伝達制御装置が適用されたモーター四輪駆動車のファイナルドライブ11を示す断面図である。
前記ファイナルドライブ11は、ファイナルドライブケース30内には、モータ軸が連結される入力ギア軸31と、2ウェイクラッチ12及び電磁クラッチ13を有する中間ギア軸32と、ドライブギア33を入力とし左右の後輪ドライブシャフトを出力とするディファレンシャルギア15と、の3軸が互いに平行に配置されている。なお、このファイナルドライブケース30内には、ギア類の潤滑性を確保し温度上昇を防止するため、ギアの一部が浸漬するレベルまで潤滑油が封入されている。前記油温センサ27と油量センサ28は、この潤滑油の温度と油量を計測するためのセンサである。
前記入力ギア軸31は、一端部にモーター4のモーター軸挿入部31aを有し、他端部に第1ギア部31bを有する。
前記中間ギア軸32は、一端部に第3ギア部32aを形成し、他端部に2ウェイクラッチ12及び電磁クラッチ13を設けている。
前記2ウェイクラッチ12は、第1ギア部31bと噛み合い内周面は円筒面とされた第2ギア付き外輪12a(外輪部材)と、中間軸32に固定され外周に多角形状のカム面を形成した内輪12b(内輪部材)と、前記内外輪12a,12bにより形成されたくさび空間に挟まれたローラ12cと、該複数のローラ12cをローラポケットに保持する保持器12dと、を有する。
前記電磁クラッチ13は、クラッチ係合時にe-4WDコントロールユニット8からの電流が印加される電磁コイル13aと、該電磁コイル13aを収納するフィールドコア13bと、前記第2ギア付き外輪12aに固定されたロータ13cと、前記保持器12dとフィールドコア13bとの軸方向空間位置に配置されたスイッチばねやアーマチュアによる保持器拘束機構13dと、を有する。すなわち、電磁コイル13aへの通電により保持器12dを拘束した状態で内外輪12a,12bが相対回転することで、前記ローラ12cをくさび空間へ移動させるクラッチ係合と、電磁コイル13aへの通電を解除(非通電)により保持器12dの拘束を解除することで、前記ローラ12cを第2ギア付き外輪12aとのクリアランスが確保される内輪12bの中立位置に保持するクラッチ解放と、が制御される。
前記ディファレンシャルギア15は、ファイナルドライブケース30に対し回転可能に支持されたデフケース15aの外周位置に第3ギア部32aと噛み合うドライブギア33を固定している。そして、前記デフケース15aと、該デフケース15aと一体に回転するピニオンメートシャフト15bと、該ピニオンメートシャフト15bに設けられたピニオン15cと、該ピニオン15cに噛み合うと共に左右の後輪ドライブシャフトがスプライン嵌合される左右のサイドギア15d,15eと、を有して構成されている。
前記ギア減速機14は、前記第1ギア部31bと前記第2ギア付き外輪12aと前記第3ギア部32aと前記ドライブギア33により構成され、第1ギア部31bと第2ギア付き外輪12aとの第1減速比と、第3ギア部32aとドライブギア33との第2減速比とを掛け合わせた減速比を得る。
次に、作用を説明する。
[クラッチ係合制御処理]
図3は実施例1のe-4WDコントロールユニット8により実行されるクラッチ係合制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(クラッチ係合制御手段)。
ステップS1では、クラッチ係合指令が出ているか否かが判断され、YESの場合はステップS2へ移行し、NOの場合はステップS1の判断を繰り返す。
ステップS2では、ステップS1でのクラッチ係合指令時であるとの判断に引き続き、油温センサ27からのセンサ信号によりファイナルドライブケース30内の潤滑油の油温を計測し、ステップS3へ移行する。
ステップS3では、ステップS2での油温計測に基づき、計測された油温での粘度(油温が低いほど粘度は高くなる)を計算し、ステップS4へ移行する。
ステップS4では、ステップS3で計算された粘度δに基づき、粘度δが高いほど大きな値によるモータ回転上昇速度dNviscを計算し、ステップS5へ移行する。なお、以下「dN」との記載は、モータ回転数Nの時間微分値である「dN/dt」の略称をあらわす。
この「モータ回転上昇速度dNvisc」は、図4に示すように、
dNvisc=Kvisc×δ+α1
の式により求められる。
ステップS5では、ステップS4でのモータ回転上昇速度dNviscの計算に引き続き、基準モータ回転上昇速度に対する比率(=第1係数K1)を計算し、ステップS6へ移行する。
ここで、第1係数K1は、常温域ではローラジャンプを発生させない上昇速度制限値として設定された基準モータ回転上昇速度をdNbaseとしたとき、
K1=dNvisc/dNbase
の式により求められる。
ステップS6では、ステップS5での第1係数K1の計算に引き続き、油量センサ28からのセンサ信号によりファイナルドライブケース30内の潤滑油の油量Qを計測し、ステップS7へ移行する。
ステップS7では、ステップS6での油量Qの計測に基づき、油量Qが多いほど高いモータ回転上昇速度dNqを計算し、ステップS8へ移行する。
この「モータ回転上昇速度dNq」は、図5に示すように、
dNq=Kq×Q+α2
の式により求められる。
ステップS8では、ステップS7でのモータ回転上昇速度dNqの計算に引き続き、基準モータ回転上昇速度に対する比率(=第2係数K2)を計算し、ステップS9へ移行する。
ここで、第2係数K2は、常温域ではローラジャンプを発生させない上昇速度制限値として設定された基準モータ回転上昇速度をdNbaseとしたとき、
K2=dNq/dNbase
の式により求められる。
ステップS9では、ステップS8での第2係数K2の計算に引き続き、全ての条件を考慮した係合時のモータ回転上昇速度dNcを、
dNc=dNbase×K1×K2
の式を用いて算出し、ステップS10へ移行する。
ステップS10では、ステップS9でのモータ回転上昇速度dNcの算出に引き続き、算出されたモータ回転上昇速度dNcとなる指令をモーター4に対し出力すると共に、電磁クラッチ13の電磁コイル13aに電流を流して2ウェイクラッチ12を係合し、ステップS11へ移行する。
ステップS11では、ステップS10での2ウェイクラッチ12の係合によりモーター4からのトルクを左右後輪3L,3Rに伝達し、エンドへ移行する。
[駆動力の断接機構として2ウェイクラッチを採用するときの課題]
例えば、特開2000−272367号公報には、原動機によって前輪を回転駆動すると共に発電機を回転駆動して発電し、その電力で電動機を回動し、その動力をクラッチ及び減速機を通して後輪に伝達させるモーター四輪駆動車が知られている。
このモーター四輪駆動車の後輪駆動ユニットに設けられるクラッチとして、例えば、特開平11−342761号公報や特開平11−336799号公報に開示の2ウェイクラッチを適用する場合、下記に述べる問題点がある。
・問題点1
図6(a)において、外輪:出力、ローラ、内輪:入力(モーター)で、クラッチ係合するとき、モーター上昇速度が速い制御になっていたため、図6(b)に示すように、ローラが駆動側のくさび角θRから弾かれ、図6(c)に示すように、ローラが反対側に移動し、図6(d)に示すように、ローラが反対側のくさび角θLで当たって、図6(e)に示すように、ローラがくさび角θR側に移動するというローラジャンプ現象が発生する。この結果、係合不良・異音・ショック等が発生する。
・問題点2
図7(a)において、外輪:入力(モーター)、ローラ、内輪:出力で、クラッチ係合するとき、モーター上昇速度が速い制御になっていたため、図7(b)に示すように、ローラが駆動側のくさび角θRから弾かれ、図7(c)に示すように、ローラが反対側に移動し、図7(d)に示すように、ローラが反対側のくさび角θLで当たって、図7(e)に示すように、ローラがくさび角θL側に移動するというローラジャンプ現象が発生する。この結果、係合不良・異音・ショック等が発生する。
・問題点3
上記問題点1,2を解決するために、モーターの回転上昇速度を遅くするという制御を行うと、潤滑油の粘度等により、ユニットフリクションが高い場合、2ウェイクラッチの係合時間が遅すぎるため、駆動スリップを抑えた4輪駆動性能が十分に得られない。
[2ウェイクラッチの係合作用]
これに対し実施例1では、2ウェイクラッチ12の係合時、クラッチ入力回転数の上昇速度を、ローラジャンプを発生させない上昇速度制限値以下に規定するクラッチ係合制御手段を設けることで、2ウェイクラッチの係合時、ローラジャンプの発生を防止するようにした。
すなわち、2ウェイクラッチ12の係合時、ファイナルドライブケース30内の潤滑油の油温が常温域で、かつ、潤滑油量が適量である場合、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進み、ステップS5では、潤滑油の油温が常温域であることで第1係数K1の値がほぼ1と計算され、さらに、ステップS6→ステップS7→ステップS8へと進み、ステップS8では、潤滑油の油量が適量であることで第2係数K2の値がほぼ1と計算され、さらに、ステップS9へと進み、クラッチ係合時のモータ回転上昇速度dNcが、ほぼ基準モータ回転上昇速度dNbaseと同じ値で算出され(K1≒1,K2≒1)、ステップS10→ステップS11へと進み、モーター制御側では、モータ回転上昇速度をモータ回転上昇速度dNcに制限する制御を行いながら、電磁コイル13aへの通電により2ウェイクラッチ12を係合し、左右後輪3L,3Rにトルクが伝達される。
よって、2ウェイクラッチ12を係合する際のモータ回転上昇速度dNcが、ローラジャンプを発生させない基準モータ回転上昇速度dNbaseのレベルに制限されることで、2ウェイクラッチ12の係合がスムーズで速やかに達成され、2ウェイクラッチ12の係合時における異音やショックの発生も防止される。
一方、2ウェイクラッチ12の係合時、ファイナルドライブケース30内の潤滑油の油温が極低温で、かつ、潤滑油量が過大である場合、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進み、ステップS5では、潤滑油の油温が極低温であり粘度δが高いことで第1係数K1の値が1以上の大きな値とされ、さらに、ステップS6→ステップS7→ステップS8へと進み、ステップS8では、潤滑油の油量が過大であることで第2係数K2の値が1以上の大きな値とされ、さらに、ステップS9へと進み、クラッチ係合時のモータ回転上昇速度dNcが、基準モータ回転上昇速度dNbaseより大きな値で算出され(K1>1,K2>1)、ステップS10→ステップS11へと進み、モーター制御側では、モータ回転上昇速度の制限を緩和、あるいは、制限を解除したモータ回転上昇速度dNcとし、電磁コイル13aへの通電により2ウェイクラッチ12を係合し、左右後輪3L,3Rにトルクが伝達される。
つまり、2ウェイクラッチ12を係合する際、潤滑油の油温が極低温で粘度が高いと、減速ギアで押し分ける際の流動抵抗によりユニットフリクションが高くなるし、また、潤滑油量が過大であっても、減速ギアによる攪拌抵抗でユニットフリクションが高くなる。このように、ユニットフリクションが高いときには、2ウェイクラッチ12を係合させるべく電磁コイル13aを通電しても、ユニットフリクションが低いときに比べ、第2ギア付き外輪12aと内輪12bとが相対回転してローラ12cがくさび空間に噛み込まれる応答速度が遅くなる。言い換えると、ユニットフリクションが高いときには、2ウェイクラッチ12への入力回転を上昇させるモータ回転上昇速度に制限を加えなくともローラジャンプの発生がなく、モータ回転上昇速度に制限を加えた場合には、逆に、2ウェイクラッチ12の係合遅れを招くことになる。
よって、2ウェイクラッチ12を係合する際、ユニットフリクションが高くなる状況では、モータ回転上昇速度dNcの制限を緩和、あるいは、制限を解除することにより、ローラジャンプの発生を防止しつつ、2ウェイクラッチ12の係合応答性の確保を図ることができる。この結果、発進時等において駆動スリップを抑制し、エンジン2及びモーター4の駆動力を有効に路面に伝達する4輪駆動性能を十分に得ることができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の車両の動力伝達制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 駆動源から入力される駆動入力を、断続機構及び減速機を介して出力する車両の動力伝達制御装置において、前記断続機構として、外輪部材12aと内輪部材12bとローラ12cと保持器12dとを有し、外部からの指令により、前記ローラ12cをくさび空間へ移動させるクラッチ係合と、前記ローラ12cを中立位置に保持するクラッチ解放と、が制御される2ウェイクラッチ12を設け、前記2ウェイクラッチの係合時、クラッチ入力回転数の上昇速度を、ローラジャンプを発生させない上昇速度制限値以下に規定するクラッチ係合制御手段を設けたため、2ウェイクラッチ12の係合時、ローラ12cが駆動側のくさび角から弾かれて反対側のくさび角に当たるローラジャンプの発生を防止することができる。
(2) 前記2ウェイクラッチを含んで構成された後輪駆動ユニットRTのユニットフリクションを検出するユニットフリクション検出手段を設け、前記クラッチ係合制御手段は、検出されるユニットフリクションが高いほど上昇速度制限値を大きな値とするため、ユニットフリクションが高い場合に2ウェイクラッチ12の係合応答性を確保することができる。
(3) 前記ユニットフリクション検出手段は、駆動ユニット内の潤滑油の油温相当値を検出するため、潤滑油の粘度と対応関係にある油温により、ユニットフリクションを検出することができる。
(4) 前記ユニットフリクション検出手段は、駆動ユニット内の潤滑油の油量を検出するため、回転攪拌抵抗と対応関係にある潤滑油量により、ユニットフリクションを検出することができる。
(5) 前記クラッチ係合制御手段は、2ウェイクラッチ12の係合時、駆動ユニット内の潤滑油の粘度が高いほど大きな値になるモーター回転上昇速度dNviscを求め、ローラジャンプを発生させない基準回転上昇速度dNbaseに対するモーター回転上昇速度dNviscの比率として第1係数K1を求め、駆動ユニット内の潤滑油の油量が多いほど大きな値になるモーター回転上昇速度dNqを求め、基準回転上昇速度dNbaseに対するモーター回転上昇速度dNqの比率として第2係数K2を求め、基準回転上昇速度dNbaseに第1係数K1と第2係数K2とを掛け合わせて上昇速度制限値dNcを求めるため、ユニットフリクションに影響を与える潤滑油の粘度と油量を共に考慮し、ローラジャンプの発生防止と2ウェイクラッチ12の係合応答性とを両立する最適なモーター回転上昇速度制限値dNcを得ることができる。
(6) 前記車両は、主駆動輪をエンジン2により駆動し、従駆動輪をモーター4により駆動し、前記モーター4は、前記エンジン2により駆動されるジェネレーター7にて発電される電気エネルギーによって駆動されるモーター四輪駆動車であり、前記2ウェイクラッチ12は、前記モーター4を有する従駆動輪の後輪駆動ユニットRT内に、ギア減速機14と共に設けた断続機構であるため、モーター四輪駆動車の後輪駆動ユニットRT内にギア減速機14と共に設ける断続機構として2ウェイクラッチ12を採用した場合、2ウェイクラッチ12の係合時にモーター4の回転上昇速度が速いことに起因するローラジャンプを確実に防止することができる。
以上、本発明の車両の動力伝達制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、ユニットフリクション検出手段として、油温相当値と油量を検出する例を示したが、例えば、停車時にモーターに対し0から徐々に立ち上がる駆動電流を印加した場合、ファイナルドライブが動作を開始するモータ駆動電流の大きさによりユニットフリクションを検出する等、他の手段により検出したり、実施例1の検出手段に他の検出手段を加えても良い。
実施例1では、ユニットフリクションが大きいほどモータ回転上昇速度の制限を緩和する例を示したが、例えば、ユニットフリクションが所定値になるまではモータ回転上昇速度の制限を緩和し、ユニットフリクションが所定値以上で、ローラジャンプの発生しない領域、あるいは、ローラジャンプの発生が問題とならない領域になるとモータ回転上昇速度の制限を解除するようにしても良い。
本発明の動力伝達制御装置は、左右前輪をエンジンにより駆動する前輪駆動ベースのモーター四輪駆動車への適用例を示したが、左右後輪をエンジンにより駆動する後輪駆動ベースのモーター四輪駆動車へも適用することができるのは勿論のこと、駆動源(エンジンやモーター等)から入力される駆動入力を、2ウェイクラッチ及び減速機を介して出力する様々な動力伝達系に適用することができる。
実施例1の動力伝達制御装置が適用されたモーター四輪駆動車を示す全体システム図である。 実施例1の動力伝達制御装置が適用されたモーター四輪駆動車のファイナルドライブを示す断面図である。 実施例1のe-4WDコントロールユニットにより実行されるクラッチ係合制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1のクラッチ係合制御処理において粘度に対するモータ回転上昇速度の計算式および計算マップ図である。 実施例1クラッチ係合制御処理において油量に対するモータ回転上昇速度の計算式および計算マップ図である。 2ウェイクラッチへの内輪入力時におけるローラジャンプの発生メカニズム説明図である。 2ウェイクラッチへの外輪入力時におけるローラジャンプの発生メカニズム説明図である。
符号の説明
1L,1R 左右前輪(主駆動輪)
2 エンジン
3L,3R 左右後輪(従駆動輪)
4 モーター(電動モーター)
5 変速機&デフギア
6 無端ベルト
7 ジェネレーター(発電機)
8 e-4WDコントロールユニット
9a,9b パワーケーブル
10 ジャンクションボックス
11 ファイナルドライブ
12 2ウェイクラッチ(断続機構)
12a 第2ギア付き外輪(外輪部材)
12b 内輪(内輪部材)
12c ローラ
12d 保持器
13 電磁クラッチ
14 ギア減速機
15 ディファレンシャルギア
20 4WDスイッチ
21 ABSコントロールユニット
22 自動変速機コントロールユニット
23 エンジンコントロールユニット
24 コンビネーションメーター
25 4WD警告灯
26 4WD表示灯
27 油温センサ(ユニットフリクション検出手段)
28 油量センサ(ユニットフリクション検出手段)

Claims (6)

  1. 駆動源から入力される駆動入力を、断続機構及び減速機を介して出力する車両の動力伝達制御装置において、
    前記断続機構として、外輪部材と内輪部材とローラと保持器とを有し、外部からの指令により、前記ローラをくさび空間へ移動させるクラッチ係合と、前記ローラを中立位置に保持するクラッチ解放と、が制御される2ウェイクラッチを設け、
    前記2ウェイクラッチの係合時、クラッチ入力回転数の上昇速度を、ローラジャンプを発生させない上昇速度制限値以下に規定するクラッチ係合制御手段を設けたことを特徴とする車両の動力伝達制御装置。
  2. 請求項1に記載された車両の動力伝達制御装置において、
    前記2ウェイクラッチを含んで構成された駆動ユニットのユニットフリクションを検出するユニットフリクション検出手段を設け、
    前記クラッチ係合制御手段は、検出されるユニットフリクションが高いほど上昇速度制限値を大きな値とすることを特徴とする車両の動力伝達制御装置。
  3. 請求項2に記載された車両の動力伝達制御装置において、
    前記ユニットフリクション検出手段は、駆動ユニット内の潤滑油の油温相当値を検出することを特徴とする車両の動力伝達制御装置。
  4. 請求項2に記載された車両の動力伝達制御装置において、
    前記ユニットフリクション検出手段は、駆動ユニット内の潤滑油の油量を検出することを特徴とする車両の動力伝達制御装置。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載された車両の動力伝達制御装置において、
    前記クラッチ係合制御手段は、2ウェイクラッチの係合時、駆動ユニット内の潤滑油の粘度が高いほど大きな値になる第1回転上昇速度を求め、ローラジャンプを発生させない基準回転上昇速度に対する前記第1回転上昇速度の比率として第1係数を求め、駆動ユニット内の潤滑油の油量が多いほど大きな値になる第2回転上昇速度を求め、前記基準回転上昇速度に対する前記第2回転上昇速度の比率として第2係数を求め、前記基準回転上昇速度に前記第1係数と第2係数とを掛け合わせて前記上昇速度制限値を求めることを特徴とする車両の動力伝達制御装置。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載された車両の動力伝達制御装置において、
    前記車両は、主駆動輪をエンジンにより駆動し、従駆動輪を電動モーターにより駆動し、前記電動モーターは、前記エンジンにより駆動される発電機にて発電される電気エネルギーによって駆動されるモーター四輪駆動車であり、
    前記2ウェイクラッチは、前記電動モーターを有する従駆動輪の駆動ユニット内に、ギア減速機と共に設けた断続機構であることを特徴とする車両の動力伝達制御装置。
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