JP4030372B2 - 河川の水位予測装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川の水位を予測する水位予測装置に係り、とりわけ河川の水位を精度良く予測できる河川の水位予測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、分水路が本流河川に合流する地点には排水機場が設置されている。また排水機場には、排水ポンプ場と本流河川に合流する分水路がある。通常時は、分水路の水は自然流下で本流河川に合流しているが、大雨により本流河川側の水位が高くなった場合は、本流河川から分水路側に逆流が起こり、分水路において河川の氾濫が生じる恐れがある。このため大雨時には、分水路と本流河川が合流する付近に設けられた水門を閉鎖して、本流河川から分水路への逆流を防止した上で、さらに排水ポンプにより分水路の水を本流河川へ放流している。この際、排水ポンプの起動および起動させるポンプ台数の増減のタイミングが重要であるが、適切なタイミングを把握するために河川の水位を精度良く予測し、その河川水位予測結果に基づいて排水ポンプの運転支援を行うことが望まれる。
【0003】
この排水ポンプの運転の支援および排水ポンプの制御を目的とした河川水位予測においては、長期の水位予測より1時間以内の短期の水位予測が重要である。特に水位変化が急激に生じる状況における高精度な水位予測を達成することが重要となる。この重要となる理由として、一般に水門操作(全開⇔全閉)および排水ポンプの起動に10分程度の時間がかかるため、一連の操作に数十分程度の時間を必要とされる。この数十分程度の時間の間に、水位変化の状況に応じて、求められる要求(排水ポンプ運転台数および水門開度等)が変化する。従って、これら排水ポンプおよび水門等の操作の適切なタイミングを決定することが、排水機場の運転において最も重要なポイントとなり、これを実現するために1時間以内の高精度な水位予測がキーポイントとなる。
【0004】
河川水位予測を行うためには、予測のためのモデルを構築する必要があり、この予測モデル構築の手段の1つとして、実際に収集された水位および降雨量等の時系列データに基づいてモデルを構築する方法が存在する。この方法は、短時間かつ精度の高い予測を行う場合に、最適である。
【0005】
一般に時系列データに基づいてモデリングを行う方法としては、多変量解析(重回帰分析等)、ニューラルネットワークおよびシステム同定手法等が良く知られており、広く産業分野で用いられている。これらの手法は、相互に関連があり独立したものではないが、このうちシステム同定手法は(時間的な)予測および制御を目的としたモデル構築法として極めて有効である。システム同定手法の最大の特徴は、モデリングに際し、プロセスの時間的(または空間的)なダイナミクスを強く意識してモデル構造およびパラメータ同定アルゴリズムが考えられている点である。
【0006】
またダイナミクスシステムとしての観点からの様々な解析(これに基づくモデル構築)が可能となる。例えば、プロセスに混入する外乱雑音の(通常フィルターとして表現される)ダイナミックな特性の考慮、周波数領域でのプロセス特性解析および極と零点の解析を通じたプロセスの特性把握とプロセスモデルの低次元化を行うことができる。これらのダイナミクスシステムとしての解析(とこれに基づくモデル構築)を行うことによって、予測精度の大幅な向上を図ることができる。
【0007】
特に河川水位変動の様に、(1)様々な自然現象(および人為的な操作)が相互に干渉し、このような複合要因の結果として水位変動が生じ、かつ(2)河川水位の変動を生じさせる要因の多くは自然現象であり、人為的に操作することができない場合、すなわち上述の(1)および(2)の特徴をもつ開放系の水位予測を行う場合には、プロセスの外乱特性を適切な形で考慮して水位予測モデルを構築することが、予測精度を向上させる上で非常に重要なポイントとなる。
【0008】
開放系の水位予測において、プロセス外乱特性を適切に考慮することが重要となる理由は次の通りである。開放系においては、予測モデルの入力となる要因の多くは人為的に操作できないため、モデルを構築する際に得られる時系列データの数と質が限られる。これらの限られたデータから予測モデルを構築する際には、考えられる要因をすべて予測モデルの入力として採用するよりも、予測に大きな影響を与えるいくつかの相互に独立した要因を入力として採用した方が良いことが知られている。しかしながら、これらの予測に大きな影響を与える要因を用いて予測モデルを構築する際、考慮しなかった残りの要因は外乱として水位予測に影響する。このため、予測モデル構築において外乱特性を適切に考慮することは、予測精度向上のために非常に重要となる。
【0009】
河川水位予測において、複数箇所に設置された降雨量計データによる雨量データおよび上流側にあるポンプ所の吐出量は水位変動に影響を与えるが、これらのデータは相互に強い相関を有している(多変量解析の分野において、「多重共線性」と呼ぶ)。
【0010】
雨量データ同士が強い相関を有するのは自然現象として当然であり、また雨量データとポンプ吐出量が相関を持つのは、雨量が多ければ吐出量もそれに応じて多くなるからである。そのため、どの雨量データあるいはポンプ吐出量データが各々どれ位、水位変動に影響を与えたかを時系列データから区別するのは困難である。従って、これらの雨量データと吐出量データの中から、いくつかの主要な要因と思われるものを選択し、選択された主要な要因を入力として用い、予測モデルを構築することになる(これは、予測モデルのパラメータを同定する際に、数値的安定性の観点からも必要となる)。
【0011】
ここで、例えば降雨量を入力とした場合に、上流側にあるポンプ所の吐出量が何らかの理由で降雨と相関を持たない様な形で変動し、予測対象である河川水位に影響した場合には、この吐出量は外乱として河川水位に作用する。すなわち、外乱の作用が適切に予測モデルに取り込まれていなければ予測精度が劣化してしまうため、この外乱特性を適切に考慮して予測モデルを構築する必要がある。
【0012】
ところでシステム同定法において、適用されるモデルの中で外乱特性を記述する様々な方法がある。このような外乱特性を記述する方法として大きく分けると、ARX(Autoregressive model with exogenous input ;ARX)モデルに代表される式誤差モデルと、FIR(Finite Impulse Response)モデルに代表される出力誤差モデルとがある(厳密にはFIRモデルは、出力誤差モデルであると同時に式誤差モデルでもあるが、予測の観点からは出力誤差モデルと考える方がよい)。この外乱特性の記述法の違いは、結果的に予測方法の違いとなって現われ、さらにこの予測方法の違いが予測精度に影響を与える。
【0013】
ARXモデル(式誤差モデル)においては、河川水位変化の間接要因である過去の水位変化の自己回帰部分による予測と、河川水位変化の直接要因である降雨量およびポンプ吐出量等の外部入力部分による予側と、によって河川水位予測が行われる。一方、FIRモデル(出力誤差モデル)おいては、直接要因である外部入力による予測によってのみ河川水位予測が行われる。ここで過去の河川水位を間接要因としたのは、直接要因である降雨量や上流側ポンプ吐出量の変化の結果として過去の水位が変化し、その過去の水位が未来の水位に変化を与えているからである。すなわち、過去の水位は未来の水位を変化させるための「本当の要因」ではないからである。
【0014】
上述の2つの予測モデルによる予測方法は各々以下の様な特徴を有している。
【0015】
(1)予測モデルがARXモデルの場合、例えば上述の上流側ポンプ吐出量のような外乱による水位変動がある場合においても、予測モデルは自己回帰部分で実測水位を予測に取り込んでいる。このため予測モデルは、外乱に対してある程度頑強に対処することができ、予測を修正することができる。一方で、予測モデルにおいて、前述の様に限られたデータによってしか同定を行うことができないため、降雨などの直接要因を正しく同定できない。これにより、間接要因である自己回帰部分が相対的に予測に大きく影響を与える様に、予測モデルのパラメータが同定されてしまう場合が多い。さらに、直接要因である降雨量およびポンプ吐出量等の外部入力が急激に変化しても、予測モデルは間接要因である過去の河川水位を考慮してから、この外部入力の急激な変化を予測に反映する。すなわち、予測が後追いになってしまい、特に急激な水位変化時において予測精度が劣化する。
【0016】
(2)予測モデルがFIRモデルの場合、予測モデルは直接要因である外部入力の項のみを有している。それにより、パラメータの同定のために用いることのできるデータの数および質が限られることから、間接要因にパラメータの同定結果が左右されることは無い。したがって急激な水位変化時に予測が後追いになるという問題は無く、また予測モデルは予測精度が悪い場合に、どの要因が主たる原因なのかを比較的容易に判断できる。しかしながら、その一方で予測モデルは入力として採用しなかった何らかの要因によって水位が変動する場合に対処できず、予期しない水位変化が起こった場合の予測の修正ができない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、河川水位予測の様な開放系の予測に対して、単純にARXモデルまたはFIRモデルを適用して予測を行うと、(3)(特に急激な水位変化時における)予測精度の劣化(予測の後追い)(4)考慮していない要因の影響による水位の予測精度の劣化、という2つの問題が生じ、この両方を同時に解決することは困難である。
【0018】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、上記(3)および(4)の両方に対処できるような予測モデルを構築し、精度良く水位を予測することができる河川の水位予測装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、河川の水位変動要因を計測する河川水位変動要因計測部と、河川水位変動要因計測部からの情報に基づいて河川の水位を予測するとともに、過去から現在までの水位に基づいて水位を予測する第1予測モデル部分、および過去から現在までの河川水位変動要因計測部からの情報に基づいて水位を予測する第2予測モデル部分を、有する水位予測モデルと、水位予測モデルの同定を行うモデル同定部とを備え、モデル同定部は水位予測モデルの第1予測モデル部分のパラメータと第2予測モデル部分のパラメータのうち少なくとも一方を河川水位変動要因計測部からの情報に基づいて求めることを特徴とする河川の水位予測装置である。
【0020】
本発明は、水位予測モデルは、その雑音部分に予めフィルタを通したノイズ部をもち、第1予測モデル部分のパラメータはフィルタを設計することにより特定され、モデル同定部は、第2予測モデル部分のパラメータのみを求めることを特徴とする河川の水位予測装置である。
【0021】
本発明は、河川変動要因は複数設定され、モデル同定部は、河川変動要因のうち特定の河川水位変動要因に基づいて水位予測モデルの第1予測モデル部分のパラメータと当該河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータを求め、求められた第1予測モデル部分のパラメータと当該河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータに基づいて、他の河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータを求めることを特徴とする河川の水位予測装置である。
【0022】
本発明は、モデル同定部は水位予測モデルの第1予測モデル部分のパラメータと第2予測モデル部分のパラメータを河川水位変動要因計測部からの情報に基づいて各々独立して求め、さらに第1予測モデル部分のパラメータと第2予測モデル部分のパラメータに対して水位予測モデルのパラメータとして適合させるよう予め設定された変換を行うことを特徴とする河川の水位予測装置である。
【0023】
本発明は、水位予測モデルのノイズ部は、所望の周波数帯域において重み付けされていることを特徴とする河川の水位予測装置である。
【0024】
本発明は第1予測モデル部分のパラメータと特定の河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータに基づいて、他の河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータを求める際、第1予測モデル部分の周波数特性に適合した計算式を用いることを特徴とする河川の水位予測装置である。
【0025】
本発明は、第1予測モデル部分のパラメータと第2予測モデル部分のパラメータに対して水位予測モデルのパラメータとして適合させるよう変換する際、可観測正準形を用いて変換することを特徴とする河川の水位予測装置である。
【0026】
本発明によれば、急激な水位変化時における水位予測精度の劣化および考慮していない要因の影響による水位の予測精度の劣化を防止して、精度良く水位を予測することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
第1の実施の形態
以下、図1、図2および図4を参照して本発明による河川の水位予測装置の第1の実施の形態について説明する。
【0028】
第1の実施の形態は、河川の水位予測装置で用いる水位予測モデルの同定にあたって、水位予測モデルのうち自己回帰部分のパラメータをフィルタ設計時に特定するとともに、FIRモデル部分のパラメータのみをモデル固定部により求めるものである。
【0029】
図2に示すように、分水路4が本流河川2に合流する地点に排水機場1が設置され、分水路4と合流した本流河川2は、海10に連なっている。また分水路4と本流河川2が合流する付近には、本流河川2から分水路4への逆流を防止する水門3と、水門3により本流河川2から分水路4への逆流を防止し、分水路4の水を本流河川2へ放流するポンプ(排水ポンプ)9が設けられている。
【0030】
図1は、本発明による河川の水位予測装置の第1の実施の形態を示す図である。
【0031】
図1に示すように、本発明による河川の水位予測装置11は、分水路4に設けられ、過去から現在までの分水路(河川)4の水位を計測する水位計測部5と、本流河川2および分水路4に各々一つずつ設けられ、過去から現在までの河川2、4流域の降雨量を計測する降雨量計測部7、8とを備えている。
【0032】
また海10には、過去から現在までの海10の潮位を計測する潮位計測部6が設置されている。さらにポンプ9には、過去から現在までのポンプ9の吐出量(ポンプの運転状況)を計測する吐出量計測部16が設置され、水門3には、過去から現在までの水門3の開閉度(水門運用状況)を計測する開閉度計測部15が設置されている。そしてこれら水位計測部5,潮位計測部6、降雨量計測部7,8、吐出量計測部16、および開閉度計測部15は、入出力データ保存手段30を介してモデル同定部21により同定される水位予測モデル20に接続されている。
【0033】
モデル同定部21は、自己回帰パラメータ22と、吐出量パラメータ23と、開閉度パラメータ24と、降雨量パラメータ25と、水位パラメータ26と、潮位パラメータ27とを有する水位予測モデル20の同定を行なうものである。すなわちモデル同定部21は吐出量計測部16からの吐出量と、開閉度計測部15からの開閉度と、水位計測部5からの水位と、各降雨量計測部7、8からの降雨量と、潮位計測部6からの潮位に基づいて、各パラメータの次数および各パラメータの係数を決定し、確定された水位予測モデル20を構築する。
【0034】
次にこのような構成からなる実施の形態の作用について説明する。
【0035】
潮位計測部6は、海10の潮位を計測し、各降雨量計測部7、8は、本流河川2流域および分水路4流域の降雨量を計測する。また水位計測部5は、分水路4の水位を計測し、吐出量計測部16は、ポンプ9の吐出量を計測し、開閉度計測部15は、水門3の開閉度を計測する。
【0036】
このうち潮位計測部6、降雨量計測部7,8、開閉度計測部15、および吐出量計測部16は、河川の水位変動要因である潮位、降雨量、開閉度を計測する変動要因計測部となる。
【0037】
潮位計測部6、各降雨量計測部7、8、水位計測部5、吐出量計測部16および開閉度計測部15は、計測された潮位、降雨量、水位、吐出量および開閉度を入出力データ保存手段30に送って保存する。入出力データ保存手段30は過去から現在までの計測値を時系列に保存した後、モデル同定部21および水位予測モデル20へ送る。モデル同定部21は、送信された潮位、降雨量、水位、吐出量および開閉度に基づいて、水位予測モデル20について同定を行い、水位予測モデルの各パラメータの次数および各パラメータの係数を決定し、確定した水位予測モデル20を構築する。
【0038】
次に、確定した水位予測モデル20により、潮位計測部6、降雨量計測部7,8、吐出量計測部16および開閉度計測部15から送られる潮位、降雨量、吐出量および開閉度に基づいて、河川2の水位が予測される。
【0039】
水位予測モデル20により河川2の水位が予測されると、予測水位は表示装置31により表示されるとともに、運転支援手段32へ送られる。
【0040】
次に、上述の水位予測モデルについて同定を行って、水位予測モデルの各パラメータの次数および各パラメータの係数を決定する方法について、図4により詳細に説明する。
【0041】
水位予測モデル20は下記の(1式)に示すARXモデルを含んでいる。
【0042】
【数1】
Figure 0004030372
ここで、上記(1式)の各パラメータは以下を示している。
【0043】
(k) :潮位計測部からの潮位(入力)
(k) :降雨量計測部からの降雨量(入力)
(k) :吐出量計測部からの吐出量(入力)
(k) :河川の水位(出力)
e(k) :ノイズ部
A(z) :自己回帰パラメータ(自己回帰部分)22
(z) :潮位パラメータ(潮位(入力)に対するFIRモデル部分)27
(z) :降雨量パラメータ(降雨量(入力)に対するFIRモデル部分)25
(z) :吐出量パラメータ(吐出量(入力)に対するFIRモデル部分)23
z :シフトオペレータ
上記パラメータのうち自己回帰部分22は過去から現在までの河川の水位に基づいて水位を予測する第1予測モデル部分となり、FIRモデル部分23,24,25,27は過去から現在までの河川の水位変動要因計測部6,7,8,15,16からの情報に基づいて水位を予測する第2予測モデル部分となる。
【0044】
まず、モデル同定部21が入力として潮位u(k)のみを考慮した下記(2式)を用いて、潮位u (k)のB(z)(潮位パラメータ)27の同定を行う方法について説明する。
【0045】
モデル同定部21は、上記(1式)より、入力として潮位u (k)のみを考慮した下記(2式)を求める。
【0046】
【数2】
Figure 0004030372
モデル同定部21は、フィルタを含むノイズ部により、水位予測モデルの変換を水位予測モデルに対して行う。すなわちモデル同定部21は、上記(2式)をARXモデルの雑音部分に予めフィルタL(z)を通したノイズモデルを持つように変換し、下記の(3式)を求める。
【0047】
【数3】
Figure 0004030372
すなわち上記(4式)および(5式)において、予め入力データおよび出力データから差分をとることになる。これは従来のシステム同定手法では対処できないオフセットについて効果的に対処できることを意味し、同定精度の向上を図ることができる。一般的に上記(4式)および(5式)のように差分をとったデータは、オフセットを除去する効果があり、低周波数帯域において0に近いゲインを持つハイパスフィルタにも同様の機能がある。すなわちハイパスフィルタに予めデータをフィルタリングすることにより、オフセットを除去することが可能となる。また、このハイパスフィルタは同定する対象ではなく、設計の対象であることから目的に応じて、このハイパスフィルタを設計することができるという特徴がある。
【0048】
モデル同定部21は、上記(3式)において自己回帰パラメータA(z)=1を代入し、下記の(6式)を求める。すなわちモデル同定部21は、潮位パラメータ(FIRモデル部分)B(z)27のみについて同定を行い、潮位パラメータ(FIRモデル部分)B(z)27の次数および係数を決定する。
【0049】
ここで、B(z)=−1−2+・・・+−mとする。
【0050】
【数4】
Figure 0004030372
上述したようにモデル同定部21は、水位計測部5からの水位と、潮位計測部6からの潮位に基づいて、最小二乗法を用いて上記(式7)の潮位パラメータB(z)27の同定を行い、潮位パラメータ(FIR部分)B(z)27の次数および係数を決定する。ここで、モデル同定部21は、最小二乗法を用いてパラメータの同定を行っているが、他の方法を用いて同定を行っても良い(以下、パラメータの同定において、同様とする)。
【0051】
なおモデル同定部21は、他の入力である降雨量u (k)のB(z)(降雨量パラメータ)25に関してもB(z)と同様に、B(z)(降雨量パラメータ)25の次数および係数を決定し、吐出量u (k)のB(z)(吐出量パラメータ)23に関してもB(z)と同様に、B(z)(吐出量パラメータ)23の次数および係数を決定する。
【0052】
なお上式(式7)において、L(z)は設計パラメータであることから、モデル同定部21は(式7)のFIRモデル部分(B(z))28のみについて同定を行う。しかしながら、モデル同定部21が(式7)のFIRモデル部分(B(z))28のみについて同定したとしても、(式7)において自己回帰部分(1−L(z))22が含まれていることから、予測水位を求める過程において、自己回帰部分(1−L(z))22が考慮されることになる。
【0053】
以上説明したように本実施の形態によれば、予測水位を求める過程において自己回帰部分(1−L(z))22が考慮されることにより、出力である水位y(k)の過去を考慮することができ、未知の外乱に対しても頑強な予測結果が期待できる。その一方で、モデル同定部21は、FIRモデル部分(B(z))28のみについて同定を行っているので、自己回帰部分22の影響を減少させ、急激な水位変化に対して予測が後追いになってしまう現象を避けることができる。
【0054】
ここでL(z)(設計パラメータ)としては、非常に変化の早い外部入力の予測精度を高めるため、上述した差分フィルタ(ハイパスフィルタ)が設計されているが、一定の速さ以上の変化を外乱と見なしたい場合は、一定の帯域幅(一般に高域側)を持つよう重み付けされたバンドパスフィルタを設計してもよい。すなわちL(z)(設計パラメータ)おいて、予測精度を高めたい周波数帯域を設計者が選択することができる。
【0055】
例えば10分先から30分先までの水位予測が必要な場合においては、その予測時間に対応する0.007rad/sから0.01rad/sまでの周波数帯域を選択するようにする。
【0056】
なおモデル同定部21は、(6式)においてL(z)=1として、自己回帰部分(1−L(z))22を考慮せずにFIRモデル部分28のみを同定するだけで水位予測モデルを構築することが可能となる。外乱の影響が無視できるようなケースにおいて、FIRモデル部分28のみを同定する手法は、入力の出力に対する影響を考慮しながら同定を行うことができるため、十分な数と、十分な質の入力が得られている場合、自然現象に対する同定において有効な手段となる。
【0057】
次に本発明の変形例について説明する。
【0058】
本発明は、河川4の水位予測プロセスを対象としているが、これに限らず、雨水ポンプ場への雨水流入量予測プロセス、下水道管渠内幹線流量および水位予測プロセス、上下水処理プロセス等の自然現象を同定対象とする開放系プロセスを対象としてもよい。
【0059】
第2の実施の形態
次に図1および図5により本発明の第2の実施の同定について説明する。
【0060】
図1は、本発明による河川の水位予測装置の第2の実施の形態を示している。
【0061】
第2の実施の形態は、水位予測モデルの同定にあたって、まず、晴天時における河川水位変動要因に基づいて自己回帰部分のパラメータとFIRモデル部分のパラメータを求め、その後雨天時および大雨時における他の河川水位変動要因に基づいて他のFIRモデル部分のパラメータを順次求めるものである。
【0062】
第2実施の形態において、水位予測モデルの各パラメータの次数および各パラメータの係数の決定方法が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分ついては詳細な説明は省略する。
【0063】
モデル同定部21は、水位計測部5からの水位と、降雨量計測部7、8からの降雨量とに基づいて、潮位パラメータ27または降雨量パラメータ25のうちいずれか一方に関するパラメータの次数およびパラメータの係数と、自己回帰パラメータ22に関するパラメータの次数およびパラメータの係数を決定し(ARXモデルの同定)、決定された潮位パラメータ27または降雨量パラメータ25の一方と、自己回帰パラメータ22と、水位計測部5からの水位と、潮位計測部6からの潮位と、降雨量計測部7、8からの降雨量とに基づいて、潮位パラメータ27または降雨量パラメータ25のうち他方に関するパラメータの次数およびパラメータの係数を決定する(FIRモデル部分の同定)。
【0064】
すなわちモデル同定部21は、以下の3つの(Step)により確定した水位予測モデルを構築する。ここでモデル同定部21は、(1式)の自己回帰パラメータA(z)、潮位パラメータB(z)、降雨量パラメータB(z)および吐出量パラメータB(z)の次数および係数を決定し、確定した水位予測モデルを構築する。
【0065】
(Step1)図5に示すように、モデル同定部21は、晴天時において、(1式)を用いて、潮位計測部6からの潮位と、水位計測部5からの水位とに基づいて、最小二乗法を用いて(8式)を同定し、(8式)の自己回帰パラメータA(z)の係数および次数と潮位パラメータ(FIR部分)B(z)の次数および係数を決定する。
【0066】
ここで、B(z)=−1−2+・・・+−m、A(z)=a+a−1+a−2+・・・+a−mとする。
【0067】
【数5】
Figure 0004030372
これは、晴天時の同定であり、これにより自己回帰パラメータA(z)の次数および係数と潮位パラメータB(z)の次数および係数が決定される。
【0068】
なお、モデル同定部21は、(8式)において自己回帰パラメータA(z)と潮位パラメータ(FIRモデル部分)B(z)の両方を同定している。得られるデータの大部分が晴天時のデータであるため、自己回帰パラメータA(z)が晴天時のデータに大きく依存していると考えられることから、モデル同定部21は、全ての入力部に共通である自己回帰パラメータA(z)を潮位パラメータB(z)とともに同定している(ARXモデルの同定)。
【0069】
(Step2)次に雨天時おいてポンプ9が運転されていない場合(小雨時)を考える。
【0070】
モデル同定部21は、潮位計測部6からの潮位に基づいて、同定された(8式)により、晴天時の水位出力y(k)を算出する。さらに、モデル同定部21は、y(k)と、算出されたy(k)とに基づいて、(y(k)=y(k)−y(k))の演算を行い、雨天時においてポンプ9が運転していない場合の水位出力y(k)を算出する。
【0071】
またモデル同定部21は、同定されたA(z)と降雨量計測部7、8からの降雨量(u(k))に基づいて、(u2r(k)=(1/A(z))u(k))の演算を行い、u2r(k)を算出する。
【0072】
さらにモデル同定部21は、上記算出されたy(k)と、u2r(k)と、同定されたA(z)とに基づいて、最小二乗法を用いて下記の(9式)の同定を行い、(9式)の降雨量パラメータB(z)の次数および係数を決定する。
【0073】
ここで、B(z)=−1−2+・・・+−nとする。
【0074】
【数6】
Figure 0004030372
なお、モデル同定部21は上記(9式)において、FIRモデルの同定(B(z)のみについて同定)を行っている。
【0075】
また(9式)において1/A(z)が、ローパス特性を有している場合(A(z)がハイパス特性を有している場合)、モデル同定部21は、A(z)y(k)の演算結果と、降雨量計測部7、8からの降雨量とに基づいて、下記(10式)の同定を行い、降雨量パラメータB(z)の次数および係数を決定してもよい。
【0076】
【数7】
Figure 0004030372
上記同定により、ハイパス特性の性質から同定信号が持続的励振条件を満たす効果があり、同定精度の向上が期待できる。
【0077】
また上記(9式)において、自己回帰パラメータA(z)がハイパス特性とローパス特性の両特性を持つ場合、ハイパス特性をもつ部分をA(z)とし、ローパス特性をもつ部分をA(z)と定義できる。このように定義した場合、自己回帰パラメータA(z)はA(z)=A(z)A(z)と表現することができる。
【0078】
自己回帰パラメータA(z)がハイパス特性とローパス特性の両特性を持つ場合、モデル同定部21は、A(z)=A(z)A(z)を(9式)に代入し、下記の(11式)を求め、この求められた(11式)を同定してもよい。
【0079】
【数8】
Figure 0004030372
モデル同定部21は、上記(11式)を同定することにより、出力である水位y(k)と、入力である降雨量u(t)の両方において、持続的励振条件を考慮することができる。
【0080】
(Step3)次に雨天時でポンプ9が運転している場合大雨時すなわち(水防時)を考える。
【0081】
モデル同定部21は、降雨量計測部7、8からの降雨量に基づいて、同定された(9式)により、水防時の出力(yrr(k))を算出する。次にモデル同定部21は、y(k)と、求められたyrr(k)とに基づいて、(yrp(k)=y(k)−yrr(k))の演算を行い、雨天時でポンプ9が運転していない場合の出力yrp(k)を算出する。その後モデル同定部21は、(9式)において同定された自己回帰パラメータA(z)と、吐出量計測部16からの吐出量u(k)とに基づいて、u3r(k)=(1/A(z))u(k)の演算を行い、u3r(k)を算出する。
【0082】
モデル同定部21は、算出されたyrp(k)と、u3r(k)と、同定された自己回帰パラメータA(z)とに基づいて、最小二乗法を用いて下記(12式)を同定し、吐出量パラメータB(z)の次数および係数を決定する。
【0083】
ここで、B(z)=−1−2+・・・+−lとする。
【0084】
【数9】
Figure 0004030372
上記と同様にして、モデル同定部21は、開閉度パラメータB(z)の次数および係数を決定する。
【0085】
ここで、B(z)=−1−2+・・・+−kとする。
【0086】
なお、(12式)の同定は、FIRモデル部分の同定となる(B(z)のみについて同定する)。
【0087】
モデル同定部21は、(Step2)と同様に自己回帰パラメータA(z)のハイパス特性を考慮して、A(z)yrp(k)の演算結果と、吐出量計測部16からの吐出量に基づいて、最小二乗法を用いて下記の(式13)を同定し、B(z)の次数および係数を決定してもよい。
【0088】
【数10】
Figure 0004030372
また、(Step2)と同様に自己回帰パラメータA(z)がハイパス特性A(z)とローパス特性A(z)の両方の特性を有している場合、モデル同定部21はA(z)=A(z)A(z)を下記(14式)に代入し、この(14式)に対し同定を行っている。
【0089】
【数11】
Figure 0004030372
モデル同定部21は、上記(14式)を同定することにより、出力である水位yrp(k)と、入力であるポンプ吐出量u(t)の両方において、持続的励振条件を考慮することができる。
【0090】
一般にFIRモデルを同定する場合にはパラメータが多くなり、十分な数と十分な質のデータが得られていない場合、ARXモデルに比べて同定精度が劣化する。
【0091】
以上説明したように本実施の形態によれば、ARXモデルの同定を行ってから、FIRモデル部分の同定を行うので、パラメータの数を抑えることができ、同定精度の向上を図ることができる。
【0092】
また通常は十分な数のデータを揃えることができる晴天時のモデルに対してARXモデルを適用するため、晴天時のモデルの信頼性を保持することができる。また、同時に水位の急激な変化が起こると考えられる雨天時の直接要因である降雨量およびポンプ吐出量をFIRモデル部分を考慮し、そのFIRモデル部分を同定しているため、予測が後追いになることを避けることができる。
【0093】
第3の実施の形態
次に図1および図6により本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0094】
第3の実施の形態は、水位予測モデルの同定にあたって、自己回帰部分のパラメータとFIRモデル部分のパラメータ河川水位変動要因計測部からの情報に基づいて各々独立して求め、さらに自己回帰部分のパラメータとFIR部分のパラメータに対して、水位予測モデルパラメータとして適合するよう予め設定された変換を行うものである。
【0095】
図1は、本発明による河川の水位予測装置の第3の実施の形態を示している。
【0096】
第3実施の形態において、水位予測モデルの各パラメータの次数および各パラメータの係数の決定方法が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分ついて、詳細な説明は省略する。
【0097】
図6に示すようにモデル同定部21は、水位計測部5からの水位に基づいて、自己回帰パラメータ22に関するパラメータの次数およびパラメータの係数を決定し、この決定と独立して、水位計測部5からの水位と、潮位計測部6からの潮位と、降雨量計測部7、8からの降雨量とに基づいて、降雨量パラメータ25および潮位パラメータ(FIRモデル部分)27に関するパラメータの次数およびパラメータの係数を決定し、この決定された降雨量パラメータ25と、潮位パラメータ27とに対し、予め設定された変換を行う。
【0098】
具体的には、モデル同定部21は、水位計測部5からの水位に基づいて、最小二乗法を用いてA(z)y(k)=e(k)(自己回帰部分)に対し同定を行い、自己回帰パラメータA(z)の次数および係数を決定している。またモデル同定部21は、潮位計測部6からの潮位u(k)と、水位計測部5からの水位y(k)とに基づいて、最小二乗法を用いてy(k)=B10(z)u(k)+e(k)(FIRモデル部分)に対し同定を行い、潮位パラメータB10(z)の次数および係数を決定する。
【0099】
モデル同定部21は、下記(15式)の水位予測モデル(ARXモデル)を同定し、確定された水位予測モデルを構築する。
【0100】
【数12】
Figure 0004030372
ここでモデル同定部21は、B10(z)に対し、以下に述べる予め設定された変換を施し、その結果得られる潮位u(k)のFIRモデル部分を求め、そのFIRモデル部分を上記(15式)のB(z)とする。また、C[zI−A]−1BはB(z)/A(z)の最小実現であり任意の実現であるが、モデル同定部21は、以下のように可制御正準形になるようにA、BおよびCを設定する。
【0101】
【数13】
Figure 0004030372
モデル同定部21は、上記(20式)を(15式)に代入する。このようにして、(15式)のB(z)のパラメータがCとして与えられる。
【0102】
モデル同定部21は、上記(20式)を(15式)代入し、代入された(15式)より潮位u(k)のFIRモデル部分を求め、そのFIRモデル部分を(15式)のB(z)とする。
【0103】
なお、モデル同定部21は、他の外部パラメータ(降雨量パラメータB(z)25、吐出量パラメータB(z)23および開閉度パラメータB(z)24)に関しても、潮位パラメータB(z)と同様にして、各パラメータの次数および係数を決定する。
【0104】
上述の変換を施すことにより、自己回帰パラメータ22とFIRモデル部分28のパラメータをARXモデルのパラメータとして用いることができる。
【0105】
この方法の特徴は、入力と出力の因果関係をみながら同定を行うことができ、実際の現象を考慮して同定をすることができる。
【0106】
モデル同定部21は外部入力が潮位1つである場合(14式)で表される可制御正準形を用いて変換が行う。
【0107】
一般に、河川水位予測を行う場合、複数の外部入力になることが多いが、可制御正準形を用いた変換では複数の入力を持つ場合を表現できない。そこで、モデル同定部21は、複数の入力を持つ場合、(16式)の代わりに(22式)の可観測正準形を用いる。
【0108】
ここでモデル同定部21は、下記(21式)で表される水位予測モデル(ARXモデル)用いて、確定した水位予測モデルを構築するが、同様にして、上記(1式)で表される水位予測モデル(ARXモデル)を用いて、確定した水位予測モデルを構築してもよい。
【0109】
【数14】
Figure 0004030372
なお上記(21式)において、各記号は下記を示している。
【0110】
(k):潮位計測部からの潮位(入力)
(k):降雨量計測部からの降雨量(入力)
y(k):河川の水位(出力)
e(k):ノイズ部
A(z):自己回帰パラメータ
(z) :潮位パラメータ(潮位(入力)に対するFIRモデル部分)27
(z) :降雨量パラメータ(降雨量(入力)に対するFIR部分モデル)25
モデル同定部21は、上記(21式)の潮位パラメータB(z)と降雨量パラメータB(z)とを別々に同定する。具体的には、モデル同定部21は、水位計測部5からの水位に基づいて、最小二乗法を用いてA(z)y(k)=0(自己回帰モデル)を同定し、自己回帰パラメータA(z)の次数および係数を決定する。またモデル同定部21は、潮位計測部6からの潮位u(k)と水位計測部5からの水位に基づいて、最小二乗法を用いてy(k)=B10(z)u(k)(FIRモデル部分)を同定し、潮位パラメータB10(z)の次数および係数を決定する。さらにモデル同定部21は、降雨量計測部7、8からの降雨量u(t)と水位計測部5からの水位に基づいて、最小二乗法を用いてy(k)=B20(z)u(k)(FIRモデル部分)を同定し、降雨量パラメータB20(z)の次数と係数を決定する。
【0111】
ここでモデル同定部21は、B10(z)を以下に述べる予め設定された変換を施し、その結果得られるu(k)のFIRモデル部分28を求め、このFIRモデル部分28をB(z)とする。また同様にして、モデル同定部21は、B20(z)を以下で示す予め設定された変換を施し、その結果得られるu(k)のFIRモデル部分28を求め、そのFIR部分28をB(z)とする。
【0112】
なおモデル同定部21は、上述した変換と同様にB(z)/A(z)の最小実現であるC[zI−A]−1を用いて、B10(z)をB(z)に変換する。また同様にモデル同定部21は、B(z)/A(z)の最小実現であるC[zI−A]−1を用いて、B20(z)をB(z)に変換する。ここで、モデル同定部21は、A、B、BおよびCを以下のように可観測正準形になるように設定する。
【0113】
【数15】
Figure 0004030372
一方、B10(z)、B20(z)に関しては、y(k)=B10(z)u(k)、y(k)=B20(z)u(k)、B10(z)=b101−1+b102−2+・・・+b10m−m、B20(z)=b201−1+b202−2+・・・+b20n−nであることから、
【数16】
Figure 0004030372
モデル同定部21は、上記(29式)より、Bを求め、(21式)におけるB(z)の次数および係数を決定する。またモデル同定部は、上記(30式)よりBを求め、(21式)におけるB(z)の次数および係数を決定する。
【0114】
同様にして、モデル同定部21は、吐出量パラメータB(z)および開閉度パラメータB(z)の次数および係数を決定する。
【0115】
以上説明したように本実施の形態によれば、水位に直接影響を与える外部入力と出力である河川水位の直接的な因果関係をみながら同定を行うことができ、実際の現象を考慮しながら同定を行うことが可能となる。そのため、仮に満足できるパラメータの同定結果が得られなかった場合等に、直接的な因果関係を考慮して水位予測モデルの予測精度を向上させるように、容易に修正をかけることができる。
【0116】
すなわち図3に示すように、本発明によれば水位予測モデル20は、自己回帰部分とFIRモデル部分とを有するARXモデルを含み、これら自己回帰部分のパラメータとFIRモデル部分のパラメータはモデル同定部21により別々のアルコリズムで独立して決定される。次にモデル同定部21により求められた自己回帰部分のパラメータとFIRモデル部分のパラメータが変換され、水位予測モデル20が確立される。
【0117】
次にこのようにして確立された水位予測モデル20を用いて、河川変動要因であるポンプ吐出量、降雨量、水位、潮位等に関する過去から現在までの計測値あるいは演算値に基づいて、河川の水位を精度良く予測することができる。
【0118】
これに対して、例えば自己回帰部分のパラメータとFIRモデル部分のパラメータを限られた情報で最小二乗法等を用いてすべて一括して同時に求める場合、自己回帰部分が相対的に予測に大きく影響を与えるようパラメータが同定される。このため外部入力となるFIRモデル部分が急激に変化した場合、この外部入力の変動を十分に対応することができず、河川の水位予測が後追いとなることがある。
【0119】
【発明の効果】
本発明によれば、外乱の対して河川水位予測の精度が劣化しない頑強性を持ち、かつ急激な水位変動に対しても精度の高い河川の水位予測を行うことができる。また、予測された河川水位情報に基づいて有効な排水機場の運転支援情報を運転員に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による河川の水位予測装置の実施の形態を示す全体構成図。
【図2】河川の水位予測装置と排水機場を示す図。
【図3】水位予測モデルを同定する手法を比較例と共に示す図。
【図4】本発明の第1の実施の形態における水位予測モデルの同定手法を示す図。
【図5】本発明の第2の実施の形態における水位予測モデルの同定手法を示す図。
【図6】本発明の第3の実施の形態における水位予測モデルの同定手法を示す図。
【符号の説明】
2 河川
4 分水路
5 水位計測部
6 潮位計測部
7 降雨量計測部
8 降雨量計測部
11 河川の水位予測装置
15 開閉度計測部
16 吐出量計測部
20 水位予測モデル
21 モデル同定部
22 自己回帰部分
23 吐出量パラメータ
24 開閉度パラメータ
25 降雨量パラメータ
26 水位パラメータ
27 潮位パラメータ

Claims (7)

  1. 河川の水位変動要因を計測する河川水位変動要因計測部と、
    河川水位変動要因計測部からの情報に基づいて河川の水位を予測するとともに、過去から現在までの水位に基づいて水位を予測する第1予測モデル部分、および過去から現在までの河川水位変動要因計測部からの情報に基づいて水位を予測する第2予測モデル部分を有する水位予測モデルと、
    水位予測モデルの同定を行うモデル同定部とを備え、
    モデル同定部は水位予測モデルの第1予測モデル部分のパラメータと第2予測モデル部分のパラメータのうち少なくとも一方を河川水位変動要因計測部からの情報に基づいて求めることを特徴とする河川の水位予測装置。
  2. 水位予測モデルは、その雑音部分に予めフィルタを通したノイズ部をもち、
    第1予測モデル部分のパラメータはフィルタを設計することにより特定され、
    モデル同定部は、第2予測モデル部分のパラメータのみを求めることを特徴とする請求項1記載の河川の水位予測装置。
  3. 河川変動要因は複数設定され、
    モデル同定部は、河川変動要因のうち特定の河川水位変動要因に基づいて水位予測モデルの第1予測モデル部分のパラメータと当該河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータを求め、求められた第1予測モデル部分のパラメータと当該河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータに基づいて、他の河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータを求めることを特徴とする請求項1記載の河川の水位予測装置。
  4. モデル同定部は水位予測モデルの第1予測モデル部分のパラメータと第2予測モデル部分のパラメータを河川水位変動要因計測部からの情報に基づいて各々独立して求め、さらに第1予測モデル部分のパラメータと第2予測モデル部分のパラメータに対して水位予測モデルのパラメータとして適合させるよう予め設定された変換を行うことを特徴とする請求項1記載の河川の水位予測装置。
  5. 水位予測モデルのノイズ部は、所望の周波数帯域において重み付けされていることを特徴とする請求項2記載の河川の水位予測装置。
  6. 第1予測モデル部分のパラメータと特定の河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータに基づいて、他の河川水位変動要因に対応する第2予測モデル部分のパラメータを求める際、第1予測モデル部分の周波数特性に適合した計算式を用いることを特徴とする請求項3記載の河川の水位予測装置。
  7. 第1予測モデル部分のパラメータと第2予測モデル部分のパラメータに対して水位予測モデルのパラメータとして適合させるよう変換する際、可観測正準形を用いて変換することを特徴とする請求項4記載の河川の水位予測装置。
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