JP4032857B2 - タッチパネル用のガラス基板、タッチパネル及び携帯端末 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にレーザ光の照射及び強制冷却により切断されて成るタッチパネル用ガラス基板、タッチパネル及び携帯端末に係わる。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガラス原板を縦横に切断して所定の幅及び長さを有するガラス基板を形成するガラスの切断方法としては、例えば特開平11−71124号公開公報に形成されるような機械式、またレーザ光を照射するレーザ式などが用いられている。
【0003】
機械式加工による切断方法をとる場合、ガラスに刃が加圧して、メジアンクラック即ちガラス面に垂直な方向に伸びるクラックを生じさせて切断を行っている。この切断方法では、刃の除圧工程において切り開かれたガラス切断面同士が接触することによって、ラテラルクラック即ちガラス面に水平方向に伸びるクラックが発生する。
【0004】
このため、機械式のガラス切断加工においては切断面に発生するマイクロクラック、すなわちラテラルクラックを完全に防ぐことは不可能であった。クラック即ちひびが生じると、このひびの発生により粉砕粉いわゆるカレットが生じ、カレットが表示体の表面に付着して視認性を損なったり、またガラス基板をタッチパネルに使用する場合などにおいて、透明導電層に付着して短絡を生じさせてしまうなどの不都合を生じる。
このようなラテラルクラックを化学処理により低減化する方法もあるが、生産性の低下を招き、またコストの増大化を招来してしまう。また、化学処理によってガラスの強度にばらつきが生じてしまうという問題がある。
【0005】
一方、レーザ式による場合、例えば特開平8−217478号公開公報、特開平11−254172号公開公報などに炭酸ガスレーザによる加熱切断方法が提案されている。
しかしながら、通常のレーザ光照射のみによる切断方法による場合、図8にその一例の模式的な断面構成を示すように、ガラス基板1のレーザ光照射による切断側面において、そのレーザ光を照射する側から生じるレーザ痕2に微小なひび及びカレットが生じてしまうという問題がある。
【0006】
これに対し、炭酸ガスレーザ等のレーザ光照射による加熱と、水ないしは圧縮空気を用いた強制冷却の複合作用によって、ガラス中に熱歪みを発生させてガラス分断のトリガとして切断を行う方法が提案されている。
特に、近年簡便な入力方法として各種表示体の表面に取り付けられて利用されるタッチパネルや、これを用いた携帯端末に用いられる1.1mm以下、例えば0.3〜0.7mm程度の厚さとされる薄型のガラス基板を切断するにあたって、このレーザ光照射及び強制冷却による切断方法が注目されている。
この方式は、機械的な力が加わらない為、マイクロクラックの発生が殆どないことが利点とされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのようなレーザ光照射及び強制冷却を行う場合においても、図9Aに模式的に示すように、例えばガラス原板10に対し破線x1の位置で示す横方向と、破線y1及びy2で示す縦方向にレーザ光を照射及び強制冷却を行って切断を行うと、レーザ光を縦横に照射する交差点aにおいて、図9Bに示すようにバリ11や欠け12が生じてしまうという問題があった。
この交差点aにおいては、図9Cに示すように切断面が垂直となることが望ましいが、実際には切断面が傾斜したり湾曲したりしてしまい、寸法精度の悪化を招来し、生産性及び歩留りの低下、更にはコストの増大化が問題となっている。
【0008】
本発明は、ガラス原板から所定の寸法のガラス基板を切断するにあたって、上述したようなその切断面におけるひび、欠けが生じず、従ってこの部分からの粉砕粉の発生を回避し、更に強度特性にも優れたタッチパネル用ガラス基板、タッチパネル及び携帯端末を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくともレーザ光の照射により切断されて成るタッチパネル用のガラス基板であって、ガラス基板の切断側面の表面粗さが50nm以下であり、切断側面のレーザ痕の深さを0.06mm以上とし、静荷重試験による強度が55kgf以上90kgf以下として構成する。
また本発明は、上述の構成において、レーザ痕の深さを、ガラス基板の第1の切断側面と、この第1の切断側面とは異なる第2の切断側面とにおいて異なる構成とする。
【0010】
更に本発明は、上述のレーザ痕の深さを、第1及び第2の切断側面において、2%以上異ならせる構成とする。
【0011】
また更に本発明は、上述の各構成において、レーザ痕が、ガラス基板の第1の切断側面において、このガラス基板の第1の主面から所定の深さをもって形成され、第1の切断側面とは異なる第2の切断側面において、第1の主面の裏面である第2の主面から所定の深さをもって形成される構成とする。
【0012】
例えば、ガラス原板に対し、レーザ光の照射及び強制冷却を行うガラスの切断方法にあって、ガラス原板に対する第1の切断方向と、この第1の切断方向とは異なる第2の切断方向とにおいて、レーザ光のレーザパワー又は送り速度を変えて切断を行う。
また、上述のガラスの切断方法において、レーザ光のレーザパワー又は送り速度を、第1の切断方向と第2の切断方向とにおいて4%以上変える。
【0013】
更に、ガラス原板に対し、レーザ光の照射及び強制冷却を行うガラスの切断方法にあって、ガラス原板に対する第1の切断方向の切断を、ガラス原板の第1の主面からレーザ光を照射して行い、ガラス原板に対する第1の切断方向とは異なる第2の切断方向の切断を、第1の主面の裏面である第2の主面からレーザ光を照射して行う。
【0014】
また更に本発明は、上述の構成によるタッチパネル用のガラス基板を、ガラス基板上に光透過性導電層が形成され、このガラス基板とは所定の間隔をもってフィルム基材が対向配置されて成るタッチパネルに用いる構成とする。
更に本発明は、上述の構成によるタッチパネル用のガラス基板を、タッチパネルを有する携帯端末に用いる構成とする。
【0015】
上述したように、レーザ光の照射及び強制冷却を行うガラスの切断方法において、ガラス基板の第1の切断側面と第2の切断側面とにおいて、レーザ痕の深さが異なるように、レーザパワー又はレーザ光の送り速度を異ならしめて照射し、その直後に強制冷却を行って切断することによって、第1及び第2の切断側面の交差部においてひび、バリの発生を回避することができ、所望の寸法精度をもってガラス基板を切断することができた。
【0016】
更に、ガラス基板の第1の切断方向による切断と、第2の切断方向による切断とを、それぞれガラス基板の異なる主面(表面と裏面)からレーザ光を照射して行うことによって、いわば異なる切断側面においてレーザ痕を上下に分離させて切断することによって、同様に第1及び第2の切断側面の交差部においてひび、バリの発生を回避することができ、所望の寸法精度をもってガラス基板を切断することができた。
【0017】
これは、レーザ光照射による加熱と、その後の強制冷却によって生じる歪みの応力を、切断側面の交差部において2方向に生じさせることを回避し、ガラス切断の垂直方向、即ちガラス基板の主面と垂直な方向のみに応力を生じさせて切断を行わしめることができたためと思われる。
【0018】
このようなガラスの切断方法によれば、切断側面の表面の粗さが50nm以下とされ、側面の化学処理が不要なガラス基板を得ることができ、またその静荷重測定による強度を55kgf以上の保持することができた。
しかも、ひび及びバリが生じることなく、所望の寸法精度の薄型のガラス基板を生産性、歩留り良く製造することができて、タッチパネルや携帯端末に本発明によるガラス基板を用いる場合は、生産性、歩留りの向上及びコストの低減化をはかることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるガラス基板及びガラスの切断方法の実施の形態とこれに基づく実施例及び比較例を、図面を参照して詳細に説明する。以下の例においては、タッチパネルを具備する携帯端末のガラス基板とその切断方法に本発明を適用した場合について説明するが、本発明はその他本発明構成を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
【0020】
図1A〜Dにおいては、本発明構成によるガラス基板1の模式的な構成を示す。このガラス基板1の材料としては、Na、K及びSiO2 より成るいわゆるソーダガラスの他、無アルカリガラスを用いることもできる。
図1Aに示すように、ガラス基板1は第1の主面1A及び第2の主面1Bを有し、例えば矢印x及びyで示す直交する2方向に沿う第1の側面3A及び第2の側面3Bを有する。
そして本発明によるガラス基板は、図1Bに示すように、第1の側面3Aには、第1の主面1Aからの深さがd1 のレーザ痕2Aが形成され、図1Cに示すように、第2の側面3Bには、第1の主面1Aからの深さd2 のレーザ痕2Bが形成され、上記各深さd1 とd2 が、d1 ≠d2 とされてなる。
また他の本発明によるガラス基板は、図1Bに示すように第1の側面3Aに第1の主面からの深さがd1 とされたレーザ痕2Aが形成され、図1Dに示すように、第2の側面3Bには、第2の主面1Bからの深さがd2 のレーザ痕2Bが形成されてなる。この場合は、深さd1 及びd2 はd1 =d2 としても、d1 ≠d2 としてもよい。
【0021】
次にこのようなガラスの切断方法について説明する。
先ず、図2Aに模式的な平面図を示すように、厚さ例えば0.7mmのソーダガラス等より成るガラス原板10に対し、図2Aにおいて破線x1〜x5で示す第1の切断方向と、図2Aにおいて破線y1〜y5で示す第2の切断方向にレーザ光の照射及び強制冷却による切断を行う。
【0022】
本発明においては、図2B及びCにおいてそれぞれガラス原板10の第1の主面1A上の切り欠き凹部としてレーザ光の照射領域を示すように、第1及び第2の切断方向におけるレーザ照射部の切断深さを異ならしめる。
即ち、図2Aにおける破線x1 〜x5 に対応する第1の切断方向においては、図2Bに示すように、矢印x1'〜x5'で示す図2Bの紙面に垂直な方向にレーザ光を走査照射するにあたって、第1の切断方向の深さをd1 とする。
そして、図2Aにおける破線y1 〜y5 に対応する第2の切断方向においては、図2Cに示すように、矢印y1'〜y5'で示す図2Cの紙面に垂直な方向にレーザ光を走査照射するにあたって、この第2の切断方向の深さd2 を上記d1 とは異なる深さとなるようにレーザ光の照射を行う。
【0023】
この各切断方向における深さを異ならしめる具体的な方法としては、照射するレーザ光のレーザパワー又は送り速度を異ならしめる方法を採ることができる。
レーザ光照射の条件変化による加工深さの定量的な測定は、これまで定義そのものが統一されておらず、数値化することは一般的に行われていないが、簡単のため、本明細書においては単位面積当たりに照射するエネルギーとレーザ加工深さとが比例するとして後述する実施例及び比較例を行った。
【0024】
また、他の本発明においては、図3A〜Cにおいて模式的に示すように、レーザ光の照射をガラス原板10の第1の主面1A側と、第2の主面1B側とからそれぞれ行う。
即ち、図3Aにおいて破線x1 〜x5 で示す第1の切断方向の切断は、図3Bに模式的に矢印x1'〜x5'で示すように、図3Aの紙面に垂直な方向にレーザ光を走査照射するにあたって、ガラス原板10の第1の主面1A上にレーザ光を照射して切断を行う。
そして、図3Aにおいて破線y1 〜y5 で示す第2の切断方向の切断は、図3Cに模式的に矢印y1'〜y5'で示すように、図3Cの紙面に垂直な方向にレーザ光を走査照射するにあたって、ガラス原板10の第2の主面1B上からレーザ光の照射を行って切断する。
【0025】
尚、上述の図2B、C及び図3B、Cにおいて、レーザ光を照射する領域において切り欠き凹部として切断部を模式的に示したが、この切断部は、図1A〜Dにおいて説明した切断側面におけるレーザ痕2を構成する領域を模式的に表すものであり、レーザ照射及び強制冷却によって、この切り欠き凹部に相当する主面直下にレーザ痕が形成され、その下部に基板の主面に垂直な切断側面が形成される。
【0026】
また、上述のいずれの場合においても、レーザ光を走査照射した直後に、例えばエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等の揮発性物質や、空気又はN2 ガス等の圧縮ガスを噴出するノズルをレーザ光スポットに近接させて走査させ、レーザ光照射直後に強制冷却を行うようにする。
【0027】
【実施例】
次に、上述の本発明によるガラスの切断方法によって、以下の実施例1〜10、比較例1〜5で示すガラス基板の切断を行い、本発明による寸法精度の有意な効果を確認した。
以下の実施例及び比較例においては、厚さ0.7mmのソーダガラスより成るガラス原板10を用意し、これに対し、レーザパワー50Wの炭酸ガスレーザの照射及びエタノールのノズルからの噴射による強制冷却を行って、目標寸法として横87.65mm、縦64.65mmのタッチパネル用のガラス基板の切断を行った。
上述の図2Aにおいて破線x1 〜x5 で示す第1の切断方向において、炭酸ガスレーザのレーザ送り速度を4.8m/分として走査照射し、また上述の図2Aにおいて破線y1 〜y5 で示す第2の切断方向において、炭酸ガスレーザのレーザ送り速度を5.2m/分として走査照射してそれぞれ実施例1〜5のガラス基板の切断を行った。
【0028】
これら実施例1〜5における各ガラス基板の上下両端部での横寸法を横寸法1、2とし、また左右両端部での縦寸法を縦寸法1、2として下記の表1に記載した。寸法単位は全てmmである。
【0029】
【表1】
【0030】
また、比較例1〜5として、同様の材料構成のガラス原板から、上記実施例1〜5と同様の目標寸法のガラス基板を、レーザ送り速度は4.8m/分として固定して切断を行った。この結果を下記の表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
この結果から、本発明によるガラスの切断方法、即ち第1及び第2の切断方向においてレーザ光の送り速度を異ならしめる方法による実施例1〜5においては、その切断後の寸法形状を、目標とする寸法に対しプラス誤差で最大で0.15mm、マイナス誤差は0.00mmに抑えて形成することができた。
これに対し、レーザ光の送り速度を同一とする比較例1〜5においては、プラス誤差で最大0.3mm、マイナス誤差では−0.31mmと寸法形状のばらつきを生じることがわかった。また、比較例1〜5において、各切断側面において目視にてバリが生じていることを確認した。
【0033】
尚、上述のレーザ光の送り速度を4.8m/分から4%未満の変化量となる4.9m/分として変化させ、第1及び第2の切断側面を形成したところ、有意な結果を得ることができず、上述の比較例1〜5と同様に、誤差幅0.3mm程度の寸法精度しか得ることができなかった。また、目視にて切断側面にバリが生じていることが確認された。これに対し、逆り速度を4%以上変化させる例えば5.0m/分とするとき、表1に示す例と同様の誤差幅が得られた。また、切断面にバリは認められなかった。
【0034】
また、レーザ光のレーザパワーを異ならしめる場合についての考察も行った。第1の切断方向においてレーザパワー50W、第2の切断方向においてレーザパワー48Wとして上述の実施例1〜5と同様の材料構成をもってガラス基板の切断を行ったところ、上述の各実施例と同様に、誤差幅0.15mm程度の寸法精度をもってガラス基板を切断することできた。
【0035】
更にこの場合においても、レーザパワーの変化量を4%未満として第1及び第2の切断方向においてレーザの照射及び強制冷却を行ってガラスの切断を行ったところ、上述の各比較例と同様に、誤差幅が0.3mm程度以上となり、しかも目視にてバリが生じていることが確認された。
【0036】
従って、本発明においては、レーザ痕の深さを異ならしめる具体的な方法として、レーザ光の送り速度及びレーザパワーを4%以上異ならしめて照射するものとする。
【0037】
また、レーザ痕の深さとしては、以下の測定結果から、0.06mm以上の深さが必要であることがわかった。
以下の例においては、厚さ0.7mm及び0.55mmのソーダガラスより成るガラス原板を用意した。上述の第1及び第2の切断方向において、レーザ痕の深さを異ならしめて、浅い方のレーザ痕の深さと、各切断後のガラス基板に対する静荷重強度を測定した。静荷重強度は、通常のガラス破壊強度測定装置により測定した加圧子の直径は20mm、加圧速度は1mm/秒とした。この結果を、以下の表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
この結果からわかるように、レーザ痕の深さが0.06mm未満の0.04mmの場合は、静荷重強度が28kgf以下と格段に劣ることがわかる。これに対し、レーザ痕の深さを0.06mmとした場合は、レーザ痕深さが0.04mmの場合と比較して、静荷重強度が厚さ0.7mmのガラスで21kgf、厚さ0.55mmのガラスで12kgfも強度が増加している。
従って、本発明によるガラス基板においては、そのレーザ痕の深さを0.6mm以上に選定するものである。
【0040】
次に、レーザ照射によって、第1の切断方向と第2の切断方向とにおいて、ガラス原板の第1及び第2の主面から切断を行う場合について測定した結果を示す。
実施例6〜10においては、第1の主面と第2の主面からレーザパワー50W、レーザ送り速度を4.8m/分としてレーザ光の照射及び強制冷却による切断を行い、切断された各ガラス基板の寸法精度を上述の実施例1〜5及び比較例1〜と5と同様に測定した。表4において寸法単位はmmである。
【0041】
【表4】
【0042】
この結果からわかるように、第1及び第2の主面からレーザ光を照射する場合には、寸法誤差がプラス誤差で0.05mm、マイナス誤差で0.00mmであり、誤差幅を0.05mm以下に抑制できることがわかる。
【0043】
また、上述の各実施例1〜10における切断側面の表面粗さをAFM(Atomic Force Microscope;原子間力電子顕微鏡)により測定したところ、全ての実施例において、表面粗さは50nm以下に抑制できることがわかった。
【0044】
更に、これらの実施例を含め、本発明により切断したガラス基板と、超硬ローラーカットにより切断したガラス基板との静荷重強度を測定した結果を図4に示す。この場合においても静荷重強度は、通常のガラス強度測定装置により測定した。加圧子の直径は20mm、加圧速度は1mm/秒とした。図4において、実線aは本発明によるガラス基板、実線bは超硬ローラー切断による従来構成のガラス基板である。サンプル数のピークは、本発明では65kgf程度の静荷重強度であり、従来構成のガラス基板では30kgf程度の強度しか得られていない。
【0045】
この結果から、本発明のガラス切断方法により切断したガラス基板は、ほぼ45kgf程度以上の静荷重強度を有することがわかる。
【0046】
このような従来に比し強度特性に優れたガラス基板をタッチパネルに適用した例を図5A及びBに模式的に示す。図5Aにおいては、タッチパネルに適用したガラス基板を載置固定するフレーム21を示す。フレーム21はAl合金等より成り、液晶型表示装置、有機EL(Electro Luminescence)型表示装置等の各種表示体上に固定配置され、表示面に対応する位置に窓抜部22が形成されて成る。
【0047】
図5Bに、このフレーム21上にタッチパネル30を固定載置した状態の模式的な断面構成を示す。タッチパネル30は、ガラス基板1上に、図示しないがITO(In−Snの複合酸化物)等より成る光透過性の導電層が所定のパターンにスパッタリング等により形成されて成り、この上に、アクリル樹脂等より成るスペーサを介して、内側にITO等の光透過性の導電層がパターン形成されたフィルム基材31がガラス基板1と所定の間隔をもって対向配置され、例えば外縁部32において、例えば粘着テープ等により、数μm程度の間隔をもって支持及び固定されて構成される。
【0048】
本発明においては、ガラス基板1の強度を高めると共に、特にこのフレーム21の窓抜部内端縁部23を、図6A〜Cに模式的に示すように、各種加工を施した形状として構成する。例えば、図6Aに示すように、半径rが0.2mm以上0.5mm以下の周面部23a、いわゆるR面を設ける。
または、図6Bに示すように、内端縁部からの長さlが0.2mm以上0.5mm以下、ガラス基板と平行な面からの角度θが10°以上45°以下の斜面部23bを設ける。
更にまたは、図6Cに示すように、内端縁部からの幅wが0.2mm以上0.5mm以下、ガラス基板と対向する面からの段差高hが0.2mm以上0.5mm以下の段差部23cを設ける。
【0049】
このように窓抜部内端縁部23を加工することによって、このフレーム21上にテープ、糊等によって固着されるガラス基材の耐荷重強度を増大化することができた。
【0050】
尚、上述のフレーム21の窓抜部内端縁部23に周面部を形成する場合は、半径rを0.2mm未満とすると著しく歩留りが低下し、また0.5mmを越える場合はガラス割れに対して有効であるが、製造工程において作業性の低下を来す。従って、周面部を構成する場合は、半径rを0.2mm〜0.5mmの範囲とすることが望ましい。
また、窓抜部内端縁部23に斜面部を形成する場合、0.2mmの長さlで角度θが45°以上になると、歩留りの変化が見られない。長さlが0.2mm〜0.5mmの範囲で角度θを10〜45°とするときに、安定した強度が得られることから、斜面部を構成するときは、上述の範囲に選定することが望ましい。
更に、段差部を設ける場合においても、上述したように段差幅wを0.2mm〜0.5mm、段差高hを0.2mm〜0.5mmの範囲に選定する場合に、ガラス強度に有意な効果を得ることができた。従って、段差部の形状は上述の範囲に選定することが望ましい。
【0051】
このように、タッチパネルを固定配置する表示体上のフレームの窓抜部内端縁部に周面部、斜面部または段差部を形成することによって、更にガラスの耐荷重強度を高めることができ、製品の強度の向上を高めることができる。
【0052】
尚、ガラス基板の材料としては、上述したようにソーダガラス等を用いることができるが、フロート法により製造されたガラス基板を用いる場合は、以下の方法により更に強度を保持することができる。
フロート法とは、溶融Sn上にガラス材料を板状に溶かし流して、溶融Snとは接していない側の表面に圧縮応力を生じさせてこの面の平坦度を向上させるガラスの製造方法である。このフロート法により製造されたガラス基板は、図7Aに模式的に示すように、フロート面側(溶融Snと接していた面)とは反対側の面において圧縮応力p1 及びp2 が生じる。ここに、フロート面3側から矢印g1 で示すように荷重を負荷すると、圧縮応力p1 及びp2 を相殺する方向に張力が生じる。
【0053】
図7Bに示すように、負荷荷重g2 が小さい場合は張力t1 及びt2 を圧縮応力p1 及びp2 で相殺し、図7Cに示すように、負荷荷重g3 が大きくなると、張力t1 ’及びt2 ’と圧縮応力p1 及びp2 がつりあう。ガラス基板1は通常この状態まで耐荷重強度が保持される。更に負荷荷重が大きくなると、図7Dに示すようにガラス基板1は破壊される。
【0054】
このように、フロート法によって製造されたガラス基板は、表面に圧縮応力を有することから、その裏面からの耐荷重強度が他のガラス基板に比して高い。
しかしながら、このガラス基板1をタッチパネルのガラス基板に適用する場合、光透過性導電層、SiO2 被膜等をスパッタリング法、蒸着法、ディップ法などにより成膜する場合にガラス基板が300℃以上の高温に加熱される。
【0055】
このとき、フロート法によって製造されたガラス基板の持つ圧縮応力が熱によって開放されてしまうアニール効果により、本来の耐荷重強度を保持することができなくなってしまう。つまり、上述の図7A〜Cにおいて説明した圧縮応力に起因する強度が消失してしまうこととなる。これにより、フロート面3からの耐荷重強度が劣化してしまう。
【0056】
本発明者等は、上述のスパッタリング法或いは蒸着法によりITO等の導電層を成膜する際に、200℃以下の低温成膜法を用いることによって、応力の熱による開放を低減化させることができ、成膜後の耐荷重強度において有意な差を得ることができた。
【0057】
以下の表5は、従来のスパッタリングによる成膜後のガラス基板と、低温スパッタリングによる成膜後のガラス基板とのサンプル数、平均耐荷重強度(N)、その標準偏差、最小値及び最大値を示したものである。
【0058】
【表5】
【0059】
この表5らわかるように、従来による成膜後のガラス基板は、平均値でおよそ9N耐荷重が劣化するのに対し、200℃以下の低温スパッタリングによる場合は、およそ2N程度の耐荷重劣化に止まっている。
従って、ガラス基板上に200℃以下の低温スパッタリング法によってITO等の光透過性の導電層を形成することによって、フロート法により製造した場合のガラス基板の本来もつ強度を保持することができ、更に製品の強度を保持することができて、製品の信頼性の向上をはかることができることがわかる。
【0060】
上述したように、本発明によれば、ガラスの切断方法において、第1及び第2の切断方法におけるレーザ光のレーザパワーまたはレーザ光の走査移動速度を変えて切断を行い、切断後のガラス基板の切断側面におけるレーザ痕の深さを異ならしめることによって、切断側面における傾斜面や湾曲面の発生を回避し、垂直な切断側面をもってガラス基板を形成することができる。
【0061】
尚、上述の各例においては、ガラス基板をタッチパネル又は携帯端末上のタッチパネルに適用した場合について説明したが、本発明は、上述の本発明構成を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、POS(Point Of Sales)、ATM(Automatic Teller Machine)等種々の表示体に用いられるガラス基板に適用することができる。
【0062】
【発明の効果】
上述したように、ガラスの切断方法において、切断後のガラス基板の切断独面におけるレーザ痕の深さを異ならしめることによって、またガラス基板1の第1及び第2の主面からレーザ痕を形成することによって、ガラス切断側面におけるひび、欠けの発生を回避し、粉砕粉の付着のないガラス基板を所望の寸法精度もって歩留り良く、また生産性良く製造することができる。
【0063】
このようなガラスの切断方法によれば、切断側面においてクラックの発生を抑制し、これに起因するガラス割れの減少と、ガラスの欠けの激減によって、特性に優れたタッチパネル用のガラス基板を提供することができる。
また、ガラスの静荷重強度を従来に比して高い55kgf程度以上に向上させることができ、このガラス基板を用いたタッチパネルにおいて製品の強度の向上をはかることができる。
【0064】
特に、タッチパネル特有の入力時の圧力、また生活上の不可抗力により加わる荷重、衝撃に対する強度を高めることができ、製品故障の低減化、消費者からのクレームの削減をはかることが可能となる。
【0065】
本発明によれば、タッチパネル、携帯端末等における製品自体の信頼性の向上、耐久性及び品質の向上をはかることができ、更にガラス基板の薄型化を可能とし、タッチパネル及び携帯端末の薄型化、小型軽量化をはかることができる。
【0066】
また、小型化をはからない場合に基板の薄型化をはかることによって、省スペース化による機能付加による製品の高機能化も可能となり、また製品組立精度の向上と品質のばらつきの低減化をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aはガラス基板の一例の模式的な斜視図である。
Bはガラス基板の一例の模式的な要部側面図である。
Cはガラス基板の一例の模式的な要部側面図である。
Dはガラス基板の一例の模式的な要部側面図である。
【図2】Aはガラスの切断方法の一例の説明図である。
Bはガラスの切断方法の一例の説明図である。
Cはガラスの切断方法の一例の説明図である。
【図3】Aはガラスの切断方法の一例の説明図である。
Bはガラスの切断方法の一例の説明図である。
Cはガラスの切断方法の一例の説明図である。
【図4】ガラス基板の耐荷重強度のサンプル分布を示す図である。
【図5】Aはタッチパネルのフレームの模式的な平面図である。
Bはタッチパネルのフレームの模式的な断面図である。
【図6】Aはタッチパネルのフレームの窓抜部内端縁部の説明図である。
Bはタッチパネルのフレームの窓抜部内端縁部の説明図である。
Cはタッチパネルのフレームの窓抜部内端縁部の説明図である。
【図7】Aはガラス基板の強度の説明図である。
Bはガラス基板の強度の説明図である。
Cはガラス基板の強度の説明図である。
Dはガラス基板の強度の説明図である。
【図8】従来のガラス基板の一例の模式的な断面図である。
【図9】Aはガラス切断方法の説明図である。
Bはガラス切断側面の説明図である。
Cはガラス切断側面の説明図である。
【符号の説明】
1…ガラス基板、1A…第1の主面、1B…第2の主面、2…レーザ痕、2A…レーザ痕、2B…レーザ痕、10…ガラス原板、21…フレーム、22…窓抜部、23…窓抜部内端縁部、23a…周面部、23b…斜面部、23c…段差部、30…タッチパネル、31…フィルム基材、32…外縁部
Claims (8)
- 少なくともレーザ光の照射により切断されて成るタッチパネル用のガラス基板であって、
上記ガラス基板の切断側面の表面粗さが50nm以下であり、
上記切断側面のレーザ痕の深さが0.06mm以上であって、
上記ガラス基板は、静荷重試験による強度が55kgf以上90kgf以下である
ことを特徴とするタッチパネル用のガラス基板。 - 上記ガラス基板の上記切断側面において、ひび及び粉砕粉がないことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用のガラス基板。
- 上記レーザ痕の深さが、上記ガラス基板の第1の切断側面と、該第1の切断側面とは異なる第2の切断側面とにおいて異なることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用のガラス基板。
- 上記レーザ痕の深さが、上記第1及び第2の切断側面において、2%以上異なることを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル用のガラス基板。
- 上記レーザ痕が、上記ガラス基板の第1の切断側面において、上記ガラス基板の第1の主面から所定の深さをもって形成され、上記第1の切断側面とは異なる第2の切断側面において、上記第1の主面の裏面である第2の主面から所定の深さをもって形成されて成ることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用のガラス基板。
- 上記ガラス基板の厚さが、0.25mm以上0.7mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用のガラス基板。
- ガラス基板上に光透過性導電層が形成され、上記ガラス基板とは所定の間隔をもってフィルム基材が対向配置されて成るタッチパネルであって、
上記ガラス基板は、少なくともレーザ光の照射により切断されて成り、
上記ガラス基板の切断側面の表面粗さが50nm以下であり、
上記切断側面のレーザ痕の深さが0.06mm以上であって、
上記ガラス基板は、静荷重試験による強度が55kgf以上90kgf以下である
ことを特徴とするタッチパネル。 - ガラス基板上に光透過性導電層が形成され、上記ガラス基板とは所定の間隔をもってフィルム基材が対向配置されて成るタッチパネルを有する携帯端末であって、
上記ガラス基板は、少なくともレーザ光の照射により切断されて成り、
上記ガラス基板の切断側面の表面粗さが50nm以下であり、
上記切断側面のレーザ痕の深さが0.06mm以上であって、
上記ガラス基板は、静荷重試験による強度が55kgf以上90kgf以下である
ことを特徴とする携帯端末。
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