JP4034485B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録装置に使用される磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高透磁率な軟磁性裏打ち層上に基板面に対して垂直異方性を有する磁気記録層を積層した垂直二層媒体において、軟磁性裏打ち層は、磁気記録層を磁化した磁気ヘッドからの記録磁界を水平方向に通して磁気ヘッド側へ還流させる磁気ヘッドの機能の一部を担っており、記録再生効率を向上させる役目を果たしている。
【0003】
しかしながら、磁気ディスク装置内では、主にスピンドルモータやボイスコイルモータから漏洩する浮遊磁界が発生しており、磁気ヘッドによる記録磁界と比較して極めて微弱ではあるものの、浮遊磁界が磁気ディスク内の軟磁性裏打ち層に吸収されて、磁気ヘッドの主磁極先端に集中することなどにより、垂直記録層の記録磁化を減磁あるいは消磁してしまうという問題があった。
【0004】
このような垂直二層媒体における減磁や消磁を防止するために、媒体外部からの浮遊磁界の影響を受けにくいような軟磁性裏打ち層の透磁率や膜厚などの条件が提案されている。
【0005】
また、垂直二層媒体の再生出力波形の均一性を改善する目的で、軟磁性裏打ち層の磁化容易軸を半径方向もしくは円周方向などに揃えるために、硬磁性層や反強磁性層を軟磁性裏打ち層の下部に設けた場合や多層構造の中間層として用いた場合には、磁壁の移動に制限が加わることから減磁や消磁を抑制する効果もあることが考えられる。
【0006】
しかしながら、軟磁性裏打ち層の透磁率や膜厚などの条件を限定することは、記録再生特性をも制限することになるという問題があり、しかも、そのような条件は材料や成膜条件に大きく依存し易いことから、実用上扱いにくいことが考えられる。また、軟磁性裏打ち層の磁化容易軸を揃えた場合でも、磁化容易方向では軟磁性層の透磁率が高いために、僅かな外部磁界で磁化状態が変動し、減磁や消磁を抑制する効果に関しては十分ではないという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、外部浮遊磁界による磁気記録層の記録磁化の減磁や消磁が抑制された磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非磁性基板上に、軟磁性裏打ち層、及び該非磁性基板の面に対し垂直異方性を有する磁気記録層を積層した磁気記録媒体において、前記軟磁性裏打ち層は、二層の軟磁性層間に各々非磁性中間層を配置した構造をなし、外部磁界一定の大きさ以下のとき該非磁性中間層を介して隣接する軟磁性層が互いに反強磁性的に結合し、一定の大きさ以上の外部磁界を印加したとき該非磁性中間層を介して隣接する軟磁性層の磁化の向きが平行になることを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
第1の発明に係る磁気記録媒体は、非磁性基板上に、軟磁性裏打ち層、及び該非磁性基板の面に対し垂直異方性を有する磁気記録層の積層を有し、この軟磁性裏打ち層は、膜面内方向に磁界を印加し、飽和磁化状態から逆向きの飽和状態に磁化を反転させたときの磁化曲線の微分値が2つのピークを有するという特性を有する。
【0011】
また、第2の発明に係る磁気記録媒体は、第1の発明に係る磁気記録媒体の構成の一例を示すもので、非磁性基板上に、軟磁性裏打ち層、及び該非磁性基板の面に対し垂直異方性を有する磁気記録層の積層を有し、軟磁性裏打ち層は、複数の軟磁性層間に各々非磁性中間層を配置した多層構造をなし、一定の大きさ以下の外部磁界では該非磁性中間層を介して隣接する軟磁性層が互いに反強磁性的に結合し、一定の大きさ以上の外部磁界では隣接する軟磁性層の磁化の向きが平行になるという特性を有する。
【0012】
第1の発明によれば、その磁化を反転させたときの磁化曲線の微分値が2つのピークを持つような軟磁性裏打ち層を用いることにより、本来、透磁率が高く僅かな浮遊磁界に対しても磁化状態が大きく変動しやすい裏打ち層において、2つのピーク間の外部磁界が0となる近傍のみの磁界に対する磁化状態の変化を小さく抑えることができる。これにより、外部浮遊磁界による垂直記録層の記録磁化の減磁や消磁を防止することができる。
【0013】
好ましくは、この2つのピークが現れる範囲を記録磁界未満とすることにより、記録磁界を印加したとき、裏打ち層が磁気ヘッドからの磁束を還流させること可能となる。また、好ましくは、この2つのピークが現れる範囲をおおよそ浮遊磁界程度の外部磁界になるよう調整することにより、軟磁性層の磁化状態の変化を抑制して外部浮遊磁界による垂直記録層の記録磁化の減磁や消磁を防止することができる。
【0014】
また、第2の発明によれば、軟磁性裏打ち層を非磁性中間層との多層構造として一定の大きさ以下の外部磁界では隣接する軟磁性層を互いに反強磁性的に結合させることにより、その飽和磁化状態から逆向きの飽和状態にさせたときの磁化曲線の微分値が2つのピークを持つような軟磁性裏打ち層が得られる。これにより、外部浮遊磁界による垂直記録層の記録磁化の減磁や消磁を防止することができる。
【0015】
また、この2つのピークが現れる範囲を記録磁界未満であり、おおよそ浮遊磁界程度の外部磁界になるよう調整すると、隣接する軟磁性層を、記録磁界を印加した場合には、互いに磁化の向きが平行になり、記録磁界未満の浮遊磁界程度では、反強磁的に結合させることができるので、記録に支障なく、外部浮遊磁界による影響を防ぐことができる。このように軟磁性裏打ち層の磁化状態の変化を抑制することにより外部浮遊磁界による垂直記録層の記録磁化の減磁や消磁を防止することができる。
【0016】
第2の発明において、各軟磁性層の磁気モーメントはほぼ同一であることが好ましく、軟磁性層の磁気モーメントが異なると、磁化曲線の対性が崩れ、残留磁化の値が大きくなり、軟磁性裏打ち層全体としての漏れ磁束が生じやすくなる。
【0017】
図1に、第1の発明に係る磁気記録媒体の一例の構成を表す図を示す。
【0018】
図示するように、この記録媒体は、非磁性ガラス基板1上に、軟磁性裏打ち層2及び磁気記録層3を積層した構造を有する。
【0019】
また、図2に、第2の発明に係る磁気記録媒体の一例の構成を表す図を示す。
【0020】
図示するように、この記録媒体は、非磁性ガラス基板1上に、第1の軟磁性層12、非磁性中間層13、及び第2の軟磁性層14、磁気記録層15を積層した構造を有する。
【0021】
第2の発明に係る磁気記録媒体のように、強磁性遷移金属と非磁性金属を多層化した薄膜においては、非磁性層の厚さに対して強磁性層間の強磁性、反強磁性的結合が周期的に現れることが見出されており、多くの多層膜((Fe,Co)/(V,Cr,Cu,Mo,Ru,Rh,Re))において、隣接する強磁性層が互いに反強磁性的(または強磁性的)に結合する周期は約1nmであることが知られている( A. Heinlich and J. A. C. Bland, Ultrathin Magnetic Structures II, Springer-Verlag(1994) )。また、このような反強磁性的結合すなわち隣接する強磁性層の磁化が反平行となる状態が最初に現れる非磁性層厚は、おおよそ1nm以下付近であり、その後、約1nm間隔での非磁性層厚の増加に伴って、反強磁性的結合は弱くなっていくことから、非磁性層を適当な厚さにすることで結合の強さを選ぶことができる。したがって、ヘッドから印加する記録磁界程度の外部磁界に対しては磁化が平行となるように結合強度を、すなわち非磁性層厚を選ぶことにより、記録時にヘッドから磁界を印加した場合には、優れた軟磁性裏打ち層として機能する一方で、記録時以外の浮遊磁界に対しては、磁化状態の変化が抑制されることから、記録に支障なく外部浮遊磁界による磁気記録層の記録磁化の減磁や消磁を防止することができる。非磁性中間層厚は0.5nm以上1.5nm未満が好ましい。
【0023】
本発明の磁気記録媒体においては、軟磁性裏打ち層の磁化容易軸を円周方向または半径方向に揃えるため、非磁性基板と軟磁性裏打ち層の間にFeMnなどの反強磁性層やCoSmなどの硬磁性層を形成しても良い。
【0024】
軟磁性裏打ち層と垂直記録層との間には、Ru、Ti、非磁性CoCr合金などの非磁性下地層を形成しても良い。
【0025】
軟磁性層の材料には、センダストの他、FeSi合金、FeCo合金や、パーマロイなどのNiFe合金、CoZrNbなどのCoZr合金などの高透磁率を有する軟磁性合金を使用することができる。なお、軟磁性裏打ち層を多層化する上では、軟磁性層の材料は、非磁性中間層と結晶構造が類似しており、格子定数も近いものや、非晶質材料が好ましいと考えられる。
【0026】
非磁性中間層としては、V,Cr,Cu,Mo,Ru,Rh,及びReを使用することが好ましく、さらに好ましくはRuである。
【0027】
軟磁性層と非磁性中間層との組み合わせとしては、センダストやFeSi及びFeCo合金に対しては、V,Cr,Mo,及びNiFe合金に対してはCu,Ru,Rh,及びReが好ましいと考えられ、CoZrNb等の非晶質材料は、どのような非磁性中間層材料に対しても好ましいと考えられる。
【0028】
垂直異方性を有する磁気記録層に使用される磁性材料としては、CoCrPt、CoCrTaなどのCoCr合金の他、CoPtOやCoPtBなどのCoPt合金などがあげられる。
【0029】
本発明の磁気記録媒体では、上述のような軟磁性裏打ち層上に、直接または非磁性下地層を介して基板に対して垂直異方性を有する磁気記録層が積層される。
【0030】
【実施例】
まず、本発明に係る軟磁性裏打ち層の磁気特性について調べた。
【0031】
非磁性基板には、2.5インチ磁気ディスクの標準仕様を満たすガラス基板を用い、各層の作製はすべてDCマグネトロンスパッタリングにより行った。
【0032】
はじめに、非磁性基板上に、第1軟磁性層として厚さ27nm程度のセンダストを形成した。
【0033】
次に、非磁性中間層として厚さ1nm程度のRu層を形成した。
【0034】
その上に、再び第2軟磁性層として厚さ27nm程度のセンダストを積層した。この3層構造の軟磁性裏打ち層上に、保護層として10nmのCを形成した。
【0035】
また、比較例として、非磁性中間層であるRu層の厚さを1.5nm程度とした以外は同様にして積層を行った。
【0036】
得られた軟磁性裏打ち層について、振動試料型磁力計(VSM)による膜面内方向に磁界を印加したときの磁化曲線と、磁化曲線を磁界について微分した結果を表すグラフ図をそれぞれ図3および図4に示す。また、図5および図6はそれぞれRu層の厚さを1.5nm程度とした場合の磁化曲線と微分値である。なお、図4及び図6中、実線は印加磁界を負から正へ、点線は磁界を正から負へ変化させた場合に対応している。
【0037】
図3に示すように、本発明に用いられる軟磁性裏打ち層の磁化曲線は、非磁性中間層を適当な厚さに設定することにより上下軟磁性層が反強磁性的に結合することを示しており、磁界0近傍において上下軟磁性層の磁化が共に磁界と同じ向きに揃おうとする変化が抑制されることから、主に磁界0近傍のみの磁界に対する磁化の変化が小さく抑えられていることが分かる。
【0038】
ここで、印加磁界が0近傍における磁化の値が小さく抑えられ、磁化曲線がおおよそ原点について対となっているのは、非磁性中間層上下の磁気モーメントが等しいためであり、上下の軟磁性層の磁気モーメントが異なると、磁化曲線の対性が崩れ、残留磁化の値が大きくなり、軟磁性裏打ち層全体としての漏れ磁束が生じやすくなることから、上下軟磁性層の磁気モーメントはほぼ同一であることが望ましい。
【0039】
これに対し、比較例では、図5に示すように、Ru層の厚さを1.5nm程度とした場合の軟磁性裏打ち層の磁化曲線は、非磁性中間層厚が上下の軟磁性層を反強磁性的に結合させるのに適当な厚さではないために、基本的には一般的な軟磁性層のそれと同様であり、透磁率が高いことから20Oe程度の外部磁界を印加しただけでも磁化状態が大きく変動することが分かる。
【0040】
図5の磁化曲線から、Ru層の厚さを1.5nmとした場合には、非磁性中間層上下の軟磁性層は強磁性的に結合しているものと考えられる。このRu層厚よりも薄いときに強磁性的に結合する層厚は、その周期性から0.5nm未満と予想され、反強磁性的な結合が現れるRu層厚は0.5nm以上1.5nm未満の範囲内であり、外部浮遊磁界に対する磁化状態の変化を最も効果的に抑制できるRu中間層厚はこの範囲内にあると考えられる。
【0041】
図3と図5におけるこのような磁化曲線の変化の違いは、微分後の曲線においてはピークの数の違いとして見ることができる。すなわち、印加磁界を負から正または正から負へと変化させて磁化を反転させたとき、比較例においては図6に示すようにピークは一つであるのに対し、実施例においては図4に示すように二つのピークを見ることができる。ピークの位置は実線と点線では20Oe程度異なっているが、おおよそこれらのピークをとる磁界の大きさを閾値とすると、実施例においては磁界が0から閾値までの間に磁化状態の変化を抑制した領域が存在するのに対し、比較例においてはそのような領域は存在していないことが分かる。
【0042】
上述の軟磁性裏打ち層上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、非磁性下地層として厚さ20nmのRu層を形成した。
【0043】
次に、非磁性下地層上にCoPtCrO磁性層を形成した。
【0044】
その後、保護層として、10nmのC層を形成した。
【0045】
得られた磁気記録媒体について、ヘルムホルツイルにより発生させた外部磁界中で磁気抵抗効果を利用したヘッドにより再生信号出力の安定性の評価を行った。
【0046】
その結果、20Oeの外部磁界を印加した場合に、比較例においては再生出力の減少や再生波形の変動が観察されたのに対し、実施例においては、そのような変化は観察されなかった。このような20Oeの外部磁界に対する変化の違いは上述の磁化曲線と良く対応している。
【0047】
本発明に関わる垂直磁気記録媒体は、実施例として挙げたような軟磁性裏打ち層上に、直接または非磁性下地層を介して垂直記録層を積層した構成を有する。
【0048】
この磁気記録媒体における軟磁性裏打ち層は、上述の閥値を磁気ヘッドによる記録磁界より小さく、かつ磁気ディスク装置内の浮遊磁界程度に設定することにより、記録磁界を磁気ヘッド側へ還流させる機能を果たしながら、浮遊磁界に対して磁化状態の変動を十分に抑制したものとなる。また、軟磁性裏打ち層を実施例のような多層構造とすることにより、透磁率や膜厚などの設計の自由度を損ねることなく、外部浮遊磁界による垂直記録層の記録磁化の減磁や消磁を十分に防止した垂直磁気記録媒体を得ることができる。
【0049】
なお、上記実施例では、いずれも非磁性基板としてガラス基板を用いているが、Al系の合金基板あるいは表面が酸化したSi単結晶基板、セラミックス、プラスチックなども使用することができる。さらに、それら非磁性基板表面にNiP合金などのメッキが施されている場合でも同様の効果が期待される。また、軟磁性裏打ち層の成膜法としてスパッタリング法のみを取り上げたが、真空蒸着法などでも同様の効果を得ることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の磁気記録媒体によれば、外部浮遊磁界による影響を受けにくいため、磁気記録層の記録磁化の減磁や消磁を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の発明に係る磁気記録媒体の一例を表す概略図
【図2】 第2の発明に係る磁気記録媒体の一例を表す概略図
【図3】 本発明に用いられる軟磁性裏打ち層の一例の磁化曲線を表すグラフ図
【図4】 図3の微分値を表すグラフ図
【図5】 比較のための軟磁性裏打ち層の磁化曲線を表すグラフ図
【図6】 図の微分値を表すグラフ図

Claims (5)

  1. 非磁性基板上に、軟磁性裏打ち層、及び該非磁性基板の面に対し垂直異方性を有する磁気記録層を積層した磁気記録媒体において、前記軟磁性裏打ち層は、二層の軟磁性層間に非磁性中間層を配置した構造をなし、外部磁界が一定の大きさ以下のとき該非磁性中間層を介して隣接する軟磁性層が互いに反強磁性的に結合し、一定の大きさ以上の外部磁界を印加したとき該非磁性中間層を介して隣接する軟磁性層の磁化の向きが平行になることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記非磁性中間層を介して隣接する軟磁性層の磁気モーメントがほぼ同一であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記非磁性中間層はRuからなることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. 前記非磁性中間層は0.5nm以上1.5nm未満であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  5. 前記軟磁性裏打ち層がFeを主成分とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
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