JP4049042B2 - 垂直磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は垂直磁気記録媒体およびその製造方法に関し、より詳細には、高記録密度で記録再生特性に優れる垂直磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のパーソナル・コンピュータやワークステーションには、記憶装置として、大容量で小型の磁気記録装置が搭載されるようになってきている。このような背景から、磁気ディスクにはさらなる高記録密度化が要求されている。
現在実用化されている磁気記録方式は、磁化容易軸が磁気記録媒体面に平行となる「面内(長手)磁気記録方式」である。この面内磁気記録方式において記録密度を向上させるためには、記録媒体が備える磁性層の残留磁化(Br)と磁性層膜厚(t)との積を小さくする必要があることに加え、保磁力(Hc)も増大させる必要がある。このため、磁性層の膜厚を薄くして結晶粒径を制御するための試みがなされている。
【0003】
しかしながら、面内磁気記録方式においては、ビット長の短縮化に伴って反磁界が増加し残留磁束密度が減少するために再生出力が低下するという問題があり、さらに、結晶粒の微細化や磁性層の薄膜化に伴って顕在化してくる「熱揺らぎ問題」もある。このような理由から、現在では、面内磁気記録方式によって磁気ディスクをさらに高密度化することは技術的に困難であると予想されている。
一方、これらの問題を解決しつつ面記録密度を向上させるために「垂直磁気記録方式」が検討されている。垂直磁気記録方式では、磁性層の磁化容易軸が基板面に対し垂直方向に配向するように磁気記録媒体を設計するため、磁化遷移領域において隣接する磁化同士が相互に向き合うことがなく、ビット長が短くなっても磁化が安定で、かつ、磁束の減少もなく、高密度磁気記録媒体の磁気記録方法として適している。
【0004】
このような利点の反面、垂直磁気記録媒体には、磁性層中の磁性粒間の領域への非磁性物質の偏析が充分に行なわれず、その結果、磁性粒間の磁気的相互作用が大きくなり、媒体ノイズが高くなり易いという問題がある。したがって、非磁性物質の粒界偏析を促進可能な材料制御技術を開発することにより、媒体ノイズを低減し、SN比を向上した上で高密度記録化を達成することが求められている。
このための公知の垂直磁気記録媒体の構成としては、例えば、アルミやガラス等の非磁性基板上に軟磁性の裏打ち層を形成し、その上に磁性層を垂直に配向させるための下地層を形成し、さらに、その上に垂直磁気記録層と保護層を形成するという「2層垂直磁気記録媒体」が知られており(例えば、特許文献1参照)、この垂直磁気記録層として、Co−Cr、Co−Cr−Ta、Co−Cr−PtなどのCo基合金からなる垂直磁化膜、Pt/CoやPd/Coなどの多層積層垂直磁化膜、Tb−CoやTb−Fe−Coなどの非晶質垂直磁化膜、などの多くの膜構成が検討されており、なかでも、Pt/CoやPd/Coなどの多層積層垂直磁化膜は垂直磁気異方性が大きく、熱安定性が高く、保磁力が大きく、さらに、角型比も容易に1.0近傍の値が得られることなどの理由により、将来の高記録密度媒体として盛んに研究されている。しかしながら、これらの多層積層垂直磁化膜はいわゆる媒体ノイズが大きく、媒体ノイズの低減が実用化に向けての課題となっており、媒体ノイズの低減のために下地層へのグラニュラー層の設置、あるいは多層積層垂直磁化膜にB等の添加元素の導入等が行われてきた(例えば、特許文献2および3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−203306号公報
【特許文献2】
特開2002−025032号公報
【特許文献3】
特開2001−155329号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の多層積層膜構成の垂直磁気記録媒体の媒体ノイズ低減のレベルは未だ不充分であり、また、多層積層垂直磁化膜に添加元素を導入した場合、結晶磁気異方性定数(Ku)の低下を招き磁気特性が低下する問題が生じる。媒体ノイズをより低いものとしながら更なる記録再生特性の向上を図る必要がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、結晶磁気異方性定数(Ku)を大きく保ちつつ媒体ノイズの低減を図り、高記録密度で記録再生特性に優れる垂直磁気記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、非磁性基板上に少なくとも下地層と磁性層を備えている垂直磁気記録媒体であって、
前記下地層は、表面に酸素が吸着された六方最密構造(hcp)を有するRu膜からなり、前記磁性層は、前記下地層の直上に設けられ、添加元素を含有しないCoからなる第1磁性層とSi酸化物を添加したPtからなる第2磁性層とを交互に多層積層して構成されることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の垂直磁気記録媒体において、前記第2磁性層にSi酸化物が2〜12モル%添加されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体において、前記第1磁性層は0.2〜0.5nmの厚みを有し、前記第2磁性層は0.05〜0.25nmの厚みを有しており、前記第1磁性層の厚みが前記第2磁性層の厚みより大きいことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の垂直磁気記録媒体において、前記下地層の厚みが5〜20nmであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の垂直磁気記録媒体において、前記非磁性基板と前記下地層との間に当該下地層の結晶配向を制御するための配向制御層を備えていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の垂直磁気記録媒体において、前記配向制御層は、第1配向制御層と第2配向制御層とを積層して構成されており、当該第2配向制御層の組成が、前記下地層の六方最密構造のc軸を前記非磁性基板面に略垂直に配向するように設定されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の垂直磁気記録媒体において、前記第1配向制御層はTa層であり、前記第2配向制御層はNiFeNbB層、NiFeSi層またはNiFeCr層のうちの何れかであることを特徴とする。
【0009】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の垂直磁気記録媒体において、前記第2配向制御層を構成するNiFeNbBの組成比はFeが10〜20原子%、Nbが2〜10原子%、Bが2〜6原子%、残部がNiであることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の垂直磁気記録媒体において、前記第2配向制御層を構成するNiFeSiの組成比はFeが10〜20原子%、Siが2〜10原子%、残部がNiであることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項7に記載の垂直磁気記録媒体において、前記第2配向制御層を構成するNiFeCrの組成比はFeが10〜20原子%、Crが20〜30原子%、残部がNiであることを特徴とする。
【0010】
請求項11に記載の発明は、請求項6または7に記載の垂直磁気記録媒体において、前記第1配向制御層の厚みは1〜5nm、前記第2配向制御層の厚みは5〜30nmの範囲に設定されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項5乃至11の何れかに記載の垂直磁気記録媒体において、前記非磁性基板と前記配向制御層との間に、軟磁性の裏打ち層が設けられていることを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の垂直磁気記録媒体において、前記裏打ち層は、CoZrNbまたはCoZrTa合金組成を有し、50〜300nmの厚みであることを特徴とする。
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至13の何れかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法であって、前記下地層の成膜後、前記磁性層の成膜前に、前記下地層の表面を、質量流量比1〜10%の酸素を混合したガス圧0.1〜10PaのArガス中に1〜10秒間曝して前記下地層の表面に酸素を吸着させるステップを備えていることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の垂直磁気記録媒体の基本的な構成例を説明するための概念図で、Alやガラスなどの非磁性の基板1上に、裏打ち層2と配向制御層(3および4)と下地層5と垂直配向した磁性層6とが順次積層され、磁性層6の上には保護層7が設けられている。磁性層6は第1磁性層6aと第2磁性層6bとを多層に積層させた多層積層膜で構成される。
本発明の垂直磁気記録媒体の基本的特徴は、第1磁性層6aを添加元素を含有しないCo層とし、第2磁性層6bをSi酸化物を添加したPt層(以下、Pt−SiOx層と表す)とし、かかる構成の磁性層6を、磁性層6を構成する磁性粒相互間の磁気的相互作用を小さくするために設けられた六方最密構造(hcp)を有するRu膜からなる下地層5上に形成するようにした点である。
【0012】
Co層とPt層を多層積層した磁性層への添加元素の導入は媒体ノイズを低減する効果をもたらす反面、結晶磁気異方性定数(Ku)の低下を生じ磁気的特性が低下する。
発明者等は鋭意検討の結果、下地層5を六方最密構造(hcp)を有するRu膜とし、下地層5の直上にCo層とPt−SiOx層を多層積層した磁性層6を設けることにより、保磁力(Hc)付近での磁化曲線の傾きが緩やかとなり、磁性粒相互間の磁気的相互作用を小さくすることができることを見出した。この結果、結晶磁気異方性定数(Ku)を高く保ちつつ、媒体ノイズを低減することが可能であることを見出した点に本発明の特徴がある。
図1に示されている裏打ち層2と配向制御層(3および4)は、垂直磁気記録媒体の特性向上のために下地層5と基板1との間に付加することが好ましい層であり、これらの層を備えない構成の垂直磁気記録媒体とすることも可能である。
【0013】
より具体的に説明すると、下地層5は六方最密構造(hcp)を有するRu膜からなり、その厚みは例えば5〜20nmの範囲とされる。厚みが5nm未満では保磁力Hcが低くなり磁気特性が十分でなく、厚みが20nmを超えると軟磁性層と磁性層の磁気スペーシングが大きくなり記録再生特性が悪化するが、下地層5の表面に酸素吸着処理を施した後に磁性層6を形成することとすると、磁性層6の磁気特性を更に高めることが可能となる。すなわち、下地層5の表面に酸素吸着させると、この下地層5の上に形成される磁性層6の磁性粒間の磁気的相互作用が抑制され、保磁力近傍での磁化曲線の傾きが更に緩やかとなり、記録再生が容易化するという利点がある。酸素吸着は、Ar、Xe、Kr等の希ガスに酸素を混合したガス中に下地層5の表面を曝すことにより行われる。混合ガスへの曝露は、成膜装置とは独立した装置により行うことも可能であるが、量産性を考慮すれば、下地層5の成膜後に、成膜装置内で連続して行うことがより好ましい。混合ガスへの曝露条件は、目的とする下地層5の表面改質の度合いにより適宜選択される。酸素吸着が多くなりすぎる場合は磁性層の結晶性が低下し、酸素吸着が少ない場合は酸素吸着の効果が得られにくいことから、質量流量比1〜10%の酸素を混合し、混合ガス圧0.1〜10Paのもとで、1〜10秒間曝露することが好ましい。
【0014】
磁性層6は、Co層とPt合金層の多層積層膜で基本構成されている。磁性層6にCo層とPt合金層の多層積層膜を用いるのは、Co−Cr合金などの磁性層に比較してHcが大きく角形比が容易に1近傍となり、界面磁気異方性を利用して大きな結晶磁気異方性が得られるからである。
この多層積層膜を構成する第1磁性層6aは添加元素を含有しないCo層とされる。添加元素を含有しないCo層とすることにより結晶磁気異方性定数を高く保つことができる。ここで、添加元素を含有しないCo層または添加元素を含有しないPt層とは添加元素を意図的に導入しないCo層またはPt層を意味し、不純物のレベルで他の元素が含まれないことを意味するものではない。
第2磁性層6bはPt−SiOx層(Si酸化物を添加したPt層)とされる。添加元素を含有しないPt層とすることにより、結晶磁気異方性定数(Ku)を高く保つことができるが、Pt層へSi酸化物を添加することにより、結晶磁気異方性定数(Ku)を高く保ちつつ、粒子間に非磁性のSi酸化物を偏析させて磁性粒子の微細化、孤立化が促進され、保磁力が大きく媒体ノイズが低減され高記録密度が可能となる。
第2磁性層6bに添加されるSi酸化物の組成はSiOx(0<x≦2)の組成を有するが,好ましくは化学量論比を満足するものとされ、具体的にはSiO2が好ましい。Si酸化物は2〜12モル%の濃度範囲で添加されることが好ましい。Si酸化物が12モル%を超えるとHcの低下が大きく特性の低下をもたらす。Si酸化物が2モル%未満では添加量が少ないためSi酸化物の添加効果は望めない。
【0015】
磁性層6を構成する各層の厚みは、目的とする磁気特性に応じて変更可能であるが、例えば、Co層の膜厚は0.2〜0.8nm、Pt−SiOx層の膜厚は0.05〜1.2nmであり、好ましくは、Co層の膜厚を0.2〜0.5nm、Pt−SiOx層の膜厚を0.05〜0.25nmの範囲に設定する。Co層の膜厚がPt−SiOx層の膜厚より厚いときに高いHcやKuが達成される。なお、この磁性層6はAr、Kr、Xeまたはこれらの混合ガスなどをスパッタガスとして用いてスパッタリング法で成膜される。
配向制御層(3および4)は、下地層5の結晶配向性(c軸配向性)を高めるために設けられるもので、好ましくは、第1配向制御層3であるTa層と第2配向制御層4であるNiFeNbB層とを積層した2層構造として構成される。なお、第2配向制御層はNiFeSi層やNiFeCr層であってもよい。下地層5のc軸配向性を高めることで、この下地層5の上に設けられる磁性層6の結晶配向性も向上し磁気特性を更に高めることが可能となる。第2配向制御層4の組成比は下地層5の結晶性および結晶配向性を乱さない範囲で適宜選択されるが、NiFeNbBの場合はNiが64〜86原子%、Feが10〜20原子%、Nbが2〜10原子%、Bが2〜6原子%の範囲が好適である。NiFeSiの場合はNiが70〜88原子%、Feが10〜20原子%、Siが2〜10原子%、の範囲が好適であり、NiFeCrの場合はNiが50〜70原子%、Feが10〜20原子%、Crが20〜30原子%の範囲が好適である。
第1配向制御層3であるTa層と第2配向制御層4の厚みは、各々の層の結晶性が確保される厚みを下限とし、成膜にかかる時間が長くなりすぎず量産性を損なわない厚みを上限として設定される。第1配向制御層3であるTa層の厚みは1〜5nmが好ましく、第2配向制御層4であるNiFeNbB層、NiFeSi層,NiFeCr層の膜厚は5〜30nmとすることが好ましい。
【0016】
裏打ち層2は、記録ヘッドでの書き込み能力を増大させるために設けるもので、例えば、50〜300nmの厚みの軟磁性膜であり、その組成は例えばCoZrNbやCoZrTaの組成とすることができる。
保護層7は磁気記録ヘッドと磁気記録媒体との摺動性能を確保するために設けることが好ましい層で、硬質のカーボン膜、窒化カーボン膜、炭化シリコン膜等のこの技術分野でよく知られている膜を使用することができる。またカーボン膜等の上に潤滑剤を塗布し、潤滑性を確保する膜を設けることもできる。保護層7を備えない構成の垂直磁気記録媒体とすることも可能である。
以下に、参考例としての実施例1,3を含む実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
(参考例としての実施例1)
本実施例では基板1をガラス基板、裏打ち層2をCoZrNb層、第1配向制御層3をTa層、第2配向制御層4をNiFeNbB層、下地層5をRu層、第1磁性層6aをCo層、第2磁性層6bをPt層、保護層7を窒化カーボン層として垂直磁気記録媒体を構成した例について説明する。
【0017】
本実施例の垂直磁気記録媒体の製造方法は以下のとおりである。基板1は厚みは0.635mm、直径65mm(公称2.5インチ)のガラス基板である。基板の径や厚さは本質的ではなく、基板1としてNi−Pメッキされ適切なテクスチャが形成されたアルミ基板などでもよい。
基板1を充分に洗浄したのちに、スパッタリング法によりCoZrNb膜を成膜して裏打ち層2を形成する。本実施例で用いたスパッタターゲットは、87原子%Co−5原子%Zr−8原子%Nbの組成比である。スパッタガスとしてはArガスを用い、Arガス圧約1Paで室温にて約200nmの厚さに成膜した。なお、CoZrNb膜は、室温成膜した非晶質状態でも充分な軟磁気特性を有する。
【0018】
このCoZrNb膜の上に連続して、Taからなる第1配向制御層3をスパッタ成膜する。用いたターゲットは純Taである。Arガスでスパッタを行い、膜厚約3nmの厚さに成膜した。成膜温度は室温、ガス圧は約1Paである。
このTa層の上に連続して、第2配向制御層4であるNiFeNbB層をスパッタ成膜する。用いたターゲットは79原子%Ni−12原子%Fe−3原子%Nb−6原子%Bの組成比である。Arガスでスパッタを行い、膜厚約25nmの厚さに成膜した。成膜温度は室温、ガス圧は約1Paである。
このNiFeNbB層の上に、下地層5であるRu層をスパッタ成膜する。用いたターゲットは純Ruである。Arガスでスパッタを行い、膜厚約10nmの厚さに成膜した。成膜温度は室温、ガス圧は約4Paである。Taからなる第1配向制御層3、NiFeNbBからなる第2配向制御層4の直上にRu層を成膜することにより、Ru層は六方最密構造(hcp)に成膜される。
このようにして成膜したRuの下地層5の表面を、1Paの圧力下で、Arガスに質量流量比2%のO2ガスを混合した雰囲気に10秒程度曝してRu表面に適度な量の酸素を吸着させる。
【0019】
次に、このRuの下地層5の上に、Co層とPt層を多層積層した磁性層6(Co/Pt)をスパッタリングにより形成する。用いたターゲット組成は、Co層については純Coであり、Pt層については純Ptである。これら2つのターゲットを同時に放電してスパッタさせながら回転することで、Co層とPt層とを交互に積層する。スパッタはArガスを用いて行った。膜厚はCo層が0.3nmであり、Pt層は0.05〜0.8nmの範囲で成膜した。Co層とPt層の積層数は各々10〜31層の範囲である。その際、Co層とPt層の積層数は、磁性層6の膜厚が変わらないようにPt層の膜厚に応じて変更した。すなわち、Pt層の膜厚が最薄の0.05nmのときは、最多の31層積層してCo層とPt層の積層膜からなる磁性層6の膜厚は10.85nmであり、Pt層の膜厚が最厚の0.8nmのときは、最少の10層積層して磁性層6の膜厚は11nmというように、磁性層6の膜厚が常に約11nmになるようにPt層の膜厚に応じて積層数を変更した。この点、他の実施例も同様である。なお、この成膜は室温で行っており、ガス圧は5Paである。
最後に、磁性層6の最表面に保護層7として窒化カーボン膜をスパッタリング法により形成する。すなわち、ターゲットをカーボン、スパッタガスをArに質量流量比4%の窒素を混合したガスとし、膜厚約7nmの窒化カーボン膜からなる保護層7を成膜した。なお、成膜温度は室温、Arガス圧は約1Paである。
【0020】
(実施例2)
スパッタリング法により、Co層とSiO2を添加したPt層(以下Pt−SiO2層と表す)を多層積層した磁性層6(Co/Pt−SiO2)を形成したこと以外は実施例1と同様にして垂直磁気記録媒体を形成した。用いたターゲット組成は、Co層については純Coであり、Pt−SiO2層については92モル%Co−8モル%SiO2である。成膜されるPt−SiO2層の組成比は、用いたターゲットの組成比を反映して、92モル%Pt−8モル%SiO2となる。膜厚はCo層は0.3nm、Pt−SiO2層は0.05〜0.8nmの範囲であり、Co層とPt−SiO2層の積層数は各々10〜31層の範囲である。なお、この成膜は室温で行っており、ガス圧は5Paである。
【0021】
(比較例) スパッタリング法により、Co−SiO2層とPt層を多層積層した磁性層6(Co−SiO2/Pt)を形成したこと以外は実施例1と同様にして垂直磁気記録媒体を形成した。用いたターゲット組成比は、Co−SiO2層については94モル%Co−6モル%SiO2であり、Pt層については純Ptである。成膜されるCo−SiO2層の組成比は、用いたターゲットの組成比を反映して、94モル%Co−6モル%SiO2となる。膜厚はCo−SiO2層は0.3nm、Pt層は0.05〜0.8nmの範囲であり、Co層とPt−SiO2層の積層数は各々10〜31層の範囲である。なお、この成膜は室温で行っており、ガス圧は5Paである。
図2に実施例1、2および比較例についてPt−SiO2層またはPt層の膜厚に対する保磁力(Hc)の依存性を示す。
【0022】
3種類の媒体ともPt層またはPt−SiO2層が薄い方がHcが大きく、厚くなるに従いHcは低下する。Pt層またはPt−SiO2層の膜厚が薄い場合(0.08〜0.2nm)はCo/PtのHcが一番大きく、次がCo/Pt−SiO2であり、比較例のCo−SiO2/Ptは最も小さい。このように六方最密構造のRu層を下地層として用い、第1磁性層のCo層にSiO2を添加しない方がHcは大きくなる。
図3に実施例1、2および比較例についてPt−SiO2層またはPt層の膜厚に対する磁化曲線の傾き(α)の依存性を示す。αは粒子間の磁気的交換相互作用の大小を示す指標で小さい方が相互作用は小さい。αは磁場の強さが保磁力における磁化曲線の傾きで定義した。
【0023】
3種類の媒体ともPt層またはPt−SiO2層の膜厚が薄い方がαが小さく、厚くなるに従い大きくなる。Pt層またはPt−SiO2層の膜厚が薄い場合(0.08〜0.2nm)ではCo/PtとCo/Pt−SiO2のαは小さいことに対して、比較例のCo−SiO2/Ptは大きくなる。このように六方最密構造のRu層を下地層として用い、第1磁性層のCo層にSiO2を添加しない方がαは小さくできる。αが小さいことは、粒子間の磁気的相互作用が小さくなっていることを示し、媒体ノイズの低減につながる。
表1に実施例1、2および比較例について結晶磁気異方性定数(Ku)の測定値を示す。膜厚はCo層またはCo−SiO2層は0.3nm、Pt層またはPt−SiO2層が0.12nmの場合である。
【0024】
【表1】
【0025】
Kuは実施例1(参考例)のCo/Ptが一番大きく、実施例2のCo/Pt−SiO2でも比較例のCo−SiO2/Ptより大きい。このようにCoにSiO2を添加しない方がKuの大きい垂直磁性層を形成でき、熱安定性も有利となる。
図4に実施例1(参考例)、実施例2および比較例について線記録密度(Ld)と信号対ノイズ比(SNR)の関係を示す。SNRが大きい程、記録密度が高くできるため、媒体として優れることを示す。線記録密度の単位はkFCI(kilo Flux Change per Inch)で示している。
SNRは実施例2のCo/Pt−SiO2が一番高く、次に比較例のCo−SiO 2 / Pt、一番低いのが実施例1(参考例)のCo / Ptである。このようにCoにSiO2を添加しないほうが高いSNRが得られ、記録再生特性が改善される。
【0026】
(参考例としての実施例3)
本実施例では基板1をガラス基板、裏打ち層2をCoZrNb層、第1配向制御層3をTa層、第2配向制御層4をNiFeSi層、下地層5をRu層、第1磁性層6aをCo層、第2磁性層6bをPt層、保護層7を窒化カーボン層として垂直磁気記録媒体を構成した例について説明する。
本実施例の垂直磁気記録媒体の製造方法は以下のとおりである。基板1は厚みは0.635mm、直径65mm(公称2.5インチ)のガラス基板である。基板の径や厚さは本質的ではなく、基板1としてNi−Pメッキされ適切なテクスチャが形成されたアルミ基板などでもよい。
基板1を充分に洗浄したのちに、スパッタリング法によりCoZrNb膜を成膜して裏打ち層2を形成する。本実施例で用いたスパッタターゲットは、87原子%Co−5原子%Zr−8原子%Nbの組成比である。スパッタガスとしてはArガスを用い、Arガス圧約1Paで室温にて約200nmの厚さに成膜した。なお、CoZrNb膜は、室温成膜した非晶質状態でも充分な軟磁気特性を有する。
【0027】
このCoZrNb膜の上に連続して、Taからなる第1配向制御層3をスパッタ成膜する。用いたターゲットは純Taである。Arガスでスパッタを行い、膜厚約3nmの厚さに成膜した。成膜温度は室温、ガス圧は約1Paである。
このTa層の上に連続して、第2配向制御層4であるNiFeSi層をスパッタ成膜する。用いたターゲットは84原子%Ni−12原子%Fe−4原子%Siの組成比である。Arガスでスパッタを行い、膜厚約8nmの厚さに成膜した。成膜温度は室温、ガス圧は約1Paである。
このNiFeSi層の上に、下地層5であるRu層をスパッタ成膜する。用いたターゲットは純Ruである。Arガスでスパッタを行い、膜厚約10nmの厚さに成膜した。成膜温度は室温、ガス圧は約4Paである。Taからなる第1配向制御層3、NiFeSiからなる第2配向制御層4の直上にRu層を成膜することにより、Ru層は六方最密構造(hcp)に成膜される。
このようにして成膜したRuの下地層5の表面を、1Paの圧力下で、Arガスに質量流量比2%のO2ガスを混合した雰囲気に10秒程度曝してRu表面に適度な量の酸素を吸着させる。
【0028】
次に、このRuの下地層5の上に、Co層とPt層を多層積層した磁性層6(Co/Pt)をスパッタリングにより形成する。用いたターゲット組成は、Co層については純Coであり、Pt層については純Ptである。これら2つのターゲットを同時に放電してスパッタさせながら回転することで、Co層とPt層とを交互に積層する。スパッタはArガスを用いて行った。膜厚はCo層が0.3nmであり、Pt層は0.05〜0.8nmの範囲で成膜した。Co層とPt層の積層数は各々10〜31層の範囲である。なお、この成膜は室温で行っており、ガス圧は5Paである。
最後に、磁性層6の最表面に保護層7として窒化カーボン膜をスパッタリング法により形成する。ターゲットをカーボン、スパッタガスをArに質量流量比4%の窒素を混合したガスとし、膜厚約7nmで成膜した。なお、成膜温度は室温、Arガス圧は約1Paである。
【0029】
(実施例4)
スパッタリング法により、Co層とPt−SiO2層を多層積層した磁性層6(Co/Pt−SiO2)を形成したこと以外は実施例3と同様にして垂直磁気記録媒体を形成した。用いたターゲット組成は、Co層については純Coであり、Pt−SiO2層については92モル%Pt−8モル%SiO2である。成膜されるPt−SiO2層の組成比は、用いたターゲットの組成比を反映して、92モル%Pt−8モル%SiO2となる。膜厚はCo層は0.3nm、Pt−SiO2層は0.05〜0.8nmの範囲であり、Co層とPt−SiO2層の積層数は各々10〜31層の範囲である。なお、この成膜は室温で行っており、ガス圧は5Paである。 第2配向制御層4としてNiFeSiを用いた実施例3、4は、第2配向制御層4としてNiFeNbBを用いた実施例1、2と同等な結果が得られた。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、磁性層を添加元素を含有しないCo層とSi酸化物を添加したPt合金層とを多層に積層した多層積層膜で基本構成し、かかる構成の磁性層を、表面に酸素が吸着された六方最密構造(hcp)を有するRu膜からなる下地層上に形成することにより、磁性層の磁性粒間の磁気的相互作用を抑制し、高記録密度で記録再生特性に優れる垂直磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の垂直磁気記録媒体の構成例を説明するための図である。
【図2】Co合金層とPt合金層とを多層積層した膜において、Pt合金層膜厚と保磁力の関係を説明するための図である。
【図3】Co合金層とPt合金層とを多層積層した膜において、Hc付近の磁化曲線の傾きαのPt合金層膜厚に対する依存性を説明するための図である。
【図4】Co合金層とPt合金層とを多層積層した膜において、SNRと線記録密度Ldの関係を説明するための図である。
【符号の説明】
1 基板
2 裏打ち層
3 第1配向制御層
4 第2配向制御層
5 下地層
6 磁性層
6a 第1磁性層
6b 第2磁性層
7 保護層
Claims (14)
- 非磁性基板上に少なくとも下地層と磁性層を備えている垂直磁気記録媒体であって、
前記下地層は、表面に酸素が吸着された六方最密構造を有するRu膜からなり、
前記磁性層は、前記下地層の直上に設けられ、添加元素を含有しないCoからなる第1磁性層とSi酸化物を添加したPtからなる第2磁性層とを交互に多層積層して構成されることを特徴とする垂直磁気記録媒体。 - 前記第2磁性層にSi酸化物が2〜12モル%添加されていることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記第1磁性層は0.2〜0.5nmの厚みを有し、前記第2磁性層は0.05〜0.25nmの厚みを有しており、前記第1磁性層の厚みが前記第2磁性層の厚みより大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記下地層の厚みが5〜20nmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記非磁性基板と前記下地層との間に当該下地層の結晶配向を制御するための配向制御層を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記配向制御層は、第1配向制御層と第2配向制御層とを積層して構成されており、当該第2配向制御層の組成が、前記下地層の六方最密構造のc軸を前記非磁性基板面に略垂直に配向するように設定されていることを特徴とする請求項5に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記第1配向制御層はTa層であり、前記第2配向制御層はNiFeNbB層、NiFeSi層またはNiFeCr層のうちの何れかであることを特徴とする請求項6に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記第2配向制御層を構成するNiFeNbBの組成比はFeが10〜20原子%、Nbが2〜10原子%、Bが2〜6原子%、残部がNiであることを特徴とする請求項7に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記第2配向制御層を構成するNiFeSiの組成比はFeが10〜20原子%、Siが2〜10原子%、残部がNiであることを特徴とする請求項7に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記第2配向制御層を構成するNiFeCrの組成比はFeが10〜20原子%、Crが20〜30原子%、残部がNiであることを特徴とする請求項7に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記第1配向制御層の厚みは1〜5nm、前記第2配向制御層の厚みは5〜30nmの範囲に設定されていることを特徴とする請求項6または7に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記非磁性基板と前記配向制御層との間に、軟磁性の裏打ち層が設けられていることを特徴とする請求項5乃至11の何れかに記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記裏打ち層は、CoZrNbまたはCoZrTa合金組成を有し、50〜300nmの厚みであることを特徴とする請求項12に記載の垂直磁気記録媒体。
- 請求項1乃至13の何れかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法であって、
前記下地層の成膜後、前記磁性層の成膜前に、前記下地層の表面を、質量流量比1〜10%の酸素を混合したガス圧0.1〜10PaのArガス中に1〜10秒間曝して前記下地層の表面に酸素を吸着させるステップを備えていることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
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