JP4071027B2 - 鍵盤楽器の押鍵情報検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器や、消音ピアノあるいは自動演奏ピアノなどの複合型ピアノに適用され、押鍵情報を検出するとともに、その検出結果に応じて打鍵強さを表すパラメータとしてのベロシティを決定するための鍵盤楽器の押鍵情報検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような鍵盤楽器では一般に、押鍵時の鍵盤速度、すなわち押鍵速度に基づいてベロシティを決定し、決定されたベロシティに基づいて電子音源から発音される音量が決定される。これは、アコースティックピアノなどの音量は、弦をハンマーでたたく際の打弦強度で決まり、この打弦強度は、押鍵速度に応じて定まるからである。また、この押鍵速度は、押鍵中一定ではなく、またその変化の仕方は、実際の演奏時における奏法や打鍵強さなどによって異なる。すなわち、例えば、鍵盤に指を軽く乗せたまま鍵を押し下げるようにして打鍵を行う奏法(以下「指付け打鍵」という)と、高い位置から指を振り下ろすようにして打鍵を行う奏法(以下「指離し打鍵」という)とでは、図12に示すように、押鍵速度が互いに異なる変化特性を示す。
【0003】
図12(a)、(b)は、指付け打鍵を行ったときの押鍵深さおよびそのときの押鍵速度の推移の一例をそれぞれ示しており、一方、同図(c)、(d)は、指離し打鍵を行ったときの押鍵深さおよび押鍵速度の推移の一例をそれぞれ示している。同図(a)に示すように、指付け打鍵を行ったときの鍵では、押鍵前の位置(以下「上限位置」という)から、最深の位置(以下「下限位置」という)に達するまで、その押鍵深さが緩やかなカーブを描くように漸増する。この場合、押鍵速度は、同図(b)に示すように、押鍵の初期には小さく、次第に大きくなり、下限位置付近でピークとなり、その後、急激に減少する。
【0004】
一方、指離し打鍵を行ったときの鍵では、図12(c)に示すように、押鍵深さが上限位置から下限位置まで急激に大きくなる。またこの押し下げの途中で、同図(c)に示すように、その押鍵深さがほとんど変化しない段(以下「緩徐段」という)が生じることがある。この場合には、同図(d)に示すように、鍵が上限位置から下限位置に達するまでの1ストロークの間に、押鍵速度には2つのピークが生じるようになる。上記緩徐段は、鍵盤やアクションなどに用いられるフェルトなどの粘弾性に起因するものであると考えられ、その発生位置は、打鍵強さや鍵の種類などによって異なる。すなわち、緩徐段の発生位置は、例えば打鍵強さが強いと深い位置で発生する一方、打鍵強さが弱いと浅い位置で発生する傾向にある。
【0005】
このような緩徐段の発生を考慮して、ベロシティを決定する装置として、例えば特開2000−99029号公報に記載のものが知られている。この装置では、鍵の上限位置と下限位置の間の所定区間の押鍵速度の平均値に応じて、ベロシティを決定している。具体的には、図12(c)に示すように、互いに所定距離、離れた2つの押鍵深さK1、K2を予め設定し、これらの間の距離を鍵が移動した時間で除することによって、押鍵速度の平均値を算出している。そして、この平均値に基づいて、ベロシティが決定されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、上記従来の装置では、所定区間内の押鍵速度の平均値に基づいてベロシティを決定することにより、所定区間内で緩徐段が発生する場合であっても、その発生によるベロシティの影響をできるだけ小さくするようにしている。しかし、上述したように、緩徐段の発生位置は一定ではないので、実際の演奏時における打鍵強さと、決定されたベロシティとの大小関係が逆転するいわゆる逆転現象が生じるおそれがある。すなわち、例えば演奏時に、打鍵強さを次第に強くしてゆくと、図12(c)のK1よりも上側の浅い位置に発生していた緩徐段が、同図のK1、K2間に発生し始める打鍵強さがある。その打鍵強さで打鍵することによる緩徐段の発生位置の切り替わりでは、その直前の打鍵よりも強打したにもかかわらず、緩徐段がK1、K2間で発生することで、ベロシティが小さい値に決定され、その結果、打鍵強さが強いにもかかわらず、スピーカからは小さな音が出力されてしまうことがある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、演奏時の奏法や打鍵強さなどにかかわらず、ベロシティを適切に決定することができる鍵盤楽器の押鍵情報検出装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る鍵盤楽器の押鍵情報検出装置は、揺動自在の鍵の押鍵深さを連続的に検出する押鍵深さ検出手段と、検出された押鍵深さに基づいて、鍵の鍵盤速度を連続的に算出する鍵盤速度算出手段と、押鍵時に、算出された鍵盤速度のうちの、鍵が所定の押鍵深さに達するまでの最大値を最大押鍵速度として取得する最大押鍵速度取得手段と、取得された最大押鍵速度に基づいて、鍵のベロシティを決定するベロシティ決定手段と、押鍵時に、緩徐段が発生したか否かを検出する緩徐段検出手段と、を備えており、鍵が所定の押鍵深さに達するまでに、緩徐段検出手段により、緩徐段の発生が検出されたときに、ベロシティ決定手段は、緩徐段の発生前に取得された最大押鍵速度に基づいて、ベロシティを決定することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、押鍵時に、鍵の押鍵深さが押鍵深さ検出手段で連続的に検出され、この検出された押鍵深さに基づいて、鍵盤速度算出手段により、鍵の鍵盤速度が連続的に算出される。この算出された鍵盤速度のうちの、鍵が所定の押鍵深さに達するまでの最大値を最大押鍵速度として、最大押鍵速度取得手段により取得される。そして、この取得された最大押鍵速度に基づいて、ベロシティ決定手段により、鍵のベロシティが決定される。後述するように、押鍵時に鍵が所定の押鍵深さに達するまでの最大押鍵速度と、ベロシティとの間には、密接な相関関係があるので、その最大押鍵速度に基づいてベロシティを決定することで、演奏時の奏法や打鍵強さなどにかかわらず、ベロシティを適切に決定することができる。また、ベロシティを決定するための鍵盤速度として、所定の押鍵深さまでの最大押鍵速度を採用することにより、鍵が所定の押鍵深さに達した時点で、ベロシティを決定できるので、鍵が所定の押鍵深さに達した後の適切なタイミングで発音を行うことができる。
また、押鍵時に、鍵が所定の押鍵深さに達するまでに、緩徐段検出手段により、緩徐段の発生が検出されたときには、その緩徐段の発生前に取得された最大押鍵速度に基づいてベロシティが決定される。上述したように、押鍵時に緩徐段が発生すると、その前後で押鍵速度の第1および第2ピークが生じる。後述するように、第1ピーク時の押鍵速度は、第2ピーク時の押鍵速度に比べて大きな値を示すとともに、ベロシティとの間に、より密接な相関関係がある。したがって、最大押鍵速度として緩徐段の発生前の第1ピーク時の押鍵速度を採用することで、ベロシティを単純かつより適切に決定することができる。また、このようにしてベロシティを決定することにより、従来のような実際の打鍵強さと、ベロシティとの大小関係の逆転現象の発生を防止することができる。
【0010】
なお、本明細書において、「押鍵深さ」とは、押鍵前の鍵の位置(上限位置)から、押鍵や離鍵により揺動する鍵の位置までの上下方向の距離を意味する。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1の鍵盤楽器の押鍵情報検出装置において、緩徐段検出手段は、押鍵時に算出された鍵盤速度に基づいて加速度を算出する押鍵加速度算出手段と、算出された加速度に基づいて、緩徐段の発生の有無を判定する緩徐段発生判定手段と、を有していることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、押鍵加速度算出手段により、押鍵時の鍵盤速度に基づいて加速度が算出され、その加速度に基づいて、緩徐段の発生の有無が判定される。具体的には、緩徐段が発生するときには、鍵盤速度を時間で微分した加速度が、正から負へ変化し、さらに正へと変化するので、緩徐段発生判定手段により、加速度の推移に基づいて、実際の緩徐段の発生を、随時、正しく判定することができる。また、加速度を算出するための鍵盤速度が、押鍵深さ検出手段で検出した押鍵深さを利用して算出でき、つまり、その押鍵深さを利用して加速度を算出できるので、加速度を検出するための格別なセンサなどは不要である。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または2の鍵盤楽器の押鍵情報検出装置において、押鍵時に、鍵が所定の押鍵深さに達したときに、鍵に基づく発音を行うべきと決定する発音タイミング決定手段を、さらに備えていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、押鍵時に、鍵が所定の押鍵深さに達したときに、その鍵に基づく発音を行うべきと決定するので、押鍵に応じた発音タイミングを適切に決定することができる。また、発音タイミングを決定するためのパラメータとして、上述した最大押鍵速度を求めるための押鍵深さを共用することができ、それにより、発音制御の簡素化を図ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかの鍵盤楽器の押鍵情報検出装置において、離鍵時に、鍵が所定の押鍵深さを通過するときの鍵盤速度を離鍵速度として算出する離鍵速度算出手段と、鍵が所定の押鍵深さを通過した後、離鍵速度に応じた所定時間が経過したときに、止音を行うべきと決定する止音タイミング決定手段と、をさらに備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、離鍵時に、鍵が所定の押鍵深さを通過した後、その通過するときの離鍵速度に応じた所定時間が経過したときに、止音を行うべきと決定するので、離鍵に応じた止音タイミングを適切に決定することができる。また、止音タイミングを決定するためのパラメータとして、上述した最大押鍵速度を求めるための押鍵深さを共用することができ、それにより、止音制御の簡素化を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の押鍵情報検出装置を適用した電子ピアノの回路構成を示しており、図2は、その電子ピアノの鍵盤における押鍵の前後の状態を示している。これらの図に示すように、電子ピアノ1の鍵盤2は、複数の鍵3と、各鍵3の押鍵・離鍵時に、押鍵深さを連続的に検出する複数の押鍵深さセンサ4(押鍵深さ検出手段)とを有している。なお、図2では、鍵3および押鍵深さセンサ4はいずれも1つのみ示している。
【0020】
図1に示すように、この電子ピアノ1では、鍵盤2からの検出信号が鍵盤スキャン回路11に入力され、鍵盤2のON/OFF情報およびノートナンバーに加えて、押鍵深さセンサ4によって連続的に検出された押鍵深さを表すデータが、鍵盤スキャン回路11からシステムバス12を介して、CPU13に送られる。
【0021】
RAM14は、電子ピアノ1の動作状態を表すステータス情報や、後述する最大押鍵速度Vmaxなどを一時的に記憶するとともに、CPU13の作業領域として用いられる。また、ROM15は、CPU13で実行される制御プログラムやCPU13での演算に使用される固定データ、さらには後述する最大押鍵速度Vmaxに基づいてベロシティを決定するベロシティテーブルや、決定されたベロシティに基づいて、発音すべき楽音の出力レベルを決定する楽音出力レベルテーブルなどを記憶している。これらのRAM14およびROM15は、CPU13によりシステムバス12を介してアクセスされる。
【0022】
CPU13は、電子ピアノ1の各部を制御するものであり、本発明の鍵盤速度算出手段、最大押鍵速度取得手段、ベロシティ決定手段、緩徐段検出手段、押鍵加速度算出手段、緩徐段発生判定手段、発音タイミング決定手段、離鍵速度算出手段、および止音タイミング決定手段に相当するものである。このCPU13は、鍵盤スキャン回路11からのデータの他、いずれも図示しないが、音量を設定するためのボリューム回路からの設定音量や、電源スイッチや音色選択スイッチなどの各種スイッチの操作状態を検出するパネルスキャン回路からのパネルスイッチデータなどに応じ、上記制御プログラムに従って、発生すべき楽音の内容を演算し、その演算結果に基づく制御信号を音源回路16に出力する。
【0023】
音源回路16は、CPU13からの制御信号に従って、波形メモリ17から波形データを読み出し、これにエンベロープを乗算して、デジタルの楽音信号MSを生成し、出力する。この楽音信号MSは、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)18により、残響やコーラスなどの音響効果の付加やフィルタ処理が施され、D/A(デジタル/アナログ変換器)19でアナログ信号に変換された後、スピーカ20に送られる。そして、スピーカ20で再生され、発音される。
【0024】
図2に示すように、鍵盤2の各鍵3は、上下方向に延びるバランスピン21を支点として、前後(図2では左右)に揺動自在に構成されている。そして、各鍵3の後端部(図2の右端部)と筬5との間に、押鍵深さセンサ4が配置されている。この押鍵深さセンサ4は、上述したように、押鍵深さ、すなわち押鍵時および離鍵時の鍵3の上下方向の変位を連続的に検出するためのものであり、静電容量を利用して検出するいわゆる静電容量センサである。
【0025】
具体的には、この押鍵深さセンサ4は、図3(a)に示すように、基板22と、互いに所定距離離れた状態で、基板22上に配置された一対の固定電極23、23と、これら一対の固定電極23、23を絶縁するように覆った状態で、基板22上に積層された絶縁層24と、この絶縁層24上に載置された円錐状のコイルばね25と、このコイルばね25を覆うように、絶縁層24上に設けられたドーム状のコイルケース26とを有している。コイルばね25はステンレスなどの金属で構成され、またコイルケース26は肉薄のゴムで構成されている。
【0026】
このように構成された押鍵深さセンサ4は、押鍵時に、鍵3で上方から押圧されると、図3(b)、(c)に順に示すように、コイルケース26が上方から押し潰されるとともに、コイルばね25が圧縮される。逆に、離鍵時に、鍵3による押圧が解除されると、コイルケース26の上面が鍵3の下面に接触した状態に保たれながら、コイルケース26およびコイルばね25が復帰する。このような鍵3の押鍵および離鍵によるコイルばね25の伸縮に伴って、固定電極23、23間の空間の誘電率が変化し、これにより固定電極23、23間の静電容量が連続的に変化する。この静電容量の値は、コイルばね25の変形量、すなわち鍵3の押鍵深さに対応しており、したがって、固定電極23、23間の静電容量を検出することによって、鍵3の押鍵深さを連続的に検出することができる。
【0027】
ここで、図4〜図8のフローチャートと、図9の押鍵深さKおよび押鍵速度Vのタイムチャートを参照して、電子ピアノ1における押鍵・離鍵時の処理について説明する。なお、後述する緩徐段発生フラグF_Kは、緩徐段の発生の有無を判別するためのフラグであり、その初期値として、緩徐段が発生していないことを意味する「0」が設定されている。また、後述する最大押鍵速度Vmaxには、初期値として値0が設定されている。
【0028】
図4は、押鍵・離鍵時のメイン処理を示している。押鍵時に、打鍵によって鍵3が押し下げられると、本メイン処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、押鍵深さ・押鍵速度検出処理が実行される。この検出処理ではまず、図5に示すように、緩徐段発生フラグF_Kが「1」であるか否かを判別する(ステップ11)。この判別結果がYes、すなわち緩徐段が既に発生しているときには、後述するように、緩徐段の発生前の最大押鍵速度Vmaxが保持されたまま、本検出処理を終了する。一方、ステップ11の判別結果がNo、すなわち緩徐段が発生していないときには、押鍵中の鍵3の押鍵深さKが、上記押鍵深さセンサ4によって連続的に検出されるとともに(ステップ12)、その検出結果に基づいて、押鍵速度Vが演算される(ステップ13)。具体的には、連続的に検出された押鍵深さKが、CPU13により、時間で逐次微分されることで、鍵3の押鍵速度Vが算出される。
【0029】
次いで、算出された押鍵速度Vと最大押鍵速度Vmaxとを比較し(ステップ14)、押鍵速度Vが最大押鍵速度Vmaxよりも大きいときには(ステップ14:Yes)、今回の押鍵速度Vを最大押鍵速度Vmaxとしてセットし(ステップ15)、続くステップ16に進む。逆に、押鍵速度Vが最大押鍵速度Vmax以下であるときには(ステップ14:No)、ステップ15をスキップしてステップ16に進む。
【0030】
このステップ16では、緩徐段が発生したか否かを判別する。具体的には、押鍵加速度算出手段としてのCPU13により、鍵3の押鍵速度Vを時間で微分することで加速度を算出し、その推移に基づいて判定する。すなわち、緩徐段が発生するときには、その加速度が、正から負へ変化し、さらに正へと変化するので、この加速度の推移に基づいて、緩徐段の発生の有無を適正に判定することができる。ステップ16の判別結果がNo、すなわち緩徐段が発生していないときには、そのまま本検出処理を終了して、図4のメイン処理に戻る。一方、ステップ16の判別結果がYes、すなわち緩徐段が発生したときには、緩徐段発生フラグF_Kを「1」にセットし(ステップ17)、本検出処理を終了して、図4のメイン処理に戻る。したがって、これ以降は、本検出処理が再度実行されても、上記ステップ11でF_K=1と判別されることで、直ちに本検出処理が終了し、最大押鍵速度Vmaxは、緩徐段発生前の値に保たれる。
【0031】
続く図4のステップ2において、押鍵深さKが基準押鍵深さKbase(所定の押鍵深さ)以上であるか否か、すなわち、鍵3の押鍵深さKが、予め設定された基準押鍵深さKbase(例えば7〜8mm)に達したか否かを判別する。その判別結果がNo、すなわち押鍵深さKが基準押鍵深さKbaseに達していないときには、再度、上記ステップ1の押鍵深さ・押鍵速度検出処理が実行される。一方、ステップ2の判別結果がYesで、押鍵深さKが基準押鍵深さKbaseに達したときには、ベロシティ決定処理が実行される(ステップ3)。
【0032】
このベロシティ決定処理では、図6に示すように、最大押鍵速度Vmaxに基づき、図示しないベロシティテーブルを検索して(ステップ31)、ベロシティを決定し(ステップ32)、図4のメイン処理に戻る。なお、この図示しないベロシティテーブルでは、最大押鍵速度Vmaxが大きいほど、ベロシティの値が大きくなるように設定されている。
【0033】
次いで、決定されたベロシティに基づいて、発音処理が実行される(ステップ4)。すなわち、図7に示すように、ベロシティに基づき、図示しない楽音出力レベルテーブルなどを検索し(ステップ41)、発音すべき楽音の制御信号を音源回路16に出力する(ステップ42)。これにより、DSP18およびD/A19を介して、スピーカ20から発音される(ステップ43)。この場合、押鍵された鍵3が基準押鍵深さKbaseに達したときに(ステップ2〜4)、その鍵3に基づく発音を行うべきとして、制御信号を音源回路16に出力することで発音が行われるので、押鍵に応じた発音を適切なタイミングで行うことができる。
【0034】
そして、スピーカ20からの発音が開始された後、押鍵された鍵3が、押し下げと反対の上方に向かって揺動し、押鍵前の元の位置に戻るまでの間に、ステップ5の止音処理によって、スピーカ20からの発音が停止する。図8に示すように、この止音処理では、まず、上記図5の押鍵深さ・押鍵速度検出処理のステップ12、13と同様にして、押鍵深さセンサ4により、鍵3の押鍵深さKを連続的に検出するとともに(ステップ51)、押鍵速度Vを演算する(ステップ52)。
【0035】
次いで、ステップ53において、鍵3の押鍵深さKが基準押鍵深さKbase以下であるか否か、すなわち、上方に向かって揺動する鍵3が基準押鍵深さKbaseを通過したか否かを判別する。その判別結果がNo、すなわち鍵3が基準押鍵深さKbaseを通過していないときには、再度、押鍵深さKが検出されるとともに(ステップ51)、押鍵速度Vが演算される(ステップ52)。一方、ステップ53の判別結果がYesで、鍵3が基準押鍵深さKbaseを通過したときには、この通過時点の押鍵速度Vを離鍵速度VRとしてセットするとともに(ステップ54)、この離鍵速度VRに応じて、上記ステップ43で開始された発音を停止すべき所定時間を算出する(ステップ55)。そして、続くステップ56において、鍵3が基準押鍵深さKbaseを通過してから、上記所定時間が経過したか否かを判別する。なお、この所定時間は、離鍵速度VRに応じて予め設定されたテーブルや計算式などに基づいて算出され、また時間の計測は、ソフトウェアによるタイマによって行われるようになっている。
【0036】
ステップ56の判別結果がYesで、鍵3が基準押鍵深さKbaseを通過後、上記所定時間を経過したときには、発音を停止させるべきとして、そのための制御信号を音源回路16に出力し(ステップ57)、これにより、上記ステップ43で開始された発音が停止(止音)される(ステップ58)。このように、止音処理では、上方に向かって揺動する鍵3が基準押鍵深さKbaseを通過後、その通過時点の押鍵速度V(離鍵速度VR)に応じて、止音タイミングが決定されるので、離鍵に応じた適切な止音タイミングで、発音を停止させることができる。
【0037】
以上により、ステップ5の止音処理が終了し、押鍵・離鍵時のメイン処理も終了する。
【0038】
図10は、実際に種々の奏法や強さで打鍵したときの鍵の1ストロークの平均速度と、本実施形態および従来の手法によるそれぞれの押鍵速度との関係を示す分布図である。より具体的には、同図では、横軸に、ベロシティの代替値としての1ストローク平均速度をとり、一方、縦軸の押鍵速度については、「●」が本実施形態によるもの、すなわち基準押鍵深さKbaseまでの最大押鍵速度を示し、「○」が従来の手法によるもの、すなわち押鍵深さK1、K2(図12(c)参照)間の平均の押鍵速度(以下、単に「平均押鍵速度」という)を示している。
【0039】
なお、上記実験では、鍵の1ストロークの押鍵深さ、すなわち鍵の上限位置と下限位置との間の距離、より具体的には、鍵盤端(図2の鍵3の右端)位置での距離を10.5mmとするとともに、基準押鍵深さKbase、押鍵深さK1およびK2をそれぞれ、7mm、4mmおよび7mmとした。また、鍵の1ストロークの平均速度をベロシティの代替値としているのは、通常、打鍵強さを直接測定することはできず、1ストローク平均速度がベロシティと強い相関(比例関係)があると考えられるからである。
【0040】
図10の「●」の分布から明らかなように、1ストローク平均速度と最大押鍵速度とは互いに、ほぼ比例関係にあり、1ストローク平均速度が大きいほど、最大押鍵速度も大きくなっている。このように、両者の間には強い相関があり、したがって、最大押鍵速度が大きいほど、ベロシティが大きくなることがわかる。これに対し、同図の「○」の分布では、1ストローク平均速度と平均押鍵速度との間に、上述した「●」のような相関がなく、特に、押鍵深さK1、K2間に緩徐段を含む場合(分布図の右下部分)には、他の「○」とは全く異なる傾向を示していることがわかる。
【0041】
以上のことから、押鍵によるベロシティを、基準押鍵深さKbaseまでの最大押鍵速度に基づいて決定することにより、従来手法による場合に比べて、ベロシティを適切に決定できることがわかる。
【0042】
また、図11は、実際に種々の奏法や強さで打鍵したときの鍵の1ストロークの平均速度と、ピークとなる押鍵速度(以下「ピーク速度」という)との関係を示す分布図である。より具体的には、横軸は上記図10と同様であり、縦軸のピーク速度については、「●」が指離し打鍵を行ったときに最初に生じるピーク(以下「第1ピーク」という)を示し、「○」がその後に生じるピーク(以下「第2ピーク」という)を示している(図9、図12(d)参照)。
【0043】
図11の「●」および「○」の分布から明らかなように、押鍵時に緩徐段が発生することで、押鍵速度の推移に2つのピークが生じる場合には、一般に、第1ピークの値が第2ピークの値に比べて大きく、加えて、打鍵強さによっては、第2ピークがはっきりと生じないこともある。したがって、第1ピーク時のピーク速度を最大押鍵速度として採用し、これに基づいてベロシティを決定することにより、打鍵強さをよりよく反映した適切なベロシティを得ることができ、しかも、単に、第1ピークのピーク速度を採用するだけなので、ベロシティの決定を単純に行うことができる。
【0044】
以上詳述したように、本実施形態の押鍵情報検出装置によれば、基準押鍵深さKbaseを単一の基準とし、押鍵時のベロシティを、これに密接な相関関係のある最大押鍵速度Vmaxに基づいて決定するので、演奏時の奏法や打鍵強さなどにかかわらず、ベロシティを適切かつ単純に決定することができる。また、押鍵時の鍵3が基準押鍵深さKbaseに達するまでに、緩徐段が発生したときには、第1ピーク時のピーク速度を最大押鍵速度として採用することで、ベロシティを単純かつより適切に決定することができる。このようにしてベロシティを決定することにより、従来のような実際の打鍵強さと、ベロシティとの大小関係の逆転現象の発生を防止することができる。
【0045】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。上記実施形態では、押鍵深さを検出する押鍵深さセンサ4として、静電容量センサを使用したが、押鍵深さを連続的に検出できるものであればどのようなセンサでもよい。そのようなセンサとして、例えば、光学式の光強度センサや光学反射式センサ、エンコーダ式のセンサ、渦電流式センサ、あるいは磁気センサなどを用いることができる。また、実施形態では、ベロシティや楽音の出力レベルを決定するために、予め設定された所定のテーブルを使用したが、所定の換算式を用いて算出するようにしてもよい。
【0046】
また、実施形態は、本発明を電子ピアノに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、他の適当な鍵盤楽器、例えば消音ピアノや自動演奏ピアノ、さらにはシンセサイザや電子オルガンなどに適用することも、もちろん可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することができる。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の鍵盤楽器の押鍵情報検出装置は、演奏時の奏法や打鍵強さなどにかかわらず、ベロシティを適切に決定することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による押鍵情報検出装置を適用した電子ピアノの回路構成を示す図である。
【図2】鍵盤における押鍵動作を示す図であり、(a)は押鍵前、(b)は押鍵後の状態を示している。
【図3】(a)は押鍵深さセンサの内部構造を示す図であり、(b)および(c)は押鍵時に鍵で上方から押圧されたときの変形を順に示している。
【図4】押鍵・離鍵時におけるメイン処理を示すフローチャートである。
【図5】押鍵深さ・押鍵速度の検出処理を示すフローチャートである。
【図6】ベロシティの決定処理を示すフローチャートである。
【図7】発音処理を示すフローチャートである。
【図8】止音処理を示すフローチャートである。
【図9】押鍵深さおよびそのときの押鍵速度の一例を示すタイムチャートであり、(a)は基準押鍵深さよりも深い位置で緩徐段が発生した状態を示し、(b)は基準押鍵深さよりも浅い位置で緩徐段が発生した状態を示している。
【図10】鍵の1ストロークの平均速度(ベロシティの代替値)と本実施形態および従来の手法によるそれぞれの押鍵速度との関係の実験結果を示す分布図である。
【図11】鍵の1ストロークの平均速度(ベロシティの代替値)とピーク速度との関係の実験結果を示す分布図である。
【図12】(a)、(b)は、指付け打鍵を行ったときの押鍵深さおよびそのときの押鍵速度の一例をそれぞれ示すタイムチャート、(c)、(d)は、指離し打鍵を行ったときの押鍵深さおよび押鍵速度の一例をそれぞれ示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 電子ピアノ
2 鍵盤
3 鍵
4 押鍵深さセンサ(押鍵深さ検出手段)
13 CPU(鍵盤速度算出手段、最大押鍵速度取得手段、
ベロシティ決定手段、緩徐段検出手段、押鍵加速度算出手段、
緩徐段発生判定手段、発音タイミング決定手段、
離鍵速度算出手段、止音タイミング決定手段)
K 押鍵深さ
Kbase 基準押鍵深さ(所定の押鍵深さ)
V 押鍵速度
Vmax 最大押鍵速度
Claims (4)
- 揺動自在の鍵の押鍵深さを連続的に検出する押鍵深さ検出手段と、
当該検出された押鍵深さに基づいて、前記鍵の鍵盤速度を連続的に算出する鍵盤速度算出手段と、
押鍵時に、当該算出された鍵盤速度のうちの、前記鍵が所定の押鍵深さに達するまでの最大値を最大押鍵速度として取得する最大押鍵速度取得手段と、
当該取得された最大押鍵速度に基づいて、前記鍵のベロシティを決定するベロシティ決定手段と、
押鍵時に、緩徐段が発生したか否かを検出する緩徐段検出手段と、
を備えており、
前記鍵が前記所定の押鍵深さに達するまでに、前記緩徐段検出手段により、前記緩徐段の発生が検出されたときに、前記ベロシティ決定手段は、当該緩徐段の発生前に取得された前記最大押鍵速度に基づいて、前記ベロシティを決定することを特徴とする鍵盤楽器の押鍵情報検出装置。 - 前記緩徐段検出手段は、押鍵時に算出された前記鍵盤速度に基づいて加速度を算出する押鍵加速度算出手段と、
当該算出された加速度に基づいて、前記緩徐段の発生の有無を判定する緩徐段発生判定手段と、
を有していることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の押鍵情報検出装置。 - 押鍵時に、前記鍵が前記所定の押鍵深さに達したときに、当該鍵に基づく発音を行うべきと決定する発音タイミング決定手段を、さらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の鍵盤楽器の押鍵情報検出装置。
- 離鍵時に、前記鍵が前記所定の押鍵深さを通過するときの前記鍵盤速度を離鍵速度として算出する離鍵速度算出手段と、
前記鍵が前記所定の押鍵深さを通過した後、前記離鍵速度に応じた所定時間が経過したときに、止音を行うべきと決定する止音タイミング決定手段と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鍵盤楽器の押鍵情報検出装置。
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